JP6474563B2 - 食肉又は魚肉製品の品質改良剤 - Google Patents
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食肉製品及び魚肉製品は、食肉や魚肉自体、筋が多いなどの理由から、もともと噛み切りにくい食感になりやすい場合が多い上に、食肉や魚肉の加熱調理により、肉質が硬く締まり肉汁や脂肪が流出する上、調理後時間が経つにつれさらに硬い食感になってしまう。とくに焼肉やステーキなどの焼成調理の場合はこの傾向が顕著である。
このため、古来、軟らかい食感の食肉製品や魚肉製品を得るため、様々は工夫や研究が行われてきた。
たんぱく質分解酵素を使用する方法を用いた場合には、食肉製品及び魚肉製品は確実に軟らかい食感になるが、酵素作用の温度や時間の調節が難しいため、食肉製品及び魚肉製品を一定の品質とすることは難かしく、また、食肉製品及び魚肉製品にある程度の苦味や異味の発生が見られる問題もあった。
しかし、特許文献11の実施例は、畜肉や魚肉を練製品として使用した畜肉加工食品や魚肉加工食品の改良効果の開示のみであり、焼肉やステーキなどの肉そのものの直接的な品質改良効果についての開示はなかった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、乳清ミネラルを有効成分とする食肉又は魚肉製品の品質改良剤を提供するものである。
また、本発明の肉質改良方法によれば、硬い肉質の食肉又は魚肉であっても軟らかくて口溶けのよい食肉又は魚肉製品とすることができる。
本発明の食肉又は魚肉製品の品質改良剤の対象となる食肉の種類としては牛、豚、鶏、羊、馬、鹿、兎、猪、熊等の畜肉や獣肉を挙げることができ、魚肉の種類としてはサケ、スケトウダラ、ホキ、タイ、マグロ、カジキ、イワシ、サバ、アジ、サンマ、ウナギ、ハモ、タチウオ、コイ、フナなどの魚類をはじめ、アザラシ、鯨等の海獣類等の海産魚介類、タコ、イカ等の軟体動物類、オキアミ、イセエビ、エビ等の海産甲殻類等を挙げることができる。
また、上記食肉又は魚肉は、生肉に限られず、冷凍品、冷凍解凍品、冷蔵品、チルド品であってもよく、また、成形肉や脂肪注入肉であってもよい。また、上記食肉又は魚肉は、2種以上の食肉又は魚肉を混合したものでもよい。
また、本発明の食肉又は魚肉製品の品質改良剤は、殺菌処理や加熱調理などの加熱処理による食肉や魚肉の硬化を抑制する効果が高いことから、食肉又は魚肉製品は、上記食肉又は魚肉製品の中でも、焼肉、ステーキ、煮物、蒸物、から揚げ、竜田揚げ、素揚げ、くんせい、豚の角煮、ローストビーフ、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、ミートコロッケ、メンチカツ、チキン南蛮、シュウマイの具、餃子の具、肉まんの具、牛丼の具、つくね、ハムステーキ、ソーセージ、焼き魚、煮魚、魚フライ、かまぼこ、つみれ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ、佃煮等の加熱処理する工程を経て得られるものであることが好ましく、なかでも、強い硬化が発生する焼成工程を有する、焼肉、ステーキ、ローストビーフ、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、餃子の具、ハムステーキ、焼き魚、ちくわ等の焼成する工程を経て得られるものであることが特に好ましい。
すなわち、本発明の品質改良剤を使用する食肉又は魚肉製品は、焼肉、ステーキ、焼き魚のいずれかであることが特に好ましい。
乳清ミネラルとは、乳又はホエー(乳清)から、可能な限りタンパク質や乳糖を除去したものであり、そのため、高濃度に乳の灰分(ミネラル)を含有し、且つ、固形分に占める灰分の割合が極めて高いという特徴を有する。そして、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエー中のミネラル組成に近い比率となる。
本発明の食肉又は魚肉製品の品質改良剤を上記粉体、顆粒状、錠剤等の形状に製剤化するための添加剤としては、ペクチン、海藻多糖類、カルボキシメチルセルロース等の増粘多糖類や、でんぷん、二酸化ケイ素等の賦形剤、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、ステビア等の甘味料、微粒二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、リン酸二ナトリウム、酸化マグネシウム等の固結防止剤、ビタミン類、香料、酸化防止剤、光沢剤等が挙げられ、これらの一種又は二種以上のものが適宜選択して用いられる。本発明の食肉又は魚肉製品の品質改良剤中における上記各種添加剤の含有量は、添加剤によって異なるが、好ましくは99質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
液剤の形状に製剤化する場合は、上記乳清ミネラル及び上記各種添加剤等を、液体に溶解又は分散させればよい。そのような液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明の食肉又は魚肉製品の品質改良剤中における上記液体の含有量は、好ましくは99質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
これらの例としては各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等の油脂;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等の乳化剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リポキシシゲナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ等の酵素、酢酸、クエン酸、グルコン酸等の酸、重炭安等のアルカリ、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、コンソメ、ブイヨン等の植物及び動物エキス、着香料、調味料、酒類、糖類や糖アルコール類、甘味料、デキストリン、オリゴ糖、ゲル化剤や増粘安定剤、卵類、上記乳清ミネラル以外の乳や乳製品、pH調整剤、塩類、食品保存料、日持ち向上剤、果汁、香辛料、ハーブ等が挙げられる。
ただし、酵素、とくにプロテアーゼについては、酵素作用の温度や時間の調節が難しいため食肉又は魚肉製品を一定の品質とすることが難かしく、また、ある程度の苦味や異味の発生が見られる問題もあるため、使用しないことが好ましい。
本発明の食肉又は魚肉製品の品質改良方法は、食肉又は魚肉を使用して食肉又は魚肉製品を製造する際の加工時、調理時、飲食時等に、食肉又は魚肉に対し、上述の乳清ミネラルを有効成分として含有する品質改良剤を混合、散布、噴霧、注入、塗布、浸漬等、任意の手段により接触させるものであるが、均質な品質の食肉又は魚肉製品を安定して生産可能な点で浸漬が好ましい。なお接触の際、スライス、切り身、サイの目、ミンチ、スティック、細切、スリ身その他の形態に加工した食肉や魚肉を使用する場合は、該形状への加工前に接触させても加工後に接触させてもよい。
なお、品質改良剤を溶解した溶液中で加熱処理する方法の場合は、あらかじめ、乳清ミネラルを溶解させた溶液中に浸漬した食肉又は魚肉を使用することもできる。
最後に本発明の食肉又は魚肉製品について述べる。
なお、食肉又は魚肉製品の種類としては上述のとおりである。
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、更に逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、これを更にエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中の灰分含量は35質量%、カルシウム含量は2.2質量%であった。
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、更に逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これを更にエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルBを得た。得られた乳清ミネラルBの固形分中の灰分量は55質量%、カルシウム含量は0.4質量%であった。
<食肉又は魚肉製品の品質改良剤の製造>
製造例1及び2で得られた乳清ミネラル1及び乳清ミネラル2を、水で溶解し、固形分10質量%溶液とし、それぞれ食肉又は魚肉製品の品質改良剤A及び品質改良剤Bとした。
得られた品質改良剤を下述の評価試験1(焼き魚)、評価試験2(ステーキ)に供した。
[評価試験1]
鯖の切り身を、上記品質改良剤A及び品質改良剤Bをそれぞれ乳清ミネラル含量が固形分として0.5質量%となる量を水に溶解した浸漬液に2時間浸漬したのち、常法により塩焼きした。なお、浸漬液を使用せずに塩焼きしたものも比較のために用意した。
得られた鯖の塩焼きを室温で30分放冷したあと喫食し、食感を評価した。評価は11人のパネラーに対し、浸漬液を使用せずに塩焼きしたものと比較して、どちらが食感(軟らかさ・口溶け)が良かったかを「品質改良剤を使用したものが明らかに良好」「品質改良剤を使用したものがやや良好」「品質改良剤を使用したものと差がない」「品質改良剤を使用したものが悪い」の4段階評価してもらい、下記の評価基準にしたがって数値化した点数を表1に記載した。
「品質改良剤を使用したものが明らかに良好」=5点、「品質改良剤を使用したものがやや良好」=3点、「品質改良剤を使用したものと差がない」=1点、「品質改良剤を使用したものが悪い」=−1点とし、11人のパネラーの合計点数を下記の評価基準にあてはめた。
◎=45点以上
○+=34点以上44点以下
○=23点以上33点以下
○−=12点以上22点以下
△=1点以上11点以下
×=0点以下
アメリカ産ステーキ用牛肉に、上記品質改良剤A及び品質改良剤Bそれぞれ10質量部、食酢(穀物酢)15質量部、水75質量部を混合した浸漬液(pH3.5)に2時間浸漬したのち、常法によりフライパンに油をひいてソテーした。なお、品質改良剤を含有しない食酢水溶液(pH3.5に調整)を使用して焼成したものも比較のために用意した。
得られた牛肉のステーキを室温で30分放冷したあと喫食し、食感を評価した。評価は15人のパネラーに対し、浸漬液を使用せずにソテーしたものと比較して、どちらが食感(軟らかさ・口溶け)が良かったかを「品質改良剤を使用したものが明らかに良好」「品質改良剤を使用したものがやや良好」「品質改良剤を使用したものと差がない」「品質改良剤を使用したものが悪い」の4段階評価してもらい、下記の評価基準にしたがって数値化した点数を表3に記載した。
「品質改良剤を使用したものが明らかに良好」=5点、「品質改良剤を使用したものがやや良好」=3点、「品質改良剤を使用したものと差がない」=1点、「品質改良剤を使用したものが悪い」=−1点とし、15人のパネラーの合計点数を下記の評価基準にあてはめた。
◎=61点以上
○+=46点以上60点以下
○=31点以上45点以下
○−=16点以上30点以下
△=1点以上15点以下
×=0点以下
鶏胸肉に包丁を入れて2つに開いて平板状とし上記品質改良剤B5質量部を水95質量部に溶解した浸漬液に10分浸漬した。その後、「マキシマム」(中村食品製)を少量振ったあと、片栗粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、再度片栗粉をまぶした。180℃に加温したナタネ油でフライしたのち、甘酢をくぐらせ、本発明の食肉製品であるチキン南蛮を得た。なお、浸漬液を使用せずにフライしたものも比較のために用意した。
得られたチキン南蛮を室温で30分放冷したあと喫食し、食感を評価したところ、本発明の品質改良剤を使用したチキン南蛮は、品質改良剤を使用しなかったチキン南蛮に比べて肉質が軟らかくて口溶けのよいものであった。
市販のモツ鍋スープ100質量部に上記品質改良剤A0.05質量部を添加、溶解した(PH=5.5)。この品質改良剤を含有するモツ鍋スープ750gを鍋に入れ、鳥モツのぶつ切り400g、キャベツ500g、ニラ300g、たまねぎ200gを入れて15分間煮込んだ。ここで鳥モツを引上げ食したところ、軟らかく口どけのよい食感であった。
鶏胸肉300gに包丁を入れて2つに開いて平板状とし上記品質改良剤B0.5質量部、塩2.5質量部、醤油40質量部、料理酒38質量部、ごま油12質量部、おろし生姜7質量部を混合した浸漬液(pH4.5)に3時間浸漬した。その後、小麦粉:片栗粉=4:1の混合物をまぶし、180℃に加温したナタネ油でフライし、本発明の食肉製品である鶏のから揚げを得た。なお、品質改良剤Bを添加していない浸漬液を使用してフライしたものも比較のために用意した。
得られた鶏のから揚げは室温で30分放冷したあと喫食し、食感を評価したところ、本発明の品質改良剤を使用した鶏のから揚げは、品質改良剤を使用しなかった鶏のから揚げに比べて肉質が軟らかくて口溶けのよいものであった。
牛こまぎれ肉150g及びくし型切りにしたたまねぎ400gを、上記品質改良剤A1質量部、砂糖10質量部、醤油50質量部を、水200質量部に溶解した浸漬液(pH4.9)に投入し、弱火で5分間煮た後、水分を切り、本発明の食肉製品である牛丼の具を得た。なお、これを直ちに丼ご飯の上に積置し、牛丼を得た。なお、品質改良剤Aを添加していない浸漬液を使用して煮たものも比較のために用意した。
得られた牛丼を喫食し、食感を評価したところ、本発明の品質改良剤を使用した牛丼の具は、品質改良剤を使用しなかった牛丼の具に比べて肉質が軟らかくて口溶けのよいものであった。
水100質量部に、上記品質改良剤B2質量部、全卵(正味)60質量部、小麦粉100質量部を添加、溶解し、クエン酸でpH5となるように調整し、バッター液を得た。ここにサケの切り身を5分間浸漬後、パン粉を付着させ、180℃に加温したナタネ油でフライし、本発明の魚肉製品であるサケフライを得た。なお、品質改良剤を含有しないバッター液を使用したものも比較のために用意した。
得られたサケフライを喫食し、食感を評価したところ、本発明の品質改良剤を使用したサケフライは、品質改良剤を使用しなかったサケフライに比べて肉質が軟らかくて口溶けのよいものであった。
市販のプレーンヨーグルト100質量部に上記品質改良剤B50質量部を添加、混合溶解した(PH=4.9)。鶏の胸肉100gに対しこの品質改良剤を含有するプレーンヨーグルト5gを塗布し、袋に入れて5℃で10時間静置した。オリーブオイルを張ったフライパンにおろしにんにく1.5gを加えて熱し、ここに上記プレーンヨーグルトを塗布して10時間静置した鶏の胸肉を置きソテーし、本発明の食肉製品である鶏のガーリックソテーを得た。なお、品質改良剤を含有しないプレーンヨーグルトを使用したものも比較のために用意した。
得られた鶏のガーリックソテーを喫食し、食感を評価したところ、本発明の品質改良剤を使用した鶏のガーリックソテーは、品質改良剤を使用しなかった鶏のガーリックソテーに比べて肉質が軟らかくて口溶けのよいものであった。
Claims (4)
- 乳清ミネラルを有効成分とし、該乳清ミネラルを固形分として0.01〜2質量%含有する食肉又は魚肉製品の肉質改良用浸漬液であって、
前記乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満であり、
すりつぶし又はミンチ加工していない状態の食肉又は魚肉を加熱処理するために使用される、肉質改良用浸漬液。 - 乳清ミネラルを有効成分とし、該乳清ミネラルを固形分として0.01〜2質量%含有する浸漬液の存在下で、すりつぶし又はミンチ加工していない状態の食肉又は魚肉を加熱処理する肉質改良方法であって、
前記乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満であることを特徴とする、食肉又は魚肉製品の肉質改良方法。 - 前記浸漬液中に、すりつぶし又はミンチ加工していない状態の食肉又は魚肉を浸漬した後、加熱処理することを特徴とする、請求項2記載の食肉又は魚肉製品の肉質改良方法。
- 請求項1記載の肉質改良用浸漬液を使用して得られた食肉又は魚肉製品。
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