以下、印刷装置の一例であるプリンターに具体化した一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、プリンター11は、一例としてインクジェット式カラープリンターであって、薄型の略直方体形状を有する装置本体12を備える。この装置本体12の前面(図1では右面)にはユーザーが入力操作等に用いる操作パネル13が設けられている。操作パネル13には、例えば液晶パネルよりなる表示部14及び複数の操作スイッチからなる操作部15が設けられている。操作部15には、プリンター11の電源をオン・オフ操作するための電源スイッチ15a及び表示部14に表示されたメニュー画面上で所望の選択項目を選択操作するための選択スイッチ15bなどが含まれる。
図1に示すように、装置本体12の前面における操作パネル13の下側位置には、媒体の一例としての用紙Pを複数枚収容可能な上下二段の給送トレイ16,17(給送カセット)がそれぞれ独立して着脱可能(挿抜可能)な状態で装着されている。2つの給送トレイ16,17のうち下側に配置される給送トレイ(以下、「下段トレイ16」ともいう。)は、その前面側(図1では右面)に下端部を回動軸として開閉可能なカバー18を備え、カバー18ごと抜き取ることが可能である。また、2つの給送トレイ16,17のうち上側に配置される給送トレイ(以下、「可動式トレイ17」ともいう。)は、例えば下段トレイ16が装着された状態ではカバー18を開くことで露出する装着口に、着脱可能な状態で装着される。なお、本実施形態では、可動式トレイ17により可動式の媒体収容部(第1の媒体収容部)の一例が構成され、下段トレイ16により第2の媒体収容部の一例が構成される。
本実施形態では、下段トレイ16は、用紙サイズの相対的に大きな用紙P1を収容可能である。この下段トレイ16は、搬送方向Yにおいてプリンター11の全長(奥行長)よりも少し短い長さを有し、且つ幅方向Xにおいて最大用紙幅よりも少し長い幅を有している。一方、可動式トレイ17は、用紙サイズの相対的に小さな用紙P2を収容可能である。この可動式トレイ17は、搬送方向Yにおいて下段トレイ16の全長よりも長さが短く、且つ幅方向Xにおいて下段トレイ16とほぼ同じ幅を有している。本例では、可動式トレイ17の搬送方向Yの長さは、下段トレイ16の搬送方向Yの長さの例えば2/3程度である。もちろん、下段トレイ16と可動式トレイ17との搬送方向Yにおける長さの比は、可動式トレイ17の方が短い限りにおいて適宜の値を設定できる。
本実施形態の可動式トレイ17は、搬送方向Yと平行な方向に往復移動可能な電動式であり、図1に示すように閉位置にあるカバー18の直ぐ裏面側の位置まで前面が位置しユーザーによる着脱が可能なセット位置(装着位置)と、セット位置から装置本体12内へ所定距離だけ奥側(図1では左側)に位置する給送位置との間を移動可能である。よって、ユーザーは、可動式トレイ17がセット位置に配置された状態においてカバー18を開ければ、可動式トレイ17を抜き取ることが可能である。これに対し、例えば可動式トレイ17が装置本体12内の奥方に位置する給送位置に配置された状態では、ユーザーは可動式トレイ17を掴むことができないので、可動式トレイ17の取出しが極めて困難となる。
図1に示すように、装置本体12内には各トレイ16,17の幅中央部の奥寄りの位置に、ピックアップローラー19(図5も参照)が揺動部材20の先端部に回転可能に支持された状態で配置されている。このピックアップローラー19は、下段トレイ16と可動式トレイ17とに共通で一個設けられている。なお、本実施形態では、ピックアップローラー19及び揺動部材20等により、給送部の一例が構成される。
図1に示すように、可動式トレイ17がセット位置にあるときには、揺動部材20はその先端部が下方へ移動するよう傾動して、ピックアップローラー19が下段トレイ16に収容された用紙P1のうち最上位の一枚に当接する。この状態で、ピックアップローラー19が回転することで最上位の一枚の用紙P1が下段トレイ16から給送方向下流側へ送り出される。また、可動式トレイ17が給送位置にあるときには、揺動部材20は可動式トレイ17により押し上げられ、ピックアップローラー19が可動式トレイ17内に収容された用紙P2のうち最上位の1枚に当接する。この状態で、ピックアップローラー19が回転することで最上位の一枚の用紙P2が可動式トレイ17から給送方向下流側へ送り出される。両トレイ16,17のうち一方から給送された用紙Pは、装置本体12内の後部で円弧面状のガイドに沿って反転された後、所定の搬送経路に沿って搬送方向Yに搬送される。なお、本明細書では、下段トレイ16に収容された用紙に符号「P1」を付し、可動式トレイ17に収容された用紙に符号「P2」を付しているが、用紙が収容されるトレイを特に区別する必要がない場合は、単に「用紙P」と記すものとする。
図1に示すように、装置本体12内には、キャリッジ21が、搬送方向Yと交差する主走査方向X(本例では幅方向)に延びるように架設されたガイド軸22に案内され、主走査方向Xに沿って往復移動可能な状態で設けられている。キャリッジ21の下部には、搬送される用紙Pにインク滴を噴射する複数のノズルを有する記録ヘッド23が取り付けられている。印刷済みの用紙Pは、操作パネル13とカバー18が開いた状態で露出する排出口から、図1に白抜き矢印で示す方向へ排出される。排出された印刷済みの用紙Pは装置本体12の前側の排出口の下側から前方へ向かって出退可能に設けられて突出状態に配置された排出スタッカー24(排紙トレイ)(図5参照)上に積載される。
次に各トレイ16,17の構成及び用紙Pの分離機構について説明する。図2に示すように、下段トレイ16は、用紙P1を載置可能な底面16aを有し、この底面16aのカバー18側の端部位置には、挿入方向Y1にスライド可能で用紙Pの後端エッジの位置を規制するエッジガイド29(図5参照)が設けられている。また、下段トレイ16には、トレイ挿抜方向と交差する用紙幅方向(図1の幅方向Xに同じ)にスライド可能で用紙P1のサイドエッジの位置を規制する一対のエッジガイド30が設けられている。本実施形態では、下段トレイ16内の用紙はその幅中心が下段トレイ16の幅中心に一致するセンター位置にガイドされる。
また、下段トレイ16の装着方向先端部(図2では左端部)には、セットされた用紙P1の先端を規制するストッパー16bが設けられている。さらに下段トレイ16の先端部には、下段トレイ16が装置本体12に装着される過程で、揺動部材20(図1参照)の保持機構(図示せず)に係合してその保持を解除可能な押圧部16cが設けられている。揺動部材20の保持機構が解除されることにより、ピックアップローラー19は下降して下段トレイ16内の最上位の用紙P1に当接する。
一方、図2に示すように、可動式トレイ17は、用紙P2を載置可能な底面17aを有する収容凹部17bを備えている。この底面17aにおけるトレイ装着方向手前側の端部(図2では右端部)には、挿入方向Y1にスライド可能なエッジガイド31が設けられている。また、収容凹部17bには、紙幅方向にスライドして用紙P2のサイドエッジを両側から位置規制可能な一対のエッジガイド32が設けられている。本実施形態では、可動式トレイ17内の用紙P2は、一対のエッジガイド32により可動式トレイ17の幅方向におけるセンター位置にガイドされる。
また、可動式トレイ17において装着方向先端部(図2では左端部)には、用紙先端位置を規制する一対のストッパー17cが設けられ、可動式トレイ17にセットした用紙P2は一対のストッパー17cによって先端側に飛び出さない構成となっている。可動式トレイ17がセット位置から給送位置へ移動する過程で、ストッパー17cは揺動部材20と係合して揺動部材20を上方へ押し退け、可動式トレイ17が給送位置に配置された状態では、ピックアップローラー19が可動式トレイ17内の最上位の用紙P2に当接する。
また、図2に示すように、可動式トレイ17の幅方向における一端部の上面には、その移動方向(トレイ挿抜方向)に沿って延びる所定長さのラック部17dが形成されている。このラック部17dにピニオン歯車33が噛合することによって、ラック・アンド・ピニオン機構が構成されている。可動式トレイ17は、用紙P2を搬送する搬送系の動力源である搬送モーター43(図9参照)の動力で回転するピニオン歯車33とラック部17dとの噛合位置が変化することにより、図2に示すセット位置(図5)と、図3に示す給送位置(図6)との間を移動する。
また、図2に示すように、装置本体12の底面部において前述のトレイ収容凹部に装着された下段トレイ16の先端部と対応する箇所には、ピックアップローラー19の回転によって下段トレイ16及び可動式トレイ17から送り出された用紙Pを分離する分離機構40が配置されている。分離機構40は、装置本体12の幅方向に複数の分離部40aを有している。各分離部40aはトレイ16,17からの用紙送り出し方向(挿入方向Y1)に対して鋭角な角度をなす斜面を有し、この斜面の摩擦抵抗等によって最上位の用紙Pをその下位の用紙から分離する機能を有する。こうして下段トレイ16又は可動式トレイ17から用紙Pは一枚ずつ給送される。
ここで、可動式トレイ17は、図2に示すセット位置から挿入方向Y1に移動し、分離機構40に当たるとそれ以上の移動が規制された状態となり、その位置で停止することで、図3に示す給送位置に配置される。また、装置本体12には、可動式トレイ17が、図3に示す給送位置から取出し方向Y2に移動してセット位置に到達すると、可動式トレイ17の側部に設けられた被検知部17Aを検知可能な位置に第1センサー65が設けられている。そして、第1センサー65の検知に基づき、可動式トレイ17の動力源である搬送モーター43の駆動が停止されると、可動式トレイ17は図2に示すセット位置で停止する。なお、本実施形態では、第1センサー65が、センサー及び第1のセンサーの一例を構成している。
また、可動式トレイ17のセット位置は、ユーザーが用紙P2を交換又は補充する際に可動式トレイ17の取出し及び装着を行うための位置である。このため、可動式トレイ17は、特に給送が必要なとき以外は、図2に示すセット位置に移動してここで待機する。そして、ユーザーはセット位置にある可動式トレイ17を掴んで装置本体12から取り出し、図4に示す取出し状態で用紙P2の交換又は補充を行う。そして、可動式トレイ17への用紙P2の交換又は補充を終えると、ユーザーは取出し状態にある可動式トレイ17を装置本体12に装着してそれをセット位置に戻す。
また、図2、図3に示すように、下段トレイ16の挿入方向Y1の先端部における幅方向一端には、挿入方向Y1に延出する延出部16dが形成されている。図2、図3に示すように下段トレイ16が装着された状態において延出部16dの近傍には、その延出部16dを検知可能な第2のセンサーの一例としての第2センサー66が設けられている。第2センサー66は例えば発光部と受光部を備えた光学式センサーであり、その発光部と受光部との間に延出部16dが挿入されるとオンし、その発光部と受光部との間から延出部16dが抜け出るとオフする。コントローラー60(図9参照)は、第2センサー66が延出部16dを検知することをもって下段トレイ16の装着を検出し、第2センサー66が延出部16dを検知しなくなることをもって下段トレイ16の取出しを検出する。
また、図1に示す装置本体12において操作パネル13の下側には、装置本体12の奥行方向に沿って延びるトレイ収容凹部(図示せず)が凹設されている。このトレイ収容凹部の左右両側の内壁部には、下段トレイ16を挿抜方向に案内する下部ガイドレールと、可動式トレイ17を挿抜方向に案内する上部ガイドレール(いずれも図示せず)とが設けられている。そして、ユーザーは、下段トレイ16を下部ガイドレールに沿ってスライドさせることにより下段トレイ16の取出しと装着とが可能となり、可動式トレイ17を上部ガイドレールに沿ってスライドさせることにより可動式トレイ17の取出しと装着とが可能となる。また、可動式トレイ17は、搬送モーター43の動力によって駆動されたときには、上部ガイドレールに沿ってセット位置(図2)と給送位置(図3)との間を移動する。
次に、プリンター11の詳細な構成について図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6に示すように、装置本体12は、トレイ給送部35、媒体給送部36、媒体搬送部37、記録部38及び送り部39を備える。トレイ給送部35は、下段トレイ16と、可動式トレイ17と、ピックアップローラー19と、各トレイ16,17に収容された用紙Pの先端と対向する位置に設けられた前述の分離機構40とを備える。
下段トレイ16と可動式トレイ17は、複数枚の用紙P1,P2をそれぞれ収容可能であり、それぞれ装置本体12に対して独立して着脱可能となっている。可動式トレイ17は、搬送モーター43(図9参照)の動力により、セット位置(図5)と給送位置(図6)との間を移動する。
図5及び図6に示すように、ピックアップローラー19は、装置本体12内の支持フレーム(図示せず)に揺動軸41を中心に揺動可能に支持された揺動部材20の先端部に回転可能な状態で取り付けられている。搬送モーター43の動力が揺動部材20内の歯車列を介して伝達されることによりピックアップローラー19は回転駆動する。揺動部材20は、下段トレイ16の押圧部16cと係合可能な位置に設けられてピックアップローラー19を中間位置に保持可能な不図示の保持機構と、可動式トレイ17のストッパー17cと係合可能な位置に設けられた不図示のカムフォロワとを備える。
下段トレイ16が装置本体12に差し込まれる途中で、その先端部の押圧部16cが不図示の保持機構と係合し、保持機構によるピックアップローラー19の保持が解除されると、ピックアップローラー19は下段トレイ16内の用紙P1に接する位置まで下降する。このため、可動式トレイ17が図5に示すセット位置(退避位置)にあるときは、ピックアップローラー19が、下段トレイ16内の最上位の一枚の用紙P1と当接し、この状態で搬送モーター43の駆動によりピックアップローラー19が回転すると、下段トレイ16から最上位の用紙P1が給送経路下流側へ送り出される。
また、可動式トレイ17がセット位置(図5)から給送位置(図6)に移動する過程で、その先端部のストッパー17c(図2、図5参照)が揺動部材20のカムフォロワ(図示せず)と係合して揺動部材20を上方に押し退ける。さらに可動式トレイ17が給送位置に向かって進入して、ストッパー17cとカムフォロワとの係合が解除されると、ピックアップローラー19が可動式トレイ17内の用紙P2に接する位置まで下降する(図6)。このため、図6に示すように、可動式トレイ17が給送位置にあるときは、ピックアップローラー19が、可動式トレイ17内の用紙P2の最上位の一枚に当接する。この状態で搬送モーター43が駆動されてピックアップローラー19が回転すると、用紙P2が送り出される。また、トレイ16,17のうち一方から送り出される最上位の用紙Pは、分離部40aにより次位以降の用紙Pと分離される。
図5及び図6に示すように、分離機構40の給送経路下流側に設けられた媒体給送部36は、搬送モーター43により駆動される給送駆動ローラー44と、給送従動ローラー45,46とを備える。給送駆動ローラー44と給送従動ローラー46との間に挟持された用紙Pは媒体搬送部37へ搬送される。媒体搬送部37は、同じく搬送モーター43により駆動される搬送駆動ローラー47と、搬送駆動ローラー47に圧接して従動回転する搬送従動ローラー48とを備える。この媒体搬送部37により、用紙Pがさらに下流側へと送られる。
図5及び図6に示すように、媒体搬送部37の搬送方向Yの下流側に設けられた記録部38は、キャリッジ21と、記録ヘッド23と、記録ヘッド23と対向する支持台49とを備える。キャリッジ21の底部に用紙Pと対向する状態で設けられた記録ヘッド23は、キャリッジ21がキャリッジモーター50(図9参照)の動力によってガイド軸22に案内されつつ主走査方向X(図5及び図6では紙面と直交する方向)に往復動する過程で、支持台49に支持された用紙Pに対してインク滴を噴射して用紙Pに画像を印刷する。
支持台49の下流側に設けられた送り部39は、搬送モーター43によって駆動される第1ローラー51と、第1ローラー51に接して従動回転する第2ローラー52とを備える。送り部39によって搬送方向Yの下流側へ送り出された印刷後の用紙Pは、装置本体12の外側(前面側)にスライドした排出スタッカー24上に積載される。なお、本実施形態では、媒体給送部36、媒体搬送部37及び送り部39により、搬送部の一例が構成される。
図5、図6に示すように、排出スタッカー24(以下、単に「スタッカー24」ともいう。)は、略四角板状の一枚のトレイにより構成される。スタッカー24は不図示の電動モーターの動力で駆動される電動式で、装置本体12内に収納された収納位置と、装置本体12から所定の突出長で突出する突出位置(例えば図5、図6の状態)との間を往復移動可能となっている。
本実施形態では、本来、セット位置に配置されているはずの可動式トレイ17が、ユーザーが誤って押し込むなど何らかの理由でセット位置よりも給送位置側に位置する場合、可動式トレイ17をセット位置へ戻す制御が行われ、可動式トレイ17が図2及び図5に示すセット位置に戻される。
次に図7を参照して可動式トレイ17の位置検出を行うための構成を説明する。図7に示すように、可動式トレイ17の側部には、その移動方向に沿って延びる1本の溝部17e(スリット)が形成されており、その溝部17eにはその長手方向においてエッジガイド31寄りの所定位置に突状の被検知部17Aが形成されている。そして、図7に示すように第1センサー65は、セット位置にある可動式トレイ17の側部に形成された被検知部17Aと対向して位置している。第1センサー65は接触式センサーであり、レバー式又は伸縮式の検知ロッド65aを備える。第1センサー65は、検知ロッド65aが溝部17eに位置するときはオフし、検知ロッド65aが被検知部17Aに乗り上げたときにオンする。よって、第1センサー65がオンすると、可動式トレイ17がセット位置にあることを検出できる。
そして、図8に示すように、可動式トレイ17がセット位置にあるときに第1センサー65はオンする。つまり、可動式トレイ17がセット位置以外の位置にあるとき、第1センサー65はオフする。このため、可動式トレイ17が給送位置にあるときと、取出状態(取出し状態)にあるときは、第1センサー65はオフしている。モーター43の停止中に第1センサー65がオンからオフに切り換わったときは、ユーザーが可動式トレイ17を動かしたとみなすことができるので、可動式トレイ17が取り外されたと把握できる。そして、トレイ取出状態の旨をメモリーに記憶し、その後、モーター43が駆動されていないときにトレイ取出状態の旨が記憶された状態の下で、第1センサー65がオフからオンに切り換わると、可動式トレイ17が装着されたと判定できる。
次にプリンター11の電気的構成を説明する。
図9に示すように、プリンター11は各種制御を司る制御部の一例としてのコントローラー60を備えている。コントローラー60は通信インターフェイス61を介してホスト装置200と通信可能に接続される。コントローラー60は、ホスト装置200から受信した印刷ジョブデータに基づいてプリンター11の印刷動作等を制御する。ホスト装置200は、例えばスマートフォンや携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))等の携帯端末、あるいはパーソナルコンピューターからなり、ユーザーは入力部201を操作して表示部202に表示された設定画面において印刷条件情報を入力する。印刷条件情報には、用紙種、用紙サイズ、印刷色及び印刷品質などが含まれる。ホスト装置200は、印刷条件情報に従って生成した印刷ジョブデータをプリンター11へ送信する。本例では、印刷ジョブデータのヘッダーには、印刷条件情報のうち両トレイ16,17のうち用紙の給送元とするべき一方の特定に必要な情報(一例として用紙種及び用紙サイズ)などが含まれる。
コントローラー60には、出力系として、表示部14、キャリッジモーター50及び搬送モーター43が接続されている。また、コントローラー60には、入力系として、電源スイッチ15aを含む操作部15、リニアエンコーダー62、エンコーダー63(例えばロータリーエンコーダー)、紙検出センサー64、第1のセンサーの一例としての第1センサー65及び第2のセンサーの一例としての第2センサー66が接続されている。
図9に示すように、コントローラー60は、コンピューター70、表示ドライバー71、ヘッドドライバー72及びモータードライバー73〜74を備える。コンピューター70は印刷ジョブデータ(以下、単に「印刷ジョブ」ともいう。)に基づきヘッドドライバー72を介して記録ヘッド23を駆動し、印刷画像データに基づく画像等をインク滴の噴射により用紙Pに描画する。また、コンピューター70は、モータードライバー73を介してキャリッジモーター50を駆動制御し、キャリッジ21の主走査方向Xへの移動を制御する。このとき、コンピューター70は、リニアエンコーダー62からの入力パルスをカウンター(図示省略)で計数することで、キャリッジ21の例えばホーム位置を原点とする移動位置を把握する。なお、本実施形態では、印刷ジョブにより、記録ジョブの一例が構成される。
さらにコンピューター70は、モータードライバー74を介して搬送モーター43を駆動制御する。ここで、搬送モーター43の動力が伝達される動力伝達経路上には動力伝達切換部76(クラッチ部)が介在している。動力伝達切換部76は、キャリッジ21の移動経路上に配置された切換えレバー(図示せず)を有し、キャリッジ21が切換えレバーを所定の位置に移動させることでその位置に応じた切換位置に切り換えられる。搬送モーター43は、給送駆動ローラー44、搬送駆動ローラー47及び第1ローラー51と常時接続されている。動力伝達切換部76の切換位置の選択により、搬送モーター43の動力伝達先が、可動式トレイ17及びピックアップローラー19を含む複数の駆動対象のうちの一つに切り換えられる。
図9に示す動力伝達切換部76がトレイ用の切換位置にある状態では、搬送モーター43が正転駆動されると、ピニオン歯車33(図2参照)が正転し、この正転するピニオン歯車33とラック部17dとの噛合を介して可動式トレイ17は装置本体12内のセット位置から給送位置へ向かう方向に移動する。一方、搬送モーター43が逆転駆動されると、ピニオン歯車33が逆転し、この逆転するピニオン歯車33とラック部17dとの噛合を介して可動式トレイ17は装置本体12内の給送位置からセット位置へ向かう方向に移動する。
エンコーダー63は、搬送モーター43の回転量に比例する数のパルスを有する検出パルス信号をコンピューター70へ出力する。また、第1センサー65は、可動式トレイ17がセット位置(図5)にある状態でオンし、セット位置にないときにオフする。また、コンピューター70は、可動式トレイ17を給送位置側へ移動させてエンド位置にある規制部に当てる度当てにより可動式トレイ17が給送位置(図6)にあることを検知する。このとき、コンピューター70は、モーター43の負荷(例えば電流値)を検出可能となっており、モーター43を所定回転量駆動させる途中でモーター負荷(例えばモーター電流)が閾値を超えると、モーター43の駆動を停止させる。これにより可動式トレイ17は給送位置に配置される。また、コンピューター70は可動式トレイ17が給送位置にあることを把握する。なお、本実施形態では、可動式トレイ17を駆動するための搬送モーター43及びモータードライバー74により、駆動部の一例が構成される。
図9に示すコンピューター70は、例えばCPU、ASIC(Application Specific IC(特定用途向けIC))、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等を備えて構成される。ROM又は不揮発性メモリーには、図11及び図12にフローチャートで示されたトレイ制御用のプログラムを含む各種のプログラムが記憶されている。図11は、可動式トレイ17をモーター43の動力で移動させるトレイ制御ルーチンであり、図12は、可動式トレイ17の駆動中以外のときに実行され、ユーザーによる可動式トレイ17の取出し及び挿入(装着)を検出するトレイ検出ルーチンである。
コンピューター70は、CPUがROM又は不揮発性メモリーに記憶されたプログラムを実行することで構築されるソフトウェアからなる図9に示す複数の機能部を備える。すなわち、コンピューター70は、主制御部81、印刷制御部82及びトレイ制御部83を備える。また、コンピューター70は、各種制御に必要な各種のデータを記憶するメモリー85を備える。もちろん、各機能部は、コンピューター70を用いたソフトウェアの構成に限定されず、電子回路(例えばカスタムIC)等のハードウェアの構成、あるいはソフトウェアとハードウェアとの協働により構成されていてもよい。
図9に示すように、主制御部81は、ジョブ受信部86、判定部87及び問合せ部88を備える。ジョブ受信部86は、ホスト装置200からの印刷ジョブデータを受信したり、プリンター11に接続されたメモリーカード又はUSBメモリー等の携帯型のメモリー装置からプリンター11に入力された画像データを印刷するための印刷ジョブデータを受信したりする。この印刷ジョブデータには用紙サイズの情報が含まれる。
また、判定部87は、プリンター11を制御するうえで必要な各種の判定処理を行う。この判定処理には、可動式トレイ17の位置を制御するトレイ制御を行ううえで必要な判定処理が含まれる。
問合せ部88は、下段トレイ16と可動式トレイ17のうちの一つが、装置本体12に装着(挿入)されたことが検出されると、表示部14に図10(b)に示す問合せ画面103Aを表示して、ユーザーにセットした用紙の種類の問合せを行う。
さらにメモリー85には、コンピューター70が、例えば印刷モードに応じた種類の用紙、あるいは指定された種類の用紙を収容する給送トレイを選択する際に参照するデータとして、各給送トレイ16,17とそれに収容されている用紙の種類との対応関係を示す設定データD1(図9を参照)が記憶されている。ここで、本例における「用紙の種類」とは、「用紙サイズ」と「質種(用紙種)」とを指す。
このため、コントローラー60は、センサー65,66の検知信号に基づき給送トレイ16,17の装置本体12への装着を検出可能である。このとき、給送トレイ16,17にセットされている用紙Pが交換されて用紙の種類が変更された可能性がある。
図9に示す主制御部81は、例えば操作部15によるトレイ設定操作があると起動され、表示部14に図10(a)に示す設定画面100を表示させる。図10(a)に示す設定画面100には、給送トレイ別にセットされている用紙Pの用紙サイズと質種とがボタン表示領域内に表示されたトレイ選択ボタン101A,101Bが設けられ、矢印キー102を操作するとその操作した矢印の方向へ画面がスクロールされ、該当するトレイ選択ボタンを選択可能となっている。
例えば設定画面100で第1トレイのトレイ選択ボタン101Aを選択操作すると、図10(b)に示すトレイ別設定画面103に切り替わる。トレイ別設定画面103には、選択された給送トレイにセットされた用紙Pの用紙サイズを設定するときに操作される用紙サイズボタン104と、質種を設定するときに操作される質種ボタン105とが設けられている。
例えば用紙サイズボタン104を選択操作すると、図10(c)に示す用紙サイズ選択画面106に切り替わる。この用紙サイズ選択画面106の例では、用紙サイズの選択対象として、2L判、ハガキ、A5判、B6などの候補の一覧がボタン107で表示される。操作部15の操作で用紙サイズ選択画面106中の矢印キー102を選択すると、その操作した矢印の方向へ画面がスクロールされ、全ての用紙サイズボタン107のうち一つを選択可能となっている。図10(c)の例に示すように、用紙サイズとして同図に太枠で示された「ハガキ」のボタン107が選択されると、「L判」に替わって「ハガキ」が設定される。
一方、図10(b)に示すトレイ別設定画面103で質種ボタン105を選択操作すると、図10(d)に示す質種選択画面108に切り替わる。この質種選択画面108の例では、普通紙、再生紙、色付き紙、写真紙などのプリンターが対応可能な質種の候補の一覧がボタン109で表示される。画面108中の矢印キー102を操作するとその操作した矢印の方向へ画面がスクロールされ、全ての質種のボタン109のうち一つを選択可能となっている。図10(d)の例に示すように、質種として同図に太枠で示された「普通紙」のボタン109が選択されると、「写真紙」に替わって「普通紙」が設定される。こうして設定データD1は更新される。
ところで、ユーザーが給送トレイ16,17のうち一方を取出して用紙交換をすると、実際の給送トレイ16,17と用紙の種類との対応関係が設定データD1と異なることになる。この場合、印刷時に指定した用紙の種類と異なる用紙に印刷される虞がある。そこで、本実施形態の主制御部81は、給送トレイの装着を検知すると、表示部14にその給送トレイ中の用紙の種類を問い合わせてユーザーにその入力を促す問合せ画面103Aを表示させる。問合せ画面103Aは、図10(b)に示すトレイ別設定画面103と同様の画面で、例えば「給送トレイにセットされている用紙の種類を入力してください。」などの入力を促すメッセージが表示される。
問合せ画面103Aにおいて操作部15の操作で用紙サイズと質種のうち少なくとも一方が変更された場合、主制御部81は、設定データD1における該当する給送トレイに対応するデータ部分をその変更された内容に更新する。こうしてメモリー85には、給送トレイ16,17と用紙の種類との対応関係を示す設定データD1が記憶される。なお、用紙サイズと質種に変更がなければ不図示のキャンセルボタンを操作することにより、それまでの設定が維持されるとともに表示部14がメインメニュー画面に切り替わる。
また、図9に示す印刷制御部82は、ヘッド制御部89、キャリッジ制御部90及び搬送制御部91を備える。ヘッド制御部89は、主制御部81から受信した印刷ジョブデータ中の画像データに基づきヘッドドライバー72を介して記録ヘッド23を制御し、記録ヘッド23にインク滴を噴射させる制御を行う。
キャリッジ制御部90は、モータードライバー73を介してキャリッジモーター50を駆動制御し、キャリッジ21の主走査方向Xへの移動を制御する。また、キャリッジ制御部90は、キャリッジ21による動力伝達切換部76の切換え動作のためキャリッジモーター50を駆動させる。キャリッジ制御部90は、リニアエンコーダー62からの入力パルスをカウンター(図示省略)で計数した計数値からキャリッジ21の例えばホーム位置を原点とする主走査方向Xの位置を把握する。
搬送制御部91は、モータードライバー74を介して搬送モーター43を駆動制御し、用紙Pの給送及び搬送を制御する。搬送モーター43の動力は歯車列を含む動力伝達経路を介して給送駆動ローラー44、搬送駆動ローラー47及び第1ローラー51に伝達され、その伝達された動力により各ローラー44,47,51が回転することにより、用紙Pが給送及び搬送される。例えば動力伝達切換部76がトレイ用の切換位置の切り換えられた状態で搬送モーター43が駆動されると、その出力された回転がピニオン歯車33に伝達され、ピニオン歯車33とラック部17dとの噛合を介して伝達される動力により可動式トレイ17が駆動される。また、例えば動力伝達切換部76が給送用の切換位置にある状態で搬送モーター43が駆動されると、ピックアップローラー19が回転して給紙が行われる。
図9に示すトレイ制御部83は、動力伝達切換部76がトレイ用の切換位置にある状態で、モータードライバー74を介して搬送モーター43を駆動制御することにより、可動式トレイ17を移動させる。トレイ制御部83は、モータードライバー74にその時々の現在速度と目標速度との差分に応じた電流指令値を出力して可動式トレイ17の移動速度を制御する。このとき可動式トレイ17の位置は、エンコーダー63からの検出信号のパルスエッジを計数した計数値により取得する。但し、動力伝達切換部76と可動式トレイ17との接続が切断されているときは、ユーザーが可動式トレイ17を動かすことができるので、その計数値は可動式トレイ17の実際の位置を必ずしも示すものではない。よって、可動式トレイ17の停止中(動力伝達切断中)は、計数値からその位置を把握することはできず、位置の把握は第1センサー65の信号に依存する。
トレイ制御部83は、可動式トレイ17がセット位置にある状態(第1センサー65のオン状態)で、搬送モーター43を正転駆動させることにより、可動式トレイ17をセット位置から給送位置へ向かって駆動させる。このとき、可動式トレイ17がセット位置を離れると、第1センサー65がオンからオフに切り換わる。さらに可動式トレイ17が給送位置に近づき分離機構40(規制部の一例)に当たると、モーター43の負荷が大きくなり、その大きな負荷により落ちた速度を目標に近づけようとしてその負荷に応じた比較的大きな電流値が指令される。そのモーター電流値が閾値を超えると、トレイ制御部83が搬送モーター43の駆動を停止させる。これにより可動式トレイ17は給送位置に停止する。
また、トレイ制御部83は、可動式トレイ17が給送位置にある状態で、搬送モーター43を逆転駆動させることにより、可動式トレイ17を給送位置からセット位置へ向かって駆動させる。このとき、可動式トレイ17がセット位置に到達すると、第1センサー65がオフからオンに切り換わる。第1センサー65がオフからオンに切り換わった時に、トレイ制御部83が搬送モーター43の駆動を停止させることで、可動式トレイ17はセット位置に停止する。
また、トレイ制御部83は、タイマー92を備える。タイマー92は、印刷ジョブ終了時点からの経過時間が予め設定された待機時間に達するまでの計時を行う。タイマー92は例えばカウンターにより構成される。トレイ制御部83は、印刷ジョブに基づく印刷を終了した旨の通知を印刷制御部82から受け付けると、タイマー92に待機時間の計時を開始する。そして、このタイマー92がタイムアップすると、トレイ制御部83は、可動式トレイ17を給送位置からセット位置に移動させる制御を行う。こうして印刷終了後、可動式トレイ17は比較的速やかにセット位置に配置されるので、ユーザーは必要な用紙交換や用紙補充を速やかに行うことができる。また、待機時間を待つので、例えば連続的に印刷ジョブデータが送信されてくる場合、次の印刷ジョブデータがその後さほど時間を開けずに送られてきた場合に可動式トレイ17は給送位置にあるので、可動式トレイ17から用紙P2を給送して行われる次の印刷を比較的速やかに開始することができる。
なお、下段トレイ16と可動式トレイ17のうち給送に用いる一方の選択は、ユーザーがホスト装置200の表示部202に設定画面を表示させた状態で入力部201を操作するか、プリンター11の表示部14に設定画面を表示させた状態で操作部15を操作することにより行われる。この操作は、設定画面上で複数のトレイ16,17の中からの1つを選択指定する構成でもよいし、用紙サイズ等を含む指定情報を指定すると、ホスト装置200がトレイ16,17の中からその指定情報に基づく一方を選択する構成でもよい。
次にプリンター11の作用を説明する。プリンター11が電源オン状態にあるとき、コンピューター70は、所定時間(例えば10μsec.〜100msec.の範囲内の所定値)毎に図11に示されるトレイ制御ルーチン、又は図12に示されるトレイ位置検出ルーチンを実行する。
コンピューター70は、可動式トレイ17をセット位置から給送位置に移動させるときは、図11(a)に示すトレイ制御ルーチンを実行する。ここで、プリンター11は可動式トレイ17の現在位置をフラグの値としてメモリー85に記憶している。現在位置が例えばセット位置のときフラグF=01、給送位置のときフラグF=10、取出状態のときはフラグF=11がメモリー85に記憶されている。可動式トレイ17は基本的にセット位置に戻るので、セット位置にある場合が多い。コンピューター70は印刷ジョブデータを解釈して給送元として使用するトレイとして可動式トレイ17を選択した場合、可動式トレイ17の現在位置がセット位置にあれば、図11(a)に示されるプログラムを実行する。なお、以下の説明においては、モーター43の駆動に先立ち、動力伝達切換部76の動力伝達先として可動式トレイ17が選択されているものとする。
まずステップS11では、可動式トレイ17が給送位置へ向かう方向へモーター43を駆動する。コンピューター70は、モーター43を例えば正転駆動させることにより、可動式トレイ17をセット位置から給送位置に向かって移動させる。
次のステップS12では、度当てを検出したか否かを判断する。コンピューター70は、モーター43の負荷(例えば電流値)を検出し、可動式トレイ17をセット位置から給送位置まで移動させるのに十分な所定駆動量だけモーター43を駆動させる途中で、モーター負荷が大きくなって閾値を超えたことをもって、可動式トレイ17が分離機構40に当たった度当てを検出する。度当てを検出しなければ、モーター43の駆動が継続される。一方、可動式トレイ17が分離機構40に当たってモーター43の負荷が閾値を超えて度当てを検出すると(S12で肯定判定)、コンピューター70は次のステップS13に移行する。
ステップS13では、モーター43の駆動を停止させる。この結果、可動式トレイ17は給送位置で停止する。そして、可動式トレイ17が給送位置に停止すると、コンピューター70は印刷ジョブデータに基づく印刷を開始する。可動式トレイ17がセット位置から給送位置へ移動する過程で揺動部材20を押し上げ、給送位置に到達したときにはピックアップローラー19が最上位の用紙P2の表面に当接した状態にある。そして、動力伝達切換部76の動力伝達先としてピックアップローラー19が選択された状態で、搬送モーター43が駆動されることで、可動式トレイ17から用紙P2が給送され、その給送された用紙P2に記録部38等により印刷が施される。
印刷が終了して所定の待機時間を経過すると、コンピューター70は可動式トレイ17を給送位置からセット位置に移動させる。このとき、コンピューター70は図11(b)にフローチャートで示すプログラムを実行する。なお、可動式トレイ17が給送位置にあるとき、第1センサー65はオフ状態にある。
まずステップS21では、可動式トレイ17がセット位置へ向かう方向へモーター43を駆動する。コンピューター70は、モーター43を例えば逆転駆動させることにより、可動式トレイ17を給送位置からセット位置に向かって移動させる。
次のステップS22では、第1センサー65が検知したか否かを判断する。コンピューター70は、第1センサー65がオフからオンに切り換わったか否かを判断する。第1センサー65がオフのままであれば、モーター43の駆動が継続される。そして、第1センサー65がオフからオンに切り換わると(S22で肯定判定)、コンピューター70は次のステップS23に移行する。
ステップS23では、モーター43の駆動を停止させる。この結果、可動式トレイ17はセット位置で停止する。こうして印刷終了後は速やかに可動式トレイ17がセット位置に戻るため、ユーザーは必要な用紙交換又は用紙補充を、印刷終了後、速やかに行うことができる。また、印刷終了後、可動式トレイ17はセット位置に戻る動作を開始するまでに待機時間の経過を待つ。このため、例えば連続的に印刷ジョブデータが送信されてくる場合、次の印刷ジョブデータが、その後、さほど時間間隔を開けずに送られてきても、可動式トレイ17は給送位置にあるので、可動式トレイ17から用紙P2を給送して行われる次の印刷を比較的速やかに開始することができる。
このようなモーター43による可動式トレイ17の駆動中は、ユーザーが可動式トレイ17に触れてこれを移動させることは基本的にない。一方、可動式トレイ17の停止中であって、モーター43の動力伝達先として可動式トレイ17が選択されていないときは、モーター43とピニオン歯車33との動力伝達経路上の接続が切断されているので、ユーザーは可動式トレイ17を比較的軽い力で取出し及び装着することができる。このような取出し及び装着を検出するため、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないとき、つまり可動式トレイ17の停止中において、コンピューター70は図12のフローチャートで示されるプログラムを実行する。なお、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときとは、モーター43の動力伝達先として可動式トレイ17が選択された状態の下でモーター43が駆動されているとき以外のときを指す。
まず可動式トレイ17の現在位置がセット位置(フラグF=01)にあるとき、コンピューター70は図12(a)のフローチャートで示されるプログラムを実行する。このとき第1センサー65は被検知部17Aを検知して検知状態(オン状態)にある。
まずステップS31では、第1センサー65が非検知になったか否かを判断する。コンピューター70は、第1センサー65がオンからオフに切り換わったか否かを判断する。第1センサー65がオンのままであれば、この判定処理を所定サイクル時間ごとに繰り返す。そして、例えばユーザーが可動式トレイ17をセット位置から取り出すと、第1センサー65がオンからオフに切り換わる。ユーザーが可動式トレイ17を動かす場合としては、用紙交換や用紙補充のために可動式トレイ17を取り外す場合や、例えば排出スタッカー24を収納する際などに、可動式トレイ17に誤って触れてこれを奥方(給送位置側の方向)へ押し込んでしまった場合などが挙げられる。このようにユーザーが可動式トレイ17を動かし、第1センサー65がオンからオフに切り換わると(S31で肯定判定)、コンピューター70は次のステップS32に移行する。
ステップS32では、可動式トレイ17がセット位置へ向かう方向へモーターを所定駆動量だけ駆動させる。このとき、ユーザーが可動式トレイ17を取り出していた場合は、ピニオン歯車33とラック部17dとが噛み合っていないため、モーター43及びピニオン歯車33は空回りする。一方、ユーザーが可動式トレイ17を誤って押し込んでしまったときは、ピニオン歯車33とラック部17dとが噛み合っているため、可動式トレイ17がその押し込まれた位置からセット位置に向かう方向へ移動する。このとき駆動されるモーター43の所定駆動量は、可動式トレイ17が仮に一番奥(例えば給送位置)まで押し込まれたとしても、可動式トレイ17をその位置からセット位置まで移動させるのに十分な駆動量に設定されている。但し、ユーザーが誤って可動式トレイ17を押し込む量は比較的少ないため、所定駆動量は、想定される押し込み量に少しのマージンを加えた程度の駆動量に設定してもよい。例えば所定駆動量は、可動式トレイ17の給送位置とセット位置間の移動距離の1/4〜1/2の範囲内の距離を可動式トレイ17が移動可能なモーター駆動量であってもよい。
次のステップS33では、第1センサー65が検知になったか否かを判断する。コンピューター70は、第1センサー65がオフからオンに切り換わったか否かを判断する。第1センサー65がオフのままであれば、モーター43が所定駆動量だけ駆動して停止するまで、この判定処理を所定サイクル時間ごとに繰り返す。例えばユーザーが可動式トレイ17を誤って押し込んでいた場合は、可動式トレイ17がセット位置に到達することになり、このとき第1センサー65がオフからオンに切り換わる。このように第1センサー65がオフからオンに切り換わった場合(S33で肯定判定)、ステップS34に進む。一方、第1センサー65がオフからオンに切り換わることなく、モーター43が所定駆動量だけ駆動し終わった場合は(S33で否定判定)、ステップS35に移行する。
ステップS34では、モーター43の駆動を停止し、セット位置にある旨をメモリー85に記憶する。例えばユーザーが可動式トレイ17を誤って押し込んでいた場合、可動式トレイ17はセット位置に達すると停止する。そして、コンピューター70はメモリー85中のフラグFをセット位置の値「01」に更新する。
ステップS35では、モーター43の駆動を停止し、トレイ取出状態の旨をメモリー85に記憶する。コンピューター70はフラグFを例えばセット位置の値「01」から取出状態の値「11」に更新する。こうしてユーザーが可動式トレイ17を取り出しているとき、コンピューター70はそのトレイ取出状態を認識できる。このとき、ユーザーが排出スタッカー24を収納する際などに誤って可動式トレイ17を押し込んでしまって第1センサー65がオンからオフに切り換わった場合(S31で肯定判定)も、これと区別して、可動式トレイ17の取出しを正しく検出することができる。なお、ステップS32〜S34の処理を無くし、ステップS31で第1センサー65がオンからオフに切り換わったら、トレイ取出し状態の旨を記憶する構成としてもよい。
コンピューター70は可動式トレイ17の取出しを検出すると、表示部14に可動式トレイ17に対して用紙P2をセットするときの注意事項や操作説明などの案内を表示させる。この種の案内には、可動式トレイ17に対して用紙をセットする向きや、エッジガイド31,32(媒体ガイドの一例)の用紙サイズに合った位置への操作をお願いする案内等が挙げられる。また、その後、可動式トレイ17を給送元とする印刷ジョブを受け付けた場合、コンピューター70は、可動式トレイ17が取出し状態にあると、表示部14に可動式トレイ17の装着を促すメッセージを表示させる。このため、そのメッセージを見たユーザーは可動式トレイ17を装着することにより、所望の印刷を行うことができる。
また、コンピューター70は、用紙交換等のために可動式トレイ17が取出し状態にある場合、図12(b)のフローチャートで示されるプログラムを実行する。このとき第1センサー65は非検知状態(オフ状態)にある。
まずステップS41では、第1センサー65が検知になったか否かを判断する。コンピューター70は、第1センサー65がオフからオンに切り換わったか否かを判断する。第1センサー65がオフのままであれば、この判定処理を所定サイクル時間ごとに繰り返す。そして、例えばユーザーが可動式トレイ17をセット位置に装着すると、第1センサー65がオフからオンに切り換わる。ユーザーが可動式トレイ17を装着する場合としては、用紙交換や用紙補充を終えて可動式トレイ17を装置本体12に再装着する場合が挙げられる。ユーザーによる可動式トレイ17の装着によって、第1センサー65がオンからオフに切り換わると(S41で肯定判定)、コンピューター70は次のステップS42の処理に移行する。
ステップS42では、可動式トレイ17がセット位置にある旨をメモリー85に記憶する。コンピューター70は例えばフラグFを取出し状態の値「11」からセット位置の値「01」に更新する。こうしてコンピューター70は可動式トレイ17の装着を検出し、その更新したフラグFに基づき可動式トレイ17が装着状態にあることを認識できる。
コンピューター70は、可動式トレイ17の装着を検出すると、表示部14に図10(b)に示す問合せ画面103Aを表示し、ユーザーに可動式トレイ17にセットした用紙の種類の入力を促す。この表示処理は、問合せ部88が行う。
例えばユーザーは、図10(b)に示す問合せ画面103Aで、操作部15の操作で用紙サイズボタン104を選択し、切り替わった用紙サイズ選択画面106(図10(c)参照)で、操作部15の操作により例えば「ハガキ」を選択する。また、ユーザーは操作部15の操作で質種ボタン105を選択し、切り替わった質種選択画面108(図10(d)参照)で、操作部15の操作により例えば「普通紙」を選択する。
問合せ画面103Aでの操作で用紙サイズと質種のうち少なくとも一方が変更された場合、主制御部81は、設定データD1における該当する給送トレイに対応するデータ部分をその変更された内容に更新する。こうしてメモリー85には、給送トレイ16,17とそれぞれに収容されている用紙の種類(サイズと質種)との更新された対応関係を示す設定データD1が記憶される。
例えば、その後、可動式トレイ17を給送元とする印刷ジョブを受け付けた場合、印刷制御部82は、指示された印刷モードに応じた用紙の種類(用紙情報)を決定し、あるいは指定された用紙の種類を取得する。そして、印刷制御部82は、その用紙の種類を基に設定データD1を参照して、各給送トレイ16,17のうち給送元にするべき一つを選択する。例えば用紙サイズが「ハガキ」で質種が「普通紙」の場合、給送元に可動式トレイ17が選択される。トレイ制御部83は、可動式トレイ17をセット位置から給送位置に移動させる。そして、印刷制御部82は指示された印刷ジョブデータに基づく印刷を開始する。こうして可動式トレイ17から給送された例えばハガキに印刷が施される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)可動式トレイ17の側部に形成された被検知部17Aを一つの第1センサー65で検知することでセット位置にあることを検知でき、可動式トレイ17が分離機構40(規制部の一例)に当たってモーター43(駆動部の一例)の駆動負荷が閾値を超えたことをもって可動式トレイ17が給送位置に達したことを検出する。よって、可動式トレイ17のセット位置と給送位置とを検出するのに必要なセンサー個数を、一つの第1センサー65で済ませることができる。よって、検出対象の数よりも少ないセンサーの数で可動式トレイ17の制御上必要な複数の位置状態を検出することができる。例えば本実施形態では、セット位置、給送位置、取出し状態の3つの位置状態を検出するために必要なセンサーの数が、セット位置検知用の一つで済む。したがって、プリンター11における部品点数を低減することができる。
(2)コンピューター70は、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときに、第1センサー65が被検知部17Aを検知していない非検知状態(オフ状態)から被検知部17Aを検知した検知状態(オン状態)に切り換わったことをもって、可動式トレイ17の取出しを検出する。そして、その後、第1センサー65が非検知状態(オフ状態)から検知状態(オン状態)に切り換わったことをもって、可動式トレイ17の装着を検出する。よって、一つの第1センサー65によって、可動式トレイ17の取出しと装着を共に検出することができる。
(3)コンピューター70は、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときに、第1センサー65が被検知部17Aを検知している検知状態(オン状態)から被検知部17Aを検知していない非検知状態(オフ状態)に切り換わると、可動式トレイ17をセット位置に移動させるようモーター43を駆動させる。モーター43を所定駆動量駆動しても第1センサー65が検知状態(オン状態)にならないことをもって、可動式トレイ17の取出しを検出する。よって、一つの第1センサー65によって、可動式トレイ17の取出しをより正確に検出可能となる。例えば可動式トレイ17が押し込まれた場合も第1センサー65がオン状態からオフ状態になるが、この場合、可動式トレイ17をセット位置に移動させるようモーター43を駆動させた場合、モーター43が所定駆動量駆動する間に可動式トレイ17がセット位置に到達して第1センサー65が検知状態(オン状態)になる。このため、可動式トレイ17が押し込まれた場合と間違えることなく、可動式トレイ17の取出しを正しく検出することができる。
(4)プリンター11は、可動式トレイ17とは別に用紙を収容する下段トレイ(第2の媒体収容部の一例)と、下段トレイ16の挿入方向Y1下流側の端部にある延出部16dを検知可能な第2センサー66(第2のセンサーの一例)とを備える。コンピューター70は、第2センサー66が下段トレイ16の延出部16dを検知することをもって、下段トレイ16の装着を検出し、第2センサー66が延出部16dを検知しなくなったことをもって下段トレイ16の取出しを検出する。よって、コンピューター70は、下段トレイ16の装着と取出しを共に検出することができる。
(5)用紙(媒体の一例)の種類(質種とサイズ)を含む用紙情報(媒体情報)の入力を促す問合せ画面103Aを表示する表示部14と、用紙情報を入力させるために操作される操作部15と、給送トレイ16,17のうち装着した一方と関連付けて用紙情報を記憶するメモリー85(記憶部の一例)とを備えている。コンピューター70は、給送トレイ16,17のいずれか一方の装着を検出したら、問合せ画面103Aを表示し、ユーザーにより操作部15の操作で入力された用紙情報を、その装着が検出された一方の給送トレイと関連付けてメモリー85に記憶する。よって、コンピューター70が給送元とするべき給送トレイの選択の際に参照する設定データD1が最新の状態に更新されているので、間違った用紙に印刷されることを回避できる。
(6)コンピューター70は、いずれかの給送トレイ16,17の取出しを検出すると、用紙情報の入力を促す内容以外の案内(用紙セット方向の表示案内、エッジガイドの設定等)を表示部14に表示させる。よって、ユーザーは、その表示された案内に従ってその取り出された給送トレイ16又は17に用紙Pを正しく収容することができる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図面を参照して説明する。前記第1実施形態では、可動式トレイ17を挿抜する際のその移動方向を検出することができなかったが、この第2実施形態では、可動式トレイ17の挿抜時の移動方向も検出する。なお、前記第1実施形態とは、可動式トレイ17の位置検出のための構成と、その位置検出のために行われる制御の内容が異なるだけで、その他は、前記第1実施形態と同様なので、第1実施形態と共通の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
図13に示すように、可動式トレイ17の側部には、被検知部17Aに加え、これよりも挿入方向Y1側にほぼ隣接する位置に被検知部17Aと同様に平面視で台形状の被検知部17Bが形成されている。なお、以下では、説明の便宜上、可動式トレイ17がセット位置にある状態を第1センサー65が検知する被検知部17Aを「第1の被検知部17A」と称する。また、可動式トレイ17がセット位置から取出し方向Y2に移動して、第1センサー65が第1の被検知部17Aを検知しなくなってから、第1センサー65が検知可能な位置に設けられた被検知部17Bを「第2の被検知部17B」と称する。
可動式トレイ17の第1の被検知部17Aよりも挿入方向Y1側の位置に設けられた数が、取出し方向Y2側の位置に設けられた数よりも多い一つ以上の第2の被検知部17Bを備えている。本例では特に、可動式トレイ17の第1の被検知部17Aよりも挿入方向Y1側の位置に設けられた数を1個とし、取出し方向Y2側の位置に設けられた数を0個とし、合計1個の第2の被検知部17Bを設けている。
コンピューター70は、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときに、第1センサー65がオン(検知状態)からオフ(非検知状態)になり、さらに挿入方向Y1側に設けられた第2の被検知部17Bの数と同数回(本例では1回)のオン(検知状態)があったことをもって、可動式トレイ17の取出しを検出する。また、コンピューター70は、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときに、第1センサー65が第2の被検知部のうち挿入方向側に設けられたものの数と第1の被検知部17Aと合計数と同数回(本例では2回)のオン(検知状態)があったことをもって、可動式トレイ17の装着(挿入)を検出する。
図14に示すように、可動式トレイ17がセット位置にあるときに第1センサー65はオンする。また、可動式トレイ17が給送位置にあるとき、第1センサー65はオフしている。モーター43の停止中に、ユーザーが可動式トレイ17を取り外した場合、第1センサー65は第1の被検知部17Aを検知するオン状態から、第2の被検知部17Bを途中で検知するため、オフ(OFF)→オン(ON)→オフ(OFF)の順番に変化する。一方、モーター43の停止中に、取出状態にある可動式トレイ17をセット位置に装着する場合、第1センサー65はオフ状態から、2つの被検知部17B,17Aを順番に検知してその検知対象が切り換わり、オン(ON)→オフ(OFF)→オン(ON)の順番に変化する。
すなわち、図15(a)に示す第1センサー65が第1の被検知部17Aを検知したオン状態から、可動式トレイ17が矢印で示す取出し方向へ移動する過程で、図15(b)に示すように、検知ロッド65aが第1の被検知部17Aを外れて第1センサー65はオフ状態になる。続いて図15(c)に示すように、検知ロッド65aが第2の被検知部17Bに乗り上げて第1センサー65はオン状態になる。そして、図15(d)に示すように、検知ロッド65aが第2の被検知部17Bから外れて第1センサー65はオフ状態になる。こうして、可動式トレイ17が取り外される過程では、第1センサー65はオン状態から、オフ(OFF)→オン(ON)→オフ(OFF)と変化する。
一方、取出し状態の可動式トレイ17がセット位置に装着される過程では、トレイ取出し過程と逆の順序をとる。このため、第1センサー65は図15(d)に示すオフ状態から、図15(c)に示すオン(ON)状態、図15(b)に示すオフ(OFF)状態、図15(a)に示すオン(ON)状態に順番に変化する。
本実施形態のコンピューター70は、図16に示すトレイフラグリセットルーチンと、図17及び図18に示す処理ルーチンとを実行する。以下、コンピューター70が実行するこれらの処理について説明する。
図16にフローチャートで示されるプログラムは、プリンター11の動作上必要な可動式トレイ17の駆動時を含む所定の時期にコンピューター70により実行される。ここで、所定の時期には、電源オン時、印刷前の可動式トレイ17の動作時、印刷後に可動式トレイ17をセット位置に戻す時、可動式トレイ17に動力が伝達される状態で他の動作のためにモーター43が駆動される時などが挙げられる。印刷前の可動式トレイ17の動作時には、下段トレイが給送元に選択されて可動式トレイ17をセット位置に退避させる時と、可動式トレイ17(上段トレイ)が給送元に選択されて可動式トレイ17を給送位置へ移動させる時とが挙げられる。
まずステップS51では、トレイ位置検出動作を行う。ここで、トレイ位置検出動作とは、プリンター11の動作上必要となる可動式トレイ17の駆動時に位置の検出を一緒に行う処理である。トレイ位置検出動作には2パターンある。一つは、可動式トレイ17をセット位置へ移動させる動作であり、他の一つは、可動式トレイ17を給送位置へ移動させる動作である。前者は図11(a)に示した動作と同じであり、可動式トレイ17が分離機構40に当たったときの駆動負荷(例えば電流値)が閾値を超えたことをもって、可動式トレイ17が給送位置に達したことを検出する。後者は図11(b)に示した動作と同じであり、可動式トレイ17がセット位置に達して第1センサー65がオフからオンに切り換わったことをもって、可動式トレイ17がセット位置に達したことを検出する。
次のステップS52では、可動式トレイ17を検出したか否かを判断する。可動式トレイ17を検出した場合はステップS53に移行し、可動式トレイ17を検出しなかった場合はステップS54に移行する。
ステップS53では、トレイフラグに、可動式トレイ17が装置本体12の内部に位置する旨の「内」を設定する(トレイフラグTF=1)。
ステップS54では、トレイフラグに、可動式トレイ17が装置本体12の外部に位置する旨の「外」を設定する(トレイフラグTF=0)。こうしてコンピューター70はトレイフラグの値により、可動式トレイ17が装置本体12の内部に位置するか、外部に位置するかを認識できる。
次にコンピューター70が実行する図17及び図18に示す処理ルーチンについて説明する。コンピューター70は、モーター43の停止中、あるいはモーター43が動作中であってもその動力伝達先として可動式トレイ17が選択されていない場合、図17及び図18にフローチャートで示されるプログラムを実行する。
まずステップS61では、トレイフラグが「内」(TF=1)であるか否かを判断する。トレイフラグが「内」であればステップS62に移行し、そうでなければ、つまりトレイフラグが「外」(TF=0)であれば、図18におけるステップS70に移行する。まず可動式トレイ17が装置本体12の内部に位置するトレイフラグが「内」の場合について図17を参照して説明する。
ステップS62では、タイマー停止中であるか否かを判断する。タイマー停止中であればステップS63に移行し、タイマー停止中でなければ、つまりタイマー起動中であればステップS65に進む。
ステップS63では、第1センサー65に信号変化があったか否かを判断する。ユーザーが可動式トレイ17を動かした場合に第1センサー65の信号がオンからオフに変化したり、オンからオフに変化したりする。例えばユーザーが可動式トレイ17を取り出した場合は、その取出し操作の過程で、まず第1センサー65がオンからオフに変化する。このように第1センサー65に信号変化があった場合は、ステップS64に移行する。一方、第1センサー65に信号変化がなかった場合(S63で否定判定)、ステップS61に戻る。
ステップS64では、タイマー92を起動する。その後、処理はステップS61に戻る。ユーザーが可動式トレイ17を動かしたことによって第1センサー65に信号変化があると、タイマー92が起動される。その後、ステップS62において、タイマー停止中ではない、つまりタイマー起動中であると判断すると(S62で否定判定)、ステップS65に移行する。
そして、ステップS65では、一定時間が経過したか否かを判断する。この一定時間には、予めメモリー85に記憶された設定時間T1が用いられる。一定時間を経過した場合はステップS66に進み、一定時間を経過していなければステップS67に移行する。
ステップS67では、第1センサー65が検知になったか否かを判断する。コンピューター70は、第1センサー65がオフからオンに切り換わったか否かを判断する。第1センサー65がオフからオンに切り換わればステップS68に移行し、オフからオンに切り換わらなければステップS61に戻る。ユーザーが可動式トレイ17を取り出す操作を行った場合、当初、第1の被検知部17Aを検知してオン状態にあった第1センサー65はオフに切り換わり、その後、第2の被検知部17Bを検知した際のオン状態を経て、最終的にオフ状態になる。このため、ユーザーが可動式トレイ17を取り出す操作を行った場合、第1センサー65が第2の被検知部17Bを検知したときに、オフからオンに切り換わる。この結果、可動式トレイ17の取出し過程にあるときは、ステップS68に移行することになる。
ステップS68では、トレイ取出しの旨を表示部14に表示する。コンピューター70は表示部14に例えば「第1トレイが取り出されました。」というメッセージを表示させる。また、用紙をセットする向きの案内メッセージ、用紙のエッジガイド31の設定案内メッセージ、これらの操作案内用イラストを表示させてもよい。なお、このとき表示されるメッセージ等が、媒体情報(例えば用紙のサイズ及び種類)の入力を促す内容以外の案内の一例に相当する。
そして、次のステップS69では、トレイフラグを「外」に更新する(TF=0)。
ここで、ユーザーが可動式トレイ17を誤って押し込んだ場合も、ステップS63において、第1センサー65がオンからオフに切り換わって信号変化ありと判断され、タイマー92が起動される(S64)。この場合、可動式トレイ17は給送位置側へ移動することになるので、第2の被検知部17Bは第1センサー65の検知域を通らない。このため、第1センサー65がオフからオンに切り換わることがないまま(S67で否定判定)、一定時間が経過することになる(S65で肯定判定)。このようにユーザーによる可動式トレイ17の押し込み操作を、誤って可動式トレイ17の取出しと誤検出することはない。つまり、この実施形態によれば、ユーザーが可動式トレイ17を動かした方向を判別してトレイ取出し操作であるか否かを正しく判断できる。
ここで、ユーザーが可動式トレイ17を少し引き出して直ぐ元のセット位置に戻す特異な操作を行った場合、可動式トレイ17の最初の少しの引出し時に第1センサー65がオンからオフに切り換わり(S63で肯定判定)、タイマー92が起動される(S64)。このとき、ユーザーが可動式トレイ17を直ぐに押し戻してセット位置に配置した場合、第1センサー65がオフからオンに切り換わる場合がある。この場合、ステップS67において、第1センサー65がオフからオンに切り換わり、ステップS68においてトレイ取出しと誤検出されてしまう。そして、可動式トレイ17を最終的に押し戻して装置本体12の内側にあるにも拘わらず、表示部14にトレイ取出しの旨が誤表示されてしまううえ(S68)、トレイフラグが間違った値に更新されてしまう(S69)。
しかし、本例では、電源オン時、印刷の前後における可動式トレイ17の駆動時などを含む所定の時期にトレイフラグリセットルーチンが実行され、トレイ位置検出動作(図16のS51)によって、装置本体12内にある可動式トレイ17は、セット位置又は給送位置に配置されたときに検出される。そして、可動式トレイ17が検出された場合は、トレイフラグが「内」(TF=1)に設定される。一方、可動式トレイ17が装置本体12の外部にある場合は、可動式トレイ17を検出できないので(S52で否定判定)、トレイフラグが「外」に設定される(TF=0)。こうしてトレイフラグは比較的速やかに正しい値に更新される。
次に可動式トレイ17が取出し状態にあるときの処理について、図18を参照して説明する。
まずステップS70において、タイマー92が起動中であるか否かを判断する。
ステップS71では、第1センサー65に信号変化があったか否かを判断する。例えばユーザーが可動式トレイ17を装置本体12に装着する操作を行う過程で、まず第1センサー65が第2の被検知部17Bを検知して第1センサー65の信号がオフからオンに変化する(図15(d)→図15(c))。第1センサー65に信号変化があった場合は、ステップS72に移行する。一方、第1センサー65に信号変化がなかった場合(S71で否定判定)、ステップS61(図17)に戻る。
ステップS72では、タイマー92を起動する。その後、処理はステップS61に戻る。ユーザーが可動式トレイ17を装着する操作の過程で第1センサー65に信号変化があると、タイマー92が起動される。その後、ステップS61において、トレイフラグが「内」ではない(つまり「外」)と判断すると(S61で否定判定)、次のステップS70に移行する。そして、タイマー起動中であると判断すると(S70で肯定判定)、ステップS73に移行する。
そして、ステップS73では、一定時間が経過したか否かを判断する。この一定時間には、前述のステップS65と同様に予めメモリー85に記憶された設定時間T1が用いられる。一定時間を経過した場合にはステップS74に進み、一定時間を経過していなければステップS75に移行する。
ステップS75では、第1センサー65が検知になったか否かを判断する。コンピューター70は、第1センサー65がオフからオンに切り換わったか否かを判断する。第1センサー65がオフからオンに切り換わればステップS76に移行し、オフからオンに切り換わらなければステップS61に戻る。ユーザーが可動式トレイ17を装着する操作を行った場合、当初、オフ状態にあった第1センサー65は、まず第2の被検知部17Bを検知した際にオン状態となり、その後、オフに切り換わり、最終的に第1の被検知部17Aを検知した際のオン状態になる。このため、ユーザーが可動式トレイ17を装着する操作を行った場合、可動式トレイ17がセット位置に配置され、第1センサー65が第1の被検知部17Aを検知した際に、オフからオンに切り換わる。この結果、可動式トレイ17の装着操作が行われたときは、ステップS76に移行することになる。
ステップS76では、トレイ挿入(装着)の旨を表示部14に表示する。コンピューター70は表示部14に例えば「第1トレイが挿入されました。」というメッセージを表示させる。そして、次のステップS77では、トレイフラグを「内」に更新する(TF=1)。そして、第1実施形態と同様に表示部14に問合せ画面103A(図10(b)参照)が表示される。ユーザーは操作部15を操作して、装着した可動式トレイ17に収容された用紙P2のサイズと質種とを入力する。こうして入力された媒体情報は、可動式トレイ17(第1トレイ)と関連付けて設定データD1に書き込まれる。
ここで、ユーザーが可動式トレイ17を少し挿入して直ぐ手前に引き戻す特異な操作を行った場合、可動式トレイ17の最初の少しの挿入時に第1センサー65がオフからオンに切り換わり(S71で肯定判定)、タイマー92が起動される(S74)。このとき、挿入位置によってはユーザーが可動式トレイ17を少し引き戻した場合に第1センサー65がオフからオンに切り換わる場合がある。この場合、ステップS75において、第1センサー65がオフからオンに切り換わり、ステップS76において可動式トレイ17の挿入と誤検出されてしまう。この場合、可動式トレイ17を最終的に引き戻して装置本体12の外側にあるにも拘わらず、表示部14にトレイ挿入の旨が誤表示されてしまううえ(S76)、トレイフラグが間違った値に更新されてしまう。
しかし、所定の時期にトレイフラグリセットルーチンが実行され、トレイ位置検出動作によって可動式トレイ17がセット位置又は給送位置に配置されたことが検出された場合は、トレイフラグが「内」(TF=1)に設定される。一方、可動式トレイ17が装置本体12の外部にある場合は、可動式トレイ17を検出できないので(S52で否定判定)、トレイフラグが「外」に設定される(TF=0)。こうしてトレイフラグは比較的速やかに正しい値に更新される。
以上詳述した本実施形態によれば、さらに以下に示す効果を得ることができる。
(7)セット位置にある可動式トレイ17を検知可能な第1の被検知部17Aに加え、可動式トレイ17がセット位置から取出し方向に移動して第1センサー65が第1の被検知部17Aを検知しなくなってから第1センサー65が検知可能な位置に第2の被検知部17Bを設けた。コンピューター70は、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときに、第1センサー65がオフ(非検知状態)からオン(検知状態)となり、さらにオフを経てオンになったことをもって、可動式トレイ17の装着を検出する。このため、ユーザーが可動式トレイ17を装置本体12に装着したことをより正しく検出できる。例えば被検知部がセット位置を検知するものが一つだけある構成であると、ユーザーが可動式トレイ17を給送位置側へ押し込んでいたものをセット位置へ引き出した場合、センサーがオフ(非検知状態)からオン(検知状態)になる。しかし、この場合、センサーの検知結果だけでは、可動式トレイ17の装着か、給送位置側からの引き出しかを判別できない。しかし、二つの被検知部17A,17Bがあるため、可動式トレイ17が移動したときのセンサー信号の変化の違いによって移動方向を特定でき、ユーザーによる可動式トレイ17の装着を一層正しく検出することができる。
(8)二つの被検知部17A,17Bを設け、モーター43が可動式トレイ17を駆動させていないときに、第1センサー65がオン(検知状態)からオフ(非検知状態)となり、さらにオンになったことをもって、可動式トレイ17の取出しを検出する。よって、ユーザーによる可動式トレイ17の取出しをより正しく検出することができる。例えばセット位置検知用の被検知部が一つだけある構成であると、ユーザーが可動式トレイを給送位置側へ誤って押し込んだ場合、センサーがオンからオフになるが、この場合、センサーの検知結果だけでは、可動式トレイの取出しか、それとも押し込みかを判別できない。しかし、二つの被検知部17A,17Bがあるため、可動式トレイ17が取出し方向へ移動したことを検出し、ユーザーによる可動式トレイ17の取出しを一層正しく検出することができる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・可動式トレイ17を駆動させるモーター43の制御は、フィードバック制御に限らず、フィードフォワード制御でもよい。フィードフォワード制御の場合、可動式トレイ17の速度を監視し、速度が閾値未満になったら(低速側に超えたら)、負荷が閾値を超えたとしてモーター43の駆動を停止させればよい。また、フィードバック制御は電圧制御でもよく、電圧が閾値を超えたらモーターの駆動を停止させる構成でもよい。このようにモーターにかかる負荷が大きくなって閾値を超えたとする判定方法は、使用される制御方法に応じた判定方法を採用できる。
・規制部は分離機構40に限定されず、可動式トレイ17を給送位置に規制する専用のストッパーでもよい。
・前記各実施形態では、可動式トレイ17のセット位置の検知、給送位置の検知、取出しの検出、装着の検出を行ったが、このうちセット位置の検知と給送位置の検知を行い、取出しの検出と装着の検出は行わない構成としてもよい。この構成によっても、検知対象の位置状態の数よりも少ない数のセンサーを用いて、セット位置と給送位置とを検知することができる。また、セット位置の検知と給送位置の検知とに、取出しの検出と装着の検出とのうち一方を加えた構成としてもよい。この構成によっても、検知対象の位置状態の数よりも少ない数のセンサーを用いて、セット位置と給送位置とを含む3種類の検出を行うことができる。さらにセット位置、給送位置、取出し及び装着の4種類の検出に加え、少なくとも一つの他の検出対象の検出を加えた構成としてもよい。
・前記第2実施形態では、被検知部の数を二つとしたが、三つ以上の複数の被検知部を設けてもよい。つまり、第2の被検知部を複数設けてもよい。例えば可動式トレイ17の側部に、第1の被検知部17Aよりも挿入方向側の位置に第2の被検知部を複数設ける。また、例えば可動式トレイ17の側部に、第1の被検知部17Aに対して挿入方向Y1側の位置と取出し方向Y2側の位置との両方に第2の被検知部を設け、挿入方向Y1側の位置に設けられた第2の被検知部の数を、取出し方向Y2側の位置に設けられた第2の被検知部の数よりも多くする。そして、セット位置から可動式トレイ17を移動させたときに検知される被検知部の数の違いにより、可動式トレイ17の挿入方向Y1への移動か、取出し方向Y2への移動かを判別し、取出しと装着との各検出を行うようにしてもよい。この場合、第2の被検知部は、挿入方向Y1側の数の方が取出し方向Y2側の数よりも多いので、取出しを正しく検出できる。例えばユーザーが可動式トレイ17をセット位置と給送位置との間の中間位置からセット位置へ引き戻した場合、そのときの中間位置がどこかによって、第1センサー65に検知される第2の被検知部の数が異なる。これに対して可動式トレイ17の装着時は、第1の被検知部17Aよりも挿入方向Y1側に位置する第2の被検知部の全てが第1センサー65に検知されるので、その検知回数から装着を正しく検出できる。
・第1センサーの検知対象である被検知部は、突起に替えて凹部又は孔としてもよい。この場合、第1センサー65は被検知部を検知した検知状態でオフし、非検知状態でオンすることになる。また、第1センサー65を接触式センサーに替えて、非接触式センサーとしてもよい。非接触式センサーとしては、光学式センサーや磁気センサー等を挙げることができる。非接触式センサーの場合、被検知部は、突起に替えて、光反射面、光吸収面、磁気を帯びた面、磁性体の面などの被検知面とする。
・第2センサー66を光学式センサー等の非接触式センサーに替え、接触式センサーとしてもよい。
・可動式トレイ17の動力源として、搬送系の動力源である搬送モーター43を利用したが、専用のモーターを用いてもよい。
・給送トレイの段数は二段に限定されない、三段以上の複数段としてもよい。また、可動式トレイはそのうち一段であることに限定されず、二段以上あってもよい。さらに、可動式トレイ17はその他の給送トレイの下側に配置されてもよい。また、一つの可動式トレイ17が一段あるのみの構成でもよい。また、可動式トレイ17は装置本体12の前面側で挿抜する構成ではなく、その背面側で挿抜する構成や、その側面側で挿抜する構成であってもよい。
・表示部14をタッチパネルとし、操作部15に替え又は操作部15に加えて、タッチパネルを操作部の一例とする構成としてもよい。
・制御部を構成する各機能部は、プログラムを実行するCPUによりソフトウェアで実現したり、ASIC等の電子回路によりハードウェアで実現したり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したりしてもよい。
・印刷装置は、用紙P等の媒体に印刷することのできるものであれば、インクジェット式プリンター、ドットインパクトプリンターやレーザープリンターであってもよい。また、印刷装置は、印刷機能だけを備えたプリンターに限定されず、複合機であってもよい。さらに、印刷装置は、シリアルプリンターに限らず、ラインプリンター又はページプリンターであってもよい。