JP2014016220A - X線回折測定装置及びx線回折測定システム - Google Patents

X線回折測定装置及びx線回折測定システム Download PDF

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Abstract

【課題】容易に測定対象物の角部近傍位置にX線を所定の角度で照射でき、角部近傍位置の残留応力を精度よく測定できるようにする。
【解決手段】 X線回折測定装置は、ケース10内に、X線出射器20、移動かつ回転可能なテーブル30、テーブル30に取付けられるイメージングプレート31及びレーザ検出装置50を収容させている。X線出射器20からのX線を測定対象物に照射し、測定対象物から出射された回折X線によってイメージングプレート31に回折環を形成させ、レーザ検出装置50によってイメージングプレート31上に形成された回折環の形状を読み取って、測定対象物の残留応力を検出する。ケース10の正面壁11と底面壁14は直交しており、底面壁14及び正面壁11をL字形状の測定対象物の水平面と垂直面にそれぞれ当接させたとき、水平面の角部近傍にX線が照射されるようにX線出射器20を配置する。
【選択図】図2

Description

本発明は、測定対象物にX線を照射して、測定対象物で回折したX線によりイメージングプレートの表面に回折環を形成し、形成した回折環を読取るX線回折測定装置と、X線回折測定装置を含みX線回折測定装置で読取った回折環を用いて測定対象物の残留応力を測定するX線回折測定システムに関する。
従来から、測定対象物の残留応力をX線回折により測定することはよく行われている。この残留応力の測定の分野においては、装置の小型化を図るとともに、X線の照射時間を短くすることが可能なX線回折測定装置が、例えば下記特許文献1に示されている。このX線回折測定装置においては、測定装置を測定対象物であるレール上の所望の位置に配置し、レールの延設方向を含みレールの上面に垂直な面内にて所定の入射角(30〜45度)でX線をレールの上面に照射し、レールの上面にて回折したX線(以下、このような測定対象物にて回折したX線を回折X線という)を感光性を有するイメージングプレートで受光して、イメージングプレート上に環状のX線回折像(以下、この環状のX線回折像を単に回折環という)を形成するようにしている。そして、イメージングプレートを前記測定装置から取り外して回折環読取り装置に装着し、イメージングプレート上に形成された回折環の形状を、cosα法を用いて分析してレール上面部のレール軸線方向の残留応力を計算するようにしている。
特開2005−241308号公報
残留応力の測定技術分野では、断面形状が90度の角度を有する測定対象物すなわち断面がL字形状の測定対象物における角部近傍位置の残留応力を測定することも要求される。特に、2枚の鉄製の金属板を90度の角度をもって交差させるとともに、その交差部分を溶接で接合して断面がL字形状の鉄製部品又は鉄製部材を生成した場合、溶接部近傍位置すなわち測定対象物の角部近傍位置の残留応力を測定することが要求される。しかしながら、前記のような要求に対しては、次のような問題がある。
まず、測定対象物が移動可能であれば、X線をいずれの方向からも照射することは可能であるが、測定対象物が移動不能である場合には、上記従来技術に示した回折環を形成して残留応力を測定するような小型のX線回折測定装置を用いる必要がある。しかしながら、上記従来技術に示したX線回折測定装置は、レールの軸線方向の残留応力を測定するもので、角部近傍位置の残留応力の測定には不向きである。すなわち、上記従来のX線回折測定装置においては、測定対象物の角部近傍位置に測定対象物の各面に対して所定の角度でX線を正確に照射できるようになっておらず、角部近傍位置の残留応力を測定するための回折環を精度よくイメージングプレートに形成することができない。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、容易に測定対象物の角部近傍位置に測定対象物の各面に対して所定の角度でX線を照射でき、測定対象物の角部近傍位置の残留応力を精度よく測定できるとともに、移動不能な測定対象物の角部近傍位置の残留応力を測定するために搬送可能な小型のX線回折測定装置を提供することにある。また、イメージングプレートにX線による回折環を形成できるとともに、回折環の形成されたイメージングプレートを取外すことなく、回折環の形状を同一装置内で測定できるようにしたX線回折測定装置を提供することにもある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器(20)と、中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブル(30)と、テーブルに取付けられて、中央部にてX線を通過させるとともに、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録す
るイメージングプレート(31)と、レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光をイメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によってイメージングプレートから出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置(50)と、テーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる回転機構(47)と、X線出射器からのX線をテーブル及びイメージングプレートを通過させるX線出射位置と、レーザ検出装置からのレーザ光をイメージングプレートに照射するレーザ光照射位置との間で、テーブルを移動させる移動機構(41〜43)と、X線出射器、テーブル、イメージングプレート、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を収容したケース(10)とを備え、X線出射器から出射されたX線をケースを通過させて測定対象物に照射し、X線の照射により測定対象物から出射された回折X線をケースを通過させてイメージングプレートに導くX線回折測定装置であって、ケースは、互いに直交する平板状の第1平面壁(14)及び第2平面壁(11)を有し、X線出射器から出射されるX線の光軸が第1平面壁及び第2平面壁にそれぞれ直交する面内に含まれ、かつ第1平面壁と第2平面壁の交差線の近傍位置に第2平面壁に対して第1の所定角度だけ傾いた方向からX線が出射されるように、X線出射器をケース内に配置し、互いに直交する一対の平面部(hp,vp)を有する測定対象物(OB)に対して、第1平面壁を一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、第2平面壁を前記一対の平面部の他方の平面部に当接させたとき、前記一方又は他方の平面部における一対の平面部の交差線の近傍位置に、一対の平面部の交差線に直交する方向からX線出射器からのX線が出射されるようにしたことにある。この場合、第1の所定角度は、35度から55度の範囲内にあるとよい。
上記のように構成した本発明によれば、互いに直交する一対の平面部を有する測定対象物すなわちL字形状の測定対象物が大きくて簡単に移動できない場合でも、上記のように構成したX線回折測定装置を搬送し、第1平面壁を一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、第2平面壁を一対の平面部の他方の平面部に当接させれば、前記一方又は他方の平面部における一対の平面部の交差線の近傍位置に、X線出射器からのX線が精度よく照射される。また、このX線の出射方向は、第2平面壁に当接させた平面部に対して第1の所定角度だけ傾いた方向であって一対の平面部の交差線に直交する方向となる。したがって、L字形状の測定対象物の角部近傍位置に、測定対象物の各面に対して所定の角度でX線を照射できる。これにより、本発明によれば、このX線の照射によってイメージングプレートに形成される回折環の形状を、レーザ検出装置から出力される受光信号を用いて読取れば、この読取った回折環の形状から、断面L字形状の測定対象物の角部近傍位置の残留応力であって、測定対象物の交差線と直交し、第1平面壁に平行な方向の残留応力を精度よく測定できるようになる。
また、本発明の他の特徴は、ケースは、さらに、第1平面壁に直交するとともに第2平面壁に対してケースの内側方向に第2の所定角度で傾斜した平板状の傾斜壁(17)を有し、第1平面壁を測定対象物の一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、傾斜壁を一対の平面部の他方の平面部に当接させたとき、前記一方又は他方の平面部における一対の平面部の交差線の近傍位置に、X線出射器から出射されるX線の光軸を含み第1平面壁に直交する平面が、一対の平面部の交差線に直交する面に対して第2の所定角度で交差する状態で、X線出射器からのX線が出射されるようにしたことにある。この場合、前記第2の所定角度は、20度から50度の範囲内にあるとよい。
前記のように構成した本発明の他の特徴によれば、第1平面壁を測定対象物の一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、傾斜壁を一対の平面部の他方の平面部に当接させれば、L字形状の測定対象物の一方又は他方の平面部における一対の平面部の交差線の近傍位置に、X線出射器から出射されるX線の光軸を含み第1平面壁に直交する平面が、一対の平面部の交差線に直交する面に対して第2の所定角度で交差する状態で、X線出射器からのX線が精度よく出射されることになる。したがって、この場合には、一対の平面部の交差線に直交し、第1平面壁に平行な方向の残留応力だけではなく、前記交差線の方向の残留応力成分を含む残留応力が測定され、測定された残留応力を用いて計算することにより、前記交差線の方向の残留応力も精度よく測定できるようになる。
また、本発明の他の特徴は、移動機構によるテーブルの移動方向は、第1平面壁と第2平面壁の交差線の方向であるとよい。これによれば、X線出射器、テーブル、イメージングプレート、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を収容したケースを長尺状に形成でき、ケースを単純な形状とすることができるとともに、ケース内に収容された各部品をコンパクトに配置できるため、ケースを小型にすることができる。
また、本発明の他の特徴は、ケースに、搬送用の取っ手(19)を設けたことにある。これによれば、X線回折測定装置を簡単に搬送及び移動できるようになる。
また、本発明の他の特徴は、さらに、イメージングプレートに形成された回折環を消去する回折環消去手段(63)を備えたことにある。これによれば、イメージングプレート上に形成されている回折環を簡単に消去して、新たな回折環をイメージングプレート上に形成することができ、X線の照射によるイメージングプレート上への回折環の形成を簡単に繰り返し行うことができる。
また、本発明の他の特徴は、ケースが互いに直交する平板状の第1平面壁及び第2平面壁を有するようにした前記X線回折測定装置に加えて、回転機構を制御してテーブルを回転させるとともに、移動機構を制御してテーブルを移動させながら、レーザ検出装置を制御してイメージングプレートの受光面にレーザ光を照射位置を検出しながら照射するとともにレーザ検出装置からの受光信号を入力して、前記検出した照射位置と前記入力した受光信号を処理してイメージングプレートに形成された回折環を読取る回折環読取手段(91,S200〜S248,S300〜S320)と、互いに直交する一対の平面部を有する測定対象物に対して、第1平面壁を一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、第2平面壁を一対の平面部の他方の平面部に当接させて、X線出射器からのX線の照射によりイメージングプレートに形成させた回折環を表すデータであって、回折環読取手段によって読取ったデータを用いて、一方又は他方の平面部における一対の平面部の交差線の近傍位置の残留応力であって、一対の平面部の交差線に直交し、第1平面壁に平行な方向の残留応力を計算する残留応力計算手段(91,S502)とを備えたことにある。これによれば、L字形状を有する測定対象物における角部近傍位置における角部の延設方向に直交し、第1平面壁に平行な方向の残留応力が精度よく得られる。
さらに、本発明の他の特徴は、ケースが、互いに直交する平板状の第1平面壁及び第2平面壁を有するとともに、第1平面壁に直交するとともに第2平面壁に対してケースの内側方向に第2の所定角度で傾斜した平板状の傾斜壁を有する前記X線回折測定装置に加えて、回転機構を制御してテーブルを回転させるとともに、移動機構を制御してテーブルを移動させながら、レーザ検出装置を制御してイメージングプレートの受光面にレーザ光を照射位置を検出しながら照射するとともにレーザ検出装置からの受光信号を入力して、前記検出した照射位置と前記入力した受光信号を処理してイメージングプレートに形成された回折環を読取る回折環読取手段(91,S200〜S248,S300〜S320)と、互いに直交する一対の平面部を有する測定対象物に対して、第1平面壁を一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、第2平面壁を一対の平面部の他方の平面部に当接させて、X線出射器からのX線の照射によりイメージングプレートに形成させた回折環を表すデータであって、回折環読取手段によって読取ったデータと、第1平面壁を一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、傾斜壁を一対の平面部の他方の平面部に当接させて、X線出射器からのX線の照射によりイメージングプレートに形成させた回折環を表すデータであって、回折環読取手段によって読取ったデータとを用いて、前記一方又は他方の平面部における一対の平面部の交差線の近傍位置の残留応力であって、一対の平面部の交差線に直交し、第1平面壁に平行な方向の残留応力及び前記交差線の方向の残留応力を計算する残留応力計算手段(91,S500〜S510)とを備えたことにある。これによれば、L字形状を有する測定対象物における角部近傍位置における角部の延設方向及び前記延設方向に直交する方向の残留応力が精度よく得られる。
(A)は本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の正面図であり、(B)は前記X線回折測定装置の上面図であり、(C)は前記X線回折測定装置の右側面図である。 図1の2−2線に沿って見たX線回折測定装置の断面図である。 図1の3−3線に沿って見たX線回折測定装置の断面図である。 図3の4−4線に沿って見たX線回折測定装置の断面図である。 X線回折測定装置を含むX線回折測定システムを示す全体概略ブロック図である。 図5のコントローラによって実行される回折環撮像プログラムを示すフローチャートである。 図5のコントローラによって実行される回折環読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。 前記回折環読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。 図5のコントローラによって実行される回折環形状検出プログラムを示すフローチャートである。 図5のコントローラによって実行される回折環消去プログラムを示すフローチャートである。 図5のコントローラによって実行される応力計算プログラムを示すフローチャートである。 (A)は第1の回折環測定工程において測定対象物上にX線回折測定装置を配置した上面図であり、(B)は第2の回折環測定工程において測定対象物上にX線回折測定装置を配置した上面図である。 イメージングプレートの移動限界位置からの移動距離と、イメージングプレートにおけるレーザ光の照射位置の半径方向距離(半径)との関係を説明するための図である。 読取りポイントの軌跡を説明する説明図である。 信号強度のピークを説明するための受光曲線の一例を示すグラフである。
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置について図1を用いて説明する。図1において、(A)は本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の正面図であり、(B)は前記X線回折測定装置の上面図であり、(C)は前記X線回折測定装置の右側面図である。
このX線回折測定装置は、ケース10を有する。ケース10は、平板状の正面壁11、裏面壁12、上面壁13、底面壁14、左側面壁15及び右側面壁16からなり、金属又は樹脂により直方体状に形成されている。すなわち、正面壁11と裏面壁12は平行であり、正面壁11及び裏面壁12は、上面壁13、底面壁14、左側面壁15及び右側面壁16と直交している。上面壁13と底面壁14も平行であり、上面壁13と底面壁14は、正面壁11、裏面壁12、左側面壁15及び右側面壁16と直交している。左側面壁15と右側面壁16も平行であり、左側面壁15と右側面壁16は、正面壁11、裏面壁12、上面壁13及び底面壁14と直交している。
正面壁11の右側端部と右側面壁16の正面側端部とには、正面壁11と右側面壁16とに挟まれた角部分を比較的大きく切欠くように形成した傾斜壁17が設けられている。傾斜壁17は、正面壁11の右側端部にて右側への延設方向から裏面壁12側方向すなわわちケース10の内側方向に30度傾斜させた平板状の部材である。すなわち、傾斜壁17は、正面壁11と150度の角度で交差し、右側面壁16と120度の角度で交差している。なお、この傾斜壁17は、上面壁13及び底面壁14とは90度の角度で交差している。
正面壁11及び傾斜壁17の下側端部と底面壁14の正面側端部とには、正面壁11と底面壁14とに挟まれた角部分を小さく切欠いた切欠き部18が設けられている。この切欠き部18も、平板状の部材であり、正面壁11及び底面壁14と135度の角度でそれぞれ交差している。この切欠き部18には、傾斜壁17の近傍位置にて、ケース10の内部と外部とを貫通させた長円状の貫通孔18aが設けられている。また、上面壁13の中央部分には、人間がX線回折測定装置を搬送可能とするための取っ手19が取り付けられている。
次に、ケース10内に収容されたX線回折測定装置の内部構成について、図2乃至図4を用いて説明する。図2は図1の2−2線に沿って見たX線回折測定装置の断面図であり、図3は図1の3−3線に沿って見たX線回折測定装置の断面図である。図4は、図3の4−4線に沿って見たX線回折測定装置の断面図である。
X線回折測定装置は、X線を出射するX線出射器20と、回折X線による回折環が形成されるイメージングプレート31を取り付けるためのテーブル30と、テーブル30を回転及び移動させるテーブル駆動機構40と、イメージングプレート31に形成された回折環を測定するためのレーザ検出装置50とをケース10内に収容している。
X線出射器20は、長尺状に形成され、ケース10内の裏面壁12と上面壁13とが交差する角部近傍位置にて左右方向に延設されてケース10に図示しない固定部材によって固定されており、後述する高電圧電源95からの高電圧の供給を受けてX線を出射する。このX線は、正面壁11と傾斜壁17とが交差する左右方向位置よりも若干だけ左側に位置する右側面壁16に平行な面内において、裏面壁12と上面壁13の交差点近傍位置と、正面壁11と底面壁14の交差点位置よりも僅かに後方位置とを結ぶ直線上の上方側位置から下方に向けて、正面壁11及び底面壁14に対して45度の角度をなす方向に出射される。このX線の光軸上には、前述した切欠き部18に形成した貫通孔18aが設けられており、このX線は貫通孔18aを介してケース10の内部から外部に出射される。すなわち、ケース10の底面壁14を測定対象物OBの上面に当接させてケース10を測定対象物OB上に載置した場合、X線出射器20から出射されたX線の光軸の測定対象物OBへの入射角(X線の光軸と測定対象物OBの法線とがなす角度)は、45度となる。また、X線出射器20は、図示しない冷却装置を備えている。
なお、測定対象物OBにX線を照射して回折環を形成する場合、図3に示すように、断面L字形状を有する測定対象物OBの垂直面vpに正面壁11を当接させ、水平面hpに底面壁14を当接させるようにケース10を位置させた際、X線は垂直面vpと水平面hpとに直交する面内にて、垂直面vpに近接する水平面hp上の位置に照射される必要があるので、X線照射器20から出射されるX線の光軸は右側面壁16に平行な面内(すなわち正面壁11及び底面壁14に直交する面内)にあり、かつX線は正面壁11と底面壁14との交差線よりも若干だけ裏面壁12側の位置に照射されるように、X線の出射方向を正確に設定しておく必要がある。
テーブル駆動機構40は、図示しない固定部材によってケース10内に固定され、X線出射器20の下方にて、移動ステージ41を備えている。移動ステージ41は、フィードモータ42及びスクリューロッド43により、正面壁11、裏面壁12、上面壁13及び底面壁14に対して平行な方向すなわち左側面壁15及び右側面壁16と直交する方向に移動可能となっている。フィードモータ42は、テーブル駆動機構40内に固定されていてケース10に対して移動不能となっている。スクリューロッド43は、X線出射器20から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されていて、その一端部がフィードモータ42の出力軸に連結されている。スクリューロッド43の他端部は、テーブル駆動機構40内に設けた軸受部44に回転可能に支持されている。また、移動ステージ41は、それぞれテーブル駆動機構40内にて固定された、対向する1対の板状のガイド45,45により挟まれていて、スクリューロッド43の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ42を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ42の回転運動が移動ステージ41の直線運動に変換される。フィードモータ42内には、エンコーダ42aが組み込まれている。エンコーダ42aは、フィードモータ42が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を出力する。
一対のガイド45,45の上端は、板状の上壁46によって連結されている。上壁46には、貫通孔46aが設けられていて、貫通孔46aには、X線出射器20の出射口21の先端部が挿入されている。なお、X線出射器20の出射口21の先端が移動ステージ41に当接しないように、X線出射器20及び移動ステージ41の位置が設定されている。
また、移動ステージ41には、スピンドルモータ47が組み付けられている。スピンドルモータ47内には、エンコーダ42aと同様のエンコーダ47aが組み込まれている。すなわち、エンコーダ47aは、スピンドルモータ47が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を出力する。さらに、エンコーダ47aは、スピンドルモータ47が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を出力する。
テーブル30は、円形状に形成され、スピンドルモータ47の出力軸の先端部に固定されている。テーブル30の中心軸と、スピンドルモータ47の出力軸の中心軸とは一致している。テーブル30は、下面中央部から下方へ突出した突出部32を有していて、突出部32の外周面には、ねじ山が形成されている。突出部32の中心軸は、スピンドルモータ47の出力軸の中心軸と一致している。テーブル30の下面には、イメージングプレート31が取付けられている。イメージングプレート31は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート31の中心部には、貫通孔31aが設けられていて、この貫通孔31aに突出部32を通し、突出部32にナット状の固定具33をねじ込むことにより、イメージングプレート31が、固定具33とテーブル30の間に挟まれて固定される。固定具33は、円筒状の部材で、内周面に、突出部32のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
イメージングプレート31は、フィードモータ42によって駆動されて、移動ステージ41、スピンドルモータ47及びテーブル30と共に原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。また、イメージングプレート31は、スピンドルモータ47によって駆動されて回転しながら、フィードモータ42によって駆動されて、移動ステージ41、スピンドルモータ47及びテーブル30と共に撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域内、及び回折環を消去する回折環消去領域内を移動する。なお、この場合のイメージングプレート31の移動においては、イメージングプレート31の中心軸が、X線出射器20から出射されたX線の光軸を含む、正面壁11、裏面壁12、上面壁13及び底面壁14と直交する平面すなわち左側面壁15及び右側面壁16に対して平行な平面内に保たれた状態で、前記X線の光軸と直交する方向に移動する。
また、移動ステージ41、スピンドルモータ47の出力軸、テーブル30、イメージングプレート31及び固定具33には、X線出射器20から出射されたX線を通過させる貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔の中心軸と、テーブル30の回転軸は一致している。すなわち、これらの貫通孔の中心軸と、X線出射器20から出射されるX線の光軸とが一致するとき、X線が測定対象物OBに照射されるようになっている。このように、X線を測定対象物OBに照射するときのイメージングプレート31の位置が、回折環撮像位置である。
フィードモータ42の下方には、測定対象物OBとイメージングプレート31間の距離を検出するための受光センサ35(例えば、X線CCD)が図示しない固定部材によって組み付けられている。受光センサ35は、測定対象物OBにて反射したX線を受光する複数の受光素子からなり、測定対象物OB及びイメージングプレート31からフィードモータ42側に充分離れている。これにより、イメージングプレート31が回折環撮像位置にあるとき、受光センサ35は、測定対象物OBにて反射したX線を直接受光できる。受光センサ35の受光面におけるX線の受光位置は、測定対象物OBの高さに対応している。言い換えれば、イメージングプレート31と測定対象物OBとの距離に対応している。受光センサ35は、それぞれの受光素子が受光した受光信号を出力する。
レーザ検出装置50は、回折環を撮像したイメージングプレート31にレーザ光を照射して、イメージングプレート31から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置50は、切欠き部18に設けた貫通孔18a及び回折環撮像位置にあるイメージングプレート31からフィードモータ42側に充分離れている。すなわち、イメージングプレート31が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置50によって遮られないようになっている。
次に、このレーザ検出装置50について説明する。レーザ検出装置50は、図5に破線で示すように、レーザ光源51、コリメートレンズ52、反射鏡53、偏光ビームスプリッタ54、1/4波長板55及び対物レンズ56を内蔵している。レーザ光源51は、イメージングプレート31に照射するレーザ光を出射する。コリメートレンズ52は、レーザ光源51から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡53は、コリメートレンズ52にて平行光に変換されたレーザ光を、偏光ビームスプリッタ54に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ54は、反射鏡53から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させて1/4波長板55に導く。1/4波長板55は、偏光ビームスプリッタ54から入射したレーザ光を直線偏光から円偏光に変換する。対物レンズ56は、1/4波長板55から入射したレーザ光をイメージングプレート31の表面に集光させる。この対物レンズ56から出射されるレーザ光の光軸は、X線出射器20から出射されたX線の光軸を含む正面壁11、裏面壁12、上面壁13及び底面壁14と直交する平面内すなわち左側面壁15及び右側面壁16に平行な平面内であって、前記X線の光軸に平行な方向、すなわち移動ステージ41の移動方向に対して垂直な方向である。
対物レンズ56には、フォーカスアクチュエータ57が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ57は、対物レンズ56をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ56は、フォーカスアクチュエータ57が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
対物レンズ56によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート31の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート31にレーザ光を照射すると、イメージングプレート31の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート31に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ56及び1/4波長板55を通過して、偏光ビームスプリッタ54にて反射する。偏光ビームスプリッタ54の反射方向には、集光レンズ58、シリンドリカルレンズ59及びフォトディテクタ60が設けられている。集光レンズ58は、偏光ビームスプリッタ54から入射した光を、シリンドリカルレンズ59に集光する。シリンドリカルレンズ59は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ60は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として出力する。
また、レーザ検出装置50は、集光レンズ61及びフォトディテクタ62を備えている。集光レンズ61は、レーザ光源51から出射されたレーザ光の一部であって、偏光ビームスプリッタ54を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ62の受光面に集光する。フォトディテクタ62は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ62は、レーザ光源51が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号を出力する。
また、対物レンズ56に隣接して、LED63が設けられている。LED63は、可視光を発して、イメージングプレート31に撮像された回折環を消去する。
また、ケース10内には、X線出射器20、テーブル駆動機構40及びレーザ検出装置50に接続されてそれらを作動制御したり、検出信号を入力したりするための電気制御装置70も内蔵されている。この電気制御装置70について図5を用いて説明する。図5において2点鎖線で囲んだ電気制御装置70は、図2及び図4にて2点鎖線で示すようにケース10内に納められている。ただし、図2及び図4においては、電気制御装置70とX線出射器20、テーブル駆動機構40及びレーザ検出装置50との接続線は省略されている。また、図5においては、ケース10は省略されている。
電気制御装置70は、以下に説明する回路を含む。X線制御回路71は、後述するコンピュータ装置90を構成するコントローラ91によって制御され、X線出射器20から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器20に供給する駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線制御回路71は、X線出射器20に内蔵された冷却装置に供給する駆動信号も制御する。これにより、X線出射器20の温度が一定に保たれる。なお、X線出射器20には高電圧電源95から高電圧が供給されるようになっているが、この高電圧電源95は電気制御装置70に含まれるものではない。
フィードモータ42内のエンコーダ42aには位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73が接続され、フィードモータ42にはフィードモータ制御回路73が接続されている。これらの位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ42を駆動して移動ステージ41をフィードモータ42側へ移動させる。位置検出回路72は、エンコーダ42aから出力されるパルス信号が入力されなくなると、移動ステージ41が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、フィードモータ42への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ41の原点位置とする。したがって、位置検出回路72は、移動ステージ41が図5の左方向に移動して移動限界位置に達したときに「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ41が移動限界位置から右方向へ移動するとき、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ41の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ42を正転又は逆転駆動する。位置検出回路72は、エンコーダ42aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路72は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ41の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラ91及びフィードモータ制御回路73に出力する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から入力した移動ステージ41の現在の位置が、コントローラ91から入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ42を駆動する。
また、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ41の移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ42aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ41の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ41の移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにフィードモータ42を駆動する。
スピンドルモータ47内のエンコーダ47aにはスピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75が接続され、スピンドルモータ47にはスピンドルモータ制御回路74が接続されている。これらのスピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75は、コントローラ91からの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から、スピンドルモータ47の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ47aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ47の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ91から入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ47に供給する。回転角度検出回路75は、エンコーダ47aから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ47の回転角度すなわちイメージングプレート31の回転角度θpを計算して、コントローラ91に出力する。そして、回転角度検出回路75は、エンコーダ47aから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0度の基準位置である。
受光センサ35には、センサ信号取出回路76が接続されている。センサ信号取出回路76は、コントローラ91からの指令により作動開始し、受光センサ35から入力した受光信号を用いて、受光センサ35の受光面における受光信号のピーク位置を検出して、ピーク位置に対応した受光位置を表す受光位置信号をコントローラ91に出力する。
レーザ光源51及びフォトディテクタ62には、レーザ駆動回路77が接続されている。レーザ駆動回路77は、コントローラ91によって制御され、フォトディテクタ62から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源51に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート31に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。
LED63には、LED駆動回路84が接続されている。LED駆動回路84は、コントローラ91によって制御され、LED63に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
フォトディテクタ60には、増幅回路78が接続されている。増幅回路78は、フォトディテクタ60から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成し、フォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路79は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路79は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート31の表面からのずれ量を表している。
フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ57を駆動して、対物レンズ56をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート31の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
SUM信号生成回路80は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート31にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート31にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート31に入射した回折X線の強度に相当する。A/D変換回路83は、コントローラ91によって制御され、SUM信号生成回路80からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をディジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図6乃至図10の各種プログラムを実行する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、測定者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、測定者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせる。高電圧電源95は、X線出射器20にX線出射のための高電圧を供給する。なお、本実施形態においては、ケース10及びケース10内に組み込まれた各種装置をX線回折測定装置と呼び、このX線回折測定装置にコンピュータ装置90及び高電圧電源95を加えたものをX線回折測定システムと呼ぶ。
次に、このX線回折測定システムにより、測定対象物OBの残留応力を測定する手順について説明する。測定対象物OBは、図3に2点鎖線及び図11に実線で示すように、断面が90度の角度を有するL字形状に形成されたものである。そして、この測定対象物OBにおいては、90度の角度をなす水平面hp及び垂直面vpを有する。この種の測定対象物OBは、2枚の鉄製の金属板を90度の角度をもって交差させるとともに、その交差部分を溶接で接合した断面L字形状の鉄製部品又は鉄製部材である。ただし、本発明は、溶接で2枚の金属板を接合した場合に限らず、金型、曲げ加工などにより、断面が90度の角度を有する断面L字形状に形成された鉄製部品又は鉄製部材にも適用される。また、ここで、測定されるべき残留応力は、水平面hpの角部近傍における残留応力であって、垂直面vpに直交する方向、すなわち角部の延設方向と直交し、水平面hpと平行な方向(以下、X方向という)の残留応力と、垂直面vpと水平面hpに平行な方向、すなわち角部の延設方向に平行な方向(以下、Y方向という)の残留応力とである。以下、この平面応力状態におけるX方向の残留応力をσxとし、Y方向の残留応力をσyとする。また、この平面応力状態のせん断の残留応力をτxyとする。
X方向の残留応力σxと、Y方向の残留応力σyを測定するために、第1及び第2の回折環測定工程により、第1及び第2の回折環をそれぞれ測定する必要がある。第1の回折環測定工程においては、図11(A)に示すように、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させてケース10を水平面hp上に載置するとともに、正面壁11を垂直面vpに当接させる。これにより、この場合には、X線は、図示1点鎖線矢印で示すように、水平面hpと垂直面vpとに直交する平面内にて、水平面hpに対して45度の角度すなわち入射角45度でX方向から水平面hpに照射される。また、第2の回折環測定工程においては、図11(B)に示すように、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させてケース10を水平面hp上に載置するとともに、傾斜壁17を垂直面vpに当接させる。これにより、この場合には、X線は、図示1点鎖線矢印で示すように、水平面hpに垂直かつ垂直面vpに対して60度をなす平面内にて、水平面hpに対して45度の角度、すなわち水平面hpにおいてX方向と30度の角度をなす方向に平行かつ水平面hpに垂直な面内にて水平面hpに対して45度の角度の方向から水平面hpに照射される。
第1及び第2の回折環測定工程においては、イメージングプレート31に回折環を形成するための回折環撮像工程、イメージングプレート31に形成された回折環を読取る回折環読取り工程、読取った回折環の形状を検出する回折環形状検出工程、及びイメージングプレート31に形成された回折環を消去する回折環消去工程がそれぞれ実行される。そして、応力計算工程において、第1及び第2の回折環測定工程によって検出された2つの回折環の形状を用いて、X方向及びY方向の残留応力σx,σyが計算される。
以下に、回折環撮像工程、回折環読取り工程、回折環形状検出工程及び回折環消去工程をそれぞれ含む第1及び第2の回折環測定工程、並びに応力計算工程について詳しく説明する。
まず、第1の回折環測定工程について説明すると、測定者は、取っ手19を持って回折環測定装置を搬送して、図11(A)に示すように、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させてケース10を水平面hp上に載置するとともに、正面壁11を垂直面vpに当接させる。そして、高電圧電源95をX線出射器20に接続するとともに、コンピュータ装置90を電気制御装置70に接続する。そして、測定者が、入力装置92を用いて、測定対象物OBの材質(例えば、鉄)を入力し、残留応力の測定開始を指示する。これにより、コントローラ91は、図6に示す回折環撮像プログラムの実行を開始する。
この回折環撮像プログラムは図6のステップS100にて開始され、コントローラ91は、ステップS102にて、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート31を低速回転させ、エンコーダ47aからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート31の回転を停止させる。これにより、測定開始時において、イメージングプレート31の回転角度が0度に設定される。次に、コントローラ91は、ステップS104にて位置検出回路72の作動を開始させ、ステップS106にて、フィードモータ制御回路73を制御し、フィードモータ42の作動を開始させるとともに、位置検出回路72との協働によりフィードモータ42の作動を停止させて、イメージングプレート31を回折環撮像位置まで移動させる。
次に、コントローラ91は、ステップS108にて、センサ信号取出回路76の作動を開始させる。次に、コントローラ91は、ステップS110にて、X線制御回路71を制御してX線出射器20にX線の出射を開始させる。これにより、X線が測定対象物OBに照射され、測定対象物OBの表面にて反射したX線が受光センサ35に受光される。次に、コントローラ91は、ステップS112にて、センサ信号取出回路76から受光位置信号を入力し、前記入力した受光位置信号を用いてイメージングプレート31と測定対象物OBとの距離Lを算出する。なお、この算出した距離Lは、後述する処理によって利用されるので、メモリに記憶しておく。そして、コントローラ91は、ステップS114にて、前記算出した距離Lが所定の基準範囲内にあるか否か判定する。距離Lが基準範囲内になければ、「No」と判定して、ステップS116にて、X線制御回路71を制御して測定対象物OBへのX線の照射を停止させる。
そして、コントローラ91は、ステップS118にて、表示装置93に、X線回折測定装置のセットが不適切である旨を表示する。そして、ステップS128にて、回折環撮像プログラムの実行を終了する。この場合、測定者は、X線回折測定装置を再度セットし直した後、入力装置92を用いて、再度、測定開始を指示する。上記のステップS110〜S116までの所要時間は僅かなので、イメージングプレート31には回折環が撮像されない。また、受光センサ35が測定対象物OBにて反射したX線を受光しない場合も、ステップS118にて、X線回折測定装置のセットが不適切である旨が表示される。この場合も、測定者は、X線回折測定装置をセットし直す。そして、前記測定開始の指示により、前述したステップS102〜S114の処理が再度実行され、距離Lが所定の基準範囲内になるまで前記処理が繰り返される。ただし、このようにステップS102〜S114の処理が繰り返し実行される場合には、ステップS102〜S108の処理は、実質的には不要である。
一方、ステップS114の判定処理時に、距離Lが所定の基準範囲内である場合には、コントローラ91は、ステップS114にて「Yes」と判定して、ステップS120に処理を進め、センサ信号取出回路76の作動を停止させる。そして、コントローラ91は、ステップS122にて時間計測を開始し、ステップS124にてイメージングプレート31にX線による回折環を形成するための所定の設定時間が経過したか否かを判定する。時間計測開始から所定の設定時間を経過していなければ、ステップS124にて「No」と判定して判定処理を実行し続ける。すなわち、コントローラ91は、時間計測開始から所定の設定時間を経過するまで待機する。そして、時間計測開始から所定の設定時間が経過すると、コントローラ91は、ステップS124にて「Yes」と判定して、ステップS126にてX線制御回路71を制御してX線出射器20によるX線の照射を停止させ、ステップS128にて回折環撮像プログラムの実行を終了する。
これにより、この状態では、測定対象物OBからの回折X線による回折環がイメージングプレート31に撮像されている。この場合、水平面hpと垂直面vpに直交する平面内にて入射角45度でX方向から水平面hpに照射されたX線により、イメージングプレート31に回折環が形成される。
前記回折環撮像プログラムの実行後、コントローラ91は、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの実行を開始する。この場合、コントローラ91は、この回折環読取りプログラムの実行に並行して、図8の回折環形状検出プログラムの実行をも開始する。回折環読取りプログラムの実行は図7AのステップS200にて開始され、コントローラ91は、ステップS202にて回折環基準半径R0を計算する。回折環基準半径R0は、測定対象物OBの残留応力が「0」である場合の回折環の半径である。回折環基準半径R0は、測定対象物OBの材質及びイメージングプレート31から測定対象物OBまでの距離Lに依存する。すなわち、残留応力が「0」であるので、回折角θxは材質(本実施形態では、鉄である)によって決定される。距離Lと回折環基準半径R0とは比例関係にあるので、予め材質ごとに、回折角θxを記憶しておけば、回折環基準半径R0を、R0=L・tan(θx)の演算によって算出できる。この計算された回折環基準半径R0はメモリに記憶される。
前記ステップS202の処理後、コントローラ91は、ステップS204にて、フィードモータ制御回路73に、イメージングプレート31を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72と協働してフィードモータ42を駆動制御して、イメージングプレート31を読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート31が読取り開始位置にある状態では、対物レンズ56の中心すなわちレーザ光の照射位置が前記計算した回折環基準半径R0よりも所定距離αだけ小さい位置に位置する。なお、所定距離αは、撮像した回折環の半径が回折環基準半径R0からずれる可能性のある距離よりもやや大きい距離である。これにより、後述の処理により、回折環の測定が回折環の充分に内側から開始されて、回折環が確実に検出される。
ここで、移動ステージ41の移動限界位置から図5の右方向への移動距離xを表す位置検出回路72からの位置信号と、イメージングプレート31の中心からレーザ光の照射位置(対物レンズ56の中心位置)までの距離(すなわちレーザ光の照射位置の半径r)との関係について説明しておく。移動ステージ41すなわちイメージングプレート31が移動限界位置にある状態においては、図12(A)に示すように、イメージングプレート31の中心から対物レンズ56の中心位置までの距離をRxとする。なお、この場合、対物レンズ56は前記イメージングプレート31の中心位置から図5にて左方向にあり、また前記距離Rxは予め測定されてコントローラ91に記憶されている。一方、図12(B)に示すように、イメージングプレート31を移動限界位置から図5の右方向へ距離xだけ移動させると、レーザ光の照射位置の半径rは、r=x+Rxで表される。この場合、距離xは、前述のように位置検出回路72から出力される位置信号によって示されるので、今後の処理において、レーザ光の照射位置の半径rは、位置検出回路72から出力される位置信号によって表された距離xに予め記憶されている値Rxを加算することになる。
そして、前記のように、イメージングプレート31を読取り開始位置へ移動させる場合には、図12(C)に示すように、レーザ光の照射位置は、回折環基準半径R0よりも所定距離αだけ内側に位置するので、この場合の半径rは距離R0−αに等しくなるはずである。したがって、イメージングプレート31を駆動限界位置から図5の右方向へ移動させる距離xは、x=R0−α−Rxに等しくなる。すなわち、前記ステップS204における読取り開始位置への移動処理においては、位置検出回路72から出力される位置信号により表される距離x(=R0−α−Rx)だけ、テーブル30を図5の右方向へ移動させればよい。
次に、コントローラ91は、ステップS206にて、スピンドルモータ制御回路74に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート31を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路74は、エンコーダ47aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート31が回転するようにスピンドルモータ47の回転を制御する。したがって、イメージングプレート31は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラ91は、ステップS208にて、レーザ駆動回路77を制御してレーザ光源51によるレーザ光のイメージングプレート31に対する照射を開始させる。
次に、コントローラ91は、ステップS210にて、フォーカスサーボ回路81に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路81は、増幅回路78及びフォーカスエラー信号生成回路79からのフォーカスエラー信号を用いて、ドライブ回路82を介してフォーカスアクチュエータ57を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。その結果、対物レンズ56が、レーザ光の焦点がイメージングプレート31の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。ステップS210の処理後、コントローラ91は、ステップS212にて、回転角度検出回路75及びA/D変換回路83の作動を開始させる。これにより、回転角度検出回路75は、スピンドルモータ47(イメージングプレート31)の基準位置からの回転角度θpをコントローラ91に出力し始め、A/D変換回路83は、SUM信号の瞬時値のディジタルデータをコントローラ91に出力し始める。
次に、コントローラ91は、ステップS214にて、フィードモータ制御回路73に対して、イメージングプレート31の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路73は、フィードモータ42を駆動制御して、イメージングプレート31を読取り開始位置から軸受部44側(図5の右方向)へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート31において、回折環基準半径R0から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で相対移動し始める。なお、この状態では、レーザ光の照射位置は、前記ステップS206,S214の処理により、相対的にイメージングプレート31上を螺旋状に回転している。
前記ステップS214の処理後、コントローラ91は、ステップS216にて、周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定する。周方向番号nは、イメージングプレート31における1回転をN個(所定の大きな値)で等分した周方向位置をそれぞれ表す「1」から最大値Nまで変化する整数である。半径方向番号mは、イメージングプレート31の内側から外側に向かう径方向位置をそれぞれ表し、イメージングプレート31が1回転するごとに「1」から「1」ずつ増加する値である。そして、これらの周方向番号n及び半径方向番号mにより、図13に示すように、イメージングプレート31上を螺旋状に移動する読取りポイントP(n,m)が示される。
次に、コントローラ91は、ステップS218にて、回転角度検出回路75がエンコーダ47aからのインデックス信号を入力したか否かを判定する。回転角度検出回路75がインデックス信号を入力していなければ、コントローラ91はステップS218にて「No」と判定して、ステップS218の判定処理を繰り返し実行し続ける。回転角度検出回路75がインデックス信号を入力すると、コントローラ91は、ステップS218にて「Yes」と判定して、ステップS220にて、回転角度検出回路75からイメージングプレート31の現在の回転角度θpを取り込む。
そして、コントローラ91は、ステップS222にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される回転角度(n−1)・θo(この場合、n=1であるので「0」)との差の絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、θoは、360度を周方向番号nの最大値Nで除した予め記憶されている所定値である。前記絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満でなければ、コントローラ91は、ステップS222にて「No」と判定してステップS220,S222の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラ91は、現在の回転角度θpが所定の回転角度(n−1)・θoにほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度(n−1)・θoにほぼ一致すると、コントローラ91は、ステップS222にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS224に進む。
ステップS224においては、コントローラ91は、A/D変換回路83からSUM信号を取り込んで、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。また、このステップS224においては、位置検出回路72からの位置信号を取り込んで、位置信号によって表される距離xに所定距離Rxを加算して半径rを計算して、読取りポイントP(n,m)の半径r(n,m)として前記信号強度S(n,m)に対応させてメモリに記憶する。これにより、イメージングプレート31の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対するX線回折光の強度を表す信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径を表す半径r(n,m)と共にメモリに記憶される。
次に、コントローラ91は、ステップS226にて、前記記憶した信号強度S(n,m)が、所定の基準値以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)が所定の基準値以上であれば、コントローラ91は、ステップS226にて「Yes」と判定して、ステップS230に進む。一方、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、コントローラ91は、ステップS226にて「No」と判定して、ステップS228にて、前記記憶した信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を消去した後、ステップS230に進む。この信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)の消去は、所定の基準値より小さな信号強度S(n,m)は回折X線強度の回折環半径方向のピーク位置の検出に不要であるからである。
ステップS230においては、コントローラ91は、周方向番号nに「1」を加算する。そして、コントローラ91は、ステップS232にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Nより大きいか、すなわちイメージングプレート31が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値N以下であるので、コントローラ91は、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS220に戻る。
そして、前述したステップS220〜S232の処理を、周方向番号nが値Nよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS220〜S232の繰り返し処理により、回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoにそれぞれ対応した所定角度θoごとの信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)がメモリに記憶される。ただし、この場合も、ステップS226,S228の処理により、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)は消去される。
このようなステップS220〜S232の循環処理により、周方向番号nが値Nよりも大きくなると、コントローラ91は、ステップS232にて「Yes」と判定して、ステップS234にて、後述の回折環形状検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラ91は、ステップS234にて「No」と判定し、ステップS236にて半径方向番号mに「1」を加算し(この場合、m=2になる)、ステップS228にて周方向番号nを「1」に戻す。そして、コントローラ91は、前述したステップS218〜S232の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoに対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)をメモリに記憶する。
そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS218〜S238の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoにそれぞれ対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)は消去される。
そして、前記回折環形状検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラ91は、ステップS234にて「Yes」と判定し、図7BのステップS240に進む。ここで、この回折環読取りプログラムと並行して実行されている回折環形状検出プログラムについて説明する。
回折環形状検出プログラムの実行は図8のステップS300にて開始され、コントローラ91は、ステップS302にて周方向番号nを「1」に初期設定する。なお、この周方向番号nは、回折環読取りプログラムの場合と同様に所定角度θoごとの周方向位置を示すものであるが、回折環読取りプログラムで用いられる周方向番号nとは独立したものである。
前記ステップS302の処理後、コントローラ91は、ステップS304にて、詳しくは後述するピーク半径rp(n)が存在するか、すなわちピーク半径rp(n)が検出済みであるかを判定する。この場合、ピーク半径rp(n)においては、検出されたピーク半径の回転角度が周方向番号nによって表される。ピーク半径rp(n)が検出済みであれば、コントローラ91は、ステップS304にて「Yes」と判定して、ステップS306にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS308にて周方向番号nが所定数より大きいか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値Nである。周方向番号nが所定数以下であれば、コントローラ91は、ステップS308にて「No」と判定してステップS304に戻る。
一方、ピーク半径rp(n)が未検出であれば、コントローラ91は、ステップS304にて「No」と判定して、ステップS310にて前記図7AのステップS224の処理によって記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)の数が所定数以上でなければ、コントローラ91は、ステップS310にて「No」と判定して、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。このステップS310の判定処理は、信号強度S(n,m)の数が少ない場合には後述するピーク検出処理を実行しても無駄であるからである。なお、前記図7のステップS228の処理によって消去された信号強度S(n,m)は、記憶した信号強度S(n,m)としてカウントされない。
一方、前記記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるときは、コントローラ91は、ステップS310にて「Yes」と判定して、ステップS312にて、ピークの有無を判定する。すなわち、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いて、SUM信号の値のピークの有無を判定する。具体的には、図14に示すように、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径r(n,m)を横軸に取り、その半径r(n,m)に対応させて信号強度S(n,m)を縦軸に取った受光曲線において、信号強度S(n,m)にピークが存在するか、すなわち信号強度S(n,m)が増加した後に減少したかを判定するとよい。そして、ピークが存在しなければ、コントローラ91は、ステップS312にて「No」と判定して、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。
このように、ステップS302〜S312を繰り返し実行している間に、並行して実行されている回折環読取りプログラムの処理により、さらに半径r(n,m)及び信号強度S(n,m)が取り込まれてメモリに次々に記憶されていく。このため、ステップS312にてピークが検出されるようになり、検出されると、コントローラ91は、ステップS312にて「Yes」と判定して、ステップS314にて、ピークの半径r(n,m)をピーク半径rp(n)としてメモリに記憶する。次に、コントローラ91は、ステップS316にて、取得したピーク半径rp(n)の数が所定数以上であるか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値Nである。そして、取得したピーク半径rp(n)の数が所定数より小さければ、コントローラ91は、ステップS316にて「No」と判定し、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。
このようにステップS302〜S316の処理を繰り返すことで、取得したピーク半径rp(n)の数が増えていき所定数に達すると、すなわち周方向の全ての読取りポイントP(n,m)にてピーク半径rp(n)が取得されると、コントローラ91は、ステップS316にて「Yes」と判定し、ステップS318にて回折環形状検出の終了を示す終了指令を出力する。そして、コントローラ91は、ステップS320にて回折環形状検出プログラムの実行を終了する。このような周方向の全ての読取りポイントP(n,m)におけるピーク半径rp(n)の検出により、回折環の形状が検出されたことになる。この第1の回折環測定工程におけるピーク半径rp(n)(n=1〜N)が、後述する応力計算工程で利用される回折環の形状を表す第1測定値である。
ここで、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの説明にふたたび戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラ91は、図7AのステップS234にて「Yes」と判定し、図7BのステップS240にて、フォーカスサーボ回路81に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラ91は、ステップS242にて、レーザ駆動回路77を制御して、レーザ光源51によるレーザ光の照射を停止させる。さらに、コントローラ91は、ステップS244にて、A/D変換回路83及び回転角度検出回路75の作動を停止させ、ステップS246にて、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ42の作動を停止させることにより、イメージングプレート31を停止させて、ステップS248にて回折環形状検出プログラムの実行を終了する。なお、この状態では、位置検出回路72の作動及びイメージングプレート31の回転は、以前と同様のまま継続されている。
次に、コントローラ91は、図9の回折環消去プログラムを実行する。回折環消去プログラムの実行は、ステップS400にて開始され、コントローラ91は、ステップS402にて、フィードモータ制御回路73に、イメージングプレート31を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72と協働してフィードモータ42を駆動制御して、イメージングプレート31を消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート31が消去開始位置にある状態では、LED63から出力される可視光の中心が前記計算した回折環基準半径R0よりも所定距離γだけ小さい位置に位置する。具体的には、この位置は、イメージングプレート31が駆動限界位置にある状態において、イメージングプレート31の中心からLEDの可視光の中心までの距離をRy’とすると、位置検出回路72から出力される位置がR0−γ−Ry’になる位置である。なお、所定距離γは、前記所定距離αよりも若干大きく、前記撮像された回折環の半径よりは余裕をもってずれた位置である。これにより、後述の処理により、前記撮像された回折環が確実に消去される。
次に、コントローラ91は、ステップS404にて、LED駆動回路84を制御してLED63による可視光のイメージングプレート31に対する照射を開始させる。次に、コントローラ91は、ステップS406にて、フィードモータ制御回路73に対して、イメージングプレート31の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路73は、フィードモータ42を駆動制御して、イメージングプレート31を消去開始位置から軸受部44側(図5の右方向)に一定速度で移動させる。これにより、LED63による可視光が、イメージングプレート31において、回転しながら、回折環基準半径R0から所定距離γ(γ>α)だけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。
前記ステップS406の処理後、コントローラ91は、ステップS408にて位置検出回路72からイメージングプレート31の位置を表す位置信号を入力し、ステップS410にて、イメージングプレート31の現在の位置が消去終了位置を超えているか否かを判定する。この終了位置は、回折環基準半径R0よりも所定距離γだけ大きな位置である。具体的には、位置検出回路72から出力される位置がR0+γ−Ry’になる位置である。そして、イメージングプレート31の現在の位置が消去終了位置を超えるまで、コントローラ91は、ステップS410にて「No」と判定して、ステップS408,S410の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート31に対し、前記回折環基準半径R0から所定距離γだけ内側から所定距離γだけ外側まで、LED63による可視光が照射されるので、前記回折X線によって形成された回折環は内側から徐々に消去されていく。
そして、イメージングプレート31の現在の位置が消去終了位置を超えると、コントローラ91は、ステップS410にて「Yes」と判定して、ステップS412にてフィードモータ制御回路73にイメージングプレート31の移動停止を指示し、ステップS414にてLED駆動回路84にLED63による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ42の作動を停止させることによりイメージングプレート31の移動を停止させる。LED駆動回路84は、LED63による可視光の照射を停止させる。この状態では、前記撮像された回折環は完全に消去されている。
前記ステップS414の処理後、コントローラ91は、ステップS416にて位置検出回路72の作動を停止させ、ステップS418にてスピンドルモータ制御回路74に対してイメージングプレート31の回転停止を指示する。この指示に応答して、スピンドルモータ制御回路74は、スピンドルモータ47の作動を停止させて、イメージングプレート31の回転を停止させる。前記イメージングプレート31の回転停止後、コントローラ91は、ステップS420にて回折環消去プログラムの実行を終了する。この回折環消去プログラムの実行終了をもって、第1の回折環測定工程が終了する。
次に、第2の回折環測定工程について説明すると、測定者は、取っ手19を持って回折環測定装置を移動させて、図11(B)に示すように、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させてケース10を水平面hp上に載置した状態で、傾斜壁17を垂直面vpに当接させる。そして、測定者は、入力装置92を用いて、残留応力の測定開始を指示する。これにより、コントローラ91は、上述した図6に示す回折環撮像プログラムの実行を開始する。その後、コントローラ91は、上述した図7A及び図7Bに示す回折環読取りプログラム及び図8に示す回折環形状検出プログラムを並行して実行するとともに、上述した図9に示す回折環消去プログラムを実行する。
この場合も、回折環撮像プログラムの実行により、測定対象物OBからの回折X線による回折環がイメージングプレート31に撮像されるが、この場合には、水平面hpと直交し、垂直面vpに対して60度をなす平面内にて、水平面hpに対して45度の角度、すなわち水平面hpにおいてX方向と30度の角度をなす方向に平行かつ水平面hpに垂直な面内にて水平面hpに対して45度の角度の方向から水平面hpに照射されたX線により、イメージングプレート31に回折環が形成される。そして、回折環読取りプログラム及び回折環形状検出プログラムの実行により、前記イメージングプレート31に形成された回折環の形状が検出される。すなわち、周方向の全ての読取りポイントP(n,m)におけるピーク半径rp(n)が取得される。この第2の回折環測定工程におけるピーク半径rp(n)(n=1〜N)が、後述する応力計算工程で利用される回折環の形状を表す第2測定値である。その後、回折環消去プログラムの実行により、前記イメージングプレート31に撮像された回折環が、LED63からの可視光の照射により、完全に消去される。そして、この回折環消去プログラムの実行終了をもって、第2の回折環測定工程が終了する。
次に、応力計算工程について説明する。測定者は、入力装置92を用いて応力計算プログラムの実行をコントローラ91に指示する。応力計算プログラムは図10に示されており、コントローラ91は、この応力計算プログラムの実行をステップS500にて開始する。この応力計算プログラムの実行開始後、コントローラ91は、ステップS502にて、上記第1の回折環測定工程で検出した第1測定値である回折環の形状を表すピーク半径rp(n)(n=1〜N)を用いて、すなわちピーク半径rp(n)(n=1〜N)及びそれに対応した回転角度(n−1)θo(n=1〜N)を用いて、入射角45度でX方向から測定対象物OBの水平面hpに入射させたX線による上述したX方向の残留応力σxをcosα法を用いて計算する。次に、コントローラ91は、ステップS504にて、前記第1の測定値であるピーク半径rp(n)(n=1〜N)及びそれに対応した回転角度(n−1)θo(n=1〜N)を用いて、入射角45度でX方向から測定対象物OBの水平面hpに入射させたX線による上述したせん断の残留応力τxyをcosα法を用いて計算する。
さらに、コントローラ91は、ステップS506にて、上記第2の回折環測定工程で検出した第2測定値である回折環の形状を表すピーク半径rp(n)(n=1〜N)を用いて、すなわちピーク半径rp(n)(n=1〜N)及びそれに対応した回転角度(n−1)θo(n=1〜N)を用いて、水平面hpにおいてX方向と角度θをなす方向に平行かつ水平面hpに垂直な面内にて水平面hpに対して45度の角度で入射させたX線による、XY平面においてX方向とθの角度をなす方向の残留応力σθをcosα法を用いて計算する。なお、この実施形態では、θは傾斜壁17の正面壁11に対する角度であって、30度である。また、cosα法による残留応力σx,τxy,σθ(σ30)の計算に関しては、例えば特開2005−241308号公報及び非特許文献である「残留応力のX線評価 −基礎と応用−」(2006年7月29日
(株)養賢堂発行)の第317頁及び第318頁に記載されている周知の技術事項であるので、詳しい説明を省略する。
前記ステップS506の処理後、コントローラ91は、ステップS508にて、前記残留応力σx,τxy,σθ(σ30)を用いて、上述したY方向の残留応力σyを計算する。
ここで、残留応力σx,τxy,σyと、残留応力σθとの関係について説明しておく。前述のような平面応力状態をテンソルで表すと、下記数1のように表される。
Figure 2014016220
前記数1で表されたテンソルをコーシーの定理で座標変換したX方向から角度θだけ傾いた方向の残留応力は、前記計算した残留応力σθに等しいので、下記数2が成立する。
Figure 2014016220
そして、前記数2は下記数3のように変形され、残留応力σyは残留応力σx,τxy,σy,σθを用いて下記数4のように表される。
Figure 2014016220
Figure 2014016220
ふたたび、図10のステップS508の説明に戻ると、前記角度θは本実施形態では30度であるので、前記ステップS508においては、前記数4において、角度θに30度を代入するとともに、前記ステップS502〜S506で計算した残留応力σx,τxy,σθ(σ30)を代入すれば、残留応力σyが計算される。前記残留応力σyの計算後、コントローラ91は、ステップS510にて応力計算プログラムの実行を終了する。そして、この応力計算プログラムの実行終了をもって、応力計算工程が終了する。
このように、上記実施形態によれば、容易に断面L字形状を有する測定対象物OBの角部近傍位置に所定の角度でX線を照射でき、測定対象物OBの水平面hpの角部近傍位置おけるX方向の残留応力σx、Y方向の残留応力σy、及びせん断の残留応力τxyを測定できるので、L字形状を有する測定対象物OBの角部近傍位置の検査を精度よく行うことができる。特に、交差部分を溶接で接合した断面がL字形状の鉄製部品又は鉄製部材の検査を精度よく行うことができる。
また、上記説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、互いに直交する水平面hp及び垂直面vpを有する測定対象物OBすなわち断面L字形状の測定対象物OBが大きく容易に移動できない場合でも、取っ手19を持ってX線回折測定装置を搬送し、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させるとともに、正面壁11を測定対象物OBの垂直面vpに当接させ、図6の回折環撮像プログラムを実行させれば、水平面hpにおける角部近傍位置に、角部の延設方向に直交し、水平面hpに対して所定の角度をなす方向から、X線出射器10からのX線が精度よく照射されて、イメージングプレート31には精度のよい回折環が形成される。また、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させるとともに、傾斜壁17を一対の測定対象物OBの垂直面vpに当接させ、図6の回折環撮像プログラムを実行させれば、水平面hpにおける角部近傍位置に、水平面hp及び垂直面vpに直交する面に対して所定角度(本実勢形態では、30度)をなす面内において水平面hpに対して所定の角度をなす方向からX線出射器10からのX線が精度よく出射されて、イメージングプレート31には精度のよい回折環が形成される。すなわち、測定者は、簡単な操作で測定対象物OBの角部近傍位置に測定対象物OBの各面に対して所定の角度でX線を照射でき、イメージングプレート31に高精度の回折環を形成できる。
そして、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラム及び図8の回折環形状検出プログラムの実行により、前記のようにしてイメージングプレート31に形成された回折環の形状を検出し、図10の応力計算プログラムを実行させれば、L字形状の測定対象物OBの角部近傍位置における測定対象物OBの角部の延設方向と直交し、水平面hpに平行な方向の高精度の残留応力σxが計算されるとともに、前記角部近傍位置における測定対象物OBの交差線方向の高精度の残留応力σyが計算される。その結果、上記実施形態によれば、簡単な操作で所定の方向からX線を照射できるとともに、L字形状の測定対象物OBの角部近傍の残留応力σx,σyを精度よく測定できるようになる。
また、上記実施形態によれば、テーブル30を正面壁11、裏面壁12、上面壁13及び底面壁15と平行に移動させるようにしたので、X線出射器10、テーブル30、イメージングプレート31、レーザ検出装置50などを収容したケース10を簡単な直方体形状にすることできるとともに、ケース10内に収容された前記各部品をコンパクトに配置できるため、ケース10を小型にすることができる。
また、上記実施形態によれば、ケース10に、搬送用の取っ手19を設けたので、X線回折測定装置の搬送、移動などが容易になる。また、上記実施形態によれば、図9の回折環消去プログラムの実行により、イメージングプレート31に形成された回折環をLED63から可視光で消去するようにしたので、イメージングプレート31上に形成されている回折環を簡単に消去して、新たな回折環をイメージングプレート31上に形成することができ、X線の照射によるイメージングプレート31上への回折環の形成を簡単に繰り返し行うことができる。
なお、上記説明においては、断面L字形状を有する測定対象物OBの水平面hpの角部近傍位置におけるX方向の残留応力σx、Y方向の残留応力σy、及びせん断の残留応力τxyを測定するようにしたが、断面L字形状を有する測定対象物OBの垂直面vpの角部近傍位置におけるX方向の残留応力σx、Y方向の残留応力σy、及びせん断の残留応力τxyを測定することもできる。この場合、第1の測定工程においては、ケース10の底面壁14を測定対象物OBの垂直面vpに当接させ、かつ正面壁11を測定対象物OBの水平面hpに当接させ、また第2の測定工程においては、ケース10の底面壁14を測定対象物OBの垂直面vpに当接させるとともに、傾斜壁17を測定対象物OBの水平面hpに当接させればよい。これによれば、X線照射器20からのX線は断面L字形状を有する測定対象物OBの垂直面vpの角部近傍位置に所定の方向から照射されるので、上記説明の水平面hpと同様に垂直面vpの残留応力の測定が可能となる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、正面壁11、底面壁14及び傾斜壁17の全体を平板状に形成するようにした。しかし、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させるとともに、正面壁11及び傾斜壁17を測定対象物OBの垂直面vpに当接させたり、底面壁14を測定対象物OBの垂直面vpに当接させるとともに、正面壁11及び傾斜壁17を測定対象物OBの水平面hpに当接させたりすることが可能であればよいので、正面壁11、底面壁14又は傾斜壁17の一部に凹部を設けたり、穴を設けたりしてもよい。
また、上記実施形態においては、平板状の正面壁11、裏面壁12、上面壁13、底面壁14、左側面壁15、右側面壁16及び傾斜壁17からなるケース10の形状を直方体形状にした。しかし、X線出射器10による測定対象物OBのX線の照射のためには、正面壁11、傾斜壁17及び底面壁14が平面状であり、正面壁11及び傾斜壁17が底面壁14に対してそれぞれ直交しており、かつ傾斜壁17が正面壁11に対してケース10の内側方向に所定角度(本実施形態では、30度)で傾斜していればよい。したがって、ケース10の他の部分である裏面壁12、上面壁13、左側面壁16及び右側面壁17に関しては、平面状でなくてもよく、それに伴い、ケース10も特に直方体形状でなくてもよい。
また、上記実施形態においては、正面壁11と傾斜壁17とがなす角度すなわち角度θを30度にしたが、これは、上記数4のsin2θ,sin2θ,cos2θの計算が簡単になり、上記数4の計算を簡単に行えるようにするためである。しかし、上記数4を用いれば、残留応力σyの計算はいかなる角度でも可能であるので、前記正面壁11と傾斜壁17とがなす角度θは適宜設定できる。この場合、前記角度θが大きすぎると、傾斜壁17にテーブル30及びイメージングプレート31が当たってしまう。また、前記角度θが小さすぎると、上記数4によって計算される残留応力σyの精度が悪くなるので、前記角度θは20〜50度の範囲にあるとよい。
また、上記実施形態においては、X線の照射方向をケース10の底面壁14に対して45度に設定したが、回折X線が正面壁11、底面壁14及び傾斜壁17によって遮られなければ、45度とは異なる角度にしてもよい。測定対象物OBが鉄製部品又は鉄製部材であれば、照射したX線に対する回折X線の角度は24度程度であるので、回折X線が正面壁11及び底面壁14に近づき過ぎないことを考慮して、X線の照射方向はケース10の底面壁14に対して35〜55度の範囲内の角度に設定すればよい。
また、上記実施形態においては、X線出射器20から出射されてテーブル30及びイメージングプレート31を介したX線が、正面壁11と底面壁14の交差線よりも僅かに裏面壁12側の位置を通過するようにした。しかし、これに代えて、前記X線が、正面壁11と底面壁14の交差線よりも僅かに上面壁13側の位置を通過するようにしてもよい。この場合、ケース10の底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させ、かつ正面壁11を測定対象物OBの垂直面vpに当接させたとき、またケース10の底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させ、傾斜壁17を測定対象物OBの垂直面vpに当接させたとき、X線の測定対象物OBに対する出射位置は、測定対象物OBの角部近傍位置の垂直面vpに照射され、垂直面vpの角部近傍位置の残留応力が測定されることになる。ただし、この場合には、傾斜壁17を測定対象物OBの垂直面vpに当接させたときの、X線の垂直面vpとなす角度及びX線の光軸を含み垂直面vpと直交する面の水平面hpの法線方向となす角度は、X線の光軸の正面壁11となす角度θ1及び傾斜壁17の正面壁11となす角度θ2とを等しくならず、角度θ1及び角度θ2から計算により算出する必要がある。
また、この場合にも、上述した上記実施形態に係るX線回折測定装置を用いて垂直面vpの角部近傍位置の残留応力の測定の場合と同様に、ケース10の底面壁14を測定対象物OBの垂直面vpに当接させ、かつ正面壁11を測定対象物OBの水平面hpに当接させたとき、またケース10の底面壁14を測定対象物OBの垂直面vpに当接させ、かつ傾斜壁17を測定対象物OBの水平面hpに当接させたとき、X線照射器20からのX線は測定対象物OBの水平面hpの角部近傍位置に照射されるので、水平面hpの角部近傍位置の残留応力の測定が可能となる。そして、この場合にも、傾斜壁17を測定対象物OBの水平面hpに当接させたときの、X線の水平面hpとなす角度及びX線の光軸を含み水平面hpと直交する面のX方向となす角度は、前記角度θ1及び角度θ2から計算により算出する必要がある。
また、上記実施形態においては、L字形状の測定対象物OBの角部近傍位置における測定対象物OBの交差線方向と直交し、水平面hpに平行な方向の残留応力σxと、前記角部近傍位置における測定対象物OBの交差線方向の残留応力σyとを測定するようにした。しかし、前記角部近傍位置における測定対象物OBの交差線方向の残留応力σyの測定が不要であれば、底面壁14を測定対象物OBの水平面hpに当接させるとともに、傾斜壁17を一対の測定対象物OBの垂直面vpに当接させて、イメージングプレート31に回折環を形成させる必要がない。したがって、この場合には、ケース10に傾斜壁17を設ける必要はない。また、この場合には、図10のステップS504〜S508の処理も不要となる。
また、上記実施形態においては、回折環の形状を測定するために、イメージングプレート31の回転角度が所定の回転角度になるごとに、信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を記憶するようにした。しかし、これに代えて、所定の時間間隔で、イメージングプレート31の回転角度θ(n,m)、信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を取得して記憶してもよい。
また、上記実施形態においては、受光センサ35の受光位置を用いて、撮像した回折環の半径が回折環基準半径R0からずれる可能性のある領域を想定して、読取り開始位置を決定するようにした。しかし、回折環基準半径R0を用いることなく、常に一定の領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート31の全領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。また、LED63による可視光の照射についても同様に、常に一定の領域にLED63から発せられた可視光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート31の全領域にLED63からの可視光を照射するようにしてもよい。ただし、この場合、上記実施形態の場合よりも測定時間が長くなる。
また、上記実施形態においては、レーザ検出装置50は、フォーカスサーボ制御されるようにしたが、イメージングプレート31を回転させた際のイメージングプレート31の受光面と対物レンズ56との距離の変動が微小であれば、フォーカスサーボ制御は不要である。
また、上記実施形態においては、イメージングプレート31に照射されるレーザ光は、一定強度のレーザ光としたが、これに代えて、予め設定されたハイレベルの強度と、予め設定されたローレベルの強度が繰り返されるパルス状のレーザ光とし、ハイレベルの強度になるタイミングでSUM信号の瞬時値を取得するようにしてもよい。この場合、イメージングプレート31のSUM信号の瞬時値を取得するポイントに瞬間的にハイレベルの強度のレーザ光を照射する。すなわち、SUM信号の瞬時値を取得するポイントにレーザ光が向かう状態では、レーザ光の強度はローレベルであり、輝尽発光により発生する光はほとんど無い。そして、SUM信号の瞬時値を取得するポイントに近づいたとき、レーザ光の強度がハイレベルになって輝尽発光による光が発生する。常にハイレベルの強度のレーザ光を照射した場合は、輝尽発光による光が生じ続けることで光の強度が減少するが、上記のように構成すれば、輝尽発光によって大きな強度の光を利用して、SUM信号の瞬時値を取得することができる。
10…ケース、11…正面壁、12…裏面壁、13…上面壁、14…底面壁、15…左側面壁、16…右側面壁、17…傾斜壁、19…取っ手、20…X線出射器、30…テーブル、31…イメージングプレート、35…受光センサ、40…テーブル駆動機構、41…移動ステージ、42…フィードモータ、43…スクリューロッド、47…スピンドルモータ、50…レーザ検出装置、63…LED,70…電気制御装置、71…X線制御回路、72…位置検出回路、73…フィードモータ制御回路、74…スピンドルモータ制御回路、75…回転角度検出回路、76…センサ信号取出回路、77…レーザ駆動回路、80…SUM信号生成回路、84…LED駆動回路、90…コンピュータ装置、91…コントローラ

Claims (9)

  1. 測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
    中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
    前記テーブルに取付けられて、中央部にてX線を通過させるとともに、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録するイメージングプレートと、
    レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光を前記イメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によって前記イメージングプレートから出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
    前記テーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる回転機構と、
    前記X線出射器からのX線を前記テーブル及び前記イメージングプレートを通過させるX線出射位置と、前記レーザ検出装置からのレーザ光を前記イメージングプレートに照射するレーザ光照射位置との間で、前記テーブルを移動させる移動機構と、
    前記X線出射器、前記テーブル、前記イメージングプレート、前記レーザ検出装置、前記回転機構及び前記移動機構を収容したケースとを備え、
    前記X線出射器から出射されたX線を前記ケースを通過させて測定対象物に照射し、前記X線の照射により測定対象物から出射された回折X線を前記ケースを通過させて前記イメージングプレートに導くX線回折測定装置であって、
    前記ケースは、互いに直交する平板状の第1平面壁及び第2平面壁を有し、
    前記X線出射器から出射されるX線の光軸が前記第1平面壁及び第2平面壁にそれぞれ直交する面内に含まれ、かつ前記第1平面壁と前記第2平面壁の交差線の近傍位置に前記第2平面壁に対して第1の所定角度だけ傾いた方向からX線が出射されるように、前記X線出射器を前記ケース内に配置し、
    互いに直交する一対の平面部を有する測定対象物に対して、前記第1平面壁を前記一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、前記第2平面壁を前記一対の平面部の他方の平面部に当接させたとき、前記一方又は他方の平面部における前記一対の平面部の交差線の近傍位置に、前記一対の平面部の交差線に直交する方向から前記X線出射器からのX線が出射されるようにようにしたX線回折測定装置。
  2. 請求項1に記載のX線回折測定装置において、
    前記ケースは、さらに、前記第1平面壁に直交するとともに前記第2平面壁に対して前記ケースの内側方向に第2の所定角度で傾斜した平板状の傾斜壁を有し、
    前記第1平面壁を前記測定対象物の一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに前記傾斜壁を前記一対の平面部の他方の平面部に当接させたとき、前記一方又は他方の平面部における前記一対の平面部の交差線の近傍位置に、前記X線出射器から出射されるX線の光軸を含み前記第1平面壁に直交する平面が、前記一対の平面部の交差線に直交する面に対して前記第2の所定角度で交差する状態で、前記X線出射器からのX線が出射されるようにしたX線回折測定装置。
  3. 前記第2の所定角度は20度から50度の範囲内にある請求項2に記載したX線回折測定装置。
  4. 前記第1の所定角度は35度から55度の範囲内にある請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載したX線回折測定装置。
  5. 前記移動機構によるテーブルの移動方向は、前記第1平面壁と前記第2平面壁の交差線の方向である請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載したX線回折測定装置。
  6. 前記ケースに、搬送用の取っ手を設けた請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載したX線回折測定装置。
  7. 請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載したX線回折測定装置において、さらに
    前記イメージングプレートに形成された回折環を消去する回折環消去手段を備えたX線回折測定装置。
  8. 請求項1に記載のX線回折測定装置に加えて、
    前記回転機構を制御して前記テーブルを回転させるとともに、前記移動機構を制御して前記テーブルを移動させながら、前記レーザ検出装置を制御して前記イメージングプレートの受光面にレーザ光を照射位置を検出しながら照射するとともに前記レーザ検出装置からの受光信号を入力して、前記検出した照射位置と前記入力した受光信号を処理して前記イメージングプレートに形成された回折環を読取る回折環読取手段と、
    互いに直交する一対の平面部を有する測定対象物に対して、前記第1平面壁を前記一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、前記第2平面壁を前記一対の平面部の他方の平面部に当接させて、前記X線出射器からのX線の照射により前記イメージングプレートに形成させた回折環を表すデータであって、前記回折環読取手段によって読取ったデータを用いて、前記一方又は他方の平面部における前記一対の平面部の交差線の近傍位置の残留応力であって、前記一対の平面部の交差線に直交し、前記第1平面壁に平行な方向の残留応力を計算する残留応力計算手段とを備えたX線回折測定システム。
  9. 請求項2に記載のX線回折測定装置に加えて、
    前記回転機構を制御して前記テーブルを回転させるとともに、前記移動機構を制御して前記テーブルを移動させながら、前記レーザ検出装置を制御して前記イメージングプレートの受光面にレーザ光を照射位置を検出しながら照射するとともに前記レーザ検出装置からの受光信号を入力して、前記検出した照射位置と前記入力した受光信号を処理して前記イメージングプレートに形成された回折環を読取る回折環読取手段と、
    互いに直交する一対の平面部を有する測定対象物に対して、前記第1平面壁を前記一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、前記第2平面壁を前記一対の平面部の他方の平面部に当接させて、前記X線出射器からのX線の照射により前記イメージングプレートに形成させた回折環を表すデータであって、前記回折環読取手段によって読取ったデータと、前記第1平面壁を前記一対の平面部の一方の平面部に当接させるとともに、前記傾斜壁を前記一対の平面部の他方の平面部に当接させて、前記X線出射器からのX線の照射により前記イメージングプレートに形成させた回折環を表すデータであって、前記回折環読取手段によって読取ったデータとを用いて、前記一方又は他方の平面部における前記一対の平面部の交差線の近傍位置の残留応力であって、前記一対の平面部の交差線に直交し、前記第1平面壁に平行な方向の残留応力及び前記交差線の方向の残留応力を計算する残留応力計算手段とを備えたX線回折測定システム。
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