本発明の一実施形態に係る回折環撮像装置の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、回折環撮像装置の全体構成図であり、図2は回折環撮像装置本体の断面図である。ただし、X線出射器10は市場で流通しているものを用いることができるので断面図ではなく、モータ27は出力軸27aに貫通孔27a1が作成されていること以外は、市場で流通しているものと同じ構造であるので部分断面図である。図1に示すように、回折環撮像装置1は、回折環撮像装置本体5、高電圧電源6及びコンピュータ装置90等から構成され、測定対象物OBの内部に回折環撮像装置本体5を挿入し、X線を測定箇所に照射してイメージングプレート15に回折環を撮像するものである。X線回折測定は様々な金属において行うことができるが、本実施形態では測定対象物OBは鉄管であり、測定箇所は鉄管の内部とする。
図2に示すように、回折環撮像装置本体5は、円筒状のホルダ7の内部にX線出射器10がセットされる。ホルダ7の内径は、X線出射器10の最も大きい径より僅かに大きい径になっているので、セットされるとホルダ7の中心軸とX線出射器10の中心軸とは一致する。ホルダ7の底部は径の大きな孔7aが開けられており、X線出射器10は高電圧電源6から高電圧の駆動電圧及び駆動電流が供給されると、孔7aを通過させてX線を図2の下方向に出射する。このX線は、図2に一点鎖線で示されるように、X線出射器10の中心軸(ホルダ7の中心軸)を中心に放射状に広がるX線である。このように放射状に広がるX線を出射するX線出射器10としては、浜松ホトニクス製のX線管N6601などを用いることができる。また、このように放射状に広がるX線を出射するX線出射器に関する公開公報としては、特開2013−182868などがある。
高電圧電源6は内部に制御回路を備え、コントローラ91からX線出射の指令が入力すると、X線出射器10から設定された強度のX線が出射されるように、X線出射器10に駆動電圧及び駆動電流を供給する。また、コントローラ91からX線停止の指令が入力すると、X線出射器10へ供給している駆動電圧及び駆動電流を停止する。コントローラ91は入力装置92から回折環撮像の指令が入力すると高電圧電源6にX線出射の指令を出力し、出力とともに時間計測を開始して予め記憶されている時間が経過すると高電圧電源6にX線停止の指令を出力する。よって、入力装置92からの入力を行うのみで、X線出射器10から設定された強度のX線を設定された時間だけ出射させることができる。
図2に示すように、円筒状のホルダ7は上部に雄ねじが切られており、雌ねじが切られた上蓋8を捻じ込むことができるようになっている。上蓋8は中心に孔8aが開けられており、X線出射器10から出る高電圧電源6に接続するためのケーブル9を通すことができるようになっている。なお、X線出射器10にケーブル9を取り付け、ケーブル9に高電圧電源6に接続するためのコネクタを取り付けた後は、上蓋8の孔8aにケーブル9を通すことはできないので、該取り付けを行う前にケーブル9に上蓋8を通すようにする。上述したように、円筒状のホルダ7の内径はX線出射器10の最も大きい径より僅かに大きい径になっており、円筒状のホルダ7の長さはX線出射器10をセットしたときX線出射器10の上端より円筒状のホルダ7の上端がやや上になる長さになっている。よって、ホルダ7にX線出射器10をセットし上蓋8をホルダ7に捻じ込むと、X線出射器10はホルダ7内で固定される。
また、図2に示すように、モータ27はモータ固定プレート13に固定され、モータ固定プレート13の連結部12はホルダ7に固定されることで、ホルダ7の中心軸方向でX線の出射方向に、モータ27が配置される。ホルダ7は下端よりやや上の部分で互いに対称となる位置に雌ねじが切られた穴7bが2つあり、所定の径の雄ねじ11を捻じ込むことができるようになっている。そして、モータ固定プレート13の上面には、互いに対称となる位置に設けられた2つの長方形の板状の連結部12があり、2つの連結部12には雄ねじ11よりやや大きい径の孔12aがそれぞれ開けられている。したがって、連結部12の孔12aとホルダ7の雌ねじが切られた穴7bをそれぞれ合わせ、雄ねじ11をホルダ7の穴7bにそれぞれ捻じ込むことにより、ホルダ7とモータ固定プレート13を連結させることができる。モータ固定プレート13の底面には、対称位置に雌ねじが切られた2つの穴13aがあり、所定の径の雄ねじ14を捻じ込むことができるようになっている。そして、モータ27の底面には対称位置に2つの固定板29があり、固定板29には雄ねじ14よりやや大きい径の孔29aがそれぞれ開けられている。2つの孔29aのモータ27の中心軸(出力軸の中心)からの距離と、2つの穴13aのモータ固定プレート13の中心軸からの距離は同じであり、孔29aと穴13aをそれぞれ合わせることができる。よって、孔29aと穴13aをそれぞれ合わせ、雄ねじ14を穴13aにそれぞれ捻じ込むことにより、モータ27をモータ固定プレート13に固定させることができる。なお、モータ27にはモータ27を回転駆動させる電力が供給されるケーブルと、モータ27内のエンコーダ27cが出力するパルス列信号を供給するケーブルとがあり、該ケーブルの先端には該ケーブルと後述する回折環読取装置2からのケーブルとを接続するためのコネクタがあるが、分かりやすくするため図1及び図2からは除かれている。
図3は、モータ固定プレート13を上方から見た図である。一点鎖線はモータ固定プレート13に固定されたモータ27を示している。図3に示すように、モータ固定プレート13には中心軸を中心にしてモータ27と同じ径の孔があり、放射状に出射されたX線はモータ27の底面に照射される。雄ねじ11をホルダ7の2つの穴7bにそれぞれ捻じ込むことによる連結の強度は、円筒状のホルダ7の中心軸に対するモータ27の中心軸(出力軸の中心)を任意の角度にしてモータ固定プレート13を固定することができる強度である。これにより、X線出射器10から放射状に出射されるX線の中心線に対して、モータ27の中心軸を任意の角度にして固定することができる。
また、図3に示すように、モータ固定プレート13の側面には、モータ固定プレート13の中心軸に対して対称位置に貫通孔13bがある。この貫通孔13bは後述する回折環読取装置2に回折環撮像装置本体5をセットする際、回折環読取装置2にある固定棒47を挿入するためのものである。これについては後述する。
モータ27、テーブル16、イメージングプレート16及び固定具18の構造は、先行技術文献の特許文献1に示されるモータ27、テーブル16、イメージングプレート16及び固定具18と同じ構造である。すなわち、モータ27の出力軸27aは円筒状で断面円形の貫通孔27a1を有し、モータ27の出力軸27aの反対側には、貫通孔27bが設けられ、貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするため、貫通孔28aが形成された円筒状の通路部材28が固定されている。テーブル16は円形状であり、モータ27の出力軸27aの先端部に固定されている。テーブル16は、下面中央部から下方へ突出した突出部17を有し、突出部17の外周面には、ねじ山が形成されている。テーブル16の下面にはイメージングプレート15が取り付けられる。イメージングプレート15の中心部には貫通孔15aが設けられていて、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15が、固定具18とテーブル16の間に挟まれて固定される。固定具18は円筒状の部材で、内周面に突出部17のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
テーブル16、突出部17及び固定具18にも貫通孔16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、貫通孔16a,17a,18aは貫通孔28a,27b,27a1と同一軸である。また、貫通孔18aの内径は通路部材28の貫通孔28aと同じである。すなわち、モータ27の底面に照射されるX線の一部は、貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射され、貫通孔28aの内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線、すなわちモータ27の中心軸に平行なX線となる。すなわち、X線出射器10から放射状に出射されるX線の一部は、貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射されることで、モータ27の中心軸に平行なX線となる。
また、図1に示すように、X線出射器10から放射状に出射されるX線の中心線に対してモータ27の中心軸をある角度にしても、通路部材28にX線が照射されれば貫通孔18aからは略平行なX線が出射し、測定対象物OBに照射される。そして、測定対象物OBにX線が照射されれば、測定対象物OBで回折したX線により、イメージングプレート15に回折環が撮像される。すなわち、測定対象物OBの内部の空洞の中心軸とホルダ7の中心軸を合わせて回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に挿入しても、モータ27の中心軸の方向を変えることで、X線を測定対象物OBの目的とする箇所に照射し、回折環を撮像することができる。なお、モータ27はテーブル16及びイメージングプレート15の径を異ならせたものが複数用意されており、測定対象物OBの内部に挿入することが可能なモータ27を選択して、モータ固定プレート13に固定させることができる。
回折環撮像装置1はイメージングプレート15に回折環を撮像するのみであるので、撮像した回折環を読み取るには、別の装置が必要である。次に、撮像した回折環を読み取る回折環読取装置2について説明する。回折環読取装置2の構成は図4に示されるものであり、回折環がイメージングプレート15に撮像された回折環撮像装置本体5をセットして回折環の読取りが行われる。
回折環読取装置2は、先行技術文献である特許文献1に示されるX線回折測定装置における回折環読取り機能を備えた装置であり、回折環読取りの方式は特許文献1に示されるX線回折測定装置と同じである。すなわち、集光したレーザ光を照射するとともにイメージングプレート15を回転させながら半径方向に送り、反射光強度を回転角度及び半径位置とともに検出することで回折X線の強度分布を取得する方式である。なお、本実施形態ではコンピュータ装置90は回折環撮像装置1のものがそのまま使用されるようになっているが、別のコンピュータ装置90であっても問題はない。
基台26上には支持機構45が固定されており、支持機構45の側面には固定用ブロック46が固定されている。そして、固定用ブロック46の側面には2つの固定棒47が固定されており、この2つの固定棒47を、上述したモータ固定プレート13の2つの貫通孔13bにモータ固定プレート13の角が固定用ブロック46の側面に当たるまで挿入することで、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2に決められた位置でセットすることができる。2つの固定棒47の位置は、回折環撮像装置本体5をセットしたとき、後述するレーザ検出装置30から出射するレーザ光の集光位置が、イメージングプレート15の表面に略合致する位置である。
ステージ移動機構20は、基台26の上で移動する移動ステージ21を備えている。移動ステージ21は、移動ステージ21の移動方向に向かって基台26の両側で対向する板状のガイド(図4では省略)により挟まれており、固定ブロック25に固定されたフィードモータ22が回転し、スクリューロッド23及び軸受部24が回転すると、図4の横方向に移動する。この方向は回折環撮像装置本体5が固定棒47にセットされた場合、イメージングプレート15の半径方向である。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれており、エンコーダ22aはフィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動する。回折環読取装置2への電源投入直後において、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ21をフィードモータ22側へ移動させるようフィードモータ22に駆動信号を出力し、位置検出回路72は、移動ステージ21が移動限界位置に達して、エンコーダ22aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ21の原点位置となり、位置検出回路72は、以後、移動ステージ21が移動するごとにエンコーダ22aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離xを位置信号として出力する。フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動位置を入力すると、位置検出回路72から入力する位置信号が入力した移動位置に等しくなるまで、フィードモータ22を正転又は逆転駆動する。また、フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動方向と移動速度を入力すると、エンコーダ22aから入力したパルス列信号の単位時間当たりのパルス数が、入力した移動速度に相当する単位時間当たりのパルス数になるようにフィードモータ22に駆動信号を出力する。
コントローラ91には、移動ステージ21が移動限界位置に達したときの、すなわち移動距離xが0のときにおける、後述するレーザ検出装置30から照射されるレーザ光の照射位置のモータ27の中心軸(テーブル16及びイメージングプレート15の中心軸)からの距離r0が記憶されている。そして、コントローラ91は、r0にから入力した移動距離xを減算することで、レーザ光の照射半径位置rを取得することができる。
レーザ検出装置30は移動ステージ21上に固定され、回折環を撮像したイメージングプレート15に集光したレーザ光を照射し、イメージングプレート15が発光した光の強度を検出するものである。レーザ検出装置30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、反射鏡33、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36等を備えた光ヘッドであり、光ディスクの記録再生に用いられるものと同様の構成である。
レーザ駆動回路77は、コントローラ91から指令が入力すると、フォトディテクタ42から入力する信号の強度が所定の強度になるようレーザ光源31に駆動信号を出力し。レーザ光源31からは一定強度のレーザ光が出射される。フォトディテクタ42は後述するダイクロイックミラー34で微量が反射し、集光レンズ41を介して受光したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力するが、ダイクロイックミラー34での反射の割合は一定であるので、出射したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力すると見なせる。コリメートレンズ32はレーザ光を平行光にし、反射鏡33はレーザ光を、ダイクロイックミラー34に向けて反射し、ダイクロイックミラー34は、入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ36は、レーザ光をイメージングプレート15の表面に集光させる。対物レンズ36には、フォーカスアクチュエータ37が組み付けられており。後述するフォーカスサーボにより、イメージングプレート15の厚さが設定値より変化していても、また、表面が完全な平坦でなくても、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
集光されたレーザ光が、イメージングプレート15の回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じ、回折環撮像時における回折X線の強度に応じた光が発生する。この輝尽発光により発生した光はレーザ光の波長よりも波長が短く、レーザ光の反射光と共に対物レンズ36を通過するが、ダイクロイックミラー34にて大部分が反射し、レーザ光の反射光は大部分が透過する。ダイクロイックミラー34で反射した光は、集光レンズ38、シリンドリカルレンズ39を介してフォトディテクタ40に入射する。フォトディテクタ40は、4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子からなり、4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅回路78に出力する。なお、シリンドリカルレンズ39は非点収差を生じさせるためにある。
増幅回路78は、入力した4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅してフォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。フォーカスエラー信号生成回路79は、非点収差法におけるフォーカスエラー信号を生成してフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により指令が入力すると作動開始し、入力したフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、入力したフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ37を駆動して、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に変位させ、これにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
SUM信号生成回路80は、入力した4つの受光信号を合算してSUM信号を生成し、A/D変換器83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート15にて反射し、ダイクロイックミラー34で反射した微量のレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート15にて反射するレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、撮像された回折環における回折X線の強度に相当する。A/D変換器83は、コントローラ91から指令が入力すると、入力するSUM信号の瞬時値を設定された時間間隔でデジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
また、対物レンズ36に隣接して、LED光源43が設けられている。LED光源43は、LED駆動回路84から駆動信号が入力すると、可視光を発して、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91から指令を入力すると、LED光源43に所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を出力する。
モータ制御回路74からは、回折環撮像装置本体5のモータ27に駆動電源を供給するためのケーブルが出ており、このケーブルの先端は、モータ27から出ている駆動電源供給のためのケーブルの先端にあるコネクタに迎合するコネクタになっている。また、モータ制御回路74と回転角度検出回路75からは、モータ27内のエンコーダ27cが供給するパルス列信号を入力するためのケーブルが出ており、このケーブルの先端は、モータ27から出ているパルス列信号供給のためのケーブルの先端にあるコネクタに迎合するコネクタになっている。よって、回折環撮像装置本体5を固定棒47にセットした後、モータ27から出ているケーブルと、モータ制御回路74及び回転角度検出回路75から出ているケーブルとをコネクタにより接続すれば、モータ制御回路74からモータ27に駆動電源を供給することができるとともに、モータ27内のエンコーダ27cが出力するパルス列信号を、モータ制御回路74と回転角度検出回路75に入力させることができる。
モータ27から出ているケーブルをモータ制御回路74及び回転角度検出回路75から出ているケーブルに接続すれば、モータ27内のエンコーダ27cは、モータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、モータ制御回路74と回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、モータ27が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、回転角度検出回路75に出力する。なお、回転角度検出回路75にはモータ27内のエンコーダ27cのインデックス信号を直接コントローラ91に出力する信号線があり、インデックス信号はコントローラ91にも出力される。
モータ制御回路74は、コントローラ91から回転速度を入力すると、エンコーダ27cから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数が、入力した回転速度に相当する単位時間当たりのパルス数になるように、駆動信号をモータ27に出力する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から回転角度θpを計算してコントローラ91に出力する。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cからインデックス信号を入力すると、カウント値をリセットして「0」にする。これが回転角度0°の位置である。なお、イメージングプレート15の回転角度0°の位置とは、インデックス信号を入力した時点で後述するレーザ検出装置30からレーザ光が照射されている位置である。この位置はイメージングプレート15の各半径位置ごとにあるためラインである。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された各種プログラムを実行して各回路に指令を出力し、回折環を読み取るための作動を行う。作業者は、回折環撮像装置本体5を固定棒47にセットし、モータ27から出ているケーブルを回折環読取装置2から出ているケーブルとコネクタにより接続した後、入力装置92から回折環読取りの指令を入力すると、コントローラ91は各回路に指令を出力し、モータ27とフィードモータ22を回転させ、レーザ検出装置30からレーザ光を出射し、所定の回路から反射光強度、移動距離x(半径位置r)及び回転角度θpを入力することで回折環の形状(回折X線の強度分布)を読み取る。この作動内容は後述する回折環撮像装置1及び回折環読取装置2を用いたX線回折測定方法にて詳細に説明する。
また、コントローラ91は、読み取った回折環の形状を用いて、残留応力等の回折環の形状に基づく特性値を算出する演算処理を行う。この演算処理のためコントローラ91の記憶装置には、該特性値の計算に必要な諸定数等、必要な数値が予め記憶されている。この演算処理も後述するX線回折測定方法にて詳細に説明する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作動指令などの入力のために利用される。表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせる。
次に、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBである鉄管内部の中心軸部分に位置させるための治具3について説明する。回折環撮像装置本体5から出ているものは、高電圧電源6に接続されるケーブル9のみであり、ケーブル9を持って測定対象物OBの内部に回折環撮像装置本体5を入れると、回折環撮像装置本体5の位置が安定せず、また、安全上好ましくない。よって、回折環撮像装置本体5を図5に示される治具3に取り付け、測定対象物OBの内部に入れるようにする。
図5に示されるように、治具3には回折環撮像装置本体5を取り付けるための取付リング68,69がある。取付リング68,69は薄いステンレス等の金属でできた輪状のものであり、力をかけると容易に輪を押し広げることができ、復元力があるため力がかからなくなると、元に戻るものである。よって、回折環撮像装置本体5のホルダ7を取付リング68,69に押し付けると、輪が広がって輪内にホルダ7が入り、その後、輪が元に戻ろうとしてホルダ7を締めつける。これにより、回折環撮像装置本体5は治具3に固定される。そして、取付リング68,69は後述する伸縮パイプ51の中心軸方向と方向は同一で該中心軸方向の垂直方向に位置を異ならせた長尺棒67に固定されており、回折環撮像装置本体5のホルダ7を固定したとき、ホルダ7の中心軸は後述する伸縮パイプ51の中心軸と略一致するようになっている。よって、後述する伸縮パイプ51の中心軸を治具3の中心軸とみなすことができる。
治具3には取っ手70が備えられており、作業者はこの取っ手70を持って治具3に取り付けた回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に入れることができる。取っ手70の中心部分には取っ手70の長尺方向の略垂直方向に伸縮パイプ51が取り付けられている。伸縮パイプ51は伸縮するポインターペンのように、径の大きなパイプに径の小さなパイプを入出させることで全体の長さを変化させることができる。よって、測定対象物OBの内部の測定箇所にX線が照射される適切な長さに伸縮パイプ51の長さを調整し、回折環撮像装置本体5を取り付けた治具3を測定対象物OBの中に挿入することができる。また、測定対象物OBの内部の中心軸が鉛直方向にある場合は、治具3を挿入する測定対象物OBの入口に取っ手70がかかって止まったとき、測定箇所にX線が照射される適切な長さに伸縮パイプ51の長さを調整すればよい。
また、治具3には伸縮パイプ51の先端部分に、治具3の中心軸(伸縮パイプ51の中心軸)の垂直方向に90度の間隔で4つの押し当て部50が設けられている。4つの押し当て部50はそれぞれの伸縮棒53が伸びて先端のローラー58が測定対象物OBの内部の壁を、治具3の中心軸の垂直方向に90度の間隔で押すことで、治具3を測定対象物OBの内部で固定させることができる。このとき、後述するように押す力は4方向とも同じ力になろうとして伸縮棒53の伸長する長さは等しくなるので、測定対象物OBが管状物体である場合、測定対象物OB内部の中心軸と治具3の中心軸、すなわち、回折環撮像装置本体5のホルダ7の中心軸とを略一致させて、治具3を測定対象物OBの内部で固定させることができる。
押し当て部50の構造を示したものが、図6の部分断面図である。伸縮パイプ51の先端は立方体状の固定用ブロック66に固定されており、この固定用ブロック66の4つの側面に長尺の直方体状の収納部52が取り付けられている。収納部52は内部が長尺の直方体状の空洞になっており、伸縮棒53が中に収まっている。収納部52の先端には伸縮棒53の径よりやや大きい径の孔52aがあり、伸縮棒53はこの孔52aから治具3の中心軸の垂直方向に出ている。伸縮棒53の先端には、前方に開口があり内部が空洞になっている直方体状のカバー57が取り付けられており、カバー57の空洞にはローラー58が入っていて前方の開口から外に出ている。ローラー58はカバー57の側面に取り付けられている回転軸59周りに回転可能になっている。
伸縮棒53は円筒状の形状であり、先端部を除いて内部にも円筒状の空洞53aがあり、この空洞53aの中に先端が固定用ブロック66に固定されたガイド棒54が入っている。伸縮棒53は内部にガイド棒54を入れた状態で移動可能であり、ガイド棒54の中心軸は収納部52の中心軸であるので、伸縮棒53は収納部52の中心軸方向に移動可能になっている。伸縮棒53の固定用ブロック66側の先端は空洞53aと同じ径の孔が開けられた正方形状板55が固定されており、正方形状板55と固定用ブロック66との間にはバネ56がある。バネ56は完全に伸びた状態では、収納部52の中心軸方向の長さよりも長くなるものであり、バネ56が伸びたときローラー58が物体に当たらなければ、伸縮棒53は正方形状板55が孔52aがある箇所の収納部52の内壁に当たるまで伸びる。しかし、ローラー58の先に物体があれば、バネ56の力により伸縮棒53は該物体を押すことになる。
治具3を測定対象物OBの内部に挿入する前までは、図6に示すようにストッパ64が正方形状板55を押さえているため、バネ56は縮まった状態にあり、伸縮棒53はいずれも収納部52から外側にあまり出ていない。ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所は、上方向に移動させるには作業者が力を加える必要があるため、バネ56が伸びようとするのを止めている。作業者が力を加えてストッパ64の正方形状板55と接触している箇所を図6の上方向に移動させたとき、バネ56が伸びて伸縮棒53が伸びる。図6に示すように、ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所の反対側の先端は伸縮パイプ51に通され固定用ブロック66近傍にある移動リング62の上面に固定されており、移動リング62の下面と固定用ブロック66及び固定用ブロック66の近傍の収納部52の上面との間には、バネ65がある。バネ65は縮まった状態であるため伸びようとする力を移動リング62に及ぼしているが、移動リング62の上にある円柱状ボタン60が、伸縮パイプ51に固定された固定リング61によりそれより上に移動しなくされているため、バネ65は常に移動リング62を上側に押している。円柱状ボタン60は円柱状で伸縮パイプ51を通すための貫通孔が中心軸周りに開けられたものである。ストッパ64の中間部分は収納部52の上面に固定された円柱状の突起63に嵌め込まれており、ストッパ64は図6の紙面垂直方向周りに微小角度だけ回転可能になっている。しかし、バネ65は常に移動リング62を上側に押しているため、移動リング62の上面に取り付けられたストッパ64の端もバネ65により常に上側に押されている。よって、ストッパ64を図6の紙面垂直方向右回りに回転させる、すなわちストッパ64の正方形状板55と接触している箇所を上方向に移動させるには力を加える必要がある。
円柱状ボタン60をバネ65が押す力より大きな力で下方向に移動させると、移動リング62も下方向に移動し、ストッパ64は突起63を回転軸にして図6の紙面垂直方向右回りに回転し、ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所が上方向に移動して、バネ56が伸びて伸縮棒53が伸びる。すなわち、作業者が円柱状ボタン60を一瞬だけ下方向に移動させれば伸縮棒53が伸びる。そして、円柱状ボタン60が元の位置に戻り、ストッパ64が元の状態に戻っても、伸縮棒53は伸びたままである。4つの収納部52にあるバネ56はいずれも同じ仕様であり、長さと押す力の関係はすべて同じである。そして、治具3を測定対象物OBの内部に挿入した後、円柱状ボタン60を下方向に移動させ4つの伸縮棒53を伸ばすと、4つのローラー58が測定対象物OBの内壁に当たり、測定対象物OBの内壁を4方向に押す。このとき、対称となる伸縮棒53の押す力が異なると、力の弱い方の伸縮棒53は押されて縮むため、対称となる伸縮棒53の押す力は等しくなる。すなわち、治具3の中心軸に対して対称位置にあるバネ56は長さが等しくなり、対称となる伸縮棒53の長さは等しくなる。また、治具3の中心軸が測定対象物OB内部の中心軸に対して傾いた状態で伸縮棒53を伸長させると、治具3の中心軸に対して対称位置にあるローラー58が、測定対象物OBの壁に当たる箇所は伸縮棒53の中心軸からずれ、ずれる方向は逆になる。よって、測定対象物OBから伸縮棒53にかかる力は1つのライン上にないため、治具3の中心軸に対して対称位置にある押し当て部50は、回転して測定対象物OBから伸縮棒53にかかる力が伸縮棒53の中心軸上になるとする。このため、治具3を測定対象物OBの中心軸方向に移動させると、治具3の中心軸と測定対象物OBの中心軸は一致するようになる。このため、上述したように、測定対象物OBが管状物体である場合、測定対象物OBの内部の中心軸と治具3の中心軸とを略一致させて、治具3を測定対象物OBの内部で固定させることができる。
円柱状ボタン60を一瞬だけ下方向に移動させて4つの伸縮棒53を伸ばし、4つのローラー58が測定対象物OBの内壁を押しても、伸縮パイプ51の中心軸方向に力を加えれば4つのローラー58は回転し、治具3の中心軸を測定対象物OBの内部の中心軸と合わせたまま、治具3を該中心軸方向に移動させることができる。よって、作業者は、X線を測定箇所に照射できるよう伸縮パイプ51を適切な長さにし、押し当て部50が測定対象物OBの内部に入るまで治具3を測定対象物OBの内部に挿入し、円柱状ボタン60を下方向に移動させて4つのローラー58を測定対象物OBの内壁に押し当て、取っ手70を持って治具3を適切な位置まで移動させればよい。
治具3を測定対象物OBの内部から外に出すと、伸縮棒53は押すものがなくなるため最大限まで伸びる。この伸縮棒53を縮んだ状態に戻すときは、カバー57を持ってバネ56の伸びようとする力より大きな力で伸縮棒53を収納部52の中に押し込めばよい。押していくと正方形状板55はストッパ64に当たるが、図6に示すようにストッパ64の正方形状板55と接触している箇所は、図6の左側が円柱の側面の形状になっているため、力を入れるとバネ65が移動リング62を押す力に勝り、ストッパ64は図6の紙面垂直方向右周りに微小回転し、ストッパ64の正方形状板55と接触している箇所は上方向に移動する。これにより、正方形状板55はストッパ64を通り抜け、その後直ぐにストッパ64はバネ65の力により図6の紙面垂直方向左周りに微小回転するため、図6に示すようにストッパ64が正方形状板55にかかり、伸縮棒53は縮んだ状態のままになる。他の伸縮棒53を同様に収納部52に押し込むと、その収納部52にあるストッパ64が図6の紙面垂直方向右周りに微小回転するが、バネ65が縮むのは全体ではないので、既に縮んだ状態にある別の伸縮棒53はストッパ64が正方形状板55にかかったままであり、伸びることはない。4つの伸縮棒53をすべて収納部52の中に押し込むと治具3は元の状態に戻るため、次の測定対象物OBの内部への挿入が可能になる。
なお、治具3は、収納部52の治具3の中心軸の垂直方向における長さを異ならせ、伸縮棒53の長さを異ならせたものが複数用意されている。よって、複数の治具3の中から、測定対象物OBの内部に挿入でき、伸縮棒53を伸長させたとき、先端のローラー58を測定対象物OBの内部の壁に押し当てることができる治具3を選択して使用する。
次に、上記のように構成した回折環撮像装置1、回折環読取装置2及び治具3を用いて、測定対象物OBである鉄管の内部のX線回折測定を行う具体的方法について説明する。このX線回折測定は、配置工程、回折環撮像工程、回折環読取り工程及び計算工程からなる。まず、配置工程において、作業者は治具3の取付リング68,69に回折環撮像装置本体5を取りつけ、測定対象物OBの内部の測定箇所により回折環撮像装置本体5のモータ27のホルダ7の中心軸に対する角度を適切な角度にする。これは、測定対象物OBが管状物体である場合、図7(a)に示すように測定箇所が測定対象物OBの内部の側面であるときは、モータ27を大きめの適切な角度にし、図7(b)に示すように測定箇所が測定対象物OBの内部の底面であるときは、モータ27を小さめの適切な角度にするものである。上述したようにホルダ7の内部に固定されたX線出射器10は、ホルダ7の中心軸を中心に放射状に広がるX線を出射するので、モータ27のホルダ7の中心軸に対する角度を変化させても、モータ27の中心軸にある貫通孔28a,27b,27a1を介して固定具18の貫通孔18aからX線を出射させることができる。
なお、上述したようにモータ27は、テーブル16及びイメージングプレート15の径を異ならせたものが複数用意されている。よって、測定対象物OBの内部の径に比べ、現在取り付けられているモータ27のテーブル16の大きさが適切でない場合は、モータ27をモータ固定プレート13から取り外し、図8(a)及び(b)に示すように適切な大きさのモータ27を選択してモータ固定プレート13に取り付ければよい。また、治具3は押し当て部50の長さを異ならせたものが複数用意されているので、測定対象物OBの内部に入り、内部の側面に押し当てることが可能な治具3に回折環撮像装置本体5を取り付ければよい。
次に、押し当て部50が測定対象物OBの内部へ入ったとき、円柱状ボタン60を下方向に移動させて、伸縮棒53を測定対象物OBの内部の側面に押し当てる。このとき、測定対象物OBの内部の中心軸とホルダ7の中心軸(治具3の中心軸)は略一致する。次に、治具3の取っ手70を持って治具3を測定対象物OBの内部の中心軸方向に押し、治具3を測定対象物OBの内部へ入れていき、回折環撮像装置本体5の位置がX線出射時にX線が測定箇所に照射される位置になったとき、治具3の挿入をやめる。このとき、治具3の取っ手70は測定対象物OBへの挿入部分の入口近傍にあるので、挿入方向が鉛直方向であれば取っ手70を該入口の周囲の面にかけるようにする。又は該入口の周囲の面に適切な厚さのスペーサを入れ、取っ手70を該スペーサにかけるようにする。また、挿入方向が水平方向であれば、取っ手70の近傍の伸縮パイプ51と該入口近傍における測定対象物OBの内部の側面との間に適切な厚さのガイド用物体を入れ、伸縮パイプ51を該ガイド用物体にかけるようにする。
次に回折環撮像工程において、回折環撮像装置1の入力装置92からX線出射の指令を入力する。これにより、コントローラ91は、高電圧電源6に指令を出力し、高電圧電源6はX線出射器10にX線を出射するための電力を供給し、X線出射器10から放射状のX線が出射される。出射されたX線はモータ27、テーブル16及び固定具18にある貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18aを通過することで略平行なX線となり、測定箇所に照射される。そして、測定箇所で発生した回折X線によりイメージングプレート15には、回折環が撮像されていく。コントローラ91は、高電圧電源6に指令を出力したタイミングで時間計測を開始し、予め設定された時間が経過すると、高電圧電源6に停止指令を出力する。これにより、高電圧電源6からX線出射器10への電力供給は停止し、イメージングプレート15には、設定された時間だけX線を照射したときの回折環が撮像される。
次に回折環読取り工程において、作業者は治具3を測定対象物OBの内部から取り出し、回折環撮像装置本体5を治具3から取り外す。そして、回折環撮像装置本体5のモータ固定プレート13の貫通孔13bに回折環読取装置2の固定棒47を挿入させて、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットする。このとき、回折環読取装置2の移動ステージ21は、図4に示す位置まで移動されており、レーザ検出装置30が邪魔にならずに回折環撮像装置本体5をセットすることができる。次に、作業者はモータ27から出ているケーブルを回折環読取装置2から出ているケーブルとコネクタにより接続し、入力装置92からテーブル16(イメージングプレート15)の半径値及び測定対象物OBの材質を入力したうえで、読取り開始の指令を入力する。これ以降はコントローラ91にインストールされた制御プログラムにより、操作が行われる。まず、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73に指令を出力して、移動ステージ21を図4の右側の駆動限界位置付近まで移動させ、イメージングプレート15の中心よりやや外側の位置付近にレーザ検出装置30からのレーザ光が照射されるようにする。
次に、コントローラ91は、モータ制御回路74に指令を出力してモータ27を所定の回転速度で回転させ、レーザ駆動回路77に指令を出力してレーザ検出装置30からレーザ光をイメージングプレート15に照射させ、フォーカスサーボ回路81に指令を出力してフォーカスサーボを開始させる。さらに、回転角度検出回路75に指令を出力して、モータ27(イメージングプレート15)の回転角度θpの出力を開始させ、A/D変換器83に指令を出力して、SUM信号の瞬時値Iのデータ出力を開始させ、フィードモータ制御回路73に指令を出力してフィードモータ22を回転させ、イメージングプレート15を図4の右側の駆動限界位置付近から左方向へ一定速度で移動させることを開始する。これにより、レーザ光の照射位置は、相対的にイメージングプレート15上を螺旋状に回転し始める。その後、コントローラ91は、イメージングプレート15が所定の小さな角度だけ回転するごとに、A/D変換器83が出力するSUM信号の瞬時値Iのデータと、回転角度検出回路75が出力する回転角度θpのデータと、位置検出回路72が出力する移動距離xのデータとを入力し、それぞれのデータを対応させて記憶する。なお、移動距離xは上述したようにレーザ光照射位置の半径値rに変換されたうえで記憶される。これにより、螺旋状に回転するレーザ光の照射位置に関して、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータが所定回転角度ごとに順次記憶されていく。
SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータの所定回転角度ごとの記憶動作と並行して、コントローラ91は、回転角度θpごとに半径値rに対するSUM信号の瞬時値Iの曲線を作成し、曲線のピークに対応した半径値rαとSUM信号強度値Iαを記憶する。これは回折環の回転角度αごとに半径方向における回折X線の強度分布を求め、回折X線の強度がピークとなる箇所の半径値rαと回折X線の強度に相当する強度Iαを求める処理である。そして、すべての回転角度θp(回転角度α)において半径値rαと強度Iαを取得し、検出するSUM信号の瞬時値Iが強度Iαに対して充分小さくなった時点で、データの記憶を終了する。これにより、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布が瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群で、及び回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαで検出されたことになる。その後、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、フォーカスサーボを停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換器83と回転角度検出回路75の作動を停止させ、フィードモータ22の作動を停止させる。なおイメージングプレート15の回転は、継続されている。
次にコントローラ91は、フィードモータ制御回路73に指令を出力して、移動ステージ21を図4の右側の駆動限界位置付近まで移動させ、イメージングプレート15の中心よりやや外側の位置付近にLED光源43からのLED光が照射されるようにする。次に、コントローラ91は、LED駆動回路84に指令を出力してLED光源43からのLED光をイメージングプレート15に照射させ、フィードモータ制御回路73に指令を出力して、イメージングプレート15を図4の右側の駆動限界位置付近から左方向へ一定速度で移動させることを開始する。これにより、LED光がイメージングプレート15上に螺旋状に照射され、撮像された回折環が消去されていく。
コントローラ91にはイメージングプレート15の半径が入力されて記憶されているので、コントローラ91は、位置検出回路72から入力した移動距離xを所定の値r0から減算することで得られるLED光の照射半径値が、イメージングプレート15の半径になったとき、LED駆動回路84に指令を出力してLED光の照射を停止させる。さらに、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73に指令を出力してイメージングプレート15の移動を停止させ、位置検出回路72に指令を出力して作動を停止させ、モータ制御回路74に指令を出力してモータ27(イメージングプレート15)の回転を停止させる。
ここまでの処理により、先行技術文献である特許文献1と同様、コントローラ91には、回折環における回折X線の強度分布及び回折環の形状のデータが記憶されている。しかし、残留応力の計算にはこれらのデータ以外に、X線照射点からイメージングプレート15までの距離L、測定対象物OBに対するX線の入射角ψ、及びX線の光軸とX線の照射点における法線とを含む平面がイメージングプレート15と交差するラインの回折環における回転角度(以下、基準回転角度という)が必要である。特許文献1では、X線と光軸が同一の可視の平行光を測定対象物OBに照射し、測定対象物OBの照射点付近をカメラ撮影して照射点及び受光点の撮影画像上の位置を設定位置にすることで、距離L、入射角ψを設定値にし、基準回転角度を0度にすることができた。または、照射点及び受光点の撮影画像上の位置から、距離L、入射角ψを検出し、基準回転角度を0度にすることができた。しかし、本実施形態では回折環撮像装置本体5はX線と光軸が同一の可視の平行光を照射する機能及びカメラ機能は有していない。よって、X線照射点からイメージングプレート15までの距離L、測定対象物OBに対するX線の入射角ψ、及び基準回転角度は別の方法で取得する。
まず、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lは、回折環を撮像したときと同じ状態で材質既知の金属の粉末を糊塗した箇所にX線を照射して回折環を撮像し、該回折環を読取って該回折環の半径値を計算することで得る。すなわち、X線照射箇所に材質既知の金属の粉末を糊塗し、回折環撮像装置本体5を先の回折環撮像時と同じ状態にする配置工程、続いて上述した回折環撮像工程及び回折環読取り工程と同じ工程を行い、得られた回転角度αごとの半径値rαを平均する。これは、材質が既知で無応力のときの回折環の半径値を得ることであり、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lは、該半径値と既知である無応力のときの回折角から計算することができる。なお、残留応力の計算に必要な値は測定対象物OBが無応力のときの回折環の半径値であるので、粉末が測定対象物OBと同じ材質であれば(本実施形態では鉄の粉末であれば)、距離Lを計算する必要はなく、得られた半径値をそのまま残留応力の計算に用いることができる。
回折環を撮像したときと同じ状態で、材質既知の金属の粉末を糊塗した箇所にX線を照射して回折環を撮像するには、測定対象物OBの内部の測定箇所に金属の粉末を糊塗し、上述した方法と同じ方法で治具3に回折環撮像装置本体5を取り付け、測定対象物OBの内部に挿入して回折環を撮像すればよい。また、測定対象物OBの内部形状と同じ内部形状の物体で同様のことを行ってもよい。なお、測定対象物OBの内部の測定箇所が図7(b)に示すように鉄管内部の側面である場合は、治具3の中心軸は測定対象物OBの内部の中心軸と一致しているので、回折環を撮像する測定対象物OBの挿入箇所からの深さ方向の位置は任意でよい。測定箇所に金属の粉末を糊塗することのみが異なり、回折環撮像と回折環読取り及び回折環消去の方法及び装置の作動は、上述した説明とすべて同じである。これにより、回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαでコントローラ91に記憶されるが、測定箇所は無応力であるので半径値rαはすべて略同一の値である。よって、すべての半径値rαを平均し、この平均値と粉末の材質における回折角からX線照射点からイメージングプレート15までの距離Lを計算する。なお、粉末の材質が測定対象物OBと同じ鉄である場合は、すべての半径値rαの平均値を計算するのみでよい。
上述したように、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lを得るには、金属粉末の糊塗と再度の回折環撮像と回折環読取りが必要であり、測定に時間を要する。よって、測定精度を多少落としても測定効率を重要視するときは、測定対象物OBへのX線照射で撮像した回折環の読取りにより得られた回転角度αごとの半径値rαを平均してもよい。
次に、測定対象物OBに対するX線の入射角ψは、回折環読取りにより得られたデータである瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを用い、特許第5967491号に示された方法を用いて計算する。すなわち、コントローラ91にインストールされている演算プログラムが、回折環読取りにより記憶されているデータを用いて自動でX線の入射角ψの計算を行う。この計算は、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化量とX線の入射角ψとには1:1の関係があるため、予めこの関係を記憶しておき、回折環読取りにより得られたデータから回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化量を計算し、得られた変化量を記憶された関係に当てはめてX線の入射角ψを求めるものである。また、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化量の代わりに、回転角度θpに対する半径方向の瞬時値Iの分布に基づく幅(例えば半価幅)の変化量を用いて同様の計算を行ってもよい。これらの変化量とX線の入射角ψとに1:1の関係があることの理論的説明及びX線の入射角ψの具体的計算方法は、特許第5967491号に詳細に説明されているのでそちらを参照する。なお、計算に使用する回折環読取りデータは、測定対象物OBにX線を照射して撮像した回折環の読取りデータを用いればよいが、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lを得るために、金属の粉末を糊塗した箇所にX線を照射して撮像した回折環の読取りデータを用いてもよい。
次に、基準回転角度は、X線の入射角ψと同様、回折環読取りにより得られたデータである瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを用い、特許第5967491号に示された方法を用いて計算する。すなわち、基準回転角度もコントローラ91にインストールされている演算プログラムが、回折環読取りにより記憶されたデータを用いて自動で計算を行う。この計算は、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化曲線において、ピーク点が基準回転角度の位置、ボトム点が基準回転角度から180°の位置に生じるため、該変化曲線を作成し、ピーク点及びボトム点の回転角度を検出して、基準回転角度を計算するものである。この場合も、回転角度θpに対するピークの瞬時値Iαの変化曲線の代わりに、回転角度θpに対する半径方向の瞬時値Iの分布に基づく幅(例えば半価幅)の変化曲線を用いて同様の計算を行ってもよい。ピーク点及びボトム点が上述した回転角度に生じることの理論的説明及び基準回転角度の具体的計算方法は、特許第5967491号に詳細に説明されているのでそちらを参照する。なお、この場合も、計算に使用する回折環読取りデータは、測定対象物OBにX線を照射して撮像した回折環の読取りデータを用いればよいが、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lを得るために、金属の粉末を糊塗した箇所にX線を照射して撮像した回折環の読取りデータを用いてもよい。
以上により、X線照射点からイメージングプレート15までの距離L、測定対象物OBに対するX線の入射角ψ、及び基準回転角度を得ることができる。なお、測定対象物OBの内部の形状が同一のものが複数あり、測定箇所が同一または管状物体内部の側面である場合は、一度、距離L、X線の入射角ψ及び基準回転角度を求めれば、測定対象物OBの内部の形状が同一のものすべてに対して同じ値が使用できるので、X線回折測定の度に距離L、X線の入射角ψ及び基準回転角度を求める必要はない。
次の計算工程において、コントローラ91はインストールされている演算プログラムにより残留応力の計算を行う。なお、上述したように測定対象物OBに対するX線の入射角ψ、及び基準回転角度は、コントローラ91内での演算処理により求めるので、X線照射点からイメージングプレート15までの距離Lを求めるための回折環読取りが終了した後からが計算工程である。残留応力の計算は、cosα法を用いた演算により残留応力を計算するものである。この演算方法は公知技術であり、例えば特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されている。ただし、基準回転角度を0度として計算がされるので、残留応力の計算の前に得られた基準回転角度を、それぞれの回転角度θp(cosα法ではα)から減算し、基準回転角度を0度とする回転角度にした後、公知技術で示された演算方法で計算を行う。
コントローラ91は計算が終了すると、表示装置93に残留応力の計算結果を表示する。なお、残留応力以外に、X線照射点からイメージングプレート15までの距離L、及びX線の入射角ψ等の測定条件を表示するようにしてもよい。また、回折環の形状曲線(回転角度αごとの半径値rαから得られる曲線)、回折環の強度分布画像(瞬時値Iを明度に換算し、瞬時値Iに対応する明度、回転角度θp及び半径値rのデータ群から作成される画像)等を表示するようにしてもよい。作業者は結果を見ることで、測定対象物OBの疲労度の評価等を行うことができる。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、自らの中心軸を中心にして放射状にX線を出射するX線出射器10と、X線出射器10から放射状に出射されるX線の出射方向に配置され、X線を通過させる貫通孔28a,27b,27a1が設けられたモータ27と、モータ27と一体となったテーブル16、イメージングプレート15及び固定具18からなる回折環撮像機器であって、貫通孔28a,27b,27a1と中心軸が一致する貫通孔16a,17a,18aを有し、貫通孔16a,17a,18aを通過させてX線が出射され、出射された方向に物体があるとき、物体で発生した回折X線により貫通孔16a,17a,18aと垂直に交差するイメージングプレート15の表面に回折環を撮像する回折環撮像機器と、X線出射器10を固定しモータ27を連結するホルダであって、X線出射器10の中心軸に対する貫通孔28a,27b,27a1の角度を任意の角度に設定可能な連結部12、雄ねじ11等からなる角度変化機構を設けたホルダ7とを備える回折環撮像装置本体5を用いて回折環撮像を行っている。
これによれば、測定対象物OBの内部の中心軸にX線出射器10の中心軸が合うようにして回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に挿入し、X線が希望する測定箇所に照射されるよう、ホルダ7内の角度変化機構によりX線出射器10の中心軸に対する貫通孔28a,27b,27a1の角度を設定すれば、テーブル16、イメージングプレート15及び固定具18からなる回折環撮像機器により回折環を撮像することができる。すなわち、測定対象物OBの内部がホルダ7又はテーブル16の径より狭くない限り、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に入れて測定箇所にX線を照射し、回折環を撮像することができる。ホルダ7内の角度変化機構により、X線出射器10の中心軸に対する貫通孔28a,27b,27a1の角度を任意の角度に設定しても、測定箇所にX線を照射することができるのは、X線出射器10から放射状にX線が出射するため、角度を変化させても貫通孔28a,27b,27a1にX線が入射するからである。
また、上記実施形態においては、回折環撮像機器は、テーブル16に固定されたイメージングプレート15であり、X線を通過させる貫通孔が形成されたブロックは、貫通孔28a,27b,27a1が出力軸に形成され、テーブル16を貫通孔28a,27b,27a1の中心軸周りに回転させるモータ27であるようにしている。
これによれば、先行技術文献に示されたX線回折測定装置にある回折環読取機能を回折環読取装置2で設け、回折環読取装置2でモータを回転させながらテーブルを移動させれば、回折環を読み取ることができる。また、モータ27に駆動信号を供給するケーブルをモータ近傍でコネクタにより接続するようにすれば、回折環撮像時において回折環撮像装置本体5が有するケーブルはX線出射器へ高電圧を供給するケーブル1つのみにすることができるので、回折環撮像装置本体5の測定対象物OB内部への挿入を行いやすくなる。
また、上記実施形態においては、回折環撮像の際に、回折環撮像装置本体5が着脱可能な治具3であって、X線出射器10の中心軸が治具3の中心軸に略合致するようホルダ7を固定する取付リング68,69と、治具3の中心軸の垂直方向であって互いに正反対となる方向に伸縮する複数の押し当て部50とを有し、複数の押し当て部50は、先端に治具3を移動可能にするローラー58を有している治具3を用いている。
これによれば、測定対象物OBの内部が管状物体の内部等、円柱状の空洞である場合、回折環撮像装置本体5を取り付けた治具3を円柱状の空洞内に挿入し、治具3内の複数の押し当て部50を伸長させて円柱状の空洞の壁に押し当てれば、円柱状の空洞の中心軸位置にX線出射器10の中心軸がくるよう、回折環撮像装置本体5を円柱状の空洞内に位置させることができる。また、複数の押し当て部50の先端はローラー58であるので、円柱状の空洞内の測定箇所近傍まで回折環撮像装置本体5を移動させることができる。
また、上記実施形態においては、回折環撮像装置本体5がセットされる回折環読取装置2であって、イメージングプレート15にレーザ光を照射してイメージングプレート15の表面にレーザスポットを形成するレーザ検出装置30と、モータ27に駆動信号を供給してモータ27を回転させるモータ制御回路74と、レーザスポットをイメージングプレート15と相対的にイメージングプレート15の半径方向に移動させるステージ移動機構20と、レーザ検出装置30によりレーザ光が照射され、モータ制御回路74によりモータ27が回転され、及びステージ移動機構20によりレーザスポットが移動されている状態で、レーザスポットからの反射光の強度を、モータ27の回転角度及びステージ移動機構20による移動位置に関連付けて検出する各種回路及びコントローラ91と、各種回路及びコントローラ91により検出された複数のデータを用いてイメージングプレート15に撮像された回折環の形状を算出するコントローラ91にインストールされた演算プログラムとを備えた回折環読取装置2を用いて回折環読取りを行っている。
これによれば、回折環撮像装置1により回折環を撮像した後、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットすれば、先行技術文献に示された方法と同じ方法で回折環の形状を検出でき、残留応力等、回折環の形状に基づく特性値を計算することができる。すなわち、従来と同程度の測定精度でX線回折測定を行うことができる。
また、上記実施形態においては、回折環撮像装置1と回折環読取装置2を用いたX線回折測定方法において、回折環撮像装置本体5のモータ27は、ホルダ7から着脱可能であるとともにテーブル16の径が異なるものが複数用意されており、用意された複数のモータ27の中から、測定対象物OBに合った径のテーブル16を有するモータ27を選択してホルダ7に取り付ける取付工程と、貫通孔28a,27b,27a1,16a,17a,18aを通過したX線が測定箇所に照射されるようホルダ7の角度変化機構によりモータ27の角度を設定し、回折環撮像装置本体5を対象とする測定対象物OBの測定箇所近傍に配置する配置工程と、X線出射器10からX線を出射してイメージングプレート15に回折環を撮像する回折環撮像工程と、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットし、イメージングプレート15に撮像された回折環の形状を読み取る回折環読取り工程と、回折環読取り工程にて読み取った回折環の形状から、回折環の形状に基づく特性値を計算する計算工程とを行っている。
これによれば、回折環撮像装置本体5を測定対象物OBの内部に挿入して回折環を撮像する際、測定箇所にX線を照射することが可能な径のテーブル16を選択することができるので、測定対象物OBの内部の大きさが様々ある場合でもX線回折測定が可能になる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、回折環撮像装置本体5において、モータ27をホルダ7に対して着脱可能にした。しかし、測定対象物OBの内部の大きさが限られており、複数の径のテーブル16を用意する必要がなければ、テーブル16を適切な大きさにし、モータ27をホルダ7と一体にしてもよい。
また、上記実施形態においては、回折環撮像装置本体5を回折環読取装置2にセットして回折環の読み取りを行ったが、モータ27を含む回折環撮像装置本体5の一部を着脱可能にして、回折環撮像装置本体5から取り外した一部を回折環読取装置2にセットして回折環の読み取りを行うようにしても良い。これによれば、回折環撮像装置1の近くに回折環読取装置2がないとき、高電圧電源6やケーブル9を回折環読取装置2の場所まで運搬せずに済むというメリットがある。なお、請求項3にある、回折環撮像装置がセットされる回折環読取装置とは、回折環撮像装置の一部を取外して回折環読取装置にセットする場合も含むものとする。
また、上記実施形態においては、回折環を撮像する手段は、テーブル16に固定具18で取り付けられたイメージングプレート15とした。しかし、回折環を撮像することができるならばこれ以外の手段を用いてもよい。例えば、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線出射器10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折X線の強度分布を検出する機器でもよい。この場合は、回折環を撮像する手段を回転させる必要はないので、モータ27及びモータ固定プレート13の替わりに連結部12及び貫通孔28a,27b,27a1を備えたブロックを設ければよい。なお、この場合は、回折環撮像装置本体5から出るケーブルの数が増え、テーブル16からもケーブルが出るため、測定対象物OBの内部への挿入がやりにくくなるというデメリットがあるが、回折環読取装置2を用意する必要がないというメリット及び測定結果を得るまでの時間を短縮できるというメリットがある。
また、上記実施形態においては、治具3は様々な径の管状物体の内部で回折環撮像装置本体5の位置を一定にできる構造のものにした。しかし、管状物体の内部の径が限られている場合は、治具としてそれぞれの管状物体の内部の径に合う円筒形状の外枠に、回折環撮像装置本体5を固定できる構造のものを複数用意し、管状物体の内部の径に合う治具を選択して使用するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、治具3は管状物体の内部に挿入し、回折環撮像装置本体5の位置を一定にできる構造のものにした。しかし、測定対象物OB内部の形状が管状物体の内部形状以外の形状である場合は、その形状に合った治具を使用すればよい。また、治具3にスペーサ等の適切な物体を取り付けることで、回折環撮像装置本体5の測定対象物OBの内部での位置を一定にできるならば、そのようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、回折環読取装置2はイメージングプレート15を回転させるとともにレーザ検出装置30を半径方向に送ることで、レーザ検出装置30からの集光したレーザ光を螺旋状にイメージングプレート15上を移動させ、反射光強度を回転角度と半径位置とともに検出する装置とした。しかし、集光したレーザ光が螺旋状にイメージングプレート15上を移動できれば、回折環読取装置2はどのような構造にしてもよい。例えば、回折環撮像装置本体5を取り付ける支持機構45を移動させる構造でもよいし、固定用ブロック46が固定棒47の長尺方向に伸縮する構造でもよい。
また、上記実施形態においては、コントローラ91に残留応力を計算する演算プログラムを備えた。しかし、X線回折測定に時間がかかってもよい場合は、コントローラ91は回折環の形状を検出するまでにし、別のコンピュータ装置に回折環の形状データと、距離L、X線入射角ψ及びその他計算に必要なパラメータとを入力して、残留応力を計算するようにしてもよい。この場合、別のコンピュータ装置にデータを入力する方法としては、記録媒体を介する方法、ネット回線等を使用して転送する方法等、様々な方法が考えられる。また、計算の一部または全部を人為的に行ってもよい。
また、上記実施形態においては、回折環読取装置2で読み取った回折環の形状から、残留応力を計算するとしたが、回折環の形状に基づく特性値であれば、計算するものはどのようなものでもよい。例えば、回折環の半価幅と測定対象物OBの表面硬さとの関係を予め記憶しておき、読み取った回折環の形状から半価幅の平均値を求め、求めた平均値を該記憶している関係に当てはめて測定対象物OBの表面硬さを求めるようにしてもよい。
1…回折環撮像装置、2…回折環読取装置、3…治具、5…回折環撮像装置本体、6…高電圧電源、7…ホルダ、8…上蓋、10…X線出射器、12…連結部、13…モータ固定プレート、15…イメージングプレート、16…テーブル、17…突出部、18…固定具、28a,27b,27a1,16a,17a,18a…貫通孔、20…ステージ移動機構、21…移動ステージ、22…フィードモータ、23…スクリューロッド、27…モータ、28…通路部材、29…固定板、30…レーザ検出装置、31…レーザ光源、36…対物レンズ、43…LED光源、45…支持機構、46…固定用ブロック、47…固定棒、50…押し当て部、51…伸縮パイプ、52…収納部、53…伸縮棒、58…ローラー、60…円柱状ボタン、61…固定リング、62…移動リング、64…ストッパ、65…バネ、66…固定用ブロック、67…長尺棒、68,69…取付リング、70…取っ手、90…コンピュータ装置、91…コントローラ、92…入力装置、93…表示装置、OB…測定対象物