本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの構成について図1乃至図5を用いて説明する。図1はX線回折測定システムの全体構成を示しており、図2はX線回折測定装置のケース10内を拡大して示しているが、図1では、測定対象物(鉄管)を回転させる回転装置100及びX線回折測定装置を移動させる移動装置110の一部が省略されている。図3は回転装置100及び移動装置110をX線回折測定装置の移動方向から見た図であり、図4は回転装置100及び移動装置110をX線回折測定装置の移動方向に垂直な方向から見た図である。図5は、ケース10の下面壁12、切欠き正面壁18、第1及び第2切欠き下面壁17,19を省略した状態で、X線回折測定装置を下方から見た図である。測定対象物は、本実施形態では、ショットピーニング処理、溶接処理などを終えた大型の鉄管OBであり、X線回折測定システムは、この大型の鉄管OBの内側部分にX線を連続的に照射しながらX線の照射位置を変化させ、鉄管OBの異常個所を検出することを目的としている。
X線回折測定装置は、ケース10内に収容されたX線出射器20、テーブル装置30、レーザ検出装置40、移動装置70及び消去用光照射装置80を備えている。また、ケース10内には、X線出射器20、テーブル装置30、レーザ検出装置40、移動装置70及び消去用光照射装置80に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1においてケース10外に示された2点鎖線で示された各種回路は、ケース10内の2点鎖線内に納められている。このようなX線回折測定装置は、鉄管OBの内部に配置される。なお、図1及び図2においては、回路基板、電線、固定具、空冷ファンなどは省略されている。
ケース10は、平板部材からなる上面壁11、下面壁12、正面壁13、裏面壁14、左側面壁15及び右側面壁16によってほぼ直方体状に形成されていて、内部に空間を有する。なお、図1及び図2においては、左側面壁15は省略されている。ケース10の下面壁12と正面壁13の角部(図示右下部)は段差をつけて切欠かれていて、前記角部には、上面壁11及び下面壁12に平行かつ正面壁13、裏面壁14、左側面壁15及び右側面壁16に垂直な平板部材からなる第1切欠き下面壁17が設けられているとともに、正面壁13及び裏面壁14に平行かつ上面壁11、下面壁12、切欠き下面壁17、左側面壁15及び右側面壁16に垂直な平板部材からなる切欠き正面壁18が設けられている。さらに、第1切欠き下面壁17と切欠き正面壁18の角部には、第1切欠き下面壁17に連結されて、第1切欠き下面壁17に平行かつ段差を持つ第2切欠き下面壁19が設けられている。
第1切欠き下面壁17における左側面壁15と右側面壁16との間の中央位置には、左側面壁15及び右側面壁16に対して平行な方向(正面壁13、裏面壁14及び切欠き正面壁18に対して直交する方向)に延設されて、切欠き下面壁17を貫通する長尺状かつ直線状の1本のスリット17aが設けられている。この切欠き下面壁17が本発明の遮蔽部材を構成する。また、第2切欠き下面壁19には、X線出射器20から出射されるX線を鉄管OBの内側面に向けて出射するための円形の貫通孔19aが設けられている。
X線出射器20は、長尺状に形成され、ケース10内の上部にて上面壁11、下面壁12、左側面壁15、右側面壁16、第1切欠き下面壁17及び第2切欠き下面壁19に平行に延設されてケース10に固定されており、X線を下方に向けて出射口21から出射する。このX線出射器20の出射口21は第2切欠き下面壁19に設けた貫通孔19aに対向する位置に配置されており、出射されたX線の光軸は、ケース10の第1及び第2切欠き下面壁17,19に対して垂直である。そして、下面壁12、第1切欠き下面壁17及び第2切欠き下面壁19を水平面に対して傾けてケース10を鉄管OB内に配置した状態では、鉄管OBの内側面に対して所定の入射角度(X線の光軸と鉄管OBの内側面の測定箇所の法線とがなす角度)で、X線が鉄管OBの内側面に照射されるようになっている。この所定角度は、例えば、30度乃至45度の範囲内の角度であることが望ましい。
このX線出射器20には、X線出射器20を作動させるための高電圧の電力を供給するための高電圧電源22が接続されているとともに、X線出射器20の作動を制御するためのX線制御回路23が接続されている。X線制御回路23は、後述するコンピュータ装置90を構成するコントローラ91によって制御され、X線出射器20から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器20に供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器20は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路23は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。これにより、X線出射器20の温度が一定に保たれる。
テーブル装置30は、スピンドルモータ31、テーブル32及びイメージングプレート33を備えている。スピンドルモータ31は、X線出射器20の出射口21に対向する位置にて、ケース10内に固定されている。スピンドルモータ31の出力軸31aは、その中心軸線を出射口21の中心軸線と一致させて、出射口21とは反対側に突出している。テーブル32は、円盤状に構成され、その上面の中心位置にてスピンドルモータ31の出力軸31aに固定されていて、スピンドルモータ31の回転により回転される。テーブル32の下面の中心部には、外周上に雄ねじを形成した円筒状の突出部材34がその底面にて固定されている。イメージングプレート33は、円盤状に構成されて、表面に蛍光体が塗布された円形の感光性を有するプラスチックフィルムであり、鉄管OBに対するX線の照射によって鉄管OBの内側面にて回折した回折X線を受光して回折像を形成するもので、中心部に円形の貫通孔を有する。この貫通孔に突出部材34を貫通させて、内周面に雌ねじを形成した有底かつ円筒状の固定部材35を突出部材34に螺合させることにより、イメージングプレート33は、テーブル32の下面に、テーブル32と回転中心を共通にして、第1及び第2切欠き下面壁17,19に対して平行に固定されている。これにより、イメージングプレート33は、第1及び第2切欠き下面壁17、19に対して平行な平面内にてテーブル32と一体回転する。
スピンドルモータ31、スピンドルモータ31の出力軸31a、テーブル32、突出部材34及び固定部材35の中心位置には、X線出射器20の出射口21及び第2切欠き下面壁19の貫通孔19aと中心軸線を共通とする円形の貫通孔がそれぞれ設けられている。これにより、X線出射器20の出射口21から出射されたX線は、スピンドルモータ31、スピンドルモータ31の出力軸31a、テーブル32、突出部材34及び固定部材35を通過して、第2切欠き下面壁19の貫通孔19aからケース10の外部に出射されて、鉄管OBの内側面に照射される。そして、鉄管OBの内側面で回折した回折X線は、図1及び図2に破線で示すように下面壁12、第1切欠き下面壁17及び第2切欠き下面壁19に入射する。なお、この回折X線は円錐状に広がるX線であり、図6にて太い実線で示すように、円形の回折X線が下面壁12、第1切欠き下面壁17、第2切欠き下面壁19及びイメージングプレート33で受光される。しかし、この円錐状に広がる回折X線のほとんどは下面壁12、第1切欠き下面壁17及び第2切欠き下面壁19で遮断されて、スリット17a位置の回折X線のみが、スリット17aを通過してイメージングプレート33に回折X線による像Xを形成する。この場合、テーブル32の回転により、図7に示すように、回折X線による像Xが連続して形成される。
スピンドルモータ31内には、エンコーダ31bが組み込まれている。エンコーダ31bは、スピンドルモータ31が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路37へ出力する。スピンドルモータ制御回路37は、コントローラ91によって指示されてスピンドルモータ31の作動及び停止を制御する。また、スピンドルモータ制御回路37は、スピンドルモータ31の回転制御時には、エンコーダ31bから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ31の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ91から入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ31に供給する。
レーザ検出装置40は、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xをレーザ光を用いて読取るための装置であり、筐体41内に組込まれている。レーザ検出装置40は、レーザ光源42、コリメートレンズ43、反射鏡44、ダイクロイックミラー45及び対物レンズ46を備えている。
レーザ光源42は、レーザ駆動回路61によって制御されて、イメージングプレート33に照射するレーザ光を出射する。レーザ駆動回路61は、コントローラ91によって制御され、レーザ光源42から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路61は、後述する受光器(フォトディテクタ)55から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源42に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート33に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。
コリメートレンズ43は、レーザ光源42から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡44は、コリメートレンズ43にて平行光に変換されたレーザ光を,ダイクロイックミラー45に向けて反射する。ダイクロイックミラー45は、反射鏡44から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ46は、ダイクロイックミラー45から入射したレーザ光をイメージングプレート33の表面に集光させる。この対物レンズ46から出射されるレーザ光の光軸は、イメージングプレート33に対して垂直である。
対物レンズ46には、フォーカスアクチュエータ47が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ47は、対物レンズ46をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ46は、フォーカスアクチュエータ47が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
対物レンズ46によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート33の表面であって、回折X線による像Xが形成されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折X線による像Xを形成した後、イメージングプレート33にレーザ光を照射すると、イメージングプレート33の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート33に照射されて反射したレーザ光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ46を通過して、ダイクロイックミラー45にて大部分が反射し、レーザ光の反射光の一部のみが反射する。ダイクロイックミラー45の反射方向には、集光レンズ51、シリンドリカルレンズ52及び受光器(フォトディテクタ)53が設けられている。集光レンズ51は、ダイクロイックミラー45から入射した光を、シリンドリカルレンズ52に集光する。シリンドリカルレンズ52は、透過した光に非点収差を生じさせる。受光器53は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路62に出力する。
増幅回路62は、受光器53から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成し、フォーカスエラー信号生成回路63及びSUM信号生成回路64へ出力する。本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路63は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路63は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路65へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート33の表面からのずれ量を表している。
フォーカスサーボ回路65は、コントローラ91により制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路66に出力する。ドライブ回路66は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ47を駆動して、対物レンズ46をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート33の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
SUM信号生成回路64は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換器67に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート33にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート33にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート33に入射した回折X線の強度に相当する。A/D変換器67は、コントローラ91によって制御され、SUM信号生成回路64からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をディジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
レーザ検出装置40は、集光レンズ54及び受光器(フォトディテクタ)55も備えている。集光レンズ54は、レーザ光源42から出射されたレーザ光の一部であって、ダイクロイックミラー45を透過せずに反射したレーザ光を受光器55の受光面に集光する。受光器55は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。したがって、受光器55は、レーザ光源42が出射したレーザ光の強度に対応した強度の受光信号をレーザ駆動回路61へ出力する。
移動装置70は、テーブル32及びイメージングプレート33の下方であって、テーブル32及びイメージングプレート33の回転中心に対して、第1及び第2切欠き下面壁17,19と反対側に設けられていて、レーザ検出装置40をテーブル32及びイメージングプレート33の半径方向に往復移動させる。この移動装置70は、フィードモータ71及びスクリューロッド72を有する。フィードモータ71は、イメージングプレート33よりも外側位置にて、下面壁12の内側面上に立設された支持部材73に組付けられている。スクリューロッド72は、図5に示すように、イメージングプレート33の外側からイメージングプレート33の中心から若干ずれた位置に向かって延設されていて、その一端部がフィードモータ71の出力軸に連結されている。スクリューロッド72の他端部は、切欠き正面壁18の近傍位置にて、下面壁12の内側面上で立設された支持部材74に回転可能に支持されている。この移動装置70が本発明の第2移動装置に対応する。
レーザ検出装置40の筐体41は、図示しない雌ねじを備え、スクリューロッド72に螺合している。スクリューロッド72の両側にはスクリューロッド72と平行に延設された一対のガイドロッド75がそれぞれ設けられ、一対のガイドロッド75の両端は支持部材73,74にそれぞれ固定されている。この一対のガイドロッド75は筐体41に設けた図示しないガイド孔を貫通しており、筐体41がスクリューロッド72の軸線周りに回転不能かつスクリューロッド72の軸線方向に移動可能になっている。これにより、フィードモータ71を正転及び逆転させると、レーザ検出装置40がスクリューロッド72及びガイドロッド75の軸線方向に往復動する。なお、このガイドロッド75は、図1及び図2においては省略されている。
レーザ検出装置40においては、対物レンズ46が、図5に示すように、スクリューロッド72及びガイドロッド75に平行かつイメージングプレート33と直交する平面内であって、イメージングプレート33の中心を含む平面内に配置されている。これにより、対物レンズ46は、イメージングプレート33の中心に対してスリット17aと反対側にて、イメージングプレート33の中心付近から外周付近まで径方向に移動する。すなわち、レーザ検出装置40の往復移動により、レーザ検出装置40から出射されたレーザ光の光軸は、図7に矢印で示すように、スリット17aと反対側にて、イメージングプレート33の中心付近から外周付近まで径方向に移動する。本実施形態においては、このレーザ光の光軸の移動ラインの位置は、スリット17aの位置すなわちX線が出射される位置とイメージングプレート33の中心を結ぶライン上にある。これにより、イメージングプレート33を回転させながら、イメージングプレート33に回折X線による像Xを形成し、イメージングプレート33に以前に形成された回折X線による像Xがレーザ光の走査によりレーザ検出装置40によって読取られる。
フィードモータ71内には、エンコーダ71aが組み込まれている。エンコーダ71aは、フィードモータ71が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を半径位置検出回路77及びフィードモータ制御回路78へ出力する。半径位置検出回路77及びフィードモータ制御回路78は、コントローラ91からの指令により作動開始する。
測定開始直後において、フィードモータ制御回路78は、フィードモータ71を駆動してレーザ検出装置40をフィードモータ71側へ移動させる。半径位置検出回路77は、エンコーダ71aから出力されるパルス信号が入力されなくなると、レーザ検出装置40が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路78に出力し、レーザ検出装置40の位置を表すカウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路78は、半径位置検出回路77から移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、フィードモータ71への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置をレーザ検出装置40の原点位置とする。したがって、半径位置検出回路77は、レーザ検出装置40が図1及び図2にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、レーザ検出装置40が移動限界位置から右下方向に移動するとき、移動限界位置からの移動距離を表す信号を半径位置信号として出力する。
フィードモータ制御回路78は、コントローラ91からの指示により、フィードモータ71を正転又は逆転駆動して、予め決められた移動範囲に渡ってレーザ検出装置40を往復動させる。半径位置検出回路77は、エンコーダ71aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、半径位置検出回路77は、カウントしたパルス数を用いてレーザ検出装置40の現在の半径位置(移動限界位置からの移動距離を移動限界位置における半径位置から減算した値)を計算し、コントローラ91及びフィードモータ制御回路78に出力する。
また、フィードモータ制御回路78は、レーザ検出装置40の移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ71aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、レーザ検出装置40の移動速度を計算し、前記計算したレーザ検出装置40の移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにフィードモータ71を駆動する。
消去用光照射装置80は、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xを消去するものである。この消去用光照射装置80は、図5に示すように、イメージングプレート33の回転方向において、レーザ検出装置40から出射されるレーザ光の走査位置(180度)と第1切欠き下面壁17のスリット17a位置(0度=360度)との間(本実施形態では270度の回転位置)にて、イメージングプレート33の中心付近から外周付近まで径方向に延設されて、イメージングプレート33の下方に配置されている。この消去用光照射装置80は、回折X線による像Xを消去するための複数の発光素子(LED)を径方向に沿ってライン状に配置させており、コントローラ91により制御される発光素子駆動回路81によって作動開始すると、複数のLEDからのLED光がイメージングプレート33の中心付近から外周付近まで直線状に照射される。そして、この消去用光照射装置80を常時作動させると、図7に示すように、イメージングプレート33の回転により、イメージングプレート33上に形成された回折X線による像Xはその読取り後に順次消去される。
また、X線回折測定装置は、鉄管OBの基準周方向位置(鉄管OBの軸線周りの基準回転位置)を検出するための周方向センサ85と、周方向センサ85に接続されたセンサ回路86とを備えている。周方向センサ85は、鉄管OBの軸線方向の端面に向けて光を照射する発光素子と、鉄管OBの端面からの光を受光する受光素子からなる。センサ回路86は、コントローラ91により作動開始が制御され、受光素子の受光量が大きくなったことを検出して、鉄管OBの基準周方向位置を表す検出信号をコントローラ91に出力する。鉄管OBの検査の際には、鉄管OBの軸線方向の端面の1箇所(基準回転位置)に反射率が高くなるマークを付する。したがって、鉄管OBが回転して、このマークが周方向センサ85に対向する位置に来ると、前記マークによる反射光のために、受光素子による受光量が急激に大きくなり、センサ回路86は、基準周方向位置の検出信号をコントローラ91に出力する。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図8A及び図8Bのメインプログラム(図9A及び図9Bのデータ読取りルーチンを含む)及び図10の評価プログラムを実行する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせる。
次に、本発明の第1移動装置に対応する回転装置100及び移動装置110について説明する。回転装置100は、図3及び図4に示すように、鉄管OBの軸線方向の長さよりも若干長い距離を隔てて、検査場の床面に平行に延設された一対の支持台101,102を備えている。支持台101には、その両端部の上側位置に、モータ103A,103Bが固定されている。モータ103A,103Bの出力軸は、前記床面に平行であって支持台101の延設方向と直交する方向に延設されている。モータ103A,103Bの出力軸には、表面が若干弾力性を有する一対の円柱状物体104A,104Bの一方の端面の中心部が連結されている。円柱状物体104A,104Bは、モータ103A,103Bの出力軸の軸線方向にそれぞれ延設され、円柱状物体104A,104Bの他方の端面は支持台102の両端部の上側位置に回転可能に支持された回転ロッド105A,105Bに連結されている。そして、鉄管OBは、その外周面における周方向の2点が円柱状物体104A,104Bの外周面にそれぞれ接するように、その軸線方向を円柱状物体104A,104Bの延設方向に延設させて円柱状物体104A,104B上に載置されるようになっている。これにより、モータ103A,103Bを同一方向に一定の同一回転速度で回転させれば、鉄管OBは、前記方向とは反対方向に一定速度で回転する。
モータ103A内には、エンコーダ103Aaが組み込まれている。エンコーダ103Aaは、図1に示すように、モータ103Aが所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を周方向移動量検出回路107及びモータ駆動回路108Aへ出力する。周方向移動量検出回路107及びモータ駆動回路108Aは、コントローラ91からの指令により作動開始する。周方向移動量検出回路107は、エンコーダ103Aaからのパルス列信号をカウントするとともに、そのカウント値をコントローラ91からの周方向移動量のリセット信号によりリセットして、鉄管OBの基準周方向位置からの周方向移動量をカウント値から計算して、コントローラ91に出力する。なお、前記リセット信号は、後述するプログラム処理により、センサ回路86からの基準周方向位置の検出信号に応答してコントローラ91から供給される。
モータ駆動回路108Aは、鉄管OBの周方向移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ103Aaから入力したパルス列信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、鉄管OBの周方向移動速度を計算し、前記計算した鉄管OBの周方向移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにモータ103Aを駆動する。なお、モータ103B内にもエンコーダが設けられているとともに、モータ103Bにもモータ駆動回路が接続され、このモータ駆動回路は、モータ駆動回路108Aと同様に、モータ103B内のエンコーダからのパルス列信号を用いて鉄管OBの周方向移動速度を計算し、前記計算した鉄管OBの周方向移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにモータ103Bを駆動するが、これらのモータ103B及びモータ駆動回路は、円柱状物体104Bと共に図1においては省略されている。
移動装置110は、X線回折測定装置を、鉄管OB内にてその軸線方向に移動させる移動部材111を備えている。移動部材111は、断面長方形状で鉄管OBの軸線方向に延設された長尺状の部材であり、その先端部にて固定部材112を介してX線回折測定装置をその右側面壁16にて固定して、図1の状態に維持している。この移動部材111は、モータ113A,113B,114A,114B及びローラ115A,115B,116A,116Bにより、軸線方向すなわち鉄管OBの軸線方向に移動される。
モータ113A,113Bは、検査場の床面に立設された支持台117に上下に所定距離だけ隔てて固定されている。モータ114A,114Bは、鉄管OBの軸線方向に支持台117と並べて配置されて、検査場の床面に立設された支持台118に上下に所定距離だけ隔てて固定されている。モータ113A,114Aの上下位置は同じであるとともに、モータ113B,114Bの上下位置も同じである。これらのモータ113A,113B,114A,114Bの出力軸は、水平方向であって移動部材の軸線方向と直交する方向にそれぞれ延設されている。ローラ115A,115B,116A,116Bは、モータ113A,113B,114A,114Bの出力軸の先端部に固定されており、モータ113A,113B,114A,114Bの回転によって各出力軸と同一軸線周りにそれぞれ回転する。移動部材111の上下面には軸線方向に所定長さだけ延設された溝111a,111bが形成されており、ローラ115A,116Aは外周面にて溝111aの底面に滑らないように係合し、ローラ115B,116Bは外周面にて溝111bの底面に滑らないように係合している。
これにより、モータ113A,113B,114A,114Bを回転させて、ローラ115A,115B,116A,116Bを回転させることにより、移動部材111は図4の左右方向に移動して、X線回折測定装置(ケース10)を鉄管OBの軸線方向に移動させる。具体的には、図4において、紙面垂直方向から見てローラ115A,116Aを時計方向に回転させるとともに、ローラ115B,116Bを反時計方向に回転させれば、移動部材111及びX線回折測定装置は左方向に移動する。また、図4において、紙面垂直方向から見てローラ115A,116Aを反時計方向に回転させるとともに、ローラ115B,116Bを時計方向に回転させれば、移動部材111及びX線回折測定装置は右方向に移動する。なお、これらのローラ115A,115B,116A,116Bすなわちモータ113A,113B,114A,114Bの回転の速さは、それぞれ同じである。また、移動部材111が前記右方向に移動してローラ116A,116Bが溝111a,111bの左端に位置したり、移動部材111が前記左方向に移動してローラ115A,115Bが溝111a,111bの右端に位置したりした場合には、移動部材111の左右への移動は停止する。
モータ113A内には、エンコーダ113Aaが組み込まれている。エンコーダ113Aaは、図1に示すように、モータ113Aが所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を軸方向移動量検出回路121及びモータ駆動回路122Aへ出力する。軸方向移動量検出回路121及びモータ駆動回路122Aは、コントローラ91からの指令により作動開始する。
測定開始直後において、モータ駆動回路122Aは、モータ113Aを駆動して移動部材111を図4の左方向側へ移動させる。この移動部材111の左方向への移動により、ローラ115A,115Bが移動部材111の溝111a,111bの右端位置まで来ると、モータ113Aの回転が停止され、エンコーダ113Aaからパルス信号が出力されなくなる。すると、軸方向移動量検出回路121は、X線回折測定装置が左方向の移動限界位置に達したことを表す信号をモータ駆動回路122Aに出力し、X線回折測定装置の軸方向移動量を表すカウント値を「0」に設定する。モータ駆動回路122Aは、前記左方向の移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、モータ113Aへの駆動信号の出力を停止する。前記左方向の移動限界位置をX線回折測定装置の原点位置とする。したがって、軸方向移動量検出回路121は、X線回折測定装置が図4にて左方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す軸方向移動量を出力し、X線回折測定装置が前記左方向の移動限界位置から右方向に移動すると、移動限界位置(原点位置)からの軸方向移動量を出力する。
モータ駆動回路122Aは、コントローラ91からの指示により、モータ113Aを正転又は逆転駆動して、前記左方向の移動限界位置と、移動部材111の右方向への移動によりローラ115A,115Bが移動部材111の溝111a,111bの左端位置まで来てモータ113Aの回転が停止される右方向の移動限界位置との間で、X線回折測定装置を左右に移動させる。軸方向移動量検出回路121は、エンコーダ113Aaが出力するパルス信号のパルス数をカウントし、カウントしたパルス数を用いてX線回折測定装置の現在の軸方向移動量を計算し、コントローラ91に出力する。また、軸方向移動量検出回路121は、前述した移動部材111が図4の左方向に移動して移動限界位置に達した場合と同様に、エンコーダ113Aaからのパルス列信号の入力停止により、移動部材111が図4の右方向に移動して移動限界位置に達したことも検出して、この移動限界位置に達したことを表す移動限界位置信号をモータ駆動回路122A及びコントローラ91に出力する。
また、モータ駆動回路122Aは、X線回折測定装置の移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ113Aaから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、X線回折測定装置の移動速度を計算し、前記計算したX線回折測定装置の移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにモータ113Aを駆動する。また、モータ駆動回路122Aは、移動部材111が図4における左右方向への移動によって移動限界位置に達したときに軸方向移動量検出回路121から出力される移動限界位置信号に応答して、モータ113Aへの駆動信号の出力を停止する。
なお、モータ113B,114A,114B内にもエンコーダがそれぞれ設けられているとともに、モータ113B,114A,114Bにもモータ駆動回路がそれぞれ接続され、これらのモータ駆動回路は、モータ駆動回路122Aと同様に、モータ113B,114A,114B内のエンコーダからのパルス列信号を用いてX線回折測定装置の軸方向移動速度をそれぞれ計算し、前記計算したX線回折測定装置の軸方向移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにモータ113B,114A,114Bを駆動するが、これらのモータ113B,114A,114B及びそれらのモータ駆動回路は、ローラ115B,116A,116Bと共に図1においては省略されている。ただし、この場合におけるモータ113B,114A,114Bの回転方向においては、前述のように、モータ114Aに関してはモータ113Aと同じであるが、モータ113B,114Bに関してはモータ113Aと反対方向である。また、前記図1で省略されているモータ113B,114A,114Bに接続されたモータ駆動回路にも、前述した軸方向移動量検出回路121からモータ駆動回路122Aに供給される移動限界位置信号が供給されるようになっており、これらのモータ駆動回路は、この移動限界位置信号の入力に応答して、モータ113B,114A,114Bへの駆動信号の出力を停止する。
以下に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、鉄管OBを検査する具体的方法について説明する。まず、作業者は、検査される鉄管OBを、その中心軸線が円柱状物体104A,104Bの中心軸線に平行になるようにして、円柱状物体104A,104B上に載置する。その後、コンピュータ装置90及び高電圧電源22を上記の構成のX線回折測定装置に接続する。次に、モータ113A,113B,114A,114Bを作動させて移動部材111を初期位置から図4の右方向に変位させて、X線出射器20からのX線の照射位置が鉄管OBの軸線方向の端部にある測定開始位置になるように、X線回折測定装置を位置させる。そして、作業者は、入力装置92を用いて、測定対象物である鉄管OBの材質(例えば、鉄)を入力し、鉄管OBの測定開始を指示する。これにより、コントローラ91はメインプログラムの実行を開始する。
メインプログラムの実行は、図8AのステップS10にて開始され、コントローラ91は、ステップS12にて、変数n,m,k,s,p,eをそれぞれ「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」に初期設定する。変数nは、鉄管OBの測定箇所を「1」から順に表す。変数mは、前記測定箇所ごとの測定番号を「1」から順に表す。変数kは、鉄管OBの回転回数を「1」から順に表す。変数sは、鉄管OBの1回転が検出されたとき「1」に設定され、その後に鉄管OBが若干回転した時点で「0」に戻されて、コントローラ91が鉄管OBの1回転当たりセンサ回路86からの基準周方向位置の検出信号を1回だけ検出するようにするためのものである。変数eは、「0」により鉄管OBが移動中かつX線の照射によるイメージングプレート33のX線回折による像Xの形成中であることを表し、「1」により鉄管OBが移動限界位置に達してX線の照射によるイメージングプレート33への回折X線による像Xの形成が終了したことを表す。変数pは、鉄管OBが移動限界位置に達してX線の照射によるイメージングプレート33のX線回折による像Xの形成が終了した後(変数eが「1」に設定された後)に、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが読取られた回数を「1」から順に表す。
前記ステップS12の処理後、コントローラ91は、ステップS14にて、センサ回路86、周方向移動量検出回路107及び軸方向移動量検出回路121の作動を開始させる。次に、ステップS16にて、モータ駆動回路108A及びモータ103Bのためのモータ駆動回路に、予め決められた鉄管OBの周方向移動速度(回転速度)を出力するとともに、鉄管OBの回転開始を指示する。この指示に応答して、モータ駆動回路108A及びモータ103Bのためのモータ駆動回路は、エンコーダ103Aa及びモータ103B内のエンコーダから入力されたパルス列信号を用いて、前記周方向移動速度に対応した回転速度でモータ103A,103Bを回転させ始める。なお、モータ103A,103Bの回転方向は同一である。このモータ103A,103Bの回転は円柱状物体104A,104Bに伝達され、円柱状物体104A,104Bも前記周方向移動速度に対応した回転速度で回転し始めて、鉄管OBが前記周方向移動速度で回転し始める。
前記ステップS16の処理後、コントローラ91は、ステップS18にて、センサ回路86からの基準周方向位置(基準回転位置)の検出信号の入力を待つ。この場合、センサ回路86から前記検出信号が入力されるまで、コントローラ91は、ステップS18にて「No」と判定し続け、センサ回路86から前記検出信号が入力されると、コントローラ91は、ステップS18にて「Yes」と判定して、ステップS20に進む。ステップS20においては、コントローラ91は、モータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路に、予め決められたX線回折測定装置の軸方向移動速度を出力するとともに、X線回折測定装置の移動開始を指示する。モータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路は、エンコーダ113Aa及びモータ113B、114A,114B内のエンコーダから入力されたパルス列信号を用いて、前記軸方向移動速度に対応した回転速度でモータ113A,113B,114A,114Bを回転させ始める。なお、モータ113A,114Aの回転方向は図4にて紙面垂直方向から見て反時計方向であり、モータ113B,114Bの回転方向は紙面垂直方向から見て時計方向である。このモータ113A,113B,114A,114Bの回転はローラ115A,115B,116A,116Bに伝達され、ローラ115A,115B,116A,116Bも前記軸方向移動速度に対応した回転速度で回転し始めて、移動部材111も図4にて右方向に前記軸方向移動速度で移動し始める。これにより、X線回折測定装置も図4にて右方向に前記軸方向移動速度で移動し始める。
前記ステップS20の処理後、コントローラ91は、ステップS22にて、スピンドルモータ制御回路37に、予め決められたテーブル32の回転速度を出力するとともに、テーブル32の回転開始を指示する。スピンドルモータ制御回路37は、エンコーダ31bから入力されたパルス列信号を用いて、前記回転速度に対応した回転速度でスピンドルモータ31を回転させ始める。これにより、イメージングプレート33は、テーブル32と共に、前記回転速度で回転し始める。
前記ステップS24の処理後、コントローラ91は、ステップS24にて、X線制御回路23にX線の照射開始を指示する。X線制御回路23は、この指示に応答して、X線出射器20の作動を開始させ、X線出射器20は、X線を出射口21から出射し始める。出射口21から出射されたX線は、テーブル32、突出部材34及び固定部材35に設けた貫通孔、並びに第2切欠き下面壁19に設けた貫通孔19aを介して、鉄管OBの内側面に照射される。そして、鉄管OBの内側面で回折した回折X線のうち、第1切欠き下面壁17に設けたスリット17aを通過した回折X線のみがケース10内に侵入して、イメージングプレート33に入射する。そして、イメージングプレート33には、この入射した回折X線による像Xが形成される。
次に、コントローラ91は、ステップS26にて時間計測を開始し、ステップS28にて、所定時間Tpが経過するまで、すなわち計測時間が所定時間Tpになるまで、「No」と判定し続けて所定時間Tpの経過を待つ。この所定時間Tpは、イメージングプレート33の回転により、前記イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置に到達するまでに必要とする時間(後述するTs)よりも若干だけ短い時間である。前記所定時間Tpが経過すると、コントローラ91は、ステップS28にて「Yes」と判定し、ステップS30以降に進む。
ステップS30においては、コントローラ91は、レーザ駆動回路61にレーザ光の照射開始を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路61は、レーザ光源42の駆動を開始する。これにより、レーザ光源42はレーザ光を出射し始め、出射されたレーザ光は、コリメートレンズ43、反射鏡44、ダイクロイックミラー45及び対物レンズ46を介して、イメージングプレート33に照射される。そして、イメージングプレート33で反射したレーザ光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ46、ダイクロイックミラー45、集光レンズ51及びシリンドリカルレンズ52を介して受光器53に入射し、受光器53は受光量に応じた受光信号を増幅回路62に出力する。一方、レーザ光源42にて出射されたレーザ光の一部は、ダイクロイックミラー45で反射されて、集光レンズ54を介して受光器55にも入力され、受光器55は受光量に応じた受光信号をレーザ駆動回路61に出力する。これにより、レーザ駆動回路61は、レーザ光源42から出射されるレーザ光の強度を一定に維持する。
また、ステップS30においては、コントローラ91は、発光素子駆動回路81に消去用光(LED光)の照射開始を指示する。この指示に応答して、発光素子駆動回路81は、消去用光のイメージングプレート33に対する照射を開始する。これにより、イメージングプレート33の回転により、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが消去用光の照射位置に達すると、前記像Xが順次消去されるようになる。
次に、コントローラ91は、ステップS32にて、半径位置検出回路77、フォーカスサーボ回路65及びA/D変換器67の作動を開始させる。その後、コントローラ91は、ステップS34にて、レーザ検出装置40の移動速度及び往復動の位置をフィードモータ制御回路78に出力して、レーザ検出装置40の往復動の開始をフィードモータ制御回路78に指示する。この指示に応答して、フィードモータ制御回路78は、半径位置検出回路77と協働して、フィードモータ71の回転を制御し始める。これにより、レーザ検出装置40は往復動を開始して、レーザ検出装置40から出射されるレーザ光の照射位置がイメージングプレート33の半径方向に所定速度で往復動し始める。なお、このレーザ検出装置40の往復動の速度は、鉄管OBの回転速度、X線回折測定装置の移動速度及びテーブル32の回転速度に比べて極めて速い。
前記ステップS34処理後、コントローラ91は、ステップS36にて、前記テップS26にて計測を開始した計測時間が、所定時間Tsだけ経過するまで、すなわち計測時間が所定時間Tsになるまで、「No」と判定し続けて所定時間Tsの経過を待つ。この所定時間Tsは、イメージングプレート33の回転により、前記イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置に到達するまでの時間である。前記所定時間Tsが経過すると、コントローラ91は、ステップS36にて「Yes」と判定し、ステップS38のデータ読取りルーチンの実行を開始する。
このデータ読取りルーチンの実行中、鉄管OBはモータ103A,103Bにより所定速度で回転し、X線回折測定装置はモータ113A,113B,114A,114Bにより所定速度で鉄管OBの内部にて鉄管OBの軸線方向に移動する。また、テーブル32及びイメージングプレート33はスピンドルモータ31により所定速度で回転し、レーザ検出装置40はフィードモータ71により所定速度で往復動する。この状態では、鉄管OBに対するX線の照射位置を変えながら、イメージングプレート33には回折X線による像Xが図7に示すように形成されていく。また、形成された回折X線による像Xは、消去用光照射装置80による消去用光の照射により測定後に順次消去されていく。
データ読取りルーチンの実行は、図9AのステップS100にて開始され、コントローラ91は、ステップS102にて計測時間をリセットし、ステップS104にて、計測時間が予め決められた微小時間Δtに変数mを乗算した値m・Δt以上になったかを判定する。計測時間が値m・Δt未満であれば、コントローラ91はステップS104にて「No」と判定し続ける。一方、計測時間が値m・Δt以上になると、コントローラ91は、ステップS104にて「Yes」と判定し、ステップS106にて、A/D変換器67から受光器53による受光強度を表すデータを入力して、変数n,mによって特定される受光強度データI(n,m)として記憶するとともに、半径位置検出回路77からレーザ光の照射半径位置を表すデータを入力して、変数n,mによって特定される半径位置データr(n,m)として記憶する。
次に、コントローラ91は、ステップS110にて計測時間が予め決められた所定時間Ta以上になったかを判定する。計測時間が所定時間Ta未満であれば、コントローラ91は、ステップS110にて「No」と判定して、ステップS112にて変数mに「1」を加算してステップS104に戻り、ステップS104〜S112の循環処理を繰返し実行する。このステップS104〜S112の循環処理により、微小時間Δtごとに、変数mを「1」ずつ増加させながら、受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)が順次記憶されていく。この場合、所定時間Taは、フィードモータ71の駆動によりレーザ検出装置40すなわちレーザ光の照射位置が半径方向に1往復する時間である。これにより、図11に示すように、回折X線による像Xがレーザ光によってイメージングプレート33の外側半径方向及び内側半径方向にそれぞれ1回だけ走査される。そして、走査結果が、受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)として記憶される。
計測時間が所定時間Ta以上になると、コントローラ91は、ステップS110にて「No」と判定し、ステップS114にて周方向移動量検出回路107から周方向移動量Rを入力する。そして、ステップS116にて、周方向移動量Rが予め決められた所定の周方向移動量Rs以上であるかを判定する。この所定の周方向移動量Rsは、X線の照射位置の周方向移動速度Rsp(モータ103A,103Bによる鉄管OBの回転速度に対応)に所定時間Tsを乗算した値Rsp・Tsである。所定時間Tsは、前述のように、前記イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、イメージングプレート33の回転により、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置に到達するまでの時間である。したがって、所定の周方向移動量Rs(=Rsp・Ts)は、受光強度データI(n,m)が取得された際の鉄管OBの周方向におけるレーザ光の照射位置すなわち測定箇所の周方向移動量と、X線が照射されて回折X線による像Xがイメージングプレート33に形成された際の鉄管OBの周方向におけるX線の照射位置すなわち測定箇所の周方向移動量との差を表す。
入力した周方向移動量Rが所定の周方向移動量Rs以上であれば、コントローラ91は、ステップS116にて「Yes」と判定し、ステップS118にて、入力した周方向移動量Rから所定の周方向移動量Rsを減算して、減算値R−Rsを変数nによって特定される周方向移動量データR(n)(=R−Rs)として記憶する。これにより、受光強度データI(n,m)は、X線の照射位置に関する周方向移動量データR(n)に対応付けられることになる。前記ステップS118の処理後、コントローラ91は、ステップS120にて、周方向移動量データR(n)を最終周方向移動量データRe(k−1)で除算するとともに、除算値R(n)/Re(k−1)に360度を乗算して、乗算値360・{R(n)/Re(k−1)}を回転角度データθ(n)として記憶する。最終周方向移動量データRe(k−1)は、詳しくは後述するように、前回の鉄管OBの1回転が終了した際の最大周方向移動量を表すもので、これにより、回転角度データθ(n)は最終周方向移動量データRe(n)に対応し、X線の照射位置に対応した鉄管OBの回転角度を表すことになる。なお、鉄管OBの1回転目においては、詳しくは後述するように、最終周方向移動量Re(k−1)すなわち最終周方向移動量Re(0)は、検出されて記憶されていないので、予め決められた値が利用される。そして、この場合には、後述する修正処理にために最終周方向移動量Re(0)を用いた計算であることを記憶しておく。前記ステップS120の処理後、コントローラ91は、ステップS122にて詳しくは後述する変数sを「0」に設定する。
一方、入力した周方向移動量Rが所定の周方向移動量Rs未満であれば、コントローラ91は、ステップS116にて「No」と判定し、ステップS124にて、入力した周方向移動量Rから所定の周方向移動量Rsを減算するとともに、減算値R−Rsに最終周方向移動量データRe(k−1)を加算して、変数nによって特定される周方向移動量データR(n)(=R−Rs+Re(k−1))として記憶する。これは、詳しくは後述するように、周方向移動量検出回路107に検出される周方向移動量Rは基準周方向位置を通過するたびにリセットされて、鉄管OBの1回転毎の周方向移動量を表すためである。すなわち、前記ステップS118の演算処理による周方向移動量データR(n)が負になることを避けて、周方向移動量データR(n)が常に鉄管OBの1回転毎の周方向移動量を表すようにするためのである。また、前記ステップS124の処理後、コントローラ91は、ステップS126にて、周方向移動量データR(n)を最終周方向移動量データRe(k−2)で除算して、除算値R(n)/Re(k−2)に360度を乗算して、乗算値360・{R(n)/Re(k−2)}を回転角度データθ(n)として記憶する。これは、最終周方向移動量データRe(k−1)は、前述のように、前回の鉄管OBの1回転が終了した際の周方向移動量を表すものであるが、入力した周方向移動量Rが所定の周方向移動量Rs未満の状態では、前回の鉄管OBの1回転が終了していないために、前々回の鉄管OBの1回転が終了した際の最終周方向移動量Re(k−2)を利用するためである。なお、入力した周方向移動量Rが所定の周方向移動量Rs未満の状態は鉄管OBの1回転目では存在せず、2回転目以降にて存在する状態である。また、鉄管OBの2回転目における入力した周方向移動量Rが所定の周方向移動量Rs未満の状態では、変数kは「2」に設定されているので、前述したように、予め設定されている最終周方向移動量Re(0)を用いて回転角度データθ(n)が計算される。そして、この場合も、後述する修正処理にために最終周方向移動量Re(0)を用いた計算であることを記憶しておく。これによっても、前記ステップS120の処理と同様に、回転角度データθ(n)は周方向移動量データR(n)に対応し、X線の照射位置に対応した鉄管OBの回転角度を表すことになる。
前記ステップS122又はステップS126の処理後、コントローラ91は、ステップS128にて軸方向移動量検出回路121から軸方向移動量Lを入力する。そして、ステップS130にて、入力した軸方向移動量Lから所定の軸方向移動量Lsを減算して、減算値L−Lsに値e・Lsp・(p・Tb+Ta−Te)を加算し、加算値L−Ls+e・Lsp・(p・Tb+Ta−Te)を変数nによって特定される軸方向移動量データL(n)(=L−Ls+e・Lsp・(p・Tb+Ta−Te)として記憶する。この場合、変数eは、鉄管OBが移動限界位置に達して停止した状態で「1」になり、初期の状態では「0」に設定されているので、軸方向移動量データL(n)は値L−Lsである。なお、変数eが「1」になった状態に関しては、詳しくは後述する。
この所定の軸方向移動量Lsは、X線の照射位置の軸方向移動速度Lsp(モータ113A,113B,114A,114BによるX線回折測定装置の鉄管OBに対する軸線方向の移動速度に対応)に所定時間Tsを乗算した値Lsp・Tsである。この場合も、所定時間Tsは、前記イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、イメージングプレート33の回転により、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置に到達するまでの時間である。したがって、所定の軸方向移動量Ls(=Lsp・Ts)は、受光強度データI(n,m)が取得された際の鉄管OBの軸線方向におけるレーザ光の照射位置すなわち測定箇所の軸方向移動量と、X線が照射されて回折X線による像Xがイメージングプレート33に形成された際の鉄管OBの軸線方向におけるX線の照射位置すなわち測定箇所の軸方向移動量との差を表す。これにより、受光強度データI(n,m)は、X線の照射位置に関する軸方向移動量データL(n)に対応付けられることになる。
前記ステップS130の処理後、コントローラ91は、図9BのステップS132にて、計測時間が所定時間Tb以上であるかを判定する。この所定時間Tbは回折X線による像Xの測定の時間間隔を表すもので、計測時間が所定時間Tb未満であれば、コントローラ91は、ステップS132にて「No」と判定して、後述するステップS138〜S162の処理を実行する。一方、計測時間が所定時間Tb以上になると、コントローラ91は、ステップS132にて「Yes」と判定して、ステップS134にて変数nに「1」を加算する。そして、ステップS136にて、変数eが「1」であるかを判定する。この場合も、前述のように、変数eは「0」であるので、コントローラ91は、ステップS136にて「No」と判定して、ステップS102に戻る。そして、ステップS102にて計測時間を再度リセットし、前述したステップS104〜S130の処理により、次の測定箇所の受光強度データI(n,m)、周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)が記憶される。
そして、変数eが「1」に設定されるまで、コントローラ91は、ステップS102〜S136からなる循環処理を、所定時間Tbごとに繰り返し実行する。このステップS102〜S136からなる循環処理により、所定時間Tbごとに、変数nを「1」ずつ増加させながら、受光強度データI(n,m)、周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)が順次記憶されていく。この場合、各所定時間Tbの間に、図11に示すように、レーザ光の照射位置を所定時間Taすなわち1往復だけ径方向に走査させて、微小時間Δtごとに、変数mを「1」ずつ増加させながら、複数の受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)が順次記憶されていく。
次に、この循環処理中、計測時間が所定時間Tb以上になる前に実行されるステップS138〜S162の処理について説明する。ステップS138においては、変数sが「1」であるかが判定される。この変数sは初期の状態では「0」であり、この状態では、コントローラ91は、ステップS138にて「No」と判定し、ステップS140にてセンサ回路86から基準周方向位置の検出信号を入力したかを判定する。前述したステップS18による基準周方向位置の検出信号の入力判定の後、鉄管OBが1回転していなくて、基準周方向位置の検出信号が入力されなければ、コントローラ91は、「No」と判定して、ステップS156に進む。ステップS156においては、軸方向移動量検出回路121から移動限界位置信号を入力したかが判定される。X線回折測定装置及び移動部材111が移動限界位置に達していない状態では、コントローラ91は、ステップS156における「No」との判定の基に、ステップS132,S138,S140,S156からなる循環処理を実行し続ける。なお、計測時間が所定時間Tbに達したときには、前述したステップS102〜S136の処理が実行される。
前記ステップS132,S138,S140,S156からなる循環処理中、鉄管OBが1回転して基準回転角度になって、基準周方向位置の検出信号がセンサ回路86から入力されると、コントローラ91は、ステップS140にて「Yes」と判定して、ステップS142,S144の処理を実行する。ステップS142においては、最終周方向移動量データRe(k)に周方向移動量データR(n)が設定される。ステップS144においては、周方向移動量検出回路107に対して周方向移動量Rのリセットが指示される。この指示に応答して、周方向移動量検出回路107は検出中の周方向移動量Rをリセットし、その後に、エンコーダ103Aaからのパルス列信号のパルス数のカウントによる周方向移動量Rを「0」からふたたび検出し始める。前記ステップS142,S144の処理後、コントローラ91は、ステップS146にて変数sを「1」に設定する。そして、後述するステップS148〜S152の処理後、コントローラ91は、ステップS154にて、変数kに「1」を加算して、ステップS156にて前述した移動限界位置信号を入力したことを判定するか、又はステップS132にて計測時間が所定時間Tb以上になったことを判定するまで、ステップS138に進む。
ステップS138においては、変数sが「1」であるかがふたたび判定されるが、この場合、変数sは「1」に設定されているので、ステップS138における「Yes」との判定により、ステップS142〜S154の処理は実行されないので、最終周方向移動量Re(k−1)は前記ステップS142の処理によって設定された値に保たれる。一方、さらに時間が経過して、ステップS102〜S136の処理が実行されて、前述したステップS122にて変数sが「0」に戻されると、ステップS138にて「No」と判定されるようになるが、この場合も、センサ回路86から基準周方向位置の検出信号が入力されない限り、ステップS140にて「No」と判定され続けて、ステップS142〜S154の処理は実行されない。そして、鉄管OBがさらに1回転して、センサ回路86から基準周方向位置の検出信号が入力されると、ステップS140にて「Yes」と判定され、ステップS142にて変数kによって特定される最終周方向移動量Re(k)が変数nによって指定される周方向移動量R(n)に設定される。したがって、最終周方向移動量Re(k)は、基準回転角度直前の鉄管OBの回転量すなわち前回の鉄管OBの最大回転量に対応した周方向移動量を順次記憶していることになる。
次に、ステップS148〜S152の処理について説明しておく。このステップS148〜S152の処理は、前述したステップS120,S126における最終周方向移動量Re(0)を用いて計算した回転角度データθ(n)の修正処理である。この場合、鉄管OBの1回転終了時の最終周方向移動量Re(1)の設定直後のステップS148において、コントローラ91は、「Yes」すなわち変数kが「1」であると判定して、ステップS150にて予め設定されていた最終周方向移動量Re(0)を最終周方向移動量Re(1)に変更する。そして、ステップS152にて、前記ステップS120,S126の処理により予め設定されている最終周方向移動量Re(0)を用いて計算した回転角度データθ(n)を、前記最終周方向移動量Re(1)に変更された最終周方向移動量Re(0)を用いて再計算して、新たな回転角度データθ(n)として記憶しておく。そして、次のステップS154の処理によって変数kが「1」になることはないので、前記ステップS152の再計算処理は、ふたたび実行されることはない。
このようなステップS138〜S156を含むステップS102〜S136からなる循環処理により、受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)が順次記憶されていき、X線回折測定装置及び移動部材111が図4の右方向の移動限界位置まで達すると、軸方向移動量検出回路121はエンコーダ113Aaからのパルス列信号の入力停止により、移動部材111の移動限界を検出して移動限界位置信号をモータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路と、コントローラ91に出力する。これに応答して、モータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路は、モータ113A,113B,114A,114Bへの駆動信号の出力を停止する。
一方、コントローラ91は、前記ステップS132〜S156の循環処理中、ステップS156にて「Yes」と判定して、ステップS158にてX線制御回路23にX線照射の停止を指示する。X線制御回路23は、X線出射器20の作動を停止させて、X線の鉄管OBに対する出射を停止する。前記ステップS158の処理後、コントローラ91は、ステップS160にて現在の計測時間を終了時間Teとして設定し、変数eを「1」に変更する。これにより、前記ステップS132にて「Yes」すなわち計測時間が所定時間Tb以上になると、コントローラ91は、ステップS134にて変数nに「1」を加算した後、ステップS136にて「Yes」すなわち変数eは「1」であると判定して、ステップS164に進む。
ステップS164においては、変数pに「1」を加算した加算値p+1に所定時間Tbを乗算し、乗算値(p+1)・Tbから終了時間Teを減算し、減算値(p+1)・Tb−Teが所定時間Tsよりも大きいかを判定する。これは、X線回折測定装置の鉄管OBに対する軸線方向の移動は停止し、かつX線の照射も停止しているが、X線の鉄管OBに対する照射によってイメージングプレート33に形成された回折X線による像Xの読取りは終了していないためである。そして、前記所定時間Tsは、イメージングプレート33の回転により、前記イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置に到達するまでの時間であり、前記像Xの読取りが終了するまでには少なくとも所定時間Tsを超えた時間が必要であるからである。
減算値(p+1)・Tb−Teが所定時間Ts以下であれば、コントローラ91は、ステップS164にて「No」と判定して、ステップS166にて変数pに「1」を加算して、ステップS102に戻る。そして、コントローラ91は、前述したステップS102〜S156の処理を実行して、所定時間Tbごとに、変数nを「1」ずつ増加させながら、受光強度データI(n,m)、周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)を順次記憶していく。ただし、この場合は、ステップS130の軸方向移動量Lの計算においては、変数eがステップS162の処理によって「1」に設定されているので、軸方向移動量検出回路121から入力した軸方向移動量L、所定の軸方向移動量Ls(=Lsp・Ts)、変数p、所定時間Ta,Tb及び終了時間Teを用いて、L−Ls+Lsp・(p・Tb+Ta−Te)の演算により計算した値を軸方向移動量データL(n)として記憶する。
この演算式L−Ls+Lsp・(p・Tb+Ta−Te)において、Lsp・(p・Tb+Ta−Te)を前述した値L−Lsに加算するのは、X線回折測定装置の鉄管OBの軸線方向の移動は停止しているので、軸方向移動量検出回路121から出力される軸方向移動量LはX線回折測定装置の停止時の値であるからである。すなわち、X線回折測定装置が停止しても、移動していると仮定して、その移動量分を加算したうえで、停止前と同様に値Lsを減算することにより軸方向移動量データL(n)とするためである。したがって、X線回折測定装置すなわちX線の照射位置の軸方向移動速度Lspに、前記X線回折測定装置の停止から受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n) 及び回転角度データθ(n)が検出記憶されるまでに要した時間(p・Tb+Ta−Te)を乗算した値を、X線回折測定装置の停止からの仮想上のX線の照射位置の軸方向移動量として前記値L−Lsに加算することにより、軸方向移動量データL(n)を算出している。なお、X線回折測定装置が停止する前のステップS102〜S156の処理による受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n) 及び回転角度データθ(n)が検出記憶はレーザ光の走査終了タイミングを基準としているために、前記時間(p・Tb+Ta−Te)においては、X線回折測定装置の停止からレーザ光の走査開始タイミングp・Tb−Teに図11に示す走査時間Taを加算するようにしている。
そして、最後にイメージングプレート33に形成された回折X線による像Xの読取りが終了して、値(p+1)・Tb−Teが所定時間Tsよりも大きくなると、コントローラ91は、ステップS164にて「Yes」と判定して、ステップS168にてこのデータ読取りルーチンの実行を終了する。
このデータ読取りルーチンの実行終了後、コントローラ91は、図8BのステップS40以降の処理を実行する。ステップS40においては、レーザ駆動回路61を制御してレーザ検出装置40によるレーザ光のイメージングプレート33に対する照射を停止させる。ステップS42においては、モータ駆動回路108A及びモータ103Aのための駆動回路を制御して、モータ103A,103Bによる鉄管OBの回転を停止させるとともに、フィードモータ制御回路78を制御して、フィードモータ71によるレーザ検出装置40の往復動を停止させる。ステップS44においては、半径位置検出回路77、フォーカスサーボ回路65、A/D変換器67、センサ回路86及び周方向移動量検出回路107の作動を停止させる。ステップS46においては、モータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路を制御して、移動部材111及びX線回折測定装置を原点位置に移動させて、モータ113A,113B,114A,114Bの回転を停止させた後、軸方向移動量検出回路121の作動を停止させる。
次に、コントローラ91は、ステップS48にて計測時間をリセットして時間計測を新たに開始させ、ステップS50にて計測時間が所定時間Tzより大きいかを判定する。この所定時間Tzは、イメージングプレート33の回転により、レーザ検出装置40によるレーザ光のイメージングプレート33上の照射位置が消去用光照射装置80による消去用光の照射位置まで移動する時間に予め設定されている。この場合、計測時間が所定時間Tz以下であれば、コントローラ91は、ステップS50にて「No」と判定し続ける。なお、この状態では、テーブル32は回転を続けているとともに、消去用光照射装置80も消去用光をイメージングプレート33に照射し続けて、イメージングプレート33上の回折X線による像Xは消去用光により消去され続けている。
そして、計測時間が所定時間Tzよりも大きくなると、コントローラ91は、ステップS50にて「Yes」と判定して、ステップS52にて、スピンドルモータ制御回路37への指示により、スピンドルモータ31によるテーブル32の回転を停止させる。次に、コントローラ91は、ステップS54にて、発光素子駆動回路81を制御して消去用光照射装置80によるイメージングプレート33に対する消去用光の照射を停止させて、ステップS56にてこのメインプログラムの実行を終了する。この状態では、全ての受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)が記憶されている。
次に、図10の評価プログラムについて説明する。この評価プログラムはコントローラ91によって実行されるもので、コントローラ91は、図8A及び図8Bのメインプログラムと並行してこの評価プログラムを実行する。この評価プログラムの実行はステップS200にて開始され、コントローラ91は、ステップS202にて、鉄管OBの測定箇所を表す変数nを「1」に設定するとともに、比較値Nを値Nmaxに設定する。変数nは前記メインプログラムで用いられた変数nと同種の内容を示すが、メインプログラムで用いられた変数nとは独立したものである。また、値Nmaxは、鉄管OBの可能性のある測定箇所の数の最大値よりも極めて大きな値である。
前記ステップS202の処理後、コントローラ91は、ステップS204にて、変数nにより指定される全ての受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)が存在するかを判定する。この場合、前記ステップS106,S108,S118,S120,S124,S126,S130の処理によるn番目の鉄管OBに関する全ての受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)が記憶されていなければ、コントローラ91は、ステップS204にて「No」と判定して、ステップS206にてメインプログラムのデータ読取りルーチンの実行が終了しているかを判定する。データ読取りルーチンの実行が未だ終了していなければ、コントローラ91は、ステップS206にて「No」と判定して、ステップS204の判定処理を再び実行する。そして、変数nにより指定される全ての受光強度データI(n,m)、半径位置データr(n,m)、周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)が存在すれば、コントローラ91は、ステップS204にて「Yes」と判定して、ステップS208以降の処理を実行する。
ステップS208においては、変数nにより指定される受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)を用いて、受光強度データI(n,m)の半価幅F(n)を計算する。この半価幅F(n)の計算においては、受光強度データI(n,m)と半径位置データr(n,m)との関係は図12に示すようになっているので、受光強度データI(n,m)のピークの最大強度と、受光強度データI(n,m)の平坦なレベルとの中間値をVcを計算し、中間値Vcにおけるパルス状信号の幅Fを半価幅として求める。そして、コントローラ91は、ステップS210にて、前記計算した半価幅F(n)が前記入力した鉄管OBの材質に応じて予め決められた半価幅の許容値以下であるかを判定する。半価幅F(n)が許容値以下であれば、コントローラ91は、ステップS210にて「Yes」と判定して、ステップS216に進む。半価幅F(n)が許容値よりも大きければ、コントローラ91は、ステップS210にて「No」と判定して、ステップS212にて表示装置93に「不合格」を表示する。そして、コントローラ91は、ステップS214にて、前記計算した半価幅F(n)と、変数nで指定される周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)すなわち鉄管OBの不合格箇所を表示装置93に表示する。その後、ステップS216に進む。
ステップS216においては、表示装置93に表示されている回転角度θ(n)が図9BのステップS152で再計算及び再記憶されたか否かを判定する。これは、鉄管OBが1回転する前に、受光強度データI(n,m)と半径位置データr(n,m)に基づいて計算された半価幅F(n)が許容値より大きく、「不合格」表示と共に回転角度θ(n)が表示された場合、回転角度θ(n)が前記ステップS152の処理により修正されることがあるからである。そして、前記表示された回転角度θ(n)が再計算及び再記憶により変化した場合は、コントローラ91は、ステップS216にて「Yes」と判定して、ステップS218にて修正された表示装置93の表示を修正されている回転角度θ(n)に変更する。それ以外の場合、コントローラ91は、ステップS216にて「No」と判定して、ステップS218の表示変更処理を行うことなく、ステップS220に進む。
ステップS220においては、変数nが比較値Nに等しいかを判定する。変数nは最初「1」に設定され、比較値Nは極めて大きな値Nmaxであるので、コントローラ91は、ステップS220にて「No」と判定して、ステップS222にて変数nに「1」を加算して、ステップS204に戻る。そして、前述したステップS204〜S222からなる循環処理を実行して、変数nを順次「1」ずつ増加させながら、半価幅F(n)を計算するとともに評価する。これにより、メインプログラムの実行により、取得された受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)に基づく半価幅F(n)が順に評価されるとともに、評価が「不合格」であれば、不合格箇所を表す周方向移動量データR(n)、回転角度データθ(n)及び軸方向移動量データL(n)が表示装置93に順次表示されていく。このような循環処理中、メインプログラムにおけるデータ読取りルーチンの実行終了が検出されて、ステップS206にて「Yes」と判定されると、コントローラ91は、ステップS224にてメインプログラムにおける測定番号nの最大値、すなわちメインプログラムのデータ読取りルーチンで読取った測定箇所の総数を比較値Nとして設定する。
そして、前記ステップS204〜S222からなる循環処理中、ステップS222にて更新される変数nが比較値Nに達すると、コントローラ91は、ステップS220にて「Yes」すなわち全ての受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)を用いた半価幅F(n)の計算及び評価が終了したと判定して、ステップS226に進む。ステップS226においては、表示装置93に「不合格」表示がなされなかったかを判定する。そして、「不合格」の表示がなければ、コントローラ91は、ステップS226にて「Yes」と判定して、ステップS228にて表示装置93に「合格」を表示してステップS230にてこの評価プログラムの実行を終了する。一方、「不合格」の表示があれば、コントローラ91は、ステップS226にて「No」と判定して、ステップS230にてこの評価プログラムの実行を終了する。
上記のように構成されるとともに動作する上記実施形態においては、コントローラ91は、ステップS16,S20,S22,S24からなる像形成処理により、時間経過に従って変化する鉄管OBのX線の照射位置からの回折X線であってスリット17aを介した回折X線による像Xが、イメージングプレート33の周方向に沿って連続して形成される。そして、ステップS30,S34,S102〜S114,S132〜S136,S164,S166からなる像読取り処理により、イメージングプレート33に周方向に沿って形成された回折X線による像Xへのレーザ検出装置40によるレーザ光の照射により、レーザ光検出装置40が受光する光の強度を表わす受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)が周方向位置及び半径方向位置に対応させて順次読取られる。したがって、読取られた受光強度データI(n,m)は、イメージングプレート33の周方向位置において鉄管OBの複数の箇所における受光強度を表すとともに、イメージングプレート33の半径方向において受光強度の分布(すなわち回折X線の露光強度の分布)を表すことになる。これにより、上記実施形態によれば、鉄管OBの複数の箇所における受光強度の分布(すなわち回折X線の露光強度の分布)、すなわち鉄管OBの複数の箇所の状態による特性が取得されることになり、鉄管OBの複数の箇所の状態による特性を短時間で測定できるようになる。
この場合、前記像形成処理及び前記像読取り処理は同時に行われるので、イメージングプレート33がある回転位置にあるとき、前記像形成処理でイメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、イメージングプレート33が回転することで別の回転位置になったとき、前記像読取り処理で読み取られる。その結果、イメージングプレート33を回転させながら、イメージングプレート33に対する回折X線による像Xの形成と、前記形成された像Xの読取りとが、連続して行われるので、鉄管OBの複数の箇所の測定がごく短時間で行われるようになる。
また、上記実施形態においては、消去用光照射装置80が、イメージングプレート33の回転方向において、レーザ光照射位置を超えたレーザ光の照射位置とスリット17aとの間であって、スリット17aの手前位置にてイメージングプレート33に対向して配置され、イメージングプレート33に記録された回折X線による像Xを消去するための消去用光をイメージングプレート33の半径方向に沿って照射する。したがって、レーザ検出装置40による回折X線による像Xの読取り後、像Xがイメージングプレート33から自動的に消去され、次の回折X線による像Xの形成及び読取りを連続して行うことができるので、鉄管OBの多くの箇所の測定がごく短時間で行われるようになる。
また、上記実施形態においては、ステップS208〜S212の処理により、前記像読取り処理によって読取られた受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)を用いて受光強度曲線(回折X線の露光強度曲線)の半価幅が計算されて評価され、評価結果が表示される。したがって、鉄管OBの測定箇所の異常が自動的に判断されるようになる。また、鉄管OBの測定箇所の異常が判定された場合には、ステップS214の処理により、周方向移動量データR(n)、軸方向移動量データL(n)及び回転角度データθ(n)も表示されるので、異常箇所を簡単に特定できるようになる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態では、受光強度曲線(回折X線の露光強度分布)の半価幅を求めるようにしたが、回折X線による像Xによる受光強度の分布(回折X線の露光強度の分布)から算出できる評価値であれば、どのような評価値を計算し、その評価値を用いて測定箇所の合否判定を行うようにしてもよい。例えば、評価値として、鉄管OBの測定箇所における残留オーステナイトの存在割合を検出して鉄管OBを評価するようにしてもよい。
具体的には、イメージングプレート33の半径方向へのレーザ検出装置40の移動幅をある程度大きくして、イメージングプレート33の半径方向におけるレーザ検出装置40による受光強度の分布を求める。この場合には、受光強度の分布は、図13に示すように、回折X線による像Xに対応したピークに加えて、残留オーステナイトが存在すると、小さなピークが現れる。なお、大きなピークは鉄元素の大部分の配列構造である体心立方格子構造(フェライト)によるもので、小さなピークは鉄元素の面心立方構造(オーステナイト)によるものであり、上記実施形態の場合には、大きなピークに対応するフェライトによる回折X線による像Xの受光強度曲線のみを求めるようにしている。そして、この場合、大きなピークの受光強度曲線と平坦なレベルの間の面積(以下、回折積分強度という)と、小さなピークの回折積分強度の値を求めて、大きなピークの回折積分強度に対する小さなピークの回折積分強度の比を求め、前記求めた比と予め設定された値との差が許容値以下であれば、すなわち残留オーステナイトの存在割合が設定通りであれば、合格として判定する。一方、大きなピークの回折積分強度に対する小さなピークの回折積分強度の比と、予め設定された値との差が許容値より大きければ、すなわち残留オーステナイトの存在割合が設定通りになっていなければ、不合格として判定する。そして、この場合も、前記比の値、合否判定結果、並びに不合格判定された受光強度データI(n,m)に対応した周方向移動量データR(n)、軸方向移動量データL(n)及び回転角度データθ(n)を、表示装置93に表示する。
また、上記実施形態では、鉄管OBの回転速度及びX線回折測定装置の鉄管OBの軸線方向の移動速度、すなわち周方向移動速度及び軸方向移動速度が一定になるように制御し、かつテーブル32の回転速度も一定になるように制御して、X線の照射位置の周方向移動位置及び軸方向移動位置を取得することで、レーザ検出装置40により検出される半径方向の受光強度の分布(回折X線の露光強度の分布)に対応したX線の照射位置を特定するようにした。しかし、テーブル32の回転速度とX線の照射位置の移動速度との比率が設定値になるように制御でき、X線の照射位置の移動速度と設定した時間間隔でのX線の照射位置(X線の照射位置の移動経路)とを取得できれば、レーザ検出装置40により検出される半径方向の受光強度の分布に対応するX線の照射位置を特定できるので、上記実施形態とは別の制御方法を採用することもできる。例えば、X線の照射位置の周方向移動位置及び軸方向移動位置を検出するとともに、X線の照射位置の周方向移動速度及び軸方向移動速度を検出して、検出した周方向移動速度及び軸方向移動速度の合成ベクトルの大きさとテーブル32の回転速度の比率が設定値になるように制御してもよい。これによれば、X線の照射位置を任意に動かして検査を行いたい場合でも、本発明の適用は可能である。
また、上記実施形態においては、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置をイメージングプレート33の回転方向においてスリット17aから180度の位置に位置させ、消去用光照射装置80をイメージングプレート33の回転方向においてスリット17aから270度の位置に位置させるようにした。しかし、スリット17aがイメージングプレートの回転方向においてレーザ光の照射位置よりも手前側に位置するとともに、消去用光照射装置80がイメージングプレート33の回転方向において、レーザ光の照射位置を超えたレーザ光の照射位置とスリット17aとの間であって、スリット17の手前位置に位置していれば、スリット17a、レーザ検出装置40及び消去用光照射装置80は上記実施形態とは異なる位置にあってもよい。
また、上記実施形態では、X線回折測定装置内に1つのレーザ検出装置40、移動装置70及び消去用光照射装置80を設けるとともに、第1切欠き下面壁17に1つのスリット17aを設けて、回折環の1箇所の回折X線による像Xのみをレーザ検出装置40により受光強度を検出することで読取るようにした。しかし、これに代えて、X線回折測定装置内に複数のレーザ検出装置、移動装置及び消去用光照射装置をそれぞれ設けるとともに、ケース10の下面壁に複数のスリットを設けて、回折環の複数箇所の回折X線による像を複数のレーザ検出装置により受光強度を検出することで読取るようにしてもよい。
この場合、例えば、図14に示すように、レーザ検出装置40A,40B及び移動装置70A,70Bを、ケース10内において、イメージングプレート33の中心位置に対してそれぞれ対称位置に設ける。なお、レーザ検出装置40A,40B及び移動装置70A,70Bは、上記実施形態のレーザ検出装置40及び移動装置70とそれぞれ同一の構成である。また、ケース10の下面壁12部分であって、レーザ検出装置40A,40B及び移動装置70A,70Bに対して90度離れた位置に、上記第1切欠き下面壁17と同一高さに構成した第3及び第4切欠き下面壁17A,17Bを設けるとともに、第3及び第4切欠き下面壁17A,17Bにイメージングプレート33の半径方向に延設された上記スリット17aと同様に構成したスリット17Aa,17Baをそれぞれ設ける。さらに、イメージングプレート33の周方向位置において、レーザ検出装置40A及び移動装置70Aと第4切欠き下面壁17Bの間に半径方向に延設された消去用光照射装置80Aを設けるとともに、レーザ検出装置40B及び移動装置70Bと第4切欠き下面壁17Aの間に半径方向に延設された消去用光照射装置80Bを設ける。なお、消去用光照射装置80A、80Bも、上記実施形態の消去用光照射装置80と同一の構成である。
このように構成した変形例においては、X線出射器20からX線を出射させて鉄管OBの測定箇所にX線を照射すると、鉄管OBによる回折X線はスリット17Aa,17Baを同時に通過して、イメージングプレート33には、2つの回折X線による像Xが同時に形成される。そして、この2つの像Xは、イメージングプレート33の図示矢印方向の回転により、レーザ検出装置40A,40Bに対向する位置に移動し、レーザ検出装置40A,40Bにより2つの像Xに関する半径方向の受光強度がそれぞれ同時に測定される。この場合、コントローラ91は、上記実施形態の場合と同様なメインプログラムの実行により、X線出射によるイメージングプレート33の2つの像Xの形成と、上記実施形態の場合と同様な受光強度データ、半径位置データ、周方向移動量データ及び軸方向移動量データの取得を前記2つの像Xに対して同時に行う。その後、測定の終了した2つの像Xは、消去用光照射装置80A,80Bによってそれぞれ消去される。また、コントローラ91は、上記実施形態の場合と同様な評価プログラムの実行により、測定した2つの像Xに関する受光強度データを用いて評価値を計算する。
この変形例によれば、回折環の2つの位置における回折X線による2つの像Xが同時に測定されるので、回折X線による2つの像Xに関する半径方向の受光強度の曲線(回折X線の露光強度の分布)から2つの半価幅を計算でき、半価幅の検出精度すなわち鉄管OBの測定箇所の検出精度が向上する。また、回折環の2つの位置における回折X線による2つの像Xに関する半径方向の受光強度の2つのピークも検出できるので、2つのピーク位置を用いて、cosα法によって鉄管OBの測定箇所の残留応力を評価値として計算することもでき、この残留応力を鉄管OBの測定箇所の評価に利用することもできる。
なお、この変形例においては、スリット17Aaからレーザ検出装置40Aによるレーザ光の照射位置までの第1の角度と、スリット17Baからレーザ検出装置40Aによるレーザ光の照射位置までの第2の角度とをそれぞれ90度の角度にして同一とするようにしたが、第1及び第2の角度が同一であれば、90度以外の角度であってもよい。また、対となる角度がそれぞれ同一であれば、スリット及びレーザ検出装置を3つ以上設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、X線の照射、イメージングプレート33の回転、レーザ光の照射による回折X線による像Xの読取り、及び消去用光(LED光)による回折X線による像Xの消去を同時に並行して行うように構成した。しかし、測定時間がある程度長くてもよい場合には、X線回折測定システムを図15のように構成してもよい。次に、この変形例に係るX線回折測定システムについて説明するが、上記実施形態と同一部分に関しては同一符号を付し、説明を省略する。
このX線回折測定システムにおけるX線回折測定装置においては、ケース10の下面壁12と正面壁13の角部には、第1切欠き下面壁17と切欠き正面壁18だけが設けられ、第1切欠き下面壁17には、上記実施形態と同様なスリット17aが設けられるとともに、X線を通過させるための貫通孔17bが設けられている。X線出射器20から出射されたX線は、この貫通孔17bを通過する。
また、このX線回折測定装置においては、レーザ検出装置40は、イメージングプレート33の外径端よりも図示左上方向位置にてケース10の下面壁12に固定されている。この場合も、レーザ検出装置40からのレーザ光の照射位置は、イメージングプレート33の中心を挟んでスリット17aを介した回折X線の入射位置の反対側、すなわち前記回折X線の入射位置から180度回転した位置である。そして、レーザ検出装置40をイメージングプレート33の半径方向に移動する上記実施形態の移動装置70に代えて、スピンドルモータ31、テーブル32及びイメージングプレート33を、イメージングプレート33の半径方向すなわち図面上にて左上がりの斜め方向に移動させる移動装置70Cを有している。この移動装置70Cは、詳しくは後述するように、イメージングプレート33へのX線の入射、レーザ光の照射による回折X線による像Xの読取り、及び消去用光(LED光)による回折X線による像Xの消去のために、スピンドルモータ31、テーブル32及びイメージングプレート33を移動させる。
移動装置70Cは、図16に示すように、X線出射器20の下方にて、スピンドルモータ31を組付けた移動ステージ71Cを備えている。移動ステージ71Cは、フィードモータ72C及びスクリューロッド73Cにより、X線出射器20から出射されたX線の光軸と鉄管OBの測定箇所の法線とが成す平面内であって、前記X線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。フィードモータ72Cは、移動装置70C内に固定されていてケース10に対して移動不能となっている。スクリューロッド73Cは、X線出射器20から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されていて、その一端部がフィードモータ72Cの出力軸に連結されている。スクリューロッド73Cの他端部は、移動装置70C内に設けた軸受部74Cに回転可能に支持されている。また、移動ステージ71Cは、それぞれ移動装置70C内にて固定された、対向する1対の板状のガイド75C,75Cにより挟まれていて、スクリューロッド73Cの軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ72Cを正転又は逆転駆動すると、フィードモータ72Cの回転運動が移動ステージ71Cの直線運動に変換される。フィードモータ72C内には、上記実施形態のエンコーダ71aと同様なエンコーダ72Caが組み込まれている。このフィードモータ72Cにはフィードモータ制御回路78が接続されている。また、フィードモータ72Cのエンコーダ72Caには、位置検出回路77C及びフィードモータ制御回路78が接続されている。
位置検出回路77C及びフィードモータ制御回路78は、上記実施形態の場合と同様に、コントローラ91からの指令により作動開始する。位置検出回路77Cによる位置検出動作に関しては、上記実施形態の場合と同じであるが、この位置検出回路77Cは移動ステージ71Cの移動位置を検出する点で上記実施形態の半径位置検出回路77とは異なる。 一対のガイド75C,75Cの上端は、板状の上壁76Cによって連結されている。上壁76Cには、貫通孔76Caが設けられていて、貫通孔76Caには、X線出射器20の出射口21の先端部が挿入されている。なお、X線出射器20の出射口21の先端が移動ステージ71Cに当接しないように、X線出射器20及び移動ステージ71Cの位置が設定されている。
また、移動ステージ71Cには、スピンドルモータ31が組み付けられている。スピンドルモータ31内には、上記実施形態の場合と同様なエンコーダ31bが組み込まれている。ただし、エンコーダ31bは、パルス列信号を、スピンドルモータ制御回路37に加えて回転角度検出回路38にも出力する。また、エンコーダ31bは、スピンドルモータ31が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、回転角度検出回路38及びコントローラ91に出力する。回転角度検出回路38は、エンコーダ31bから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ31の回転角度すなわちイメージングプレート33の回転角度θpを計算して、コントローラ91に出力する。そして、回転角度検出回路38は、エンコーダ31bから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0度の基準回転位置である。
さらに、X線回折測定装置は、上記実施形態の消去用光照射装置80に代わる消去用光照射装置80Cを有する。この消去用光照射装置80Cは、小さな範囲内に消去用光(LED)を照射する発光素子(LED)を備え、消去位置に移動して来たイメージングプレート33に対向するようにレーザ検出装置40の筐体41内に設けられている。
次に、この変形例に係るX線回折測定システムの動作を、コントローラ91によるプログラム処理を含めて説明する。まず、作業者は、上記実施形態の場合と同様に、検査される鉄管OBを円柱状物体104A,104B上に載置し、コンピュータ装置90及び高電圧電源22をX線回折測定装置に接続し、X線出射器20からのX線の照射位置が鉄管OBの測定開始位置になるようにX線回折測定装置を位置させ、かつ測定対象物である鉄管OBの材質(例えば、鉄)を入力した後、鉄管OBの測定開始をコントローラ91に指示する。この場合、移動装置70Cにより、スピンドルモータ31、テーブル32及びイメージングプレート33は、図15及び図16の位置にあり、X線出射器20から出射されるX線は鉄管OBの内側面に照射される状態にある。
コントローラ91は、図17AのステップS300にてメインプログラムの実行を開始する。なお、図17A及び図17Bのメインプログラムにおいては、上記実施形態と同様な各種回路の作動開始、作動停止などの詳細な処理を省略している。このメインプログラムの実行開始後、コントローラ91は、ステップS302にて、スピンドルモータ制御回路37にスピンドルモータ31の回転開始を指示して、テーブル32を上記実施形態の場合と同様に一定速度で回転させ始める。そして、コントローラ91は、ステップS304にて、スピンドルモータ31が基準回転位置に達した時点で、エンコーダ31bからのインデックス信号の入力に応答して、X線制御回路23を制御してX線出射器20によるX線の出射を開始させる。これと同時に、コントローラ91は、ステップS306にて、モータ103Aのためのモータ駆動回路108A及びモータ103Bのためのモータ駆動回路,モータ113Aのためのモータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路を制御して、上記実施形態の場合と同様に、鉄管OBを一定速度で軸線周りに回転させ始めるとともに、X線回折測定装置を軸線方向に一定速度で移動させ始める。そして、コントローラ91は、ステップS308にて、測定時間である所定時間Tbごとに、上記実施形態のステップS114,S128と同様に、周方向移動量検出回路107からの周方向移動量Rと、軸方向移動量検出回路121からの軸方向移動量Lを入力して、周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)を順次記憶していく。
そして、コントローラ91は、ステップS310にて、スピンドルモータ31のエンコーダ31bからふたたびインデックス信号が入力されると、すなわちイメージングプレート33が1回転した時点で、スピンドルモータ制御回路37を制御してスピンドルモータ31(テーブル32及びイメージングプレート33)の回転を停止させ、X線制御回路23を制御してX線出射器20によるX線の出射、かつモータ103Aのためのモータ駆動回路108A及びモータ103Bのためのモータ駆動回路,モータ113Aのためのモータ駆動回路122A及びモータ113B,114A,114Bのためのモータ駆動回路を制御して、鉄管OBの回転及びX線回折測定装置の移動を停止させる。この時点では、イメージングプレート33に回折X線による像Xが略環状に形成され、イメージングプレート33の1回転分の所定時間Tbごとの周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)が記憶されている。
次に、コントローラ91は、ステップS312にて、フィードモータ制御回路78を制御して、レーザ検出装置40によるレーザ光の照射位置がイメージングプレート33における固定部材35の左上近傍位置(イメージングプレート33の中心に対して図示左上部分の中心近傍位置)に位置するように、移動ステージ71Cを図示左上方向に移動させる。次に、コントローラ91は、ステップS314にて、スピンドルモータ制御回路37を制御してスピンドルモータ31を回転させて、テーブル32を180度回転させる。このスピンドルモータ制御回路37の制御においては、スピンドルモータ31を停止指令と共に回転が停止する低速で回転させ始めた後、回転角度検出回路38からのスピンドルモータ31(テーブル32及びイメージングプレート33)の回転角度θpを入力し続けて、回転角度θpが180度になった時点でスピンドルモータ31の回転を停止させる。
次に、コントローラ91は、ステップS316にて、レーザ駆動回路61を制御して、レーザ検出装置40からレーザ光をイメージングプレート33に出射させ始める。この場合、前記ステップS314のテーブル32の回転処理後におけるイメージングプレート33の回転位置は、移動ステージ71Cの移動前のイメージングプレート33の回転位置から180度回転した位置であり、前述したX線の照射工程ではイメージングプレート33の回転開始位置と回転終了位置とは同じであり、レーザ光の照射位置はイメージングプレート33の中心を挟んでスリット17aと反対側の直線上に位置するので、レーザ光のイメージングプレート33に対する照射開始位置は、回折X線による像Xの形成開始位置及び形成終了位置と同じである。
また、前記レーザ光の照射開始と同時に、コントローラ91は、ステップS318にて、スピンドルモータ制御回路37にスピンドルモータ31の回転開始を指示して、スピンドルモータ31(テーブル32及びイメージングプレート33)を前記速度と同じ一定回転速度で回転させ始めるとともに、フィードモータ制御回路78を制御して、移動ステージ71Cを、レーザ光の照射位置がイメージングプレート33の中心近傍位置と外周近傍位置との間(中心位置の図示左上に位置するイメージングプレート33の部分)で往復動させ始める。これにより、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、レーザ検出装置40からのレーザ光によって周方向及び半径方向に走査され始める。なお、このレーザ検出装置40の往復動の速度も、鉄管OBの回転速度、X線回折測定装置の移動速度及びテーブル32の回転速度に比べて極めて速い。そして、コントローラ91は、ステップS320にて、所定時間Tbごとに、所定時間Ta(レーザ光の半径方向への1往復時間)に渡って、A/D変換器67からの受光強度及び位置検出回路77Cによる検出半径位置を入力して、受光強度データI(m,n)及び半径位置データr(m,n)として順次記憶する。なお、このステップS320の処理は、上記実施形態のステップS102〜S112,S132〜S136と同様な処理である。また、位置検出回路77Cによって検出される位置は移動ステージ71C(イメージングプレート33)の位置であるが、この場合、レーザ検出装置40は予め決められた位置に固定されているので、位置検出回路77Cによる検出位置は上記実施形態と同様なイメージングプレート33の半径位置に簡単に変換される。
そして、コントローラ91は、ステップS322にて、テーブル32及びイメージングプレート33の1回転が終了すると、すなわちイメージングプレート33のエンコーダ31bからインデックス信号が出力されてからテーブル32及びイメージングプレート33が180度回転すると、スピンドルモータ制御回路37を制御してスピンドルモータ31(イメージングプレート33)の回転を停止させ、フィードモータ制御回路78を制御して移動ステージ71C(イメージングプレート33)の往復動を停止させ、かつレーザ駆動回路61を制御してレーザ検出装置40によるレーザ光の照射を停止させる。この状態では、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xに関する受光強度データI(m,n)及び半径位置データr(m,n)が全周に渡って取得される。
前述のように、このような受光強度データI(m,n)及び半径位置データr(m,n)の取得に関しては、レーザ検出装置40による回折X線による像Xの測定開始位置は、前述したイメージングプレート33に対する回折X線による像Xの形成開始位置と同じである。したがって、取得した受光強度データI(m,n)及び半径位置データr(m,n)は、前記取得した周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)に対応している。ただし、上記実施形態で述べたように、周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)に関しては、レーザ光によるイメージングプレート33の半径方向の1往復の走査の終了タイミングを基準にしているので、全ての周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)に前記1往復の間の移動量をそれぞれ加算する補正をして、正規の周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)にする必要がある。この移動量は、X線照射位置の周方向移動速度Rsp及び軸方向移動速度Lspに前記1往復の走査時間である所定時間Taをそれぞれ乗算した値Rs・Ta,Ls・Taである。この場合、前記ステップS320の処理中のステップS320aの補正処理により、前記記憶されている周方向移動量データR(n)は値R(n)+Rs・Taにそれぞれ補正されて新たに記憶されるとともに、軸方向移動量データL(n)は値L(n)+Ls・Tsにそれぞれ補正されて新たに記憶される。また、前記ステップS320の処理中のステップS320bの処理により、回転角度データθ(n)も、上記実施形態のステップS120の処理と同様にして計算して記憶される。なお、回転角度データθ(n)の算出に必要な最終周方向移動量データRe(k)は、前記ステップS308にてセンサ回路86から基準周方向位置の検出信号が入力したタイミングで、周方向移動量Rを最終周方向移動量データRe(k)として記憶することで得る。このとき、上記実施形態と同様、周方向移動量検出回路107への指令により周方向移動量をリセットする。そして、鉄管OBが1回転する前の最終周方向移動量データRe(0)は予め記憶されていること、及び最終周方向移動量データRe(1)が得られた段階で最終周方向移動量データRe(1)を最終周方向移動量データRe(0)として、それまでに得られている回転角度データθ(n)を再計算して記憶し直すことは上記実施形態と同じである。
次に、コントローラ91は、ステップS324にて、フィードモータ制御回路78を制御して、消去用光照射装置80Cによる消去用光(LED光)がイメージングプレート33における固定部材35の左上近傍位置(イメージングプレート33の中心に対して図示左上部分の中心近傍位置)に位置するように、移動ステージ71Cを図示左上方向又は右下方向に移動させる。そして、コントローラ91は、ステップS326にて、発光素子駆動回路81を制御して消去用光照射装置80Cによる消去用光の出射を開始させ始める。また、これと同時に、コントローラ91は、ステップS328にて、スピンドルモータ制御回路37にスピンドルモータ31の回転開始を指示して、スピンドルモータ31を所定速度で回転させ始めるとともに、フィードモータ制御回路78を制御して、移動ステージ71Cを、消去用光の照射位置がイメージングプレート33の中心近傍位置と外周近傍位置との間(中心位置の図示左上に位置するイメージングプレート33の部分)で往復動させ始める。これにより、イメージングプレート33に形成された回折X線による像Xが、消去用光照射装置80Cからの消去用光によって周方向及び半径方向に沿って消去され始める。そして、イメージングプレート33を少なくとも1回転させた時点で、コントローラ91は、ステップS330にて、発光素子駆動回路81を制御して消去用光照射装置80Cによる消去用光の出射を停止させ、スピンドルモータ制御回路37を制御してテーブル32及びイメージングプレート33の回転を停止させ、かつフィードモータ制御回路78を制御して移動ステージ71Cの移動を停止させる。これにより、イメージングプレート33に形成された回折X線による全ての像Xが消去される。
その後、コントローラ91は、ステップS332にて、フィードモータ制御回路78を制御して、移動ステージ71C(イメージングプレート33)をX線の照射位置まで移動し、ステップS334にてメインプログラムの実行を終了する。その後、コントローラ91は、前述したメインプログラムの処理を繰返し実行することにより、イメージングプレート33をX線の照射による回折X線による像Xの形成、レーザ光の照射による回折X線による像Xの読取り、及び消去用光(LED光)による回折X線による像Xの消去を、イメージングプレート33の1回転ごとに繰り返し実行する。なお、このイメージングプレート33の1回転ごとの繰り返し処理においては、受光強度データI(m,n)、半径位置データr(m,n)、周方向移動量データR(n)、軸方向移動量データL(n)及び回転角度データθ(n)を特定する変数nは。前回の測定終了時の変数nの次の値に順次変更される。この場合、イメージングプレート33がX線の照射位置に移動された際には、鉄管OBに対するX線の照射位置は前回の測定終了箇所に位置するので、鉄管OBの測定箇所が螺旋状に順次移動していく。そして、鉄管OBの測定終了箇所を過ぎた時点で、前記繰返し処理の実行を終了すれば、鉄管OBの必要な測定箇所が全て測定されるようになる。また、このメインプログラムの実行中又は実行終了後に、上記実施形態の図10の評価プログラムを実行することにより、鉄管OBの合格の評価がなされる。
なお、この変形例においては、所定時間Tbごとに受光強度データI(m,n)、半径位置データr(m,n)、周方向移動量データR(n)、軸方向移動量データL(n)及び回転角度データθ(n)の取得を行うようにした。しかし、この変形例では、スピンドルモータ31(イメージングプレート33)の回転角度を検出する回転角度検出回路38を備えているので、回転角度検出回路38によって検出される回転角度θpを用いて、所定時間Tbに対応した所定の検出角度ごとに、受光強度データI(m,n)、半径位置データr(m,n)、周方向移動量データR(n)、軸方向移動量データL(n)及び回転角度データθ(n)を取得するようにしてもよい。
また、この変形例において、スリット17a及び貫通孔17bに代えて、第1切欠き下面壁17に、X線出射器20からのX線が通過するとともに、測定対象物が発生した環状の回折X線の全てが通過する大きな円形孔を設けるように変更すれば、測定対象物による回折環全体を形成して評価を行う測定にも利用できるようになる。これにより、この変形例に係るX線回折測定装置においては、第1切欠き下面壁17の構成を多少変更するだけで、用途が広がる。
なお、この変形例においては、消去用光照射装置80Cをケース10に固定されたレーザ検出装置40の筐体41内に設けるようにしたが、イメージングプレート33の回折X線による像Xが形成される面に対向し得る位置であれば、ケース10内の他の箇所に固定するようにしてもよい。また、スリット17aを前記変形例の位置からイメージングプレート33の中心に対して対称位置に変更、すなわちスリット17aに代わるスリットをイメージングプレート33の中心に対して図16の左上方向の位置に設けるようにすれば、イメージングプレート33をステップS312の処理によりレーザ光の照射位置に移動させた際には、イメージングプレート33の回転方向における回折X線による像Xの開始回転位置とレーザ光の照射開始位置とが一致するので、ステップS314のテーブル32の180度の回転処理は不要となる。
また、上記実施形態及び変形例では、鉄管OBを回転させてX線回折測定装置を鉄管OBの内側にて軸線方向に移動させるようにしたが、鉄管OBに対するX線の照射位置を変化させることができれば、どのような構成を採用してもよい。例えば、鉄管OBを回転させながら、鉄管OB自身を軸線方向に移動させるようにしてもよいし、X線回折測定装置が、鉄管OBの内側面との距離を一定に保ったまま、鉄管OBの内側面に対向する位置にて螺旋状に移動するように構成してもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、X線回折測定システムを測定対象物である鉄管OBの内側面を検査するための構成としたが、鉄管OB以外の測定対象物を対象にして、測定対象物と相対的にX線出射器20を移動させることができ、X線の照射位置の移動速度とテーブル32及びイメージングプレート33の回転速度が一定になるように制御でき、かつX線の照射位置の移動速度と移動経路を取得することができれば、どのような測定対象物の測定も可能であるとともに、X線回折測定システムをどのように構成してもよい。例えば、測定対象物として平板状の鉄板を採用し、鉄板を載置したステージをX方向及びY方向に移動させることにより、鉄板のX線回折測定装置に対する位置を変化させて検査するような構成でもよい。また、X線回折測定装置に4つの車輪を設けて、X線回折測定装置を鉄板上で移動させることにより、X線回折測定装置の鉄板に対する位置を変化させて検査するような構成でもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、イメージングプレート33に形成された、測定対象物(鉄管OB)による回折X線による像Xを、前記像Xのレーザ光による読取り直後に消去用光照射装置80を用いて消去して、回折X線による像Xが次々に形成できるようにした。しかし、測定対象物(鉄管OB)の測定箇所がそれほど多くなく、イメージングプレート33の1回転中に形成された数の回折X線による像Xで充分であれば、上記のように測定対象物(鉄管OB)の測定中に像Xの消去を行わずに、測定終了後に別途像Xの消去を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態及び変形例では、受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)と、周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)とをそれぞれ対応させて記憶するようにした。しかし、測定対象物(鉄管OB)がそれほど大きくなく、測定箇所もそれほど多くなくて、いずれかの測定箇所の不合格さえ検出すればよい場合には、変数nごとに、受光強度データI(n,m)及び半径位置データr(n,m)のみを用いて、評価値である半価幅、残留オーステナイトの存在割合又は残留応力を計算すればよく、この場合には、周方向移動量データR(n)及び軸方向移動量データL(n)の検出及び記憶は不要である。