JP6308374B1 - X線回折測定方法及び回折環読取装置 - Google Patents

X線回折測定方法及び回折環読取装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 測定対象物の内部が極度に狭くない限り測定が可能になるとともに、測定精度が従来と同程度であるX線回折測定方法を提供する。【解決手段】 放射状に出射されるX線を、角度が可変なモータ27に形成された貫通孔を介して照射し、発生した回折X線によりイメージングプレート15に回折環を撮像する回折環撮像装置本体5により、測定対象物による回折環を撮像する。その後、回折環撮像装置本体5をそのままの状態で回折環読取装置2にセットして回折環の読取りを行い、X線照射点からイメージングプレート15までの距離を測定対象物による回折環撮像時と同じにして、回折環読取装置2内にある標準試料Stによる回折環を撮像し、この回折環の読取りを行う。得られた測定対象物による回折環と標準試料Stによる回折環とから補正を行ったうえで残留応力を計算する。【選択図】図7

Description

本発明は、測定対象物にX線を照射することで発生する回折X線により回折環を撮像し、撮像された回折環の形状を読み取って、回折環の形状に基づく特性値を計算するX線回折測定方法及び該X線回折測定方法において使用される回折環読取装置に関する。
従来から、例えば特許文献1に示されるように、測定対象物に所定の入射角度でX線を照射して、測定対象物で回折したX線によりX線回折環(以下、回折環という)を形成し、形成された回折環の形状を検出してcosα法による分析を行い、測定対象物の残留応力を測定するX線回折測定装置が知られている。特許文献1に示されている装置は、X線出射器、イメージングプレート等の回折環撮像手段、レーザ検出装置及びレーザ走査機構等の回折環読取手段、並びにLED照射器等の回折環消去手段等を1つの筐体内に備えている。また、X線出射器から出射されるX線と同じ光軸の平行なLED光を照射し、照射箇所をカメラ撮影する機能を備えており、測定対象物の該筐体に対する位置を変化させ、カメラの撮影画像上におけるLED光の照射点と反射点が適切な位置になるよう調整することで、X線照射点から回折環撮像手段までの距離および測定対象物に対するX線の入射角を設定値通りにすることができるようになっている。そして、該距離および該入射角が設定値になるよう測定対象物の位置と姿勢を調整した後、測定対象物にX線を照射して発生する回折X線により、回折環をイメージングプレートに撮像する撮像工程、イメージングプレートにレーザ検出装置からのレーザ光を走査しながら照射することで回折環の形状を検出する読取り工程、及び該回折環をLED光の照射により消去する消去工程を連続して行えるようになっている。このX線回折測定装置を用いれば、短時間で測定対象物の残留応力を測定することができる。
しかしながら、内径が小さい管状物体の内部等、測定対象物の内部にX線回折測定装置を入れることができない場合が多くあり、そのような場合は、測定対象物の内部のX線回折測定を行うことができないという問題がある。この問題に対応する方法として、例えば特許文献2に示されるように、回折環の撮像と回折環の読取りをそれぞれ別の装置で行うようにし、回折環を撮像する装置をX線出射器とイメージングプレートを取り付けたプレートとからなる装置にすることで小型化し、測定対象物の内部に入れることができるようにする方法がある。
特開2014−98677号公報 特開2005−241308号公報
しかしながら、回折環を撮像する装置をX線出射器とイメージングプレートを取り付けたプレートとからなる装置にしても、測定対象物の内部の様々な箇所を測定する場合は、装置の姿勢を測定対象物の内部で変える必要があり、測定対象物の内部が狭い場合は測定が困難であることが多いという問題がある。
本発明はこの問題を解消するためなされたもので、その目的は、測定対象物にX線を照射することで発生する回折X線により回折環を撮像し、撮像された回折環の形状を読み取って、回折環の形状に基づく特性値を計算するX線回折測定方法において、回折環を撮像する装置を測定対象物の内部で姿勢を変える必要がないようにし、測定対象物の内部が極度に狭くない限り測定が可能になるとともに、測定精度が従来と同程度であるX線回折測定方法を提供することにある。また、該X線回折測定方法において、測定精度を従来と同程度にするために使用される回折環読取装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、自らの中心軸を中心にして放射状にX線を出射するX線出射器と、X線出射器から放射状に出射されるX線の出射方向に配置され、X線を通過させる第1の貫通孔が設けられたブロックと、ブロックと一体になった回折環撮像手段であって、第1の貫通孔と中心軸が一致する第2の貫通孔を有し、第2の貫通孔を通過させてX線が出射され、出射された方向に物体があるとき、物体で発生した回折X線により第2の貫通孔と垂直に交差する撮像面に回折環を撮像する回折環撮像手段と、X線出射器の中心軸に対する第1の貫通孔の角度を任意の角度に設定可能な角度変化機構とを備える回折環撮像装置を測定対象物の測定箇所近傍に配置する第1の配置ステップと、回折環撮像装置からX線を測定対象物に照射して、撮像面に回折環を撮像する第1の回折環撮像ステップと、第1の回折環撮像ステップにて撮像された回折環の形状を読み取る第1の回折環読取りステップと、第1の回折環読取りステップにて読み取った回折環の形状から、測定対象物のX線照射点から撮像面までの距離を計算する距離計算ステップと、回折環撮像装置の角度変化機構を第1の回折環撮像ステップにおける状態のままで、X線照射点から撮像面までの距離が距離計算ステップにて計算された距離になるよう、回折環撮像装置を標準試料の近傍に配置する第2の配置ステップと、回折環撮像装置からX線を標準試料に照射して撮像面に回折環を撮像する第2の回折環撮像ステップと、第2の回折環撮像ステップにて撮像された回折環の形状を読み取る第2の回折環読取りステップと、第1の回折環読取りステップにて読み取った回折環の形状と、第2の回折環読取りステップにて読み取った回折環の形状とを用いて、測定対象物の特性値を計算する特性値計算ステップとを備えたX線回折測定方法としたことにある。
これによれば、回折環撮像装置の姿勢を変化させずとも、第1の貫通孔が形成されたブロックの角度を角度変化機構により変化させ、X線出射器を自らの中心軸周りに向きを変化させて中心軸方向に移動させれば、X線を希望する測定箇所に照射することができる。すなわち、回折環撮像装置を測定対象物の内部に挿入しやすい姿勢で挿入すれば、X線を希望する測定箇所に照射することができる。例えば、測定対象物が管状物体であれば、測定対象物の内部の中心軸にX線出射器の中心軸が合うようにして回折環撮像装置を測定対象物の内部に挿入すれば、ブロックの角度、X線出射器の自らの中心軸周りの向き及び挿入位置を変化させることで、X線を希望する測定箇所に照射することができる。よって、測定対象物の内部が極度に狭くない限り測定が可能になる。ただし、放射状に出射されるX線を貫通孔を介して測定対象物に照射する場合、X線出射器の中心軸(放射状に出射されるX線の中心線)に対する貫通孔の中心軸の角度を変化させると、貫通孔からX線が出射される箇所において、X線の強度分布における重心がX線の光軸位置からずれるという問題が発生する。このX線の重心のずれは発明を実施するための形態で詳細に説明するが、このずれが発生すると回折環の形状から計算される残留応力等の特性値が、本来の値からずれ、精度のよいX線回折測定を行うことができない。このため、測定対象物に対する回折環撮像と回折環撮読取りを第1の回折環撮像ステップと第1の回折環読取りステップにて行った後、回折環撮像装置の角度変化機構の状態及びX線照射点から撮像面までの距離を測定対象物のときと同じにして標準試料に対する回折環撮像と回折環撮読取りを第2の回折環撮像ステップと第2の回折環読取りステップにて行う。そして、測定対象物における回折環の形状と標準試料における回折環の形状を用いて、測定対象物の残留応力等の特性値を計算する。これにより、X線の重心のずれの影響をなくし、上述した回折環撮像装置を用いても従来と同程度の精度でX線回折測定を行うこができる。なお、標準試料は残留応力0(無応力)の試料であり、通常は金属粉末を糊塗した試料である。
また、本発明の他の特徴は、回折環撮像手段は、テーブルに固定されたイメージングプレートであり、第1の回折環読取りステップは、回折環撮像装置を、角度変化機構が第1の回折環撮像ステップにおける状態のまま、イメージングプレートにレーザスポットを走査位置を検出しながら走査して反射光強度を検出する回折環読取装置にセットして回折環の形状を読み取るステップであり、第2の配置ステップは、回折環撮像装置を回折環読取装置にセットしたままで、回折環読取装置に備えられた標準試料の近傍に回折環撮像装置を配置するステップであり、第2の回折環撮像ステップ及び第2の回折環読取りステップは、回折環撮像装置を回折環読取装置にセットしたままで行われるステップであるようにしたことにある。
これによれば、回折環撮像手段が先行技術文献に示されるよう、テーブルに固定されたイメージングプレートである場合、回折環撮像装置を第1の回折環撮像ステップにおける状態のまま回折環読取装置にセットすれば、第1の回折環読取りステップ、距離計算ステップ、第2の配置ステップ、第2の回折環撮像ステップ及び第2の回折環読取りステップを、回折環読取装置及び回折環撮像装置を操作するのみで行うことができるので、測定効率をよくすることができる。
また、本発明の他の特徴は、ブロックは、第1の貫通孔が出力軸に形成され、テーブルを第1の貫通孔の中心軸周りに回転させるモータであり、回折環読取装置は、モータを回転させるとともにレーザスポットをイメージングプレートの半径方向に移動させ、レーザスポットの走査位置をモータの回転角度と半径方向移動の移動位置で検出するものであるようにしたことにある。これによれば、回折環読取装置のレーザスポットの走査機構が複雑にならないようにすることができる。
また、本発明は、X線回折測定方法としての発明のみならず、自らの中心軸を中心にして放射状にX線を出射するX線出射器と、X線出射器から放射状に出射されるX線の出射方向に配置され、X線を通過させる第1の貫通孔が設けられたブロックと、ブロックと一体になった回折環撮像手段であって、第1の貫通孔と中心軸が一致する第2の貫通孔を有し、第2の貫通孔を通過させてX線が出射され、出射された方向に物体があるとき、物体で発生した回折X線により第2の貫通孔と垂直に交差する撮像面に回折環を撮像する回折環撮像手段と、X線出射器の中心軸に対する第1の貫通孔の角度を任意の角度に設定可能な角度変化機構とを備える回折環撮像装置であって、回折環撮像手段がテーブルに固定されたイメージングプレートである回折環撮像装置がセットされ、イメージングプレートに撮像された回折環を読み取る回折環読取装置の発明としても実施し得るものである。
この場合、本発明の特徴は、回折環読取装置を、回折環撮像装置を角度変化機構がイメージングプレートに回折環が撮像されたときの状態のまま所定の位置にセットするセット機構と、イメージングプレートにレーザ光を照射してイメージングプレートの表面にレーザスポットを形成するレーザ照射手段と、レーザスポットをイメージングプレートと相対的にイメージングプレートの面内を走査させる走査手段と、レーザ照射手段によりレーザ光が照射され、走査手段によりレーザスポットが移動されている状態で、レーザスポットからの反射光の強度を、走査手段による走査位置に関連付けて検出する検出手段と、検出手段により検出された複数のデータを用いてイメージングプレートに撮像された回折環の形状を算出する回折環形状計算手段と、回折環形状計算手段により算出された回折環の形状からイメージングプレートに回折環が撮像されたときの回折X線の発生点であるX線照射点からイメージングプレートの面までの距離を計算する距離計算手段と、X線出射器から出射されるX線が照射される標準試料と、X線出射器からX線が照射されたとき標準試料のX線照射点からイメージングプレートの面までの距離が、距離計算手段により計算された距離になるよう、標準試料を回折環撮像装置と相対的に移動し、位置決めする標準試料位置決め手段とを備えた回折環読取装置としたことにある。
これによれば、回折環撮像装置にて測定対象物による回折環を撮像し、回折環撮像装置を角度変化機構が撮像を行ったときの状態のまま回折環読取装置のセット機構にセットすれば、測定対象物による回折環の読取り、及びX線照射点からイメージングプレートの面までの距離を測定対象物のときと等しくしての標準試料による回折環の撮像と回折環の読取りを、回折環読取装置及び回折環撮像装置を作動させるのみで行うことができるので、測定対象物の特性値の計算に必要な測定対象物による回折環の形状と標準試料による回折環の形状とを効率よく得ることができる。
また、回折環読取装置の発明として実施した場合の本発明の他の特徴は、回折環撮像装置のブロックは、第1の貫通孔が出力軸に形成され、テーブルを第1の貫通孔の中心軸周りに回転させるモータであり、走査手段は、モータに駆動信号を供給してモータを回転させる回転駆動手段と、レーザスポットをイメージングプレートと相対的にイメージングプレートの半径方向に移動させる移動手段とから構成され、検出手段は、走査位置をモータの回転角度と移動手段の移動位置で検出するようにしたことにある。これによれば、回折環読取装置の走査手段が複雑にならないようにすることができる。
本発明の実施形態に係る回折環撮像装置の全体構成図である。 図1の回折環撮像装置における回折環撮像装置本体の断面図である。 図2の回折環撮像装置本体におけるモータ固定プレートを上方から見た図である。 回折環撮像装置のそれぞれの状態における出射X線と回折X線の強度分布を誇張して示した図である。 出射X線の強度分布が図4のようになる理由を示した図である。 回折環撮像装置の状態により撮像される回折環の位置がずれることを示した図である。 本発明の実施形態に係る回折環読取装置の全体構成図である。 回折環読取装置のコントローラが実行するプログラムのフロー図である。 図2の回折環撮像装置本体を取り付ける治具の全体外観図である。 図9の治具における押し当て部の内部構造を示す部分断面図である。 本発明の別の実施形態に係る回折環読取装置の全体構成図である。
本発明の一実施形態に係る回折環撮像装置の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、回折環撮像装置の全体構成図であり、図2は回折環撮像装置本体の断面図である。ただし、X線出射器10は市場で流通しているものを用いることができるので断面図ではなく、モータ27は出力軸27aに貫通孔27a1が作成されていること以外は、市場で流通しているものと同じ構造であるので部分断面図である。図1に示すように、回折環撮像装置1は、回折環撮像装置本体5、高電圧電源6及びコンピュータ装置90等から構成され、測定対象物OBの内部に回折環撮像装置本体5を挿入し、X線を測定箇所に照射してイメージングプレート15に回折環を撮像するものである。X線回折測定は様々な金属において行うことができるが、本実施形態では測定対象物OBは鉄管であり、測定箇所は鉄管の内部とする。
図2に示すように、回折環撮像装置本体5は、円筒状のホルダ7の内部にX線出射器10がセットされる。ホルダ7の内径は、X線出射器10の最も大きい径より僅かに大きい径になっているので、セットされるとホルダ7の中心軸とX線出射器10の中心軸とは一致する。ホルダ7の底部は径の大きな孔7aが開けられており、X線出射器10は高電圧電源6から高電圧の駆動電圧及び駆動電流が供給されると、孔7aを通過させてX線を図2の下方向に出射する。このX線は、図2に一点鎖線で示されるように、X線出射器10の中心軸(ホルダ7の中心軸)を中心に放射状に広がるX線である。このように放射状に広がるX線を出射するX線出射器10としては、浜松ホトニクス製のX線管N6601などを用いることができる。また、このように放射状に広がるX線を出射するX線出射器に関する公開公報としては、特開2013−182868などがある。
高電圧電源6は内部に制御回路を備え、コントローラ91からX線出射の指令が入力すると、X線出射器10から設定された強度のX線が出射されるように、X線出射器10に駆動電圧及び駆動電流を供給する。また、コントローラ91からX線停止の指令が入力すると、X線出射器10へ供給している駆動電圧及び駆動電流を停止する。コントローラ91は入力装置92から回折環撮像の指令が入力すると高電圧電源6にX線出射の指令を出力し、出力とともに時間計測を開始して予め記憶されている時間が経過すると高電圧電源6にX線停止の指令を出力する。よって、入力装置92からの入力を行うのみで、X線出射器10から設定された強度のX線を設定された時間だけ出射させることができる。
図2に示すように、円筒状のホルダ7は上部に雄ねじが切られており、雌ねじが切られた上蓋8を捻じ込むことができるようになっている。上蓋8は中心に孔8aが開けられており、X線出射器10から出る高電圧電源6に接続するためのケーブル9を通すことができるようになっている。なお、X線出射器10にケーブル9を取り付け、ケーブル9に高電圧電源6に接続するためのコネクタを取り付けた後は、上蓋8の孔8aにケーブル9を通すことはできないので、該取り付けを行う前にケーブル9に上蓋8を通すようにする。上述したように、円筒状のホルダ7の内径はX線出射器10の最も大きい径より僅かに大きい径になっており、円筒状のホルダ7の長さは、X線出射器10をセットしたときX線出射器10の上端より円筒状のホルダ7の上端がやや上になる長さになっている。よって、ホルダ7にX線出射器10をセットし、上蓋8をホルダ7に捻じ込むと、X線出射器10はホルダ7内で固定される。
また、図2に示すように、モータ27がモータ固定プレート13に固定され、モータ固定プレート13の連結部12がホルダ7に固定されることで、ホルダ7の中心軸方向でX線の出射方向に、モータ27が配置される。ホルダ7は下端よりやや上の部分で互いに対称となる位置に雌ねじが切られた穴7bが2つあり、所定の径の雄ねじ11を捻じ込むことができるようになっている。そして、モータ固定プレート13の上面には、互いに対称となる位置に設けられた2つの長方形の板状の連結部12があり、2つの連結部12には雄ねじ11よりやや大きい径の孔12aがそれぞれ開けられている。したがって、連結部12の孔12aとホルダ7の雌ねじが切られた穴7bをそれぞれ合わせ、雄ねじ11をホルダ7の穴7bにそれぞれ捻じ込むことにより、ホルダ7とモータ固定プレート13を連結させることができる。モータ固定プレート13の底面には、対称位置に雌ねじが切られた2つの穴13aがあり、所定の径の雄ねじ14を捻じ込むことができるようになっている。そして、モータ27の底面には対称位置に2つの固定板29があり、固定板29には雄ねじ14よりやや大きい径の孔29aがそれぞれ開けられている。2つの孔29aのモータ27の中心軸(出力軸の中心)からの距離と、2つの穴13aのモータ固定プレート13の中心軸からの距離は同じであり、2つの孔29aと穴13aをそれぞれ合わせることができる。よって、2つの孔29aと穴13aをそれぞれ合わせ、雄ねじ14を2つの穴13aにそれぞれ捻じ込むことにより、モータ27をモータ固定プレート13に固定させることができる。なお、モータ27にはモータ27を回転駆動させる電力が供給されるケーブルと、モータ27内のエンコーダ27cが出力するパルス列信号を供給するケーブルとがあり、該ケーブルの先端には該ケーブルと後述する回折環読取装置2からのケーブルとを接続するためのコネクタがあるが、分かりやすくするため図1及び図2からは除かれている。
図3は、モータ固定プレート13を上方から見た図である。一点鎖線はモータ固定プレート13に固定されたモータ27を示している。図3に示すように、モータ固定プレート13には中心軸を中心にしてモータ27と同じ径の孔があり、放射状に出射されたX線はモータ27の底面に照射される。雄ねじ11をホルダ7の2つの穴7bにそれぞれ捻じ込むことによる連結の強度は、円筒状のホルダ7の中心軸に対するモータ27の中心軸(出力軸の中心)を任意の角度にしてモータ固定プレート13を固定することができる強度である。これにより、X線出射器10から放射状に出射されるX線の中心線に対して、モータ27の中心軸を任意の角度にして固定することができる。
また、図3に示すように、モータ固定プレート13の側面には、モータ固定プレート13の中心軸に対して対称位置に貫通孔13bがある。この貫通孔13bは後述する回折環読取装置2に回折環撮像装置本体5をセットする際、回折環読取装置2にある固定棒47を挿入するためのものである。これについては後述する。
モータ27、テーブル16、イメージングプレート15及び固定具18の構造は、先行技術文献の特許文献1に示されるモータ27、テーブル16、イメージングプレート15及び固定具18と同じ構造である。すなわち、モータ27の出力軸27aは円筒状で断面円形の貫通孔27a1を有し、モータ27の出力軸27aの反対側には、貫通孔27bが設けられ、貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするため、貫通孔28aが形成された円筒状の通路部材28が固定されている。テーブル16は円形状であり、モータ27の出力軸27aの先端部に固定されている。テーブル16は、下面中央部から下方へ突出した突出部17を有し、突出部17の外周面には、ねじ山が形成されている。テーブル16の下面にはイメージングプレート15が取り付けられる。イメージングプレート15の中心部には貫通孔15aが設けられていて、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15が、固定具18とテーブル16の間に挟まれて固定される。固定具18は円筒状の部材で、内周面に突出部17のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
テーブル16、突出部17及び固定具18にも貫通孔16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、貫通孔16a,17a,18aは貫通孔28a,27b,27a1と同一軸である。また、貫通孔18aの内径は通路部材28の貫通孔28aと同じである。すなわち、モータ27の底面に照射されるX線の一部は、貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射され、貫通孔28aの内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線、すなわちモータ27の中心軸と同一の光軸を有するX線となる。すなわち、X線出射器10から放射状に出射されるX線の一部は、貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射されることで、モータ27の中心軸と同一の光軸を有するX線となる。
また、図1に示すように、X線出射器10から放射状に出射されるX線の中心線に対してモータ27の中心軸をある角度にしても、通路部材28にX線が照射されれば貫通孔18aからは略平行なX線が出射し、測定対象物OBに照射される。そして、測定対象物OBにX線が照射されれば、測定対象物OBで回折したX線により、イメージングプレート15に回折環が撮像される。すなわち、測定対象物OBの内部の空洞の中心軸とホルダ7の中心軸とを合わせて回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に挿入しても、モータ27の中心軸の方向を変えることで、X線を測定対象物OBの目的とする箇所に照射し、回折環を撮像することができる。
回折環撮像装置1はイメージングプレート15に回折環を撮像するのみであるので、撮像した回折環を読み取るには、回折環撮像装置1を回折環読取装置2にセットし、回折環読取装置2を操作する必要がある。しかし、上述したように構成された回折環撮像装置1により測定対象物OBにX線を照射して回折環を撮像した場合、単に撮像した回折環を読み取るのみでは、精度よく回折環の形状に基づいて残留応力を計算することができないという問題がある。以下にその問題について説明する。
図4は、回折環撮像装置本体5からX線を出射して回折環を撮像するときの、出射X線の強度分布と回折X線の強度分布を誇張して示したものである。放射状に出射されるX線の強度分布は2点鎖線で示され、X線照射点におけるX線の強度分布および回折X線の受光点におけるX線の強度分布は、実線の太線で示されている。X線出射器10から放射状に出射されるX線の強度分布は、おおよそ中心線部分をピークにしたガウシアン分布に近い形になる。このようになる理由は、X線はX線出射器10の出射口の窓を通過して出射されるが、出射口の窓内の通過距離がX線の出射方向により異なるためである。具体的に説明すると、図5はX線出射器10の出射口付近を示した図であるが、図5に示すようにX線はクロム等のターゲット10aに電子線が照射されることで発生し、出射口の窓10bを通過して出射される。出射口の窓10bには通常X線の透過率が高いベリリウムが用いられるが、X線はベリリウムを通過してもある程度減衰する。そして、減衰率はX線のベリリウム内の通過距離が大きいほど大きくなる。すなわち、図5に示すように、窓10bの中心付近を通過して出射したX線は窓内の通過距離Tが小さく、通過後のX線の強度は大きい。これに対し、窓10bの中心から外側を通過して出射したX線は窓内の通過距離Tが大きく、通過後のX線の強度は小さい。そして通過距離Tは窓10bの中心から外側へいくほど大きくなる。このため、X線出射器10から放射状に出射されるX線の強度分布は、図4に示すように中心線部分をピークにしたガウシアン分布に近い形になる。
放射状に出射されるX線の強度がガウシアン分布に近い形をしているため、(a)のようにモータ27の中心軸(貫通孔27a1の中心軸)がX線出射器10の中心軸(放射状に出射されるX線の中心線)と合致するときは、貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18a(以下、貫通孔28a−18aという)を通過することで平行となったX線の強度分布は、中心部分をピークにしたガウシアン分布になる。そして、このX線により発生する回折X線を受光した箇所のX線の強度分布も中心部分をピークにしたガウシアン分布になる。これに対し、(b)のようにモータ27の中心軸がX線出射器10の中心軸とある角度を成しているときは、貫通孔28a−18aを通過することで平行となったX線の強度分布は、ピーク位置が偏った強度分布になる。これは、X線出射器10の中心軸から外側ほどX線の強度が小さいため、平行となったX線の強度はX線出射器10の中心軸に近い方が大きくなるためである。そして、このX線により発生する回折X線を受光した箇所のX線の強度分布も偏った強度分布になる。別の表現をすると、(a)のようにモータ27の中心軸(貫通孔28a−18aの中心軸)がX線出射器10の中心軸と合致するときは、X線出射点においてX線の強度分布の重心位置はX線の光軸(モータ27の中心軸)と一致するが、(b)のようにモータ27の中心軸がX線出射器10の中心軸とある角度を成しているときは、X線出射点においてX線の強度分布の重心位置はX線の光軸(モータ27の中心軸)からずれる。そしてこのずれは、モータ27の中心軸がX線出射器10の中心軸と成す角度が大きくなるほど大きくなる。
回折環の形状から残留応力を求めるとき、X線の光軸がイメージングプレート15と交差する点(X線出射点の中心)を中心にして、回折環の回転角度ごとの半径値を求めて計算を行うが、X線出射点におけるX線の強度分布の重心位置がずれると、このずれが残留応力の計算結果に影響する。図6は、X線出射点の位置を×で示し、図5の(a)と(b)の場合で撮像される回折環の位置(回折環の半径方向のピーク点を結んだ線)を実線と点線で誇張して示した図である。図5(a)のように、X線出射点及び回折X線の受光点におけるX線の強度分布がガウシアン分布に近い形になるとき、測定対象物OBが無応力(残留応力0)である場合は、図6に実線で示す撮像された回折環の中心位置はX線出射点である×の点と一致する。これに対し、図5(b)のように、X線出射点及び回折X線の受光点におけるX線の強度分布が偏った強度分布になるとき、測定対象物OBが無応力である場合は、図6に点線で示す撮像された回折環の中心位置である●の点は、X線出射点である×の点からずれる。このずれがあるまま残留応力の計算を行うと、測定対象物OBが無応力でも残留応力の計算結果は、このずれに相当するある値を示すことになる。すなわち、回折環撮像装置1で撮像した回折環を読み取るのみでは、精度よく回折環の形状に基づいて残留応力を計算することができない。
精度よく回折環の形状に基づいて残留応力を計算するには、測定対象物OBが無応力である場合の回折環の中心位置である●の点を求め、この点をX線出射点の中心にして、回折環の形状から残留応力を計算する必要がある。上述したように、X線出射点におけるX線の強度分布の重心位置のX線の光軸からのずれは、モータ27の中心軸がX線出射器10の中心軸と成す角度により変化するので、X線出射点である×の点と無応力の回折環の中心位置である●の点のずれは、モータ27の中心軸がX線出射器10の中心軸と成す角度により変化する。このため、後述する回折環読取装置2は、回折環撮像装置本体5のイメージングプレート15に撮像された回折環を読み取ることに加え、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの回折環を撮像したときと同じ状態にしたまま、無応力の試料による回折環を撮像し、撮像された回折環を読み取る機能を有する。また、X線出射点である×の点と無応力の回折環の中心位置である●の点のずれは、X線照射点からイメージングプレート15までの距離(以下、照射点−IP間距離という)により多少変化する可能性があるので、照射点−IP間距離が測定対象物OBの回折環を撮像したときと同じ距離になるよう、回折環撮像装置本体5に対する無応力の試料の位置を調整する機能を有する。
次に、回折環撮像装置1で撮像した回折環を読み取る回折環読取装置2について説明する。回折環読取装置2の構成は図7に示されるものであり、回折環撮像装置本体5をセットしてイメージングプレート15に撮像された回折環を読み取るものである。さらに、無応力の試料である標準試料Stの回折環撮像装置本体5に対する位置を制御し、回折環撮像装置本体5をセットしたまま回折環撮像装置本体5からX線を標準試料Stに照射させ、イメージングプレート15に標準試料Stによる回折環を撮像するものである。
回折環読取装置2は、先行技術文献である特許文献1に示されるX線回折測定装置における回折環読取り機能を備えた装置であり、回折環読取りの方式は特許文献1に示されるX線回折測定装置と同じである。すなわち、集光したレーザ光を照射するとともに、イメージングプレート15を回転させながらレーザ光の照射点をイメージングプレート15の半径方向に送り、反射光強度を回転角度及び半径位置とともに検出することで回折X線の強度分布を取得する方式である。なお、本実施形態ではコンピュータ装置90は回折環撮像装置1のものがそのまま使用されるようになっているが、別のコンピュータ装置90であっても問題はない。
基台26上には支持機構45が固定されており、支持機構45の側面には固定用ブロック46が固定されている。そして、固定用ブロック46の側面には2つの固定棒47が固定されており、この2つの固定棒47を、上述したモータ固定プレート13の2つの貫通孔13bにモータ固定プレート13の角が固定用ブロック46の側面に当たるまで挿入することで、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2に決められた位置でセットすることができる。2つの固定棒47の位置は、回折環撮像装置本体5をセットしたとき、後述するレーザ検出装置30から出射するレーザ光の集光位置が、イメージングプレート15の表面に略合致する位置である。回折環撮像装置本体5におけるモータ固定プレート13に対するホルダ7の向きがどのようになっていても、モータ固定プレート13、モータ27及びテーブル16は決められた位置で支持機構45にセットされる。よって、モータ27の中心軸とX線出射器10の中心軸とが成す角度を、回折環を撮像したときの角度にしたまま、回折環撮像装置本体5を支持機構45にセットすることができる。
ステージ移動機構20は、基台26の上で移動する移動ステージ21を備えている。移動ステージ21は、移動ステージ21の移動方向に向かって基台26の両側で対向する板状のガイド(図7では省略)により挟まれており、固定ブロック25に固定されたフィードモータ22が回転し、スクリューロッド23及び軸受部24が回転すると、図7の横方向に移動する。この方向は回折環撮像装置本体5が固定棒47にセットされた場合、イメージングプレート15の半径方向である。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれており、エンコーダ22aはフィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動する。回折環読取装置2への電源投入直後において、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ21をフィードモータ22側へ移動させるようフィードモータ22に駆動信号を出力し、位置検出回路72は、移動ステージ21が移動限界位置に達して、エンコーダ22aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ21の原点位置となり、位置検出回路72は、以後、移動ステージ21が移動するごとにエンコーダ22aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離xを位置信号として出力する。フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動位置を入力すると、位置検出回路72から入力する位置信号が入力した移動位置に等しくなるまで、フィードモータ22を正転又は逆転駆動する。また、フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動方向と移動速度を入力すると、エンコーダ22aから入力したパルス列信号の単位時間当たりのパルス数が、入力した移動速度に相当する単位時間当たりのパルス数になるようにフィードモータ22に駆動信号を出力する。
コントローラ91には、移動ステージ21が移動限界位置に達したときの、すなわち移動距離xが0のときにおける、後述するレーザ検出装置30から照射されるレーザ光の照射位置のモータ27の中心軸(貫通孔28a−18aの中心軸であり、出射X線の光軸)からの距離r0が記憶されている。そして、コントローラ91は、距離r0から入力した移動距離xを減算することで、レーザ光の照射半径位置rを取得することができる。
レーザ検出装置30は移動ステージ21上に固定され、回折環を撮像したイメージングプレート15に集光したレーザ光を照射し、イメージングプレート15が発光した光の強度を検出するものである。レーザ検出装置30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、反射鏡33、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36等を備えた光ヘッドであり、光ディスクの記録再生に用いられるものと同様の構成である。
レーザ駆動回路77は、コントローラ91から指令が入力すると、フォトディテクタ42から入力する信号の強度が所定の強度になるようレーザ光源31に駆動信号を出力し。レーザ光源31からは一定強度のレーザ光が出射される。フォトディテクタ42は後述するダイクロイックミラー34で微量が反射し、集光レンズ41を介して受光したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力するが、ダイクロイックミラー34での反射の割合は一定であるので、出射したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力すると見なせる。コリメートレンズ32はレーザ光を平行光にし、反射鏡33はレーザ光を、ダイクロイックミラー34に向けて反射し、ダイクロイックミラー34は、入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ36は、レーザ光をイメージングプレート15の表面に集光させる。対物レンズ36には、フォーカスアクチュエータ37が組み付けられており。後述するフォーカスサーボにより、イメージングプレート15の厚さが設定値より変化していても、また、表面が完全な平坦でなくても、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
集光されたレーザ光が、イメージングプレート15の回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じ、回折環撮像時における回折X線の強度に応じた光が発生する。この輝尽発光により発生した光はレーザ光の波長よりも波長が短く、レーザ光の反射光と共に対物レンズ36を通過するが、ダイクロイックミラー34にて大部分が反射し、レーザ光の反射光は大部分が透過する。ダイクロイックミラー34で反射した光は、集光レンズ38、シリンドリカルレンズ39を介してフォトディテクタ40に入射する。フォトディテクタ40は、4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子からなり、4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅回路78に出力する。なお、シリンドリカルレンズ39は非点収差を生じさせるためにある。
増幅回路78は、入力した4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅してフォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。フォーカスエラー信号生成回路79は、非点収差法におけるフォーカスエラー信号を生成してフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により指令が入力すると作動開始し、入力したフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、入力したフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ37を駆動して、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に変位させ、これにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
SUM信号生成回路80は、入力した4つの受光信号を合算してSUM信号を生成し、A/D変換器83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート15にて反射し、ダイクロイックミラー34で反射した微量のレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート15にて反射するレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、撮像された回折環における回折X線の強度に相当する。A/D変換器83は、コントローラ91から指令が入力すると、入力するSUM信号の瞬時値を設定された時間間隔でデジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
また、対物レンズ36に隣接して、LED光源43が設けられている。LED光源43は、LED駆動回路84から駆動信号が入力すると、可視光を発して、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91から指令を入力すると、LED光源43に所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を出力する。
モータ制御回路74からは、回折環撮像装置本体5のモータ27に駆動電源を供給するためのケーブルが出ており、このケーブルの先端は、モータ27から出ている駆動電源供給のためのケーブルの先端にあるコネクタに迎合するコネクタになっている。また、モータ制御回路74と回転角度検出回路75からは、モータ27内のエンコーダ27cが供給するパルス列信号を入力するためのケーブルが出ており、このケーブルの先端は、モータ27から出ているパルス列信号供給のためのケーブルの先端にあるコネクタに迎合するコネクタになっている。よって、回折環撮像装置本体5を固定棒47にセットした後、モータ27から出ているケーブルと、モータ制御回路74及び回転角度検出回路75から出ているケーブルとをコネクタにより接続すれば、モータ制御回路74からモータ27に駆動電力を供給することができるとともに、モータ27内のエンコーダ27cが出力するパルス列信号を、モータ制御回路74と回転角度検出回路75に入力させることができる。
モータ27から出ているケーブルをモータ制御回路74及び回転角度検出回路75から出ているケーブルに接続すれば、モータ27内のエンコーダ27cは、モータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、モータ制御回路74と回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、モータ27が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、回転角度検出回路75に出力する。なお、回転角度検出回路75にはモータ27内のエンコーダ27cのインデックス信号を直接コントローラ91に出力する信号線があり、インデックス信号はコントローラ91にも出力される。
モータ制御回路74は、コントローラ91から回転速度を入力すると、エンコーダ27cから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数が、入力した回転速度に相当する単位時間当たりのパルス数になるように、駆動信号をモータ27に出力する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から回転角度θpを計算してコントローラ91に出力する。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cからインデックス信号を入力すると、カウント値をリセットして「0」にする。これが回転角度0°の位置である。なお、イメージングプレート15の回転角度0°の位置とは、インデックス信号を入力した時点で後述するレーザ検出装置30からレーザ光が照射されている位置である。この位置はイメージングプレート15の各半径位置ごとにあるためラインである。
基台26上には標準試料Stを図7の横方向と高さ方向に移動させる標準試料移動機構150が備えられている。標準試料移動機構150は、図7の紙面垂直方向の奥側にあり、標準試料Stが固定されたブロック160は図7の紙面垂直方向に長尺状のものであり、ブロック160の図7の横方向位置が適切な位置にあるとき、標準試料Stの中心が、セットされた回折環撮像装置本体5のモータ27の中心軸と交差するようになっている。また、標準試料移動機構150によりブロック160を図7の右側にある駆動限界位置付近まで移動させれば、移動ステージ21を移動させても、レーザ検出装置30はブロック160に当たらないようになっている。
標準試料移動機構150は、基台26の上で移動する移動ステージ154を備えている。移動ステージ154は、移動ステージ154の移動方向に向かって基台26の両側で対向する板状のガイド(図7では省略)により挟まれており、固定ブロック156に固定されたY軸方向モータ155が回転し、スクリューロッド157及び軸受部158が回転すると、図7の横方向に移動する。この方向は移動ステージ21の移動方向と同じである。Y軸方向モータ155内には、エンコーダ155aが組み込まれており、エンコーダ155aはY軸方向モータ155が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路164及びY軸方向モータ制御回路165へ出力する。
位置検出回路164及びY軸方向モータ制御回路165は、コントローラ91からの指令により作動する。回折環読取装置2への電源投入直後において、Y軸方向モータ制御回路165は、移動ステージ154をY軸方向モータ155側へ移動させるようY軸方向モータ155に駆動信号を出力し、位置検出回路164は、移動ステージ154が移動限界位置に達して、エンコーダ155aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をY軸方向モータ制御回路165に出力し、カウント値を「0」に設定する。Y軸方向モータ制御回路165は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ154の原点位置となり、位置検出回路164は、以後、移動ステージ154が移動するごとにエンコーダ155aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離を位置信号として出力する。Y軸方向モータ制御回路165は、コントローラ91から移動ステージ154の移動位置が入力されると、位置検出回路164から入力する位置信号が入力した移動位置に等しくなるまで、Y軸方向モータ155を正転又は逆転駆動する。
標準試料移動機構150は、移動ステージ154上で図7の上下方向に移動する移動ステージ153の移動機構を備えている。移動ステージ153は、直方体状の枠体151に形成された直方体状の穴に迎合しており、枠体151の上側に固定されたZ軸方向モータ152が回転し、スクリューロッド159及び軸受部(図7では省略)が回転すると、図7の上下方向に移動する。この方向はセットされた回折環撮像装置本体5のモータ27の中心軸方向と同じである。Z軸方向モータ152内には、エンコーダ152aが組み込まれており、エンコーダ152aはZ軸方向モータ152が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路162及びZ軸方向モータ制御回路163へ出力する。
位置検出回路162及びZ軸方向モータ制御回路163は、コントローラ91からの指令により作動する。回折環読取装置2への電源投入直後において、Z軸方向モータ制御回路163は、移動ステージ153をZ軸方向モータ152側へ移動させるようZ軸方向モータ152に駆動信号を出力し、位置検出回路162は、移動ステージ153が移動限界位置に達して、エンコーダ152aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をZ軸方向モータ制御回路163に出力し、カウント値を「0」に設定する。Z軸方向モータ制御回路163は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ153の原点位置となり、位置検出回路162は、以後、移動ステージ153が移動するごとにエンコーダ152aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離を位置信号として出力する。Z軸方向モータ制御回路163は、コントローラ91から移動ステージ153の移動位置を入力すると、位置検出回路162から入力する位置信号が入力した移動位置に等しくなるまで、Z軸方向モータ152を正転又は逆転駆動する。
移動ステージ153には、図7の紙面垂直方向に長尺状の直方体であるブロック160が固定されており、ブロック160の先端付近には標準試料Stが固定されている。標準試料Stは測定対象物と同じ材質の金属粉末であり、無応力の試料とするものである。本実施形態では測定対象物OBが鉄管であるので標準試料Stは鉄の粉末である。ブロック160の先端にはブロック160に対して着脱可能なブロックがあり、このブロックには穴が開けられていて標準試料Stである金属粉末がこの穴内に入れられて透明なシートでシールされている。標準試料Stは測定対象物OBの材質により変更する必要があるため、着脱可能なブロックは金属粉末を異ならせたものが複数用意されており、測定対象物OBの材質に合う金属粉末が入れられた着脱可能なブロックをブロック160の先端に装着するようにする。
上述した標準試料移動機構150により、移動ステージ154及び移動ステージ153を移動させると、ブロック160の先端付近にある標準試料Stは図7の横方向と上下方向に移動する。そして、コントローラ91には標準試料Stの中心をモータ27の中心軸(出射X線の光軸)が通るときのステージ154の移動位置が記憶されており、コントローラ91からこの移動位置がY軸方向モータ制御回路165に出力されると、上述したY軸方向モータ制御回路165の作動により、標準試料Stの中心をモータ27の中心軸(出射X線の光軸)が通るようになる。また、コントローラ91には、標準試料Stの中心をモータ27の中心軸が通り、移動ステージ153が駆動限界位置にあるときの、照射点−IP間距離D0が記憶されている。そして、照射点−IP間距離をある値D1に設定することが定まると、(D1−D0)で計算される移動位置を、Z軸方向モータ制御回路163に出力する。これにより、上述したZ軸方向モータ制御回路163の作動により、標準試料Stに出射X線が照射されたときの照射点−IP間距離はD1に定まる。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶されたプログラムを実行して各回路に指令を出力し、回折環を読み取るための作動、標準試料Stを設定した位置にするための作動、回折環を撮像するための作動、及び残留応力を算出するための演算処理等を行う。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により各種パラメータ、作動指令などが入力されるために使用される。また、表示装置93は、コントローラ91に接続されて、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせるために使用される。作業者は、回折環撮像装置本体5を固定棒47にセットし、モータ27から出ているケーブルを回折環読取装置2から出ているケーブルとコネクタにより接続し、コンピュータ装置90が回折環撮像のときのコンピュータ装置90と別のものであるときは、高電圧電源6へ指令を出力するためのケーブルを接続する。その後、入力装置92から指令を入力すると、コントローラ91は図8に示すフローのプログラムをスタートさせ、上述した作動及び処理を行う。この作動及び処理のためコントローラ91の記憶装置には、上述した標準試料Stに出射X線が照射されるためのステージ154の移動位置、照射点−IP間距離D0及び残留応力の計算に必要な諸定数等、必要な数値が予め記憶されている。このコントローラ91の作動及び処理は、後述する回折環撮像装置1及び回折環読取装置2を用いたX線回折測定方法にて詳細に説明する。
次に、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBである鉄管内部の中心軸部分に位置させるための治具3について説明する。回折環撮像装置本体5から出ているものは、高電圧電源6に接続されるケーブル9のみであり、ケーブル9を持って測定対象物OBの内部に回折環撮像装置本体5を入れると、回折環撮像装置本体5の位置が安定せず、また、安全上好ましくない。よって、回折環撮像装置本体5を図9に示される治具3に取り付け、測定対象物OBの内部に入れるようにする。
図9に示されるように、治具3には回折環撮像装置本体5を取り付けるための取付リング68,69がある。取付リング68,69は薄いステンレス等の金属でできた輪状のものであり、力をかけると容易に輪を押し広げることができ、復元力があるため力がかからなくなると、元に戻るものである。よって、回折環撮像装置本体5のホルダ7を取付リング68,69に押し付けると、輪が広がって輪内にホルダ7が入り、その後、輪が元に戻ろうとしてホルダ7を締めつける。これにより、回折環撮像装置本体5は治具3に固定される。そして、取付リング68,69は後述する伸縮パイプ51の中心軸方向と方向は同一で該中心軸方向の垂直方向に位置を異ならせた長尺棒67に固定されており、回折環撮像装置本体5のホルダ7を固定したとき、ホルダ7の中心軸は後述する伸縮パイプ51の中心軸と略一致するようになっている。よって、後述する伸縮パイプ51の中心軸を治具3の中心軸とみなすことができる。
治具3には取っ手70が備えられており、作業者はこの取っ手70を持って治具3に取り付けた回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に入れることができる。取っ手70の中心部分には取っ手70の長尺方向の略垂直方向に伸縮パイプ51が取り付けられている。伸縮パイプ51は伸縮するポインターペンのように、径の大きなパイプに径の小さなパイプを入出させることで全体の長さを変化させることができる。よって、測定対象物OBの内部の測定箇所にX線が照射される適切な長さに伸縮パイプ51の長さを調整し、回折環撮像装置本体5を取り付けた治具3を測定対象物OBの中に挿入することができる。また、測定対象物OBの内部の中心軸が鉛直方向にある場合は、治具3を挿入する測定対象物OBの入口に取っ手70がかかって止まったとき、測定箇所にX線が照射される適切な長さに伸縮パイプ51の長さを調整すればよい。
また、治具3には伸縮パイプ51の先端部分に、治具3の中心軸(伸縮パイプ51の中心軸)の垂直方向に90度の間隔で4つの押し当て部50が設けられている。4つの押し当て部50はそれぞれの伸縮棒53が伸びて先端のローラー58が測定対象物OBの内部の壁を、治具3の中心軸の垂直方向に90度の間隔で押すことで、治具3を測定対象物OBの内部で固定させることができる。このとき、後述するように押す力は4方向とも同じ力になろうとして伸縮棒53の伸長する長さは等しくなるので、測定対象物OBが管状物体である場合、測定対象物OB内部の中心軸と治具3の中心軸、すなわち、回折環撮像装置本体5のホルダ7の中心軸とを略一致させて、治具3を測定対象物OBの内部で固定させることができる。
押し当て部50の構造を示したものが、図10の部分断面図である。伸縮パイプ51の先端は立方体状の固定用ブロック66に固定されており、この固定用ブロック66の4つの側面に長尺の直方体状の収納部52が取り付けられている。収納部52は内部が長尺の直方体状の空洞になっており、伸縮棒53が中に収まっている。収納部52の先端には伸縮棒53の径よりやや大きい径の孔52aがあり、伸縮棒53はこの孔52aから治具3の中心軸の垂直方向に出ている。伸縮棒53の先端には、前方に開口があり内部が空洞になっている直方体状のカバー57が取り付けられており、カバー57の空洞にはローラー58が入っていて前方の開口から外に出ている。ローラー58はカバー57の側面に取り付けられている回転軸59周りに回転可能になっている。
伸縮棒53は円筒状の形状であり、先端部を除いて内部にも円筒状の空洞53aがあり、この空洞53aの中に先端が固定用ブロック66に固定されたガイド棒54が入っている。伸縮棒53は内部にガイド棒54を入れた状態で移動可能であり、ガイド棒54の中心軸は収納部52の中心軸であるので、伸縮棒53は収納部52の中心軸方向に移動可能になっている。伸縮棒53の固定用ブロック66側の先端は空洞53aと同じ径の孔が開けられた正方形状板55が固定されており、正方形状板55と固定用ブロック66との間にはバネ56がある。バネ56は完全に伸びた状態では、収納部52の中心軸方向の長さよりも長くなるものであり、バネ56が伸びたときローラー58が物体に当たらなければ、伸縮棒53は正方形状板55が孔52aがある箇所の収納部52の内壁に当たるまで伸びる。しかし、ローラー58の先に物体があれば、バネ56の力により伸縮棒53は該物体を押すことになる。
治具3を測定対象物OBの内部に挿入する前までは、図10に示すようにストッパ64が正方形状板55を押さえているため、バネ56は縮まった状態にあり、伸縮棒53はいずれも収納部52から外側にあまり出ていない。ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所は、上方向に移動させるには作業者が力を加える必要があるため、バネ56が伸びようとするのを止めている。作業者が力を加えてストッパ64の正方形状板55と接触している箇所を図10の上方向に移動させたとき、バネ56が伸びて伸縮棒53が伸びる。図10に示すように、ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所の反対側の先端は伸縮パイプ51に通され固定用ブロック66近傍にある移動リング62の上面に固定されており、移動リング62の下面と固定用ブロック66及び固定用ブロック66の近傍の収納部52の上面との間には、バネ65がある。バネ65は縮まった状態であるため伸びようとする力を移動リング62に及ぼしているが、移動リング62の上にある円柱状ボタン60が、伸縮パイプ51に固定された固定リング61によりそれより上に移動しなくされているため、バネ65は常に移動リング62を上側に押している。円柱状ボタン60は円柱状で伸縮パイプ51を通すための貫通孔が中心軸周りに開けられたものである。ストッパ64の中間部分は収納部52の上面に固定された円柱状の突起63に嵌め込まれており、ストッパ64は図10の紙面垂直方向周りに微小角度だけ回転可能になっている。しかし、バネ65は常に移動リング62を上側に押しているため、移動リング62の上面に取り付けられたストッパ64の端もバネ65により常に上側に押されている。よって、ストッパ64を図10の紙面垂直方向右回りに回転させる、すなわちストッパ64の正方形状板55と接触している箇所を上方向に移動させるには力を加える必要がある。
円柱状ボタン60をバネ65が押す力より大きな力で下方向に移動させると、移動リング62も下方向に移動し、ストッパ64は突起63を回転軸にして図10の紙面垂直方向右回りに回転し、ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所が上方向に移動して、バネ56が伸びて伸縮棒53が伸びる。すなわち、作業者が円柱状ボタン60を一瞬だけ下方向に移動させれば伸縮棒53が伸びる。そして、円柱状ボタン60が元の位置に戻り、ストッパ64が元の状態に戻っても、伸縮棒53は伸びたままである。4つの収納部52にあるバネ56はいずれも同じ仕様であり、長さと押す力の関係はすべて同じである。そして、治具3を測定対象物OBの内部に挿入した後、円柱状ボタン60を下方向に移動させ4つの伸縮棒53を伸ばすと、4つのローラー58が測定対象物OBの内壁に当たり、測定対象物OBの内壁を4方向に押す。このとき、対称となる伸縮棒53の押す力が異なると、力の弱い方の伸縮棒53は押されて縮むため、対称となる伸縮棒53の押す力は等しくなる。すなわち、治具3の中心軸に対して対称位置にあるバネ56は長さが等しくなり、対称となる伸縮棒53の長さは等しくなる。また、治具3の中心軸が測定対象物OB内部の中心軸に対して傾いた状態で伸縮棒53を伸長させると、治具3の中心軸に対して対称位置にあるローラー58が、測定対象物OBの壁に当たる箇所は伸縮棒53の中心軸からずれ、ずれる方向は逆になる。よって、測定対象物OBから伸縮棒53にかかる力は1つのライン上にないため、治具3の中心軸に対して対称位置にある押し当て部50は、回転して測定対象物OBから伸縮棒53にかかる力が伸縮棒53の中心軸上になるとする。このため、治具3を測定対象物OBの中心軸方向に移動させると、治具3の中心軸と測定対象物OBの中心軸は一致するようになる。よって、上述したように、測定対象物OBが管状物体である場合、測定対象物OBの内部の中心軸と治具3の中心軸とを略一致させて、治具3を測定対象物OBの内部で固定させることができる。
円柱状ボタン60を一瞬だけ下方向に移動させて4つの伸縮棒53を伸ばし、4つのローラー58が測定対象物OBの内壁を押しても、伸縮パイプ51の中心軸方向に力を加えれば4つのローラー58は回転し、治具3の中心軸を測定対象物OBの内部の中心軸と合わせたまま、治具3を該中心軸方向に移動させることができる。よって、作業者は、X線を測定箇所に照射できるよう伸縮パイプ51を適切な長さにし、押し当て部50が測定対象物OBの内部に入るまで治具3を測定対象物OBの内部に挿入し、円柱状ボタン60を下方向に移動させて4つのローラー58を測定対象物OBの内壁に押し当て、取っ手70を持って治具3を適切な位置まで移動させればよい。
治具3を測定対象物OBの内部から外に出すと、伸縮棒53は押すものがなくなるため最大限まで伸びる。この伸縮棒53を縮んだ状態に戻すときは、カバー57を持ってバネ56の伸びようとする力より大きな力で伸縮棒53を収納部52の中に押し込めばよい。押していくと正方形状板55はストッパ64に当たるが、図10に示すようにストッパ64の正方形状板55と接触している箇所は、図10の左側が円柱の側面の形状になっているため、力を入れるとバネ65が移動リング62を押す力に勝り、ストッパ64は図10の紙面垂直方向右周りに微小回転し、ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所は上方向に移動する。これにより、正方形状板55はストッパ64を通り抜け、その後直ぐにストッパ64はバネ65の力により図10の紙面垂直方向左周りに微小回転するため、図10に示すようにストッパ64が正方形状板55にかかり、伸縮棒53は縮んだ状態のままになる。他の伸縮棒53を同様に収納部52に押し込むと、その収納部52にあるストッパ64が図10の紙面垂直方向右周りに微小回転するが、バネ65が縮むのは全体ではないので、既に縮んだ状態にある別の伸縮棒53はストッパ64が正方形状板55にかかったままであり、伸びることはない。4つの伸縮棒53をすべて収納部52の中に押し込むと治具3は元の状態に戻るため、次の測定対象物OBの内部への挿入が可能になる。
なお、治具3は、収納部52の治具3の中心軸の垂直方向における長さを異ならせ、伸縮棒53の長さを異ならせたものが複数用意されている。よって、複数の治具3の中から、測定対象物OBの内部に挿入でき、伸縮棒53を伸長させたとき、先端のローラー58を測定対象物OBの内部の壁に押し当てることができる治具3を選択して使用する。
次に、上記のように構成した回折環撮像装置1、回折環読取装置2及び治具3を用いて、測定対象物OBである鉄管の内部のX線回折測定を行う具体的方法について説明する。このX線回折測定は、配置工程、回折環撮像工程、回折環読取り工程及び計算工程からなる。まず、配置工程において、作業者は治具3の取付リング68,69に回折環撮像装置本体5を取りつけ、測定対象物OBの内部の測定箇所により回折環撮像装置本体5のモータ27の中心軸のX線出射器10の中心軸(ホルダ7の中心軸)に対する角度を適切な角度にする。測定箇所が測定対象物OBの内部の側面であるときは、図1に示すようにモータ27の中心軸を大きめの適切な角度にし、測定箇所が測定対象物OBの内部の底面であるときは、モータ27の中心軸を小さめの適切な角度にする。
次に、押し当て部50が測定対象物OBの内部へ入ったとき、円柱状ボタン60を下方向に移動させて、伸縮棒53を測定対象物OBの内部の側面に押し当てる。このとき、測定対象物OBの内部の中心軸とホルダ7の中心軸(治具3の中心軸)は略一致する。次に、治具3の取っ手70を持って治具3を測定対象物OBの内部の中心軸方向に押し、治具3を測定対象物OBの内部へ入れていき、回折環撮像装置本体5の位置がX線出射時にX線が測定箇所に照射される位置になったとき、治具3の挿入をやめる。このとき、治具3の取っ手70は測定対象物OBへの挿入部分の入口近傍にあるので、挿入方向が鉛直方向であれば取っ手70を該入口の周囲の面にかけるようにする。又は該入口の周囲の面に適切な厚さのスペーサを入れ、取っ手70を該スペーサにかけるようにする。また、挿入方向が水平方向であれば、取っ手70の近傍の伸縮パイプ51と該入口近傍における測定対象物OBの内部の側面との間に適切な厚さのガイド用物体を入れ、伸縮パイプ51を該ガイド用物体にかけるようにする。
次に回折環撮像工程において、コンピュータ装置90の入力装置92からX線出射の指令を入力する。これにより、コントローラ91は、高電圧電源6に指令を出力し、高電圧電源6はX線出射器10にX線を出射するための電力を供給し、X線出射器10から放射状のX線が出射される。出射されたX線は貫通孔28a−18aを通過することで略平行なX線となり、測定箇所に照射される。そして、測定箇所で発生した回折X線によりイメージングプレート15には、回折環が撮像されていく。コントローラ91は、高電圧電源6に指令を出力したタイミングで時間計測を開始し、予め設定された時間が経過すると、高電圧電源6に停止指令を出力する。これにより、高電圧電源6からX線出射器10への電力供給は停止し、イメージングプレート15には、設定された時間だけX線が照射されたときの回折環が撮像される。
次に回折環読取り工程において、作業者は治具3を測定対象物OBの内部から取り出し、モータ27の中心軸のX線出射器10の中心軸(ホルダ7の中心軸)に対する角度が変化しないように、回折環撮像装置本体5を治具3から取り外す。そして、モータ27の中心軸の角度が変化しないように、回折環撮像装置本体5のモータ固定プレート13の貫通孔13bに回折環読取装置2の固定棒47を挿入させて、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2のにセットする。このとき、移動ステージ21は、図7に示すように駆動限界位置付近まで移動されており、また、移動ステージ154は図7の右側の駆動限界位置まで移動されており、レーザ検出装置30やブロック160が邪魔にならずに回折環撮像装置本体5をセットすることができる。次に、作業者はモータ27から出ているケーブルを回折環読取装置2から出ているケーブルとコネクタにより接続し、コンピュータ装置90を回折環撮像装置1のコンピュータ装置90と別のものにしているときは、コントローラ91から高電圧電源6に指令を出力するためのケーブルを接続する。そして、入力装置92からテーブル16(イメージングプレート15)の半径値及び測定対象物OBの材質(本実施形態では鉄)を入力したうえで、読取り開始の指令を入力する。これによりコントローラ91は図8に示すフローのプログラムをステップS1にてスタートさせる。以下、図8に示すフローに沿って説明する。
まず、コントローラ91はステップS2にて、イメージングプレート15に撮像されている回折環を読み取る操作を行う。具体的には、最初に、フィードモータ制御回路73に指令を出力して、移動ステージ21を図7の右側の予め設定された位置まで移動させ、図7において出射X線の光軸(イメージングプレート15の中心)よりやや左側の位置付近に、レーザ検出装置30からのレーザ光が照射されるようにする。
次に、コントローラ91は、モータ制御回路74に指令を出力してモータ27を所定の回転速度で回転させ、レーザ駆動回路77に指令を出力してレーザ検出装置30からレーザ光をイメージングプレート15に照射させ、フォーカスサーボ回路81に指令を出力してフォーカスサーボを開始させる。そして、回転角度検出回路75に指令を出力して、モータ27(イメージングプレート15)の回転角度θpの出力を開始させ、A/D変換器83に指令を出力して、SUM信号の瞬時値Iのデータ出力を開始させ、フィードモータ制御回路73に移動速度と移動指令を出力してフィードモータ22を回転させ、イメージングプレート15に照射されているレーザ光を図7の左方向へ一定速度で移動させることを開始する。これにより、レーザ光の照射位置は、相対的にイメージングプレート15上を螺旋状に回転し始める。その後、コントローラ91は、イメージングプレート15が所定の小さな角度だけ回転するごとに、A/D変換器83が出力するSUM信号の瞬時値Iのデータと、回転角度検出回路75が出力する回転角度θpのデータと、位置検出回路72が出力する移動距離xのデータとを入力し、それぞれのデータを対応させて記憶する。なお、移動距離xは上述したようにレーザ光照射位置の半径値rに変換したうえで記憶する。これにより、螺旋状に回転するレーザ光の照射位置ごとに、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータが順次記憶されていく。
SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータの所定回転角度ごとの記憶動作と並行して、コントローラ91は、回転角度θpごとに半径値rに対するSUM信号の瞬時値Iの曲線を作成し、曲線のピークに対応した半径値rαとSUM信号強度値Iαを記憶する。これは回折環の回転角度αごとに半径方向における回折X線の強度分布を求め、回折X線の強度がピークとなる箇所の半径値rαと回折X線の強度に相当する強度Iαを求める処理である。そして、すべての回転角度θp(回転角度α)において半径値rαと強度Iαを取得し、検出するSUM信号の瞬時値Iが強度Iαに対して充分小さくなった時点で、データの記憶を終了する。これにより、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布が瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群で、及び回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαで検出されたことになる。その後、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、フォーカスサーボを停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換器83と回転角度検出回路75の作動を停止させ、フィードモータ22の作動を停止させる。なおイメージングプレート15の回転は、継続されている。
次にコントローラ91は、ステップS3にて、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する操作を行う。具体的には、最初に移動ステージ21を図7の右側の予め設定された位置まで移動させ、図7において出射X線の光軸(イメージングプレート15の中心)よりやや左側の位置付近にLED光源43からのLED光が照射されるようにする。次に、コントローラ91は、LED駆動回路84に指令を出力してLED光源43からのLED光をイメージングプレート15に照射させ、フィードモータ制御回路73にに移動速度と移動指令を出力してフィードモータ22を回転させ、イメージングプレート15に照射されたLED光を図7の左方向へ一定速度で移動させることを開始する。これにより、LED光がイメージングプレート15上に螺旋状に照射され、撮像された回折環が消去されていく。
コントローラ91にはイメージングプレート15の半径が入力されて記憶されているので、コントローラ91は、位置検出回路72から入力した移動距離xを所定の値r0から減算することで得られるLED光の照射半径値が、イメージングプレート15の半径になったとき、LED駆動回路84に指令を出力してLED光の照射を停止させる。さらに、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73に指令を出力してイメージングプレート15の移動を停止させ、位置検出回路72に指令を出力して作動を停止させ、モータ制御回路74に指令を出力してモータ27(イメージングプレート15)の回転を停止させる。そして、モータ27の回転が停止すると、モータ制御回路74に超低速の回転速度と回転開始の指令を出力し、モータ27を超低速で回転させ、エンコーダ27cからのインデックス信号が入力した時点で回転停止の指令をモータ制御回路74に出力する。これは、この後で行う回折環撮像において、イメージングプレート15の回転状態を一定にするためである。超低速の回転とは、モータ27への駆動信号が停止した時点でモータ27(テーブル16)の回転が停止し、それ以上回転しない回転である。
次にコントローラ91は、ステップS4にて、照射点−IP間距離を計算する。これは、ステップS2にて得られた回転角度αごとの半径値rαを平均して半径値raveを求め、予め記憶されている測定対象物OBの回折角2Θwを用いて、Lm=−rave/tan(2Θw)の式から、距離Lmを計算すればよい。なお、回折角2Θwは測定対象物OBが無応力である場合の値であるので、上記式は測定対象物OBが無応力である場合に成り立つ式である。実際は、測定対象物OBは無応力ではないため、上記式から計算される照射点−IP間距離は、実際の値よりややずれる。ただし、このずれは、後述する残留応力の計算値には殆ど影響せず、X線回折測定の精度には殆ど影響しない。
次にコントローラ91は、ステップS5にて、標準試料Stに照射点−IP間距離が距離Lmで回折環撮像装置本体5からのX線が照射されるよう、標準試料Stの横方向位置と高さを調整する。具体的には、Y軸方向モータ制御回路165に、予め記憶されている標準試料Stの中心をモータ27の中心軸(出射X線の光軸)が通るときのステージ154の移動位置を出力し、(Lm−D0)で計算される移動位置をZ軸方向モータ制御回路163に出力する。これにより、Y軸方向モータ155とZ軸方向モータ152が駆動して移動ステージ153,154が移動し、標準試料Stは照射点−IP間距離が距離Lmで回折環撮像装置本体5からのX線が照射される位置になる。
次にコントローラ91は、ステップS6にて、高電圧電源6にX線出射の指令を出力し、出力とともに時間計測を開始して予め記憶されている時間が経過すると高電圧電源6にX線停止の指令を出力する。これによりイメージングプレート15には標準試料Stによる回折環が撮像される。この回折環撮像は、X線が照射される箇所が異なるのみで、測定対象物OBによる回折環を撮像したときと同じ条件である。すなわち、モータ27の中心軸のX線出射器の中心軸に対する角度、照射点−IP間距離、イメージングプレート15の回転状態、X線の強度及びX線の照射時間は、測定対象物OBによる回折環を撮像したときと同じである。よって、測定対象物OBの測定箇所の近傍に回折環撮像装置本体5を配置したときと同じ状態にし、X線が照射される箇所を測定対象物OBから標準試料Stに替えて、同じ条件で回折環を撮像したと見なすことができる。
次にコントローラ91は、ステップS7にて、イメージングプレート15に撮像された回折環を読み取る。具体的には、Y軸方向モータ制御回路165に指令を出力して、移動ステージ154を図7の右側の移動限界位置付近まで移動させた後、ステップ2の操作と同一の操作を行う。これにより、標準試料Stによる回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαで得られる。
次にコントローラ91は、ステップS8にて、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。これは、ステップS3の操作と同一の操作である。なお、ステップS8においても最後に、モータ27を超低速で回転させ、エンコーダ27cからのインデックス信号が入力した時点で回転を停止する。これにより、回折環撮像装置1により測定対象物OBによる回折環を撮像するときは、常にイメージングプレート15の回転状態は一定になる。
次にコントローラ91は、ステップS9にて、ステップS2、ステップS4及びステップS7にて得られた測定対象物OBと標準試料Stによる回折環のデータ及び照射点−IP間距離を用いて測定対象物OBの残留応力を計算する。この計算は以下の(1)〜(7)の手順で行われる。
(1)標準試料Stによる回折環の中心座標計算
上述したように、モータ27の中心軸がX線出射器10の中心軸とある角度を成していると、X線出射点及び回折X線の受光点におけるX線の強度分布が偏った強度分布になり、回折環の中心位置はX線出射点からずれる。よって、残留応力を精度よく求めるためには、無応力における回折環の中心位置を求め、この位置をX線出射点(すなわち原点)にして計算を行う必要がある。標準試料Stによる回折環の中心座標を計算するには、標準試料Stによる回折環の形状データである(α,rα)の円座標を(x,y)の直交座標に変換し、x,y座標ごとに全データを加算してデータ数で除算することにより重心座標(a,b)を求めればよい。これは、回転角度αが等間隔であるため、(x,y)の座標群は回折環の円周方向に等間隔で存在するからである。なお、さらに精度よく中心座標(a,b)を求めたいときは、(x−a)+(y−b)−rave =0の円の式に(x,y)の座標データを代入し、(x−a)+(y−b)−rave の2乗の合計値が最小になる(a,b)を収束計算により求めればよい。
(2)測定対象物OBによる回折環のデータ補正
測定対象物OBによる回折環の形状として(α,rα)の円座標で得られているデータを、原点を中心座標(a,b)にしたデータに補正する。具体的には、(α,rα)の円座標を(x,y)の直交座標に変換し、(x−a,y−b)の補正を行い、この直交座標を円座標に変換する。
(3)標準試料Stによる回折環のデータ補正
標準試料Stによる回折環の形状として(α,rα)の円座標で得られているデータを、(2)と同様の計算を行い、原点を中心座標(a,b)にしたデータに補正する。理論的には無応力である標準試料Stによる回折環は真円になるので、補正した(α,rα)の円座標のrαはすべて同じ値になる。しかし、テーブル16に固定されたイメージングプレート15が完全な平面でない、又はテーブル16に対してイメージングプレート15が傾いている、又はモータ27の中心軸に対するテーブル16の平面が垂直からずれている等の原因により、補正した座標のrαはある程度のばらつきを有する。よって、このばらつきの影響を除去するため、後述する(7)の残留応力の計算において、標準試料Stによる回折環の補正データである(α,rα)を用いる。
(4)測定対象物OBに対するX線の入射角計算
残留応力を計算するには、回折環の形状データである(α,rα)の座標群の他に、回折角等の所定係数、照射点−IP間距離Lm、測定対象物OBに対するX線の入射角ψ、及びX線の光軸とX線の照射点における法線とを含む平面がイメージングプレート15と交差するラインの回折環における回転角度(以下、基準回転角度という)が必要である。この内、X線の入射角ψと基準回転角度はまだ得られていないので、これらの計算を行う。先行技術文献である特許文献1では、X線と光軸が同一の可視の平行光を測定対象物OBに照射し、測定対象物OBの照射点付近をカメラ撮影して照射点及び受光点の撮影画像上の位置を設定位置にすることで、距離Lm、入射角ψを設定値にし、基準回転角度を0度にすることができた。または、照射点及び受光点の撮影画像上の位置から、距離Lm、入射角ψを検出し、基準回転角度を0度にすることができた。しかし、本実施形態では回折環撮像装置本体5はX線と光軸が同一の可視の平行光を照射する機能及びカメラ撮影機能は有していない。照射点−IP間距離LmはステップS4にて、僅かなずれは残留応力の計算値には殆ど影響しないとして、測定対象物OBの回折角2Θwと回折環の平均半径値raveを用いて求めたが、X線の入射角ψ及び基準回転角度は別の方法で取得する。
X線の入射角ψは、測定対象物OBによる回折環のデータである瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを用い、特許第5967491号に示された方法を用いて計算する。この計算は、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化量とX線の入射角ψとには1:1の関係があるため、予めこの関係を記憶しておき、回折環読取りにより得られたデータから回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化量を計算し、得られた変化量を記憶された関係に当てはめてX線の入射角ψを求めるものである。また、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化量の代わりに、回転角度θpに対する半径方向の瞬時値Iの分布に基づく幅(例えば半価幅)の変化量を用いて同様の計算を行ってもよい。これらの変化量とX線の入射角ψとに1:1の関係があることの理論的説明及びX線の入射角ψの具体的計算方法は、特許第5967491号に詳細に説明されているのでそちらを参照する。
(5)基準回転角度計算
基準回転角度は、X線の入射角ψと同様、回折環読取りにより得られたデータである瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを用い、特許第5967491号に示された方法を用いて計算する。この計算は、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化曲線において、ピーク点が基準回転角度の位置、ボトム点が基準回転角度から180°の位置に生じるため、該変化曲線を作成し、ピーク点及びボトム点の回転角度を検出して、基準回転角度を計算するものである。この場合も、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化曲線の代わりに、回転角度θpに対する半径方向の瞬時値Iの分布に基づく幅(例えば半価幅)の変化曲線を用いて同様の計算を行ってもよい。ピーク点及びボトム点が上述した回転角度に生じることの理論的説明及び基準回転角度の具体的計算方法は、特許第5967491号に詳細に説明されているのでそちらを参照する。
(6)回折環の回転角度α補正
cosα法を用いて回折環の形状から残留応力を計算する方法は公知技術であるが、基準回転角度を0にして計算を行うものである。よって、(2)および(3)で得られた測定対象物OB及び標準試料Stによる回折環の形状である(α,rα)の座標群のそれぞれのαから、(5)で計算した基準回転角度Θsを減算し、(α,rα)の座標群を基準回転角度が0のデータにする。
(7)残留応力計算
(6)で得られた測定対象物OBの回折環の形状である(α,rα)の座標群、回折角等の所定係数、照射点−IP間距離Lm、X線の入射角ψを用いて、cosα法による演算により残留応力を計算する。この演算方法は公知技術であり、例えば特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されている。ただし、公知技術の説明は無応力の標準試料Stによる回折環が真円であることを前提にしている。しかし、上述したように実際は、テーブル16に固定されたイメージングプレート15が完全な平面でない、又はテーブル16に対しイメージングプレート15が傾いている、又はモータ27の中心軸に対するテーブル16の平面が垂直からずれている等の原因により、標準試料Stによる回折環の回転角度ごとの半径rαはばらつきを有する。よって、(6)の補正で得られた測定対象物OBによる回折環の(α,rα)座標群と、標準試料Stによる回折環の(α,rα)座標群とを用いて残留応力の計算を行う。以下、2つの座標群の半径rαを区別するため、測定対象物OBによる回折環の半径をrαm、標準試料Stによる回折環の半径をrαsとする。
無応力の場合の回折角2Θと照射点−IP間距離Lmと回折環半径rαsには公知技術が示すように、以下の数1で示す式が成り立つ
(数1)
rαs=−Lm・tan2Θ
回折角2Θは定数であるので標準試料Stによる回折環の回転角度ごとの半径rαsがばらつくのは、回転角度αごとに照射点−IP間距離Lmが変動するためである。よって、回転角度αごとの照射点−IP間距離をLmαとし、数1を変形して成り立つ以下の数2により、回転角度αごとに照射点−IP間距離Lmαを求める。
(数2)
Lmα=−rαs/tan2Θ
そして、測定対象物OBの回転角度αごとの回折角2Θαを、測定対象物OBの場合の数1を変形した以下の数3を用いて計算する。
(数3)
2Θα=tan−1(−rαm/Lmα)
得られた回折角2Θαは、標準試料Stによる回折環の回転角度ごとの半径rαsのばらつきの影響を除去したものと見なすことができる。この後の計算は、回折角2Θαと回折角2Θとを用いたものであるが、この計算は特開2005−241308号公報等の公知技術に示されているのでそちらを参照する。
コントローラ91は計算が終了すると、表示装置93に残留応力の計算結果を表示する。なお、残留応力以外に、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lm、及びX線の入射角ψ等の測定条件を表示するようにしてもよい。また、回折環の形状曲線((α,rα)の座標群から得られる曲線)、回折環の強度分布画像(瞬時値Iを明度に換算し、瞬時値Iに対応する明度、回転角度θp及び半径値rのデータ群から作成される画像)等を表示するようにしてもよい。作業者は結果を見ることで、測定対象物OBの疲労度の評価等を行うことができる。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、自らの中心軸を中心にして放射状にX線を出射するX線出射器10と、X線出射器10から放射状に出射されるX線の出射方向に配置され、X線を通過させる貫通孔28a,27b,27a1が設けられたモータ27と、モータ27と一体となったテーブル16、イメージングプレート15及び固定具18からなる回折環撮像機器であって、貫通孔28a,27b,27a1と中心軸が一致する貫通孔16a,17a,18aを有し、貫通孔16a,17a,18aを通過させてX線が出射され、出射された方向に物体があるとき、物体で発生した回折X線により貫通孔16a,17a,18aと垂直に交差するイメージングプレート15の表面に回折環を撮像する回折環撮像機器と、X線出射器10の中心軸に対する貫通孔28a,27b,27a1の角度を任意の角度に設定可能な連結部12、雄ねじ11等からなる角度変化機構とを備える回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの測定箇所近傍に配置する配置工程と、回折環撮像装置本体5からX線を測定対象物OBに照射して、イメージングプレート15に回折環を撮像する回折環撮像工程と、回折環撮像された回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットし、回折環撮像工程にて撮像された回折環の形状を読み取るコントローラ91が実行するプログラムのフローのステップS2である回折環読取りと、ステップ2にて読み取った回折環の形状から、測定対象物OBのX線照射点からイメージングプレート15までの距離を計算する該プログラムのフローのステップS4である照射点−IP間距離検出と、回折環撮像装置本体5の角度変化機構を回折環撮像工程における状態のままで、X線照射点からイメージングプレート15までの距離がステップS4の照射点−IP間距離検出にて計算された距離になるよう、回折環撮像装置本体5を標準試料Stの近傍に配置する該プログラムのフローのステップS5である標準試料位置、高さ調整と、回折環撮像装置本体5からX線を標準試料Stに照射してイメージングプレート15に回折環を撮像する該プログラムのフローのステップS6である回折環撮像と、ステップS6の回折環撮像にて撮像された回折環の形状を読み取る該プログラムのフローのステップS7である回折環読取りと、ステップS2の回折環読取りにて読み取った回折環の形状と、ステップS7の回折環読取りにて読み取った回折環の形状とを用いて、測定対象物OBの特性値である残留応力を計算する該プログラムのフローのステップS7である残留応力計算とを行っている。
これによれば、回折環撮像装置本体5の姿勢を変化させずとも、貫通孔28a,27b,27a1が設けられたモータ27の角度を連結部12、雄ねじ11等からなる角度変化機構により変化させ、X線出射器10を自らの中心軸周りに向きを変化させて中心軸方向に移動させれば、X線を希望する測定箇所に照射することができる。すなわち、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に挿入しやすい姿勢で挿入すれば、X線を希望する測定箇所に照射することができる。例えば、測定対象物OBが管状物体であれば、測定対象物OBの内部の中心軸にX線出射器10の中心軸が合うようにして回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に挿入すれば、モータ27の角度、X線出射器10の自らの中心軸周りの向き及び挿入位置を変化させることで、X線を希望する測定箇所に照射することができる。よって、測定対象物OBの内部が極度に狭くない限り測定が可能になる。ただし、放射状に出射されるX線を貫通孔28a−18aを介して測定対象物OBに照射する場合、X線出射器10の中心軸に対する貫通孔28a−18aの中心軸の角度を変化させると、貫通孔18aからX線が出射される箇所において、X線の強度分布における重心がX線の光軸位置からずれるという問題が発生する。このずれが発生すると回折環の形状から計算される残留応力等の特性値が、本来の値からずれ、精度のよいX線回折測定を行うことができない。このため、測定対象物OBに対する回折環撮像と回折環読取りを回折環撮像工程と回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットした後のコントローラ91のプログラムの実行で行った後、回折環撮像装置本体5の角度変化機構の状態及びX線照射点からイメージングプレート15までの距離を測定対象物OBのときと同じにして標準試料Stに対する回折環撮像と回折環撮読取りをコントローラ91のプログラムの実行で行う。そして、測定対象物OBにおける回折環の形状と標準試料Stにおける回折環の形状を用いて、測定対象物OBの残留応力等の特性値を計算する。これにより、X線の重心のずれの影響をなくし、上述した回折環撮像装置本体5を用いても従来と同程度の精度でX線回折測定を行うこができる。
また、上記実施形態においては、回折環撮像機器は、テーブル16に固定されたイメージングプレート15であり、コントローラ91が実行するプログラムのフローのステップS2である回折環読取りは、回折環撮像装置本体5を、連結部12、雄ねじ11等からなる角度変化機構が測定対象物OBによる回折環を撮像する回折環撮像工程における状態のまま、イメージングプレート15にレーザスポットを走査位置を検出しながら走査して反射光強度を検出する回折環読取装置2にセットして回折環の形状を読み取るものであり、該プログラムのフローのステップS5である標準試料位置、高さ調整は、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットしたままで、回折環読取装置2に備えられた標準試料Stの近傍に回折環撮像装置本体5を配置するものであり、該プログラムのフローのステップS6である回折環撮像及びステップ7である回折環読取りは、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットしたままで行われるものであるようにしている。
これによれば、回折環撮像機器が先行技術文献に示されるよう、テーブル16に固定されたイメージングプレート15である場合、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBによる回折環を撮像する回折環撮像工程の状態のまま回折環読取装置2にセットすれば、後はコントローラ91にインストールされているプログラムを実行することにより、測定対象物OBによる回折環の読取り、照射点−I間距離の計算、標準試料Stの回折環撮像装置本体5近傍への配置、標準試料Stによる回折環の撮像及び標準試料Stによる回折環の読取りを行うことができるので、測定効率をよくすることができる。
また、上記実施形態においては、貫通孔が形成されたものは、貫通孔28a,27b,27a1が出力軸に形成され、テーブル16を貫通孔28a,27b,27a1の中心軸周りに回転させるモータ27であり、回折環読取装置2は、モータ27を回転させるとともにレーザスポットをイメージングプレート15の半径方向に移動させ、レーザスポットの走査位置をモータ27の回転角度と半径方向移動の移動位置で検出するものであるようにしている。これによれば、回折環読取装置2のレーザスポットの走査機構が複雑にならないようにすることができる。
また、上記実施形態においては、回折環読取装置2を、回折環撮像装置本体5を連結部12、雄ねじ11等からなる角度変化機構がイメージングプレート15に回折環が撮像されたときの状態のまま所定の位置にセットする支持機構45と、イメージングプレート15にレーザ光を照射してイメージングプレート15の表面にレーザスポットを形成するレーザ検出装置30と、レーザスポットをイメージングプレート15と相対的にイメージングプレート15の面内を走査させるステージ移動機構20、モータ27等からなる走査機構と、レーザ検出装置30によりレーザ光が照射され、走査機構によりレーザスポットが移動されている状態で、レーザスポットからの反射光の強度を、走査手段による走査位置に関連付けて検出するA/D変換器83、位置検出回路72、回転角度検出回路及びコントローラ91にインストールされたプログラム等からなる検出機器と、検出機器により検出された複数のデータを用いてイメージングプレート15に撮像された回折環の形状を算出するコントローラ91にインストールされた別のプログラムと、該プログラムにより算出された回折環の形状から測定対象物OBのX線照射点からイメージングプレート15の面までの距離を計算するコントローラ91にインストールされた別のプログラムと、X線出射器10から出射されるX線が照射される標準試料Stと、X線出射器10からX線が照射されたとき標準試料StのX線照射点からイメージングプレート15の面までの距離が、コントローラ91のプログラムにより計算された距離になるよう、標準試料Stを回折環撮像装置本体5と相対的に移動し、位置決めする標準試料移動機構150、Y軸方向モータ制御回路165、Z軸方向モータ制御回路163及びコントローラ91にインストールされた別のプログラム等からなる標準試料位置決め機器とを備えた回折環読取装置2としている。
これによれば、回折環撮像装置1にて測定対象物OBによる回折環を撮像し、回折環撮像装置本体5を連結部12、雄ねじ11等からなる角度変化機構が撮像を行ったときの状態のまま回折環読取装置2の支持機構45にセットすれば、測定対象物OBによる回折環の読取り、及びX線照射点からイメージングプレート15の面までの距離を測定対象物OBのときと等しくしての標準試料Stによる回折環の撮像と回折環の読取りを、回折環読取装置2及び回折環撮像装置1を作動させるのみで行うことができるので、測定対象物OBの残留応力等の特性値の計算に必要な測定対象物OBによる回折環の形状と標準試料Stによる回折環の形状とを効率よく得ることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、回折環読取装置2に標準試料移動機構150を設け、標準試料Stに計算された照射点−IP間距離でX線が照射されるよう、標準試料Stの横方向位置と高さを変化させ位置決めするようにした。しかし、標準試料Stの位置は回折環読取装置2にセットされた回折環撮像装置本体5に対して相対的に変化すればよいので、標準試料Stと回折環撮像装置本体5の双方が移動する機構にしてもよい。例えば、図11に示すように、回折環撮像装置移動機構100を設け、回折環撮像装置本体5の高さ方向の位置を変化できるようにし、移動ステージ21に標準試料Stを固定したブロック44を取り付け、標準試料Stはステージ移動機構20により図11の横方向の位置を変化できるようにしてもよい。この場合、標準試料Stを固定したブロック44は標準試料StにX線が照射されたとき、回折X線がレーザ検出装置30により妨害されない位置に取り付けるようにする。なお、回折環撮像装置移動機構100は、上記実施形態の標準試料移動機構150の高さ方向の移動機構と同様の機構であり、固定用ブロック46を取り付けた移動ステージ101が枠体105の直方体状の穴に迎合しており、フィードモータ102、スクリューロッド103、軸受部104が回転することにより高さ方向に移動する機構である。また、フィードモータ制御回路110及び位置検出回路111は、上記実施形態のZ軸方向モータ制御回路163及び位置検出回路162と同様の作動を行い、コントローラ91に指令された移動位置に移動ステージ101を移動させる。位置検出回路111は、フィードモータ102に設けられたエンコーダ102aのパルス列信号を用いて、上記実施形態の位置検出回路162と同様に移動位置を計算する。また、イメージングプレート15に撮像された回折環を読み取る際、イメージングプレート15を適切な位置にするための移動ステージ101の移動位置は、コントローラ91に記憶されており、コントローラ91は回折環を読取る際、フィードモータ制御回路110に移動位置を出力する。
また、上記実施形態においては、回折環読取装置2はステージ移動機構20によりレーザ検出装置30を図7の横方向に移動するようにしたが、イメージングプレート15上のレーザスポットが相対的にイメージングプレート15の半径方向に移動すればよいので、回折環撮像装置本体5を取り付ける支持機構45を図7の横方向に移動させる構造にしてもよい。また、固定用ブロック46が固定棒47の長尺方向に伸縮する構造にしてもよい。また、そのようにした場合、図11のように回折環撮像装置本体5が高さ方向に移動できる構造にし、標準試料Stを固定して、回折環撮像装置本体5を2方向に移動させ、標準試料Stに計算された照射点−IP間距離でX線が照射される位置に位置決めするようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、回折環撮像装置本体5に貫通孔28a−18aの中心軸周りに回転するモータ27を設け、イメージングプレート15がモータ27により回転するようにし、回折環の読取りの際、この回転と回折環読取装置2のステージ移動機構20により、イメージングプレート15上に形成されるレーザスポットがイメージングプレート15の面内を走査するようにした。しかし、レーザスポットがイメージングプレート15の面内を走査すれば回折環の読取りを行うことができるので、モータ27を中心軸に貫通孔が形成されたブロックに替えてイメージングプレート15は固定されたものにし、回折環読取装置2のレーザスポットの走査機構を別の構造にしてもよい。例えば、回折環読取装置2のステージ移動機構20を移動ステージ21が平面の2方向に移動する構造にし、この2方向の移動によりレーザスポットがイメージングプレート15の面内を走査するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、回折環撮像装置1の回折環撮像手段は、テーブル16に固定具18で固定されたイメージングプレート15とした。しかし、回折環を撮像することができるならばこれ以外の手段を用いてもよい。例えば、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線出射器10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折X線の強度分布を検出する機器でもよい。この場合は、回折環の撮像と回折環の読取りは同時に行われるので、回折環読取装置2は不要になる。ただし、上記実施形態のように同一条件で標準試料Stによる回折環を得る必要はあるので、上記実施形態の回折環読取装置2における、回折環撮像装置本体5を定位置にセットする機構、標準試料移動機構150、及びこれと連結されている回路とコンピュータ装置90からなる装置を用意する。そして、測定対象物OBによる回折環を得た後、回折環撮像装置本体5を該装置にセットし、標準試料Stによる回折環を得るようにする。なお、この場合は、特許請求の範囲に記載された第1の回折環撮像ステップと第1の回折環読取りステップ、及び第2の回折環撮像ステップと第2の回折環読取りステップは、同時に行われると見なす。
また、上記実施形態においては、回折環読取装置2に回折環撮像装置本体5をセットした後、コントローラ91にインストールされたプログラムを実行することにより、撮像されている測定対象物OBによる回折環の読取り、回折環の消去、回折照射点−IP間距離の検出、標準試料Stの位置調整、標準試料Stによる回折環の撮像、標準試料Stによる回折環の読取り、回折環の消去及び残留応力の計算を自動で行うようにした。しかし、測定効率を重要視しなければ、作動の全部又は一部を作業者が入力装置92から指令を入力することで行うようにしてもよい。また、この場合、レーザ検出装置30にLED光源43を設けず、作業者が別に用意したLED光照射器からLED光を所定時間、イメージングプレート15に照射して回折環を消去するようにしてもよい。また、この場合、回折環撮像装置1のコンピュータ装置90と回折環読取装置2のコンピュータ装置90を別々にし、それぞれの入力装置92から指令を入力するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、コントローラ91にインストールされたプログラムにより残留応力の計算を行うようにしたが、測定効率を重要視しなければ、該プログラムは残留応力の計算の前まで行うようにし、別のコンピュータ装置に測定対象物OBによる回折環データ、標準試料Stによる回折環データ、照射点−IP間距離Lm及びその他計算に必要なパラメータ等を入力して、残留応力を計算するようにしてもよい。この場合、別のコンピュータ装置にデータを入力する方法としては、記録媒体を介する方法、ネット回線等を使用して転送する方法等、様々な方法が考えられる。また、計算の一部または全部を人為的に行ってもよい。
また、上記実施形態においては、測定対象物OBによる回折環の形状と標準試料Stによる回折環の形状とから、補正を行ったうえで測定対象物OBの残留応力を計算するようにしたが、2つの回折環の形状から補正を行ったうえで計算できる測定対象物OBの特性値であれば、計算するものは別の特性値であってもよい。例えば、測定対象物OBの材質における残留応力と疲労寿命との関係を予め記憶しておき、上記実施形態のように計算した残留応力を該記憶している関係に当てはめて測定対象物OBの疲労寿命を計算するようにしてもよい。
1…回折環撮像装置、2…回折環読取装置、3…治具、5…回折環撮像装置本体、6…高電圧電源、7…ホルダ、8…上蓋、10…X線出射器、12…連結部、13…モータ固定プレート、15…イメージングプレート、16…テーブル、17…突出部、18…固定具、28a,27b,27a1,16a,17a,18a…貫通孔、20…ステージ移動機構、21…移動ステージ、22…フィードモータ、23…スクリューロッド、27…モータ、28…通路部材、29…固定板、30…レーザ検出装置、31…レーザ光源、36…対物レンズ、43…LED光源、45…支持機構、46…固定用ブロック、47…固定棒、50…押し当て部、51…伸縮パイプ、52…収納部、53…伸縮棒、58…ローラー、60…円柱状ボタン、61…固定リング、62…移動リング、64…ストッパ、65…バネ、66…固定用ブロック、67…長尺棒、68,69…取付リング、70…取っ手、90…コンピュータ装置、91…コントローラ、92…入力装置、93…表示装置、100…回折環撮像装置移動機構、101…移動ステージ、102…フィードモータ、103…スクリューロッド、105…枠体、150…標準試料移動機構、151…枠体、152…Z軸方向モータ、153…移動ステージ、154…移動ステージ、155…Y軸方向モータ、157…スクリューロッド、159…スクリューロッド、160…ブロック、OB…測定対象物、St…標準試料

Claims (5)

  1. 自らの中心軸を中心にして放射状にX線を出射するX線出射器と、
    前記X線出射器から放射状に出射されるX線の出射方向に配置され、前記X線を通過させる第1の貫通孔が設けられたブロックと、
    前記ブロックと一体になった回折環撮像手段であって、前記第1の貫通孔と中心軸が一致する第2の貫通孔を有し、前記第2の貫通孔を通過させてX線が出射され、出射された方向に物体があるとき、前記物体で発生した回折X線により前記第2の貫通孔と垂直に交差する撮像面に回折環を撮像する回折環撮像手段と、
    前記X線出射器の中心軸に対する前記第1の貫通孔の角度を任意の角度に設定可能な角度変化機構とを備える回折環撮像装置を測定対象物の測定箇所近傍に配置する第1の配置ステップと、
    前記回折環撮像装置からX線を前記測定対象物に照射して、前記撮像面に回折環を撮像する第1の回折環撮像ステップと、
    前記第1の回折環撮像ステップにて撮像された回折環の形状を読み取る第1の回折環読取りステップと、
    前記第1の回折環読取りステップにて読み取った回折環の形状から、前記測定対象物のX線照射点から前記撮像面までの距離を計算する距離計算ステップと、
    前記回折環撮像装置の前記角度変化機構を前記第1の回折環撮像ステップにおける状態のままで、X線照射点から前記撮像面までの距離が前記距離計算ステップにて計算された距離になるよう、前記回折環撮像装置を標準試料の近傍に配置する第2の配置ステップと、
    前記回折環撮像装置からX線を前記標準試料に照射して前記撮像面に回折環を撮像する第2の回折環撮像ステップと、
    前記第2の回折環撮像ステップにて撮像された回折環の形状を読み取る第2の回折環読取りステップと、
    前記第1の回折環読取りステップにて読み取った回折環の形状と、前記第2の回折環読取りステップにて読み取った回折環の形状とを用いて、前記測定対象物の特性値を計算する特性値計算ステップとを備えたことを特徴とするX線回折測定方法。
  2. 請求項1に記載のX線回折測定方法において、
    前記回折環撮像手段は、テーブルに固定されたイメージングプレートであり、
    前記第1の回折環読取りステップは、前記回折環撮像装置を、前記角度変化機構が前記第1の回折環撮像ステップにおける状態のまま、前記イメージングプレートにレーザスポットを走査位置を検出しながら走査して反射光強度を検出する回折環読取装置にセットして回折環の形状を読み取るステップであり、
    前記第2の配置ステップは、前記回折環撮像装置を前記回折環読取装置にセットしたままで、前記回折環読取装置に備えられた標準試料の近傍に前記回折環撮像装置を配置するステップであり、
    前記第2の回折環撮像ステップ及び前記第2の回折環読取りステップは、前記回折環撮像装置を前記回折環読取装置にセットしたままで行われるステップであるようにしたことを特徴とするX線回折測定方法。
  3. 請求項2に記載のX線回折測定方法において、
    前記ブロックは、前記第1の貫通孔が出力軸に形成され、前記テーブルを前記第1の貫通孔の中心軸周りに回転させるモータであり、
    前記回折環読取装置は、前記モータを回転させるとともに前記レーザスポットを前記イメージングプレートの半径方向に移動させ、前記レーザスポットの走査位置を前記モータの回転角度と前記半径方向移動の移動位置で検出するものであることを特徴とするX線回折測定方法。
  4. 自らの中心軸を中心にして放射状にX線を出射するX線出射器と、
    前記X線出射器から放射状に出射されるX線の出射方向に配置され、前記X線を通過させる第1の貫通孔が設けられたブロックと、
    前記ブロックと一体となったテーブルに固定されたイメージングプレートであって、前記第1の貫通孔と中心軸が一致する第2の貫通孔を有し、前記第2の貫通孔を通過させてX線が出射され、出射された方向に物体があるとき、前記物体で発生した回折X線により前記第2の貫通孔と垂直に交差する面に回折環を撮像するイメージングプレートと、
    前記X線出射器の中心軸に対する前記第1の貫通孔の角度を任意の角度に設定可能な角度変化機構とを備える回折環撮像装置がセットされ、前記イメージングプレートに撮像された回折環を読み取る回折環読取装置であって、
    前記回折環撮像装置を、前記角度変化機構が前記イメージングプレートに回折環が撮像されたときの状態のまま所定の位置にセットするセット機構と、
    前記イメージングプレートにレーザ光を照射して前記イメージングプレートの表面にレーザスポットを形成するレーザ照射手段と、
    前記レーザスポットを前記イメージングプレートと相対的に前記イメージングプレートの面内を走査させる走査手段と、
    前記レーザ照射手段によりレーザ光が照射され、前記走査手段により前記レーザスポットが移動されている状態で、前記レーザスポットからの反射光の強度を、前記走査手段による走査位置に関連付けて検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された複数のデータを用いて前記イメージングプレートに撮像された回折環の形状を算出する回折環形状計算手段と、
    前記回折環形状計算手段により算出された回折環の形状から、前記イメージングプレートに回折環が撮像されたときの回折X線の発生点であるX線照射点から前記イメージングプレートの面までの距離を計算する距離計算手段と、
    前記X線出射器から出射されるX線が照射される標準試料と、
    前記X線出射器からX線が照射されたとき前記標準試料のX線照射点から前記イメージングプレートの面までの距離が、前記距離計算手段により計算された距離になるよう、前記標準試料を前記回折環撮像装置と相対的に移動し、位置決めする標準試料位置決め手段とを備えたことを特徴とする回折環読取装置。
  5. 請求項4に記載の回折環読取装置において、
    前記ブロックは、前記第1の貫通孔が出力軸に形成され、前記テーブルを前記第1の貫通孔の中心軸周りに回転させるモータであり、
    前記走査手段は、前記モータに駆動信号を供給して前記モータを回転させる回転駆動手段と、前記レーザスポットを前記イメージングプレートと相対的に前記イメージングプレートの半径方向に移動させる移動手段とから構成され、
    前記検出手段は、走査位置を前記モータの回転角度と前記移動手段の移動位置で検出することを特徴とする回折環読取装置。
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