JP5508070B2 - 鋼部材とコンクリート部材との接合構造及び接合方法 - Google Patents
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Description
このような複合桁では、桁重量を低減して橋の基礎・下部構造への負担を軽減することができるとともに、コンクリートの一般的な橋桁と比べて、ウェブの鉄筋組立、コンクリート打設等の作業を省略することができ、施工の省力化と工期の短縮を図ることも可能となる。
スタッドジベルを用いる場合は、スタッドジベルの溶接量が多くなりコストが増大する。また、特許文献1に記載されているように、孔開きプレートに設けられた孔を床版のコンクリートで充填する接合構造では、孔の内部にコンクリートが隙間無く確実に充填されたか否かを視認することが困難であり、孔の中に空洞が生じた状態となることがある。このように孔の中に空洞が生じた場合、コンクリート部材と鋼部材との間のせん断耐力が大きく低減してしまう。また、孔内のコンクリートには大きな支圧力が集中して作用し、強度をあげるために高強度コンクリート等を使用した場合、コンクリート床版の全体に高強度コンクリートを使用せざるを得ず、製作費が多大となる。
特許文献2に記載の技術では、特許文献1に記載の技術と同様の問題点があるともに、孔開きプレートに複数段にわたって孔を配置する必要があると、せん断補強筋も複数段にわたって配置されることとなり、せん断補強筋の配置が難しくなる。
また、ずれ止め部材は、工場等であらかじめ作成することができ、現場での作業工程を簡略化することができるとともに、コンクリート部材に使用されるコンクリートよりも高強度とすることが容易となる。したがって、貫通孔の内周面との間に大きな支圧力が作用しても大きな耐力を有し、コンクリート部材と鋼部材との相対的な変位を抑制して力の伝達が可能となる。さらに、ずれ止め部材からコンクリート部材へは、鋼部材の両側に突き出した周面から力が伝達され、コンクリート部材を構成するコンクリートの強度がずれ止め部材より小さくても、大きな力の伝達が可能となる。
また、充填材として、硬化した時の弾性係数がずれ止め部材よりも小さいものを採用すると、ずれ止め部材の外周面又は鋼部材に設けられた孔の内周面に凹凸があっても相互間で作用する支圧力が小さな範囲に集中するのが緩和される。これにより、ずれ止め部材が局部的に大きな支圧力によって破壊されるのを抑制することが可能となる。
図1は、本願発明の一実施形態である接合構造が適用された橋桁の側面図及び断面図であり、図2は、同じ橋桁の下方からの斜視図である。また、図3は、同じ橋桁の橋脚で支持される部分を示す側面図である。
この橋桁2は、複数の橋脚1a、1b及び橋台(図示しない)上に支持された連続桁となっており、コンクリートからなる上床版11と、この下方に支持されるコンクリートの下床版12と、上床版11と下床版12とを連結しウェブとして機能する鋼部材13と、で主要部が構成されている。
この鋼平板は、橋桁2の軸線方向に所定の長さに分割されており、複数が橋桁2の軸線方向に配列されている。分割されたそれぞれの鋼部材13は、上縁と下縁との中間位置で幅が最も小さく、上縁又は下縁に近づくに従って幅が直線的に拡大された形状となっている。そして、上縁付近と下縁付近とは幅が矩形状に拡大され、複数の貫通孔21が設けられており、この部分が上床版及び下床版のコンクリートに埋め込んで接合する埋め込み部13a,13bとなっている。また、鋼部材13の箱桁断面の内側となる面の一方の対角線上には、コンクリートリブ22が設けられており、この方向に作用する圧縮力の一部を負担するようになっている。
例えば、高強度コンクリート又は高強度モルタルで形成されたもの、高強度コンクリート又は高強度モルタルに繊維状材料を混入した繊維補強コンクリート又は繊維補強モルタルにより形成されたものを使用することができる。また、繊維補強ずれ止め部材、高強度コンクリート又は高強度モルタル等により形成された円柱体の外周面に鋼による被覆層が形成されたものでもよい。さらに、これらのずれ止め部材に軸線方向のプレストレスが導入されたものであってもよい。
なお、これらのずれ止め部材23は、独立して1本ずつ製作することも可能であるが、軸線方向に長く形成されたものを所定の長さに切断して製作することができる。本実施の形態では、長さを約200mmとし、径を約50mmとしたが、これらの寸法は、ずれ止め部材を形成する材料、その強度、又は鋼部材13の厚さ等を考慮して定めるのが望ましい。
繊維状材料の繊維はランダムに混入されてもよいが、繊維の向き(繊維の配向)をずれ止め部材の軸線方向に沿わせるように混入するのが望ましい。これにより、鋼部材13の面に対して繊維の配向を直角にすることができ、繊維がランダムに混入されたコンクリート又はモルタルからなるずれ止め部材よりもせん断耐力を増強することができる。繊維の向きをずれ止め部材の軸線方向に沿わせる方法としては、ずれ止め部材の軸線方向に圧力を負荷しながら筒状の型枠に繊維を混入したコンクリート又はモルタルを流し込む方法を採用することができる。
繊維補強されたずれ止め部材23の圧縮強度は、例えば200N/mm2 とすることができる。
例えば、鋼管内に設計強度120N/mm2 の高強度モルタルを充填したものを採用することができる。
このようなずれ止め部材23は、鋼被覆層によって高強度モルタル等の変形が拘束され、さらに高強度で破壊までの塑性変形が大きな部材となる。
なお、このずれ止め部材23は、いわゆるプレテンション方式でプレストレスを導入することができる。つまり、円筒状の型枠内に挿通した緊張材を予め緊張した後、鋼強度コンクリート等を型枠内に隙間なく充填して硬化させる。また、鋼被覆を有するものでは、鋼管内に緊張材を挿通し、緊張力を導入した後に高強度コンクリート等を鋼管内に充填して製作することができる。プレテンション方式を採用したときのコンクリートやモルタル等には割裂等が生じやすくなるが、外周面を鋼管で被覆することによりコンクリート又はモルタルの割裂を防止してプレストレスを導入することが可能となる。
このような橋桁2に曲げモーメント及びせん断力が作用したときには、鋼部材13と床版11,12との接合部でずれようとする力が発生するが、鋼部材13に設けられた貫通孔21の内周面からずれ止め部材23に支圧力として力が伝達され、さらにずれ止め部材23から上床版11又は下床版12のコンクリートに伝達される。そして、大きな支圧力が作用するずれ止め部材23が高い強度を有することによって、床版11,12と鋼部材とのずれが抑制され一体となって抵抗するものとなる。
まず、図3に示すように、橋脚1上にコンクリートの横桁2aを含む柱頭部2bを形成し、橋脚1に仮固定する。そして、両側へ片持ち状態で張り出すように所定長の桁を順次増設してゆく。
一回に増設する長さは、橋桁の軸線方向に上記鋼部材13を配置する間隔と同じに設定し、この長さのプレキャストセグメント2cをあらかじめ形成しておき、これを順次接合する。
鋼部材13は工場等で製作するものであり、一方の対角線に沿って溶接された複数のスタッドジベル24を埋め込むようにコンクリートを打設し、鋼平板と密接した斜め方向の柱状のコンクリートリブ22を形成しておく。
一方、予め製作されたずれ止め部材23を上縁付近の埋め込み部13a及び下縁付近の埋め込み部13bに開削された貫通孔21に挿通する。このとき、ずれ止め部材23の径は、上記埋め込み部13a,13bに開削された貫通孔21の内径とほぼ同じ又はわずかに小さく形成されており、嵌め入れるように挿通する。このときエポキシ樹脂等の流動性を備えて後に硬化する充填材をずれ止め部材23の外周面に塗布した状態で貫通孔21に挿通するのが望ましい。これにより、ずれ止め部材23と貫通孔21の内周面との間に充填材が充填される。充填材は、ずれ止め部材23を貫通孔21に挿通した後、ずれ止め部材23と貫通孔21の内周面との隙間に充填してもよい。
なお、充填材は、硬化したときにずれ止め部材23よりも弾性係数の低い材料を用いるのが望ましい。
上記固定具は、図8に示すように、棒鋼を螺旋状に曲げ加工した螺旋状部材25や、ずれ止め部材23の外側に嵌め合わされるリング状部材26等を使用することができる。
上記螺旋状部材25は、螺旋状となった棒鋼の一方の端部を埋め込み部13a,13bの貫通孔21の周囲に当接するとともに、螺旋状となった部分がずれ止め部材23の外側に巻き回し、他方の端部をずれ止め部材23に巻き付けて固定する。これにより、貫通孔21に挿通された状態でずれ止め部材23を支持することができ、ずれ止め部材23を貫通孔21に挿通した後、床版のコンクリートを打設して硬化するまでの間、ずれ止め部材23が貫通孔21から抜け出したり、脱落したりするのを防止するものとなっている。
また、螺旋状部材25がずれ止め部材23の外周面に巻き回されることにより、ずれ止め部材23の周囲に打設されたコンクリートを補強することができ、ずれ止め部材23の周囲のコンクリートにひび割れが生じるのを抑制することが可能となる。
このように、リング状部材26は、ずれ止め部材23の鋼部材13からの脱落等を防止するとともに、ずれ止め部材23のコンクリートに対する支圧面が拡張され、コンクリートに作用する応力を緩和することができる。
なお、上床版11又は下床版12には、緊張材を挿通するダクト(図示しない)を設けておく。
この橋桁3は、図9(b)に示すようにウェブとして波形に曲げ加工された鋼板を用い、この波形鋼ウェブ30とコンクリートの上床版14及び下床版15とを結合して断面を箱形としたものである。
上記波形鋼ウェブ30は、図9(a)に示すように、構造用鋼板を鉛直方向の折り曲げ線によって折り曲げ、平断面の形状が波形となるように加工された本体部31がウェブとして機能するものである。そして、この本体部31は橋桁3の軸線方向に連続しており、上辺及び下辺に沿って上フランジ32及び下フランジ33がほぼ直角に添設されている。また、上フランジ32の上面及び下フランジ33の下面には、上側の孔開きプレート34及び下側の孔開きプレート35がほぼ直角に溶接されている。
なお、ずれ止め部材36、上床版14及び下床版15は、蝶型の鋼平板をウェブとして用いる上記橋桁2と同様であるので、説明を省略する。
また、図1等に示す蝶型の鋼部材をウェブとして用いた橋桁2も、予め製作されたセグメント2cを接合して架設するものに限定されるものではなく、現場で上床版11及び下床版12のコンクリートを打設するものであってもよい。
さらに、本発明に係る接合構造が適用される橋桁は鋼ウェブとコンクリートの上床版及び下床版とで箱形の断面を有するものに限定されず、鋼ウェブと上床版とが接合されたものであってもよいし、鋼ウェブが軸線方向に連続した平板で形成される鋼ガーダーであっても良い。また、架設方法も片持ち施工されるものに限定されず、支保工上で製作される橋桁、押し出し工法で架設される橋桁等、様々の工法で架設される橋桁に適用することができる。
図10は、この実験に用いた供試体40を示す図である。
供試体40は、鋼部材41と、この鋼部材41を両側から挟み込むように設けられた2つのコンクリートブロック42と、で主要部が構成されている。
上記鋼部材41は、所定の長さに切断したH形鋼の2つのフランジ41aに、H形鋼の軸線方向に連続したプレート43をフランジ面とほぼ直角に溶接したものである。この鋼部材41の軸線方向をほぼ鉛直として両フランジ41aに密接するとともにプレート43を埋め込むようにコンクリートを打設して2つのコンクリートブロック42を一体に形成する。
なお、鋼部材41に接合されたプレート43の下側端面には、柔軟に変形する発泡樹脂のブロック45が接触するように配置されており、プレート43の下側端面に作用する支圧力で鋼部材41の変位が拘束されないようにしている。
供試体1:従来のスタッドジベルを用いて接合したものである。H形鋼のフランジ41aに溶接接合したプレート43の両面にスタッドジベルを1本ずつ溶接する。そして、H形鋼のフランジ41aに密接させて打設したコンクリートブロック42にプレート43をスタッドジベルとともに埋め込んだものである。スタッドジベルは、軸径が16mm、高さが100mmとしている。
図11(a)は、各供試体に鉛直荷重を負荷したときに鋼部材41とコンクリートブロック42との間に作用するせん断力と、鋼部材41のコンクリートブロック42に対するずれ変位量との関係を示す図である。また、図11(b)は、図11(a)から求められた各供試体のせん断耐力を示す図表である。
これらの図が示すように、従来の接合構造とした供試体1(スタッドジベルを使用)及び供試体2(孔あき鋼板に異形鉄筋を挿通)のせん断耐力は、ともに約200kNであったが、本発明の実施形態である供試体3(高強度モルタルのずれ止め部材を使用)、供試体4(高強度繊維補強コンクリートのずれ止め部材を使用)及び供試体5(鋼管に高強度モルタルを充填したずれ止め部材を使用)のせん断耐力は、それぞれ約230kN、330kN及び360kNであり、従来技術である供試体1及び供試体2よりも大きなせん断耐力を有することが分かる。
21:埋め込み部に設けられた貫通孔、 22:コンクリートリブ、 23:ずれ止め部材、 24:スタッドジベル、 25:螺旋状部材、 26:リング状部材、
30:波形鋼ウェブ、 31:本体部、 32:上フランジ、 33:下フランジ 34:上側の孔開きプレート、 35:下側の孔開きプレート、 36:ずれ止め部材、 37:貫通孔、
40:供試体、 41:鋼部材、 41a:H形鋼のフランジ、 42:コンクリートブロック、 43:孔開きプレート、 44:ずれ止め部材、 45:発泡樹脂のブロック、
100,110、120:波形鋼板ウェブ、 101、111、121:フランジプレート、 102:スタッドジベル、 112,122:孔開きプレート、 113、123:孔開きプレートに開削された孔、 124:せん断補強筋、
Claims (9)
- 鋼部材とコンクリート部材との接合構造であって、
前記鋼部材は複数の貫通孔が厚さ方向に形成された板状の部材を備え、
前記コンクリート部材より圧縮強度及び引張強度が大きいコンクリート又はモルタルで形成されたずれ止め部材が、前記板状の部材の面と平行な方向の力が前記鋼部材から伝達されてさらに前記コンクリート部材に伝達するように前記貫通孔のそれぞれに嵌め入れられ、前記鋼部材から両側へ突き出しており、
前記ずれ止め部材及び前記鋼部材の該ずれ止め部材が嵌め入れられた部分を埋め込むようにコンクリートが打設されていることを特徴とする鋼部材とコンクリート部材との接合構造。 - 前記ずれ止め部材は、前記貫通孔の内周面と接触又はわずかの隙間を有するように嵌め入れられ、
前記貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通された前記ずれ止め部材との隙間には、硬化したときの弾性係数が前記ずれ止め部材よりも小さい充填材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。 - 前記ずれ止め部材を形成するコンクリート又はモルタルは、繊維状材料を混入した繊維補強コンクリート又は繊維補強モルタルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。
- 前記ずれ止め部材のコンクリート又はモルタルには、軸線方向のプレストレスが導入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。
- 前記ずれ止め部材は、該ずれ止め部材を形成するコンクリート又はモルタルの外周面に鋼による被覆層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。
- コンクリート部材を構成するコンクリートが硬化するまで前記ずれ止め部材を前記貫通孔に挿通した状態に維持する固定具が、前記ずれ止め部材の前記貫通孔から突き出した部分に固定され、前記鋼部材の前記貫通孔の周辺部に当接するように装着されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。
- 前記固定具は、螺旋状に加工された鋼線であることを特徴とする請求項6に記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。
- 前記固定具は、前記ずれ止め部材の前記鋼部材から突き出した部分に装着されたリング状部材であることを特徴とする請求項6に記載の鋼部材とコンクリート部材との接合構造。
- 鋼部材とコンクリート部材との接合方法であって、
前記鋼部材は厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された鋼板を備え、
該鋼部材を所定の位置に配置し、
あらかじめコンクリート又はモルタルで製作されたずれ止め部材を、前記貫通孔の内周面と接触又はわずかの隙間を有するように該貫通孔に挿通し、該貫通孔の内周面と該ずれ止め部材の外周面との隙間には硬化する充填材を充填した状態で該ずれ止め部材を支持し、
前記ずれ止め部材及び前記鋼部材の該ずれ止め部材が挿通された部分を埋め込むようにコンクリートを打設することを特徴とする鋼部材とコンクリート部材との接合方法。
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