JP2012122737A - X線回折装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定試料およびX線照射装置の姿勢を制御する駆動機構を有さず、かつ測定可能な試料の大きさや形状に特段の制約のないX線回折装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るX線回折装置は、X線照射装置と二次元X線検出器とを有するX線回折装置であって、前記二次元X線検出器は平板状に設置されており、前記X線照射装置は前記二次元X線検出器を貫通するように配設され、前記二次元X線検出器と前記X線照射装置とが一体に固定され、前記X線照射装置の姿勢を規定しかつX線の漏洩を防止するための筒状シールド部材が前記二次元X線検出器の周縁に配設されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、X線回折装置に関し、特にX線回折パターンを二次元で記録するX線回折装置に関するものである。
X線回折装置は、非破壊的な材料検査装置として、結晶構造分析、成分分析、残留応力測定など様々な材料評価に適用されている。回折X線の回折角度や回折強度を検出するため、一般的に、ゴニオメータ、ゼロ次元のシンチレーションカウンタ(SC: scintillation counter)、一次元の位置敏感型検出器(PSD: position sensitive detector)などが広く利用されている。ただし、これらのX線回折装置では、1回の照射で零次元や一次元の回折情報しか得られないため、材料評価に必要十分な情報得るに複雑な位置駆動機構や長い測定時間を要する弱点がある。
そのような弱点に対し、短時間で広範囲の回折情報を取得できる二次元検出器を設けたX線回折装置がある。二次元検出器としては、例えば、二次元の位置敏感型比例計数管(PSPC: position sensitive proportional counter)やイメージングプレート(IP: imaging plate)などが使用される。なお、イメージングプレートとは、プラスチックなどの支持板上に輝尽発光体(BaFX:Eu2+, X=Br, I)が塗布された放射線画像検出器の一種である。
例えば、特許文献1(特開2000-146871)には、試料の微小部にX線を照射して、その微小部に発生する回折X線を二次元検出器で検出する微小部X線回折装置および測定方法が開示されている。該X線回折装置は、二次元検出器として円筒状の輝尽性蛍光体を試料の回りに配置し、試料から試料面接線方向に沿って出る回折X線と試料面垂直方向に沿って出る回折X線との両方が輝尽性蛍光体によって検知できるように、試料の試料面を輝尽性蛍光体に対して傾斜(例えば45°傾斜)させている。特許文献1によると、試料に対して従来行われていた2軸回転のうちの1軸を省略し、試料の面内回転だけで輝尽性蛍光体に回折線像が得られるため、装置構造が簡単になって測定精度の低下を回避し、さらに測定時間を短縮できるとされている。
また、特許文献2(特開2005-351780)には、二次元X線検出器を用いて透過法に基づいた測定を行うことができるX線分析装置が開示されている。該X線分析装置は、試料を水平に支持する試料台と、試料にX線を照射するX線照射装置と、試料に対するX線入射角度を0°〜90°の範囲で制御するようにX線照射装置を支持するX線源アームと、試料から出るX線を検出する蓄積性蛍光体プレートとを有している。蓄積性蛍光体プレートは、X線入射角度と同じ読取角度とするとき、X線入射点を通り入射X線ビームに直交する円筒中心軸線を中心とした円筒面上の180°〜360°(好ましくは100°〜360°)の角度範囲に設けられている。特許文献2によると、試料で反射する回折線に加えて、透過法に基づいたX 線分析をも行うことができるとされている。
特開2000−146871号公報 特開2005−351780号公報
特許文献1や特許文献2に記載のX線回折装置は、測定試料またはX線照射装置の姿勢を制御する駆動機構を備えているため装置構成が複雑になり装置全体が大きくなりやすい弱点がある。また、二次元X線検出器が試料を囲む円筒面を形成しているため、測定可能な試料の大きさや形状が制約される弱点がある。すなわち、従来のX線回折装置は、実験室内に設置され比較的小さな測定試料にしか適用できない問題があった。
一方、近年、プラント等で使用される大型機器においては、該大型機器を構成する部材の健全性や劣化度合を検査するために、現場における非破壊検査の重要性が急速に高まっている。しかしながら、上述したような従来のX線回折装置は、装置が大きくなりやすい上に測定可能な試料の大きさや形状が制約されることから、大型機器を構成する部材に対する現場における非破壊検査に適用することが極めて困難である。
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決し、測定試料およびX線照射装置の姿勢を制御する駆動機構を有さず、かつ測定可能な試料の大きさや形状に特段の制約のないX線回折装置を提供することにある。
本発明の1つの態様は、上記目的を達成するため、X線照射装置と二次元X線検出器とを有するX線回折装置であって、前記二次元X線検出器は平面状に設置されており、前記X線照射装置は前記二次元X線検出器の中央領域を貫通するように配設され、前記二次元X線検出器と前記X線照射装置とが一体に固定され、前記X線照射装置の姿勢を規定しかつX線の漏洩を防止するための筒状シールド部材が前記二次元X線検出器の周縁に配設されていることを特徴とするX線回折装置を提供する。なお、本発明において、筒状シールド部材の「筒状」とは、横断面形状が円形に限定されるものではなく、二次元X線検出器の外形に沿った任意の形状(例えば、矩形状や多角形状など)を含む。
本発明によれば、測定試料およびX線照射装置の姿勢を制御する駆動機構を有さず、かつ測定可能な試料の大きさや形状に特段の制約のないX線回折装置を提供することができる。その結果、X線回折装置を小型化することができる。さらに、測定対象物が移動困難な場合(例えば、大型機器を構成する部材に対する現場における検査)にも適用できる。
本発明に係るX線回折装置の1例を示す斜視模式図である。 異なる傾斜角βを有する筒状シールド部材の例を示す斜視模式図である。 本発明に係るX線回折装置の他の1例を示す斜視模式図である。 本発明に係るX線回折装置に用いる二次元X線検出器の1例(イメージングプレート)を示す斜視模式図である。 本発明に係るX線回折装置の更に他の1例を示す斜視模式図である。 本発明に係るX線回折装置の好適な具体例を示す斜視模式図である。 読み取り装置を用いて画像化したX線回折パターンの1例を示す図である。
前述したように、本発明に係るX線回折装置は、X線照射装置と二次元X線検出器とを有するX線回折装置であって、前記二次元X線検出器は平板状に設置されており、前記X線照射装置は前記二次元X線検出器を貫通するように配設され、前記二次元X線検出器と前記X線照射装置とが一体に固定され、前記X線照射装置の姿勢を規定しかつX線の漏洩を防止するための筒状シールド部材が前記二次元X線検出器の周縁に配設されていることを特徴とする。
また、本発明は、上記の発明に係るX線回折装置において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記筒状シールド部材が容易に交換できるように着脱可能に構成されている。
(2)前記二次元X線検出器が、輝尽性蛍光体を用いたイメージングプレートである。
(3)前記筒状シールド部材が可視光の遮光カバーを兼ねている。
(4)前記イメージングプレートが、可視光は遮光するがX線は透過するカートリッジに収容されている。
(5)前記イメージングプレートが容易に交換できるように着脱可能に構成されている。
(6)前記二次元X線検出器が二次元の位置敏感型比例計数管である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同義の部材には同じ符号を付して重複する説明を省略する。また、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
図1は、本発明に係るX線回折装置の1例を示す斜視模式図である。図1に示したように、本発明に係るX線回折装置10は、X線照射装置1が平板状の二次元X線検出器2を貫通するように配設され、X線照射装置1の姿勢を規定しかつX線の漏洩を防止するための筒状シールド部材3が二次元X線検出器2の周縁に配設されている。
X線照射装置(例えば、X線管球)1から照射された入射X線は測定対象物4によって回折され、その回折線が二次元X線検出器2に受光され回折パターンが記録される。このとき、X線光路(入射線および回折線)の周囲にはX線を遮蔽する筒状シールド部材3が配設されているため、X線が漏洩することなく安全に測定することができる。なお、X線照射装置1には、照射位置表示装置(例えばレーザーポインタ、図示せず)が具備されていることが好ましい。それにより、測定対象物4の測定したい箇所への位置合わせが容易になる。
X線照射装置1と二次元X線検出器2とは一体に固定されている。X線照射装置1(厳密には、入射X線の光軸)と二次元X線検出器2とのなす角は、測定対象物4の表面形状や測定しようとする回折パターンなどに応じて任意に設定できるが、二次元X線検出器2の受光面の有効利用および解析の容易性の観点から、両者が垂直関係になるように固定されることが好ましい。
また、X線照射装置1を配設する二次元X線検出器2の面内位置にも特段の制限はなく、測定しようとする回折パターンなどに応じて任意に設定できる。例えば、回折パターンとしてDebye ringを全周で記録することを主目的にする場合には、二次元X線検出器2の中央領域にX線照射装置1を配設することが好ましく、複数のDebye ringを記録することを主目的にする場合には、二次元X線検出器2の端領域にX線照射装置1を配設することが好ましい。
筒状シールド部材3は、X線を遮蔽する役割に加えてX線照射装置1の照射姿勢を規定する役割も担っている。X線照射装置1と二次元X線検出器2とが垂直に固定されている場合、図1に示したX線の入射角Ψと筒状シールド部材3の傾斜角βとの間には、式「Ψ=90°−β」の関係が成り立つ。すなわち、異なる傾斜角βを有する筒状シールド部材3を利用することにより、X線の入射角Ψを制御することができる。言い換えると、X線の入射角Ψを制御するため、筒状シールド部材3を容易に交換できるように着脱可能に構成されていることが好ましい。
図2は、異なる傾斜角βを有する筒状シールド部材の例を示す斜視模式図である。図2に示したように、筒状シールド部材3の傾斜角を「β=75°」や「β=90°」とすることにより、X線の入射角を「Ψ=25°」や「Ψ=0°」に制御することができる。
図3は、本発明に係るX線回折装置の他の1例を示す斜視模式図である。図3に示したように、本発明に係るX線回折装置11は、筒状シールド部材3の下端側(測定対象物の側)が測定対象物の表面形状に合うように整形されている。これにより、従来は測定困難であった湾曲形状を有する部材(例えば、大径管など)に対しても、容易にX線測定することができる。なお、筒状シールド部材3は、整形性および軽量化の観点から、プラスチック材料からなることが好ましい。
図4は、本発明に係るX線回折装置に用いる二次元X線検出器の1例(イメージングプレート)を示す斜視模式図である。図4に示したように、イメージングプレート21は、プラスチックなどの支持平板5上に受光部材6として輝尽発光体(BaFX:Eu2+, X=Br, I)が形成されている。なお、図4では矩形状のイメージングプレートを記したが、該形状に限定されるものではない。
BaFX:Eu2+ (X=Br, I)輝尽発光体は、あらゆる放射線に対して高感度かつ広いダイナミックレンジを示し、さらに高い空間分解能で大面積の二次元分布計測が可能である特徴を有する。該輝尽発光体に放射線が照射されると結晶中に電子と正孔が形成され、該電子がトラップされて準安定状態の着色中心が形成される。電子のトラップ量は吸収線量に比例する。一方、着色中心を形成した輝尽発光体にHe-Neレーザーなどの励起光を照射すると、そこに貯えられていた放射線エネルギーは輝尽発光として放出される。そこで、X線測定に用いたイメージングプレート21にレーザー光を二次元走査して、発生する輝尽発光を光電子増倍管などで時系列信号として計測すれば、記録されたX線の線量分布を読み出すことができる。
なお、輝尽発光体を可視光で感光させると着色中心が消去され、繰り返し使用することが可能となる。言い換えると、X線測定途中では、着色中心が可視光で感光されないように遮光することが望ましい。そのため、二次元X線検出器2としてイメージングプレート21を使用する場合は、筒状シールド部材3が可視光の遮光カバーの役割を兼ねていることが好ましい。一方、可視光は遮光するがX線は透過するカートリッジに輝尽発光体が収容されたイメージングプレートを用いてもよい。その場合は、筒状シールド部材3が可視光を遮光していなくてもよい。X線測定の作業性・利便性の観点から、イメージングプレート21は容易に交換できるようにX線回折装置10から着脱可能に構成されていることが好ましい。
図5は、本発明に係るX線回折装置の他の1例を示す斜視模式図である。図5に示したように、本発明に係るX線回折装置11は、平板状の二次元X線検出器2として二次元の位置敏感型比例計数管22が用いられている。二次元の位置敏感型比例計数管22を用いることにより、X線回折パターンの測定および画像化を同時に行うことができる。なお、図5においては、筒状シールド部材3の上端側(二次元X線検出器の側)に傾斜角βを形成してX線照射装置1の照射姿勢を制御した場合を示した。
以上説明したように、本発明に係るX線回折装置は、平板状の二次元X線検出器とX線照射装置とを一体に固定し、X線照射装置の姿勢を規定する筒状シールド部材を有することから、測定試料およびX線照射装置の姿勢を制御するための駆動機構を省略することができ、従来の装置に比して小型化・軽量化することができる。さらに、筒状シールド部材が、X線照射装置の姿勢制御とX線の漏洩防止を兼ねていることから、測定可能な試料の大きさや形状に特段の制約がない利点もある(図2、図4参照)。すなわち、本発明に係るX線回折装置は、姿勢を動かすことができない測定対象物やサイズの大きい測定対象物に対して特に好適に用いることができる。
二次元X線検出器としてのイメージングプレートおよび二次元の位置敏感型比例計数管は、いずれも本発明の効果を果たすことができる。イメージングプレートは、構造が簡単であり製造コストが低い。また、測定対象物に合わせてサイズおよび形状の設計も容易である。一方、二次元の位置敏感型比例計数管は、イメージングプレートに比して構造が複雑で製造コストが高いが、X線回折パターンの測定および画像化を高精度かつ同時に可能である。これらの二次元X線検出器は、用途に応じて適宜選択することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図6は、本発明に係るX線回折装置の好適な具体例を示す斜視模式図である。図中の各寸法は、a=40 mm、b=16 mm、m=25 mm、n=18 mm、β=75°である。X線照射装置1は二次元X線検出器2の中心を直角に貫通するように配設され、二次元X線検出器2とX線照射装置1とが一体に固定されている。筒状シールド部材3は二次元X線検出器2の周縁に密着するように配設されている。
二次元X線検出器2としてイメージングプレートを用い、X線照射装置1としてMn(マンガン)ターゲットのX線管球を用いた。測定対象物4(寸法= 2000 mm×1000 mm×300 mm)に対してMn-Kα線(波長=2.10314×10-10 m)を照射し、X線回折測定を行った。図7は、読み取り装置を用いて画像化したX線回折パターンの1例を示す図である。図7に示したように、イメージングプレート21の受光部材6には、直径dのX線回折パターン(Debye ring)7が記録されていた。なお、回折線の角度(回折角度)2θは、X線回折装置の寸法とDebye ringの直径とから、式「2θ=arctan{d/(a+b)}」を用いて求めることができる。さらに、該回折角度2θと照射X線の波長とから、測定対象物4の材質(結晶相)を同定することができる。
1…X線照射装置、2…二次元X線検出器、3…筒状シールド部材、4…測定対象物、
5…支持平板、6…受光部材、7…X線回折パターン(Debye ring)、
10,11,12…X線回折装置、
21…イメージングプレート、22…位置敏感型比例計数管。

Claims (7)

  1. X線照射装置と二次元X線検出器とを有するX線回折装置であって、
    前記二次元X線検出器は平板状に設置されており、
    前記X線照射装置は前記二次元X線検出器を貫通するように配設され、
    前記二次元X線検出器と前記X線照射装置とが一体に固定され、
    前記X線照射装置の姿勢を規定しかつX線の漏洩を防止するための筒状シールド部材が前記二次元X線検出器の周縁に配設されていることを特徴とするX線回折装置。
  2. 請求項1に記載のX線回折装置において、
    前記筒状シールド部材が容易に交換できるように着脱可能に構成されていることを特徴とするX線回折装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のX線回折装置において、
    前記二次元X線検出器が輝尽性蛍光体を用いたイメージングプレートであることを特徴とするX線回折装置。
  4. 請求項3に記載のX線回折装置において、
    前記筒状シールド部材が可視光の遮光カバーを兼ねていることを特徴とするX線回折装置。
  5. 請求項3に記載のX線回折装置において、
    前記イメージングプレートが、可視光は遮光するがX線は透過するカートリッジに収容されていることを特徴とするX線回折装置。
  6. 請求項3乃至請求項5に記載のX線回折装置において、
    前記イメージングプレートが容易に交換できるように着脱可能に構成されていることを特徴とするX線回折装置。
  7. 請求項1または請求項2に記載のX線回折装置において、
    前記二次元X線検出器が位置敏感型比例計数管であることを特徴とするX線回折装置。
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