本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの構成について図1乃至図5を用いて説明する。図1は、X線回折測定システムの全体概略図であり、図2はX線回折測定システムにおけるX線回折測定装置、傾斜角変化機構及び位置変化機構の拡大図であり、図3はX線回折測定システムをX線回折測定装置の正面から見た時の外観図である。また、図4と図5はX線回折測定装置の一部の拡大図である。なお、このX線回折測定システムが、先行技術文献の特許文献1に示されているX線回折測定システムと異なっている点は、X線回折測定装置の筐体50が傾斜角変化機構110に連結され、傾斜角変化機構110が位置変化機構120に連結されている点、X線回折測定装置の筐体50の側面壁が上側面壁、中側面壁、下側面壁の3つの平面壁から形成されている点、X線回折測定装置の筐体50の前面壁、後面壁を測定対象物OBの表面と垂直にし、中側面壁を測定対象物OBの表面と所定の角度を成すようにしてX線を出射する点、X線を出射して回折環を撮像する前にステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させ、平面揺動のラインにおける測定対象物OBの表面プロファイルを取得する点、及びX線を出射して回折環を撮像する際、ステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させ(平面揺動させ)、傾斜角変化機構110と位置変化機構120により筐体50の位置と傾斜角を変化させる点である。よって、特許文献1に示されているX線回折測定システムで既に説明されている箇所は、簡略的に説明するにとどめる。
図1及び図2に示すように、このX線回折測定システムは、ステージ移動機構60のステージ61に測定対象物OBをセットし、ステージ移動機構60によりステージ61を移動させることで測定対象物OBを平面揺動させながらX線を照射して回折環を撮像するものである。傾斜角変化機構110はX線回折測定装置の筐体50の異なる2軸周りにおける傾斜角を変化させ、測定対象物OBに対するX線の照射方向を変化させるものである。また、位置変化機構120はX線回折測定装置の筐体50の位置を高さ方向に変化させ、測定対象物OBのX線照射点から回折環を撮像するイメージングプレート15までの距離を変化させるものである。なお、図1及び図2においては、傾斜角変化機構110及び位置変化機構120とX線回折測定装置の筐体50は連結状態のみを示しており、本来の配置関係は図3に示すようになっている。X線回折測定は様々な金属において行うことができるが、本実施形態では測定対象物OBは鉄製の部材とする。
図1乃至図3に示すように、X線回折測定装置は、筐体50内に、X線出射器10、イメージングプレート15を取り付けるテーブル16、テーブル16を回転及び移動させるテーブル駆動機構20及び回折環を検出するレーザ検出装置30等を備える。そして、X線回折測定システムは、このX線回折測定装置とともに、傾斜角変化機構110、位置変化機構120、固定台130、ステージ移動機構60、コンピュータ装置100及び高電圧電源105を備える。筐体50内には、上述した装置及び機構に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外に示された2点鎖線で囲われた各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。
X線回折測定装置の筐体50は、図2の断面で見ると直方体の前方の一部を切り取ったような形状であるが、図3の正面から見た外観図が示すように上面と下面の間に3つの側面が存在し、八角柱を横にし、前方の一部を切り取ったような形状である。以後、筐体50の上面を上面壁50f、下面を底面壁50a、図3の正面側を向く面を前面壁50b、前面壁50bの反対側の面を後面壁50eという。また、上面壁50fと底面壁50aの間にある3つの側面を上側面壁50g3、中側面壁50g2、下側面壁50g1という。そして、X線回折測定装置の筐体50には、正面から見て右側と左側の中側面壁50g2、下側面壁50g1が交差するライン2つに合わせて、前面壁50bから切り取ったときに形成される面があり、この面を切欠き部壁50cという。切欠き部壁50cは底面壁50aに平行な上面と垂直な横面とがある。また、筐体50には、切欠き部壁50cの上面の途中から中側面壁50g2に垂直で底面壁50aと所定の角度を成すように前面壁50b側に向けて切り取ったときに形成される面があり、この面を繋ぎ壁50dという。繋ぎ壁50dが底面壁50aと成す角度は例えば30〜45度であり、本実施形態では30度にされている。中側面壁50g2と下側面壁50g1が成す角度及び中側面壁50g2と上側面壁50g3が成す角度も例えば30〜45度であり、本実施形態では中側面壁50g2と下側面壁50g1が成す角度は45度、中側面壁50g2と上側面壁50g3が成す角度は30度にされている。中側面壁50g2と上側面壁50g3が所定の角度を成すことにより、後述するX軸周り駆動ステージ115と平板連結体118に対し上面壁50fが所定の角度を成すように、筐体50を傾斜角変化機構110に連結させることができる。
以降の説明において、上面壁50f、底面壁50a、上側面壁50g3、中側面壁50g2及び下側面壁50g1に平行な方向をY軸方向、固定台130を設置する平面及びステージ移動機構60のステージ61の上面においてY軸方向に垂直な方向をX軸方向、及びX軸方向、Y軸方向に垂直な方向をZ軸方向とする。この方向は図2及び図3に座標軸で示されている方向である。なお、ステージ移動機構60によるステージ61の移動方向はX軸方向に一致しており、傾斜角変化機構110による筐体50の傾斜角変化の回転軸の1つはY軸方向に平行であり、位置変化機構120による筐体50の移動方向はZ軸方向に一致している。
傾斜角変化機構110は、2つのゴニオステージを重ね上面を下側に向けたステージ機構部、及びステージ機構部の上面とX線回折測定装置の筐体50とを連結させる連結体部からなる。ステージ機構部の上側のゴニオステージは固定ステージ111とY軸周り駆動ステージ112とモータ113から構成され、モータ113が回転駆動することにより固定ステージ111に対しY軸周り駆動ステージ112が成す角度が変化する。すなわち、Y軸周り駆動ステージ112はY軸方向に平行な回転軸を中心に設定された範囲だけ回転することができる。そして、モータ113が正回転または逆回転することにより、X線回折測定装置の筐体50はY軸方向に平行な回転軸周りに傾斜角が変化する。以後、この傾斜角変化をY軸周り傾斜角変化という。ステージ機構部の下側のゴニオステージは固定ステージ114とX軸周り駆動ステージ115とモータ116から構成され、モータ116が回転駆動することにより固定ステージ114に対しX軸周り駆動ステージ115が成す角度が変化する。すなわち、X軸周り駆動ステージ115は、XZ平面に平行でX軸方向と所定の角度を成す回転軸を中心に設定された範囲だけ回転することができる。そして、モータ116が正回転または逆回転することにより、X線回折測定装置の筐体50はXZ平面に平行でX軸方向と所定の角度を成す回転軸周りに傾斜角が変化する。以後、この傾斜角変化をX軸周り傾斜角変化という。なお、X軸周り駆動ステージ115の回転軸は、Y軸周り駆動ステージ112が駆動するとY軸方向周りに変化するが、Y軸周り駆動ステージ112が駆動していないとき(固定ステージ111に対する回転角度0度のとき)、X軸周り駆動ステージ115の回転軸がX軸方向と成す角度は例えば10〜20度であり、本実施形態では15度にされている。言い換えれば、Y軸周り駆動ステージ112が駆動していないとき、X軸周り駆動ステージ115の上面がXY平面(固定台130を水平な面に置けば水平面)と成す角度は例えば10〜20度であり、本実施形態では15度にされている。また、Y軸周り駆動ステージ112の回転軸とX軸周り駆動ステージ115の回転軸は1点で交差するようになっている。この点はX線回折測定装置から出射するX線の光軸上の点であって、後述するイメージングプレート15までの距離が設定値Lになる点になるよう、X軸周り駆動ステージ115の上面とX線回折測定装置の筐体50とが連結体部により連結されている。なお、上述したように、X軸周り駆動ステージ115の回転軸はX軸と平行ではなく、X軸方向と例えば10〜20度、本実施形態では15度の角度を成しているが、X軸方向に近い回転軸であるためX軸周り、としている。
傾斜角変化機構110の連結体部は、平板連結体118、角度付連結体117及び側面壁連結体119から構成されている。平板連結体118は長方形状の平板であり、X線回折測定装置の正面側から見ると左側がX軸周り駆動ステージ115の上面にネジ止めにより固定され、右側が角度付連結体117をネジ止めにより固定している。角度付連結体117はX線回折測定装置の正面側から見ると右側が直角で左側が所定の角度にされた台形状の2枚の平板であり、左側の側面が平板連結体118にネジ止めにより固定され、左側の側面が側面壁連結体119をネジ止めにより固定している。正面側から見て角度付連結体117の左側の角度は例えば40〜60度であり、本実施形態では45度になっている。なお、2つの角度付連結体117は同じ大きさであり、図3では奥側の角度付連結体117は前側の角度付連結体117に隠れて見えなくなっている。側面壁連結体119は長方形状の平板であり、X線回折測定装置の正面側から見ると上側が角度付連結体117にネジ止めにより固定され、下側がX線回折測定装置の筐体50の中側面壁50g2をネジ止めにより固定している。この連結により、X線回折測定装置の筐体50の中側面壁50g2がXY平面と交差するラインはY軸方向と平行で、中側面壁50g2がXY平面と成す角度は上述した各角度から40〜70度になる。なお、本実施形態では中側面壁50g2がXY平面と成す角度は上述した各角度から60度になる。また、この連結により、傾斜角変化機構110のステージ機構部のX軸方向周り回転とY軸方向周り回転が、X線回折測定装置の筐体50のX軸周り傾斜角変化とY軸周り傾斜角変化になる。そして、位置変化機構120により筐体50の位置を変化させ、測定対象物OBのX線照射点を後述するイメージングプレート15までの距離が設定値Lになる点にすれば、Y軸周り駆動ステージ112の回転軸とX軸周り駆動ステージ115の回転軸が交差する点がX線照射点に合致する。よって、位置変化機構120により筐体50の位置をX線照射点が上記の位置になるよう変化させれば、傾斜角変化機構110によりX軸周り傾斜角変化及びY軸周り傾斜角変化を行っても、X線照射点の位置は変化しないようにすることができる。
傾斜角変化機構110のステージ機構部のモータ113は、Y軸周り傾斜モータ制御回路90から入力する駆動信号により回転駆動する。Y軸周り傾斜モータ制御回路90は、コンピュータ装置100を構成するコントローラ101から傾斜角度が入力すると、後述するY軸周り傾斜角度検出回路91から入力した傾斜角度がコントローラ101から入力した傾斜角度と一致するまで、モータ113を正回転または逆回転させる駆動信号出力する。コントローラ101からY軸周り傾斜モータ制御回路90へ出力する傾斜角度は、作業者が入力装置102から入力する値による場合と、コントローラ101が後述するプログラムを実行して計算される値による場合がある。この点は後程詳細に説明する。また、Y軸周り傾斜モータ制御回路90は、コントローラ101から傾斜方向と傾斜速度が入力すると、モータ113のエンコーダ113aから入力するパルス列信号の単位時間あたりのパルス数が、コントローラ101から入力した傾斜速度に相当する単位時間あたりのパルス数に一致するよう、モータ113に正回転または逆回転のための駆動信号を出力する。コントローラ101からY軸周り傾斜モータ制御回路90へ出力する傾斜速度は予めコントローラ101に記憶されており、作業者が入力装置102から傾斜方向を入力することにより、傾斜方向とともに出力がされる。
Y軸周り傾斜角度検出回路91は、モータ113のエンコーダ113aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、モータ113の回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンさせて積算カウント値とし、積算カウント値から傾斜角度を計算してY軸周り傾斜モータ制御回路90とコントローラ101に出力する。エンコーダ113aはモータ113が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を出力する。このパルス列信号には位相がπ/2ずれた2つの信号があり、どちらの信号の位相が進んでいるかにより回転方向を判別することができ、これによりカウントアップとカウントダウンを選定することができる。後述するエンコーダが出力する信号を入力する別の回路においても、カウントアップとカウントダウンの選定は同一である。傾斜角度が0となる位置は、X線回折測定装置の正面側から見て固定ステージ111とY軸周り駆動ステージ112の左右の側面が1つの平面内にある位置であり、言い換えるとY軸周り駆動ステージ112が正側と負側の駆動限界位置の中間にある位置である。
Y軸周り傾斜角度検出回路91が傾斜角度0の位置で積算カウント値を0に設定するのは、X線回折測定装置に電源を投入したとき、コントローラ101からの指令により次の作動がされることにより行われる。電源の投入時において、コントローラ101はY軸周り傾斜モータ制御回路90とY軸周り傾斜角度検出回路91に傾斜角度0の設定を指令する信号を出力し、この指令が入力すると、Y軸周り傾斜モータ制御回路90はY軸周り駆動ステージ112が図3において左周りに回転する駆動信号を出力し、Y軸周り傾斜角度検出回路91は、エンコーダ113aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントする。そして、Y軸周り傾斜角度検出回路91は、パルス列信号のパルス数がカウントされなくなると、積算カウント値をリセットして0にし、駆動限界位置を意味する信号をY軸周り傾斜モータ制御回路90に出力する。Y軸周り傾斜モータ制御回路90は駆動限界位置を意味する信号が入力すると、モータ113の回転方向を逆にする駆動信号を出力し、Y軸周り傾斜角度検出回路91から入力する傾斜角度が予め記憶されている傾斜角度になったとき駆動信号の出力を停止する。そして、Y軸周り傾斜角度検出回路91はパルス列信号のパルス数がカウントされなくなると、再び積算カウント値をリセットして0にする。
傾斜角変化機構110のステージ機構部のモータ116のX軸周り傾斜モータ制御回路88及びX軸周り傾斜角度検出回路89による制御は、上述したモータ113のY軸周り傾斜モータ制御回路90及びY軸周り傾斜角度検出回路91による制御と同一である。すなわち、X軸周り傾斜モータ制御回路88は、コントローラ101から傾斜角度が入力すると、Y軸周り傾斜角度検出回路91から入力する回転角度がコントローラ101から入力した傾斜角度になるまでモータ116を回転させる制御を行う。また、X軸周り傾斜モータ制御回路88は、コントローラ101から傾斜方向と傾斜速度が入力すると、エンコーダ116aから入力するパルス列信号の単位時間あたりのパルス数が、コントローラ101から入力した傾斜速度に相当する単位時間あたりのパルス数に一致するよう、モータ113に正回転または逆回転のための駆動信号を出力する。また、X軸周りの傾斜角度が0となる位置は、X線回折測定装置の正面側から見て固定ステージ114とX軸周り駆動ステージ115の前後の側面が1つの平面内にある位置であり、X軸周り駆動ステージ115が正側と負側の駆動限界位置の中間にある位置である。そして、X軸周り傾斜角度検出回路89が傾斜角度0の位置で積算カウント値を0に設定するのは、上述したY軸周り傾斜角度検出回路91の場合と同様、X線回折測定装置に電源を投入したときコントローラ101からの指令により行われる。
傾斜角変化機構110のステージ機構部の固定ステージ111は、Y軸周り駆動ステージ112と迎合する側の反対側が三角状連結体126の下面にネジ止めにより固定されており、三角状連結体126の上面は位置変化機構120の高さ方向移動ステージ125の表面にネジ止めにより固定されている。三角状連結体126は、直角三角形の上面と下面を有する角柱であり、X線回折測定装置の正面側から見て、直角三角形が逆さになるよう高さ方向移動ステージ125に固定されている。位置変化機構120は、楔型状の横方向移動ステージ124と楔型状の高さ方向移動ステージ125とが斜面で迎合する構造になっており、横方向移動ステージ124の水平面は固定プレート121と迎合していて、モータ123が回転駆動することにより固定プレート121に対してX軸方向に移動する。モータ123は固定ブロック122に固定され、固定ブロック122は固定プレート121に固定されることで、モータ123は固定プレート121と一体になっている。横方向移動ステージ124がX軸方向に移動すると斜面が迎合している高さ方向移動ステージ125はZ軸方向に移動する。そして、高さ方向移動ステージ125がZ軸方向に移動することで、傾斜角変化機構110及びX線回折測定装置の筐体50もZ軸方向に移動する。
位置変化機構120の固定プレート121は、固定台130の平板131にネジ止めにより固定されている。固定台130は4つの支柱132と平板131を有するテーブル状の構造のものであり、手で持って運搬することができ、傾斜角調整機構110と位置変化機構120に連結されたX線回折測定装置を希望する場所に運搬することができる。
位置変化機構120のモータ123は、Z軸方向移動モータ制御回路92から入力する駆動信号により回転駆動する。Z軸方向移動モータ制御回路92は、コンピュータ装置100を構成するコントローラ101から移動位置が入力すると、後述するZ軸方向移動位置検出回路93から入力した移動位置がコントローラ101から入力した移動位置と一致するまで、モータ113を正回転または逆回転させる駆動信号を出力する。コントローラ101からZ軸方向移動モータ制御回路92へ出力する移動位置は、作業者が入力装置102から入力する値による場合と、コントローラ101が後述するプログラムを実行して計算される値による場合がある。この点は後程詳細に説明する。また、Z軸方向移動モータ制御回路92は、コントローラ101から移動方向と移動速度が入力すると、モータ123のエンコーダ123aから入力するパルス列信号の単位時間あたりのパルス数が、コントローラ101から入力した移動速度に相当する単位時間あたりのパルス数に一致するよう、モータ123に正回転または逆回転のための駆動信号を出力する。コントローラ101からZ軸方向移動モータ制御回路92へ出力する移動速度は予めコントローラ101に記憶されており、作業者が入力装置102から移動方向を入力することにより、移動方向とともに出力がされる。
Z軸方向移動位置検出回路93は、モータ123のエンコーダ123aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、モータ123の回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンさせて積算カウント値とし、積算カウント値から移動位置を計算してZ軸方向移動モータ制御回路92とコントローラ101に出力する。エンコーダ123aはエンコーダ113aと同様、位相がπ/2ずれた2つのパルス列信号を出力するので回転方向を判別することができ、これによりカウントアップとカウントダウンを選定することができる。移動位置が0となるときは、図3において横方向移動ステージ124が右側の駆動限界位置にあるときであり、高さ方向移動ステージ125が最も高い位置にあるときである。すなわち、傾斜角変化機構110及びX線回折測定装置の筐体50が最も高い位置にあるときである。
Z軸方向移動位置検出回路93が移動位置0の位置で積算カウント値を0に設定するのは、X線回折測定装置に電源を投入したときコントローラ101からの指令により次の作動がされることにより行われる。電源の投入時において、コントローラ101はZ軸方向移動モータ制御回路92とZ軸方向移動位置検出回路93に移動位置0の設定を指令する信号を出力し、この指令が入力すると、Z軸方向移動モータ制御回路92は横方向移動ステージ124が図3において右方向に移動する駆動信号を出力し、Z軸方向移動位置検出回路93は、エンコーダ123aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントする。そして、Z軸方向移動位置検出回路93は、パルス列信号のパルス数がカウントされなくなると、積算カウント値をリセットして0にし、駆動限界位置を意味する信号をZ軸方向移動モータ制御回路92に出力する。Z軸方向移動モータ制御回路92は駆動限界位置を意味する信号が入力すると、モータ123への駆動信号を停止する。
ステージ移動機構60は、ステージ61、枠体62、モータ63、スクリューロッド64及び軸受部65から構成され、モータ63の回転駆動によりステージ61を図3の横方向、すなわちX軸方向に移動するものである。ステージ61は枠体62に挟まれていてX軸方向にのみ移動が可能になっており、中央にX軸方向に雌ネジが切られた孔があって、雄ネジが切られているスクリューロッド64と迎合している。そして、モータ63が正回転または逆回転するとスクリューロッド64が正回転または逆回転し、ステージ61が図3の右方向または左方向に移動する。
ステージ移動機構60のモータ63は、X軸方向移動モータ制御回路94から入力する駆動信号により回転駆動する。X軸方向移動モータ制御回路94は、コンピュータ装置100を構成するコントローラ101から移動位置が入力すると、後述するX軸方向移動位置検出回路95から入力した移動位置がコントローラ101から入力した移動位置と一致するまで、モータ63を正回転または逆回転させる駆動信号を出力する。コントローラ101からX軸方向移動モータ制御回路94へ出力する移動位置は、作業者が入力装置102から入力する値による。また、X軸方向移動モータ制御回路94は、コントローラ101から移動方向と移動速度が入力すると、モータ63のエンコーダ63aから入力するパルス列信号の単位時間あたりのパルス数が、コントローラ101から入力した移動速度に相当する単位時間あたりのパルス数に一致するよう、モータ63に正回転または逆回転のための駆動信号を出力する。コントローラ101からX軸方向移動モータ制御回路94へ出力する移動速度は予めコントローラ101に記憶されており、作業者が入力装置102から移動方向を入力することにより、およびコントローラ101が後述するプログラムを実行することにより移動方向とともに出力がされる。この点は後程詳細に説明する。
X軸方向移動位置検出回路95は、モータ63のエンコーダ63aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、モータ63の回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンさせて積算カウント値とし、積算カウント値から移動位置を計算してX軸方向移動モータ制御回路94とコントローラ101に出力する。エンコーダ63aはエンコーダ113a,123aと同様、位相がπ/2ずれた2つのパルス列信号を出力するので回転方向を判別することができ、これによりカウントアップとカウントダウンを選定することができる。移動位置が0となるときは、図3においてステージ61が左側の駆動限界位置にあるときである。
X軸方向移動位置検出回路95が移動位置0の位置で積算カウント値を0に設定するのは、X線回折測定装置に電源を投入したときコントローラ101からの指令により次の作動がされることにより行われる。電源の投入時において、コントローラ101はX軸方向移動モータ制御回路94とX軸方向移動位置検出回路95に移動位置0の設定を指令する信号を出力し、この指令が入力すると、X軸方向移動モータ制御回路94はステージ61が図3において左方向に移動する駆動信号を出力し、X軸方向移動位置検出回路95は、エンコーダ63aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントする。そして、X軸方向移動位置検出回路95は、パルス列信号のパルス数がカウントされなくなると、積算カウント値をリセットして0にし、駆動限界位置を意味する信号をX軸方向移動モータ制御回路94に出力する。X軸方向移動モータ制御回路94は駆動限界位置を意味する信号が入力すると、モータ63への駆動信号を停止する。
X線出射器10は、図1乃至図2に示すように筐体50内の上部にて図示左右方向、すなわちY軸方向に延設されて筐体50に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線を図示下方向に出射する。正確には図3に示すように、Y軸周り傾斜角、X軸周り傾斜角とも0であるとき、XZ平面に平行で、Z軸と例えば20〜50度、本実施形態では30度の角度を成す方向に出射する。すなわち、Y軸周り傾斜角、X軸周り傾斜角とも0であるとき、XY平面に30度の入射角で入射するよう出射する。別の言い方をすると、X線はX線回折測定装置の筐体50の上面壁50f、底面壁50a及び切欠き部壁50cの上面に垂直で、中側面壁50g2、前面壁50b、後面壁50e及び切欠き部壁50cの横面に平行な方向に出射される。X線制御回路71は、コントローラ101から指令が入力すると、X線出射器10から一定強度のX線が出射されるように、X線出射器10に高電圧電源95から供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。
テーブル駆動機構20は、筐体50に固定され、X線出射器10の下方にて移動ステージ21を備えている。移動ステージ21は、テーブル駆動機構20における対向する1対の板状のガイド25,25により挟まれていて、テーブル駆動機構20に固定されたフィードモータ22、スクリューロッド23及び軸受部24によりY軸方向に移動する。別の言い方をすると、出射X線の光軸が含まれる筐体50の中側面壁50g2に平行な平面内であって、出射X線の光軸に垂直な方向に移動する。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれており、エンコーダ22aはフィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ101からの指令により作動する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ21をフィードモータ22側へ移動させるようフィードモータ22に駆動信号を出力し、位置検出回路72は、移動ステージ21が移動限界位置に達して、エンコーダ22aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ21の原点位置となり、位置検出回路72は、以後、移動ステージ21が移動するごとにエンコーダ22aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離xを位置信号として出力する。フィードモータ制御回路73は、コントローラ101から移動ステージ21の移動位置を入力すると、位置検出回路72から入力する位置信号が入力した移動位置に等しくなるまで、フィードモータ22を正転又は逆転駆動する。また、フィードモータ制御回路73は、コントローラ101から移動ステージ21の移動方向と移動速度を入力すると、エンコーダ22aから入力したパルス列信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ21の移動速度を計算し、計算した移動速度が入力した移動速度になるようにフィードモータ22に駆動信号を出力する。
一対のガイド25,25の上端は、板状の上壁26によって連結されており、上壁26には貫通孔26aが設けられていて、貫通孔26aの中心位置はX線出射器10の出射口11の中心位置に対向しており、出射X線は、出射口11及び貫通孔26aを介してテーブル駆動機構20内に入射する。後述するイメージングプレート15が回折環撮像位置にある状態(図1、図2及び図4の状態)において、移動ステージ21の貫通孔26aと対向する位置には、図4に拡大して示すように、貫通孔21aが形成されている。移動ステージ21には、出射口11及び貫通孔26a,21aの中心軸線位置を回転中心とするスピンドルモータ27が組み付けられており、スピンドルモータ27の出力軸27aは円筒状で断面円形の貫通孔27a1を有する。スピンドルモータ27の出力軸27aの反対側には、貫通孔27bが設けられ、貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするための円筒状の通路部材28が固定されている。
また、スピンドルモータ27内にはエンコーダ27cが組み込まれ、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラ101及び回転角度検出回路75に出力する。
スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ101から回転速度を入力すると、エンコーダ27cから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数から計算される回転速度が、入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ27に出力する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から回転角度θpを計算してコントローラ101に出力する。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cからインデックス信号を入力すると、カウント値をリセットして「0」にする。これが回転角度0°の位置である。なお、イメージングプレート15の回転角度0°の位置とは、後述するレーザ検出装置30からのレーザ照射によりイメージングプレート15に形成された回折環を読み取る際、インデックス信号を入力した時点でレーザ光が照射されている位置である。この位置はイメージングプレート15の各半径位置ごとにあるためラインであり、以後このラインを回転基準位置のラインという。そして、回転基準位置のラインはY軸と平行である。
テーブル16は、円形状であり、スピンドルモータ27の出力軸27aの先端部に固定されている。テーブル16は、下面中央部から下方へ突出した突出部17を有し、突出部17の外周面には、ねじ山が形成されている。テーブル16の下面にはイメージングプレート15が取付けられる。イメージングプレート15の中心部には貫通孔15aが設けられていて、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15が、固定具18とテーブル16の間に挟まれて固定される。固定具18は、円筒状の部材で、内周面に、突出部17のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
テーブル16、突出部17及び固定具18にも貫通孔16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、貫通孔18aの内径は通路部材28の内径と同じである。すなわち、出射X線は、貫通孔26a,21a,通路部材28,貫通孔27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射され、通路部材28の内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線に平行な平行光となり、筐体50の円形孔50c1から出射される。
イメージングプレート15は、移動ステージ21、スピンドルモータ27及びテーブル16と共に、回折環撮像位置へ移動し、また、後述する撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域、及び回折環を消去する回折環消去領域へ移動する。この移動において、イメージングプレート15の中心軸は、出射X線の光軸とイメージングプレート15における回転基準位置のラインとが含まれる平面内に保たれた状態で、出射X線の光軸に垂直な方向に移動する。上述したように、この方向はY軸方向である。
レーザ検出装置30は、回折環を撮像したイメージングプレート15にレーザ光を照射し、イメージングプレート15が発光した光の強度を検出する。レーザ検出装置30は、回折環撮像位置にあるイメージングプレート15からフィードモータ22側に充分離れており、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置30によって遮られないようになっている。レーザ検出装置30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、反射鏡33、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36等を備えた光ヘッドであり、光ディスクの記録再生に用いられるものと同様な構成である。 レーザ駆動回路77は、コントローラ101から指令が入力すると、フォトディテクタ42から入力する信号の強度が所定の強度になるようレーザ光源31に駆動信号を出力し。レーザ光源31からは一定強度のレーザ光が出射される。フォトディテクタ42は後述するダイクロイックミラー34で微量が反射し、集光レンズ41を介して受光したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力するが、ダイクロイックミラー34での反射の割合は一定であるので、出射したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力すると見なせる。コリメートレンズ32はレーザ光を平行光にし、反射鏡33はレーザ光を、ダイクロイックミラー34に向けて反射し、ダイクロイックミラー34は、入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ36は、レーザ光をイメージングプレート15の表面に集光させる。対物レンズ36には、フォーカスアクチュエータ37が組み付けられており。後述するフォーカスサーボにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
集光されたレーザ光が、イメージングプレート15の回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じ、回折環撮像時における回折X線の強度に応じた光が発生する。この輝尽発光により発生した光はレーザ光の波長よりも波長が短く、レーザ光の反射光と共に対物レンズ36を通過するが、ダイクロイックミラー34にて大部分が反射し、レーザ光の反射光は大部分が透過する。ダイクロイックミラー34で反射した光は、集光レンズ38、シリンドリカルレンズ39を介してフォトディテクタ40に入射する。フォトディテクタ40は、4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子からなり、4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅回路78に出力する。なお、シリンドリカルレンズ39は非点収差を生じさせるためにある。
増幅回路78は、入力した4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅してフォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。フォーカスエラー信号生成回路79は、非点収差法におけるフォーカスエラー信号を生成してフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスサーボ回路81は、コントローラ101により指令が入力すると作動開始し、入力したフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、入力したフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ37を駆動して、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に変位させ、これにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
SUM信号生成回路80は、入力した4つの受光信号を合算してSUM信号を生成し、A/D変換器83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート15にて反射し、ダイクロイックミラー34で反射した微量のレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート15にて反射するレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、撮像された回折環における回折X線の強度に相当する。A/D変換器83は、コントローラ101から指令が入力すると、入力するSUM信号の瞬時値をデジタルデータに変換してコントローラ101に出力する。
また、対物レンズ36に隣接して、LED光源43が設けられている。LED光源43は、LED駆動回路84によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ101から指令を入力すると、LED光源43に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
また、X線回折測定装置は、LED光源44を有する。LED光源44は、図2、図4及び図5に示すように、移動ステージ21とテーブル駆動機構20の上壁26の下面との間に配置されたプレート45の一端部下面に固定されている。プレート45は、移動ステージ21内に固定されたモータ46の出力軸46aに固着されており、モータ46の回転により、上壁26の下面に平行な面内を回転する。移動ステージ21にはストッパ部材47a,47bが設けられており、ストッパ部材47aは、プレート45を図5のD1方向に回転させたとき、LED光源44が上壁26の貫通孔26a及び移動ステージ21の貫通孔21aに対向する位置(A位置)で静止するように、プレート45の回転を規制する。一方、ストッパ部材47bは、プレート45を図5のD2方向に回転させたとき、プレート45が上壁26の貫通孔26aと移動ステージ21の貫通孔21aとの間を遮断しない位置(B位置)で静止するように、プレート45の回転を規制する。言い換えれば、A位置は、プレート45が図2及び図4に示す状態にある位置であり、LED光源44から出射されるLED光がスピンドルモータ27の貫通孔27a1に設けた通路部材28の通路に入射する位置である。B位置は、X線出射器10から出射されるX線がプレート45によって遮られない位置である。LED光源44は、コントローラ101によって作動制御されるLED駆動回路85からの駆動信号によりLED光を出射する。LED光は拡散する可視光であるが、プレート45がA位置にあるとき、その一部は、出射X線と同様の経路で貫通孔18aから出射するので、出射X線と同様、貫通孔27a1の軸線に平行な平行光になる。
モータ46はエンコーダ46bを備えており、エンコーダ46bはモータ46が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を回転制御回路86に出力する。回転制御回路86は、コントローラ101から回転方向と回転開始の指令が入力されると、モータ46に駆動信号を出力し、モータ46を指示方向に回転させる。そして、エンコーダ46bからパルス列信号の入力が停止すると、駆動信号の出力を停止する。これにより、プレート45を、上述したA位置及びB位置までそれぞれ回転させることができる。
筐体50の切欠き部壁50cの横面には結像レンズ48が設けられ、筐体50内部には撮像器49が設けられている。撮像器49は、CCD受光器又はCMOS受光器で構成され、各撮像素子ごとの受光強度に相当する強度の信号をセンサ信号取出回路87に出力する。結像レンズ48及び撮像器49は、イメージングプレート15に対して設定された位置にある測定対象物OBにおけるLED光の照射点を中心とした領域の画像を撮像するデジタルカメラとして機能する。イメージングプレート15に対して設定された位置とは、測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点からイメージングプレート15までの垂直距離が、予め決められた設定値Lとなる位置である。この場合の結像レンズ48及び撮像器49による被写界深度は、該照射点を中心とした前後の範囲で設定されている。センサ信号取出回路87は、撮像器49の各撮像素子ごとの信号強度データを、各撮像素子の位置(すなわち画素位置)が分かるデータと共にコントローラ101に出力する。
また、結像レンズ48の光軸は、X線出射器10から出射されるX線の光軸とイメージングプレート15の回転基準位置のラインを含む平面に含まれるとともに、この光軸と測定対象物OBに照射されるX線及びLED光の光軸が交わる点は、イメージングプレート15までの垂直距離が設定値Lとなる点であるように調整されている。測定対象物OBに照射されるLED光は平行光であるので、照射点において、LED光は散乱光と、略平行光のまま反射する反射光を発生させるが、散乱光のうち結像レンズ48に入射した光は撮像器49の位置で結像して照射点の画像となる。LED光の照射点がイメージングプレート15に対して設定された位置にあるとき、結像レンズ48に入射する散乱光の光軸は結像レンズ48の光軸と一致するため、照射点の画像は結像レンズ48の光軸が撮臓器49と交差する所定の位置に生じる。よって、撮影画像におけるLED光の照射点が撮影画像上の所定の位置に生じるよう、位置変化機構120によりX線回折測定装置の筐体50の位置を調整すれば、X線及びLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離を設定値Lにすることができる。以下、X線及びLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離を、照射点−IP間距離という。
また、撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向の位置と、照射点−IP間距離とには三角測量の原理から1:1の関係があり、コントローラ101のメモリにはこの関係が予め記憶されている。よって、コントローラ101にセンサ信号取出回路87から撮影画像データが入力し、コントローラ101が撮影画像データを処理すれば、照射点−IP間距離を算出することができる。撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係は、鉄等の粉末を糊塗した(残留応力0の)測定対象物OBでLED光の照射点の縦方向位置を取得し、続いて後述するようにX線を照射して回折環を形成し回折環の半径を測定すれば、回折環の半径から照射点−IP間距離を計算することができるので得ることができる。
また、上述した平板連結体118は、その下面にX線及びLED光の照射点における測定対象物OBの法線がZ軸方向と平行であるとき、LED光照射点で発生した反射光が受光するラインが描かれている。言い換えると、X線及びLED光の照射点を含むXZ平面と平行な平面が平板連結体118と交差する箇所にラインが描かれている。よって、LED光の反射光の受光位置が平板連結体118の下面に描かれたライン上に生じるようにすれば、X線及びLED光の光軸とX線及びLED光の照射点における測定対象物OBの法線を含む平面を、イメージングプレート15の所定の箇所と交差させることができる。この箇所は回転角度90°のラインである。
コンピュータ装置100は、コントローラ101、入力装置102及び表示装置103からなる。コントローラ101は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された各種プログラムを実行してX線回折測定装置の作動を制御するとともに記憶したデータを用いて演算処理を行う。また、コントローラ101の記憶装置には、上述した撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係、測定対象物OBのブラック角、傾斜角0のときのXY平面に対するX線の入射角、及び残留応力の計算に必要な諸定数等、必要な数値が予め記憶されている。入力装置102は、コントローラ101に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作動指令などの入力のために利用される。表示装置103は、表示画面上に撮像器49によって撮像された照射点を含む画像に加えて、LED光の照射点を合致させるべき位置を示すマークも表示される。さらに、表示装置103は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果なども視覚的に知らせる。高電圧電源105は、X線出射器10にX線出射のための高電圧及び電流を供給する。
次に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、測定対象物OBに対するX線回折測定装置の位置と姿勢を調整したうえで、測定対象物OBの残留応力を測定するためのX線回折測定を行う具体的方法について説明する。まず、作業者はX線回折測定システムに電源を投入し、ステージ移動機構60のステージ61に残留応力の測定をする測定対象物OBを載置する。このとき残留垂直応力の測定方向がX軸方向(ステージ61の移動方向)と一致するよう測定対象物OBを載置する。次に、入力装置102からステージ61に移動位置または移動方向を入力して、ステージ61を移動させ、おおよそでX線回折測定装置から出射されるX線が測定対象物OBの測定箇所に照射されるようにする。この後、X線回折測定は、位置姿勢調整工程S1、回折環撮像工程S2、回折環読取り工程S3、回折環消去工程S4及び残留応力計算工程S5が行われることで実施される。なお、回折環撮像工程S2以外の各工程で、先行技術文献の特許文献1で詳細に説明されている箇所は簡略的に説明するにとどめる。
位置姿勢調整工程S1は、測定対象物OBに対するX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢(傾斜角)を調整する工程である。作業者は、入力装置102から位置姿勢の調整を行うことを入力すると、コントローラ101は、各回路に指令を出力し、イメージングプレート15を回折環撮像位置(図1、図2及び図4の状態)に移動させ、モータ46を駆動させてプレート45をA位置まで回転させ、LED光源44を点灯させる。これにより平行光であるLED光が筐体50の円形孔50c1から外部へ出射され、測定対象物OBの測定箇所付近に照射される。さらに、コントローラ101は、撮像器49による撮像信号をセンサ信号取出回路87からコントローラ101に出力させ、この撮像信号から作成したLED光の照射位置近傍の画像を表示装置103に表示させる。このとき、表示される画像には、撮像信号によって表示される画像とは独立して、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する位置に相当する撮影画像上の位置に、十字マークが表示される。
この場合、十字マークのクロス点は表示装置103の画面の中心に位置し、この位置は照射点−IP間距離が設定値Lであるとき、照射点が撮像される位置である。また、十字マークの縦方向のラインは、出射X線の光軸とイメージングプレート15の回転基準位置のラインを含む平面が撮臓器49と交差するラインに相当し、言い換えると出射X線の光軸を撮臓器49に投影させたラインである。
作業者は、表示装置103に表示される画像を見ながら入力装置102からZ軸方向の移動位置またはZ軸方向の移動方向(すなわち、図3の上方向または下方向)を入力して、X線回折測定装置(筐体50)の位置を調整するとともに、入力装置102からX軸方向の移動位置またはX軸方向の移動方向(すなわち、図3の右方向または左方向)を入力して、ステージ61(測定対象物OB)の位置を調整し、撮影画像上におけるLED光の照射点が測定対象物OBの目的とする測定箇所になるとともに十字マークのクロス点と合致するようにする。これにより、出射X線は測定対象物OBの目的とする測定箇所に照射され、照射点−IP間距離は設定値Lになる。
次に、測定対象物OBに対する出射X線の入射角をXY平面に対する入射角Θxy(本実施形態では30°に設定されている)とは別の入射角にしたいときは、入力装置102からY軸周り傾斜角またはY軸周りの傾斜方向(すなわち、図3の右周りまたは左周り)を入力し、モータ113を駆動させる。Y軸周り傾斜角をΘyとし、図3の右周りを正とすると、測定対象物OBに対する出射X線の入射角は、Θxy+Θyである。Y軸周り傾斜角Θyは、Y軸周り傾斜角度検出回路91からコントローラ101に入力しているので、コントローラ101は入力したY軸周り傾斜角Θyから測定対象物OBに対する出射X線の入射角(Θxy+Θy)を計算し、表示装置103に表示する。作業者は表示装置103の表示を見て、出射X線の入射角を確認することができる。
次に、入力装置102からX軸周り傾斜角またはX軸周りの傾斜方向を入力し、モータ116を駆動させて、測定対象物OBからのLED光の反射光が、平板連結体118の下面に描かれたライン上に生じるようにする。これにより、LED光の照射点(出射X線の照射点)における測定対象物OBの法線がZ軸と平行になり、出射X線の光軸と出射X線の照射点における測定対象物OBの法線とを含む平面を、イメージングプレート15の所定の箇所と交差させることができる。上述したように、Y軸周り傾斜角変化とX軸周り傾斜角変化の回転軸の交差点は、イメージングプレート15から垂直距離が設定値Lの出射X線の光軸上の点と合致しているので、Y軸周り傾斜角変化とX軸周り傾斜角変化を行っても、出射X線及びLED光の照射点は変化せず、照射点−IP間距離は変化しない。
作業者は、測定対象物OBに対するX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢(傾斜角)の調整が完了すると、入力装置102から位置姿勢の調整終了を入力する。これにより、コントローラ101は、各回路に指令を出力し、LED光源44を消灯させ、撮像信号の出力を停止させる。
次の回折環撮像工程S2において、作業者は入力装置102から測定対象物OBの材質(本実施形態では、鉄)を入力し、測定開始を入力する。これにより、コントローラ101は、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート15を低速回転させ、エンコーダ27cからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート15の回転を停止させる。これにより、回折環の読取り時において回転角度0°となる状態で、イメージングプレート15に回折環が撮像されるようになる。次に、コントローラ101は、図6に示すフローのプログラムをスタートさせる。このプログラムは、測定対象物OBの平面揺動のラインにおける表面プロファイルを取得した後、測定対象物OBを平面揺動させながらX線を照射して回折環を撮像するプログラムである。以下、図6のフローに沿って説明する。
まず、コントローラ101は、ステップS10にてプログラムをスタートさせると、ステップS12にて変数n及び変数mに0を入力する。変数n及び変数mは、測定対象物OBの平面揺動のラインにおける、移動量と照射点−IP間距離のデータ群を得る際、各データに0から順に付される整数である。次にコントローラ101は、ステップS14にてLED駆動回路85に指令を出力してLED光源44からLED光を出射させ、ステップS16にてセンサ信号取出回路87に指令を出力して撮像器49から出力される信号から作成される撮影画像データを出力させる。次にコントローラ101は、ステップS18にてX軸方向移動モータ制御回路94に移動方向と移動速度を出力し、モータ63を駆動させてステージ61(測定対象物OB)の図3の右方向への移動を開始させる。そして、ステップS20にてX軸方向移動位置検出回路95が出力する移動位置を取り込み、最初に取り込んだ移動位置をそれ以降に取り込んだ移動位置から減算して移動量とし、ステップS22にて移動量が変数nと予め記憶されている微小移動量Δdを乗算した値になるのを待って、ステップS24にてセンサ信号取出回路87から入力している撮影画像データを取り込む。そして、ステップS26にて取り込んだ撮影画像データからLED光照射点の画像上の位置を取得し、予め記憶されている撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係から、撮影画像データを取り込んだ時点における照射点−IP間距離を計算して記憶する。そして、ステップS28にてステップS20にて計算した移動量が、予め記憶されている上限値以上になっていないと「No」と判定してステップS30に行き、ステップS30にて変数nをインクリメントしてステップS20に戻る。このようにして、上述したステップS20乃至ステップS30を繰り返し実行することで、ステージ61(測定対象物OB)が移動量0,Δd,2・Δd,3・Δd・・・と、Δd移動するごとに、照射点−IP間距離が移動量に対応させて記憶されていく。
そして、ステップS20にて計算した移動量が予め記憶されている上限値以上になったとき、ステップS28にて「Yes」と判定してステップS32に行き、ステップS32にてX軸方向移動モータ制御回路94に作動停止の指令を出力し、モータ63の回転駆動を停止してステージ61(測定対象物OB)の移動を停止する。次にステップS34にてLED駆動回路85とセンサ信号取出回路87に停止指令を出力して、LED光の照射と撮影画像データの出力を停止させる。次にステップS36にて、メモリに記憶されている移動量に対応させた照射点−IP間距離を用いて、ステップS18乃至ステップS32にて行ったステージ61(測定対象物OB)の移動によるLED光照射点の移動ラインにおける測定対象物OBの表面プロファイルを計算し、平面揺動させながらのX線照射による回折環撮像時に照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角を設定値にするための制御値を計算する。
この計算処理を詳細に説明する。移動量はn・Δdであるので、移動量に対応させた照射点−IP間距離は、変数nにも対応している。まず、変数nの最大値、すなわち、ステップS32にてステージ61(測定対象物OB)の移動を停止したときの変数nをnmaxとして、nmaxからそれぞれの変数nを減算し、変数mとする。これで、移動量に対応させた照射点−IP間距離は変数mにも対応し、m・Δdは、ステージ61(測定対象物OB)の停止位置を原点としたときの照射点−IP間距離を取得した位置の距離である。言い換えると、ステージ61(測定対象物OB)の停止位置からこれまでと反対方向にΔd移動するごとの移動量である。次に変数nごとに、照射点−IP間距離から照射点のX,Z座標値を計算する。視覚的に示すと図7に示すように、測定対象物OBに対してLED光の光軸が0,Δd,2・Δd,3・Δd・・・とΔd移動するごとに得られている照射点−IP間距離と、XY平面に対するX線入射角(Θxy+Θy)とからXZ平面における照射点の位置がわかるので、任意に座標原点を定め、照射点のX,Z座標値を計算する。座標原点は任意に定めてよいが、ステージ61(測定対象物OB)の移動開始時(n=0)における照射点を座標原点にするのが後の計算がやりやすい。得られた変数nごとのX,Z座標値を結んだものが測定対象物OBの表面プロファイルになる。図7はわかりやすくするため変数nごとの間隔(すなわちΔd)を長くして示しているいるが、実際はΔdは微少量であるので、変数nごとのX,Z座標値を直線で結べば測定対象物OBの表面プロファイルになると考えてよい。
次に、測定対象物OBの表面プロファイルから、変数nごとに、すなわちステージ61(測定対象物OB)が0,Δd,2・Δd,3・Δd・・・とΔd移動するごとに、照射点−IP間距離が設定値LになるためのZ軸方向移動位置Cnを計算する。これは、図7に示すように、ステージ61(測定対象物OB)の移動開始時(n=0)における照射点からX軸方向にΔdごとの点からZ軸方向に測定対象物OBの表面までの距離Cn’を計算し、Z軸方向により正負の符号をつけ、現時点のZ軸方向移動位置に加算すればよい。上述したようにm=nmax−nであるので、計算したZ軸方向移動位置Cnは変数mにも対応しており、ステージ61(測定対象物OB)の停止位置から、これまでと反対方向にΔd移動するごとのZ軸方向移動位置Cmでもある。次に、測定対象物OBの表面プロファイルから変数nごとに、X線入射角が設定角度(XY平面に対するX線入射角)になるためのY軸周り傾斜角Θynを計算する。これは、変数n(変数m)ごとに計算したZ軸方向移動位置に対応する測定対象物OBの表面の点における法線とZ軸方向とが成す角度Θyn’を計算し、Y軸周り傾斜角の方向により正負の符号をつけ、現時点のY軸周り傾斜角に加算すればよい。計算したY軸周り傾斜角Θynは変数mにも対応しており、ステージ61(測定対象物OB)の停止位置から、これまでと反対方向にΔd移動するごとのY軸周り傾斜角Θymでもある。
次に、ステップS38にてコントローラ101は回転制御回路86に指令を出力し、モータ46を駆動させてプレート45をB位置まで回転させる。これにより、X線出射器10からのX線が移動ステージ21の貫通孔21aに入射され得る状態となる。次に、ステップS40にてコントローラ101は、X軸方向移動モータ制御回路94に先とは反対方向の移動方向と移動速度を出力し、モータ63を駆動させてステージ61(測定対象物OB)の図3の左方向への移動を開始させ、ステップS42にてX線制御回路71に指令を出力してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、測定対象物OBにX線が照射されるとともに、先の移動とは反対方向の移動が開始され、発生した回折X線によりイメージングプレート15に回折環が撮像され始める。そして、ステップS44にてX軸方向移動位置検出回路95が出力する移動位置を取り込み、最初に取り込んだ移動位置からそれ以降に取り込んだ移動位置を減算して移動量とし、ステップS46にて移動量が変数mと予め記憶されている微小移動量Δdを乗算した値になるのを待って、ステップS48及びステップS50にて、ステップS36にて計算したZ軸方向移動位置CmとY軸周り傾斜角Θymを、Z軸方向移動モータ制御回路92とY軸周り傾斜モータ制御回路90にそれぞれ出力する。そして、ステップS52にてステップS44にて計算した移動量が、予め記憶されている上限値以上になっていないと「No」と判定してステップS54に行き、ステップS54にて変数nをインクリメントしてステップS44に戻る。このようにして、上述したステップS44乃至ステップS54を繰り返し実行することで、イメージングプレート15に回折環が撮像されている間、X線回折測定装置の筐体50のZ軸方向の位置調整とY軸周り傾斜角調整が繰り返し行われ、照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角が設定値になるようにされる。
そして、ステップS44にて計算した移動量が予め記憶されている上限値以上になったとき、ステップS52にて「Yes」と判定してステップS56に行き、ステップS56にてX軸方向移動モータ制御回路94に停止の指令を出力してステージ61(測定対象物OB)の移動を停止し、ステップS58にてX線制御回路71に停止の指令を出力して、測定対象物OBへのX線の照射を停止する。そして、ステップS60にてプログラムを終了させる。これにより測定対象物OBを平面揺動させての回折環撮像は終了する。
次にコントローラ101は、自動または作業者の入力により回折環読取り工程S3を実行する。コントローラ101は、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させる。読取り開始位置とは、レーザ光の照射位置が回折環基準半径Roの円に対して若干だけ内側になるような位置である。回折環基準半径Roとは、測定対象物OBの残留応力が「0」であるときに、イメージングプレート15上に形成される回折環の半径であり、測定対象物OBにおけるX線の回折角度2Θ0(Θ0はブラッグ角)及び距離IP−OBの設定値LからRo=L・tan(2Θ0)の計算式で計算される。そして、X線の回折角度2Θ0は測定対象物OBの材質で決まり、距離Lは設定値に調整されているので、測定対象物OBの材質ごとに予め回折角2Θ0を記憶しておけば、測定対象物OBの材質を入力することで回折環基準半径Roは計算できる。
次に、コントローラ101は、スピンドルモータ制御回路74を制御して、スピンドルモータ27を所定の回転速度で回転させ、レーザ駆動回路77を制御してレーザ検出装置30からレーザ光をイメージングプレート15に照射させ、フォーカスサーボ回路81を制御してフォーカスサーボを開始させる。さらに、回転角度検出回路75を制御して、スピンドルモータ27(イメージングプレート15)の回転角度θpの出力を開始させ、A/D変換器83を制御して、SUM信号の瞬時値Iのデータ出力を開始させ、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ22を回転させ、イメージングプレート15を読取り開始位置から図1及び図2の右下方向へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置は、相対的にイメージングプレート15上を螺旋状に回転し始める。その後、コントローラ101は、イメージングプレート15が所定の小さな角度だけ回転するごとに、A/D変換器83が出力するSUM信号の瞬時値Iのデータと、回転角度検出回路75が出力する回転角度θpのデータと位置検出回路72が出力する移動距離xのデータとを入力し、それぞれのデータを対応させて記憶する。なお、移動距離xはレーザ光照射位置の径方向距離r(半径値r)に変換したうえで記憶する。これにより、螺旋状に回転するレーザ光の照射位置に関して、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータが所定回転角度ごとに順次記憶されていく。
SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータの所定回転角度ごとの記憶動作と並行して、コントローラ101は、回転角度θpごとに半径値rに対するSUM信号の瞬時値Iの曲線を作成し、曲線のピークに対応した半径値rαとSUM信号強度値Iαを記憶する。これは回折環の回転角度αごとに半径方向における回折X線の強度分布を求め、回折X線の強度がピークとなる箇所の半径値rαと回折X線の強度に相当する強度Iαを求める処理である。そして、すべての回転角度θp(回転角度α)において半径値rαと強度Iαを取得し、検出するSUM信号の瞬時値Iが強度Iαに対して充分小さくなった時点で、データの記憶を終了する。これにより、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布が瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群で、及び回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαで検出されたことになる。その後、コントローラ101は、各回路に指令を出力し、フォーカスサーボを停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換器83と回転角度検出回路75の作動を停止させ、フィードモータ22の作動を停止させる。なおイメージングプレート15の回転は、継続されている。
次にコントローラ101は、自動または作業者の入力により回折環消去工程S4を実行する。コントローラ101は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート15の消去開始位置とは、LED光源43から出力されるLED光の中心が回折環基準半径Roの円に対して前記読取り開始位置の場合よりもさらに内側になる位置である。次に、コントローラ101は、LED駆動回路84を制御してLED光源43によるLED光をイメージングプレート15に対して照射させ、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15が前記消去開始位置から消去終了位置まで図1及び図2の右下方向に一定速度で移動するよう、フィードモータ22を回転させる。消去終了位置とは、LED光の中心が回折環基準半径Roよりも前記消去開始位置と同じ程度の距離だけ外側となる位置である。これにより、LED光がイメージングプレート15上に螺旋状に照射され、撮像された回折環が消去される。
イメージングプレート15が消去終了位置になると、コントローラ101は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15の移動を停止させ、LED駆動回路84を制御してLED光の照射を停止させ、位置検出回路72の作動を停止させ、スピンドルモータ制御回路74を制御してスピンドルモータ27(イメージングプレート15)の回転を停止させる。
次にコントローラ101は、自動または作業者の入力により残留応力計算工程S5を実行する。これは、回折環の形状である回転角度αごとの半径値rαのデータと、X線照射点からイメージングプレート15までの距離の設定値L及びX線の入射角の設定値ψ(Θxy+Θy)を用いて、cosα法を用いた演算により残留応力を計算する演算処理である。この演算は公知技術であり、例えば特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されている。ただし、本実施形態では、出射X線とX線照射点における測定対象物OBの法線とを含む平面がイメージングプレート15と交差する箇所の回転角度は90度と270度になっており、公知技術のように0度と180度ではない。よって、回転角度αから90度を減算した値を回転角度αとして公知技術で示されたように計算を行う。
コントローラ101は計算が終了すると、表示装置に103に残留応力の計算結果を表示する。なお、残留応力以外に、平面揺動の長さと移動速度、X線照射点からイメージングプレート15までの距離L、及びX線の入射角ψ等の測定条件を表示するようにしてもよい。また、回折環の形状曲線(回転角度αごとの半径値rαから得られる曲線)、回折環の強度分布画像(瞬時値Iを明度に換算し、瞬時値Iに対応する明度、回転角度θp及び半径値rのデータ群から作成される画像)等を表示するようにしてもよい。作業者は結果を見ることで、測定対象物OBの疲労度の評価や、ショットピーニングなどによる加工結果の評価等を行うことができる。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、対象とする測定対象物OBに向けてX線を出射するX線出射器10と、X線出射器10から測定対象物OBに向けてX線が照射された際、測定対象物OBにて発生した回折X線を、X線出射器10から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差するイメージングプレート15にて受光し、イメージングプレート15に回折X線の像である回折環を形成するテーブル16、イメージングプレート15等からなる回折環形成機器と、X線出射器10と回折環形成機器とを内部に配置した筐体50と、測定対象物OBを、筐体50と相対的に測定対象物OBの表面に略平行な1方向に移動させるステージ移動機構60とを備えたX線回折測定システムにおいて、ステージ移動機構60による移動の位置を検出するX軸方向移動位置検出手回路95と、X線出射器10からX線が出射されていない状態で、X線出射器10から出射されるX線と光軸を同一にした平行光であるLED光を測定対象物OBに出射するLED光源44、スピンドルモータ27の内部構造等からなるLED光出射器と、LED光の照射点を含む領域の測定対象物OBの画像を結像する結像レンズ48、及び結像レンズ48によって結像された画像を撮像する撮像器49を有し、撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラと、カメラから出力される撮像信号を入力して撮像器49上におけるLED光の照射点の位置を検出し、検出した位置及び予め記憶されている撮像器49上の位置とイメージングプレート15までの距離との関係を用いて、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離を検出するコントローラ101にインストールされた距離検出プログラムと、筐体50を測定対象物OBと相対的に、ステージ移動機構60による移動方向に交差する方向であって、ステージ移動機構60による移動方向とX線出射器10から出射されるX線の光軸とに平行な平面に略平行な方向において位置を変化させる位置変化機構120と、ステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させながらLED光出射器からLED光を出射させ、X軸方向移動位置検出手回路95により移動位置を検出することと距離検出プログラムによりLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離を検出することとを繰り返し同じタイミングで行い、取得された複数の移動位置データと距離データを処理して、測定対象物OBのステージ移動機構60による移動方向における表面プロファイルを取得するコントローラ101にインストールされた表面プロファイル取得プログラムと、ステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させながらX線出射器10からX線を出射させて回折環形成機器により回折環を形成させると同時に、X軸方向移動位置検出手回路95により移動位置を検出し、検出した移動位置と表面プロファイル取得プログラムにより取得された表面プロファイルに基づいて、X線照射点からイメージングプレート15までの距離が一定になるよう、位置変化機構120により筐体50の位置を変化させるコントローラ101にインストールされた回折環形成制御プログラムとを備えている。
これによれば、まず表面プロファイル取得プログラムが、ステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させ、移動方向における測定対象物OBの表面プロファイルを取得する。そして、回折環形成制御プログラムが、表面プロファイルを取得した測定対象物OBの箇所をステージ移動機構60により移動(平面揺動)させながら、回折環形成機器によりイメージングプレート15に回折環を形成させるとき、X軸方向移動位置検出手回路95が検出した移動位置と先に取得された表面プロファイルに基づいて、X線照射点からイメージングプレート15までの距離が一定になるよう、位置変化機構120により筐体50の位置を変化させる。これにより、測定対象物OBの表面が平面でなくても、X線照射点ごとのX線照射点からイメージングプレート15までの距離を一定にして、精度のよい回折環を形成することができる。
また、上記実施形態においては、筐体50を測定対象物OBと相対的に、ステージ移動機構60による移動方向とX線出射器10から出射されるX線の光軸とに平行な平面に略垂直な回転軸であって、X線出射器10から出射されるX線の光軸と交差する回転軸周りに傾斜角を変化させるY軸周り傾斜角変化機能がある傾斜角変化機構110を備え、回折環形成制御プログラムは、検出した移動位置と取得された表面プロファイルに基づいて、位置変化機構120により筐体50の位置を変化させるとともに、測定対象物OBにおけるX線入射角が一定になるよう傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能により、筐体50の傾斜角を変化させることも行うようにしている。
これによれば、回折環形成機器によりイメージングプレート15に回折環を形成させるとき、X線照射点からイメージングプレート15までの距離に加え、測定対象物OBにおけるX線の入射角も一定にすることができ、さらに精度のよい回折環を形成することができる。
また、上記実施形態においては、表面プロファイル取得プログラムが測定対象物OBの表面プロファイルを取得する際に行うステージ移動機構60による測定対象物OBの移動が、設定された方向に設定された距離だけ行われるようにし、表面プロファイル取得プログラムが表面プロファイルを取得した直後に、回折環形成制御プログラムがステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させながら回折環形成機器により回折環を形成することを、測定対象物OBの移動が設定された方向の逆方向に設定された距離行うようにする、表面プロファイル取得プログラムと回折環形成制御プログラムを組み合わせたプログラムを備えている。
これによれば、表面プロファイル取得プログラムによる測定対象物OBの表面プロファイルの取得と、回折環形成制御プログラムによる測定対象物OBを平面揺動させながらの回折環形成を、ステージ移動機構60により測定対象物OBを往復移動させる間に行うことができるので、測定効率をよくすることができる。
(変形例1)
上記実施形態は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。上記実施形態においては、位置姿勢調整工程S1にて行うX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢(傾斜角)の調整において、X軸周り傾斜角の調整を行った後、X軸周り傾斜角を変化させることはなかった。これは、測定対象物OBの平面揺動において、出射X線の光軸と測定対象物OBのX線照射点における法線とを含む平面が、イメージングプレートと交差するラインが多少変動しても、形成される回折環の精度には大きく影響しないためである。しかし、測定対象物OBを平面揺動させながら回折環を形成する際、出射X線の光軸と測定対象物OBのX線照射点における法線とを含む平面がイメージングプレートと交差するラインが、定まった位置(回転角度90度の位置)になるよう制御すれば、さらに精度のよい回折環を形成することができる。別の表現をすると、出射X線の光軸と測定対象物OBのX線照射点における法線とに平行な平面が、Y軸周り傾斜角変化の回転軸であるY軸周り駆動ステージ112の回転軸と略垂直になるよう制御すれば、さらに精度のよい回折環を形成することができる。変形例1及び後述する変形例2は、測定対象物OBを平面揺動させながら回折環を形成する際、上記実施形態が行う制御に加えて、出射X線の光軸と測定対象物OBのX線照射点における法線とを含む平面がイメージングプレートと交差するライン(以下、回折環基準角度という)が、定まった位置(回転角度90度の位置)になるようにX軸周り傾斜角の制御も行うようにしたものである。そして、変形例1はX軸周り傾斜角の制御を行うため、測定対象物OBの表面プロファイル取得を、Y軸方向に微小な間隔だけ位置が異なる2つのラインで行うようにしたものである。
変形例1において上記実施形態と異なっているのは、コントローラ101にインストールされている回折環撮像工程S2で実行するプログラムと、コントローラ101のメモリに記憶されている撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係のみであり、X線回折測定システムの構成は上記実施形態と同一である。よって、上記実施形態と異なっている箇所のみを説明する。
変形例1において、コントローラ101のメモリに記憶されている撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係は、上記実施形態のように、LED光の光軸が出射X線の光軸と合致している場合と、テーブル駆動機構20により移動ステージ21を設定された微小距離だけ移動させ、LED光の光軸を出射X線の光軸からY軸方向に微小距離だけ移動させた場合の2つがある。LED光の光軸をY軸方向に微小距離だけ移動させた場合のLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係は、基準ブロックのように表面がステージ61の平面に平行(XY平面に平行)なものに鉄等の粉末を糊塗したものを測定対象物OBにすれば、LED光の光軸を移動させても照射点−IP間距離は変化しないので、上記実施形態と同様の方法で求めることができる。なお、設定された微小距離は微少であれば任意の値でよいが、10mm以下の値であることが望ましい。
変形例1において、コントローラ101にインストールされているプログラムで上記実施形態と異なっているのは、回折環撮像工程S2において実行するプログラムである。変形例1では図6に示すフローのプログラムに替えて図8に示すフローのプログラムを実行する。以下、図8に示すフローに沿って説明するが、図6に示すフローと同一の箇所は、同一であることを説明するにとどめる。
コントローラ101は、ステップS100にてプログラムをスタートさせるが、ステップS100乃至ステップS122の処理は、上記実施形態のステップS10乃至ステップS32の処理と同一であり、LED光を照射して測定対象物OBをX軸方向に設定された距離だけ送り、移動量がΔd変化するごとの照射点−IP間距離を取得する処理である。この処理の後、コントローラ101はステップS124にてフィードモータ制御回路73に、移動ステージ21を設定された微小距離だけ移動させるための移動位置を出力する。これにより、フィードモータ22が駆動して移動ステージ21は移動し、照射されているLED光の光軸は設定された微小距離だけY軸方向に移動する。設定された微小距離は、コントローラ101のメモリに記憶されているLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係における設定された微小距離と同一である。次にコントローラ101は、ステップS126にてX軸方向移動モータ制御回路94に移動方向と移動速度を出力し、モータ63を駆動させてステージ61(測定対象物OB)のこれまでと逆方向、すなわち図3の左方向への移動を開始させる。
ステップS126乃至ステップS140の処理は、ステップS108乃至ステップS122の処理と同一であり、ステージ61(測定対象物OB)をステップS122にて停止した位置からX軸方向に設定された距離、すなわちステップS108にて移動開始した位置まで送り、移動量がΔd変化するごとの照射点−IP間距離を取得する処理である。これにより、移動量がΔd変化するごとの照射点−IP間距離が、Y軸方向に微小な間隔だけ位置が異なる2つのラインにて取得される。そして、コントローラ101はステップS142にてLED駆動回路85とセンサ信号取出回路87に停止指令を出力して、LED光の照射と撮影画像データの出力を停止させ、ステップS144にて、メモリに記憶されている2つのラインにおける移動量に対応させた照射点−IP間距離を用いて、2つの測定対象物OBの表面プロファイルを計算し、平面揺動させながらのX線照射による回折環撮像時に照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角を設定値にし、回折環基準角度を90度にするための制御値を計算する。
この計算処理において、照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角を設定値にする制御値であるZ軸方向移動位置Cn及びY軸周り傾斜角Θynは、m=nmax−nを計算しない点を除いて上記実施形態と同一であるので、上記実施形態で示されているように計算する。m=nmax−nを計算しないのは、後述する回折環形成において、ステージ61(測定対象物OB)の移動方向が上記実施形態と逆、すなわち、図3の右方向への移動であるためである。なお、この計算においては、変数nに対応する照射点−IP間距離のみを使用し、変数mに対応する照射点−IP間距離は使用しない。
次に、回折環基準角度を90度にするための制御値であるX軸周り傾斜角Θxnを以下のように計算する。まず、変数mの最大値、すなわち、ステップS140でステージ61(測定対象物OB)の移動を停止したときの変数mをmmaxとして、mmaxからそれぞれの変数mを減算し、変数nとする。これで、ステップS126乃至ステップS140の処理で取得した移動量に対応させた照射点−IP間距離も、変数nに対応し、2つのラインにおける変数n(移動量n・Δd)が等しい時、LED光の光軸はY軸方向に設定された微小距離移動したものになる。そして、上記実施形態のように測定対象物OBの表面プロファイルを、ステップS126乃至ステップS140の処理で取得した移動量に対応させた照射点−IP間距離においても計算する。これにより、2つのラインにおける表面プロファイルを移動量がn・ΔdごとにYZ平面に平行な平面で切断すると、測定対象物OBのY軸方向における表面プロファイルの2つの点となる。視覚的に示すと図9に示すように、LED光の光軸が出射X線の光軸と同じ位置あるときの測定対象物OBの点と、LED光の光軸をY軸方向に設定された微小距離だけ移動させたときの測定対象物OBの点とが、変数n(移動量n・Δd)に対応させて得られる。そして、得られた2つの点のY軸方向の間隔は微小距離であるため、得られた2つの点を結んだラインとY軸方向とが成す角度を、測定対象物OBのY軸方向の表面プロファイルとY軸方向とが成す角度Θxn’とすることができる。そして、この角度を0°にするために傾斜させる角度もΘxn’であるので、角度Θxn’にX軸周り傾斜角の方向により正負の符号をつけ、現時点のX軸周り傾斜角に加算すればX軸周り傾斜角Θxnを求めることができる。なお、上述したようにX軸周り駆動ステージ115の回転軸はX軸と平行ではなく、X軸方向と本実施形態では15度の角度を成しているため、厳密にはX軸周り傾斜角Θxnは上記のように計算した値とは微小なずれがあるが、角度Θxn’が大きくなければこのずれは無視することができる。以上により、変数n(移動量n・Δd)に対応させて、Z軸方向移動位置Cn、Y軸周り傾斜角Θyn及びX軸周り傾斜角Θxnを得ることができる。
次に、ステップS146にてコントローラ101は変数nを0にし、ステップS148にて回転制御回路86に指令を出力してプレート45をB位置まで回転させ、フィードモータ制御回路73に移動位置を出力してイメージングプレート15を回折環撮像位置(図1、図2及び図4の状態)に移動させる。これにより、X線出射器10からのX線が移動ステージ21の貫通孔21aに入射され得る状態となる。次に、ステップS150にてコントローラ101は、X軸方向移動モータ制御回路94に移動方向と移動速度を出力し、モータ63を駆動させてステージ61(測定対象物OB)の図3の右方向への移動を開始させ、ステップS152にてX線制御回路71に指令を出力してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、測定対象物OBにX線が照射されるとともに、図3の右方向への移動が開始され、発生した回折X線によりイメージングプレート15に回折環が撮像され始める。ステップS154乃至ステップS166の処理は、上記実施形態のように、微小移動量ΔdごとにZ軸方向移動位置CnとY軸周り傾斜角Θynを、Z軸方向移動モータ制御回路92とY軸周り傾斜モータ制御回路90に出力することに加え、微小移動量ΔdごとにX軸周り傾斜角ΘxnをX軸周り傾斜モータ制御回路88に出力する処理である。これにより、イメージングプレート15に回折環が撮像されている間、X線回折測定装置の筐体50のZ軸方向位置の調整、Y軸周り傾斜角の調整及びX軸周り傾斜角の調整が繰り返し行われ、照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角が設定値になり、回折環基準角度が90度になるようにされる。
そして、ステップS154にて計算した移動量が予め記憶されている上限値以上になったとき、ステップS164にて「Yes」と判定してステップS168に行き、ステップS168にてX軸方向移動モータ制御回路94に停止の指令を出力してステージ61(測定対象物OB)の移動を停止し、ステップS170にてX線制御回路71に停止の指令を出力して、測定対象物OBへのX線の照射を停止する。そして、ステップS172にてプログラムの実行を終了する。
上記説明からも理解できるように、上記変形例1においては、上記実施形態のように構成したX線回折測定システムにおいて、LED光源44、スピンドルモータ27の内部構造等からなるLED光出射器から出射されるLED光の光軸を測定対象物OBと相対的に、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸に略平行な方向に移動させるテーブル駆動機構20と、筐体50を測定対象物OBと相対的に、ステージ移動機構60による移動方向とX線出射器10から出射されるX線の光軸とに平行な平面に略平行な回転軸であって、X線出射器10から出射されるX線の光軸と交差する回転軸周りに傾斜角を変化させる傾斜角変化機構110のX軸周り傾斜角変化機能と、表面プロファイル取得プログラムが測定対象物OBの表面プロファイルを取得する際に行うステージ移動機構60による測定対象物OBの移動を、設定された方向に設定された距離だけ行われる第1の移動と、第1の移動の後、テーブル駆動機構20による10mm以内の設定された距離の移動を行った上で設定された方向の逆方向に設定された距離だけ行われる第2の移動とにして、表面プロファイル取得プログラムが2つの表面プロファイルを取得するようにする表面プロファイル取得プログラムを含んだ制御プログラムとを備え、回折環形成制御プログラムは、X軸方向移動位置検出手回路95が検出した移動位置と取得された2つの表面プロファイルに基づいて、位置変化機構120及び傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能により筐体50の位置及び傾斜角を変化させるとともに、X線出射器10から出射されるX線の光軸と測定対象物OBのX線照射点部分の法線とに平行な平面が、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸と略垂直になるよう、傾斜角変化機構110のX軸周り傾斜角変化機能により筐体50の傾斜角を変化させるようにしている。
これによれば、回折環形成制御プログラムが回折環形成機器によりイメージングプレート15に回折環を形成させるとき、X線照射点からイメージングプレート15までの距離と測定対象物OBにおけるX線の入射角を一定にすることに加え、傾斜角変化機構110のX軸周り傾斜角変化機能がX線出射器10から出射されるX線の光軸と測定対象物OBのX線照射点部分の法線とに平行な平面が、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸と略垂直になるようにする。これは、X線出射器10から出射されるX線の光軸と測定対象物OBのX線照射点における法線とを含む平面がイメージングプレートと交差するラインが、定まった位置になるようにすることである。これにより、さらに精度のよい回折環を形成することができる。
また、上記変形例1においては、イメージングプレート15に撮像された回折環の形状をイメージングプレート15にレーザ光を走査しながら照射することにより検出するレーザ検出装置30及び各種回路等からなる回折環検出機器と、前記イメージングプレート15と連結されている移動ステージ21を、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸に略平行な方向に移動させるテーブル駆動機構20であって、イメージングプレート15を、少なくとも回折環を撮像する位置から撮像された回折環の形状を回折環検出機器により検出する位置までの範囲内で移動させるテーブル駆動機構20とを備え、LED光出射器は移動ステージ21と一体になっており、LED光の光軸の移動は、テーブル駆動機構20によりLED光出射器を移動することで行うようになっている。
これによれば、テーブル駆動機構20を可視光光軸を移動させる機構にすることができるので、可視光光軸を移動させる機構を新たに設ける必要がなく、X線回折測定装置のコストを抑制することができる。
(変形例2)
上記変形例1においては、測定対象物OBのY軸方向の表面プロファイルは2点のみ取得し、この2点のY軸方向の距離は微小であるため、この2点を結んだラインとY軸方向とが成す角度が、X線照射点(LED光照射点)における測定対象物OBの表面とY軸方向とが成す角度であるとした。しかし、測定対象物OBの表面の凹凸の度合いが大きいときは、実施例1の方法では、X線照射点(LED光照射点)における測定対象物OBの表面とY軸方向とが成す角度を精度よく求めることができず、X軸周り傾斜角の制御である回折環基準角度が90度になるようにする制御の精度が悪くなる場合がある。変形例2は、測定対象物OBの表面プロファイルを3次元で取得し、X軸周り傾斜角の制御の精度を変形例2よりも向上させたものである。
変形例2において変形例1と異なっているのは、コントローラ101にインストールされている回折環撮像工程S2で実行するプログラムと、コントローラ101のメモリに記憶されている撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係のみであり、X線回折測定システムの構成は上記実施形態及び変形例1と同一である。よって、上記実施形態及び変形例1と異なっている箇所のみを説明する。
変形例2において、コントローラ101のメモリに記憶されている撮影画像におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係は、LED光の光軸が出射X線の光軸と合致している場合の位置からY軸方向の両方向に微小距離Δdyずつ移動させた位置ごとにある。この微小距離Δdyは1mm以下であることが望ましい。微小距離Δdyごとの複数の位置におけるLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係は、変形例1と同様にステージ61の平面に平行(XY平面に平行)なものに、鉄等の粉末を糊塗したものを測定対象物OBにすれば得ることができる。すなわち、変形例1においてLED光の光軸(移動ステージ21)が2つの位置にあるとき、LED光の照射点の縦方向位置を得たのを、LED光の光軸の位置が微小距離Δdy変化するごとに得るようにすればよい。
変形例2において、コントローラ101にインストールされているプログラムで変形例1と異なっているのは、回折環撮像工程S2において実行するプログラムである。変形例2では図8に示すフローのプログラムに替えて図10及び図11に示すフローのプログラムを実行する。以下、図10に示すフローに沿って説明するが、図6又は図8に示すフローと同一の箇所は、同一であることを説明するにとどめる。
コントローラ101は、ステップS200にてプログラムをスタートさせるが、ステップS200乃至ステップS208の処理は、上記実施形態のステップS10乃至ステップS18の処理と同一であり、LED光を照射してステージ61(測定対象物OB)をX軸方向に移動開始するものである。コントローラ101は、ステップS208の次にステップS210にて図11に示すフローのプログラムをスタートさせる。図11に示すフローのプログラムは、LED光の光軸を出射X線の光軸と合致している位置からY軸方向の両方向に定めた移動限界の間を往復移動させるものである。以下、図11に示すフローに沿って説明する。コントローラ101は、ステップS300にてプログラムをスタートさせると、ステップS302にて、フィードモータ制御回路73に正方向の移動方向と移動速度を出力し、LED光の光軸(移動ステージ21)をY軸方向の正方向へ移動させる。次に、ステップS304にて位置検出回路72が出力する移動位置を取り込み、ステップS306にて移動位置が予め設定されている最大値になったか判定し、なっていなければ「No」と判定してステップS314を経由してステップS304に戻ることを繰り返す。これを繰り返しているとやがて取り込んだ移動位置が予め設定されている最大値になるので、ステップS306にて「Yes」と判定してステップS308に行き、ステップS308にてフィードモータ制御回路73に負方向の移動方向と移動速度を出力し、LED光の光軸(移動ステージ21)をY軸方向の負方向へ移動させる。次に、ステップS310にて位置検出回路72が出力する移動位置を取り込み、ステップS312にて移動位置が予め設定されている最大値になったか判定し、なっていなければ「No」と判定してステップS316を経由してステップS310に戻ることを繰り返す。これを繰り返しているとやがて取り込んだ移動位置が予め設定されている最小値になるので、ステップS312にて「Yes」と判定してステップS302に行き、ステップS302にて上記と同様にフィードモータ制御回路73に出力してLED光の光軸(移動ステージ21)をY軸方向の正方向へ移動させる。このように、ステップS302乃至ステップS312を繰り返し実行することで、LED光の光軸は出射X線の光軸と合致している位置からY軸方向の両方向に定めた移動限界の間を往復移動する。そして、コントローラ101がLED光光軸往復移動停止の指令を出すと、ステップS314又はステップS316にて「Yes」と判定してステップS318に行き、ステップS318にてフィードモータ制御回路73に移動停止の指令を出力する。次に、ステップS320にてフィードモータ制御回路73に移動位置を出力し、移動ステージ21をイメージングプレート15が回折環を撮像する位置(図1、図2及び図4の状態)に移動させ、ステップS322にてプログラムの実行を終了する。
図10に示すフローに戻り、コントローラ101はステップS210にて図11に示すフローのプログラムによりLED光の光軸の往復移動を開始すると、次にステップS212にて時間を0にして時間計測を開始する。そして、ステップS214にて計測した時間がn・ΔTになったか判定し、n・ΔTになると、ステップS216にてX軸方向移動位置検出回路95が出力する移動位置を取り込み、最初に取り込んだ移動位置をそれ以降に取り込んだ移動位置から減算して移動量とする。次にステップS218にて位置検出回路72が出力する移動位置を取り込み、ステップS220にてセンサ信号取出回路87から入力している撮影画像データを取り込む。そして、ステップS222にて取り込んだ撮影画像データからLED光照射点の画像上の縦方向位置を検出し、ステップS218にて取り込んだLED光の光軸(移動ステージ21)の移動位置、及び予め記憶されているLED光の光軸の移動位置ごとのLED光の照射点の縦方向位置と照射点−IP間距離との関係から、撮影画像データを取り込んだ時点の照射点−IP間距離を計算して記憶する。取り込んだLED光の光軸の移動位置と予め記憶されているLED光の光軸の移動位置とが完全に一致することは稀なので、補間法により照射点−IP間距離を計算する。すなわち、記憶されているLED光の光軸の移動位置から、取り込んだLED光の光軸の移動位置を挟んでいる移動位置を抽出して、2つの照射点−IP間距離を計算し、補間法により取り込んだLED光の光軸の移動位置における照射点−IP間距離を計算する。そして、ステップS224にてステップS216にて計算した移動量が予め設定した上限値になるまで「No」と判定してステップS226にて変数nをインクリメントしてステップS214に戻ることを繰り返す。これにより、時間が0,ΔT,2ΔT,3ΔT・・・と、ΔT経過するごとに、X軸方向の移動量と、LED光の光軸(移動ステージ21)の移動位置とに対応させて照射点−IP間距離がコントローラ101のメモリに記憶されていく。
そして、ステップS224にてステップS216にて計算した移動量が予め設定した上限値になると、「Yes」と判定してステップS228へ行き、ステップS228にてステージ61(測定対象物OB)の移動を停止し、ステップS230にて図11に示すフローのプログラムの実行を停止することでLED光の光軸(移動ステージ21)の移動を停止する。そして、ステップS232にてLED駆動回路85とセンサ信号取出回路87に停止指令を出力して、LED光の照射と撮影画像データの出力を停止させる。次に、コントローラ101はステップS234にて、メモリに記憶されているX軸方向の移動量と、LED光の光軸の移動位置とに対応させた照射点−IP間距離を用いて、3次元の測定対象物OBの表面プロファイルを計算し、平面揺動させながらのX線照射による回折環撮像時に、移動量m・Δdごとに、照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角を設定値にし、回折環基準角度を90度にするための制御値を計算する。
この計算処理において、メモリに記憶されているX軸方向の移動量と照射点−IP間距離を用いて、変数nごとのX,Z座標値を計算する方法は上記実施形態と同じである。そして、変数nごとのY座標値は、記憶されているそれぞれのLED光の光軸の移動位置からLED光の光軸が出射X線の光軸と一致する移動位置を減算すれば得ることができる。これにより、変数nごとのX,Y,Z座標値が得られ、このデータ群を用いて公知の演算処理を実行すれば測定対象物OBの表面プロファイルを3次元で得ることができる。得られた3次元の表面プロファイルからY座標値が0であるXZ平面における表面プロファイルを求めれば、上記実施形態と同様の表面プロファイルを得ることができる。そして、XZ平面における表面プロファイルにおいて、X線照射開始時にX線が照射される箇所のX軸方向移動量を0とした場合の、移動量m・ΔdごとのZ軸方向移動位置Cm及びY軸周り傾斜角Θymは、上記実施形態と同様に計算することができる。また、得られた3次元の表面プロファイルから、Z軸方向移動位置Cm及びY軸周り傾斜角Θymを得た点を含むYZ平面における表面プロファイルを求め、Y座標値が0(LED光の光軸が出射X線の光軸と一致する移動位置)における接線がY軸方向と成す角度Θxm’を求め、角度Θxm’にX軸周り傾斜角の方向により正負の符号をつけて、現時点のX軸周り傾斜角に加算すれば、X軸周り傾斜角Θxmを求めることができる。これにより、移動量m・ΔdごとのZ軸方向移動位置Cm、Y軸周り傾斜角Θym及びX軸周り傾斜角Θxmを得ることができる。
次に、コントローラ101は、ステップS236にて回転制御回路86に指令を出力してプレート45をB位置まで回転させて、X線出射器10からのX線が移動ステージ21の貫通孔21aに入射され得る状態にする。次に、コントローラ101は、ステップS236にてX軸方向移動モータ制御回路94に移動方向と移動速度を出力し、ステージ61(測定対象物OB)の図3の左方向への移動を開始させ、ステップS240にてX線制御回路71に指令を出力してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、測定対象物OBにX線が照射されるとともに、測定対象物OBの移動が開始され、発生した回折X線によりイメージングプレート15に回折環が撮像され始める。ステップS242乃至ステップS260の処理は、上記変形例1と同様であり、微小移動量ΔdごとにZ軸方向移動位置Cm、Y軸周り傾斜角Θym及びX軸周り傾斜角Θxmを、Z軸方向移動モータ制御回路92,Y軸周り傾斜モータ制御回路90及びX軸周り傾斜モータ制御回路88に出力し、照射点−IP間距離と測定対象物OBに対するX線入射角を設定値にし、回折環基準角度を90度にする処理である。そして、上記変形例1と同様、ステップS242にて計算した移動量が予め記憶されている上限値以上になったとき、ステージ61(測定対象物OB)の移動を停止し、X線の照射を停止してステップS260にてプログラムの実行を終了する。
上記説明からも理解できるように、上記変形例2においては、上記実施形態のように構成したX線回折測定システムにおいて、LED光源44、スピンドルモータ27の内部構造等からなるLED光出射器から出射されるLED光の光軸を測定対象物OBと相対的に、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸に略平行な方向に移動させるテーブル駆動機構20と、テーブル駆動機構20による移動の位置を検出する位置検出回路72と、筐体50を測定対象物OBと相対的に、ステージ移動機構60による移動方向とX線出射器10から出射されるX線の光軸とに平行な平面に平行で、X線出射器10から出射されるX線の光軸と交差する回転軸周りに傾斜角を変化させる傾斜角変化機構110のX軸周り傾斜角変化機能と、ステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させるとともにテーブル駆動機構20により可視光光軸位置を往復移動させながら、LED光出射器からLED光を出射させ、X軸方向移動位置検出回路95と位置検出回路72とにより2つの移動位置をそれぞれ検出することと、距離検出プログラムによりLED光の照射点からイメージングプレート15までの距離を検出することとを繰り返し同じタイミングで行い、取得された複数の移動位置データと距離データを処理して、測定対象物OBの3次元における表面プロファイルを取得する、コントローラ101にインストールされた表面プロファイル取得プログラムと、ステージ移動機構60により測定対象物OBを移動させながらX線出射器10からX線を出射させて回折環形成機器により回折環を形成させると同時に、X軸方向移動位置検出回路95により移動位置を検出し、検出した移動位置と表面プロファイル取得プログラムにより取得された表面プロファイルに基づいて、X線照射点からイメージングプレート15までの距離及び測定対象物OBにおけるX線入射角が一定になるよう、位置変化機構120と傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能により筐体50の位置と傾斜角を変化させるとともに、X線出射器10から出射されるX線の光軸と測定対象物OBのX線照射点部分の法線とに平行な平面が、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸と略垂直になるよう、傾斜角変化機構110のX軸周り傾斜角変化機能により筐体50の傾斜角を変化させる、コントローラ101にインストールされた回折環形成制御プログラムとを備えている。
これによれば、表面プロファイル取得プログラムが測定対象物OBの3次元における表面プロファイルを取得することができるので、回折環形成制御プログラムが、X線出射器10から出射されるX線の光軸と測定対象物OBのX線照射点部分の法線とに平行な平面が、傾斜角変化機構110のY軸周り傾斜角変化機能の回転軸と略垂直になるようにすることを、さらに精度よく行うことができ、さらに精度のよい回折環を形成することができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態及び変形例1,2においては、傾斜角変化機構110及び位置変化機構120を設け、X線回折測定装置(筐体50)のZ軸方向位置、X軸周り傾斜角及びY軸周り傾斜角を変化させるようにしたが、ステージ61(測定対象物OB)をZ軸方向に移動させる機構と、ステージ61(測定対象物OB)をX軸周り及びY軸周りに傾斜角を変化させる機構とを設け、X線回折測定装置(筐体50)は固定して、ステージ61(測定対象物OB)のZ軸方向位置、X軸周り傾斜角及びY軸周り傾斜角を変化させるようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、X線回折測定装置(筐体50)をZ軸方向に移動させる位置変化機構120を設けたが、照射点−IP間距離を設定値Lに制御することができればよいので、位置変化機構120はX線回折測定装置(筐体50)を、XY平面に平行な方向でZ軸と所定の角度を成す方向に移動させる機構であってもよい。この場合、Z軸方向移動位置Cn(Cm)は、ステージ61(測定対象物OB)の移動開始時(n=0)における照射点からX軸方向にΔdごとの点から位置変化機構120の移動方向に測定対象物OBの表面までの距離Cn’ (Cm’)を計算し、該移動方向により正負の符号をつけ、現時点の位置変化機構120の移動位置に加算すればよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、ステージ移動機構60を設け、ステージ61(測定対象物OB)をX軸方向に移動させることにより平面揺動を行うようにしたが、X線回折測定装置(筐体50)を移動させる機構を設け、ステージ61(測定対象物OB)は動かさず、X線回折測定装置(筐体50)をX軸方向に移動させることにより平面揺動を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、回折環を形成する(撮像する)機器を、イメージングプレート15、テーブル16及び固定具18等から構成されるものにしたが、回折環を形成することができるならば、どのような機器を用いてもよい。例えば、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線出射器10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折X線の強度分布を検出する機器でもよい。また、微小サイズのX線検出センサを位置を検出しながら走査し、X線検出センサの各画素が出力する電気信号とX線検出センサの走査位置から、回折X線の強度分布を検出する機器でもよい。X線検出センサとしては、X線CCDやシンチレータから出た蛍光を光電子増倍管(PMT)で検出するシンチレーションカウンタ等を用いることができる。
また、上記変形例1,2においては、テーブル駆動機構20により、移動ステージ21をY軸方向に移動させることでLED光の光軸をY軸方向に移動させたが、ステージ61(測定対象物OB)をY軸方向に移動させる機構を設け、ステージ61(測定対象物OB)と相対的にLED光の光軸をY軸方向に移動させるようにしてもよい。また、装置が大型化してもよければ、X線回折測定装置(筐体50)をY軸方向に移動させる機構を設け、X線回折測定装置(筐体50)を移動させるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、平面揺動しての回折環撮像時に、X線回折測定装置(筐体50)のZ軸方向位置とX軸周り傾斜角を制御し、照射点−IP間距離とX線の入射角が設定値になるようにしたが、形成される回折環の精度をやや落としてもよい場合は、Z軸方向位置のみを制御し、照射点−IP間距離のみが設定値になるようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例2においては、ステージ61(測定対象物OB)を移動させて、平面揺動時にX線が照射されるラインの測定対象物OBの表面プロファイルを得、その後、ステージ61(測定対象物OB)を停止位置から移動開始位置まで逆方向に移動させる平面揺動を行いながら回折環の撮像を行うようにした。すなわち、ステージ61(測定対象物OB)が往復移動する間に表面プロファイル検出と、平面揺動を行いながらの回折環撮像を行うようにした。しかし、測定効率を重要視しなければ、測定対象物OBの表面プロファイル検出と平面揺動を行いながらの回折環撮像は分けて行うようにしてもよい。例えば、測定対象物OBの表面プロファイルを複数のラインで検出して、表面プロファイルの凹凸が少ないラインを選択して平面揺動を行いながらの回折環撮像を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、測定対象物OBの表面プロファイルを取得するときのX軸方向への移動と、測定対象物OBを平面揺動させて回折環を撮像するときのX軸方向への移動は、移動方向は逆であるが移動距離は等しいとした。しかし、測定時間をやや長くしてもよい場合は、測定対象物OBを平面揺動させて回折環を撮像するときの移動距離は、測定対象物OBの表面プロファイルを取得するときの移動距離より短くしてもよい。この場合、測定対象物OBの表面プロファイルを長めに取得し、表面プロファイルがより平面に近い領域を選定して、平面揺動させての回折環撮像を行うといった測定方法が考えられる。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、コントローラ101に残留応力を計算する演算プログラムを備えた。しかし、X線回折測定に時間がかかってもよい場合は、X線回折測定システムは回折環の形状を検出するまでにし、別のコンピュータ装置に回折環の形状データと照射点−IP間距離、X線入射角等のパラメータを入力して、残留応力を計算するようにしてもよい。この場合、別のコンピュータ装置にデータを入力する方法としては、記録媒体を介する方法、ネット回線等を使用して転送する方法等、様々な方法が考えられる。また、計算の一部または全部を人為的に行ってもよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、X線回折測定装置(筐体50)内とコントローラ101に、レーザ検出装置30、テーブル駆動機構20及び制御プログラム等の回折環の形状を検出する機能を備えた。しかし、X線回折測定に時間がかかってもよい場合は、X線回折測定システムは回折環を形成(撮像)するまでにし、回折環の形成されたイメージングプレート15を取り外して、回折環の形状を検出する装置にセットし、回折環の形状を検出するようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、プレート45、モータ46及びストッパ部材47aによりLED光源44をX線の光軸上に移動させて、LED光を測定対象物OBに照射する構造にした。しかし、これに代えて、出射X線と光軸を同一にした可視の平行光を照射することができれば、どのような構造にしてもよい。例えば、ビームスプリッタを出射X線の光軸上に配置し、LED光をビームスプリッタで反射させて出射X線と光軸を同一にして照射するようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、スピンドルモータ27の貫通孔27bに内径の小さな通路部材28を設けるとともに、固定具18の貫通孔18a,18bの内径を小さくして、LED光源44から出射されたLED光から小さな断面径の平行光が得られるようにしたが、小さな断面径の可視の平行光が得られるならば、別の構造にしてもよい。例えば、可視光であるレーザ光を出射するレーザ光源の近くにコリメートレンズとエキスパンダーレンズを配置し、小さな断面径のレーザ光の光軸をスピンドルモータ27の出力軸27aの貫通孔27a1の中心軸線と一致させ、固定具18の貫通孔18a,18bに入射させるようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例1,2においては、結像レンズ48の光軸をLED光(出射X線)の光軸と照射点−IP間距離が設定値Lになる点で交差させ、撮像器49と結像レンズ48の光軸が交差する点の撮影画像上の位置に、撮影画像とは独立して十字マークが表示されるようにした。しかし、結像レンズ48の光軸を照射点−IP間距離が設定値Lになる点でLED光(出射X線)の光軸と交差させることは必須ではない。すなわち、LED光の照射点が照射点−IP間距離が設定値Lになる点と合致するときの、撮影画像上のLED光の照射点の位置に撮影画像とは独立して十字マークが表示されるようすればよい。
また、上記実施形態においては、固定台130に位置変化機構120を固定し、位置変化機構120に傾斜角変化機構110を固定し、傾斜角変化機構110にX線回折測定装置(筐体50)を固定するようにした。しかし、X線回折測定装置(筐体50)のZ軸方向位置、X軸周り傾斜角及びY軸周り傾斜角を変化させることができれば、位置変化機構、傾斜角変化機構の固定のさせ方は目的に合った様々な構造を採用してよい。