JP6304442B2 - 粉末状大豆蛋白素材 - Google Patents
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Description
このため、配合される粉末状大豆蛋白素材は、その水溶液の透明性がより高いものが望ましい。
すなわち本発明は、
(1)ソルビタン脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される一種類以上の乳化剤、並びにデキストリンを含有することを特徴とする、粉末状大豆蛋白素材、
(2)粉末状大豆蛋白素材中のデキストリン含量が1〜50重量%である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(3)粉末状大豆蛋白素材中の乳化剤含量が0.1〜10重量%である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(4)含有する乳化剤のHLB値が2〜13である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(5)含有するデキストリンのDE値が10〜35である、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材、
(6)デキストリンの添加が、大豆蛋白含有水溶液を乾燥する工程の前においてなされることを特徴とする、前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材の製造法、
(7)前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材を使用した、畜肉加工製品、
(8)前記(1)記載の粉末状大豆蛋白素材を使用した、粉末飲料または液体飲料、
である。
本発明における粉末状大豆蛋白素材とは、脱脂大豆から水抽出して得た脱脂豆乳、または脱脂豆乳を等電点沈澱させてホエイを除き、中和した分離大豆蛋白について、これらの水溶液である大豆蛋白素材水溶液を乾燥した粉末を指す。分離大豆蛋白は、風味やゲル形成性の点で、脱脂豆乳より好ましい。
本発明におけるデキストリンは、澱粉を化学的或いは酵素的方法により低分子化した、DE値2〜50の澱粉部分加水分解物である。この澱粉の原料は、コーン,キャッサバ,米,馬鈴薯,甘藷,小麦等があげられる。なお、DE値(Dextrose Equivalent)とはデキストリンの構成単位であるグルコース残基の鎖長の指標となるものであり、デキストリン中の還元糖の含有量(%)を示す値である。値が大きいほどデキストリンの鎖長は短くなる。分解していない澱粉、並びに、DE値が2未満の澱粉分解物および、DE値が50を超える澱粉分解物は、本発明で定義するデキストリンに含めない。
本発明に用いる乳化剤は、ソルビタン脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される、一種類以上の脂肪酸エステルである。グリセリン脂肪酸エステルには、モノグリセリン脂肪酸エステル,モノグリセリド誘導体およびポリグリセリン脂肪酸エステルが例示され、ポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。乳化剤は必ずしも単一物である必要はなく、複数混合物の形態で使用することができる。乳化剤のHLB値としては、2〜13のものが好ましく、4〜10のものがより好ましい。HLBが低すぎると、透明性の改善効果が得難く、また高すぎても同様に透明性の改善効果が得難い。尚、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値とは界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。
大豆蛋白素材水溶液は、必要により加熱処理を行ったのちに、乾燥を行う。加熱処理は脱臭や殺菌効果がを期待できる。加熱手段は間接過熱方式、直接加熱方式の何れの方法も利用可能であるが、脱臭効率の点から高温高圧の水蒸気を直接大豆蛋白溶液に吹き込み、加熱保持した後、真空フラッシュパン内で急激に圧力開放させるスチームインジェクション式直接加熱殺菌機=UHT殺菌機(アルファ・ラバル(株)製「VTIS殺菌機」等)を用いることが大豆臭の低減には好適である。加熱温度は、100〜155℃、より好ましくは110〜150℃の範囲で、加熱時間は1秒間〜5分間、より好ましくは5秒間〜3分間の範囲で実施することが良い。
デキストリンおよび乳化剤の添加は、上記工程の各点で行うことができるが、加熱前に添加することが最も効果的であり、特に加熱前のデキストリン添加は顕著な効果が得られる。また、加熱後噴霧乾燥前の添加も有効である。蛋白素材水溶液への添加は、デキストリンおよび/または乳化剤を大豆蛋白素材水溶液に加え、必要により均質化する。これらが均一に分散していれば攪拌や混合でも目的は達成できるが、好ましくは高圧ホモゲナイザーなどを用いて均一化処理することが適当である。
畜肉加工製品とは、牛,豚,馬,羊,鶏等の畜肉を用いた加工食品であり、ハム,ソーセージ,ベーコン,焼豚あるいは食肉フライ製品(とんかつ、てんぷら)等が例示できる。本発明の粉末状大豆蛋白素材を用いる方法としては、畜肉に対し、粉末状大豆蛋白素材を粉末状で直接添加し、ミートチョッパーやフードカッター等の手段で、それらをミンチ状に混捏する方法(練り込み法)、並びに、粉末状大豆蛋白素材を含有する水溶液(ピックル液)を一旦調製し、これを畜肉に注射する方法(漬け込み法)がある。
粉末飲料とは、粉末での喫食または粉末を液体に溶解して喫食することを目的とした粉末である。また、液体飲料とは、即時の喫食を目的とし液状で調製された飲料や、上記粉末飲料を構成する成分が液体に溶解した状態に調製された飲料を指す。粉末飲料や液体飲料には、濃縮果汁や凍結させた果実、色素を含むことが多いが、本発明の粉末状大豆蛋白素材を用いることで、透明性が高まり、同時に配合される色素や濃縮果汁の色調を損なわず、飲料の商品イメージに則した外観を付与することができる。
○試験例1〜10
低変性脱脂大豆10kgに15倍の水を加え、水酸化ナトリウムでpH7.5に調整し、室温でホモミキサーを用い1時間攪拌抽出を行った後、遠心分離機(1000×g,10分間)によりおから成分を除去して脱脂豆乳を得た。これに塩酸を加え、pHを4.5に調整し、蛋白質成分を等電点沈澱させ、遠心分離して沈澱物を採取し、分離大豆蛋白カード(以下「大豆蛋白カードA」)を得た。このカードの固形分は約30重量%であり、固形分重量は3.5kgであった。大豆蛋白カードAに加水し、水酸化ナトリウムを用い中和した後、大豆蛋白固形分濃度が10重量%となるように水を加え調整し、大豆蛋白素材水溶液(以下「大豆蛋白溶液B」)を得た。
大豆蛋白とデキストリン(DE=25:松谷化学工業(株)製「パインデックス#3」)とショ糖脂肪酸エステル(HLB=8:第一工業製薬(株)製「DKエステルF-70」)の固形分量が表1に示す割合となるように配合し、混合後、次いで、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得た。
サンプル5gを正確に秤量し200mlの水を加えて、25℃でホモミキサー(プライミクス(株)製「TK homo mixer Mk-2」)を用いて粉末状大豆蛋白素材を分散・溶解後、粗蛋白含量が0.5重量%となるように水を加え、分光光度計((株)島津製作所製「UV-1800」)で600nmの吸光度を測定し、濁度(吸光度)として表した。
尚、粉末状大豆蛋白素材の粗蛋白含量は、ケルダール法を用い求めた。
試験例7に対し、
・90%以上の破断強度を有するものを優:◎
・80%以上の破断強度を有するものを良:○
・50%以上の破断強度を有するものを可:△
・50%未満の破断強度を有するものを不可:×
とした。
これらの粉末状大豆蛋白素材の濁度(吸光度)とゲル形成性を比較した結果を表1に示す。
また、試験例3〜10に示す様に、デキストリンの配合量を増加させるに伴ない濁度(吸光度)は更に低下する傾向にあり、デキストリンの配合量が5重量%以上の時に濁度(吸光度)低下効果は顕著であった。ただし、デキストリンの配合量が50重量%を超えると粉末状大豆蛋白素材のゲル形成性の低下が顕著となり、品質を損なう傾向であった。
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bに対し、大豆蛋白固形分量が79部、DEの異なる炭水化物(澱粉,デキストリン各種またはブドウ糖)を20部、更にショ糖脂肪酸エステル(HLB=8)1部を、表2に示す様に配合し、混合後、次いで、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得、上記試験例に従って透明性を評価した。尚、炭水化物は以下の物を用いた。
・澱粉(DE=0:三和澱粉(株)製「コーンスターチ」)
・デキストリン(DE=4:松谷化学工業(株)製「パインデックス#100)
・デキストリン(DE=20:昭和産業(株)製「M-SPD」)
・デキストリン(DE=25)
・デキストリン(DE=30:昭和産業(株)製「SPD」)
・デキストリン(DE=15:松谷化学工業(株)製「グリスター」)
・デキストリン(DE=45:三和澱粉(株)製「三和酵素水飴E-45」)
・デキストリン(DE=54:昭和産業(株)製「マルトリッチ750」)
・ブドウ糖(DE=100:三栄糖化(株)製「無水結晶ブドウ糖」)
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bに対し、大豆蛋白とデキストリン(DE=25)とショ糖脂肪酸エステル(HLB=8)の固形分量が表3に示す割合となるように配合し、混合後、次いで、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得た。上記試験例に従って、透明性とゲル形成性を評価した。
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bに対し、大豆蛋白固形分量を79部、デキストリン(DE=25)を20部、HLB値の異なる乳化剤を1部、表4に示す様に配合し、混合後、次いで、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得、上記試験例に従って透明性を評価した。尚、乳化剤は以下の物を用いた。
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB=1:第一工業製薬(株)製「DKエステルF-10」)
・ソルビタン脂肪酸エステル(HLB=3:理研ビタミン(株)製「ポエムS-65V」)
・ソルビタン脂肪酸エステル(HLB=4.3:花王(株)製「エマゾールO‐10」)
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB=6:第一工業製薬(株)製「DKエステルF-50」)
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB=8)
・ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB=8.8:阪本薬品工業(株)製「SYグリスターMO-310」)
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB=9.5:第一工業製薬(株)製「DKエステルF-90」)
・ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB=11:阪本薬品工業(株)製「SYグリスターMO-500」)
・ショ糖脂肪酸エステル(HLB=15:第一工業製薬(株)「DKエステルF-160」)
以降の製造例および比較製造例に於いて、デキストリンとは(DE=25)のものを、ショ糖脂肪酸エステルとは(HLB=8)のものを使用した。試験例1と同様に調製した大豆蛋白カードAを用い、カードの固形分79部に対し、デキストリンを20部、ショ糖脂肪酸エステルを1部配合し、混合後、水酸化ナトリウムを用いて中和した後、固形分濃度が12.5重量%となるように水を加え、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得た。
試験例7と同様に粉末状大豆蛋白素材を調製した。
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bを用い、大豆蛋白固形分量79部に対して、デキストリン20部を配合し、混合後、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し大豆蛋白素材中間物99部を得た。1部のショ糖脂肪酸エステルを、70℃の湯水20部にホモミキサーを用いて攪拌混合した賦形液を別途調製し、流動層乾燥機であるフローコーター(大川原製作所(株)製)内において、大豆蛋白粉末を風圧により流動させながら賦形液を大豆蛋白粉末に対して噴霧し加熱乾燥させて、粉末状大豆蛋白素材を得た。
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bを用い、大豆蛋白固形分量79部に対して、ショ糖脂肪酸エステルを1部配合し、混合後、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行った。この溶液の固形分80部に対し、デキストリン20部を配合し、混合後、噴霧乾燥し粉末状大豆蛋白素材を得た。
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bを用い、大豆蛋白固形分量79部に対して、ショ糖脂肪酸エステルを1部配合し、混合後、VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)および噴霧乾燥を行った。得られた粉末状大豆蛋白の80部に対し、デキストリン20部を配合し、粉体混合を行い均一とし、粉末状大豆蛋白素材を調整した。
試験例1と同様に調製した大豆蛋白溶液Bを用い、大豆蛋白固形分量79部に対して、デキストリンを20部、ショ糖脂肪酸エステルを1部配合し、対乾物量あたり0.02重量%の蛋白加水分解酵素(Novozymes製「アルカラーゼ」)を加え、50℃の反応温度で30分間、蛋白加水分解を行った。その後VTIS殺菌機を用いて加熱処理(140℃,15秒間)を行い、噴霧乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得た。TCA可溶化率は7.5であった。
試験例3と同様に粉末状大豆蛋白素材を調製した。
試験例1と同様に粉末状大豆蛋白素材を調製した。
試験例2と同様に粉末状大豆蛋白素材を調製した。
試験例20と同様に粉末状大豆蛋白素材を調製した。
以上の製造例1〜7および、製造比較例1〜3について、調製した粉末状大豆蛋白素材を用い、表5の配合に従い、攪拌混合して、常法により、ロースハムピックル液60kgを調製し、これを用いてロースハムを調製した。さらに各ピックル液を用いて製造したロースハムについて5名のパネラーを用い、ハム断面の色調について品質評価を行った。
製造例1に対し、色調の赤い方を優位とし、同等=優:◎、良:○、可:△、不可:×と記載した。
次に、調製した粉末状大豆蛋白素材50重量部、凍結乾燥苺20重量部、グラニュー糖30重量部、ビタミンCを2重量部、ステビア製剤(守田化学工業(株)製:レバウディオACK250)を0.3重量部、β-サイクロデキストリン(日本食品化工(株)製:サンデックB-100)1重量部、香料1.7重量部をよく混合し、粉末飲料を得た。この粉末飲料10gを90mlの水に分散させ調製した飲料に対し、5名のパネラーを用い、色調について品質評価を行った。
製造例1に対し、色調の赤い方を優位とし、同等=優:◎、良:○、可:○、不可:×と記載した。
Claims (9)
- 下記a)〜e)を満たすことを特徴とする、粉末状大豆蛋白素材。
a)ソルビタン脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される一種類以上の乳化剤を含有すること、
b)デキストリンを含有すること、
c)粗蛋白含量が63.1〜88.8重量%であること、
d)0.22M トリクロロ酢酸可溶率が10%以下であること、および
e)粗蛋白含量が0.5重量%となるように水を加え、分光光度計で該溶液の600nmの吸光度を測定したときの溶液濁度が、0.26〜0.46であること。 - 粉末状大豆蛋白素材中のデキストリン含量が2〜30重量%である、請求項1記載の粉末状大豆蛋白素材。
- 粉末状大豆蛋白素材中の乳化剤含量が0.1〜10重量%である、請求項1又は2記載の粉末状大豆蛋白素材。
- 含有する乳化剤のHLB値が2〜13である、請求項1〜3の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材。
- 含有するデキストリンのDE値が10〜35である、請求項1〜4の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材。
- 請求項1〜5の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材を用いる、畜肉加工製品の製造法。
- 請求項1〜5の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材を含有するピックル液を調製し、これを畜肉に添加する、畜肉加工製品の製造法。
- 請求項1〜5の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材を粉末状で畜肉に添加し、混捏する、畜肉加工製品の製造法。
- 請求項1〜5の何れか1項記載の粉末状大豆蛋白素材の、畜肉加工製品の製造原料としての提供方法。
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