JP6264591B1 - 熱膨張係数測定方法及びx線回折測定装置 - Google Patents

熱膨張係数測定方法及びx線回折測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 残留応力がある測定対象物においても、X線回折測定を用いて測定対象物の熱膨張係数を精度よく測定する方法を提供する。【解決手段】 測定対象物にX線を照射してX線回折像を撮像し、X軸方向の残留垂直応力を算出する。次に同じX線照射点にX線を照射してX線回折像を撮像し、Y軸方向の残留垂直応力を算出する。得られた2つの残留応力から、X線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出する。そして、測定対象物の温度を変化させ、測定対象物の温度検出と、XZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射してX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、得られた温度と回折面間隔との関係から熱膨張係数を算出する。【選択図】図5

Description

本発明は、X線回折測定を用いて測定対象物の熱膨張係数を測定する方法および該熱膨張係数を測定する方法に用いられるX線回折測定装置に関する。
従来から、例えば特許文献1に示されているように、X線回折測定を用いて測定対象物の熱膨張係数を測定することが行われている。この方法は、測定対象物の温度を測定するとともにX線回折測定を行い、X線回折測定により得られるX線回折像から測定対象物の格子面間隔及び格子定数を算出し、温度と格子定数の関係から温度変化に対する格子定数の変化の割合を求めるものである。なお、熱膨張係数には線膨張係数と体積膨張係数があるが、本出願においては熱膨張係数は温度の上昇に対する長さの変化割合である線膨張係数をいうものとする。また、X線回折測定において測定される格子面間隔は回折面間隔であるので、以下、回折面という用語で統一する。
X線回折測定を行う装置には様々な装置があるが、測定対象物の運搬や切り出しが不可能な場合のX線回折測定用の装置として特許文献2に示される装置がある。この装置は、X線出射器、イメージングプレート等の撮像手段、レーザ検出装置等の読取手段、および移動機構と回転機構等のレーザ走査手段及びLED照射器等の回折環消去手段等を1つの筐体内に備え、該筐体がアーム式移動装置に接続されている。この装置を用いれば、アーム式移動装置を測定対象物の近傍に設置した後、アーム式移動装置を操作して測定対象物に対するX線回折測定装置の位置と姿勢を調整する位置姿勢調整工程、測定対象物にX線を照射して発生する回折X線により、回折環をイメージングプレートに撮像する撮像工程、イメージングプレートにレーザ検出装置からのレーザ光を走査しながら照射することで回折環の形状を検出する読取り工程、及び該回折環をLED光の照射により消去する消去工程を連続して行うことができる。そして、検出した回折環の所定箇所の半径値を求めれば、この半径値をブラッグの式に当てはめて回折面間隔が計算でき、さらに測定対象物の既知の結晶構造から格子定数を計算することができる。よって、測定対象物の運搬や切り出しが不可能な場合でも、特許文献2に示されるX線回折測定装置と測定対象物の温度を変化させ温度を検出する装置を用いれば、測定対象物の熱膨張係数を求めることができる。
特開昭61−100642号公報 特許第5967394号公報
しかしながら、X線回折測定を用いて測定対象物の熱膨張係数を測定する方法は、測定対象物の回折面間隔及び格子定数は熱膨張によってのみ変化しているという前提のうえでの方法である。現実は、測定対象物には応力が作用したことによる回折面間隔の変化の残存である残留応力があり、X線回折測定により測定される回折面間隔の変化は、熱膨張による変化に残留応力を加えたものである。また、測定対象物の温度を変化させれば残留応力は変化するため、単純に残留応力分の回折面間隔の変化を減算すれば、熱膨張による回折面間隔の変化になるというわけではない。測定対象物の残留応力を0にすれば、精度よく測定対象物の熱膨張係数を求めることができるが、それには測定対象物を所定の高温で保持する焼きなまし処理をしなければならず、実質的に不可能な場合が多い。よって、X線回折測定を用いて測定対象物の熱膨張係数を測定する方法は、通常の測定対象物に対しては精度よく熱膨張係数を求めることができないという問題がある。
本発明はこの問題を解消するためなされたもので、その目的は、残留応力がある測定対象物においても、X線回折測定を用いて測定対象物の熱膨張係数を精度よく測定する方法を提供することにある。また、該熱膨張係数を測定する方法に用いられるX線回折測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、対象とする測定対象物に向けてX線を照射して測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力を算出するX軸方向残留応力取得工程と、X軸方向残留応力取得工程における測定対象物のX線照射点にX線を照射して、測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から測定対象物の表面に平行に設定したY軸方向の残留垂直応力を算出するY軸方向残留応力取得工程と、X軸方向残留応力取得工程及びY軸方向残留応力取得工程で算出された2つの残留応力から、測定対象物のX線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向取得工程と、測定対象物の温度を変化させ、測定対象物の温度を検出することと、XZ平面において算出された無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射して、測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、X線回折像から測定対象物の回折面間隔を算出して温度と回折面間隔との関係を取得する温度−回折面間隔関係取得工程と、温度−回折面間隔関係取得工程により取得された関係を用いて、測定対象物の熱膨張係数を算出する熱膨張係数計算工程とを備えた熱膨張係数測定方法としたことにある。
これによれば、測定対象物に残留応力があっても、測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を求め、これら2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出し、XZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射すれば、得られるX線回折像から算出される回折面間隔は残留応力の影響を受けない値となる。よって、測定対象物の温度を変化させ、温度検出と、XZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射してX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行えば、温度と熱膨張にのみ影響する回折面間隔との関係を取得することができ、これより熱膨張係数を精度よく算出することができる。なお、X軸方向の残留垂直応力とY軸方向の残留垂直応力から無ひずみ回折面法線方向が計算できることは、発明を実施するための形態で詳細に説明する。
また、本発明の他の特徴は、測定対象物に向けてX線を照射した際に撮像されるX線回折像は回折環であり、X軸方向及びY軸方向の残留垂直応力は、撮像される回折環の形状を読み取ってcosα法により計算するものであり、回折面間隔は、撮像される回折環のXZ平面と交差する箇所の半径値を検出してブラッグの式により計算するものであることにある。
これによれば、測定対象物に対してX線を照射する方向を3回変えるのみで、熱膨張係数を測定することができるので、効率よく熱膨張係数を測定することができる。
また、本発明の他の特徴は、対象とする第1の測定対象物に向けてX線を照射して第1の測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から第1の測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力を算出するX軸方向残留応力取得工程と、X軸方向残留応力取得工程における第1の測定対象物のX線照射点にX線を照射して、第1の測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から第1の測定対象物の表面に平行に設定したY軸方向の残留垂直応力を算出するY軸方向残留応力取得工程と、X軸方向残留応力取得工程及びY軸方向残留応力取得工程で算出された2つの残留応力から、第1の測定対象物のX線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出し、採用する無ひずみ回折面法線方向とする無ひずみ回折面法線方向取得工程と、第1の測定対象物と同じ製造工程にて得られた第2の測定対象物の温度を変化させ、第2の測定対象物の温度を検出することと、XZ平面において採用した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射して、第2の測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、X線回折像から第2の測定対象物の回折面間隔を算出して温度と回折面間隔との関係を取得する温度−回折面間隔関係取得工程と、温度−回折面間隔関係取得工程により取得された関係を用いて、第2の測定対象物の熱膨張係数を算出する熱膨張係数計算工程とを備えた熱膨張係数測定方法としたことにある。
これによれば、同一の製造工程で製造された複数の測定対象物の熱膨張係数をそれぞれ測定するとき、第1の測定対象物である最初の測定対象物のみX軸方向及びY軸方向の残留垂直応力を算出して無ひずみ回折面法線方向を算出し、第2の測定対象物であるそれ以降の測定対象物においてX線が、XZ平面において算出した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向から照射されるよう調整するようにすれば、第2の測定対象物においてX線の照射方向を調整するのは1回のみでよく、効率よく熱膨張係数を測定することができる。また、それぞれの測定対象物を照射されるX線に対して同じ位置に位置決めすることができる治具又は機構を設ければ、X線の照射方向の調整は第1の測定対象物のみでよく、さらに効率よく熱膨張係数を測定することができる。1つの測定対象物の無ひずみ回折面法線方向をすべての測定対象物に当てはめることができるのは、製造工程が同一であれば測定対象物に作用する応力は大きな変化はなく、無ひずみ回折面法線方向は大きく変化しないためである。
また、本発明の他の特徴は、上述したように1つの測定対象物の無ひずみ回折面法線方向をすべての測定対象物に当てはめて熱膨張係数を測定する場合、第1及び第2の測定対象物に向けてX線を照射した際に撮像されるX線回折像は回折環であり、X軸方向及びY軸方向の残留垂直応力は、撮像される回折環の形状を読み取ってcosα法により計算するものであり、回折面間隔は、撮像される回折環のXZ平面と交差する箇所の半径値を検出してブラッグの式により計算するものであり、温度−回折面間隔関係取得工程の前に、第2の測定対象物にXZ平面において採用した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射してX線回折像を撮像し、撮像されたX線回折像からX軸方向の残留垂直応力とY軸方向の残留垂直応力とを算出し、算出された2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向再計算工程と、無ひずみ回折面法線方向再計算工程にて算出された無ひずみ回折面法線方向の採用した無ひずみ回折面法線方向からの差が予め設定されている許容限界より大きいとき、採用する無ひずみ回折面法線方向を変更する無ひずみ回折面法線方向変更工程とを行うようにしたことにある。
これによれば、X線回折像として回折環を撮像するときは1つの回折環の形状からX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出することができるので、第2の測定対象物において、X線の照射方向は温度−回折面間隔関係取得工程のときと同じにして、測定対象物の温度を変化させない状態で回折環を撮像してX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出し、無ひずみ回折面法線方向を算出する。そして、算出した無ひずみ回折面法線方向が採用した無ひずみ回折面法線方向より許容限界を超えてずれているときは、算出した無ひずみ回折面法線方向を採用する無ひずみ回折面法線方向とする。上述したように測定対象物の製造工程が同一であれば無ひずみ回折面法線方向は大きく変化しないが、製造工程の何らかの要因が変化して無ひずみ回折面法線方向が変化する可能性は僅かではあるが存在する。よって、それぞれの測定対象物において無ひずみ回折面法線方向を求めれば、無ひずみ回折面法線方向が変化した場合でも対応することができる。また、無ひずみ回折面法線方向再計算工程で測定対象物の温度検出と回折面間隔の算出を行えば、無ひずみ回折面法線方向再計算工程でのX線回折像の撮像は、温度−回折面間隔関係取得工程での測定対象物の温度を変化させないときのX線回折像の撮像とすることができ、X線回折像の撮像回数自体は増えないので、測定効率は悪くならない。
また、本発明の他の特徴は、対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、X線出射器から測定対象物に向けてX線が照射された際、測定対象物にて発生した回折X線を撮像面にて受光してX線回折像を撮像し、X線回折像を検出するX線回折像検出手段と、X線出射器とX線回折像検出手段とを内部に配置した筐体と、測定対象物に対する筐体の位置と姿勢を変更し、X線出射器から出射されたX線の測定対象物に対する照射方向を変更するX線照射方向変更手段と、X線回折像検出手段により検出されたX線回折像から、測定対象物の表面に平行な方向における残留垂直応力を算出する残留垂直応力計算手段と、X線回折像検出手段により検出されたX線回折像から、測定対象物の回折面間隔を算出する回折面間隔計算手段と、残留垂直応力計算手段が、同一のX線照射点における測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出したとき、算出した2つの残留応力から、X線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向計算手段とを備えたX線回折測定装置としたことにある。
これによれば、X線照射方向変更手段によりX線の照射方向を変更してX線出射器からX線を照射し、X線回折像検出手段によりX線回折像を検出し、残留垂直応力計算手段により検出されたX線回折像から残留垂直応力を算出することで測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力とY軸方向の残留垂直応力を取得することができる。また、無ひずみ回折面法線方向計算手段により取得された2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出することができる。また、X線照射方向変更手段によりXZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線が照射されるようX線の照射方向を変更し、X線出射器からX線を照射してX線回折像検出手段によりX線回折像を検出することができる。また、回折面間隔計算手段により検出されたX線回折像ごとに回折面間隔を算出することができる。すなわち、このX線回折測定装置を使用すれば測定対象物の無ひずみ回折面法線方向を求め、熱膨張にのみ影響する回折面間隔を求めることができるので、X線回折測定装置の他に測定対象物の温度を変化させる装置と温度を検出する装置を用意するのみで、熱膨張係数を精度よく測定することができる。
本発明を実行するうえで使用するX線回折測定装置を含む熱膨張係数測定システムを示す全体概略図である。 図1のX線回折測定装置の拡大図である。 図2のX線回折測定装置におけるX線が通過する部分を拡大して示す部分断面図である。 図3のプレート部分の拡大斜視図である。 図1の熱膨張係数測定システムを用いて測定対象物の熱膨張係数を測定するときの工程フロー図である。 図5の工程フロー図における残留垂直応力取得工程を詳細にした工程フロー図である。 測定対象物の無ひずみ回折面法線方向を説明する座標図である。 測定対象物に無ひずみ回折面法線方向があることを視覚的に説明する図である。 無ひずみ回折面法線方向より所定の角度の方向からX線を照射して回折環を撮像する際の、それぞれの箇所の角度と長さを示した図である。 図5の工程フロー図における熱膨張係数取得工程を詳細にした工程フロー図である。 図9において回折環がXZ平面と交差する箇所の半径r0を撮像面の垂直方向から見て示した図である。 変形例における熱膨張係数取得工程を詳細にした工程フロー図である。
本発明を実行するうえで使用するX線回折測定装置を含む熱膨張係数測定システムの構成について図1乃至図4を用いて説明する。なお、この熱膨張係数測定システムが、先行技術文献の特許文献2に示されているX線回折測定システムと異なっている点は、LED光源44が取り付けられたユニットの配置、X線回折測定装置のX線入射角を検出して表示するシステムを備える点、測定対象物OBの温度が設定値になるよう制御するシステムを備える点及びコントローラ91に無ひずみ回折面法線方向、回折面間隔、熱膨張係数等、残留応力以外の値を計算するプログラムを備える点であり、それ以外の構成は同一である。よって、特許文献2に示されているX線回折測定システムで既に説明されている箇所は、簡略的に説明するにとどめる。
この熱膨張係数測定システムは、熱膨張係数を測定する金属製品の場所まで運搬されてセットされるものである。金属製品はX線回折測定が可能であればどのような材質でもよいが、本実施形態では鉄板とする。以後、熱膨張係数を測定する鉄板を測定対象物OBという。X線回折測定装置はアーム式移動装置により位置と姿勢を調整することができ、測定対象物OBに対するX線回折測定装置の位置と姿勢を変更して、測定対象物OBに対するX線の照射方向及びX線照射点からX線回折像の撮像面までの距離を、意図した方向と距離に設定することができる。
X線回折測定装置は、筐体50内に、X線出射器10、イメージングプレート15を取り付けるテーブル16、テーブル16を回転及び移動させるテーブル駆動機構20及び回折環を検出するレーザ検出装置30等を備えている。そして、熱膨張係数測定システムは、このX線回折測定装置とともに、アーム式移動装置(図示しない)、温度制御装置60、コンピュータ装置90、高電圧電源95及び測定対象物が載置され温度制御可能なプレートPLを備える。筐体50内には、上述した装置に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外に示された2点鎖線で囲われた各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。
筐体50は、略直方体状に形成されるとともに、底面壁50a、前面壁50b、後面壁50e、上面壁50f、側面壁(図示せず)、及び底面壁50aと前面壁50bの角部を紙面の表側から裏側に向けて切り欠くように設けた切欠き部壁50cと繋ぎ壁50dを有するように形成されている。切欠き部壁50cは底面壁50aに垂直な平板と平行な平板とからなり、繋ぎ壁50dは側面壁と垂直であり底面壁50aと所定の角度を有している。この所定の角度は、例えば30〜45度である。側面壁の1つには、支持アーム51に接続される接続部(図示せず)が設けられており、接続部は図1及び図2の紙面の垂直周りに回転可能になっている。支持アーム51はアーム式移動装置の先端であり、アーム式移動装置を操作することにより、筐体50(X線回折測定装置)を任意の位置と姿勢にすることができる。
X線出射器10は、筐体50内の上部にて図示左右方向に延設されて筐体50に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線を図示下方向に出射する。X線制御回路71は、コントローラ91から指令が入力すると、X線出射器10から一定強度のX線が出射されるように、X線出射器10に高電圧電源95から供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。
テーブル駆動機構20は、筐体50に固定され、X線出射器10の下方にて移動ステージ21を備えている。移動ステージ21は、テーブル駆動機構20における対向する1対の板状のガイド25,25により挟まれていて、テーブル駆動機構20に固定されたフィードモータ22、スクリューロッド23及び軸受部24により、出射X線の光軸が含まれる筐体50の側面壁に平行な平面内であって、出射X線の光軸に垂直な方向に移動する。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれており、エンコーダ22aはフィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ21をフィードモータ22側へ移動させるようフィードモータ22に駆動信号を出力し、位置検出回路72は、移動ステージ21が移動限界位置に達して、エンコーダ22aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ21の原点位置となり、位置検出回路72は、以後、移動ステージ21が移動するごとにエンコーダ22aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離xを位置信号として出力する。フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動先位置を入力すると、位置検出回路72から入力する位置信号が入力した移動先位置に等しくなるまで、フィードモータ22を正転又は逆転駆動する。また、フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動速度を入力すると、エンコーダ22aから入力したパルス列信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ21の移動速度を計算し、計算した移動速度が入力した移動速度になるようにフィードモータ22を駆動する。
一対のガイド25,25の上端は、板状の上壁26によって連結されており、上壁26には貫通孔26aが設けられていて、貫通孔26aの中心位置はX線出射器10の出射口11の中心位置に対向しており、出射X線は、出射口11及び貫通孔26aを介してテーブル駆動機構20内に入射する。後述するイメージングプレート15が回折環撮像位置にある状態(図1乃至図3の状態)において、移動ステージ21の貫通孔26aと対向する位置には、図3に拡大して示すように、貫通孔21aが形成されている。移動ステージ21には、出射口11及び貫通孔26a,21aの中心軸線位置を回転中心とするスピンドルモータ27が組み付けられており、スピンドルモータ27の出力軸27aは円筒状で断面円形の貫通孔27a1を有する。スピンドルモータ27の出力軸27aの反対側には、貫通孔27bが設けられ、貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするための円筒状の通路部材28が固定されている。
また、スピンドルモータ27内にはエンコーダ27cが組み込まれ、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラ91及び回転角度検出回路75に出力する。
スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から回転速度を入力すると、エンコーダ27cから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数から計算される回転速度が、入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ27に出力する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から回転角度θpを計算してコントローラ91に出力する。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cからインデックス信号を入力すると、カウント値をリセットして「0」にする。これが回転角度0°の位置である。なお、イメージングプレート15の回転角度0°の位置とは、後述するレーザ検出装置30からのレーザ照射によりイメージングプレート15に形成された回折環を読み取る際、インデックス信号を入力した時点でレーザ光が照射されている位置である。この位置はイメージングプレート15の各半径位置においてあるためラインである。
テーブル16は、円形状であり、スピンドルモータ27の出力軸27aの先端部に固定されている。テーブル16は、下面中央部から下方へ突出した突出部17を有し、突出部17の外周面には、ねじ山が形成されている。テーブル16の下面にはイメージングプレート15が取付けられる。イメージングプレート15の中心部には貫通孔15aが設けられていて、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15が、固定具18とテーブル16の間に挟まれて固定される。固定具18は、円筒状の部材で、内周面に、突出部17のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
テーブル16、突出部17及び固定具18にも貫通孔16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、貫通孔18aの内径は通路部材28の内径と同じである。すなわち、出射X線は、貫通孔26a,21a,通路部材28,貫通孔27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射され、通路部材28の内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線に平行な平行光となり、筐体50の円形孔50c1から出射される。
イメージングプレート15は、移動ステージ21、スピンドルモータ27及びテーブル16と共に、回折環撮像位置へ移動し、また、後述する撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域、及び回折環を消去する回折環消去領域へ移動する。この移動において、イメージングプレート15の中心軸は、出射X線の光軸とイメージングプレート15における回転角度0°の位置(ライン)とが成す平面内に保たれた状態で、出射X線の光軸に垂直な方向に移動する。
レーザ検出装置30は、回折環を撮像したイメージングプレート15にレーザ光を照射し、イメージングプレート15が発光した光の強度を検出する。レーザ検出装置30は、回折環撮像位置にあるイメージングプレート15からフィードモータ22側に充分離れており、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置30によって遮られないようになっている。レーザ検出装置30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、反射鏡33、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36等を備えた光ヘッドであり、光ディスクの記録再生に用いられるものと同様な構成である。 レーザ駆動回路77は、コントローラ91から指令が入力すると、フォトディテクタ42から入力する信号の強度が所定の強度になるようレーザ光源31に駆動信号を出力し。レーザ光源31からは一定強度のレーザ光が出射される。フォトディテクタ42は後述するダイクロイックミラー34で微量が反射し、集光レンズ41を介して受光したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力するが、ダイクロイックミラー34での反射の割合は一定であるので、出射したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力すると見なせる。コリメートレンズ32はレーザ光を平行光にし、反射鏡33はレーザ光を、ダイクロイックミラー34に向けて反射し、ダイクロイックミラー34は、入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ36は、レーザ光をイメージングプレート15の表面に集光させる。対物レンズ36には、フォーカスアクチュエータ37が組み付けられており。後述するフォーカスサーボにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
集光されたレーザ光が、イメージングプレート15の回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じ、回折環撮像時における回折X線の強度に応じた光が発生する。この輝尽発光により発生した光はレーザ光の波長よりも波長が短く、レーザ光の反射光と共に対物レンズ36を通過するが、ダイクロイックミラー34にて大部分が反射し、レーザ光の反射光は大部分が透過する。ダイクロイックミラー34で反射した光は、集光レンズ38、シリンドリカルレンズ39を介してフォトディテクタ40に入射する。フォトディテクタ40は、4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子からなり、4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅回路78に出力する。なお、シリンドリカルレンズ39は非点収差を生じさせるためにある。
増幅回路78は、入力した4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅してフォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。フォーカスエラー信号生成回路79は、非点収差法におけるフォーカスエラー信号を生成してフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により指令が入力すると作動開始し、入力したフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、入力したフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ37を駆動して、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に変位させ、これにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
SUM信号生成回路80は、入力した4つの受光信号を合算してSUM信号を生成し、A/D変換回路83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート15にて反射し、ダイクロイックミラー34で反射した微量のレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート15にて反射するレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、撮像された回折環における回折X線の強度に相当する。A/D変換回路83は、コントローラ91から指令が入力すると、入力するSUM信号の瞬時値をデジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
また、対物レンズ36に隣接して、LED光源43が設けられている。LED光源43は、LED駆動回路84によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91から指令を入力すると、LED光源43に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
また、X線回折測定装置は、LED光源44を有する。LED光源44は、図2乃至図4に示すように、移動ステージ21とテーブル駆動機構20の上壁26の下面との間に配置されたプレート45の一端部下面に固定されている。プレート45は、移動ステージ21内に固定されたモータ46の出力軸46aに固着されており、モータ46の回転により、上壁26の下面に平行な面内を回転する。移動ステージ21にはストッパ部材47a,47bが設けられており、ストッパ部材47aは、プレート45を図4のD1方向に回転させたとき、LED光源44が上壁26の貫通孔26a及び移動ステージ21の貫通孔21aに対向する位置(A位置)で静止するように、プレート45の回転を規制する。一方、ストッパ部材47bは、プレート45を図4のD2方向に回転させたとき、プレート45が上壁26の貫通孔26aと移動ステージ21の貫通孔21aとの間を遮断しない位置(B位置)で静止するように、プレート45の回転を規制する。言い換えれば、A位置は、プレート45が図2及び図3に示す状態にある位置であり、LED光源44から出射されるLED光がスピンドルモータ27の貫通孔27a1に設けた通路部材28の通路に入射する位置である。B位置は、X線出射器10から出射されるX線がプレート45によって遮られない位置である。LED光源44は、コントローラ91によって作動制御されるLED駆動回路85からの駆動信号によりLED光を出射する。LED光は拡散する可視光であるが、プレート45がA位置にあるとき、その一部は、出射X線と同様の経路で貫通孔18aから出射するので、出射X線と同様、貫通孔27a1の軸線に平行な平行光になる。
モータ46はエンコーダ46bを備えており、エンコーダ46bはモータ46が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を回転制御回路86に出力する。回転制御回路86は、コントローラ91から回転方向と回転開始の指令が入力されると、モータ46に駆動信号を出力し、モータ46を指示方向に回転させる。そして、エンコーダ46bからパルス列信号の入力が停止すると、駆動信号の出力を停止する。これにより、プレート45を、上述したA位置及びB位置までそれぞれ回転させることができる。
筐体50の切欠き部壁50cには結像レンズ48が設けられ、筐体50内部には撮像器49が設けられている。撮像器49は、CCD受光器又はCMOS受光器で構成され、各撮像素子ごとの受光強度に相当する強度の信号をセンサ信号取出回路87に出力する。結像レンズ48及び撮像器49は、イメージングプレート15に対して設定された位置にある測定対象物OBにおけるLED光の照射点を中心とした領域の画像を撮像するデジタルカメラとして機能する。イメージングプレート15に対して設定された位置とは、測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点からイメージングプレート15までの垂直距離Lが、予め決められた設定距離となる位置である。この場合の結像レンズ48及び撮像器49による被写界深度は、前記照射点を中心とした前後の範囲で設定されている。センサ信号取出回路87は、撮像器49の各撮像素子ごとの信号強度データを、各撮像素子の位置(すなわち画素位置)が分かるデータと共にコントローラ91に出力する。
また、結像レンズ48の光軸は、X線出射器10から出射されるX線の光軸とイメージングプレート15の回転基準位置のラインを含む平面に含まれるとともに、この光軸と測定対象物OBに照射されるX線及びLED光の光軸が交わる点は、イメージングプレート15から設定された距離にある測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点であるように調整されている。さらに、X線及びLED光の測定対象物OBに対する入射角度が設定値であるとき、結像レンズ48の光軸と測定対象物OBのX線及びLED光の照射点における法線方向とが成す角度は前記入射角度に等しい角度であるようにされている。したがって、測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離が設定された距離にあり、X線及びLED光が測定対象物OBに設定された入射角度で照射された場合には、結像レンズ48に入射する散乱光の光軸と反射光の光軸はいずれも結像レンズ48の光軸と一致するため、撮像器49におけるLED光の照射点と測定対象物OBで反射したLED光の受光点は同じ位置に生じる。測定対象物OBに照射されるLED光は平行光であるので、照射点において、LED光は散乱光と、略平行光のまま反射する反射光を発生させるが、散乱光のうち結像レンズ48に入射した光は撮像器49の位置で結像して照射点となり、結像レンズ48に入射した反射光は結像レンズ48により集光されて撮像器49で受光され受光点なる。よって、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離が設定された距離であり、LED光が測定対象物OBに設定された入射角度で照射されたとき、撮像器49が出力する信号強度データから作成される撮影画像では、照射点の画像と受光点の画像は同じ位置になる。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された各種プログラムを実行してX線回折測定装置の作動を制御する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、表示画面上に撮像器49から入力する信号強度データにより作成された撮影画像を表示するとともに、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する箇所に相当する箇所に十字のマークを表示する。この十字のマークは、LED光(出射X線)の照射点からイメージングプレート15までの距離が設定された距離であり、LED光(出射X線)が測定対象物OBに設定された入射角度で照射されたとき、照射点の画像および受光点の画像が生じる位置である。さらに、表示装置93は、熱膨張係数測定システムの各種の設定状況、作動状況及び測定結果などを表示する。高電圧電源95は、X線出射器10にX線出射のための高電圧及び電流を供給する。
筐体50には傾斜センサ55が取り付けられており、傾斜センサ55は筐体50の側面壁に平行な設定方向と垂直な方向の2方向における傾斜角度(それぞれの方向と重力方向が成す角度から90°を減算した角度)に相当する信号を、傾斜センサ信号取出回路88へ出力する。なお、X線出射器10から出射されるX線の光軸(LED光源44から出射されるLED光の光軸)とイメージングプレート15の回転基準位置のラインとを含む平面は、筐体50の側面壁と平行になっている。以下、X線出射器10から出射されるX線の光軸(LED光源44から出射されるLED光の光軸)とイメージングプレート15の回転基準位置のラインとを含む平面を基準平面という。そして、傾斜センサ55が出力する傾斜角度について基準平面を用いて表現すると、傾斜センサ55は基準平面内の設定方向と基準平面の垂直方向における傾斜角度を出力する。
傾斜センサ信号取出回路88は、コントローラ91から指令が入力すると、傾斜センサ55が出力する信号を傾斜角度のデジタルデータにしてコントローラ91へ設定された時間間隔で出力する。コントローラ91は入力装置92から、出射X線(LED光)が測定対象物OBに設定された入射角度で照射され、X線照射点(LED光照射点)部分の法線が基準平面に含まれていることを意味する入力があると、言い換えると撮像画像におけるLED光の照射点と受光点が十字のマークと合致していることを意味する入力があると、そのタイミングで入力した傾斜角度のデータを記憶し、これ以降入力する傾斜角度のデータから出射X線(LED光)の入射角度ψと基準平面とX線照射点(LED光照射点)の法線方向とが成す角度Θtを計算して表示装置93に表示する。計算式は、記憶した傾斜角度の内、基準平面内の設定方向における傾斜角度をΘxm、基準平面の垂直方向における傾斜角度をΘymとし、出射X線(LED光)の設定された入射角度をψs、設定された時間間隔で入力する基準平面内の設定方向における傾斜角度をΘx、基準平面の垂直方向における傾斜角度をΘyとすると、次の数1及び数2の計算式である。
(数1)
ψ = ψs+(Θx−Θxm)
(数2)
Θt = Θy−Θym
作業者は、表示装置93に表示される入射角度ψと角度Θtを見ながら、アーム式移動装置を操作してX線回折測定装置の筐体50の姿勢を調整することで、角度Θtが0(基準平面にX線照射点の法線方向が含まれる状態)でX線の入射角度ψを希望する角度にすることができる。
測定対象物OBは、ヒーター63が内蔵され温度センサ61がセットされたプレートPLの表面に置かれる。温度センサ61は熱膨張係数の測定において変化させる温度の範囲でプレートPLの温度を精度よく検出することができればどのようなものでもよく、例えば熱電対や測温抵抗体による温度センサを用いることができる。温度センサ61が出力する温度に対応する電気信号は温度制御装置60内の温度検出回路62とコントローラ91に入力する。温度検出回路62はコントローラ91の指令により作動開始し、設定された時間間隔で入力した電気信号から温度のデジタルデータを作成して、コントローラ91と後述する温度制御回路64に出力する。温度制御回路64も温度制御装置60内にあり、コントローラ91の指令により作動開始し、温度検出回路62から入力する温度データの温度制御回路64内に記憶されている温度からの差をなくすよう、ヒーター63に出力する駆動信号の強度を制御する。温度制御回路64内に記憶されている温度は、コントローラ91から温度データが入力すると書き換えられ、コントローラ91は入力装置92から温度値が入力すると温度制御回路64に温度データを出力する。これにより、作業者が入力装置92から設定する温度を入力するごとに、温度制御回路64の制御により、プレートPLの温度およびプレートPL上に載置された測定対象物OBの温度が設定温度になる。また、コントローラ91は温度検出回路62から温度データが入力するごとに、その温度を表示装置93に表示する。よって、作業者は入力装置92から設定温度を入力した後、表示装置93の表示を見ることで測定対象物OBの温度が設定温度になったか確認することができる。
次に、上記のように構成したX線回折測定装置を含む熱膨張係数測定システムを用いて、測定対象物OBの熱膨張係数を測定する具体的方法について説明する。作業者は熱膨張係数測定システムを測定対象物OBの近傍にセットし、プレートPLに測定対象物OBを載置した後、アーム式移動装置を操作してX線回折測定装置(筐体50)を測定対象物OBの近くまで移動させ、電源を投入して熱膨張係数測定システムを作動させる。この後、熱膨張係数測定は図5に示すように、X軸方向残留垂直応力取得工程S1、Y軸方向残留垂直応力取得工程S2、無ひずみ回折面法線方向計算工程S3及び熱膨張係数取得工程S4の順に行われる。
X軸方向残留垂直応力取得工程S1は、測定対象物OBの表面に平行な任意の方向をX軸にし、このX軸方向における残留垂直応力を測定する工程である。なお、X軸は測定対象物OBの表面に平行であれば任意の方向でよいが、後述するY軸方向残留垂直応力取得工程S2を行う際、X軸の垂直方向をY軸にする必要があるので、X軸は測定対象物OBの側面に平行に設定するのが作業効率の点でよい。X軸方向残留垂直応力取得工程S1は図6に示すように、位置姿勢調整工程S11、回折環撮像工程S12、回折環読取り工程S13、回折環消去工程S14及び残留垂直応力計算工程S15の順に行われるが、これらの工程は先行技術文献の特許文献2で既に詳細に説明されているので、簡略的に説明するにとどめる。
位置姿勢調整工程S11は、測定対象物OBに対するX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整する工程である。作業者は、まず、アーム式移動装置を操作してX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整することで、おおよそで測定対象物OBにおけるX線の照射点及びX線の入射方向を目的とする測定位置と方向にし、X線の照射点からイメージングプレート15までの距離を設定距離になるようにする。
次に作業者は、入力装置92から位置姿勢の調整を行うことを入力する。この入力により、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、イメージングプレート15を回折環撮像位置(図1乃至図3の状態)に移動させ、モータ46を駆動させてプレート45をA位置まで回転させ、LED光源44を点灯させる。これにより平行光であるLED光が筐体50の円形孔50c1から外部へ出射され、測定対象物OBの目的とする測定位置付近に照射される。さらに、コントローラ91は、撮像器49による撮像信号をセンサ信号取出回路87からコントローラ91に出力させ、この撮像信号から作成したLED光の照射点近傍の画像を表示装置93に表示させる。このとき、表示される画像には、撮像信号によって表示される画像とは独立して、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する位置に相当する撮影画像上の位置に、十字マークが表示される。
この場合、十字マークのクロス点は表示装置93の画面の中心に位置し、十字マークのX軸方向は画面の横方向に対応し、十字マークのY軸方向は画面の縦方向に対応する。そして、十字マークのクロス点は、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離Lが設定値であるときに、照射点が撮像される位置であると同時に、距離Lが設定値であり、LED光が測定対象物OBに設定された入射角度で入射されるとき、受光点が撮像される位置である。また、十字マークのY軸方向がLED光及びX線の照射方向であり、この方向を測定対象物OBに投影させた方向が残留垂直応力の測定方向である。
作業者は、表示装置93に表示される画像を見ながら、アーム式移動装置を操作して、X線回折測定装置(筐体50)に対する測定対象物OBの位置と姿勢を調整し、画面上におけるLED光の照射点が測定対象物OBの目的とする測定位置になるとともに、十字マークのクロス点と合致するようにする。そして、LED光の受光点も十字マークのクロス点と合致するようにする。さらに十字マークのY軸方向を測定対象物OBに投影させた方向が、測定対象物OBの表面に設定したX軸方向になるようにする。調整が完了すると、作業者は入力装置92から位置姿勢の調整終了を入力する。これにより、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、LED光源44を消灯させ、撮像信号の出力を停止させ、モータ46を駆動させてプレート45をB位置まで回転させる。これにより、X線出射器10から出射されるX線が、移動ステージ21の貫通孔21aに入射され得る状態となる。
次の回折環撮像工程S12において、作業者は入力装置92から測定対象物OBの材質(本実施形態では、鉄)を入力し、測定開始を入力する。これにより、コントローラ91は、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート15を低速回転させ、エンコーダ27cからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート15の回転を停止させる。これにより、回折環の読取り時において回転角度0°となる状態で、イメージングプレート15に回折環が撮像されるようになる。次に、コントローラ91は、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、測定対象物OBにおけるX線照射点で発生した回折X線により、イメージングプレート15に回折環が撮像されていく。そして、所定時間の経過後に、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を停止させる。
次にコントローラ91は、回折環読取り工程S13を実行する。コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させる。読取り開始位置とは、レーザ光の照射位置が回折環基準半径Roの円に対して若干だけ内側になるような位置である。回折環基準半径Roとは、測定対象物OBの残留応力が「0」であるときに、イメージングプレート15上に形成される回折環の半径であり、測定対象物OBにおけるX線の回折角2Θm(Θmはブラッグ角)及びX線照射点からイメージングプレート15までの距離LからRo=L・tan(2Θm)の計算式で計算される。そして、X線の回折角2Θmは測定対象物OBの材質で決まり、距離Lは設定値に調整されているので、測定対象物OBの材質ごとに予め回折角2Θmを記憶しておけば、測定対象物OBの材質を入力することで回折環基準半径Roは計算できる。
次に、コントローラ91は、スピンドルモータ制御回路74を制御して、スピンドルモータ27を所定の回転速度で回転させ、レーザ駆動回路77を制御してレーザ検出装置30からレーザ光をイメージングプレート15に照射させ、フォーカスサーボ回路81を制御してフォーカスサーボを開始させる。さらに、回転角度検出回路75を制御して、スピンドルモータ27(イメージングプレート15)の回転角度θpの出力を開始させ、A/D変換回路83を制御して、SUM信号の瞬時値Iのデータ出力を開始させ、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ22を回転させ、イメージングプレート15を読取り開始位置から図1及び図2の右下方向へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置は、相対的にイメージングプレート15上を螺旋状に回転し始める。その後、コントローラ91は、イメージングプレート15が所定の小さな角度だけ回転するごとに、A/D変換回路83が出力するSUM信号の瞬時値Iのデータと、回転角度検出回路75が出力する回転角度θpのデータと位置検出回路72が出力する移動距離xのデータとを入力し、それぞれのデータを対応させて記憶する。なお、移動距離xはレーザ光照射位置の径方向距離r(半径値r)に変換したうえで記憶する。これにより、螺旋状に回転するレーザ光の照射位置に関して、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータが所定回転角度ごとに順次記憶されていく。
SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータの所定回転角度ごとの記憶動作と並行して、コントローラ91は、回転角度θpごとに半径値rに対するSUM信号の瞬時値Iの曲線を作成し、曲線のピークに対応した半径値rαとSUM信号強度値Iαを記憶する。これは回折環の回転角度αごとに半径方向における回折X線の強度分布を求め、回折X線の強度がピークとなる箇所の半径値rαと回折X線の強度に相当する強度Iαを求める処理である。そして、すべての回転角度θp(回転角度α)において半径値rαと強度Iαを取得し、検出するSUM信号の瞬時値Iが強度Iαに対して充分小さくなった時点で、データの記憶を終了する。これにより、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布が瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群で、および回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαで検出されたことになる。その後、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、フォーカスサーボを停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換回路83と回転角度検出回路75の作動を停止させ、フィードモータ22の作動を停止させる。なおイメージングプレート15の回転は、継続されている。
次にコントローラ91は、回折環消去工程S14を実行する。コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート15の消去開始位置とは、LED光源43から出力されるLED光の中心が回折環基準半径Roの円に対して前記読取り開始位置の場合よりもさらに内側になる位置である。次に、コントローラ91は、LED駆動回路84を制御してLED光源43によるLED光をイメージングプレート15に対して照射させ、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15が前記消去開始位置から消去終了位置まで図1及び図2の右下方向に一定速度で移動するよう、フィードモータ22を回転させる。消去終了位置とは、LED光の中心が回折環基準半径Roよりも前記消去開始位置と同じ程度の距離だけ外側となる位置である。これにより、LED光がイメージングプレート15上に螺旋状に照射され、撮像された回折環が消去される。
イメージングプレート15が消去終了位置になると、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15の移動を停止させ、LED駆動回路84を制御してLED光の照射を停止させ、位置検出回路72の作動を停止させ、スピンドルモータ制御回路74を制御してスピンドルモータ27(イメージングプレート15)の回転を停止させる。
次にコントローラ91は、残留垂直応力計算工程S15を実行する。これは、回折環の形状である回転角度αごとの半径値rαのデータ、X線照射点からイメージングプレート15までの距離とX線の入射角の設定値、及び測定対象物OBの材質(本実施形態では鉄)において既知の値である回折角、ヤング率、ポアソン比等の定数を用いて、cosα法を用いた演算により残留垂直応力を計算する演算処理である。ただし、残留垂直応力を計算する演算は公知技術を用いたものであり、例えば特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されているので説明は省略する。
X軸方向残留垂直応力取得工程S1が終了するとY軸方向残留垂直応力取得工程S2を行うが、これは、X線照射点を変えず、測定対象物OBの表面に平行でX軸方向に垂直なY軸方向の残留垂直応力を測定する工程であり、行うことはX軸方向残留垂直応力取得工程S1と同じである。すなわち、Y軸方向残留垂直応力取得工程S2においても図6に示した、位置姿勢調整工程S11、回折環撮像工程S12、回折環読取り工程S13,回折環消去工程S14及び残留垂直応力計算工程S15を行う。なお、このときの位置姿勢調整工程S11は、測定対象物OBおけるLED光の照射点がX軸方向残留垂直応力を測定したときと同じ箇所になるとともに、撮影画面上におけるLED光の照射点、受光点が十字マークのクロス点と合致するようにする。そして、十字マークのY軸方向を測定対象物OBに投影させた方向が、測定対象物OBの表面のY軸方向になるようにする。これ以降の回折環撮像工程S12、回折環読取り工程S13、回折環消去工程S14及び残留垂直応力計算工程S15は上述したX軸方向残留垂直応力取得工程S1における説明と同一である。
Y軸方向残留垂直応力取得工程S2が終了すると、無ひずみ回折面法線方向計算工程S3を行う。これは、入力装置92から計算実行を入力することでコントローラ91内で行われる演算処理であり、取得されているX軸方向残留垂直応力とY軸方向残留垂直応力をある計算式に代入することで、測定対象物OBの回折面において無ひずみとすることができる回折面の法線方向を求める計算である。以下、この計算式が理論的に導き出せることを説明する。
測定対象物OBに対するX線の侵入深さが浅いほとんどの場合において、測定対象物OBは平面応力状態で仮定することができる。図7に示すように測定対象物OBの表面に平行で直交する2軸をとり、測定対象物OBの表面に垂直なZ軸をとり、それぞれの軸方向の残留垂直応力をσ1,σ2,σzとし、それぞれの軸方向のひずみをε1,ε2,εzとする。平面応力状態にあると仮定すると、σz=0とすることができる。次に、図7に示すようにσ1,σ2の軸で定まる平面(測定対象物OBの平面)内でσ1の軸から角度φにX軸をとり、σ1,σ2の軸で定まる平面内でX軸に直交する方向にY軸をとる。そして、X軸方向の残留垂直応力をσx、ひずみをεx、Y軸方向の残留垂直応力をσy、ひずみをεyとする。そして、XZ平面でZ軸から角度ψの方向のひずみをεφψとする。ひずみεφψは、3方向のひずみε1,ε2,εzを用いて以下の数3で表される。
(数3)
εφψ = ε1・cosφsinψ + ε2・sinφsinψ+εz・cosψ
またX軸方向のひずみεxは、以下の数4で表される。
(数4)
εx = ε1・cosφ + ε2・sinφ
数4をε1・cosφ=の式にして数3のε1・cosφに代入して式を整理すると、以下の数5の式が成り立つ。
(数5)
εφψ = εx・sinψ + εz・cosψ
次に平面応力状態にあると仮定すると、X,Y,Z軸方向のひずみεx,εy,εzと、X,Y軸方向の残留垂直応力σx,σyには、フックの法則により以下の数6から数8の関係がある。Eはヤング率、νはポアソン比である。
(数6)
εx = (1/E)・(σx−ν・σy)
(数7)
εy = (1/E)・(σy−ν・σx)
(数8)
εz = −(ν/E)・(σx+σy)
数5の式のεxに数6の式を代入し、εzに数8の式を代入して式を整理すると、以下の数9が成り立つ。
(数9)
εφψ = {(1+ν)/E}・σx・sinψ + (ν/E)・(σx+σy)
XZ平面でZ軸から角度ψの方向のひずみεφψが0になるとき、数9の式は以下の数10のようになる。
(数10)
{(1+ν)/E}・σx・sinψ +(ν/E)・(σx+σy)=0
数10の式を変形してψ=の式にすると、以下の数11になる。
(数11)
ψ = sin−1〔{ν/(1+ν)}・{1+(σy/σx)}〕
X,Y軸方向の残留垂直応力σx,σyの値を数11の式に代入すれば、XZ平面でひずみεφψが0になる方向の角度ψを求めることができる。この角度ψが無ひずみ回折面法線方向であり、数11が無ひずみ回折面法線方向計算工程S3において、X軸方向残留垂直応力とY軸方向残留垂直応力から無ひずみ回折面法線方向を求める計算式である。
XZ平面において無ひずみ回折面法線方向が存在することを視覚的に説明したものが図8である。図8では分かりやすくするため、応力はX軸方向のみより作用しているとしている。X軸方向に応力が作用するとX軸方向に垂直な回折面の間隔は(A)のように縮む。これに対し、Z軸方向に垂直な回折面の間隔は(B)のように拡がる。これより、XZ平面で原点を起点にする方向をX軸方向からZ軸方向に向けてを回転させていくと回折面の間隔の変化が0になる方向があることがわかる。実際はY軸方向の応力があるが、Y軸方向の応力があっても、Z軸方向に垂直な回折面の間隔は拡がるので、X軸方向の回折面の間隔が縮んでいれば、XZ平面に回折面の間隔の変化が0になる方向がある。
コントローラ91は無ひずみ回折面法線方向として角度ψが計算されると、無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向を計算して、表示装置93に後述する熱膨張係数取得工程S4でのX線の入射角ψnとして表示する。回折角は2×ブラッグ角であるので、{(180°−回折角)/2}は(90°−ブラッグ角)である。すなわち、無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向とは、ブラッグ角をΘとすると図9に示すように、無ひずみ回折面に対して(90°−Θ)の入射角の方向、言い換えると無ひずみ回折面とΘの角度をなす方向である。図9はブラッグの式を説明するときに用いられる図を用いて回折環が形成されるときの状態を示す図であり、図9のように無ひずみ回折面に対して(90°−Θ)の入射角でX線が入射すると、ブラッグの式2d・sinΘ=n・λが成立するA点のX線回折像において、回折面間隔dは無ひずみである。すなわち、A点のX線回折像からブラッグの式で計算される回折面間隔dは、熱膨張のみにより変化する値である。
表示装置93が無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向である入射角ψnを表示すると、熱膨張係数取得工程S4を行う。これは、図10に示す工程フローに従って行われる。最初の位置姿勢調整工程S21は、X軸方向残留垂直応力取得工程S1における位置姿勢調整工程S11の位置姿勢の調整とX線の入射角を異ならせるのみの調整である。作業者は、まず、X軸方向残留垂直応力取得工程S1における位置姿勢調整工程S11と同じ調整を行い、LED光照射点(X線照射点)からイメージングプレート15までの距離と測定対象物OBに対するX線の入射角を設定値にする。すなわち、LED光の照射点が測定対象物OBのX軸方向残留垂直応力取得工程S1とY軸方向残留垂直応力取得工程S2のときのX線照射点と同じ箇所になるとともに、撮影画像上のLED光の照射点と受光点が十字マークのクロス点と合致するようにする。この調整が終了すると作業者は入力装置92から、設定された入射角度でLED光が照射され、LED光照射点部分の法線が基準平面に含まれていることを意味する入力を行う。この後、上述したように表示装置93にはLED光(X線)の入射角度ψと、基準平面とLED光照射点(X線照射点)の箇所の法線とがなす角度Θtが表示される。作業者は、測定対象物OBにおけるLED光の照射点が上述した箇所のまま、撮影画像上のLED光の照射点が十字マークのクロス点と合致するようにするとともに、表示装置93に表示される入射角度ψが入射角ψnになり角度Θtが0になるよう、X線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整する。
次に作業者は温度調整工程S22で入力装置92から温度制御開始の指令と測定対象物OBの設定温度T1を入力する。これにより、コントローラ91は温度制御装置60内の2つの回路に作動開始の指令と温度制御回路64に設定温度を出力し、上述した温度制御装置60、温度センサ61及びヒーター63の作動により、プレートPL及びプレートPLに載置された測定対象物OBの温度は設定温度T1になる。温度制御装置60内の温度検出回路62から温度センサ61により検出された温度のデジタルデータが短い時間間隔でコントローラ91に入力し、表示装置93には検出温度が表示されるので、作業者は表示された検出温度から測定対象物OBが設定温度T1になったことを確認した後、次の工程を行う。
次の回折環撮像工程S23、回折環読取り工程S24及び回折環消去工程S25は、X軸方向残留垂直応力取得工程S1での回折環撮像工程S12、回折環読取り工程S13及び回折環消去工程S14と同一であり、上述した説明がそのまま適用できる。回折環消去工程S25の次の回折面間隔計算工程S26は、コントローラ91内にて回折環の形状である回転角度αごとの半径値rαのデータ、X線照射点からイメージングプレート15までの距離L及びX線の波長λから、ブラッグの式2d・sinΘ=n・λを用いて回折面間隔dを計算する演算処理である。以下、この演算を説明する。
まず、回転角度αごとの半径値rαから回転角度0における半径値r0を抽出する。半径値r0は図11に示すように回転角度0における回折環の半径値であるが、回転角度0における回折環の箇所は図9におけるA点のX線回折像であり、半径値r0は図9におけるA点のX線回折像の出射X線光軸からの距離である。次に半径値r0とX線照射点からイメージングプレート15までの距離Lとからtan−1(r0/L)の式により図9に示す(90°−Θ)の角度を計算し、さらにブラッグ角Θを計算する。次に得られたブラッグ角Θと既知であるX線の波長λをブラッグの式2d・sinΘ=n・λに代入し、n=1にして回折面間隔dを計算する。これで設定温度T1における回折面間隔dが得られる。
次に作業者はS27にて得られたデータ数が充分であるか判断し、データ数はまだ充分でないので温度調整工程S22に戻って次の設定温度T2を入力装置92から入力する。以後、上述した温度調整工程S22から回折面間隔計算工程S26を再度行い、設定温度T2における回折面間隔dを得る。このようにして温度調整工程S22から回折面間隔計算工程S26を繰り返すことで設定温度T1,T2,T3・・・ごとに回折面間隔dが得られていく。そして、S27にて得られたデータ数が充分であると判断できれば、熱膨張係数計算工程S28にて入力装置92から温度制御停止の指令と熱膨張係数計算の指令を入力する。熱膨張係数計算はコントローラ91内にて行われる演算処理であり、設定温度と回折面間隔から算出される格子定数の相関図の回帰線を最小2乗法で求め、この回帰線の傾きを標準の格子定数(0℃の格子定数)で除算することで求めることができる。この計算は、特許文献1でも示されている公知技術である。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、対象とする測定対象物OBに向けてX線を照射して測定対象物OBにて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から測定対象物OBの表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力を算出するX軸方向残留垂直応力取得工程S1と、X軸方向残留垂直応力取得工程S1における測定対象物OBのX線照射点にX線を照射して、測定対象物OBにて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から測定対象物OBの表面に平行に設定したY軸方向の残留垂直応力を算出するY軸方向残留垂直応力取得工程S2と、X軸方向残留垂直応力取得工程S1及びY軸方向残留垂直応力取得工程S2で算出された2つの残留応力から、測定対象物OBのX線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向計算工程S3と、測定対象物OBの温度を変化させ、測定対象物OBの温度を検出することと、XZ平面において算出された無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射して、測定対象物OBにて発生した回折X線によりX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、X線回折像から測定対象物OBの回折面間隔を算出して温度と回折面間隔との関係を取得する熱膨張係数取得工程S4におけるS21乃至S27の工程と、熱膨張係数取得工程S4におけるS21乃至S27の工程により取得された関係を用いて、測定対象物OBの熱膨張係数を算出する熱膨張係数計算工程S28とを備えた熱膨張係数測定方法としている。
これによれば、測定対象物OBに残留応力があっても、測定対象物OBの表面に平行に設定したX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を求め、これら2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出し、XZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射すれば、得られるX線回折像から算出される回折面間隔は残留応力の影響を受けない値となる。よって、測定対象物OBの温度を変化させ、温度検出と、XZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射してX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行えば、温度と熱膨張にのみ影響する回折面間隔との関係を取得することができ、これより熱膨張係数を精度よく算出することができる。
また、上記実施形態においては、測定対象物OBに向けてX線を照射した際に撮像されるX線回折像は回折環であり、X軸方向及びY軸方向の残留垂直応力は、撮像される回折環の形状を読み取ってcosα法により計算するものであり、回折面間隔は、撮像される回折環のXZ平面と交差する箇所の半径値r0を検出してブラッグの式により計算するものであるようにしている。
これによれば、測定対象物OBに対してX線を照射する方向を3回変えるのみで、熱膨張係数を測定することができるので、効率よく熱膨張係数を測定することができる
また、上記実施形態においては、熱膨張係数を測定する際に使用するX線回折測定装置として、対象とする測定対象物OBに向けてX線を出射するX線出射器10と、X線出射器10から測定対象物OBに向けてX線が照射された際、測定対象物OBにて発生した回折X線をイメージングプレート15にて受光してX線回折像を撮像し、X線回折像を検出するレーザ検出装置30、テーブル駆動機構20及び各種回路等からなるX線回折像検出機器と、X線出射器10とX線回折像検出機器とを内部に配置した筐体50と、測定対象物OBに対する筐体50の位置と向きを変更し、X線出射器10から出射されたX線の測定対象物OBに対する照射方向を変更するアーム式移動装置と、X線回折像検出機器により検出されたX線回折像から、測定対象物OBの表面に平行な方向における残留垂直応力を算出するコントローラ91にインストールされた残留垂直応力計算プログラムと、X線回折像検出機器により検出されたX線回折像から、測定対象物OBの回折面間隔を算出するコントローラ91にインストールされた回折面間隔計算プログラムと、残留垂直応力計算プログラムが、同一のX線照射点における測定対象物OBの表面に平行に設定したX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出したとき、算出した2つの残留応力から、X線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出するコントローラ91にインストールされた無ひずみ回折面法線方向計算プログラムとを備えたX線回折測定装置としている。
これによれば、アーム式移動装置によりX線の照射方向を変更してX線出射器10からX線を照射し、X線回折像検出機器によりX線回折像を検出し、残留垂直応力計算プログラムにより検出されたX線回折像から残留垂直応力を算出することで、測定対象物OBの表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力とY軸方向の残留垂直応力を取得することができる。また、無ひずみ回折面法線方向計算プログラムにより取得された2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出することができる。また、アーム式移動装置によりによりXZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線が照射されるようX線の照射方向を変更し、X線出射器10からX線を照射してX線回折像検出機器によりX線回折像を検出することができる。また、回折面間隔計算プログラムにより検出されたX線回折像ごとに回折面間隔を算出することができる。すなわち、このX線回折測定装置を使用すれば無ひずみ回折面法線方向を求め、熱膨張にのみ影響する回折面間隔を求めることができるので、X線回折測定装置の他に測定対象物OBの温度を変化させる装置と温度を検出する装置を用意するのみで、熱膨張係数を精度よく測定することができる。
(変形例)
上記実施形態においては、X軸方向の残留垂直応力とY軸方向の残留垂直応力を求め、これら2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出し、XZ平面において無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射するようにして、測定対象物OBの温度ごとにX線回折像を撮像するようにした。しかし、同一の製造工程で製造された複数の測定対象物OBの熱膨張係数をそれぞれ測定するときは、2つ目以降の測定対象物OBにおいては上記実施形態におけるX軸方向残留垂直応力取得工程S1、Y軸方向残留垂直応力取得工程S2及び無ひずみ回折面法線方向計算工程S3を除外することができる。
この変形例においては、最初の測定対象物OB1においては、熱膨張係数の測定方法は上記実施形態と同一である。なお、計算された無ひずみ回折面法線方向の角度はコントローラ91に記憶される。そして、2つ目以降の測定対象物OB2においては上記実施形態のX軸方向残留垂直応力取得工程S1、Y軸方向残留垂直応力取得工程S2及び無ひずみ回折面法線方向計算工程S3を除外し、熱膨張係数取得工程S4として図12に示す工程フローを行う。図12に示す工程フローは、測定対象物OB2の温度変化前に撮像した回折環から最初の測定対象物OB1において計算した無ひずみ回折面法線方向が許容限界を超えて変化していないことを確認したうえで、上記実施形態の熱膨張係数取得工程S4を行うものである。
まず、初期位置姿勢調整工程S31は上記実施形態における位置姿勢調整工程S21と同じである。すなわち、X線照射点からイメージングプレートまでの距離が設定値で無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線が照射されるようX線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢を調整する工程である。このときの無ひずみ回折面法線方向は最初の測定対象物OB1において求めたものである。以後、最初の測定対象物OB1において求めた無ひずみ回折面法線方向を仮の無ひずみ回折面法線方向という。なお、複数の測定対象物OBの形状が略同一であり、プレートPLの所定位置に測定対象物OBを載置することができるならば、初期位置姿勢調整工程S31は、X線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢が変化しないようにし、測定対象物OB2をプレートPLの所定位置に載置するのみでよい。
次の温度検出工程S32は、入力装置92から温度検出の指令を入力して、温度センサ61が検出する温度をコントローラ91に記憶させる工程である。次の回折環撮像工程S33、回折環読取り工程S34及び回折環消去工程S35は、上記実施形態におけるX軸方向残留垂直応力取得工程S1での回折環撮像工程S12、回折環読取り工程S13及び回折環消去工程S14と同一である。ここまでの工程で、仮の無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射したときの回折環の形状が、回転角度αごとの半径値rαのデータとして得られる。次に、無ひずみ回折面法線方向計算工程S36にて、得られた回折環の形状から無ひずみ回折面法線方向を計算する。以後、計算された無ひずみ回折面法線方向を真の無ひずみ回折面法線方向という。
真の無ひずみ回折面法線方向を計算する演算は、X軸方向とY軸方向の残留垂直応力から上記実施形態で示した計算式で計算するものである。また、X軸方向の残留垂直応力を計算する演算も上記実施形態と同じであり、公知技術である。上記実施形態と異なっているのは、Y軸方向の残留垂直応力を計算する演算であり、この場合は、出射X線の光軸がXZ平面に含まれるように照射して撮像した回折環の形状からY軸方向の残留垂直応力を計算する。この計算も公知技術であるが、示されている文献が少ないため以下に説明する。
特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に説明されているX軸方向の残留垂直応力を求める際の計算では回転角度αごとのひずみεαを用いてaの値を計算したが、Y軸方向の残留垂直応力を求めるには以下の数12の計算式からaの値を計算する。
(数12)
= (1/2){(εα+επ+α)+(ε−α+επ−α)}
値と回転角度αの余弦の二乗であるcosαには、残留垂直応力σx,σyを用いて次の数13、数14の関係式がある。
(数13)
= Φcosα + D
Figure 0006264591
数13においてDは、残留垂直応力σx、ヤング率E、ポアソン比ν、(180°−回折角)であるη及び入射角ψから定まる値であり定数である。よって、数13において変数はαとa値のみであるので、cosαとa値には直線の関係があり、cosαとa値の回帰線の傾きを最小二乗法で計算することでΦを求めることができる。そして、数14において、残留垂直応力σxは既に計算されており、ヤング率E、ポアソン比ν、(180°−回折角)であるη及び入射角ψは既知の値であるので、Φが得られれば、数14からσyを計算することができる。
無ひずみ回折面法線方向計算工程S36にて真の無ひずみ回折面法線方向として角度ψが計算されると、S37にて真の無ひずみ回折面法線方向と仮の無ひずみ回折面法線方向との差が許容限界内であるか否か判定し、許容限界内であれば回折面間隔計算工程S38にて上記実施形態で示されているように回折面間隔を計算する。この回折面間隔は、温度検出工程S32で検出された温度における回折面間隔である。続いてS40乃至S46の工程を行うが、これは上記実施形態の熱膨張係数取得工程S4における、S22乃至S28の工程と同じである。また、真の無ひずみ回折面法線方向と仮の無ひずみ回折面法線方向との差が許容限界を超えているときは、位置姿勢調整工程S39にて真の無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線が照射されるよう、X線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢を調整する。そして、S40乃至S46の工程を行うが、これも上記実施形態の熱膨張係数取得工程S4におけるS22乃至S28の工程と同じである。通常、同一の製造工程で製造された複数の測定対象物OBのそれぞれにおける無ひずみ回折面法線方向は許容限界内で一致するため、S37にてYesと判定されるケースは僅かであるが、製造工程中の何らかの要因で無ひずみ回折面法線方向が変化した場合は、その変化を検出したうえで熱膨張係数を精度よく測定できるようX線の入射角を変更することができる。
なお、出射X線の光軸がXZ平面に含まれるように照射して撮像した回折環の形状から計算したY軸方向の残留垂直応力は、出射X線の光軸がYZ平面に含まれるように照射して撮像した回折環の形状から計算したY軸方向の残留垂直応力より精度が落ちるので、真の無ひずみ回折面法線方向と仮の無ひずみ回折面法線方向との差が許容限界を超えている場合は、上記実施形態のように出射X線の方向を変えてY軸方向の残留垂直応力を取得し、真の無ひずみ回折面法線方向を計算するようにしてもよい。また、それ以降の測定対象物OBにおいても無ひずみ回折面法線方向が許容限界を超えている可能性があるので、計算した真の無ひずみ回折面法線方向を仮の無ひずみ回折面法線方向としてコントローラ91に記憶するようにしてもよい。
上記説明からも理解できるように、上記変形例においては、対象とする測定対象物OB1に向けてX線を照射して測定対象物OB1にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から測定対象物OB1の表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力を算出するX軸方向残留垂直応力取得工程S1と、X軸方向残留垂直応力取得工程S1における測定対象物OB1のX線照射点にX線を照射して、測定対象物OB1にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、X線回折像から測定対象物OB1の表面に平行に設定したY軸方向の残留垂直応力を算出するY軸方向残留垂直応力取得工程S2と、X軸方向残留垂直応力取得工程S1及びY軸方向残留垂直応力取得工程S2で算出された2つの残留応力から、測定対象物OB1のX線照射点における法線を含みX軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出し、採用する無ひずみ回折面法線方向とする無ひずみ回折面法線方向計算工程S3と、測定対象物OB1と同じ製造工程にて得られた測定対象物OB2の温度を変化させ、測定対象物OB2の温度を検出することと、XZ平面において採用した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射して、測定対象物OB2にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、X線回折像から測定対象物OB2の回折面間隔を算出して温度と回折面間隔との関係を取得する熱膨張係数取得工程S4におけるS40乃至S45の工程と、熱膨張係数取得工程S4におけるS40乃至S45の工程により取得された関係を用いて、測定対象物OB2の熱膨張係数を算出する熱膨張係数計算工程S46とを備えた熱膨張係数測定方法としている。
これによれば、同一の製造工程で製造された複数の測定対象物OBの熱膨張係数をそれぞれ測定するとき、最初の測定対象物OB1のみX軸方向及びY軸方向の残留垂直応力を算出して無ひずみ回折面法線方向を算出し、2つ目以降の測定対象物OB2に対してX線が、XZ平面において算出した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向から照射されるよう調整するようにすれば、2つ目以降の測定対象物OB2においてX線の照射方向を調整するのは1回のみでよく、効率よく熱膨張係数を測定することができる。また、それぞれの測定対象物OBを照射されるX線に対して同じ位置に位置決めすることができるプレートPLを設ければ、最初の測定対象物OB1以外はX線の照射方向の調整を行う必要はなく、さらに効率よく熱膨張係数を測定することができる。
また、上記変形例においては、測定対象物OB1と測定対象物OB2に向けてX線を照射した際に撮像されるX線回折像は回折環であり、X軸方向及びY軸方向の残留垂直応力の計算は、撮像される回折環の形状を読み取ってcosα法により計算するものであり、回折面間隔の計算は、撮像される回折環のXZ平面と交差する箇所の半径値を検出してブラッグの式により計算するものであり、熱膨張係数取得工程S4におけるS40乃至S45の工程の前に、測定対象物OB2にXZ平面において採用した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射してX線回折像を撮像し、撮像されたX線回折像からX軸方向の残留垂直応力とY軸方向の残留垂直応力とを算出し、算出された2つの残留応力から無ひずみ回折面法線方向を算出する熱膨張係数取得工程S4におけるS31乃至S36の工程と、熱膨張係数取得工程S4におけるS31乃至S36の工程にて算出された無ひずみ回折面法線方向の採用した無ひずみ回折面法線方向からの差が予め設定されている許容限界より大きいとき、採用する無ひずみ回折面法線方向を変更する熱膨張係数取得工程S4におけるS37及びS39の工程とを備えている。
これによれば、X線回折像として回折環を撮像するときは1つの回折環の形状からX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出することができるので、2つ目以降の測定対象物OB2において、X線の照射方向は熱膨張係数取得工程S4におけるS40乃至S45のときと同じにして、測定対象物OBの温度を変化させない状態で回折環を撮像してX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出し、無ひずみ回折面法線方向を算出する。そして、算出した無ひずみ回折面法線方向が採用した無ひずみ回折面法線方向より許容限界を超えてずれているときは、算出した無ひずみ回折面法線方向を採用する無ひずみ回折面法線方向とする。測定対象物OBの製造工程が同一であれば無ひずみ回折面法線方向は大きく変化しないが、製造工程の何らかの要因が変化して無ひずみ回折面法線方向が変化する可能性は僅かではあるが存在する。よって、2つ目以降の測定対象物OB2において無ひずみ回折面法線方向を求めれば、無ひずみ回折面法線方向が変化した場合でも対応することができる。また、S32で測定対象物OBの温度を検出しS38で回折面間隔を計算することで、熱膨張係数取得工程S4におけるS31乃至S36の工程でのX線回折像の撮像は、熱膨張係数取得工程S4におけるS40乃至S45での測定対象物の温度を変化させないときのX線回折像の撮像とすることができ、X線回折像の撮像回数自体は増えないので、測定効率は悪くならない。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態ではX線回折測定装置として、装置の筐体の位置と姿勢を調整することでX線の照射方向を変更することができ、X線回折像として回折環を撮像しcosα法により残留垂直応力を計算する装置を用いた。しかし、測定効率を重要視しなければ、X軸方向とY軸方向の残留垂直応力を測定することができ、XZ平面におけるX線の入射角度を任意の角度に調整できるX線回折測定装置であれば、どのような装置であっても本発明による熱膨張係数測定に使用することができる。例えば、測定効率を重要視しなければ、XZ平面及びYZ平面に平行にX線を測定対象物に照射でき、それぞれの平面でX線の入射角を変化させてX線回折像を撮像するsinψ法によるX線回折測定装置を使用することもできる。
また、上記変形例では、2つ目以降の測定対象物OB2においては、測定対象物OB2の温度を変化させないときの回折環撮像と回折環読取りにより得られた回折環の形状から真の無ひずみ回折面法線方向を算出し、仮の無ひずみ回折面法線方向からのずれが許容限界内であるか判定した後、測定対象物OB2の温度を変化させて、熱膨張係数を測定するための回折環撮像と回折環読取りを行うようにした。しかし、測定対象物OBの数量が限られており、すべての測定対象物OBの無ひずみ回折面法線方向が許容限界内で一致しているとすることができれば、真の無ひずみ回折面法線方向を算出するための回折環撮像と回折環読取りを除外してもよい。すなわち、熱膨張係数取得工程S4を上記実施形態の熱膨張係数取得工程S4と同一にしてもよい。また、この場合は、測定効率を重要視しなければ、X軸方向とY軸方向の残留垂直応力を測定することができ、XZ平面におけるX線の入射角度を任意の角度に調整できるX線回折測定装置であれば、どのような装置であっても使用することができる。
また、上記実施形態及び変形例では、X線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢がアーム式移動装置により調整できるようにしたが、測定対象物OBに入射するX線の照射方向を変更することができればよいので、X線回折測定装置の筐体50の位置と姿勢の調整は測定対象物OBと相対的であればよい。よって、測定対象物OBを載置するプレートPLの位置と姿勢を調整できる機構を設け、X線回折測定装置の筐体50はプレートPLの近傍に配置するだけにしてもよい。また、X線回折測定装置の筐体50とプレートPLの双方の位置と姿勢が調整できるようにしてもよい。
また、上記実施形態および変形例では、回折環を撮像し回折環を読取るX線回折測定装置を、イメージングプレート15に回折環を撮像し、レーザ検出装置30からレーザ光照射しながら走査して照射位置と光の強度検出を行う装置としたが、回折環を撮像し回折環を読取ることができるならば、どのような方式の装置でもよい。例えば、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線出射器10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折X線の強度分布を検出する装置でもよい。また、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDの代わりに、微小サイズのX線CCDを位置を検出しながら走査し、X線CCDの各画素が出力する電気信号とX線CCDの走査位置から、回折X線の強度分布を検出する装置でもよい。また、X線CCDに替えてシンチレータから出た蛍光を、光電子増倍管(PMT)で検出するシンチレーションカウンタを用いる装置でもよい。
また、上記実施形態ではおよび変形例では、コントローラ91に残留垂直応力、無ひずみ回折面法線方向、熱膨張係数を測定するときのX線入射角度、回折面間隔及び熱膨張係数を演算して求めるプログラムがインストールされているとした。しかし、測定効率を重要視しなければ、X線回折測定装置はX線回折像を検出するまでにし、上記の値の演算は別の装置で行うようにしてもよい。この場合、別の装置にX線回折像のデータを入力する方法としては、記録媒体を介する方法、ネット回線等を使用して転送する方法等、様々な方法が考えられる。また、さらに時間がかかってもよければ演算プログラムを使用せず、上記値の計算の一部またはすべてを手計算により行ってもよい。
また、上記実施形態及び変形例においては、X線回折測定装置の筐体50内とコントローラ91に、レーザ検出装置30、テーブル駆動機構20、各種回路及び制御プログラム等の回折環を読取る機能を備えた。しかし、測定に時間がかかってもよい場合は、X線回折測定装置は回折環を撮像するまでにし、回折環が撮像されたイメージングプレート15を取り外して、回折環を読取る装置にセットし、回折環を読取るようにしてもよい。
また、上記実施形態ではおよび変形例では、測定対象物OBへのX線入射角(LED光入射角)を検出する方式を、X線入射角(LED光入射角)の設定値と、X線入射角(LED光入射角)が設定値になったときの傾斜センサ55が検出する傾斜角と、それ以降に傾斜センサ55が検出する傾斜角とを用いて計算する方式とした。しかし、X線回折測定装置の筐体50の測定対象物OBに対する位置と姿勢が変化するごとに、X線入射角(LED光入射角)を検出することができるならばどのような方式を用いてもよい。例えば、X線照射点(LED光照射点)の近傍にパターン光を投影し、パターン光の形状からX線入射角(LED光入射角)を検出することができるようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例においては、プレート45、モータ46及びストッパ部材47aによりLED光源44をX線の光軸上に移動させて、LED光を測定対象物OBに照射する構造にした。しかし、これに代えて、出射X線と光軸を同一にした可視の平行光を照射することができれば、どのような構造にしてもよい。例えば、ビームスプリッタを出射X線の光軸上に配置し、LED光をビームスプリッタで反射させて出射X線と光軸を同一にして照射するようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例においては、スピンドルモータ27の貫通孔27bに内径の小さな通路部材28を設けるとともに、固定具18の貫通孔18a,18bの内径を小さくして、LED光源44から出射されたLED光から小さな断面径の平行光が得られるようにしたが、小さな断面径の可視の平行光が得られるならば、別の構造にしてもよい。例えば、可視光であるレーザ光を出射するレーザ光源の近くにコリメートレンズとエキスパンダーレンズを配置し、小さな断面径のレーザ光の光軸をスピンドルモータ27の出力軸27aの貫通孔27a1の中心軸線と一致させ、固定具18の貫通孔18a,18bに入射させるようにしてもよい。
10…X線出射器、15…イメージングプレート、15a,16a,17a,18a,21a,26a,27a1,27b…貫通孔、16…テーブル、18…固定具、20…テーブル駆動機構、21…移動ステージ、22…フィードモータ、23…スクリューロッド、27…スピンドルモータ、28…通路部材、30…レーザ検出装置、31…レーザ光源、36…対物レンズ、44…LED光源、45…プレート、46…モータ、47a,47b…ストッパ部材、48…結像レンズ、49…撮像器、50…筐体、50a…底面壁、50c…切欠き部壁、50d…繋ぎ壁、51…支持アーム、55…傾斜センサ、60…温度制御装置、61…温度センサ、63…ヒーター、60…温度制御装置、90…コンピュータ装置、91…コントローラ、92…入力装置、93…表示装置、95…高電圧電源 、PL…プレート、OB…測定対象物

Claims (5)

  1. 対象とする測定対象物に向けてX線を照射して前記測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、前記X線回折像から前記測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力を算出するX軸方向残留応力取得工程と、
    前記X軸方向残留応力取得工程における前記測定対象物のX線照射点にX線を照射して、前記測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、前記X線回折像から前記測定対象物の表面に平行に設定したY軸方向の残留垂直応力を算出するY軸方向残留応力取得工程と、
    前記X軸方向残留応力取得工程及び前記Y軸方向残留応力取得工程で算出された2つの残留応力から、前記測定対象物の前記X線照射点における法線を含み前記X軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向取得工程と、
    前記測定対象物の温度を変化させ、前記測定対象物の温度を検出することと、前記XZ平面において前記算出された無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射して、前記測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、前記X線回折像から前記測定対象物の回折面間隔を算出して温度と回折面間隔との関係を取得する温度−回折面間隔関係取得工程と、
    前記温度−回折面間隔関係取得工程により取得された関係を用いて、前記測定対象物の熱膨張係数を算出する熱膨張係数計算工程とを備えたことを特徴とする熱膨張係数測定方法。
  2. 請求項1に記載の熱膨張係数測定方法において、
    測定対象物に向けてX線を照射した際に撮像されるX線回折像は回折環であり、前記X軸方向及びY軸方向の残留垂直応力の計算は、前記撮像される回折環の形状を読み取ってcosα法により計算するものであり、前記回折面間隔の計算は、前記撮像される回折環の前記XZ平面と交差する箇所の半径値を検出してブラッグの式により計算するものであることを特徴とする熱膨張係数測定方法。
  3. 対象とする第1の測定対象物に向けてX線を照射して前記第1の測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、前記X線回折像から前記第1の測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向の残留垂直応力を算出するX軸方向残留応力取得工程と、
    前記X軸方向残留応力取得工程における前記第1の測定対象物のX線照射点にX線を照射して、前記第1の測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像し、前記X線回折像から前記第1の測定対象物の表面に平行に設定したY軸方向の残留垂直応力を算出するY軸方向残留応力取得工程と、
    前記X軸方向残留応力取得工程及び前記Y軸方向残留応力取得工程で算出された2つの残留応力から、前記第1の測定対象物の前記X線照射点における法線を含み前記X軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出し、採用する無ひずみ回折面法線方向とする無ひずみ回折面法線方向取得工程と、
    前記第1の測定対象物と同じ製造工程にて得られた第2の測定対象物の温度を変化させ、前記第2の測定対象物の温度を検出することと、前記XZ平面において前記採用した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射して、前記第2の測定対象物にて発生した回折X線によりX線回折像を撮像することとを同じタイミングで行い、前記X線回折像から前記第2の測定対象物の回折面間隔を算出して温度と回折面間隔との関係を取得する温度−回折面間隔関係取得工程と、
    前記温度−回折面間隔関係取得工程により取得された関係を用いて、前記第2の測定対象物の熱膨張係数を算出する熱膨張係数計算工程とを備えたことを特徴とする熱膨張係数測定方法。
  4. 請求項3に記載の熱膨張係数測定方法において、
    前記第1及び第2の測定対象物に向けてX線を照射した際に撮像されるX線回折像は回折環であり、前記X軸方向及びY軸方向の残留垂直応力の計算は、前記撮像される回折環の形状を読み取ってcosα法により計算するものであり、前記回折面間隔の計算は、前記撮像される回折環の前記XZ平面と交差する箇所の半径値を検出してブラッグの式により計算するものであり、
    前記温度−回折面間隔関係取得工程の前に、
    前記第2の測定対象物に前記XZ平面において前記採用した無ひずみ回折面法線方向と{(180°−回折角)/2}の角度を成す方向からX線を照射してX線回折像を撮像し、撮像されたX線回折像から前記X軸方向の残留垂直応力と前記Y軸方向の残留垂直応力とを算出し、算出された2つの残留応力から前記無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向再計算工程と、
    前記無ひずみ回折面法線方向再計算工程にて算出された無ひずみ回折面法線方向の前記採用した無ひずみ回折面法線方向からの差が予め設定されている許容限界より大きいとき、採用する無ひずみ回折面法線方向を変更する無ひずみ回折面法線方向変更工程とを行うことを特徴とする熱膨張係数測定方法。
  5. 対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
    前記X線出射器から前記測定対象物に向けてX線が照射された際、前記測定対象物にて発生した回折X線を撮像面にて受光してX線回折像を撮像し、前記X線回折像を検出するX線回折像検出手段と、
    前記X線出射器と前記X線回折像検出手段とを内部に配置した筐体と、
    前記測定対象物に対する前記筐体の位置と向きを変更し、前記X線出射器から出射されたX線の 前記測定対象物に対する照射方向を変更するX線照射方向変更手段と、
    前記X線回折像検出手段により検出されたX線回折像から、前記測定対象物の表面に平行な方向における残留垂直応力を算出する残留垂直応力計算手段と、
    前記X線回折像検出手段により検出されたX線回折像から、前記測定対象物の回折面間隔を算出する回折面間隔計算手段と、
    前記残留垂直応力計算手段が、同一のX線照射点における前記測定対象物の表面に平行に設定したX軸方向とY軸方向の残留垂直応力を算出したとき、算出した2つの残留応力から、前記X線照射点における法線を含み前記X軸方向に平行なXZ平面において、残留垂直応力が0となる無ひずみ回折面法線方向を算出する無ひずみ回折面法線方向計算手段とを備えたことを特徴とするX線回折測定装置。
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