JP6844103B1 - X線回折測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 容易にX線照射点から撮像面までの距離及びX線入射角を操作者が意図した値にすることができるX線回折測定装置を提供する。【解決手段】 X線と同じ光軸で可視のLED光を照射したとき、LED光照射点付近を撮影するカメラCaを備え、カメラCaを撮像面であるイメージングプレート15に平行な方向に移動する移動機構100を備える。入力装置からX線照射点から撮像面までの距離及びX線入射角を入力すると、コンピュータ制御によりカメラCaは、該距離と入射角が入力された通りの値であるとき、LED光の反射光がカメラCaの結像レンズの中心に入射する位置に移動する。さらに、コンピュータ制御により、カメラCaが移動した状態で該距離と入射角が入力された通りの値であるとき、カメラCaの撮影画像においてLED光照射点となる位置に十字マークを表示する。【選択図】図2

Description

本発明は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線により撮像面に回折環を形成するX線回折測定装置に関する。
従来から、例えば特許文献1に示されるように、測定対象物に所定の入射角でX線を照射して、測定対象物で回折したX線によりX線回折環(以下、回折環という)を形成し、形成された回折環の形状を検出してcosα法による分析を行い、測定対象物の残留応力を測定するX線回折測定装置が知られている。特許文献1に示されている装置は、X線出射器、イメージングプレート等の撮像手段、レーザ検出装置等の読取手段、移動機構と回転機構等のレーザ走査手段及びLED照射器等の回折環消去手段を1つの筐体内に備えている。そして、測定対象物にX線を照射して発生する回折X線により、回折環をイメージングプレートに撮像する撮像工程、イメージングプレートにレーザ検出装置からのレーザ光を走査しながら照射することで回折環の形状を検出する読取工程、及び該回折環をLED光の照射により消去する消去工程を連続して行えるようになっている。また、特許文献1に示されている装置は、測定対象物に照射されるX線と光軸を同一にしたLED光を照射するLED光照射機能と、LED光の照射点付近を撮像する撮像機能とを備えている。そして、該LED光を測定対象物に照射してLED光の照射点付近の撮影を行い、該照射点が測定対象物上の目的とする測定箇所になり、撮影画面におけるLED光の照射点とLED光の反射光の受光点が設定された位置になるようX線回折測定装置に対する測定対象物の位置と姿勢を調整することで、X線照射点からイメージングプレートまでの距離(以下、照射点―撮像面間距離という)及びX線入射角を設定値にすることができる。
特許文献1に示されている装置は、照射点―撮像面間距離及びX線入射角の設定値は1つに定められているが、撮像画面におけるLED光の照射点から照射点―撮像面間距離を検出することができるので、照射点―撮像面間距離を設定値以外の値にしてX線回折測定をすることが可能である。また、特許文献1に示されている装置に制御ソフトによる別機能を追加した特許文献2の装置は、X線入射角を検出することができる。よって、特許文献2の装置を用いれば照射点―撮像面間距離及びX線入射角を設定値以外の値にしてX線回折測定をすることが可能である。
特許第5835191号公報 特許第6048547号公報
しかしながら、特許文献1の装置は照射点―撮像面間距離を検出することはできても、操作者が検出される値が意図した値になるようX線回折測定装置に対する測定対象物の位置と姿勢を調整するには時間を要するという問題がある。また、特許文献2の装置はX線入射角を検出するのに時間を要するため、操作者が検出される値が意図した値になるよう測定対象物の位置と姿勢を調整するには多大の時間を要し、実質的に不可能であるという問題がある。
本発明はこの問題を解消するためなされたもので、その目的は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線により撮像面に回折環を形成するX線回折測定装置において、容易に照射点―撮像面間距離及びX線入射角を、操作者が意図した値にすることができるX線回折測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射手段と、X線出射手段から測定対象物に向けてX線が出射された際、測定対象物にて発生した回折X線を、X線出射手段から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差する撮像面にて受光し、撮像面に回折X線の像である回折環を形成する回折環形成手段と、X線出射手段からX線が出射されていない状態で、X線出射手段から出射されるX線と光軸を同一にした平行光である可視光を測定対象物に向けて出射する可視光出射手段と、可視光出射手段から出射された可視光の照射点を含む領域の測定対象物の画像を結像する結像レンズ、及び結像レンズによって結像された画像を撮像する撮像器を有し、撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラであって、可視光の測定対象物での反射光が結像レンズにて撮像器にて集光して形成された受光点を表す撮像信号も出力するカメラと、カメラから出力される撮像信号を入力して、撮像器によって撮像された画像と受光点を画面上に表示する表示器とを備えたX線回折測定装置において、可視光の照射点から撮像面までの距離である照射点―撮像面間距離、及び可視光の測定対象物に対する入射角であるX線入射角の内の少なくとも1つを入力可能な入力手段と、入力手段が照射点―撮像面間距離及びX線入射角の内の少なくとも1つを入力すると入力された値を記憶するとともに、入力手段が照射点―撮像面間距離又はX線入射角の内の一方を入力可能でないときは、予めその一方の値を記憶している記憶手段と、カメラを、X線出射手段が出射するX線の光軸と回折環形成手段における円周方向角度0のラインとを含む面内で結像レンズの光軸に交差する方向に移動させるカメラ移動手段と、可視光が測定対象物に向けて出射され、照射点―撮像面間距離及びX線入射角が記憶手段に記憶された通りの値である場合、結像レンズの中心に可視光の反射光が入射するよう、カメラ移動手段によりカメラを移動させるカメラ位置制御手段とを備え、表示器は、カメラ位置制御手段によりカメラが移動した状態で、照射点―撮像面間距離及びX線入射角が記憶手段に記憶された通りの値である場合、撮像器によって撮像される照射点の画像上の位置を照射点基準位置として、撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示するようにしたことにある。
これによれば、操作者が入力手段を用いて意図した照射点―撮像面間距離及びX線入射角の両方を又はいずれか1つを入力すれば、カメラ位置制御手段が記憶手段に記憶されている照射点―撮像面間距離及びX線入射角に基づいて、結像レンズの中心に可視光の反射光が入射するよう、カメラ移動手段によりカメラを移動させる。そして、表示器がカメラの撮像器によって撮像された画像とは独立して照射点基準位置を画面上に表示するので、操作者は画面上の照射点基準位置に可視光の照射点と受光点が合致するよう、X線回折測定装置に対する測定対象物の位置と姿勢を調整すれば、実際の照射点―撮像面間距離及びX線入射角を(入力手段への入力がいずれか1つであるときは、その1つを)操作者が入力手段に入力した通りの値にすることができる。先行技術文献の特許文献1においては、カメラが固定されていたため、照射点の散乱光が結像レンズに入射して撮像器上で結像するときの光軸と可視光の反射光が結像レンズの中心に入射するときの光軸が一致するときは、すなわち表示器の画面上で可視光の照射点と受光点が照射点基準位置に合致するときは、照射点―撮像面間距離とX線入射角が設定値通りのときのみであった。これに対し、本発明ではカメラ移動手段によりカメラを移動させることができるようにしたので、照射点―撮像面間距離及びX線入射角を様々な値にしても、照射点の散乱光が結像レンズに入射して撮像器上で結像するときの光軸と可視光の反射光が結像レンズの中心に入射するときの反射光の光軸とが一致するようカメラの位置を調整することができる。これにより、照射点―撮像面間距離及びX線入射角を(入力手段への入力がいずれか1つであるときは、その1つを)操作者が意図した値にすることができる。
また、本発明の他の特徴は、回折環形成手段の撮像面は、測定対象物に向けて出射されるX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルに取り付けられたイメージングプレートであり、イメージングプレートに形成された回折環を読み取る手段として、イメージングプレートにレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射によってイメージングプレートから出射された光の強度を検出するレーザ検出装置と、回転することによりテーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる出力軸を有する回転手段であって、出力軸の中心軸が貫通孔の中心軸に一致するように配置され、X線が通過可能な貫通孔が出力軸に形成されている回転手段と、レーザ検出装置を、イメージングプレートに平行な方向に移動させるレーザ検出装置移動手段と、回転手段によってテーブルが回転され、かつ移動手段によってレーザ検出装置が移動されている状態で、レーザ検出装置によって繰り返し検出された光の強度を、それぞれの光の強度の検出時におけるテーブルの回転角度及びレーザ検出装置の移動位置に関連付けて複数の読み取りデータとしてそれぞれ記憶するデータ読み取り手段とを備え、カメラは、レーザ検出装置と一体になっており、カメラ移動手段はレーザ検出装置移動手段と同一であるようにしたことにある。
これによれば、回折環形成手段の撮像面をイメージングプレートにし、回折環の読み取り手段を、レーザ検出装置、回転手段、レーザ検出装置移動手段及びデータ読み取り手段から構成したX線回折測定装置においては、レーザ検出装置移動手段をカメラ移動手段にすることができるので、カメラ移動手段を新たに設ける必要がない。これにより、X線回折測定装置をコンパクトにすることができるとともにコストを抑制することができる。
また、本発明の他の特徴は、入力手段は、照射点―撮像面間距離及びX線入射角の両方を入力可能な手段であり、記憶手段は、照射点―撮像面間距離及びX線入射角の基準値又は1回前に入力手段が入力した値を予め記憶しており、入力手段が照射点―撮像面間距離又はX線入射角の値を入力すると、記憶している値を入力した値に差し替える手段であり、表示器は、記憶手段が記憶している照射点―撮像面間距離及びX線入射角を画面上に表示するようにしたことにある。これによれば、操作者は表示器に表示される照射点―撮像面間距離及びX線入射角を見て、変更の必要があるときのみ、照射点―撮像面間距離及びX線入射角の両方又はいずれか一方を入力すればよいので、作業効率がよくなる。
また、本発明の他の特徴は、入力手段が、照射点―撮像面間距離を入力したとき、入力手段が入力可能なX線入射角の範囲を計算して表示器に表示させる入射角範囲計算手段を備えたことにある。これによれば、設定不可能なX線入射角を入力しないようにすることができる。X線入射角及び照射点―撮像面間距離を様々な値にすることができても、カメラ移動手段によるカメラの移動範囲は有限であるので、結像レンズの中心に可視光の反射光を入射させることができるX線入射角及び照射点―撮像面間距離には範囲がある。そして、照射点―撮像面間距離が入力されたときは、その照射点―撮像面間距離とカメラの移動範囲から結像レンズの中心に可視光の反射光を入射させることができるX線入射角の範囲を計算することができる。
また、本発明の他の特徴は、入力手段が、X線入射角を入力したとき、入力手段が入力可能な照射点―撮像面間距離範囲を計算して表示器に表示させる距離範囲計算手段を備えたことにある。これによれば、設定不可能な照射点―撮像面間距離範囲を入力しないようにすることができる。照射点―撮像面間距離より先にX線入射角が入力されたときは、そのX線入射角とカメラの移動範囲から結像レンズの中心に可視光の反射光を入射させることができる照射点―撮像面間距離の範囲を計算することができ、さらに回折環形成手段に回折環を形成することができる照射点―撮像面間距離の範囲があるので、これらの2つの範囲から入力可能な照射点―撮像面間距離範囲を求めることができる。
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを示す全体概略図である。 図1のX線回折測定装置の拡大図である。 図2のX線回折測定装置におけるX線出射機構の部分を拡大して示す部分断面図である。 図2のX線回折測定装置において回折環読み取りのときレーザ検出装置が移動する様子を示す図であって、(A)は移動開始時の状態、(B)は移動終了時の状態を示す図である。 図3のプレート部分の拡大斜視図である。 図2のX線回折測定装置のカメラ部分を拡大して示す図である。 カメラを適切な位置にしてLED光の反射光を入射するようにしたときのLED光の光路とそのときのカメラの撮影画像を示す図であり、(A)は照射点―撮像面間距離とX線入射角が基準値である場合、(B)は照射点―撮像面間距離とX線入射角が基準値ではない場合である。 照射点―撮像面間距離を設定した場合のX線入射角の設定可能範囲を、カメラの移動位置と共に示す図である。 照射点―撮像面間距離の設定可能範囲を、回折環を形成する回折X線の光路と共に示す図である。 X線入射角を設定した場合の照射点―撮像面間距離の設定可能範囲を、カメラの移動位置と共に示す図である。 本発明の変形例に係るX線回折測定装置の拡大図である。 図11のX線回折測定装置において、照射点―撮像面間距離を設定した場合のX線入射角の設定可能範囲を、カメラの移動位置と共に示す図である。
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの構成について図1乃至図6を用いて説明する。なお、このX線回折測定システムは、先行技術文献の特許文献1及び特許文献2に示されているX線回折測定システムと同じ構成又は同じ構造になっている箇所が随所にあるので、そのような箇所の説明においては先行技術文献と同じであることを述べて簡略的に説明するにとどめる。
図1及び図2に示すように、このX線回折測定システムは、測定対象物OBを対象物セット装置6に載置し、X線回折測定装置1からX線を照射して測定対象物OBで発生する回折X線により回折環を形成し、形成された回折環の形状を読み取って、その形状からcosα法による分析により測定対象物OBの残留応力を測定するシステムである。図1に示すように、X線回折測定システムは、X線回折測定装置1、対象物セット装置6、コンピュータ装置90及び高電圧電源95及びX線回折測定装置1の固定機構から構成される。図2に示すようにX線回折測定装置1の筐体50は傾斜状態で支持ロッド3に固定され、支持ロッド3は設置プレート2に固定されており、設置プレート2を作業台等に載置することで、X線回折測定装置1は位置と姿勢が固定される。このX線回折測定装置1の固定機構は特許文献1に示されているX線回折測定システムと同じである。なお、以下、図1及び図2の紙面垂直方向をX軸方向、横方向をY軸方向、縦方向をZ軸方向として説明する。
図1及び図2に示すように、測定対象物OBは対象物セット装置6のステージ61に載置される。対象物セット装置6は、特許文献1に示されているX線回折測定システムのものと同じであり、X,Y,Z軸方向の移動とX,Y軸周りの傾斜角変更を行う機能を有し、ステージ61及びそこに載置された測定対象物OBの位置と姿勢を調整することができる。端的に説明すると、対象物セット装置6は、設置プレート62の上に高さ調整機構63、操作子63a及び第1プレート64からなるZ軸方向移動機能があり、その上に第2プレート65及び操作子65aからなるX軸周り傾斜角変更機能があり、その上に第3プレート66及び操作子66aからなるY軸周り傾斜角変更機能があり、その上に第4プレート67及び操作子67aからなるX軸方向移動機能があり、その上に第5プレート68、操作子68a及びステージ61からなるY軸方向移動機能がある。これにより、操作子63a,65a,66a,67a,68aを回転させることで、ステージ61及びそこに載置された測定対象物OBの位置と姿勢を変化させることができる。
図1及び図2に示すように、X線回折測定装置1は筐体50内に、X線管10、イメージングプレート15が取り付けられたテーブル16、テーブル16を回転させると共に、X線管10から出射されるX線を回転軸に形成された貫通孔を通過させるスピンドルモータ27、回折環を検出するためのレーザ光及び消去するためのLED光を出射するレーザ検出装置30、X線照射点付近を撮影するカメラCa及びレーザ検出装置30をイメージングプレート15に平行な方向に移動する移動機構100等を備えている。そして、X線回折測定装置1は筐体50内に、X線管10、移動機構100、レーザ検出装置30及びカメラCa等に接続され、それらの作動を制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外に示された2点鎖線で囲われた各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。そして、これらの各種回路はコンピュータ装置90に接続され、コンピュータ装置90のコントローラ91から入力する指令により作動する。コンピュータ装置90は入力装置92及び表示装置93を有し、入力装置92からの入力及びインスト−ルされているプログラムの作動により、上述した各種回路に指令を出力し、また該各種回路が出力したデータ及び入力装置92から入力された値を入力してメモリに記憶する。そして、記憶されたデータをインスト−ルされているプログラムにより処理し、得られた残留応力等の測定結果及びカメラCaの撮影画像等を表示装置93に表示させる。また、図1に示すように、X線回折測定システムは高電圧電源95を備え、高電圧電源95はX線管10がX線を出射するための電圧及び電流をX線管10に出力する。
図2に示すように、X線回折測定装置1の筐体50は、直方体形状の上面と底面それぞれ1つの角をなくすように斜面を形成し、底面に段差をつけたような構造をしている。詳細には、筐体50は、第1底面壁50a、第2底面壁50c、前面壁50b、後面壁50e、上面壁50f、側面壁(図示せず)、第1底面壁50aと第2底面壁50cを連結する底面傾斜壁50h、第2底面壁50cと前面壁50bが交差する角部をなくすように設けた繋ぎ壁50d及び後面壁50eと上面壁50fが交差する角部をなくすように設けた上面傾斜壁50gを有するように形成されている。第2底面壁50cと上面壁50fは略平行であり、前面壁50bと後面壁50eも略平行である。そして、第2底面壁50cと上面壁50fに対し前面壁50bと後面壁50eは略垂直であり、側面壁も略垂直である。また、繋ぎ壁50dは側面壁と垂直であり第2底面壁50cと所定の角度を有している。この所定の角度は、例えば30〜40度であり、X線回折測定装置1の筐体50は、繋ぎ壁50dが設置プレート2の上面及び下面と平行になるように支持ロッド3に固定されている。第2底面壁50cには円形孔50c1があり、回折環撮像時にはこの円形孔50c1を通過してX線が出射され、測定対象物OBにて発生した回折X線はこの円形孔50c1を通過してイメージングプレート15に撮像される。このX線の出射方向は、前面壁50b、後面壁50e及び側面壁に平行であり、上面壁50f及び第2底面壁50cに垂直である。よって、測定対象物OBの表面が設置プレート2の上面及び下面に平行である場合、繋ぎ壁50dが第2底面壁50cと成す角度が測定対象物OBに対するX線の入射角になる。本実施形態のX線回折測定システムはX線の入射角を様々な値に設定できるが、このときのX線入射角がX線入射角の基準値である。また、底面傾斜壁50hは長尺方向が側面壁に平行な長方形状の長尺孔50h1があり、この配置位置はカメラCaの撮影方向であるので、カメラCaは長尺孔50h1を介してX線照射点付近を撮影することができる。
図1及び図2に示すように、X線管10は筐体50内の上部にて図示左右方向に延設されて固定されている。この固定は、X線管10の側面が板状プレート26に形成された円柱側面の一部の形状になっている溝に嵌合することで、位置決めがされたうえで行われている。また、板状プレート26は、固定している移動機構100と共に筐体50に固定されており、X線管10の中心軸は、上面壁50f及び側面壁に略平行になっている。そして、X線管10は、高電圧電源95からの高電圧の供給を受けると、その側面に形成された円状の出射口11からX線を図の下方向に出射する。図3に示すように板状プレート26において出射口11と合う箇所には貫通孔26aが形成されており、出射口11から出射したX線は貫通孔26aを通過して図の下方向に進む。図1に示すX線制御回路71は、コントローラ91から指令が入力すると、X線管10から一定強度のX線が出射するように、高電圧電源95からX線管10に供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線管10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。
図2に示すように、移動機構100は板状プレート26と一体になっており、X線管10の中心軸方向に、別の表現をすると出射X線の光軸に垂直で筺体50の上面壁50f及び側面壁に平行な方向に移動ステージ101を移動するための機構を有する。移動ステージ101の紙面反対側には凸部があり、この凸部は板状プレート26に固定されたブロック109とブロック110に固定された板状のガイド105に形成された溝に嵌合している。そして、移動ステージ101は中心部分にある雌ねじが形成された孔に雄ねじが形成されたスクリューロッド103が挿入されている。これにより移動ステージ101は、ブロック109に固定されたフィードモータ102、スクリューロッド103及びブロック110に固定された軸受部104が回転することで、板状のガイド105に形成された溝の方向に移動する。図2に示すように、移動ステージ101の下部には連結ブロック106が固定され、連結ブロック106は固定ブロック107を固定し、固定ブロック107には図の右側上部にレーザ検出装置30を固定し、下部にカメラCaを固定している。よって、移動ステージ101がX線管10の中心軸方向に移動すれば、レーザ検出装置30及びカメラCaも同方向に移動する。フィードモータ102内には、エンコーダ102aが組み込まれており、エンコーダ102aはフィードモータ102が回転するとパルス列信号を、図1に示す位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動し、位置検出回路72はエンコーダ102aからのパルス列信号をカウントすることで、移動限界位置を原点とした移動距離である移動位置をフィードモータ制御回路73とコントローラ91に出力する。また、フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から入力した移動位置が位置検出回路72から入力する移動位置に等しくなるまで、フィードモータ102に駆動信号を出力する。さらに、フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動方向と移動速度が入力すると、エンコーダ102aからのパルス列信号から計算される移動速度が入力した移動速度になるよう移動を行う。位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73のこれらの機能により、コントローラ91が指令を出力することで、移動ステージ101と一体になっているレーザ検出装置30とカメラCaは、コントローラ91が指定する位置への移動、及びコントローラ91が指定する方向への指定された速度での移動を行う。
図3に示すように、X線管10の出射口11から出射され板状プレート26の貫通孔26aを通過したX線は後述する円盤状プレート45の方向に進む。後述するが、円盤状プレート45はモータ46が回転することで、貫通孔26aの下側にある場合と貫通孔26aの下側から除かれる場合があり、貫通孔26aの下側から除かれていると、貫通孔26aを通過したX線はモータ固定ブロック111に形成された貫通孔111aに入射する。モータ固定ブロック111は移動機構100のブロック110と板状プレート26に固定されたブロック112に固定されており、出射口11及び貫通孔26a,111aの中心軸と回転軸が一致するようスピンドルモータ27を固定している。スピンドルモータ27の出力軸27aは円筒状で断面円形の貫通孔27a1を有し、出力軸27aの反対側には貫通孔27bが設けられ、貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするための貫通孔28aが形成された円筒状の通路部材28が固定されている。そして、スピンドルモータ27の出力軸27aの先端には、スピンドルモータ27の回転軸に垂直になるようテーブル16が固定され、テーブル16は中心部分に下方へ突出した突出部17を有し、突出部17の外周面にはねじ山が形成されている。テーブル16に取り付けられるイメージングプレート15には中心部に貫通孔15aが形成されており、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15はテーブル16に取り付けられる。貫通孔26a,111a、28a、27b、27a1、18aの中心軸は同一であり、スピンドルモータ27の回転軸と一致している。また、貫通孔111aに入射したX線は、貫通孔28a、27b、27a1、18aを通過して出射するので、出射X線の光軸はこれらの貫通孔の中心軸と一致している。貫通孔18aから出射されたX線は、前述したように第2底面壁50cに形成された円形孔50c1を通過して測定対象物OBに照射され、測定対象物OBで発生した回折X線は円形孔50c1を通過してイメージングプレート15に照射され、イメージングプレート15には回折環が撮像される。図3に示す構造は、スピンドルモータ27を固定しているモータ固定ブロック111が固定されていることを除き、特許文献2に示されている構造と同一である。
図3に示すように、スピンドルモータ27内にはエンコーダ27cが組み込まれ、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとが切り替わるパルス列信号を、図1に示すスピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が1回転するごとに、インデックス信号を、コントローラ91及び回転角度検出回路75に出力する。スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から回転速度を入力すると、エンコーダ27cから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数から計算される回転速度が、入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ27に出力する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から回転角度θpを計算してコントローラ91に出力する。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cからインデックス信号を入力すると、カウント値をリセットして「0」にする。これが回転角度0°の位置である。スピンドルモータ27、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75の機能は、特許文献1及び特許文献2と同一である。
図1及び図2に示すように、X線管10の中心軸方向はイメージングプレート15と平行であり、前述した移動機構100による移動ステージ101の移動によりレーザ検出装置30はX線管10の中心軸方向に移動するので、レーザ検出装置30はイメージングプレート15と平行な方向に移動する。レーザ検出装置30が図2に示された位置から図の右側に移動すると、レーザ検出装置30から出射したレーザ光はイメージングプレート15に照射され、この照射点はレーザ検出装置30の移動により、イメージングプレート15の半径方向に移動する。イメージングプレート15におけるレーザ光の移動ラインは、イメージングプレート15の中心を通るように、別の表現をすると、出射X線の光軸(貫通孔26a,111a,28a,27b,27a1,18aの中心軸)と交差するように、固定ブロック107におけるレーザ検出装置30の位置は調整されている。また、レーザ検出装置30の対物レンズから出射されるレーザ光の焦点がイメージングプレート15に合致するようレーザ検出装置30の位置は調整されている。
回転角度0°のイメージングプレート15における位置は、後述する回折環読み取り際、エンコーダ27cがインデックス信号を出力した時点でレーザ検出装置30からのレーザ光が照射されている位置であり、この位置はイメージングプレート15の各半径位置においてあるためラインである。そして、測定対象物OBへのX線照射によりイメージングプレート15に回折環を撮像する前に、コントローラ91からスピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75ヘの指令出力でテーブル16の回転角度は0°にされる。よって、回折環撮像時においては、イメージングプレート15の回転角度0のラインは、レーザ検出装置30を図2の右側に移動させたとき、レーザ検出装置30からのレーザ光が照射されるラインである。前述したように、イメージングプレート15におけるレーザ光の移動ラインは出射X線の光軸と交差するようになっており、回転角度0のラインと出射X線の光軸とは1つの平面に含まれるようになっている。以下、この平面を基準平面という。この基準平面はX線管10の中心軸も含み、イメージングプレート15に対して垂直であり、筐体50の第1底面壁50a、第2底面壁50c、前面壁50b、後面壁50e、上面壁50f及び繋ぎ壁50dに対しても垂直である。
レーザ検出装置30は、構造は特許文献2のものと同一であり、回折環を撮像したイメージングプレート15にレーザ光を照射し、イメージングプレート15で発光した光の強度から、レーザ光照射位置における回折X線の強度を検出するものである。図4は、イメージングプレート15に撮像された回折環を読み取るときの、移動機構100によるレーザ検出装置30の移動の様子を示した図であり、(A)は移動開始時点の状態を示し、(B)は移動終了時点の状態を示した図である。スピンドルモータ27を回転させ、レーザ検出装置30を移動機構100により移動させれば、イメージングプレート15上のレーザ光の照射点はらせん状に移動し、イメージングプレート15の各位置の回折X線の強度を検出することができる。このとき、レーザ検出装置30が回折X線の強度を検出するタイミングと同じタイミングで、回転角度検出回路75による回転角度の検出と、位置検出回路72による移動位置の検出を行い、コントローラ91にこれらのデータ群を入力させて移動位置を半径方向位置に変換すれば、これらのデータ群がイメージングプレート15における回折X線の強度分布データになる。また、別の表現をすれば、回折環の読み取りデータである。図1に示すレーザ検出制御回路77は、特許文献1及び特許文献2の図1に示されている、レーザ検出装置30に対して制御を行う複数の回路及びレーザ検出装置30からの信号を入力してデータ出力する複数の回路を1つにまとめて表現した回路である。レーザ検出制御回路77が有する機能は特許文献1及び特許文献2のX線回折測定システムと同じであり、具体的には、レーザ検出装置30に対し、レーザ光出射指令、出射レーザ光の強度制御、レーザ光照射点のイメージングプレート15への合焦制御といった制御、及びレーザ検出装置30から入力する回折X線強度に相当する信号の瞬時値データのコントローラ91への出力を行う。
また、レーザ検出装置30にはLED光源が設けられており、LED光源からLED光がイメージングプレート15に照射されると、撮像された回折環は消去される。LED駆動回路84はコントローラ91から指令が入力すると、LED光源が所定の強度のLED光を出射する駆動信号を出力する。レーザ検出装置30及びLED駆動回路84のこの機能も、特許文献1及び特許文献2のX線回折測定システムと同じである。レーザ検出装置30からのレーザ光照射により回折環読み取りがされた後、コントローラ91の指令によりレーザ検出装置30は図4の(A)の移動位置に戻り、LED光を照射しながら図4の(B)の位置まで移動する。このとき、スピンドルモータ27によるテーブル16の回転は継続されており、LED光の照射点は、レーザ光の照射点と同様、らせん状にイメージングプレート15を移動して撮像された回折環は消去される。
図3に示すよう、モータ固定ブロック111は、板状プレート26と対向する面にモータ46を取り付けており、モータ46は出力軸46aに円盤状プレート45を取り付けている。図5は、このモータ46と円盤状プレート45の拡大斜視図である。円盤状プレート45は、モータ46の回転により円盤状プレート45がストッパ部材47aに当たるまで回転すると、貫通孔26a、111aの中心軸と円盤状プレート45が交差する箇所が中心となるようにLED光源44を取り付けている。LED光源44は、図1に示すLED駆動回路85から駆動信号が入力すると可視のLED光を出射し、そのLED光は前述した出射X線の光路と同じ光路で測定対象物OBに向けて照射される。これにより、出射X線の光軸及びX線の照射点をLED光の光軸および照射点として把握することができる。また、モータ46の回転により円盤状プレート45がストッパ部材47bに当たるまで回転すると、貫通孔26aと貫通孔111aの間には何もなくなり、前述したように貫通孔26aから出射されたX線は貫通孔111aに入射する。モータ46は図1に示すモータ制御回路86からの駆動信号により図5に示すD1方向及びD2方向に回転するようになっており、モータ制御回路86は、コントローラ91からの回転方向の指令が入力すると、モータ46のエンコーダ46bからのパルス列信号が入力しなくなるまで駆動信号を出力する。また、LED駆動回路85は、コントローラ91からの指令が入力すると駆動信号をLED光源44に出力する。よって、円盤状プレート45の回転位置及びLED光源44からのLED光照射は、コントローラ91により制御される。この出射X線の光軸と同じ光軸でLED光を照射するX線回折測定装置1内の構造、及びモータ46とLED光源44の制御の方法は、特許文献2に示されるX線回折測定システムと同じである。
図2に示すように、移動機構100の固定ブロック107はレーザ検出装置30以外に、下面にカメラCaを取り付けており、図6は、このカメラCaの箇所を拡大して示した断面図である。固定ブロック107の下面には凸部108があり、この凸部108には円柱形状の孔108aが形成され、円柱状の孔108aに円柱形状のカメラCaが固定されている。カメラCaは結像レンズ48を取り付けた円筒部57を、底面に撮像器49を取り付けた円柱形状の枠体58に取り付けた構造をしており、枠体58を孔108aに嵌合させて固定することでカメラCaは凸部108に固定されている。円柱状の孔108aの中心軸、円筒部57の中心軸及び結像レンズ48の光軸は略一致しており、結像レンズ48の光軸は、撮像器49に略垂直に入射するようになっている。そして、結像レンズ48の光軸が前述した基準平面(出射X線の光軸と回転角度0のラインを含む平面)内に含まれるようカメラCaの位置は調整されており、移動機構100による固定ブロック107の移動方向は回転角度0のラインと平行であるので、結像レンズ48の光軸は移動機構100による移動位置すべてにおいて基準平面内に含まれる。
カメラCaはデジタルカメラであり、撮像器49はCCD受光器又はCMOS受光器で構成され、各撮像素子ごとの受光強度に相当する強度の信号をセンサ信号取出回路87に出力する。センサ信号取出回路87は、撮像器49の各撮像素子ごとの信号強度データを、各撮像素子の位置(すなわち画素位置)が分かるデータと共にコントローラ91に出力し、コントローラ91は入力したデータから画像を作成し表示装置93の画面に撮影画像を表示させる。操作者は、表示装置93に表示される撮影画像によりカメラCaが撮影している箇所を知ることができる。カメラCa、センサ信号取出回路87及びコントローラ91のこの機能は特許文献1及び特許文献2に示されるX線回折測定システムと同じである。
図7は、移動機構100によるカメラCaの移動によりカメラCaを適切な位置にしたとき、図3に示すLED光源44がLED光を出射して測定対象物OBにLED光が照射され、測定対象物OBで発生した反射光がカメラCaに入射する様子と、そのときのカメラCaの撮影画像を示した図である。A位置にある実線で示された測定対象物OBは、照射点―撮像面間距離が基準距離で、X線入射角(LED光の入射角と同)が基準入射角で、さらに基準平面に測定対象物OBのX線照射点(LED光照射点)における法線が含まれる場合である。そして、B位置にある点線で示された測定対象物OBは、基準平面にX線照射点の法線が含まれる点は同じであるが、照射点―撮像面間距離が基準距離より短く、X線入射角が基準入射角より大きい場合である。いずれの場合も、移動機構100によりカメラCaを移動させ、カメラCaを適切な位置にすることで結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させることができる。図7においては、測定対象物OBがA位置にあるときは、移動ステージ101及び固定ブロック107が実線で示されたA位置移動させ、測定対象物OBがB位置にあるときは、移動ステージ101及び固定ブロック107が点線で示されたB位置に移動させれば、そのようにできる。そして、結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させれば、照射点の散乱光が結像レンズ48に入射して撮像器49上で結像するときの光軸と、LED光の反射光が結像レンズ48の中心に入射するときの反射光の光軸とを一致させることができる。よって、測定対象物OBがA位置、B位置のいずれにあっても、その撮影画像(A)及び撮影画像(B)は、LED光の照射点P(以下、照射点Pという)と、反射光が結像レンズ48で集光して撮像器49上にできる点R(以下、受光点Rという)は同じ位置に生じる。なお、撮影画像(A)に矢印を入れた先に示してあるものは、照射点P、受光点R及び後述する十字マークの画像部分を拡大して示す図であり、撮影画像(B)においても後述するY軸ラインがない以外は同様の画像が得られる。
前述したX線入射角の基準入射角は、出射X線の光軸が繋ぎ壁50d及び設置プレート2の上面、下面に平行な平面に対する入射角である。そして、結像レンズ48の光軸の該平面に対する入射角も同じ値になっている。カメラCaの移動は1方向であるので、カメラCaの位置によらず結像レンズ48の該平面に対する入射角は変化しない。よって、X線入射角が基準入射角のとき、結像レンズ48の中心に反射光を入射させる位置にカメラCaを移動させれば、結像レンズ48の光軸と反射光の光軸とは一致する。そして、X線入射角が基準入射角と違う値であるときは、結像レンズ48の中心に反射光を入射させても、結像レンズ48の光軸と反射光の光軸とは一致しない。表示装置93に表示される撮影画像は、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する点を中心にし、基準平面が撮像器49と交差する線をY軸にし、中心を通りY軸に垂直な線をX軸にしたラインを撮影画像とは独立して画面に表示する。よって、X線入射角が基準入射角であるときは、測定対象物OBがA位置のときの撮影画像(A)のように、照射点Pと受光点Rは画面の中心(X軸ラインとY軸ラインが交差する点)になる。これに対し、X線入射角が基準入射角ではないときは、測定対象物OBがB位置のときの撮影画像(B)のように、照射点Pと受光点Rは画面の中心からずれる。
コントローラ91のメモリには、照射点―撮像面間距離とX線入射角に対する結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させるための固定ブロック107(カメラCa)の移動位置が記憶されている。また、固定ブロック107(カメラCa)が該移動位置にあり、照射点―撮像面間距離とX線入射角の通りにLED光が照射されたときに生じる照射点Pと受光点Rの撮影画像における画面上の位置も記憶されている。よって、操作者が入力装置92から意図する照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力すると、コントローラ91は入力された値から固定ブロック107の移動位置を算出して位置検出回路72に出力する。そして、LED光を照射すると、入力された通りの照射点―撮像面間距離とX線入射角でLED光が照射されたときの照射点Pと受光点Rが生じる撮影画像の画面上の位置に十字マークを表示する。この十字マークは、図7に示すように撮影画像(A)では画面中心に表示され、撮影画像(B)では画面中心より上方に表示される。LED光が照射された時点では、照射点―撮像面間距離とX線入射角は入力装置92から入力された値ではなく、基準平面に測定対象物OBのX線照射点(LED光照射点)における法線は含まれていないので、照射点Pと受光点Rは十字マークの所には生じない。操作者は対象物セット装置6の操作子63a, 65a〜68aを操作して測定対象物OBの位置と姿勢を調整し、照射点Pと受光点Rを十字マークの所に生じるようにすることで、実際の照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力装置92から入力された値にし、基準平面に測定対象物OBのX線照射点における法線が含まれるようにすることができる。この撮影画像を見ながらの測定対象物OBの位置と姿勢の調整の仕方は、特許文献1に詳細に説明されている。
コントローラ91のメモリに記憶されている、照射点―撮像面間距離とX線入射角に対する結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させるための固定ブロック107の移動位置と、撮影画像の画面上の十字マーク位置は、次のようにすれば得ることができる。まず、設置プレート2の上面に傾きセンサを置き、設置プレート2の上面が水平になるよう姿勢を調整する。次に、細長の直方体状ブロックを対象物セット装置6と設置プレート2の間に挟んで密着させ、対象物セット装置6の図2の横方向が設置プレート2の長尺方向と水平になるようにする。次に、ステージ61の面に傾きセンサを置き、ステージ61の面が水平になるよう対象物セット装置6の姿勢を調整する。次に、別の直方体状ブロックに鉄粉を糊塗してステージ61に載置し、X線回折測定装置1からX線を照射してイメージングプレート15に形成された回折環を読み取り、得られたデータから回折環の半径を算出する。鉄粉を糊塗したブロックは残留応力0の測定対象物OBであるので、形成される回折環は真円になる。次に、得られた回折環の半径と鉄の標準の回折角から照射点―撮像面間距離を算出する。次に、ステージ61に載置した直方体状ブロックと同じ形状の直方体状ブロックを載置するか、載置した直方体状ブロックから鉄粉を取り除き、X線回折測定装置1からLED光を照射する。次に、カメラCaの撮影画像を表示装置93に表示させ、移動機構100によりカメラCaを移動させて、照射点Pと受光点Rが撮影画像で同じ位置に生じるようにし、そのときの位置検出回路72が検出する移動位置と撮影画像の照射点Pと受光点Rにおける画面上の位置をコントローラ91のメモリに記憶させる。これによりX線入射角が基準入射角で、回折環の半径から算出した照射点―撮像面間距離のときの、結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させるための固定ブロック107の移動位置と、撮影画像の画面上の十字マーク位置が得られる。
この後、対象物セット装置6の高さ変化機構によりステージ61の高さを変化させるごとに、上述した直方体状ブロックに鉄粉を糊塗してステージ61に載置してから後の操作を行う。これにより、X線入射角が基準入射角のときの、照射点―撮像面間距離と固定ブロック107の移動位置の関係、及び照射点―撮像面間距離と撮影画像の画面上の十字マーク位置の関係が得られる。なお、後述するが、照射点―撮像面間距離にはX線回折測定が可能な範囲があり、ステージ61の高さは、最小の照射点―撮像面間距離と最大の照射点―撮像面間距離のときを最小高さと最大高さにしてこの間で段階的に変化させる。そして、対象物セット装置6のX軸周りの傾き変化機構によりステージ61の傾きを変化させるごとに、上述した操作と同じ操作を行う。これにより、様々なX線入射角における、照射点―撮像面間距離と固定ブロック107の移動位置の関係、及び照射点―撮像面間距離と撮影画像の画面上の十字マーク位置の関係が得られる。また、個々のX線入射角における上記の関係において、同じ照射点―撮像面間距離の値を選択してまとめれば、様々な照射点―撮像面間距離におけるX線入射角と固定ブロック107の移動位置の関係、及びX線入射角と撮影画像の画面上の十字マーク位置の関係になる。よって、これにより、照射点―撮像面間距離とX線入射角に対する結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させるための固定ブロック107の移動位置と、撮影画像の画面上の十字マーク位置が得られる。
前述したように、操作者は入力装置92から意図する照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力することができるが、移動機構100によりカメラCaの移動には移動範囲があり、長尺孔50h1の長尺方向の長さも有限であるので、結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させることができる照射点―撮像面間距離とX線入射角には範囲がある。このため、表示装置93の入力用画面には入力可能な照射点―撮像面間距離とX線入射角の範囲が表示されている。そして、操作者が照射点―撮像面間距離を入力すると、コントローラ91は入力された照射点―撮像面間距離における入力可能なX線入射角の範囲を表示装置93に表示する。図8は、入力可能なX線入射角の範囲を視覚的に示したものである。図8に示すように、照射点―撮像面間距離が定まると、カメラCaがX線(LED光)照射点付近を撮影可能な範囲は、別の表現をすると、測定対象物OBの傾きを調整して結像レンズ48にLED光の反射光を入射させることが可能な範囲は、カメラCaが最もテーブル16側に移動したL1位置(実線で示された位置)と、その反対側の位置でカメラCaが長尺孔50h1を介してX線(LED光)を撮影可能な限界位置であるL2位置(点線で示された位置)である。そして、L1位置で測定対象物OBがS1の傾きのときが最小のX線入射角Θ1となり、L2位置で測定対象物OBがS2の傾きのときが最大のX線入射角Θ2となるので、設定可能なX線入射角の範囲はΘ1〜Θ2の範囲である。図8からわかるように、設定可能なX線入射角の範囲Θ1〜Θ2は照射点―撮像面間距離が異なると変化する。コントローラ91は、照射点―撮像面間距離に対する設定可能なX線入射角範囲Θ1〜Θ2の関係をメモリに記憶しており、操作者が照射点―撮像面間距離を入力装置92から入力すると、表示装置93に設定可能な、即ち入力可能なX線入射角範囲Θ1〜Θ2を表示する。
照射点―撮像面間距離と設定可能なX線入射角範囲Θ1〜Θ2との関係は、上述した照射点―撮像面間距離とX線入射角に対する固定ブロック107の移動位置と、撮影画像の画面上の十字マーク位置を得るための作業の中で得ることができる。これは、それぞれのX線入射角において、照射点Pと受光点Rが撮影画像で同じ位置に生じるようにできる、最も小さい照射点―撮像面間距離K1(カメラCaが移動位置L1のときの距離)と最も大きい照射点―撮像面間距離K2(カメラCaが移動位置L2側で長尺孔50h1を介して撮影可能なときの距離)があるので、これらを検出してコントローラ91のメモリに記憶させればよい。なお、後述するが、照射点―撮像面間距離にはX線回折測定が可能な範囲があり、この最小の照射点―撮像面間距離又は最大の照射点―撮像面間距離を超える場合は、検出はせずコントローラ91のメモリは空白にすればよい。得られたX線入射角と照射点―撮像面間距離K1の関係、及びX線入射角と照射点―撮像面間距離K2との関係に、設定した照射点―撮像面間距離を当てはめてX線入射角を求めれば、設定した照射点―撮像面間距離に対する設定可能なX線入射角範囲Θ1〜Θ2を得ることができる。
上述したように、照射点―撮像面間距離の設定可能範囲には、X線回折測定が可能な範囲という別の要素がある。図9は、X線回折測定が可能な照射点―撮像面間距離の範囲を視覚的に示した図である。図2を見ると分かるように、照射点―撮像面間距離を小さくしていくと、即ち、対象物セット装置6のステージ61の高さを高くしていくと、対象物セット装置6の操作子68aが繋ぎ壁50dに当たり、これ以上ステージ61を高くできない、即ち照射点―撮像面間距離を小さくできない高さがある。図9では、この高さのときの測定対象物OBの表面をラインHLで示してある。ラインHLが出射X線の光軸と交差する点が照射点―撮像面間距離が最小となるX線照射点Miである。反対に、ステージ61の高さを低くしていくと、測定対象物OBにX線を照射したときにイメージングプレート15に形成される回折環の半径が大きくなっていき、イメージングプレート15に回折環の半径方向のピーク点が形成されない高さになる。又は回折環を形成する回折X線が円形孔50c1を通過できない高さになる。この高さのときのX線照射点が照射点―撮像面間距離が最大となるX線照射点Maである。コントローラ91のメモリには、X線照射点Mi,Maのときの照射点―撮像面間距離が記憶されており、操作者が照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力する前は、コントローラ91はこの照射点―撮像面間距離の範囲を照射点―撮像面間距離の設定可能範囲として表示装置93に表示する。また、最大の照射点―撮像面間距離におけるX線入射角範囲Θ1〜Θ2のX線入射角Θ1と、最小の照射点―撮像面間距離におけるX線入射角範囲Θ1〜Θ2のX線入射角Θ2をX線入射角範囲Θ1〜Θ2として表示装置93に表示する。そして、操作者が入力装置92から照射点―撮像面間距離を入力すると、コントローラ91は、その照射点―撮像面間距離において入力可能なX線入射角範囲Θ1〜Θ2を計算して表示装置93に表示する。
また、操作者が入力装置92から照射点―撮像面間距離より先にX線入射角を入力すると、コントローラ91は記憶している、X線入射角と照射点―撮像面間距離K1、K2の関係から、入力可能な照射点―撮像面間距離の範囲を求めて表示装置93に表示する。ただし、上述したように、照射点―撮像面間距離にはX線回折測定が可能な範囲という要素があり、照射点―撮像面間距離K1がX線回折測定における最小の照射点―撮像面間距離より小さい場合、又は照射点―撮像面間距離K2がX線回折測定における最大の照射点―撮像面間距離を超える場合は、入力したX線入射角に対する照射点―撮像面間距離K1又はK2が計算できない。この場合は、X線回折測定における最小の照射点―撮像面間距離又は最大の照射点―撮像面間距離がK1又はK2になる。図10は、このときのX線入射角に対する設定可能な照射点―撮像面間距離の範囲を視覚的に示した図である。X線入射角がΘsのとき、結像レンズ48の中心にLED光の反射光を入射させることができる照射点―撮像面間距離の範囲は、X線照射点がM1のときからX線照射点がM2のときまでの範囲になる。しかし、X線照射点M2は最大の照射点―撮像面間距離となるX線照射点MaよりX線回折測定装置1から離れているので、X線回折測定しても回折環を形成することができない。よって、この場合は、設定可能な照射点―撮像面間距離の範囲は、X線照射点がM1のときの照射点―撮像面間距離K1とX線照射点がMaのときの照射点―撮像面間距離との間になる。
なお、前述したように、表示装置93には入力可能な照射点―撮像面間距離とX線入射角が表示され、操作者は表示された値を見ながら意図した照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力装置92から入力するが、入力がされる前はコントローラ91のメモリには照射点―撮像面間距離の基準距離及びX線入射角の基準入射角度が記憶されており、表示装置93にはこの値が表示されている。そして、カメラCa(固定ブロック107)の移動位置は、表示装置93に表示されている値に対応する位置になっている。そして、操作者が入力装置92から照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力すると、表示装置93に表示されている値は入力した値に変わり、前述したようにカメラCa(固定ブロック107)の移動位置は、入力した値に対応する位置になる。よって、操作者は、表示装置93を見て照射点―撮像面間距離及びX線入射角が基準値通りでよければ、入力を行わずそのままLED光を照射しての測定対象物OBの位置と姿勢の調整を行えばよい。
上記のように構成したX線回折測定装置1を含むX線回折測定システムを用いて、測定対象物OBをX線回折測定する方法は、測定前の測定対象物OB(ステージ61)の位置及び姿勢の調整の前に、意図する照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力装置92から入力する点を除き、特許文献1に示されているX線回折測定システムと同じである。端的に説明すると、操作者は電源を投入してX線回折測定システムを作動させ、測定対象物OBを対象物セット装置6にセットし、入力装置92から意図する照射点―撮像面間距離とX線入射角を入力し、位置及び姿勢調整の指令を入力する。これによりLED光が測定対象物OBに照射され、表示装置93に撮影画像と十字マークが表示されるので、操作者は撮影画像を見ながら対象物セット装置6を操作して測定対象物OBの位置と姿勢を調整し、撮影画像における照射点Pと受光点Rが十字マークに合致するようにする。次に、入力装置92から測定開始の指令を入力する。これにより、X線回折測定装置1は測定対象物OBにX線を照射してイメージングプレート15に回折環を撮像し、次にレーザ検出装置30からのレーザ照射により、撮像された回折環のそれぞれの箇所における回折X線強度を検出してコントローラ91にデータを出力し、次に撮像された回折環を消去する。そして、コントローラ91は入力したデータから残留応力等の特性値を計算して、その計算結果、照射点―撮像面間距離やX線入射角等の測定条件、及び回折環のそれぞれの箇所における回折X線強度に基づくマップ等を表示装置93に表示する。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、対象とする測定対象物OBに向けてX線を出射するX線管10及び貫通孔26a,111a,27a1,18a等からなるX線出射機構と、X線出射機構から測定対象物OBに向けてX線が出射された際、測定対象物OBにて発生した回折X線を、X線出射機構から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差するイメージングプレート15にて受光し、イメージングプレート15に回折X線の像である回折環を形成する回折環形成機構と、X線出射機構からX線が出射されていない状態で、X線出射機構から出射されるX線と光軸を同一にした平行光であるLED光を測定対象物OBに向けて出射するLED光光源44及び貫通孔26a,111a,27a1,18a等からなるLED光出射機構と、LED光出射機構から出射されたLED光の照射点を含む領域の測定対象物OBの画像を結像する結像レンズ48、及び結像レンズ48によって結像された画像を撮像する撮像器49を有し、撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラCaであって、LED光の測定対象物OBでの反射光が結像レンズ48にて撮像器49にて集光して形成された受光点を表す撮像信号も出力するカメラCaと、カメラCaから出力される撮像信号を入力して、撮像器49によって撮像された画像と受光点を画面上に表示する表示装置93とを備えたX線回折測定システムにおいて、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離である照射点―撮像面間距離、及びLED光の測定対象物OBに対する入射角であるX線入射角を入力可能な入力装置92と、入力装置92が照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力すると入力された値を記憶するコントローラ91内のメモリと、カメラCaを、X線出射機構が出射するX線の光軸と回折環形成機構における円周方向角度0のラインとを含む面内で結像レンズ48の光軸に交差する方向に移動させる移動機構100と、LED光が測定対象物OBに向けて出射され、照射点―撮像面間距離及びX線入射角がコントローラ91内のメモリに記憶された通りの値である場合、結像レンズ48の中心にLED光の反射光が入射するよう、移動機構100によりカメラCaを移動させるコントローラ91内のプログラム、フィードモータ制御回路73及び位置検出回路72からなるカメラ位置制御手段とを備え、表示装置93は、カメラ位置制御手段によりカメラCaが移動した状態で、照射点―撮像面間距離及びX線入射角がコントローラ91内のメモリに記憶された通りの値である場合、撮像器49によって撮像される照射点の画像上の位置を十字マークの中心として、撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示するようにされている。
これによれば、操作者が入力装置92を用いて意図した照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力すれば、カメラ位置制御手段が入力されてコントローラ91内のメモリに記憶されている照射点―撮像面間距離及びX線入射角に基づいて、結像レンズ48の中心にLED光の反射光が入射するよう、移動機構100によりカメラCaを移動させる。そして、表示装置93がカメラCaの撮像器49によって撮像された画像とは独立して十字マークを画面上に表示するので、操作者は画面上の十字マークの中心に可視光の照射点と受光点が合致するよう、X線回折測定装置1に対する測定対象物OBの位置と姿勢を調整すれば、実際の照射点―撮像面間距離及びX線入射角を操作者が入力装置92に入力した通りの値にすることができる。これにより、照射点―撮像面間距離及びX線入射角を操作者が意図した値にすることができる。
また、上記実施形態においては、回折環形成機構は、測定対象物OBに向けて出射されるX線を通過させる貫通孔16a,17aが形成されたテーブル16に取り付けられたイメージングプレート15であり、イメージングプレート15に形成された回折環を読み取る手段として、イメージングプレート15にレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射によってイメージングプレート15から出射された光の強度を検出するレーザ検出装置30と、回転することによりテーブル16を貫通孔16a,17aの中心軸回りに回転させる出力軸27aを有するスピンドルモータ27であって、出力軸27aの中心軸が貫通孔16a,17aの中心軸に一致するように配置され、X線が通過可能な貫通孔27a1が出力軸27aに形成されているスピンドルモータ27と、レーザ検出装置30を、イメージングプレート15に平行な方向に移動させる移動機構100と、スピンドルモータ27によってテーブル16が回転され、かつ移動機構100によってレーザ検出装置30が移動されている状態で、レーザ検出装置30によって繰り返し検出された光の強度を、それぞれの光の強度の検出時におけるテーブル16の回転角度及びレーザ検出装置30の移動位置に関連付けて複数の読み取りデータとしてそれぞれ記憶するコントローラ91内のプログラム、回転角度検出回路75及び位置検出回路72等からなるデータ読み取り手段とを備え、カメラCaはレーザ検出装置30と一体になっており、カメラCaを移動させる手段とレーザ検出装置30を移動させる手段は移動機構100で同一であるようにされている。
これによれば、回折環形成機構による撮像面をイメージングプレート15にし、回折環の読み取り手段を、レーザ検出装置30、スピンドルモータ27、レーザ検出装置30の移動手段及びコントローラ91内のプログラムとX線回折測定装置1内の種々の回路からなるデータ読み取り手段から構成したX線回折測定装置においては、レーザ検出装置30の移動手段をカメラCaの移動手段にすることができるので、カメラCaの移動手段を新たに設ける必要がない。これにより、X線回折測定装置1をコンパクトにすることができるとともにコストを抑制することができる。
また、上記実施形態においては、コントローラ91内のメモリは、照射点―撮像面間距離及びX線入射角の基準値を予め記憶しており、入力装置92が照射点―撮像面間距離又はX線入射角の値を入力すると、記憶している値を入力した値に差し替えるようになっており、表示装置93は、コントローラ91内のメモリが記憶している照射点―撮像面間距離及びX線入射角を画面上に表示するようにしたことにある。これによれば、操作者は表示装置93に表示されている照射点―撮像面間距離及びX線入射角を見て、変更の必要があるときのみ、照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力すればよいので、作業効率がよくなる。
また、上記実施形態においては、入力装置92が、照射点―撮像面間距離を入力したとき、入力装置92が入力可能なX線入射角の範囲を計算して表示装置93に表示させるコントローラ91内の計算プログラムを備えている。これによれば、設定不可能なX線入射角を入力しないようにすることができる。
また、上記実施形態においては、入力装置92が、X線入射角を入力したとき、入力装置92が入力可能な照射点―撮像面間距離範囲を計算して表示装置93に表示させるコントローラ91内の計算プログラムを備えている。これによれば、設定不可能な照射点―撮像面間距離範囲を入力しないようにすることができる。
(変形例)
上記実施形態におけるX線回折測定装置1は、固定ブロック107にレーザ検出装置30とカメラCaを取り付け、レーザ検出装置30の移動とカメラCaの移動を移動機構100で行うようにしている。しかし、本発明は特許文献1及び特許文献2に示すように、レーザ検出装置30は固定され、イメージングプレート15に形成された回折環を読み取るときはスピンドルモータ27を固定している移動ステージ21を移動させるようにしたX線回折測定装置であっても適用することができる。
図11は、特許文献2に示す構造のX線回折測定装置に、カメラ移動機構150を追加した装置である。図11の筐体50の形状が特許文献2に示されるX線回折測定装置と異なっているのは、図11のX線回折測定装置1’は、本願出願人が特許文献1及び特許文献2に示されるX線回折測定装置を小型化するために開発したX線回折測定装置をベースにしているためである。しかし、筐体50の内部の構造は特許文献2に示されるX線回折測定装置と同一であり、カメラ移動機構150を除き、それぞれの箇所に付された番号は、特許文献2に示されるX線回折測定装置と同一にされている。また、対象物セット装置6は上記実施形態のものと同一である。
図11に示すよう、カメラ移動機構150は、移動ステージ151に取り付けたカメラCaがフィードモータ152の回転駆動により移動する構造になっている。カメラCaの機能及び構造は上記実施形態と同じである。移動ステージ151は上記実施形態の固定ブロック107の凸部108の部分を直方体状に切り取った形状をしており、カメラCaの移動ステージ51への固定の仕方は、上記実施形態の凸部108への固定の仕方と同じである。そして、X線回折測定装置1’の筐体50内には図1に示されるフィードモータ制御回路73と位置検出回路72と同等の回路がもう1組備えられ、コントローラ91から移動位置がそれらの回路に出力されると、移動ステージ151、即ちカメラCaはコントローラ91が指示した位置に移動する。この機能は上記実施形態におけるフィードモータ制御回路73と位置検出回路72の説明と同じである。よって、この変形例において、上記実施形態と異なっているのは、カメラCaの移動のさせ方のみであり、入力装置92から入力された、照射点―撮像面間距離及びX線入射角から、カメラCaの結像レンズ48の中心に反射光が入射する移動位置を計算し、カメラCaを移動させる仕組みは上記実施形態での説明をそのまま適用することができる。また、表示装置93の画面に照射点P及び受光点Rを合わせるための位置に十字マークを表示させる仕組みと、表示装置93に設定可能な(入力可能な)照射点―撮像面間距離及びX線入射角の範囲を表示させる仕組みも上記実施形態の説明をそのまま適用することができる。
図12は、変形例において照射点―撮像面間距離が設定されたとき(入力装置92から入力されたとき)、設定可能な(入力可能な)X線入射角の範囲を視覚的に示した図であり、上記実施形態の図8に相当する図である。図12に示されるように、測定対象物OBを撮影可能な移動限界位置L1,L2において、測定対象物がS1,S2の傾き(LED光が結像レンズ48の中心に入射する傾き)であるときのX線入射角Θ1,Θ2を求め、設定可能なX線入射角の範囲Θ1〜Θ2とすることは上記実施形態と同じである。これと同様に、設定可能な照射点―撮像面間距離範囲も上記実施形態の図10のように、測定対象物OBを撮影可能な移動限界位置L1,L2における照射点―撮像面間距離K1,K2と、X線回折測定可能な照射点―撮像面間距離の範囲から求めることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態及び変形例においては、入力装置92から照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力するようにした。しかし、照射点―撮像面間距離又はX線入射角のどちらかの値を基準値として固定してもよいということであれば、入力装置92からはどちらか片方の値のみを入力できるようにし、基準値として固定する方はコントローラ91のメモリに記憶させておけばよい。このようにした場合でも、操作者は上記実施形態で説明されている入力可能な値の範囲内において、意図する値を入力することができ、上記実施形態のように実際の値を入力した通りの値にすることができる。
また、上記実施形態においては、入力装置92から照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力する前は、コントローラ91のメモリには照射点―撮像面間距離の基準距離及びX線入射角の基準入射角度が記憶されており、表示装置93にはこの値が表示されているとした。そして、カメラCaの移動位置は、表示装置93に表示されている値に対応する位置になっているとした。しかし、照射点―撮像面間距離及びX線入射角を変更する頻度が少ないということであれば、入力装置92から照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力する前は、コントローラ91のメモリには1回前に入力した照射点―撮像面間距離及びX線入射角が記憶されており、表示装置93にはこの値が表示され、カメラCaの移動位置はこの値に対応する位置になっているようにしてもよい。また、照射点―撮像面間距離及びX線入射角を毎回変更するということであれば、照射点―撮像面間距離及びX線入射角はコントローラ91のメモリに記憶されておらず、表示装置93にも表示されておらず、X線回折測定のためには入力装置92からのこれらの値の入力を必須としてもよい。
また、上記実施形態においては、表示装置93に入力可能な(設定可能な)照射点―撮像面間距離及びX線入射角の範囲表示がするようにしたが、入力する(設定する)照射点―撮像面間距離及びX線入射角の範囲が大きくなければ、入力可能な照射点―撮像面間距離及びX線入射角の範囲を表示しないようにしてもよい。この場合、コントローラ91のメモリには入力可能な照射点―撮像面間距離及びX線入射角の範囲を記憶しておき、操作者が設定不可能な照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力したときは、表示装置93にはエラー表示がされるようにすればよい。
また、上記実施形態においては、表示装置93の画面に、照射点P及び受光点R2を合わせるべき位置に交差点が合致するよう十字マークを表示するようにした。しかし、照射点P及び受光点Rを合わせるべき位置が分かれば、表示するマークはどのようなものでもよい。例えば×マークでもよいし、丸や四角の中心に点があるマークでもよい。
また、上記実施形態においては、操作者が入力装置92から意図する照射点―撮像面間距離及びX線入射角を入力するようにしたが、照射点―撮像面間距離及びX線入射角が入力されてコンピュータ装置90に記憶されれば、入力の仕方はどのようなものであってもよい。例えば、メモリに記憶されたものを入力してもよいし、ネット回線を通じて入力がされてもよい。
また、上記実施形態および変形例では、X線回折測定装置1,1’を、イメージングプレート15に回折環を撮像し、レーザ検出装置30からのレーザ照射と光の強度検出により、回折環の形状を検出する装置とした。しかし、回折環を撮像して撮像した回折環の形状を検出することができるX線回折測定装置であればどのようなものでも、カメラCaを移動させる機構を設けることで本発明は実現することができる。例えば、イメージングプレート15の代わりにイメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線管10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折環における回折X線の強度分布を検出するX線回折測定装置でも本発明は実現できる。また、微小サイズのX線CCDで位置を検出しながら走査し、X線CCDの各画素が出力する電気信号とX線CCDの走査位置から、回折環における回折X線の強度分布を検出する装置でもX線回折測定装置でも本発明は実現できる。また、X線CCDは別の固体撮像素子でもよく、さらに固体撮像素子に替えてシンチレータから出た蛍光を、光電子増倍管(PMT)で検出するシンチレーションカウンタを用いるX線回折測定装置でもよい。なお、請求項に記載された「撮像面に前記回折X線の像である回折環を形成する回折環形成手段」は、X線CCD等の固体撮像素子やシンチレーションカウンタのように、所定の平面における位置ごとの回折X線強度を検出する手段であっても権利範囲に含まれる。
また、上記実施形態および変形例では、X線回折測定装置1,1’を、回折環を撮像し撮像した回折環の形状を検出することができる装置とした。しかし、本発明は、回折環の撮像のみを行うX線回折測定装置であっても、カメラCaを移動させる機構を設ければ実現することができる。そのような装置の場合は、回折環の読み取りはイメージングプレート15又はテーブル16を取り外して別の装置で行うことになる。
また、上記実施形態および変形例においては、測定対象物OBの位置と姿勢を対象物セット6の位置調整機構と傾き調整機構により変化させるようにした。しかし、本発明はX線回折測定装置に対する測定対象物OBの位置と姿勢を相対的に変化させることができれば適用することができるので、測定対象物OBを固定し、X線回折測定装置の位置と姿勢を変化させるようにしてもよい。この場合、X線回折測定装置をアーム式移動装置等の位置と姿勢を変化させることができる機器に接続すればよい。また、測定対象物OBとX線回折測定装置の双方の位置と姿勢を変化させることができるようにしてもよい。
また、上記実施形態および変形例においては、円盤状プレート45、モータ46及びストッパ部材47aによりLED光源44をX線の光軸上に移動させて、LED光を測定対象物OBに照射する構造にした。しかし、これに替えて、出射X線と光軸を同一にした可視の平行光を照射することができれば、どのような構造にしてもよい。例えば、ビームスプリッタを出射X線の光軸上に配置し、LED光をビームスプリッタで反射させて出射X線と光軸を同一にして照射するようにしてもよい。
また、上記実施形態および変形例では、スピンドルモータ27の貫通孔27bに内径の小さな通路部材28を設けるとともに、固定具18の貫通孔18aの内径を小さくして、LED光源44から出射されたLED光から小さな断面径の平行光が得られるようにしたが、小さな断面径の可視の平行光が得られるならば、別の構造にしてもよい。例えば、通路部材28の軸長を長くすることにより、LED光源44からのLED光から小さな断面径の平行光が得られるようにしてもよい。また、可視光であるレーザ光を出射するレーザ光源の近くにコリメートレンズとエキスパンダーレンズを配置し、出射する小さな断面径のレーザ光の光軸をスピンドルモータ27の出力軸27aの貫通孔27a1の中心軸線と一致させるようにしてもよい。
1,1’…X線回折測定装置、2…設置プレート、3…支持ロッド、6…対象物セット装置、10…X線管、11…出射口、15…イメージングプレート、15a,16a,17a,18a,26a,27a1,27b…貫通孔、16…テーブル、17…突出部、18…固定具、27…スピンドルモータ、30…レーザ検出装置、44…LED光源、45…円盤状プレート、46…モータ、47a,47b…ストッパ部材、48…結像レンズ、49…撮像器、50…筐体、50a…第1底面壁、50c…第2底面壁、50b…前面壁、繋ぎ壁…50d、50e…後面壁、50f…上面壁、上面傾斜壁…50g、50h…底面傾斜壁、50c1…円形孔、50h1…長尺孔、57…円筒部、58…枠体、61…ステージ、62…設置プレート、63…高さ調整機構、64…第1プレート、65…第2プレート、66…第3プレート、67…第4プレート、68…第5プレート、63a,65a,66a,67a,68a…操作子、90…コンピュータ装置、91…コントローラ、92…入力装置、93…表示装置、95…高電圧電源 、100…移動機構、101…移動ステージ、102…フィードモータ、103…スクリューロッド、104…軸受部、105…ガイド、106…連結ブロック、107…固定ブロック、108…凸部、109,110…ブロック、111…モータ固定ブロック、112…ブロック、150…カメラ移動機構、151…移動ステージ、152…フィードモータ、Ca…カメラ、OB…測定対象物

Claims (5)

  1. 対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射手段と、
    前記X線出射手段から前記測定対象物に向けてX線が出射された際、前記測定対象物にて発生した回折X線を、前記X線出射手段から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差する撮像面にて受光し、前記撮像面に前記回折X線の像である回折環を形成する回折環形成手段と、
    前記X線出射手段からX線が出射されていない状態で、前記X線出射手段から出射されるX線と光軸を同一にした平行光である可視光を前記測定対象物に向けて出射する可視光出射手段と、
    前記可視光出射手段から出射された可視光の照射点を含む領域の前記測定対象物の画像を結像する結像レンズ、及び前記結像レンズによって結像された画像を撮像する撮像器を有し、前記撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラであって、前記可視光の前記測定対象物での反射光が前記結像レンズにて前記撮像器にて集光して形成された受光点を表す撮像信号も出力するカメラと、
    前記カメラから出力される撮像信号を入力して、前記撮像器によって撮像された画像と前記受光点を画面上に表示する表示器とを備えたX線回折測定装置において、
    前記可視光の照射点から前記撮像面までの距離である照射点―撮像面間距離、及び前記可視光の前記測定対象物に対する入射角であるX線入射角の内の少なくとも1つを入力可能な入力手段と、
    前記入力手段が前記照射点―撮像面間距離及び前記X線入射角の内の少なくとも1つを入力すると入力された値を記憶するとともに、前記入力手段が前記照射点―撮像面間距離又は前記X線入射角の内の一方を入力可能でないときは、予め前記一方の値を記憶している記憶手段と、
    前記カメラを、前記X線出射手段が出射するX線の光軸と前記回折環形成手段における円周方向角度0のラインとを含む面内で前記結像レンズの光軸に交差する方向に移動させるカメラ移動手段と、
    前記可視光が前記測定対象物に向けて出射され、前記照射点―撮像面間距離及び前記X線入射角が前記記憶手段に記憶された通りの値である場合、前記結像レンズの中心に前記可視光の反射光が入射するよう、前記カメラ移動手段により前記カメラを移動させるカメラ位置制御手段とを備え、
    前記表示器は、前記カメラ位置制御手段により前記カメラが移動した状態で、前記照射点―撮像面間距離及び前記X線入射角が前記記憶手段に記憶された通りの値である場合、前記撮像器によって撮像される照射点の画像上の位置を照射点基準位置として、前記撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示することを特徴とするX線回折測定装置。
  2. 請求項1に記載のX線回折測定装置において、
    前記回折環形成手段の撮像面は、前記測定対象物に向けて出射されるX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルに取り付けられたイメージングプレートであり、
    前記イメージングプレートに形成された回折環を読み取る手段として、
    前記イメージングプレートにレーザ光を照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記イメージングプレートから出射された光の強度を検出するレーザ検出装置と、
    回転することにより前記テーブルを前記貫通孔の中心軸回りに回転させる出力軸を有する回転手段であって、前記出力軸の中心軸が前記貫通孔の中心軸に一致するように配置され、前記X線が通過可能な貫通孔が前記出力軸に形成されている回転手段と、
    前記レーザ検出装置を、前記イメージングプレートに平行な方向に移動させるレーザ検出装置移動手段と、
    前記回転手段によって前記テーブルが回転され、かつ前記移動手段によって前記レーザ検出装置が移動されている状態で、前記レーザ検出装置によって繰り返し検出された光の強度を、それぞれの光の強度の検出時における前記テーブルの回転角度及び前記レーザ検出装置の移動位置に関連付けて複数の読み取りデータとしてそれぞれ記憶するデータ読み取り手段とを備え、
    前記カメラは、前記レーザ検出装置と一体になっており、前記カメラ移動手段は前記レーザ検出装置移動手段と同一であることを特徴とするX線回折測定装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のX線回折測定装置において、
    前記入力手段は、前記照射点―撮像面間距離及び前記X線入射角の両方を入力可能な手段であり、
    前記記憶手段は、前記照射点―撮像面間距離及び前記X線入射角の基準値又は1回前に前記入力手段が入力した値を予め記憶しており、前記入力手段が前記照射点―撮像面間距離又は前記X線入射角の値を入力すると、前記記憶している値を前記入力した値に差し替える手段であり、
    前記表示器は、前記記憶手段が記憶している前記照射点―撮像面間距離及び前記X線入射角を画面上に表示することを特徴とするX線回折測定装置。
  4. 請求項3に記載のX線回折測定装置において、
    前記入力手段が、前記照射点―撮像面間距離を入力したとき、前記入力手段が入力可能な前記X線入射角の範囲を計算して前記表示器に表示させる入射角範囲計算手段を備えたことを特徴とするX線回折測定装置。
  5. 請求項3又は請求項4に記載のX線回折測定装置において、
    前記入力手段が、前記X線入射角を入力したとき、前記入力手段が入力可能な前記照射点―撮像面間距離範囲を計算して前記表示器に表示させる距離範囲計算手段を備えたことを特徴とするX線回折測定装置。
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