以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更されてもよいことは勿論である。
図1は、本発明の一実施形態に係る多機能装置(画像記録装置)の外観構成を示す斜視図である。また、図2は、この多機能装置の内部構成を示す縦断面図である。
この多機能装置1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えており、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。多機能装置1のうちプリンタ部2が本発明に係る画像記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明が実施されてもよい。
プリンタ機能においては、多機能装置1が、主に不図示のコンピュータと接続され、プリンタ部2が、このコンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙(被記録媒体)に画像や文書を記録する。また、プリンタ部2は、多機能装置1に接続されたデジタルカメラ等の外部機器から出力される画像データを記録用紙に記録することもできる。さらに、プリンタ部2は、多機能装置1に装着されたメモリカード等の各種記憶媒体に記憶された画像データ等を記録用紙に記録することもできる。
スキャナ機能においては、スキャナ部3により読み取られた原稿の画像データがコンピュータに送信される。また、この画像データは、メモリカード等の各種記憶媒体に記憶されることも可能である。コピー機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データがプリンタ部2において記録用紙に記録される。ファクシミリ機能においては、スキャナ部3により読み取られた画像データが電話回線を通じてファクシミリ送信される。また、受信されたファクシミリデータは、プリンタ部2により記録用紙に記録される。
図1が示すように、多機能装置1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形を有する。多機能装置1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口4が形成されている。この開口4の内部に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が設けられている。給紙トレイ20には、被記録媒体である記録用紙が収容される。給紙トレイ20は、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙を収容可能である。図1には示されていないが、給紙トレイ20は、装置正面側にスライドされることによりトレイ面が拡張されるようになっている。拡張された給紙トレイ20は、リーガルサイズの記録用紙を収容することも可能である。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、後述のようにプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
多機能装置1の上部がスキャナ部3である。スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2が示すように、多機能装置1は、原稿カバー30を備えている。この原稿カバー30は、多機能装置1の天板として機能し、開閉自在に設けられている。この原稿カバー30の下側にプラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31には、画像読取りを行う原稿が載置される。プラテンガラス31の下方には、多機能装置1の奥行き方向を主走査方向とするイメージセンサ32が、多機能装置1の幅方向(図2の紙面垂直方向)に往復動可能に設けられている。
原稿カバー30は、ADF5を備えている。ADF5は、原稿トレイ33から図示されていない原稿搬送路を経て排紙トレイ34へ原稿を連続搬送する。ADF5による搬送過程において、原稿がプラテンガラス31上に搬送され、プラテンガラス31の下方に待機されたイメージセンサ32により原稿の画像が読み取られる。本発明では、スキャナ部3及びADF5は任意の構成であり、本発明に直接関係しないので、本明細書においては詳細な説明が省略される。
多機能装置1は、操作パネル6を備えている。操作パネル6はプリンタ部2やスキャナ部3を操作するためのものであり、多機能装置1の正面上部に配置されている。操作パネル6は、各種操作ボタン35や液晶ディスプレイ36から構成されている。多機能装置1は、操作パネル6からの操作指示に基づいて動作される。なお、多機能装置1が外部のコンピュータに接続されている場合には、このコンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても多機能装置1が動作される。
多機能装置1は、スロット部7を備えている。スロット部7は、多機能装置1の正面に配置されており、記憶媒体である各種小型メモリカードがスロット部7に装填される。操作パネル6において所定の操作が行われることにより、スロット部7に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、例えば液晶ディスプレイ36に表示され、操作ボタン35の操作に基づいて任意に選択された画像がプリンタ部2により記録用紙に記録される。
本実施形態に係る多機能装置1の特徴とするところは、給紙トレイ20の構造である。すなわち、給紙トレイ20は、後述されるように第1トレイ91及び第2トレイ92を備えた上下2段構造を有し、第2トレイ92が第1トレイ91に対して起立(図9参照)又は倒伏(図6参照)することによって姿勢を変化させることができるようになっている点、給紙トレイ20がユニットとして構成されており、給紙トレイ20の一部が排紙トレイ21を兼ねている点、及び給紙トレイ20が用紙カバー111、112(脱落防止カバー)を備えている点である。そして、この用紙カバー111、112が設けられることにより、第2トレイ92が起立した場合であっても、記録用紙が第2トレイ92から脱落することなく確実に保持されるようになっている。
以下に、適宜図面が参照されつつ多機能装置1の内部構成、特にプリンタ部2の構成が説明される。
図2が示すように、多機能装置1の底側に給紙トレイ20が配置されている。この給紙トレイ20は、同図において左右方向に挿抜されるようになっている。給紙トレイ20が装置内部に挿入されると、記録用紙は、後述される給紙ローラ25によって同図において右方向(搬送方向)へ引き出され、用紙搬送路23に沿って画像記録部24へ送られる。また、ユーザーが給紙トレイ20を装置内部から引き抜くことによって、ユーザーは、給紙トレイ20に記録用紙を補充することができるようになっている。
換言すれば、本実施形態では、給紙トレイ20は、図1において矢印137の方向、すなわち装置正面から記録用紙の搬送方向に沿って挿抜されるようになっている。このため、ユーザーは、給紙トレイ20を装置正面から挿抜することができるので、ユーザーが被記録媒体を補充する際には、給紙トレイ20を迅速に引き抜き、記録用紙を補充した後に再び給紙トレイを迅速に挿入することができる。したがって、ユーザーにとって記録用紙の補充作業を簡単且つ迅速に行うことができる。
給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。この分離傾斜板22は、装置背面側へ倒れるように傾斜している。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から給送された記録用紙を分離して上方へ案内する。分離傾斜板22の上方に上記用紙搬送路23が形成されている。用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、多機能装置1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を通過して排紙トレイ21へ通じている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3は給紙トレイ20の斜視図であり、図4は給紙トレイ20の平面図である。また、図5は、図4におけるV−V断面図であり、図6は、図4におけるVI−VI断面図である。
給紙トレイ20は、全体として薄肉の直方体状に形成されており、第1トレイ91と、第1トレイ91の上方に積み重ねられるように配置された第2トレイ92とを備えている。第2トレイ92は、後述されるように、第1トレイ91に対して起伏動作をすることができるようになっている。すなわち、第2トレイ92は、図3及び図4が示すように、第1トレイ91の上に積み重ねられた姿勢(積層姿勢)と、第1トレイ91を開放する姿勢(開放姿勢:図7ないし図9参照)との間で姿勢変化することができるようになっている。第1トレイ91は、本実施形態ではA4サイズ以下の普通紙(一の被記録媒体)を収容することができるようになっている。また、第2トレイ92は、L版光沢紙や葉書等の特殊紙(他の被記録用紙)を収容することができるようになっている。このように、給紙トレイ20は同時に2種類の記録用紙を積載収容した状態で、プリンタ部2に挿抜されるようになっている。なお、本発明において、被記録媒体は、上記種類及びサイズの記録用紙に限定されるものではなく、第1トレイ91に光沢紙等が収容され、第2トレイ92に普通紙等が収容されてもよい。また、各トレイ91、92に紙以外の被記録媒体が収容されてもよいことは勿論である。
図7は、開放姿勢にある給紙トレイ20の斜視図である。図8は、開放姿勢にある給紙トレイ20の平面図である。また、図9は、図8におけるIX−IX断面図である。
第1トレイ91は、合成樹脂により構成されている。図7が示すように、第1トレイ91は、一対の側端ガイド93、94を備えている。側端ガイド93、94は、第1トレイ91の左右方向(すなわち図7及び図8において矢印50の方向、図9において紙面に垂直な方向)にスライドすることができるようになっている。側端ガイド93は、載置板95と、この載置板95に直交するように立設された側板96とを備えている。同様に、側端ガイド94は、載置板97と、この載置板97に直交するように立設された側板98とを備えている。記録用紙は、この側端ガイド93、94上に載置され、これらによって保持される。
載置板95、97の底面にリニアガイドバー99が延設されている。載置板95に設けられたリニアガイドバー99は、載置板97側へ延びており、載置板97に設けられたリニアガイドバー(不図示)は、載置板95側へ延びている。したがって、一対のリニアガイドバー99は、互いに対向するように設けられている。本実施形態では、一対のリニアガイドバー99は、前後方向に所定間隔を隔てて平行に配置されている。そして、各リニアガイドバー99の対向面にラックギアが形成されており、これらラックギア間にピニオンギアが介在されている。つまり、一対のリニアガイドバー99は、ラック・ピニオン機構を介して連結されている。さらに、上記リニアガイドバー99は、第1トレイ91の底部に設けられた溝(不図示)にスライド自在に嵌合されている。この溝は左右方向に延びており、したがって、上記各リニアガイドバー99は、当該溝に沿って左右方向にスライド自在となっている。
各リニアガイドバー99は、上記ラック・ピニオン機構によって第1トレイ91の左右方向の中心を基準として左右対称に変位する。したがって、記録用紙が上記側端ガイド93、94上に載置され、各側端ガイド93、94が左右方向にスライドされると、上記側板96、98が記録用紙の側縁に当接する。これにより、記録用紙は、第1トレイ91の中央部に位置決めされ、第1トレイ91の左右方向の中心と、記録用紙の左右方向の中心とが一致する。すなわち、第1トレイ91に収容された記録用紙は、そのサイズに関係なく、その左右方向の中心が第1トレイ91の中心に位置決めされると共に、上記側板96、98によって記録用紙の側縁が第1トレイ91の前後方向(記録用紙の搬送方向)に沿って配置される。その結果、記録用紙は、第1トレイから送り出される際に斜行が規制され、ジャム等の発生が抑制される。
また、第1トレイ91は、後端位置決め板100を備えている。この後端位置決め板100は、第1トレイ91の底部101に立設されており、前後方向にスライドすることができる。この後端位置決め板100は、スライドすることによって第1トレイ91に収容された記録用紙の後端に当接し、記録用紙の前後方向の位置決めを行う。このように、後端位置決め板100が設けられることにより、記録用紙は、第1トレイ91内で左右方向及び前後方向に位置決めされるから、記録用紙が第1トレイ91から送り出される際に斜行が効果的に抑制される。
さらに、第1トレイ91の前後方向奥側端部、すなわち記録用紙の搬送方向下流側端部に傾斜板102が設けられている。この傾斜板102は、第1トレイ91と一体的に形成されており、前述の分離傾斜板23を構成している。この分離傾斜板23の中央部に金属製の分離部材103が設けられている。これにより、給紙トレイ20から送り出された記録用紙は分離部材103に接触し、たとえ複数枚の記録用紙が送り出された場合であっても、最上位の記録用紙のみが分離搬送されるようになっている。
図3及び図4が示すように、第2トレイ92は、第1トレイ91の上に配置されている。第2トレイ92も樹脂により構成され得る。第2トレイ92は、第1トレイ91に沿って前後方向にスライドすることができるようになっている。図3及び図4が示すように第2トレイ92が第1トレイ91の前側に移動することによって、第2トレイ92に収容された記録用紙(上記特殊紙)が画像記録ユニット24側へ送り出される。また、図7及び図8が示すように第2トレイ92が後側へ移動されることによって、第1トレイ91に収容された記録用紙(上記普通紙)が画像記録ユニット24側へ送り出される。
なお、図3及び図4が示すように、第2トレイ92は、ロック部材108を備えている。このロック部材108は、第2トレイ92の左側に設けられており、左右方向(矢印50の方向)にスライドすることができるようになっている。そして、ロック部材108は、第1トレイ91に対する所定の位置で左側に(すなわち外側に)スライドすることによって第1トレイ91に係合し、これにより、第2トレイ92が第1トレイ91に対して位置決めされるようになっている。もっとも、ロック部材108は、第2トレイ92から常時外側へ突出するように弾性的に付勢されていてもよい。これにより、第2トレイ92が第1トレイ91に対して相対的に前後方向にスライドした場合に、第2トレイ92は、上記所定の位置において自動的に第1トレイ91に係合し、位置決めされる。
図5が示すように、第2トレイ92は、二分割されており、固定部106と回動部107(変位部)とを備えている。固定部106は、上記ロック部材108が第1トレイ91に係合している状態で当該第1トレイ91に固定されている。ただし、上記ロック部材108と第1トレイ91との係合が解除された場合は、固定部106は、第1トレイ91に対してスライドすることができる。また、回動部107は、支持機構104を介して固定部106に連結されている。支持機構104は、一対の回動支持軸105を備えている。したがって、回動部107は、固定部106とヒンジ結合されており、回動支持軸105を回動中心として起伏動作をすることができるようになっている。
回動支持軸105は、固定部106に固定されていてもよい。回動部107は軸受部109を備えており、この軸受部109によって回動支持軸105が支持されている。したがって、回動部107は、図5が示すように第1トレイ91に対して倒伏した倒伏姿勢と、図9が示すように第1トレイ91に対して起立した起立姿勢との間で自由に変位することができる。そして、回動部107が倒伏姿勢にあるときは、第2トレイ92が上記積層姿勢となり、回動部107が起立姿勢にあるときは、第2トレイ92が上記開放姿勢となる。また、本実施形態では、回動部107の回動角度は、110°(degree)に設定されている。回動部107の回動角度は特に規制されるべきものではないが、90°以上に設定されるのが好ましく、90°以上120°以下に設定されるのがより好ましい。回動部107の回動を規制する手段は種々考えられるが、例えば、回動部107に突起が設けられていてもよい。この場合、回動部107が所定の角度だけ回動したときに当該突起が固定部106側に当接し、これにより、当該回動部107の回動規制がなされる。上記回動支持軸105は、所定の位置に配置されている。回動支持軸105の位置については、後に詳述される。
上記特殊紙は、回動部107に収容保持されるようになっている。このため、図3及び図4が示すように、回動部107は、上記特殊紙が挿入される収容凹部110が形成されている。収容凹部110は、回動部107の中央部の領域を下方に、すなわち第1トレイ91側へ凹ませることにより構成されている。特殊紙は、この収容凹部110の底面113に載置される。この底面113に用紙カバー111、112が設けられている。この用紙カバー111、112は、収容凹部110に収容された特殊紙の側端部に当接し、両者が協働して特殊紙を側方から位置決めし、保持する。
図3が示すように、用紙カバー111は、断面形状がL字状に形成された部材である。具体的には、用紙カバー111は、上記底面113に対して垂直上方に延びる脚部118と、この脚部118に直交して用紙カバー112側へ延びる平板部114とを備えている。すなわち、この平板部114は、上記底面113と平行に配置され、当該底面113と対向配置されている。この底面113と平板部114との間の隙間は特に限定されるものではないが、特殊紙が所定枚数だけ挿入され得る寸法(例えば、5mm〜15mm程度)に設定されている。
用紙カバー112も断面形状がL字状に形成されており、脚部115と、平板部116とを備えている。脚部115は、上記底面113に対して垂直上方に延びており、平板部116は、脚部115に直交して用紙カバー111側へ延びている。したがって、平板部116も上記底面113に対して平行に配置され、当該底面113と対向配置されている。この底面113と平板部116との間の隙間寸法は、底面113と平板部114との間の隙間寸法と同様である。
用紙カバー111の平板部114が用紙カバー112側へ延び、用紙カバー112の平板部116が用紙カバー111側へ延びていることから、各平板部114、116は、第2トレイ92に収容された特殊紙の両側部分に対応する位置に配置され、且つ当該両側部分を被うことになる。各用紙カバー111、112は、前述の側端ガイド93、94(図7参照)と同様にラック・ピニオン機構を介して連結されていてもよい。このラック・ピニオン機構が設けられることにより、一対の用紙カバー111、112は、第2トレイ92の左右方向の中心を基準として左右対称に変位する。これにより、用紙カバー111、112が特殊紙の左右方向の寸法に合わせて左右方向にスライドし、特殊紙の側縁に当接する。したがって、この特殊紙は、第2トレイ92の中央部に位置決めされ、第2トレイ92の左右方向の中心と特殊紙の左右方向の中心とが一致する。
すなわち、用紙カバー111、112は、特殊紙の側縁を搬送方向に沿わせるためのガイドとしても機能し、第2トレイ92に収容された特殊紙は、そのサイズに関係なく、その左右方向の中心が第2トレイ92の中心に位置決めされると共に、用紙カバー111、112によって特殊紙の側縁が第2トレイ92の前後方向(すなわち搬送方向)に沿った状態で整列配置される。その結果、特殊紙は、第2トレイ92から送り出される際に斜行が規制され、ジャム等の発生が抑制される。もっとも、上記ラック・ピニオン機構は省略されていてもよい。その場合には、各用紙カバー111、112が第2トレイ92と一体的に形成されていてもよい。
また、平板部114及び平板部116は、共に前後方向前側、すなわち記録用紙の搬送方向に延びている。ただし、平板部116は、その先端が上記支持機構104の近傍に達するまで延びているのに対し、平板部114は、その中間部で切り欠かれており、記録用紙の搬送方向下流側の部分が欠落している。また、用紙カバー111、112が設けられることにより、特殊紙は矢印119(図3参照)の方向に沿って用紙カバー111と用紙カバー112との間に挿入され、第2トレイ92にセットされる。すなわち、本実施形態では、第2トレイ92に特殊紙が補充される際には、給紙トレイ20が一旦装置本体から引き抜かれ、上記矢印119の方向から特殊紙が挿入されることになる。
この用紙カバー111、112が設けられることによる作用効果については、後述される。
図4、図6及び図9が示すように、固定部106は、先端当接部材120(先端当接壁)を備えている。この先端当接部材120は、固定部106の前端に突設されており、第1トレイ91の傾斜板102と略並行に延びている。上記収容凹部110に収容された特殊紙の先端は、先端当接部材120の内側面に当接し、これにより、第2トレイ92上で特殊紙の先端が位置決めされる。また、図3及び図4が示すように、回動部107は、後端当接部材121(後端壁)が設けられている。後端当接部材121は上記底面113に立設されており、後端当接部材121の内側面に上記特殊紙の後端が当接する。これにより、第2トレイ92上で特殊紙の後端が位置決めされる。この後端当接部材121は、前後方向にスライド可能となっており、図3において実線で示された位置と、点線で示された位置との間でスライドすることができるようになっている。したがって、特殊紙の前後方向寸法が変化した場合であっても、当該特殊紙の後端が確実に位置決めされ得る。
図10は、給紙トレイ20の構造を模式的に示す図であり、上記回動支持軸105の位置を説明するための図である。
同図が示すように、第1トレイ91の上に第2トレイ92が配置されており、この第2トレイ92は、回動部107が起立することによって開放姿勢に変化する。回動部107は、上記回動支持軸105を中心として起伏する。この回動支持軸105は、固定部106と回動部107との境界近傍に配置され、給紙トレイ20の左右方向、すなわち記録用紙の搬送方向に直交する方向に延びている。この回動支持軸105は、回動部107が回動することによって第2トレイ92が姿勢変化した場合であっても、第2トレイ92に収容された特殊紙が屈折その他の塑性変形を起こすことなく保持されるような位置に配置されている。
ただし、第2トレイ92が姿勢変化しても上記特殊紙が塑性変形を起こさないような回動支持軸105の位置は一義的に決定されるものではない。すなわち、第2トレイ92が姿勢変化しても上記特殊紙が塑性変形を起こさないための回動起立前後の回動部107の先端側端部及び後端当接部材121の位置や回動部107の回動角度は、単一の解として与えられるものではなく複数の解として存在することに加え、後に詳述されるように、回動支持軸105の位置は、回動起立前後の回動部107の先端側端部及び後端当接部材121の位置や回動部107の回動角度に基づいて決定されるものであるから、第2トレイ92が姿勢変化しても上記特殊紙が塑性変形を起こさないような回動支持軸105の位置は、複数存在し得る。
本実施形態では、回動部107の回動角度が110°に設定されていることから、回動支持軸105の位置は、具体的に次のようにして決定され得る。
第2トレイ92に収容される特殊紙は、先端当接部材120と後端当接部材121とにより挟み込まれるようにして位置決めされているから、回動部107が回動することにより第2トレイ92が姿勢変化した際には、第2トレイ92に収容された特殊紙の先端は固定部106の先端当接部材120により位置決めされたままであるが、当該特殊紙の後端は、回動部107の後端当接部材121と共に回動することになる。換言すれば、回動部107は回動支持軸105を中心に回動するが、第2トレイ92に収容された特殊紙は、先端当接部材120によって位置決めされた先端を中心として後端が回動することになる。したがって、この特殊紙の回動軌跡は、先端当接部材120を中心とし、当該特殊紙の搬送方向寸法(前後方向寸法)を半径とする仮想円122と一致する。
次に、本実施形態では回動部107の回動角度が110°に設定されているから、同図が示すように、この角度に起立した回動部107の後端当接部材121が上記仮想円122上に配置されるように当該回動部107の位置が設定される。この場合、後端当接部材121が仮想円122上に配置されることを条件とすれば、回動部107の位置は一義的に決定されるものではなく、後端当接部材121が仮想円122上に存在する限り、いずれの位置にでも配置され得る。ただし、回動起立後の回動部107の位置は、第2トレイ92が開放姿勢に変化したときに、すなわち、回動部107が回動起立したときに第1トレイ91が大きく開放されるように適当な位置に設定されるべきである。
回動起立後の回動部107の位置が決定されることにより、回動部107の回動変位前後において、回動部107の後端当接部材121が第1位置123から第2位置124へ移動し、且つ回動部107の先端側端部が第1位置125から第2位置126へ移動することになる。そして、上記後端当接部材121の第1位置123と第2位置124とを連結する仮想線127の垂直二等分線128、及び、回動部107の先端側端部の第1位置125と第2位置126とを連結する仮想線129の垂直二等分線130が求められ、さらに、これら垂直二等分線128、130同士の交点の位置が求められる。この交点の位置が上記回動支持軸105の位置であり、かかる位置に回動支持軸105が配置されることにより、回動部107の後端当接部位材121は、回動支持軸105を中心として第1位置123から第2位置124へ円弧を描いて移動し、且つ回動部107の先端側端部は、回動支持軸105を中心として第1位置125から第2位置126へ円弧を描いて移動する。
図11は、回動支持軸105を中心に回動部107が矢印131の方向に回動したときの第2トレイ92の姿勢変化を模式的に示す図である。
前述の要領で回動支持軸105の位置が決定されることにより、同図が示すように、第2トレイ92が積層姿勢であるときの先端当接部材120と後端当接部材121との間の距離132は、第2トレイ92が開放姿勢に変化したときの先端当接部材120と後端当接部材121との間の距離133と一致し、しかも、この距離132、133は、特殊紙の前後方向寸法(すなわち搬送方向寸法)と等しくなる。
また、前述の位置に回動支持軸105が配置されることにより、回動部107の後端当接部材121は、上記仮想円122の外側を移動することになる。なぜなら、図10が示すように、上記仮想円122は、固定部106の先端当接部材120を中心とする上記距離132を半径とする円であり、回動部107の先端側端部は、当該先端側端部と回動支持軸105との間の距離を半径として回動支持軸105を中心とする円弧状の図中左側に移動するからである。すなわち、本実施形態では、回動部107が回動することによって第2トレイ92が姿勢変化したとしても、先端当接部材120と後端当接部材121との間の距離は、少なくとも特殊紙の搬送方向寸法を維持することができる。
本実施形態では、前述のようにして回動支持軸105の位置が決定されたが、回動支持軸105の位置は、他の条件に基づいても決定され得る。例えば、本実施形態では、回動部107の回動後の起立角度が110°であることが条件として設定されているが、回動後の回動部107の起立角度が特に限定されず、回動起立前後における回動部107の後端当接部材121の位置及び先端側端部の位置が条件として設定されてもよい。ただし、回動支持軸105の位置は、前述と同様に、回動部107の回動起立前後における後端当接部材121の位置を結ぶ仮想線の垂直二等分線と、回動部107の回動起立前後における当該回動部107の先端側端部の位置を結ぶ仮想線の垂直二等分線との交点によって決定される。
回動部107の先端側端部の位置が調整されることによって、回動支持軸105の位置は、任意に設定され得る。この場合、回動支持軸105の位置が図11において白抜矢印136の方向に移動されたとすれば、回動部107の後端当接部材121は、図10において仮想円122の外側(同図において左側)であって当該仮想円122から離れた軌跡上を移動することになり、したがって、回動部107が回動する際には、先端当接部材120と後端当接部材121との間の距離は、特殊紙の搬送方向寸法よりも大きくなる。前述の要領で回動支持軸105の位置が決定されることによる効果については後述される。
図3及び図4が示すように、排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上面部によって構成されている。図2が示すように、給紙トレイ20の第1トレイ91から普通紙が引き出されてこれに画像が記録される場合には、用紙カバー111、112(図3及び図4参照)と第2トレイ92の上面134の全体とが排紙トレイ21として機能し、給紙トレイ20の第2トレイ92から特殊紙が引き出されてこれに画像が記録される場合には、第2トレイ92の上面134全体が排紙トレイ21として機能する。排紙トレイ21については、後にさらに詳述される。
図12は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
同図が示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙に圧接して分離傾斜板22へ給送する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、LFモータ78(図16参照)の駆動が伝達されることにより回転される。給紙ローラ25に複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27が連結されており、この駆動伝達機構27を介してLFモータ78の駆動が伝達されるようになっている。
給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として、給紙トレイ20に接離可能に上下動する。同図が示すように、給紙アーム26は、自重により給紙トレイ20に接触するように下側に回動され、これにより、給紙ローラ25が給紙トレイ20に接触される。同図では、第2トレイ92が第1トレイ91に対して後方(同図において左側)へ、すなわち搬送方向と逆方向へスライドされている。したがって、給紙ローラ25は、第1トレイ91に収容された普通紙に接触する。なお、給紙トレイ20が一旦引き抜かれ、第2トレイ92が搬送方向下流側にスライドされた後に再び給紙トレイ20が挿入されると、当該第2トレイ92によって給紙アーム26が跳ね上げられ(すなわち、同図において反時計回りに回動して)、給紙ローラ25が第2トレイ92に収容された特殊紙に接触する。すなわち、ユーザーが記録用紙を入れ換えることなく、第2トレイ92をスライドさせるだけで、画像が記録される記録用紙が変更される。
給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上記開口4(図2参照)から挿抜される際には、給紙アーム26が上側へ退避される。給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接された状態で回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間に発生する摩擦力によって最上位置の記録用紙が搬送方向に沿って下流側へ、すなわち分離傾斜板22の方へ給送される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ進入する。ここで、給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、この記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、多機能装置1の背面側の用紙搬送路23は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とにより構成されており、これら外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19は、フレーム内に固定されている。外側ガイド部材18は搬送コロ17を備えている。搬送コロ17は、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として外側ガイド部材18に回転自在に支持されている。搬送コロ17のローラ面は、外側ガイド部材18のガイド面から露出されている。この搬送コロ17が設けられているので、用紙搬送路23がU字状に曲がっている箇所においても外側ガイド面に接触する記録用紙の搬送が円滑となる。
図12が示すように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38を備えている。このキャリッジ38は、主走査方向に往復動されるようになっている。多機能装置1内にインクカートリッジが設置さている。このインクカートリッジからインクチューブ41(図13参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが記録ヘッド39に供給される。記録ヘッド39は、各インクを微小なインク滴として選択的に吐出する。キャリッジ38が往復動されつつ記録ヘッド39からインク滴が選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。なお、本実施形態に係る多機能装置1は、インクジェット式画像記録装置として構成されているが、本発明において画像記録方式については何ら限定されるべきものではなく、したがって、多機能装置1は、インクジェット式に代えてレーザー式、サーマル式その他の種々の画像記録方式を採用することができる。
図13は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。
図13が示すように、用紙搬送路23の上側において、一対のガイドレール43、44が記録用紙の搬送方向と直交する方向(図13の左右方向)に延設されている。各ガイドレール43、44は、記録用紙の搬送方向(図13の上下方向)に所定距離を隔てられて配置されている。キャリッジ38は、ガイドレール43、44を跨ぐようにして当該ガイドレール43、44上に載置されている。この状態においてキャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に往復動することができるようになっている。記録用紙の搬送方向の上流側に配設されたガイドレール43は平板状に形成されており、ガイドレール43の用紙搬送路23の幅方向の長さは、キャリッジ38の往復動範囲より長くなるように設定されている。ガイドレール43の搬送方向下流側の上面がガイド面43Aであり、このガイド面43Aがキャリッジ38の上流側の端部を摺動可能に支持している。
記録用紙の搬送方向の下流側に配設されたガイドレール44も平板状に形成されている。ガイドレール44の用紙搬送路23の幅方向の長さは、ガイドレール43とほぼ同じ長さに設定されている。ガイドレール44の上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール44の搬送方向下流側の上面がガイド面44Aであり、このガイド面44Aがキャリッジ38の下流側の端部を摺動可能に支持している。また、キャリッジ38は、縁部45を不図示のローラ等により狭持する。これにより、キャリッジ38が、ガイドレール43、44のガイド面43A、44A上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に往復動可能となっている。
ガイドレール44の上面に、ベルト駆動機構46がガイドレール44に沿って設けられている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47と従動プーリ48とタイミングベルト49とを備えている。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられている。タイミングベルト49は、無端環状に形成されており、その内側に歯が設けられている。この歯が駆動プーリ47及び従動プーリ48に噛合されることにより、タイミングベルト49を介して駆動プーリ47と従動プーリ48とが連結されている。そして、タイミングベルト49とキャリッジ38とが連結されており、これにより、ベルト駆動機構46の動作に基づいてキャリッジ38が往復動される。
駆動プーリ47は、ガイドレール44のガイド面44Aと直交する方向を軸として、ガイドレール44の上面の一方端(図13では右端)に回転自在に設けられている。つまり、駆動プーリ47の軸は鉛直方向である。図13には表れていないが、ガイドレール44の下側にはCRモータ80(図16参照)が設けられており、CRモータ80から駆動プーリ47の軸に駆動力が入力される。これにより、駆動プーリ47が回転される。
タイミングベルト49は、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。図13には表れていないが、駆動プーリ47の外周にはタイミングベルト49の内歯と噛合する平歯が形成されている。これにより、駆動プーリ47の回転がタイミングベルト49に確実に伝達され、タイミングベルト49が周運動される。なお、本実施形態では無端環状のタイミングベルト49が用いられているが、これに代えて有端のタイミングベルトが用いられてもよい。その場合、タイミングベルトの両端がキャリッジ38に連結される。
キャリッジ38は、タイミングベルト49に連結されている。タイミングベルト49が周運動されると、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43、44上を往復動する。キャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されることにより、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動可能となっている。
ガイドレール44の縁部45に沿って、リニアエンコーダ84(図16参照)のエンコーダストリップ54が配設されている。リニアエンコーダ84は、エンコーダストリップ54をキャリッジ38に搭載されたフォトインタラプタ55により検出するものである。リニアエンコーダ84の検出信号に基づいて、キャリッジ38の往復動が制御される。
用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きくなるように設定されており、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構56や廃インクトレイ57等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構56は、記録ヘッド39のノズル60(図14、図15参照)から気泡や異物を吸引除去するためのものである。パージ機構56は、記録ヘッド39のノズル60を覆うキャップ58と、キャップ58を通じて記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ58を記録ヘッド39のノズル60に接離させるための移動機構とからなる。なお、図13においては、ポンプ機構及び移動機構は、ガイドレール43、44及びキャップ58の下方にあるため図に表れていない。記録ヘッド39の気泡等の吸引除去を行う際には、記録ヘッド39がキャップ58上に位置するようにキャリッジ38が移動され、その状態でキャップ58が上方へ移動されて記録ヘッド39の下面のノズル60を密閉するように密着し、キャップ58と連結されたポンプにより記録ヘッド39のノズル60からインクが吸引される。
廃インクトレイ57は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ57は、キャリッジ38の往復動範囲内であって画像記録範囲外に、プラテン42と一体に設けられている。これらメンテナンスユニットにより、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。
記録ヘッド39には、不図示のインクカートリッジと連結されたインクチューブ41を通じてインクが供給される。インクカートリッジはインク色ごとに設けられており、各色ごとに独立したインクチューブ41により記録ヘッド39へ各色インクが供給される。各インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に従って撓む可撓性を有する。
インクカートリッジと連結された各インクチューブ41は、多機能装置1の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置フレームの固定クリップ59に固定されている。なお、図13では、固定クリップ59からインクカートリッジ側へ延出されるインクチューブ41は省略されている。固定クリップ59からキャリッジ38までにおいて、インクチューブ41は装置フレーム等に固定されておらず、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。すなわち、キャリッジ38が往復動方向の一端(図13の左側)へ移動するにしたがい、各インクチューブ41は、U字形状の湾曲部分の曲げ半径が小さくなるように撓みながら、キャリッジ38の移動方向へ移動する。一方、キャリッジ38が往復動方向の他端(図13の右側)へ移動するに従い、各インクチューブ41は、湾曲部分の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、キャリッジ38の移動方向へ移動する。
図14は、記録ヘッド39のノズル面を示す底面図である。
同図が示すように、記録ヘッド39は、その下面に開口するノズル60を有する。ノズル60は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インクごとに記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図14において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復動方向である。そして、CMYBkの各色インクのノズル60が主走査方向に並んでいる。各ノズル60の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じてノズル60の列数は増減されてもよい。
図15は、記録ヘッド39の内部構成を示す部分拡大断面図である。
同図が示すように、記録ヘッド39の下面に形成されたノズル60の上流側には、圧電素子61を備えたキャビティ62が形成されている。圧電素子61は所定の電圧が印加されることにより変形されて、キャビティ62の容積が減少される。このキャビティ62の容積変化によって、キャビティ62内のインクがノズル60からインク滴として吐出される。
キャビティ62は、各ノズル60ごとに設けられており、複数のキャビティ62に渡ってマニホールド63が形成されている。マニホールド63は、CMYBkの各色インクごとに設けられている。マニホールド63の上流側にはバッファタンク64が形成されている。バッファタンク64も、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各バッファタンク64には、インクカートリッジからインクチューブ41を通じてインク供給口65からインクが供給される。バッファタンク64に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ62及びマニホールド63に気泡が進入することが防止される。バッファタンク64内で捕捉された気泡は、気泡排出口66から図示されていないポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク64からマニホールド63へ供給されたインクは、マニホールド63により各キャビティ62に分配される。
このようにして、インクカートリッジからインクチューブ41を通じて供給された各色インクに対して、バッファタンク64、マニホールド63を介してキャビティ62へ流れるインク通路が形成される。このインク通路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、各圧電素子61の選択的な変形により、ノズル60からインク滴として記録用紙に選択的に吐出される。
図12が示すように、画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラ67が設けられている。図12には表れていないが、搬送ローラ67の対向位置にはピンチローラが設けられている。ピンチローラは搬送ローラ67に圧接可能に付勢されている。搬送ローラ67とピンチローラとの間に記録用紙が進入すると、ピンチローラは記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ67とともに狭持する。これにより、搬送ローラ67の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。そして、該記録用紙がプラテン42上へ搬送される。
画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラ68が設けられている。排紙ローラ68の対向位置には、拍車ローラ69が設けられている。拍車ローラ69は、排紙ローラ68に圧接されており、排紙ローラ68及び拍車ローラ69により、記録済みの記録用紙が狭持されて搬送される。拍車ローラ69も排紙ローラ68に対して上記ピンチローラと同様に圧接可能に付勢されたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。
搬送ローラ67及び排紙ローラ68は、LFモータ78から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ67及び排紙ローラ68の回転は同期されており、搬送ローラ67に設けられたロータリーエンコーダ83(図16参照)が、搬送ローラ67とともに回転するエンコーダディスク70をフォトインタラプタで検出することにより、搬送ローラ67及び排紙ローラ68の回転が制御される。
前述のように、給紙トレイ20は上記排紙トレイ21を兼ねており、第1トレイ91にストックされた普通紙に画像が記録される場合には、用紙カバー111、112と第2トレイ92の上面134の全体とが排紙トレイ21として機能し、また、第2トレイ92が前方へスライドされ、第2トレイ92にストックされた特殊紙に画像が記録される場合には、当該第2トレイ92の上面134全体が排紙トレイ21として機能する(図3及び図4参照)。特に、排紙ローラ68によって画像記録ユニット24から排出された特殊紙は、用紙カバー112の平板部116上に送り出される。本実施形態では、図12が示すように、平板部116は、その上面がプリンタ部2の筐体135の底面よりも上方に位置するように配置されている。このため、平板部116上に排出された特殊紙が仮に画像記録ユニット24側へ移動した場合であっても、この特殊紙は上記筐体135に当接することによって逆流が防止されるという利点がある。
図16は、多機能装置1の制御部71の構成を示すブロック図である。
制御部71は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む多機能装置1の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部3は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略される。
制御部71は、同図が示すように、CPU(Central Processing Unit)72、ROM(Read Only Memory)73、RAM(Random Access Memory)74、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)75を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス76を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)77に接続されている。
ROM73は、多機能装置1の各種動作を制御するためのプログラム等を格納している。RAM74は、CPU72が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM75には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC77は、CPU72からの指令に従い、LFモータ78に通電する相励磁信号等を生成する。また、ASIC77は、この信号をLFモータ78の駆動回路79に付与し、駆動回路79を介して駆動信号をLFモータ78に通電することにより、LFモータ78の回転制御を行っている。
駆動回路79は、給紙ローラ25、搬送ローラ67、排紙ローラ68、及びパージ機構56に接続されたLFモータ78を駆動させるものであり、ASIC77からの出力信号を受けて、LFモータ78を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてLFモータ78が回転し、このLFモータ78の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ67、排紙ローラ68、及びパージ機構56へ伝達される。
ASIC77は、CPU72からの指令に従い、CRモータ80に通電する相励磁信号等を生成する。また、ASIC77は、この信号をCRモータ80の駆動回路81に付与し、駆動回路81を介して駆動信号をCRモータ80に通電することにより、CRモータ80の回転制御を行っている。
駆動回路81は、キャリッジ38に接続されたCRモータ80を駆動させるものであり、ASIC77からの出力信号を受けて、CRモータ80を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてCRモータ80が回転し、CRモータ80の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部71により制御される。
駆動回路82は、記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU72から出力される駆動制御手順に基づいてASIC77において生成された出力信号を受け、記録ヘッド39を駆動制御する。
ASIC77には、搬送ローラ67の回転量を検出するためのロータリーエンコーダ83、キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ84が接続されている。また、ASIC77には、スキャナ部3や、多機能装置1の操作指示を行うための操作パネル6、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部7、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース85及びUSBインタフェース86等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)87やモデム(MODEM)88が接続されている。
図13が示すように、制御部71は不図示のメイン基板により構成されており、メイン基板から記録ヘッド39へはフラットケーブル89を通じて記録用信号等の伝送が行われる。フラットケーブル89は、電気信号を伝送する導体をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板と記録ヘッド39の制御基板(不図示)とを電気的に接続している。フラットケーブル89は、キャリッジ38から往復動方向へ導出され、上下方向に略U字形状に曲折されており、この略U形状の部分は、他の部材に固定されておらず、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。
本実施形態に係る多機能装置1では、給紙トレイ20が第1トレイ91及び第2トレイ92を備えており、A4サイズ以下の普通紙が第1トレイ91にストックされ、L版光沢紙等の特殊紙が第2トレイ92にストックされる。したがって、ユーザーが記録用紙を入れ換えなくても、多機能装置1は、2種類の記録用紙を使い分けて画像を記録することができる。
また、ユーザーが第1トレイ91に普通紙を補充する際には、第2トレイ92が第1トレイ91に対して開放姿勢となる。これにより、第1トレイ91が開放され、ユーザーは、第1トレイ91に容易に記録用紙を補充することができる。このとき、図3及び図4が示すように、第2トレイ92に用紙カバー111、112が設けられているから、第2トレイ92にストックされた特殊紙は、用紙カバー111、112によって保持される。したがって、第2トレイ92に特殊紙がストックされた状態で第2トレイ92が姿勢変化したとしても、特殊紙は、第2トレイ92から容易に脱落することはない。
以上のように、この多機能装置1では、ユーザーが記録用紙を入れ換えることなく、A4版普通紙に文書が記録され、また、L版光沢紙に写真画像が記録され得る。しかも、第1トレイ91に普通紙が補充される際には、第2トレイ92に収容された特殊紙が脱落することがないので、普通紙の補充作業が円滑に行われる。
また、図3が示すように、上記用紙カバー111、112は平板部114、116を備え、この平板部114、116と第2トレイ92の載置面113との間で特殊紙が挟み込まれる。これにより、第2トレイ92が90°以上回動した場合であっても、特殊紙は第2トレイ92内でに確実に保持され、脱落が防止される。しかも、この特殊紙を保持するために上記平板部114、116が採用されており、これにより、用紙カバー111、112は、その構造が簡単になり、安価に構成されるという利点がある。
さらに、第2トレイ92が開放姿勢となったときは、第2トレイ92は、第1トレイ91に対して110°だけ起立する。すなわち、第2トレイ92が第1トレイ91に対して90°以上に回動する。このため、第2トレイ92は、自重の作用によって開放姿勢側に付勢され、当該開放姿勢を自己保持する。したがって、ユーザーは、第1トレイ91に普通紙を補充する際に、第2トレイ92を開放姿勢に保持しておく必要がなく、記録用紙の補給作業が簡単になる。
加えて、第2トレイ92は、第1トレイ91に対して120°以下の角度だけ回動するので、開放姿勢にある第2トレイ92は、第1トレイ91に対して大きく起立する。言い換えれば、例えば、第2トレイ92が第1トレイ91に対して120°を超える角度で回動した場合、この回動角度が大きくなるにつれて第2トレイ92はが第1トレイ91と平行に配置されることになり、これでは、ユーザーは、第2トレイ92が積層姿勢にあるのか開放姿勢にあるのかを瞬時に判断することが困難になる傾向にある。ところが、本実施形態では、第2トレイ92が上記角度で起立するので(図9参照)、ユーザーは、第2トレイ92が開放姿勢にあることを容易に確認することができる。したがって、ユーザーが不用意に第2トレイ92を開放姿勢側へ回動させてしまうことによる第2トレイ92の損傷が防止される。しかも、第2トレイ92が120°以下の角度だけ回動するので、第2トレイ92を開放姿勢に保持するためのモーメントが小さくなる。したがって、第2トレイ92の設計において、第2トレイ92を支持する部位を特に補強する必要はないという利点もある。
なお、普通紙が第1トレイ91に補充される場合は、前述のように第2トレイ92が開放姿勢に変化されるが、このとき、第2トレイ92が前述の角度範囲で回動されるから、ユーザーが第2トレイ92を開放姿勢へと変化させる際に、給紙トレイ20全体を多機能措置1から大きく手前に引き出す必要はない。換言すれば、仮に第2トレイ92が120°を超えて大きく回動される場合は、回動部107が第1トレイ91の前側を被うことになるから、ユーザーが第2トレイ92を開放姿勢に変化させるために給紙トレイ20を大きく手前に引き出す必要がある。しかし、本実施形態では、第2トレイ92が120°以下の範囲で起立されるから、ユーザーは、給紙トレイ20を手前に小さく引き出すだけで回動部107を回動させることができ、普通紙を補充することができる。したがって、ユーザーは、第2トレイ92をコンパクトに開放して普通紙を簡単且つ迅速に補充することができる。
また、本実施形態では、図3及び図4が示すように、第2トレイ92に収容された特殊紙の両側部分が用紙カバー111、112の平板部114、116によって被われ保持される。これにより、第2トレイ92が開放姿勢となった場合であっても特殊紙の脱落が確実に防止される。なお、本実施形態に係る多機能装置1では、特殊紙は、第2トレイ92に対して搬送方向下流側から上流側に向かって挿入される。このため、一般には、上記平板部114、116が設けられることにより、ユーザーが第2トレイ92へ特殊紙を補充する作業がし難くなる傾向にある。ところが、本実施形態に係る多機能装置1では、平板部114が図3に示すように切り欠かれているので、ユーザーは、特殊紙を第2トレイ92へ容易に挿入することができるという利点がある。
本実施形態に係る多機能装置1では、さらに次のような作用効果が奏される。
図11が示すように、第2トレイ92が姿勢変化しても、先端当接部材120と後端当接部材121との距離が一定であるから、第2トレイ92に収容された特殊紙が折れ曲がる等の塑性変形を起こしたり、第2トレイ92から脱落したりすることがない。その結果、第1トレイ91への普通紙の補充作業が円滑に行われる。
また、前述のように、上記特殊紙の先端及び後端は、第2トレイ92の先端当接部材120と後端当接部材121によって位置決めされるから、第2トレイ92が姿勢変化したとしても上記特殊紙は、第2トレイ92内で整列される。したがって、特殊紙は、給紙トレイ20から常に良好に搬送方向に引き出されるという利点がある。特に、第2トレイ92は、回動部107が固定部106に対して回動することによって姿勢変化する。このとき、回動部107は、回動支持軸105によって支持されることにより回動可能となっているから、第2トレイ92の姿勢変化を許容するための機構がきわめて簡単であるという利点もある。
さらに、回動支持軸105が前述の位置(図10及び図11参照)に配置されることにより、第2トレイ92が姿勢変化した場合であっても、上記先端当接部材120と上記後端当接部材121との間の距離は、上記特殊紙の搬送方向寸法を維持される。これにより、特殊紙が不可逆的に塑性変形することが確実に防止される。特に本実施形態では、第2トレイ92が積層姿勢であるときの上記先端当接部材120と上記後端当接部材121との間の距離132が、第2トレイ92が上記開放姿勢であるときの上記先端当接部材120と上記後端当接部材121との間の距離133と同一であり、しかも、これら距離132、133が特殊紙の搬送方向寸法と等しくなるように、上記回動支持軸105の位置が決定されている。このため、回動支持軸105は、図11が示すように第2トレイ92の固定部106と回動部107との境界部の近傍に配置されることになる。その結果、給紙トレイ20は、その厚み寸法すなわち上下方向の寸法が小さくなり、給紙トレイ20の薄型化、ひいては多機能装置1の薄型設計が可能となる。なお、前述のように、回動支持軸105が図11において白抜矢印136の方向に移動されることにより、上記後端当接部材121は、図10において仮想円122の外側を移動することになり、これにより、特殊紙が湾曲されたり折れ曲がったりすることがなく、第2トレイ92に収容された特殊紙の損傷が確実に防止される。ただし、この場合には、回動支持軸105の位置が上方に移動するため、給紙トレイ20の厚み寸法が大きくなる。