(第1実施形態)
以下、印刷装置の一例であるプリンターに具体化した第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、プリンター11は、一例としてインクジェット式カラープリンターであって、薄型の略直方体形状を有する装置本体12を備える。この装置本体12の前面(図1では右面)にはユーザーが入力操作等に用いる操作パネル13が設けられている。操作パネル13には、例えば液晶パネルよりなる表示部14及び複数の操作スイッチからなる操作部15が設けられている。操作部15には、プリンター11の電源をオン・オフ操作するための電源スイッチ15a及び表示部14に表示されたメニュー画面上で所望の選択項目を選択操作するための選択スイッチ15bなどが含まれる。
図1に示すように、装置本体12の前面における操作パネル13の下側位置には、媒体の一例としての用紙Pを複数枚収容可能な上下二段の給送トレイ16,17(給送カセット)がそれぞれ独立して着脱可能(挿抜可能)な状態で装着されている。2つの給送トレイ16,17のうち下側に配置される給送トレイ(以下、「下段トレイ16」ともいう。)は、その前面側に下端部を回動軸として開閉可能なカバー18を備え、カバー18ごと抜き取ることが可能である。また、2つの給送トレイ16,17のうち上側に配置される給送トレイ(以下、「可動式トレイ17」ともいう。)は、例えば下段トレイ16が装着された状態ではカバー18を開くことで露出する装着口に、着脱可能な状態で装着される。なお、本実施形態では、下段トレイ16により媒体収容部の一例が構成される。
図3に示すように、下段トレイ16は、用紙サイズの相対的に大きな用紙P1を収容可能である。この下段トレイ16は、搬送方向Yにおいてプリンター11の全長(奥行長)よりも少し短い長さを有し、且つ幅方向W(主走査方向Xに同じ)おいて最大用紙幅よりも少し長い幅を有している。一方、可動式トレイ17は、用紙サイズの相対的に小さな用紙P2を収容可能である。この可動式トレイ17は、搬送方向Yにおいて下段トレイ16の全長よりも長さが短く、且つ幅方向Wにおいて下段トレイ16とほぼ同じ幅を有している。
図1及び図3に示す可動式トレイ17は、搬送方向Yと平行な方向に往復移動可能な電動式であり、同図に示すユーザーによる着脱が可能なセット位置(装着位置)と、このセット位置から装置本体12内へ所定距離だけ奥側(図1、図3では左側)に位置する給送位置との間を移動可能となっている。よって、ユーザーは、可動式トレイ17がセット位置に配置された状態においてカバー18を開ければ、可動式トレイ17を抜き取ることが可能である。
図1に示すように、装置本体12内には各給送トレイ16,17の幅中央部の奥寄りの位置に、ピックアップローラー19(図5も参照)が、給送機構20を構成する揺動部材20Aの先端部に回転可能に支持された状態で配置されている。このピックアップローラー19は、下段トレイ16と可動式トレイ17とに共通に使用される。
図1に示すように、ピックアップローラー19が回転することで、下段トレイ16又は可動式トレイ17から給送方向下流側へ送り出された用紙Pは、装置本体12内の後部で円弧面状のガイドに沿って反転された後、搬送経路に沿って搬送方向Yに搬送される。なお、本明細書では、下段トレイ16に収容された用紙に符号「P1」を付し、可動式トレイ17に収容された用紙に符号「P2」を付しているが、用紙が収容されるトレイを特に区別する必要がない場合は、単に「用紙P」と記すものとする。
図1に示すように、装置本体12内には、キャリッジ21が、搬送方向Yと交差する主走査方向Xに延びるように架設されたガイド軸22に案内され、主走査方向Xに沿って往復移動可能な状態で設けられている。キャリッジ21の下部には、搬送される用紙Pにインク滴を噴射する複数のノズルを有する記録ヘッド23が取り付けられている。印刷済みの用紙Pは、操作パネル13とカバー18が開いた状態で露出する排出口から、図1に白抜き矢印で示す方向へ排出される。排出された印刷済みの用紙Pは装置本体12の前側の排出口の下側から前方へ向かって出退可能に設けられて突出状態に配置された排出スタッカー24(排紙トレイ)(図5参照)上に積載される。
図2に示すように、装置本体12において操作パネル13の下側には、給送トレイ16,17を装着するための収容凹部26が奥行方向に沿って延びるように凹設されている。装置本体12において収容凹部26の左右の内壁部には、下段トレイ16を着脱方向に案内するとともにこれを支持する下部ガイドレール27と、下部ガイドレール27よりも少し上方に位置し、上段の可動式トレイ17を着脱方向に案内するとともにこれを支持する上部ガイドレール28とが設けられている。このように下段トレイ16及び可動式トレイ17は、各ガイドレール27,28に案内されて着脱方向に移動することにより、それぞれ装置本体12の収容凹部26に対する装着と取出しとが可能になっている。
また、図2に示すように、装置本体12において給送トレイ16,17の移動経路となる収容凹部26を幅方向Wに挟む両側、すなわち装着状態にある下段トレイ16を幅方向Wに挟む両側には、制御系及び駆動系の各種の部品が配設される部品配設スペースとなっている。詳しくは、装置本体12には、キャリッジ21が非印刷時に待機するホームポジション側(図2における右側)の部品配設スペース12Aと、反ホームポジション側(図2における左側)の部品配設スペース12Bとがそれぞれ設けられている。
次に図3及び図4を参照して各給送トレイ16,17の構成及び分離機構について説明する。下段トレイ16は、用紙P1を載置可能な底面16aを有し、この底面16aのカバー18側の端部位置には、トレイ挿抜方向にスライド可能で用紙Pの後端エッジの位置を規制するエッジガイド29(図5参照)が設けられている。また、下段トレイ16には、トレイ挿抜方向と交差する幅方向Wにスライド可能で用紙P1のサイドエッジの位置を規制する一対のエッジガイド30が設けられている。図3に示す可動式トレイ17は、用紙P2を載置可能な底面17aを有する収容凹部17bを備え、この収容凹部17b内には用紙P2をトレイ挿抜方向に位置規制するエッジガイド31と、幅方向Wに位置規制する一対ずつのエッジガイド32とが設けられている。本実施形態では、給送トレイ16,17内の用紙Pはその幅中心がトレイ幅中心に一致するセンター位置にガイドされる。もちろん、給送トレイ16,17内の用紙Pが幅方向Wの一端側を基準にしてガイドされる構成でもよい。
また、下段トレイ16の装着方向先端部(図3では左端部)には、セットされた用紙P1の先端を規制して用紙P1を底面16a上に保持する保持部の一例としてのストッパー16bが設けられている。さらに下段トレイ16の挿入方向Y1の先端部におけるその挿入方向Y1と直交する幅方向Wに間隔を開けた両端部には、挿入方向Y1に向かって一対の延出部16A,16Bが延出している。詳しくは、下段トレイ16を構成する一対の側板部16cが挿入方向Y1へ底面16aよりもさらに所定長さだけ延出することで、一対の延出部16A,16Bは形成されている。一対の延出部16A,16Bは、先端側ほど底面16aと直交する高さ方向Zの幅が狭くなる形状を有している。
また、可動式トレイ17において挿入方向Y1の先端部(図3では左端部)には、用紙先端位置を規制して底面17a上に用紙P2を保持する一対のストッパー17cが設けられている。また、図3に示す可動式トレイ17は、その幅方向Wの一端部上面に形成されたトレイ挿抜方向に沿って延びる所定長さのラック部17dと、搬送系の動力源である搬送モーター43(図9参照)の動力で回転するピニオン歯車33との噛合を介して、図3に示すセット位置(図5)と、分離機構40に当たった給送位置との間を移動する。
ここで、図3に示す分離機構40は、収容凹部26(図2参照)の奥行き方向の端部に位置し、ピックアップローラー19の回転によって給送トレイ16,17から送り出された最上位の用紙Pを下位の用紙から分離する機能を有している。分離機構40は、幅方向Wに間隔を開けて配列された複数の分離部40aを有している。各分離部40aは挿入方向Y1に対して所定の角度をなす斜面を有し、この斜面の摩擦抵抗等によって最上位の用紙Pがその下位の用紙から分離される。こうして下段トレイ16又は可動式トレイ17から用紙Pは一枚ずつ給送される。
ここで、可動式トレイ17の図3に示すセット位置への装着及び取出しは、その側部に設けられた被検知部17Aを第1センサー55が検知することで検出される。また、可動式トレイ17が電動で給送位置からセット位置に戻るときは、第1センサー55の検知に基づきその動力源として利用される搬送モーター43の駆動が停止され、可動式トレイ17は図3に示すセット位置で停止する。
また、図3、図4に示すように、下段トレイ16が装着された状態において一対の延出部16A,16Bのうち他方の延出部16B(以下、「第2延出部16B」ともいう。)の近傍には、その第2延出部16Bを検知可能なセンサーの一例としての第2センサー56が設けられている。第2センサー56は例えばフォトインターラプター等の光学式センサーである。第2センサー56は、その発光部と受光部との間のスリット(検出対象域)に第2延出部16Bの被検知部が挿入されると遮光されてオフすることで第2延出部16Bを検知し、そのスリットから第2延出部16Bの被検知部が抜け出ると受光できるようになってオンすることで第2延出部16Bを検知しなくなる。コントローラー90(図9参照)は、第2センサー56が第2延出部16Bを検出することをもって下段トレイ16の装着を検知し、第2センサー56が第2延出部16Bを検出しなくなることをもって下段トレイ16の取出しを検知する。なお、本実施形態では、第1延出部16Aにより第1端部の一例が構成され、第2延出部16Bにより第2端部の一例が構成される。
次に、プリンター11の詳細な構成について図5を用いて説明する。図5に示すように、装置本体12は、トレイ給送部35、媒体給送部36、媒体搬送部37、記録部38及び送り部39を備える。トレイ給送部35は、下段トレイ16と、可動式トレイ17と、給送機構20と、各給送トレイ16,17に収容された用紙Pの先端と対向する位置に設けられた前述の分離機構40とを備える。
可動式トレイ17は、搬送モーター43(図9参照)の動力により、セット位置(図5)と、図5において分離機構40に当たる位置まで移動した給送位置との間を移動する。
図5に示すように、給送機構20は、装置本体12内の支持フレーム(図示せず)に揺動軸61を中心に揺動可能に支持された揺動部材20Aの先端部にピックアップローラー19は回転可能な状態で取り付けられている。下段トレイ16の装着状態において延出部16A(図3、図4参照)が給送機構20と係合することで揺動部材20Aが同図における反時計方向に回動しピックアップローラー19が最上位の用紙P1に当接する。この状態でピックアップローラー19が回転すると、用紙P1が給送される。
また、可動式トレイ17がセット位置(図5)から給送位置に移動する過程で、その先端部のストッパー17cが揺動部材20Aのカムフォロワ(図示せず)と係合して揺動部材20Aを上方に押し退け、さらに移動してその係合が解除されると、ピックアップローラー19が可動式トレイ17上の最上位の用紙P2に当接する位置まで下降する。この状態でピックアップローラー19が回転すると、用紙P2が給送される。なお、給送トレイ16,17のうち一方から送り出される最上位の用紙Pは、分離部40aにより次位以降の用紙Pと分離される。
図5に示すように、分離機構40の給送経路下流側に設けられた媒体給送部36は、搬送モーター43により駆動される給送駆動ローラー44と、給送従動ローラー45,46とを備える。給送従動ローラー45,46は、給送駆動ローラー44と接して従動回転し、給送駆動ローラー44と給送従動ローラー46との間に挟持された用紙Pは媒体搬送部37へ搬送される。
媒体搬送部37は、同じく搬送モーター43により駆動される搬送駆動ローラー47と、搬送駆動ローラー47に圧接して従動回転する搬送従動ローラー48とを備える。この媒体搬送部37により、用紙Pがさらに下流側へと送られる。
図5に示すように、媒体搬送部37の搬送方向Yの下流側に設けられた記録部38は、キャリッジ21と、記録ヘッド23と、記録ヘッド23と対向する支持台49とを備える。キャリッジ21の底部に用紙Pと対向する状態で設けられた記録ヘッド23は、キャリッジ21がキャリッジモーター50(図9参照)の動力によってガイド軸22に案内されつつ主走査方向X(図5では紙面と直交する方向)に往復動する過程で、支持台49に支持された用紙Pに対してインク滴を噴射して用紙Pに画像を印刷する。
支持台49の下流側に設けられた送り部39は、搬送モーター43によって駆動される第1ローラー51と、第1ローラー51に接して従動回転する第2ローラー52とを備える。送り部39によって搬送方向Yの下流側へ送り出された印刷後の用紙Pは、装置本体12の外側(前面側)にスライドした排出スタッカー24上に積載される。
次に図6を参照して下段トレイ16の周辺の構成及び給送機構の構成について説明する。
図6は、下段トレイ16が装着状態にあるときの給送機構20及びプリンター11を制御する基盤70(制御基盤)を示す。図6に示すように、給送機構20は、前述の揺動部材20Aと、下段トレイ16の挿抜に応じて揺動部材20Aを正逆に回動させ、ピックアップローラー19を用紙P1から離間させる保持位置と、ピックアップローラー19を用紙P1に当接する当接位置(保持解除位置)とに配置する保持機構20Bとを備えている。保持機構20Bは、揺動部材20Aを下段トレイ16の非装着時に下段トレイ16上の最上位の用紙P1からピックアップローラー19を離間させることが可能な所定の保持位置に保持し、下段トレイ16の装着時にその保持を解除し装着状態の下段トレイ16上の最上位の用紙P1にピックアップローラー19を当接させることが可能である。保持機構20Bの下段トレイ16と係合可能な箇所は、装置本体12内において収容凹部26(図2参照)に装着された下段トレイ16を幅方向W(主走査方向Xに同じ)に挟む両側に設けられた部品配設スペース12A,12B(図2参照)のうち一方の部品配設スペース12Aに配置されている。また、プリンター11を制御するコントローラー90(図9参照)を備えた基盤70は、他方の部品配設スペース12Bに配置されている。
次に図6を参照して給送機構20の詳細な構成について説明する。図6に示すように、ピックアップローラー19は、装置本体12内の支持フレーム(図示略)に揺動軸61を中心に揺動可能に支持された揺動部材20Aの先端部に回転可能な状態で一対取着されている。搬送モーター43(図9参照)の動力が揺動部材20Aに設けられた歯車列62を介して伝達されることによりピックアップローラー19は回転駆動する。揺動部材20Aは、所定の隙間(スリット)を隔てて平行に延びる一対の支持部63を有し、歯車列62は隣同士で噛み合う一列に配列された複数の歯車62a,62b,62cからなる。揺動軸61は筒状をなし、その内部には搬送モーター43からの動力で回転する駆動軸61aが挿通されており、その駆動軸61aには歯車62aが取着されている。歯車62aの回転は、複数の歯車62bを介して歯車62cに伝達される。この歯車62cの回転軸に一対のピックアップローラー19は一体回転可能な状態で取着されている。
また、給送機構20の保持機構20Bは、揺動軸61と平行な幅方向Wに沿って延びる状態で回動可能に支持された作動軸64と、作動軸64の先端部と揺動部材20Aに対する揺動軸61の連結箇所よりも少し揺動先端側の位置とに両端部が連結されたリンク部材65とを備えている。作動軸64の回転によりリンク部材65を介して揺動部材20Aの姿勢角が変更される。この作動軸64は、ねじりばね66の弾性力により、ピックアップローラー19を用紙P1から離間させる回動方向に揺動部材20Aを付勢している。この付勢力により揺動部材20Aは、ピックアップローラー19が下段トレイ16上の用紙P1から離間する保持位置に保持される。
装着状態にある下段トレイ16の第1延出部16Aに対して幅方向Wの外側近傍位置には、スライド部材67がトレイ挿抜方向に沿ってスライド可能な状態で設けられている。スライド部材67の取出し方向Y2側の基端部は、リンク部材68を介して作動軸64の基部と連結されている。スライド部材67は、ねじりばね66の付勢力により取出し方向Y2側に移動した待機位置に配置される。
スライド部材67は、その挿入方向Y1側の端部に幅方向Wの内側に屈曲する規制板部67aを有している。この規制板部67aは、第1延出部16Aの移動経路上に位置する。そして、下段トレイ16が装着されるときに第1延出部16Aが規制板部67aを押し込んでスライド部材67を待機位置から挿入方向Y1に移動させることにより、リンク部材68を介して作動軸64がねじりばね66の付勢力に抗する方向に回動する。これにより揺動部材20Aがピックアップローラー19を下降させる方向に回動し、ピックアップローラー19が下段トレイ16上の最上位の用紙P1に当接する状態に配置される。
一方、下段トレイ16が装着位置から取出し方向Y2に移動して第1延出部16Aが規制板部67aから離れる方向に移動すると、ねじりばね66の付勢力によりスライド部材67の取出し方向Y2への移動と共に、作動軸64が付勢方向に回動し、揺動部材20Aがピックアップローラー19を用紙P1から離間させる保持位置に配置される。このようにピックアップローラー19は、下段トレイ16が装着されたときには最上位の用紙P1に当接してその給送が可能な給送位置に配置される。一方、下段トレイ16が装着位置から取り出される過程で最上位の用紙P1から離間した保持位置に配置される。このため、下段トレイ16の取出しと装着を、ピックアップローラー19の抵抗をさほど受けない比較的軽い操作力で行うことが可能となる。
次に図6に示す基盤70の構成について説明する。基盤70は、長尺状の基板71と、基板71上に実装された複数の電子部品72及び複数のコネクター73等の実装部品群74とを有する。電子部品72には、CPU及びASIC等の各種制御やデータ処理に用いられる部品、ROM、不揮発性メモリー及びRAM等のメモリー部品、及び電力系の部品等が含まれる。また、コネクター73には、各種のデータや信号の入出力又は電力の供給に使用される配線を接続するためのコネクター、回線用ポート73aやUSBポート73bが含まれる。各ポート73a,73bは装置本体12の背面に設けられた不図示の開口から露出する。
また、基盤70は、基板71側の回路と電気的に接続された状態で基板71に対して垂立するサブ基板75を有している。サブ基板75には複数のコネクター76が実装されており、そのうちの1つのコネクター76と基板71上の一つのコネクター73との間に接続された配線77(例えばフラットケーブル)を通じて基板71とサブ基板75は電気的に接続されている。このサブ基板75は、基板71における各ポート73a,73bが実装された長手方向の一端部寄りの位置に、下段トレイ16が挿抜される収容凹部26に側方から対向するように配置されている。
そして、基盤70は、各ポート73a,73b及びサブ基板75が配置された一端部が挿入方向Y1の奥側に位置する向きで、装置本体12内の部品配設スペース12B(図2参照)に組み付けられている。このため、サブ基板75は、下段トレイ16の装着状態においては、第2センサー56の検出対象である第2延出部16Bの比較的近傍に位置する。そのため、第2延出部16Bを検出対象とする第2センサー56はサブ基板75の近傍に位置する。
図6に示すように、第2センサー56は配線78を通じて基盤70を構成するサブ基板75と電気的に接続されている。第2センサー56の検出信号はサブ基板75を介して基盤70に出力される。詳しくは、第2センサー56から延びる配線78の端部(コネクター)は、サブ基板75に実装された複数のコネクター76のうちの所定の一つに接続されている。つまり、第2センサー56の配線先は、基盤70の挿入方向Y1の奥方に位置するサブ基板75上のコネクター76となっている。このため、第2センサー56とサブ基板75上のコネクター76とは比較的近くに位置し、第2センサー56とそのコネクター76との間を接続する配線78が比較的短く済むうえ、その配線78の引き回し構造も比較的簡単に済む。なお、基盤70が配置された部品配設スペース12B(図2参照)には、基盤70以外の部品として、搬送系の回転軸の回転を検出するエンコーダー93(図9参照)等の各種の部品が配設されている。また、保持機構20Bのスライド部材67等が配設された部品配設スペース12A(図2参照)には、その他の部品として搬送系の歯車列等が配設されている。
次に図7及び図8を参照して下段トレイ16の装着・取出しを検出する構成を説明する。図7(a)及び図8(a),(b)に示すように、下段トレイ16の装着・取出しの検出に用いられる第2延出部16Bは、挿入方向Y1と交差する幅方向Wに幅広な上段部81と、同程度に幅広な下段部82と、外側側部における上段部81と下段部82との間に凹設されてトレイ挿抜方向に沿って延びる溝部83とを有している。上段部81は下段部82よりも挿入方向Y1側へ長く延出している。そして、上段部81の下段部82よりも長く延出した部分の下側には、板状の被検知部84が形成されている。
また、図7及び図8(b)に示すように、被検知部84は、溝部83の底面と連接されており、第2延出部16Bにおける溝部83が形成された部分の肉厚よりもさらに薄い肉厚に形成されている。被検知部84の板厚(肉厚)は、第2センサー56のスリット56Sの幅よりも十分小さく、図7(b)及び図8(a)に示すように、被検知部84はスリット56Sに挿入可能となっている。なお、本実施形態では、スリット56Sが、センサーの検出対象域の一例を構成する。
図7及び図8(a)に示すように、溝部83の底面と被検知部84の外側面との境界部分には双方の肉厚の差に応じた斜面85が形成されている。斜面85は被検知部84側から溝部83の底面側に至るに連れて外側(図8(b)における紙面直交方向手前側)に拡がっている。また、下段部82の下側には、その先端よりも少し挿入方向Y1と反対側の位置を先端とする下端部86が、溝部83の部分とほぼ同じ肉厚で下方に延出している。なお、上段部81の上面先端部と下段部82の下面先端部とには、挿入方向Y1側ほど第2延出部16Bの高さ方向Zの幅が徐々に狭くなるように傾く斜面81a,82aがそれぞれ形成されている。
図7及び図8に示すように、第2延出部16Bの挿入方向Y1の延長線上の位置には、第2センサー56が配置されている。詳しくは、第2センサー56は、検出対象域の一例としてのスリット56Sを隔てて対向する発光部56Aと受光部56Bとを有し、第2延出部16Bが装着位置に到達したときに、被検知部84がスリット56Sに挿入方向Y1から挿入できる位置に配置されている。そして、被検知部84の板厚は、スリット56Sの間隔よりも十分に小さく、被検知部84が幅方向Wに多少ずれても、被検知部84は第2センサー56のスリット56Sに挿入されるようになっている。
このため、図7(a)に示すように、下段トレイ16が装着される過程で、第2延出部16Bは被検知部84が第2センサー56のスリット56Sに向かうように進行する。被検知部84がスリット56Sに挿入されていない状態では、発光部56Aからの光を受光部56Bが受光することができ、第2センサー56は非検知状態(例えばオン状態)にある。そして、図7(b)及び図8に示すように、下段トレイ16が装着位置に達すると、被検知部84がスリット56Sに挿入される。この結果、発光部56Aから受光部56Bへの光が被検知部84により遮光され、第2センサー56は被検知部84を検知して検知状態(例えばオフ状態)になる。このときの第2センサー56の検出信号は、基盤70のコントローラー90に出力される。
次にプリンター11の電気的構成を説明する。
図9に示すように、プリンター11は各種制御を司る制御部の一例としてのコントローラー90を備えている。コントローラー90は通信インターフェイス91を介してホスト装置200と通信可能に接続される。コントローラー90は、ホスト装置200から受信した印刷ジョブデータに基づいてプリンター11の印刷動作等を制御する。ホスト装置200は、例えばスマートフォンや携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))等の携帯端末、あるいはパーソナルコンピューターからなり、ユーザーは入力部201を操作して表示部202に表示された設定画面において印刷条件情報を入力する。印刷条件情報には、用紙種、用紙サイズ、印刷色及び印刷品質(印刷モード)などが含まれる。ホスト装置200は、印刷条件情報に従って生成した印刷ジョブデータをプリンター11へ送信する。本例では、印刷ジョブデータのヘッダーには、印刷条件情報のうち両給送トレイ16,17のうち用紙の給送元とするべき一方の特定に必要な情報(一例として用紙種及び用紙サイズ)などが含まれる。
コントローラー90には、出力系として、表示部14、キャリッジモーター50及び搬送モーター43が接続されている。また、コントローラー90には、入力系として、操作部15、リニアエンコーダー92、エンコーダー93、紙検出センサー94、第1センサー55及びセンサーの一例としての第2センサー56が接続されている。
図9に示すコントローラー90は、受信した印刷ジョブデータ中の画像データに基づき記録ヘッド23を制御し、記録ヘッド23にインク滴を噴射させる制御を行う。また、コントローラー90は、キャリッジモーター50を駆動制御し、キャリッジ21の主走査方向Xへの移動を制御する。また、コントローラー90は、キャリッジ21による動力伝達切換部96の切換え動作のためキャリッジモーター50を駆動させる。動力伝達切換部96はキャリッジ21の移動経路上に切換えレバーを有し、キャリッジ21が切換えレバーを所定の位置に移動させることでその位置に応じた切換位置に切り換えられる。コントローラー90は、リニアエンコーダー92からの入力パルスをカウンター(図示省略)で計数した計数値からキャリッジ21の例えばホーム位置を原点とする主走査方向Xの位置を把握し、その位置に基づいてキャリッジ21の位置制御や速度制御を行う。
コントローラー90は、エンコーダー93から入力する検出信号のパルスエッジ数をカウンターで計数して把握した用紙Pの搬送位置に基づき搬送モーター43を駆動制御し、用紙Pの給送及び搬送を制御する。搬送モーター43の動力は歯車列を含む動力伝達経路を介して給送駆動ローラー44、搬送駆動ローラー47及び第1ローラー51に伝達され、その伝達された動力により各ローラー44,47,51が回転することにより、用紙Pが給送及び搬送される。例えば動力伝達切換部96が給送用の切換位置の状態で搬送モーター43が駆動されると、その出力された回転が揺動部材20Aに配置された歯車列62を介してピックアップローラー19に伝達され、ピックアップローラー19の回転によって用紙Pが給送される。
また、コントローラー90は、第1センサー55及び第2センサー56の検出信号に基づいて給送トレイ16,17の装着及び取出しの検出等を行う。
図9に示すコントローラー90はコンピューターを内蔵しており、そのコンピューターには、例えばCPU、ASIC(Application Specific IC(特定用途向けIC))、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等が備えられている。不揮発性メモリーよりなる記憶部の一例としてのメモリー98には、コントローラー90が、例えば印刷モードに応じた種類の用紙、あるいは指定された種類の用紙を収容する給送トレイを選択する際に参照する設定データD1が記憶されている。設定データD1は、各給送トレイ16,17とそれに収容されている用紙Pに関する用紙情報(用紙サイズと用紙種)との対応関係を示すデータである。
ところで、ユーザーが給送トレイ16,17のうち一方を取出して用紙交換をすると、実際の給送トレイ16,17に収容された用紙Pのサイズ及び用紙種との対応関係が設定データD1と異なることになる。この場合、印刷時に指定した用紙の種類と異なる用紙に印刷される虞がある。そこで、本実施形態のコントローラー90は、給送トレイの装着を検知すると、表示部14にその給送トレイ中の用紙Pのサイズと用紙種を問い合わせてユーザーにその入力を促す図10(a)に示す問合せ画面101を表示させる。問合せ画面101には、図10(a)に示すように、例えば「トレイにセットされている用紙のサイズ・種類を入力してください。」などの入力を促すメッセージが表示される。
図10(a)に示す問合せ画面101には、装着した給送トレイ中の用紙Pのサイズを設定するときに選択される用紙サイズボタン102と、用紙種を設定するときに選択される用紙種ボタン103とが設けられている。例えば用紙サイズボタン102を選択操作すると、用紙サイズを選択可能なサイズ選択画面に切り替わり、そのサイズ選択画面で一つの用紙サイズを選択する。相対的に大きいサイズの用紙P1の収容に使用される下段トレイ16の場合、用紙サイズの選択対象として、A4判,B5判、A5判、レター等の候補の一覧がボタンで表示され、操作部15の操作で該当する一つのボタンを選択すると、そのボタンに対応する用紙サイズが登録される。
一方、図10(a)に示す問合せ画面101で用紙種ボタン103を選択すると、用紙種を選択可能な用紙種選択画面に切り替わり、その用紙種選択画面で一つの用紙種を選択する。相対的に大きいサイズの用紙P1の収容に使用される下段トレイ16の場合、用紙種の選択対象として、普通紙、写真紙、色付き紙、再生紙等の候補の一覧がボタンで表示され、操作部15の操作で該当する一つのボタンを選択すると、そのボタンに対応する用紙種が登録される。問合せ画面101において操作部15の操作で用紙サイズと用紙種のうち少なくとも一方が変更された場合、コントローラー90は、設定データD1における該当する給送トレイに対応するデータ部分をその変更された内容に更新する。
次にプリンター11の作用を説明する。
下段トレイ16の一対の延出部16A,16Bのうち一方の第1延出部16Aが、保持機構20Bによる揺動部材20Aの保持を解除させる押し込みに使用される。そのため、保持機構20Bの第1延出部16Aと係合する部分は、装置本体12の幅方向Wにおいて第1延出部16A側の部品配設スペース12Aに配置される。よって、下段トレイ16を装置本体12に装着したときに第1延出部16Aでスライド部材67を押し込むことにより、揺動部材20Aの保持を解除して、ピックアップローラー19を下段トレイ16上の最上位の用紙P1に当接させることができる。また、下段トレイ16を装置本体12から取り出す過程で、第1延出部16Aがスライド部材67から離れると、ねじりばね66の弾性力により揺動部材20Aが保持位置に配置され、ピックアップローラー19が最上位の用紙P1から離間する。このため、下段トレイ16の挿抜を比較的軽い操作力で行うことができる。
そして、保持機構20Bの作動及び作動解除に用いられる第1延出部16Aとは幅方向Wに反対側に位置する第2延出部16Bを、下段トレイ16の装着を検知する被検知部として使用する。また、保持機構20Bが配設された一方の部品配設スペース12Aとは幅方向Wに反対側に位置する他方の部品配設スペース12Bに、基盤70が配置される。このため、第2延出部16Bを検知可能な位置に配置された第2センサー56が、プリンター11の幅方向Wにおいて基盤70寄りの位置に配置される。このため、第2センサー56と基盤70との配線を短くすることができ、配線78の引き回し作業がし易くなるうえ、その配線78の引き回し構造も簡単で済む。
また、第2センサー56は、下段トレイ16の装着状態でその挿入方向Y1の端部から挿入方向Y1に延出する第2延出部16Bを検知できるように配置されるので、第2センサー56と基盤70との間に下段トレイ16等の移動体の移動経路が位置しない。このため、配線78の配線経路を、下段トレイ16の移動経路を避けて迂回させる必要もない。すなわち、第2延出部16Bは下段トレイ16の装着過程において基盤70の長手方向に沿って移動し、その移動方向端である装着位置に配置されたときにも第2延出部16Bが基盤70の長手方向において挿入方向Y1側の端部近傍に位置する。このため、装着位置にある第2延出部16Bと基盤70との間を給送トレイ16,17の移動経路を迂回することなく、仮に迂回が必要な場合も第2延出部16Bの比較的短い一部の移動経路を迂回する程度で済むので、第2センサー56と基盤70との間の配線を比較的短くすることができる。
また、基盤70には、下段トレイ16の挿入方向Y1の下流側の端部寄りの箇所に位置するので、この点からも第2センサー56との配線を短くでき、その配線の取り回しを簡単に済ませることができる。
基盤70におけるトレイ挿入方向の下流側端部には、第2センサー56の配線78の端部(コネクター)を接続することができるコネクター76が実装されたサブ基板75が、収容凹部26に面するように配置されている。第2センサー56の基盤70に対する接続箇所が、第2センサー56の近くに位置し、この点からも配線を短くして配線の取り回しを比較的簡単な構成とすることができる。
さらにサブ基板75を立てて実装し、基盤70の他の部分から上方へ延出した部分に第2センサー56の接続先となるコネクター76が位置するので、第2センサー56から延びた配線78の端部をサブ基板75のコネクター76に接続する配線作業がし易くなる。また、装置本体12の外装ケースを取り外して行われる基盤70及び第2センサー56のメンテナンスもし易い。例えば第2センサー56を交換するメンテナンス作業や、基盤70に対するメンテナンス時も第2センサー56の配線が邪魔にならずに済む。
さらに、第2センサー56は、基盤70の挿入方向Y1側の端部よりもさらに挿入方向Y1側に位置する。このため、基盤70を組付けるときに第2センサー56が邪魔になりにくく、あるいは第2センサー56を組付けるときに基盤70が邪魔になりにくい。また、第2センサー56が下段トレイ16の移動経路の範囲から幅方向Wの外側にはみ出て配置されても、第2センサー56と基盤70とは挿入方向Y1に配置位置がずれているので、基盤70と干渉することがないので、第2センサー56のサイズ選択の自由度が高まる。
また、被検知部84を第2延出部16Bの幅内において幅方向内側寄りに偏倚して位置させているので、第2センサー56を相対的に幅方向Wの内側寄りに配置することができる。例えば装置本体12の外装ケースの第2センサー56を覆う部分を幅方向W内側寄りに配置できるので、プリンターの幅方向Wにおける小型化に寄与できる。
また、第2センサー56の配置位置は、メンテナンス装置(図示せず)が配置されるホームポジションと幅方向Wに反対側の位置で、かつプリンター11のトレイ挿抜方向においてもメンテナンス装置とほぼ反対側となる背面側の位置なので、メンテナンス装置から離れている。このため、記録ヘッド23のクリーニングやフラッシングによって発生したミストが第2センサー56に付着しにくい。このため、第2センサー56へのミストの付着に起因する下段トレイ16の装着の誤検出が発生しにくくなる。なお、クリーニングとは、メンテナンス装置のキャップ(図示せず)が記録ヘッド23のノズル開口面に接するキャッピング状態でメンテナンス装置の吸引ポンプの駆動によりキャップ内を負圧にし、ノズルからインクを強制的に排出させてノズル内の増粘インクや気泡を排出除去するノズルのメンテナンスを指す。また、フラッシングとは、記録ヘッド23の不使用ノズル内のインクの増粘によるノズルの目詰まり等を避けるため、印刷中において定期的にホームポジションに移動してメンテナンス装置のキャップ内に記録ヘッド23の全ノズルから所定数のインク滴を噴射して、ノズル内のインクをリフレッシュするノズルのメンテナンスを指す。
給送機構20は、揺動部材20Aと、保持機構20Bとを備える。下段トレイ16が装置本体12に挿入される過程で、一対の延出部16A,16Bのうち第1延出部16A(一方の延出部の一例)で保持機構20Bのスライド部材67を押すことにより、ピックアップローラー19は用紙P1と当接する給送位置に配置される。また、下段トレイ16が装置本体12から取り出されて第1延出部16Aによる保持機構20Bへの押し込みが無くなると、下段トレイ16に収容された用紙P1から離間する保持位置に配置される。ピックアップローラー19が給送位置に配置された状態で駆動されることにより、下段トレイ16に収容された最上位の用紙P1が一枚ずつ給送される。
第2センサー56は、下段トレイ16が装置本体12に挿入されたときに一対の延出部のうち第2延出部16B(他方の延出部の一例)を検知することにより下段トレイ16の装着を検出し、第2延出部16Bを検知しなくなることで下段トレイ16の取出しを検出する。つまり、第2センサー56は、一対の延出部16A,16Bのうち給送機構20の揺動部材20Aを下段トレイ16の装着時に保持位置に配置する押し込みに用いられる第1延出部16Aとは幅方向Wに反対側となる第2延出部16Bを検出対象とする。
ユーザーは、例えば下段トレイ16の用紙交換が必要になると、下段トレイ16を装置本体12から取り出し、用紙P1を他の種類の用紙に交換する。そして、用紙交換が終わると、下段トレイ16を装置本体12の収容凹部26の開口から奥まで挿入することで装着する。下段トレイ16が装着状態にあるとき、その挿入方向Y1の下流側端部に延出する第2延出部16Bが第2センサー56のスリット56Sに挿入された状態にあり(図7(b)、図8)、第2センサー56は被検知部84を検知してオン状態にある。
そして、下段トレイ16が装着位置から取り出される過程で、第2延出部16Bの被検知部84が第2センサー56のスリット56Sから抜け出ると(図7(a))、第2センサー56は被検知部84を検知しなくなってオフ状態になる。
コントローラー90は、第2センサー56が検知状態(オン)から非検知状態(オフ)に切り換わったことをもって、下段トレイ16の取出しを検出すると、表示部14に下段トレイ16に対して用紙P1をセットするときの注意事項や操作説明などの案内を表示させる。この種の案内には、下段トレイ16に対して用紙をセットする向き(例えば印刷面を下向き、用紙の長手方向を挿入方向と平行になる向きなど)や、エッジガイド29,30(媒体ガイドの一例)の用紙サイズに合った位置への操作をお願いする案内等が挙げられる。また、その後、下段トレイ16を給送元とする印刷ジョブを受け付けた場合、コントローラー90は、下段トレイ16が取出し状態にあると、表示部14に下段トレイ16(例えば第2トレイ)の装着を促すメッセージを表示させる。このため、そのメッセージを見たユーザーは下段トレイ16を装着することにより、所望の印刷を行うことができる。
下段トレイ16が取出し状態にあるとき、第2センサー56は非検知状態(オフ)にある。そして、下段トレイ16が取出し状態から装着位置に装着される過程で、その挿入方向Y1の下流側端部に延出する第2延出部16Bが、第2センサー56に接近し(図7(a))、さらに第2延出部16Bが挿入方向Y1に進行すると、被検知部84が第2センサー56のスリット56Sに挿入される(図7(b)、図8)。このとき、第2センサー56は被検知部84を検知する検知状態になってオン状態になる。
コントローラー90は、第2センサー56が非検知状態(オフ)から検知状態(オン)に切り換わったことをもって、下段トレイ16の装着を検出すると、表示部14に図10(a)に示す問合せ画面101を表示し、ユーザーに下段トレイ16にセットした用紙P1の用紙サイズと用紙種の入力を促す。このときの問合せ画面101には、装着した給送トレイにセットした用紙の用紙サイズと用紙種の入力を促すメッセージが表示されるとともに、それまでその給送トレイに設定されていた用紙サイズ(例えば「A4判」)と用紙種(例えば「普通紙」)の情報が表示される。
例えばユーザーは、図10(a)に示す問合せ画面101で、操作部15の操作で用紙サイズボタン102を選択し、切り替わったサイズ選択画面で、操作部15の操作により例えば「B5判」を選択する。また、ユーザーは操作部15の操作で用紙種ボタン103を選択し、切り替わった質種選択画面で、操作部15の操作により例えば「写真紙」を選択する。すると、図10(b)に示すように、問合せ画面101に用紙サイズとして「B5判」、用紙種として「写真紙」が設定される。
問合せ画面101の表示状態の下での操作により用紙サイズと用紙種のうち少なくとも一方が変更された場合、コントローラー90は、設定データD1における該当する給送トレイに対応するデータ部分をその変更された内容に更新する。こうしてメモリー98には、給送トレイ16,17とそれぞれに収容されている用紙の種類(用紙サイズと用紙種)との対応関係を示す最新の設定データD1が記憶される。
例えば、その後、下段トレイ16を給送元とする印刷ジョブを受け付けた場合、コントローラー90は、指示された印刷モードに応じた用紙の種類(用紙サイズ・用紙種)を決定し、あるいは指定された用紙の種類を取得する。そして、コントローラー90は、その用紙の種類を基に設定データD1を参照して、各給送トレイ16,17のうち給送元にするべき一つを選択する。例えば用紙サイズが「B5判」で用紙種が「写真紙」の場合、コントローラー90は、給送元に下段トレイ16を選択する。すなわち、コントローラー90は、可動式トレイ17が給送位置にある場合はこれをセット位置に戻し、下段トレイ16の最上位の用紙P1にピックアップローラー19を当接させた状態とする。そして、コントローラー90は指示された印刷ジョブデータに基づく印刷を開始する。こうして下段トレイ16から給送された例えばB5判の写真紙に印刷ジョブに基づく画像等が印刷される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)給送機構20の保持機構の作動のための押し込みに用いられる第1延出部16Aとは幅方向Wに反対側の第2延出部16Bを第2センサー56の被検知部84に用いるとともに、装置本体12の幅方向Wに下段トレイ16を挟む両側に設けられた一対の部品配設スペース12A,12Bのうち第2延出部16B側の一方に基盤70を配置した。このため、第2延出部16Bを検出対象とする第2センサー56を基盤70の近くに配置することができるので、第2センサー56を基盤70に接続する配線78を短くすることができ、その配線の引き回し作業が比較的簡単で済むうえ、配線78の引き回し構造も比較的簡単になる。
(2)底面16a上にセットされた用紙P1をその先端を規制して保持するストッパー16bよりも、一対の延出部16A,16Bがさらに長く延出している。よって、下段トレイ16を落としても、比較的剛性のある一対の延出部16A,16Bが床面等に当たり、これらよりも突出長の短いストッパー16bを保護することができる。
(3)コントローラー90は、第2センサー56が下段トレイ16の第2延出部16Bを検知することをもって下段トレイ16の装着を検出し、一方、第2センサー56が第2延出部16Bを検知しなくなったことをもって下段トレイ16の取出しを検出する。よって、下段トレイ16の装着と取出しを共に検出することができる。
(4)コントローラー90は、給送トレイ16,17のうちいずれか一方の装着を検出したら、問合せ画面101を表示し、セットされた用紙Pの用紙情報(用紙サイズと用紙種を含む)の入力を促す問合せ画面101を表示部14に表示する。そして、コントローラー90は、ユーザーにより操作部15の操作で入力された用紙情報を、その装着が検出された給送トレイと関連付けて更新した設定データD1をメモリー98に記憶する。よって、コントローラー90が給送元とするべき給送トレイの選択の際に参照する設定データD1が最新の状態に更新されているので、用紙サイズ及び用紙種の間違った用紙Pに印刷されることを回避できる。
(5)コントローラー90は、いずれかの給送トレイ16,17の取出しを検出したときには、用紙情報の入力を促す内容とは異なるそれ以外の案内(用紙セット方向の案内、エッジガイドの設定の案内等)を表示部14に表示させる。よって、ユーザーは、その表示された案内に従ってその取り出された給送トレイ16又は17に用紙Pを正しくセットすることができる。例えば用紙Pを印刷面の表裏を間違えてセットしたり、縦横の向きを間違えてセットしたり、エッジガイドが用紙サイズに合わせて位置調整されていなかったりするセットミスを低減できる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図面を参照して説明する。この実施形態は、下段トレイ16の第2延出部16Bを第2センサー56のスリット56Sに案内するガイド機構112を備えた例である。なお、ガイド部を備えた点以外は、前記第1実施形態と基本的に同じ構成なので、前記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略し、特に異なる構成についてのみ説明する。
図14に示すように、プリンター11の外装ケース内の背面側に配設されたリアフレーム110には分離部40aが支持されている。幅方向Wに基盤70(図6参照)の一番近くに位置する分離部40aと、基盤70が配設された部品配設スペース12Bと収容凹部26との隔壁を形成する側壁板111との間の箇所には、挿入方向Y1において分離部40aよりもやや奥側の位置に、ガイド機構112が配設されている。ガイド機構112は、下段トレイ16の装着過程において第2延出部16Bの被検知部84を、第2センサー56のスリット56S(いずれも図11(b)、図12を参照)に案内する。なお、図14において、側壁板111の下側の底板111Aは、基盤70が配置される部品配設スペース12Bの底面を形成しており、側壁板111の上端に連結された天板110Aは給送トレイ16,17から送り出された用紙Pの給送経路と収容凹部26とを部分的に区画している。
次に、ガイド機構112の詳細な構成を説明する。図11(a),(b)、図12及び図13(a),(b)に示すように、リアフレーム110におけるガイド機構112の配設箇所には、幅方向Wに所定の間隔を開けて配置された一対の隔壁板113,114が形成されている。そして、リアフレーム110は、一対の隔壁板113,114の下端部を幅方向Wに連結する水平な底板部115と、底板部115に対してその挿入方向Y1の奥方端部から垂直に立設された背板部116とを有している。そして、第2センサー56は一対の隔壁板113,114の間における底板部115上の奥方位置(後方位置)に組み付けられている。
図11及び図12に示すように、一対の隔壁板113,114の間における幅方向Wの両側には、下段トレイ16の第2延出部16Bを、第2センサー56のスリット56S内に案内する一対のガイド部材121,122が設けられている。一対のガイド部材121,122のうち一方のガイド部材(以下、「第1ガイド部材121」ともいう。)は、第2延出部16Bが挿入方向Y1に移動するときにその内側側面を案内するガイド面121Aを有している。また、他方のガイド部材(以下、「第2ガイド部材122」ともいう。)は、第2延出部16Bが挿入方向Y1に移動するときにその上段部81より下側の部分を案内するガイド面122Aを有している。一対のガイド面121A,122Aは、挿入方向Y1の奥側ほど両者の間隔が徐々に狭くなる一対の斜面となっている。なお、本実施形態では、第1ガイド部材121及び第2ガイド部材122により、第2のガイド部の一例が構成される。また、一対のガイド面121A,122Aにより誘導面の一例が構成される。
また、第1ガイド部材121には、ガイド面121Aに対して挿入方向Y1の奥側に隣接する箇所に、第2延出部16Bの上段部81が通る高さ位置にリブ123が設けられている。リブ123の挿入方向Y1手前側の端部には斜面123aが形成されている。この斜面123aは、挿入方向Y1側ほど突出量が徐々に大きくなる向きに傾く斜面となっている。このリブ123は、被検知部84がスリット56Sに挿入される過程において、第2延出部16Bの上段部81の側部の位置を幅方向Wに規制する。
また、図11(b)、図12及び図13(b)に示すように、隔壁板114の内面には、第2ガイド部材122の挿入方向Y1の奥側端部近傍から挿入方向Y1に沿って延びるとともに内面から垂直に突出する上下一対のリブ124が設けられている。リブ124の挿入方向Y1手前側の端部には斜面124aが形成されている。この斜面124aは、挿入方向Y1側ほど突出量が徐々に大きくなる向きに傾く斜面となっている。なお、本実施形態では、リブ123,124により、規制面部の一例が構成される。この規制面部の一例は、リブ123を複数にしたり、リブ124を一つにしたりしてもよく、さらにリブ123,124のうち少なくとも一方を凸状のリブに替えて平坦面からなる規制面としてもよい。
また、図14及び図15に示すように、側壁板111において下段トレイ16が挿入される過程で第2延出部16Bの溝部83と対応する箇所には、第1のガイド部の一例としての規制部126が突設されている。規制部126は、高さ方向Zに溝部83の溝幅よりも若干狭い一定の幅を有し、その一定の幅で挿入方向Y1に沿って延びるとともに、側壁板111の内面からの突出量は溝部83と係合可能な値に設定されている。また、規制部126の挿入方向Y1の下流側端部には斜面126aが形成されている。斜面126aは、挿入方向Y1側ほど突出量が徐々に小さくなる一定の勾配の面に形成されている。
図16(a)に示すように、下段トレイ16が挿入方向Y1に移動するその装着過程の終期に、第2延出部16Bの溝部83には規制部126が挿入される。第2延出部16Bにおける上段部81の先端下部と、下段部82の先端上部とには、溝部83への挿入口を広くする向きに傾いた一対の斜面81b,82cが形成されている。この溝部83の挿入口にある一対の斜面81b,82cに案内されて、規制部126は、溝部83内にスムーズに挿入される。
図16(a)〜(c)に示すように、溝部83の高さ方向Zに対向する一対の内周壁には、一対の突部131が高さ方向Zに対向する位置において互いに接近する向きに突設されている。一対の突部131は、図16(b)に示すように被検知部84がスリット56Sに挿入する直前の位置に達した段階で、溝部83内の規制部126の挿入方向Y1と反対側の端部が一対の突部131に到達する位置に形成されている。一対の突部131の間隔は、規制部126の高さ方向Zの幅よりも若干広く設定されている。図16(c)に示すように、規制部126が一対の突部131の間を通るときに、被検知部84がスリット56Sの想定された位置範囲内に挿入されるように第2延出部16Bが高さ方向Zに位置規制される。また、溝部83の挿入方向Y1と反対側の端面には突部132が挿入方向Y1に向かって突設されている。図16(c)に示すように、溝部83に挿入された規制部126に突部132が当たることで、下段トレイ16は被検知部84がスリット56Sに挿入された位置でそれ以上の挿入ができないように位置規制される。なお、下端部86の挿入方向Y1側の端部には、挿入方向Y1側ほど下段部82から下方へ延出する下端部86の延出量が徐々に小さくなる向きの斜面86aが形成され、下段トレイ16の挿入方向Y1への挿入はこの斜面86aによってもスムーズに行われる。
次に、第2実施形態におけるガイド機構112の作用を説明する。
ユーザーが下段トレイ16を収容凹部26に装着すると、その装着し終わる手前の段階で、第2延出部16Bがガイド機構112に案内される。まず、第2延出部16Bの溝部83に規制部126が挿入し、第2延出部16Bが高さ方向Zに所定範囲内の高さに誘導される。このとき、溝部83の先端部の挿入口が一対の斜面81b,82cにより挿入方向Y1の奥側ほど広がっているので、第2延出部16Bが高さ方向Zに多少ずれていても、溝部83に規制部126がスムーズに挿入される。
次に図11(a),(b)及び図12に示すように、第2延出部16Bの先端部が、一対のガイド部材121,122の間に挿入される。第2延出部16Bはその先端部が一対のガイド部材121,122の間を通る過程で、一対のガイド面121A,122Aに誘導され、幅方向Wにおいてスリット56Sを指向する位置に徐々に案内される。
そして、第2延出部16Bが挿入方向Y1へさらに進行し、規制部126が一対の突部131の間を通るときにさらに第2延出部16Bが高さ方向Zに所定の位置に位置規制されることで、被検知部84がスリット56Sに対して高さ方向Zに位置決めされる。また、第2延出部16Bが一対のガイド面121A,122Aによる誘導が終わった後、一対のリブ123,124の間を通るときに幅方向Wに所定の位置に位置規制される。この結果、被検知部84がスリット56Sに対して幅方向Wに位置決めされる。よって、ユーザーが下段トレイ16を装着し終わったとき、第2延出部16Bの被検知部84は、第2センサー56のスリット56Sの想定された位置範囲内に挿入される。このようにユーザーによる下段トレイ16の装着の仕方によって第2延出部16Bが進行する位置が幅方向W及び高さ方向Zに多少ずれても、ガイド機構112によって第2延出部16Bが案内されることで、被検知部84はスリット56Sの想定位置範囲内に挿入される。したがって、第2延出部16Bが第2センサー56に当たったりスリット56Sに挿入されたもののその内周面に接触したりすることが回避される。
一方、下段トレイ16を装置本体12から取り出すときは、下段トレイ16の挿入過程と逆の経路をとるだけなので、第2延出部16Bはガイド機構112に対して特に引っ掛かることもなくスムーズに取り出すことができる。このとき、規制部126の挿入方向Y1側の端部が挿入方向Y1の奥側ほど広がった斜面126aになっているので、斜面がない構造の場合に比べ、下段トレイ16を取り出す際の引っ掛かり等が発生しにくい。
以上詳述した本実施形態によれば、さらに以下に示す効果を得ることができる。
(6)第2延出部16Bをガイド機構112により案内したので、第2延出部16Bが第2センサー56に接触したり当たったりすることを防止できる。例えば第2延出部16Bが第2センサー56に接触したり当たったりした際の衝撃等に起因する第2センサー56の精度低下や使用できる寿命の低下等の不具合を発生しにくくすることができる。
(7)特に、挿入方向Y1の奥側ほど狭くなる一対の斜面をなすガイド面121A,122Aにより、第2延出部16Bを幅方向Wに徐々にスリット56Sを指向する位置に案内することができる。
(8)一対のガイド面121A,122Aによる案内が終わると、次に第2延出部16Bをリブ123,124により位置を規制したので、第2延出部16Bが第2センサー56に接触したり当たったりすることを防止できる。すなわち、まず一対のガイド面121A,122Aにより第2延出部16Bをスリット56Sへの挿入が可能な位置に幅方向Wに誘導し、次に、被検知部84がスリット56Sに挿入される過程で、リブ123,124により第2延出部16Bをさらに幅方向Wに狭い範囲内に位置規制することで、被検知部84がスリット56S内に位置決めされる。この結果、被検知部84がスリット56S内に挿入され、第2センサー56に当たることが回避されるので、例えば第2延出部16Bが第2センサー56に接触又は衝突した場合の衝撃等に起因する第2センサー56の精度低下や寿命の低下等の不具合が発生しにくくなる。
(9)規制部126と溝部83との係合により第2延出部16Bを高さ方向Zに位置規制できるので、高さ方向Zに大きくずれることなく被検知部84を第2センサー56のスリット56Sに挿入させることができる。このため、被検知部84を確実に検知して、下段トレイ16の装着の検知ミスを一層低減することができる。
(第3実施形態)
前記各実施形態では、下段トレイ16の挿入方向Y1側の端部を第2センサー56により直接検知したが、この第3実施形態は、第2延出部16Bが装着位置に到達したことを第2センサー56が間接的に検知して下段トレイ16の装着を検知する構成である。
図17(a),(b)に示すように、第2センサー56のスリット56Sに対して挿入方向Y1の手前側には、被検知体の一例としての可動体141がスリット56Sに挿入可能な位置に位置決めされた状態で、トレイ挿抜方向(挿入方向Y1と平行な方向)に沿ってスライド可能な状態で設けられている。この可動体141は、スリット56Sの幅よりも十分狭い幅を有する板状の被検知部141Aを有している。可動体141は、不図示のガイドにより、被検知部141Aがスリット56Sの幅中心に配置されるように位置決めされている。
可動体141は、ばね142の弾性力により取出し方向Y2に付勢されており、外力が加わっていない状態では、図17(a)に示すように、スリット56Sから取出し方向Y2側の外側に出た待機位置に配置されている。可動体141は、下段トレイ16が装着される過程における第2延出部16Bの移動経路上に位置している。下段トレイ16が装着し終わる直前の位置から装着し終わるまでの第2延出部16Bの挿入過程で、第2延出部16Bが可動体141を挿入方向Y1に押し込むようになっている。
図17(a)に示すように、第2延出部16Bが可動体141を押し込んでいない状態では、ばね142の弾性力により可動体141はスリット56Sの外側の待機位置にある。図17(b)に示すように、第2延出部16Bが可動体141を押し込むと、可動体141の被検知部141Aがスリット56Sに挿入される。第2センサー56が被検知部141Aを検知することにより下段トレイ16の装着が検出される。下段トレイ16を装着し終わったとき、第2延出部16Bは、図17(b)に示す押込位置に配置される。
下段トレイ16が装置本体12に装着される過程の終期に、第2延出部16Bが可動体141に当たりこれをばね142の付勢力に抗して押し込む。すると、図17(b)に示すように、可動体141が不図示のガイドに沿って挿入方向Y1に移動してその被検知部141Aがスリット56Sに挿入される。この結果、第2センサー56が検知状態となり、下段トレイ16の装着が検出される。
また、下段トレイ16を装置本体12から取り出すと、第2延出部16Bが取出し方向Y2に移動し、可動体141への外力が無くなるため、ばね142の弾性力により可動体141がスリット56Sから取出し方向Y2の外側へ移動する(図17(a)の状態)。この結果、第2センサー56が非検知状態になり、下段トレイ16の取出しが検知される。このとき、下段トレイ16を素早く取り出したときには、ばね142の付勢力により可動体141がスリット56Sから外側に移動して第2センサー56が非検知状態になるまでに僅かなタイムラグが発生する虞があるが、表示部14の表示がその分だけ極僅かに遅れる程度なので、特に問題はない。
この構成においても、下段トレイ16の挿入方向Y1側の端部に設けられた一対の延出部16A,16Bのうち、第1延出部16Aとの係合で作動される保持機構20Bに対して幅方向Wに下段トレイ16を挟んで反対側に位置する基盤70側の第2延出部16Bを、下段トレイ16の装着を検知する第2センサー56の検出対象として利用した。このため、第1実施形態と同様の効果が得られるうえ、以下の効果も得ることができる。
(10)下段トレイ16の第2延出部16Bが幅方向W及び高さ方向Zに多少位置がずれたとしも、第2延出部16Bによって押し込まれた可動体141は不図示のガイド等によって予め決められた経路に沿って移動し、その被検知部141Aをスリット56Sの適切な位置範囲に挿入させることができる。よって、第2センサー56に被検知部が接触したり当たったりすることに起因するその精度低下や寿命低下等の不具合を回避し易い。また、下段トレイ16の装着の仕方が悪く、第2延出部16Bが幅方向Wあるいは高さ方向Zに位置がずれた状態で可動体141に当たっても、可動体141は所定の経路で移動してその被検知部141Aをスリット56Sの想定された位置範囲内に挿入させることができる。このように下段トレイ16の一部を第2センサー56のスリット56Sに挿入する構成ではないので、第2実施形態で用いたガイド機構112が不要になる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・下段トレイ16に設けられた一対の端部は、下段トレイ16の幅中心を挟んだ両側に位置すればよい。また、一対の端部は、延出部や突起などである必要はない。例えば第1端部と第2端部とのうち一方又は両方が延出部ではない構成でもよい。つまり、延出部を一対のうちの一方のみとしたり、両方共に延出部ではない構成としたりしてもよい。例えば延出部を基盤側の一方のみとしてもよい。また、一対の端部のうち少なくとも一方が平坦面であってもよい。平坦面の場合、機構を作動させるときに係合する係合面部が一方の端部となり、第2センサーにより検知対象とされる被検知面部が他方の端部となり、両端部により一対の端部が構成される。また、一対の端部は、下段トレイ16の幅中心を挟んだ両側に位置すればよく、幅中心に対して対称な位置であることに限定されず、幅中心に対して非対称な位置でもよい。
・下段トレイ16に設けられた被検知部の位置は、下段トレイ16の挿入方向Y1の下流側端部における下段トレイ16の幅中心よりも基盤70寄りの位置であればよい。例えば下段トレイ16の基盤70側の側端から幅方向Wに下段トレイ16の幅の1/3の範囲内の位置がより好ましく、下段トレイ16の幅の1/4の範囲内の位置がさらに好ましい。
・前記各実施形態では、被検知部を、下段トレイ16の第2延出部16Bの一部をスリット56Sに挿通可能な厚さの板状に形成して構成したが、第2延出部16Bから延出させてもよい。例えば第2延出部16Bから上方又は下方へ延出するように被検知部を設けてもよい。また、第2延出部16Bから挿入方向Y1の下流側に延出するように被検知部を設けてもよい。さらに第2延出部16Bの内側面から幅方向内方へ延出するように被検知部を設けたり、第2延出部16Bの外側面から幅方向外方へ延出するように被検知部を設けたりしてもよい。この場合、例えば延出する部分をL字状又はU字状とし、その先端部にスリット56Sに挿入できる向きに延びる板状又はロッド状の被検知部を設ければよい。
・機構を作動させるために係合する端部は、第1延出部16Aそのものではなく、第1延出部16Aから延出させてもよい。例えば第1延出部16Aから上方又は下方へ延出するように係合部を設けてもよい。また、第1延出部16Aから挿入方向Y1の下流側に延出するように係合部を設けてもよい。さらに第1延出部16Aの内側面から幅方向内方へ延出するように係合部を設けたり、第1延出部16Aの外側面から幅方向外方へ延出するように係合部を設けたりしてもよい。この場合、例えば延出する部分をL字状又はU字状とし、その先端部に機構側の被係合部を押し込みできる向きに延びる板状又はロッド状の係合部を設ければよい。
・前記各実施形態では、給送トレイの装着と取出しの両方を検知して、両方の検知をコントローラー90による制御に用いたが、一方の検知のみを制御に用いてもよい。例えば装着のみ検知して問合せ画面を表示させる構成としたり、取出しのみ検知して媒体をセットするうえで注意するべき案内のメッセージやイラストを表示させる構成としたりしてもよい。また、給送トレイの装着検知時と取出し検知時との両方で表示制御は行わず、モーターの駆動を停止させる制御等のトレイ移動系の制御のみを行ってもよい。
・センサー(第2センサー56)は、フォトインターラプター等の光透過型の光学式センサーに限定されず、光反射型の光学式センサーとしてもよい。光反射型の場合、被検知部を、延出部16Bに設けた光を反射可能な光反射面又は光を吸収可能な光吸収面とすればよい。また、センサーは、光学式センサー以外の非接触式センサーとしてもよい。例えば磁気センサー等を用いてもよい。この場合、被検知部を、延出部16Bに設けた磁気を帯びた面又は磁性体の面にすればよい。さらに接触式センサーを用いてもよい。接触式センサーの場合、延出部16Bを直接検知してもよいし、延出部に形成した突起や凹部、溝部、孔等の被検知部を検知してもよい。
・各部品配設スペース12A,12Bにおいて、基盤70の配置位置と、給送機構20の保持機構20Bの配置位置とを逆転させてもよい。この構成においても、基盤70側の延出部16Aを検出対象として第2センサー56を基盤70の近くに配置する構成とすれば、同様の効果を得ることができる。
・機構は、給送機構20の保持機構20B以外の機構でもよい。要するに、給送トレイを挿抜する際の操作力により駆動される機構であればよい。例えば給送トレイを装着するときの押し込み力により作動又は作動解除され、給送トレイを取り出した際の押し込み力の解消により作動解除又は作動される構成であればよい。前記実施形態における給送機構20の保持機構20Bでは、給送トレイの第1延出部16Aの押し込み係合により作動(保持位置への作動)が解除され、その押し込み係合の解消によりばねの付勢力により作動される構成であった。これに対し、例えばトグルレバーを備え、給送トレイを押し込むとトグルレバーが第1位置に回動し、給送トレイを取り出すとトグルレバーが第2位置に回動する構成でもよい。また、機構は、給送機構の保持機構以外に、給送トレイに収容された媒体の厚みの異なる種類に応じて記録ヘッドと支持台とのギャップを調整するギャップ調整機構であってもよい。さらに、機構は、給送経路の切換え機構であってもよく、給送トレイを装着すると、その装着操作により給送経路がホッパーからの給送経路から給送トレイからの給送経路に切り換わり、給送トレイを取り出すと、その取出し操作によりホッパーからの給送経路に切り換わる構成であってもよい。
・ガイド機構112は、一対のガイド部材121,122のみとしてもよい。この構成によっても、第2延出部16Bの被検知部84を幅方向Wにおいてスリット56Sに挿入可能な位置に案内することができる。また、ガイド機構112は、溝部83と係合する規制部126のみとしてもよい。この構成によっても、第2延出部16Bの被検知部84を高さ方向Zにおいてスリット56Sに挿入可能な位置に案内することができる。また、ガイド機構112から溝部83と規制部126とを廃止してもよい。さらに被検知部の高さ方向Zの案内は、上下一対のガイド部により行ってもよい。例えば、被検知部を高さ方向Zのみ案内してもよい。
・媒体収容部は可動式トレイ17であってもよく、可動式トレイ17の装着の検出に適用してもよい。すなわち、可動式トレイ17の挿入方向先端部に少なくとも基盤寄りに延出部を設け、基盤寄りの延出部を第1センサー55で検出するようにする。この構成によれば、第1センサー55を基盤70の近くに配置することができ、その配線の引き回し作業及び引き回し構造を簡単にすることができる。なお、可動式トレイ17の動力源として、搬送系の動力源である搬送モーター43に替え、専用のモーターを用いてもよい。
・給送トレイの段数は二段に限定されない、三段以上の複数段としてもよい。また、その複数段のうち少なくとも一段の給送トレイの装着を、その挿入方向先端の端部又は延出部を検知して検出するものであればよい。また、可動式トレイ17を有しない構成でもよい。
・給送トレイは装置本体12の前面側(操作パネル15側)で挿抜する構成ではなく、装置本体の側面側で挿抜する構成であったり、装置本体の背面側で挿抜する構成であったりしてもよい。また、装置本体の前面側、側面側及び背面側のうち複数の異なる面部側で給送トレイを挿抜できる構成でもよい。
・表示部14をタッチパネルとし、操作部15に替え又は操作部15に加えて、タッチパネルを操作部の一例とする構成としてもよい。
・制御部を構成する各機能部は、プログラムを実行するCPUによりソフトウェアで実現したり、ASIC等の電子回路によりハードウェアで実現したり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したりしてもよい。
・印刷装置は、用紙P等の媒体に印刷することのできるものであれば、インクジェット式プリンター、ドットインパクトプリンターやレーザープリンターであってもよい。また、印刷装置は、印刷機能だけを備えたプリンターに限定されず、複合機であってもよい。さらに、印刷装置は、シリアルプリンターに限らず、ラインプリンター又はページプリンターであってもよい。
・媒体は用紙に限定されず、樹脂製のフィルム、金属箔、金属フィルム、樹脂と金属の複合体フィルム(ラミネートフィルム)、織物、不織布、セラミックシートなどであってもよい。