JP6895740B2 - 水平力拘束構造 - Google Patents
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Description
このような観点から、本発明は、簡易に水平力支持構造を構成することができ、かつ、工期短縮化を図ることが可能な水平力拘束構造を提案することを課題とする。
かかる水平力拘束構造は、既存構造物の側面に仮設の支持部材を設ける必要がないため、既設構造物の負担を最小限に抑えることができる。また、免震装置の設置後に、既存構造物と擁壁との間にクリアランスを改めて設ける手間を省略することができる。また、擁壁と既存建物との間に形成された狭小な空間内で行う作業を最小限に抑えることができるので、施工性に優れている。また、免震改修工事後に発生する廃棄物の処分量を最小限に抑えることができる。
第一の実施形態では、既存建物1の免震化を目的として既存建物(既存構造物)1の地下部分に免震装置2を設置する免震化方法おいて、図1に示すように、免震改修工事中の既存建物1の変位を拘束する水平力拘束構造3を形成する場合について説明する。
水平力拘束構造3は、既存建物1の周囲に形成された擁壁4と既存建物1との間に形成されており、免震改修工事中の既存建物1に作用する地震力等の水平力(擁壁4の内外方向の水平力および擁壁4に沿う方向の水平力)を既存建物1の周囲の擁壁4を介して地盤に伝達する。水平力拘束構造3は、擁壁頂部5と、ダウエルピン6と、床版7とを備えている。
免震化方法は、掘削工程と、擁壁工程と、連結工程と、免震化工程と、分離工程とを備えている。
掘削工程では、既存建物1の周囲を掘削する。まず、図3(a)に示すように、既存建物1の外側の地盤に山留壁8を形成する。山留壁8は、既存建物1から所定の間隔をあけた位置に、地上から鋼矢板を打設(圧入)することにより形成する。次に、山留壁8と既存建物1との間を掘削する。掘削深度は、免震装置2の設置個所21が露出する深さとする。掘削工程では、掘削の進行に伴い、必要に応じて山留壁8と既存建物1との間に切梁を設置する。なお、山留壁8は必要に応じて形成すればよい。
頂部形成作業では、図4(a)に示すように、擁壁4の上端に、ダウエルピン6が植設された擁壁頂部5を形成する。擁壁頂部5は、擁壁4の上端において、型枠(図示せず)を設置するとともに型枠内に必要な鉄筋を配筋しておき、そして、この型枠内にコンクリートを打設することにより形成する。このとき、型枠内には、長ナット52と長ナット52の下部に螺合されたせん断力伝達ボルト53とを配設しておく。コンクリートに所定の強度が発現したら、長ナット52(雌ネジ51)にダウエルピン6を螺着する。なお、長ナット52は、ダウエルピン6が螺着されている状態で擁壁頂部5に埋め込んでもよい。
なお、水平力拘束構造2は、既存建物1の規模や用地等に応じて部分的に免震化改修工事を行う場合でも採用可能である。
ダウエルピン6の撤去作業は、地上部において行うことができるため、既存建物1と擁壁4との間に形成された挟小な空間で作業を行う場合比べて、施工性に優れている。
第二の実施形態では、既存建物1の免震化を目的として、図7に示すように、既存建物(既存構造物)1と新設の基礎構造(マットスラブ10)との間に免震装置2を設置する免震化方法おいて、免震改修工事中の既存建物1の変位を拘束する水平力拘束構造3を形成する場合について説明する。
水平力拘束構造3は、既存建物1の周囲に形成された擁壁4と既存建物1との間に形成されており、免震改修工事中の既存建物1に作用する地震力等の水平力(擁壁4の内外方向の水平力および擁壁4に沿う方向の水平力)を既存建物1の周囲の擁壁4を介して地盤に伝達する。水平力拘束構造3は、ダウエルピン6と、床版7とを備えている。
免震化方法は、掘削工程と、擁壁工程と、連結工程と、免震化工程と、分離工程とを備えている。
掘削工程では、既存建物1の周囲および下方を掘削する。既存建物1の周囲および下方の掘削は、既存建物1の外側の地盤に山留壁8を形成した状態で行えばよい。
床版敷設作業では、図9(b)に示すように、既存建物1に固定された床版7を敷設する。床版7は、型枠を設置するとともに、必要な鉄筋を配筋する。このとき、床版7の擁壁4の上方に対応する部分には、所定の位置にスリーブ72を配設しておく。次に、型枠内にコンクリートを打設する。打設コンクリートに所定の強度が発現したら、型枠を撤去する。なお、床版7は、床版7の下面と擁壁4の上面との間に隙間が形成されるように施工する。床版7は、プレキャスト部材を敷設することにより形成してもよい。
連結作業では、床版7の貫通孔71(スリーブ72)にダウエルピン6を落とし込む(差し込む)。ダウエルピン6は、貫通孔71を挿通して、擁壁4のスリーブ44に挿入される。本実施形態のダウエルピン6は、擁壁のスリーブの長さと床版の貫通孔71の長さとの合計よりも長い鉄筋(棒状の部材)からなり、ダウエルピン6の頭部は床版7の上面から突出する。本実施形態のダウエルピン6は、スリーブ44および貫通孔71に挿入するのみとし、グラウト等により固定していない。なお、スリーブ44および貫通孔71には、必要に応じてグラウト等の固化材を注入してもよい。
分離工程では、擁壁4と既存建物1とを分離する。本実施形態では、ダウエルピン6をスリーブおよび貫通孔71から抜き出す(撤去する)ことにより、擁壁4と既存建物1とを分離する。擁壁4と床版7との間には隙間が形成されているため、ダウエルピン6を取り外すことで、擁壁4と既存建物1との接合状態が解除される。
また、既存建物1と擁壁4との連結は、ダウエルピン6をスリーブ44,72に挿入するのみで完了ため、作業性に優れている。また、既存建物1と擁壁4との接合状態の解除は、ダウエルピン6を抜き出すのみで完了するため作業性に優れている。
山留壁8は、既存建物1の免震化後に撤去してもよいし、残置させてもよい。また、擁壁4は、山留壁8と一体に形成してもよい。
前記各実施形態では、ダウエルピン6により擁壁4と床版7とを連結する場合について説明したが、擁壁4と床版7との連結方法はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、擁壁4の頭部と床版7の下面との角部に配設されたブラケット63を利用してもよい。ブラケット63は、アンカーやダウエルピンを介して擁壁4と床版7に固定する。擁壁4と床版7とを分離する際には、ブラケット63を撤去すればよい。
2 免震装置
3 水平力拘束構造
4 擁壁
5 擁壁頂部
51 雌ネジ
6 ダウエルピン
7 床版
71 貫通孔
8 山留壁
Claims (2)
- 免震改修工事中の既存構造物の変位を拘束する水平力拘束構造であって、
前記既存構造物の周囲に設けられた擁壁と、
前記既存構造物から前記擁壁の上方に向けて延設された本設構造物である床版と、
前記擁壁の上面に撤去可能に固定されたダウエルピンと、を備えており、
前記床版は、前記ダウエルピンの位置に対応して貫通孔が形成された鉄筋コンクリート部材であり、
前記擁壁の頭部と前記床版は、前記ダウエルピンを介して連結されており、
前記擁壁の頭部は、その幅とせいが縦壁の壁厚よりも大きい矩形断面のコンクリート部材で構成されるとともに、
該コンクリート部材内に、下部にせん断力伝達ボルトの一部が螺合された長ナットが埋め込まれ、前記ダウエルピンが前記長ナットに螺合されていることを特徴とする、水平力拘束構造。 - 前記貫通孔と前記ダウエルピンとの隙間に充填材が充填されていないことを特徴とする、請求項1に記載の水平力拘束構造。
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