以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
[図の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の外観を示す斜視図である。図2は、画像形成装置1から供給トレイ15が引き出された状態を示す斜視図である。図3は、画像形成装置1の断面構成を示す断面図である。なお、図3では、本体ケーシング2及びスキャナユニット20が省略されている。図4から図6は、供給トレイ15の外観を示す斜視図である。図4には、セカンドトレイ40が使用不可能な位置(セカンドトレイ40からのシートの供給が不可能な位置:以下「第1位置」という。)に配置され、且つセカンドトレイ40がメイントレイ30に対して倒伏した姿勢(以下「倒伏姿勢」という。)にある状態が示されている。図5には、セカンドトレイ40が使用可能な位置(セカンドトレイ40からのシートの供給が可能な位置:以下「第2位置」という。)に配置され、且つセカンドトレイ40が倒伏姿勢にある状態が示されている。図6には、セカンドトレイ40が使用不可能な第1位置に配置され、且つセカンドトレイ40が上方へ回動されてメイントレイ30に対して起立した姿勢(以下「起立姿勢」という。)にある状態が示されている。図7は、供給トレイ15を概ね上方から見た斜視図である。なお、図7では、セカンドトレイ40が省略されている。図8は、図7の要部VIIIの拡大詳細図であり、(A)にはロック機構80によるロック状態が示されており、(B)にはロック解除状態が示されている。図9は、摺動プレート45、ロック機構80及びロック解除機構120の各構成を示す斜視図である。図10及び図11は、図6の要部Xの拡大詳細図である。図10にはロック機構80によるロック状態が示されており、図11にはロック解除状態が示されている。
なお、以下の説明においては、画像形成装置1の通常使用状態(図1の状態)を基準として上下方向7を表現し、後述する操作パネル10が設けられている側を手前側(前)として前後方向8(本発明の第1方向に相当)を表現し、画像形成装置1を手前側(正面)から見て左右方向9を表現する。
[画像形成装置1の概略構成]
本実施形態の画像形成装置1は、プリンタ機能の他、スキャナ機能、カラーコピー機能、ファクシミリ機能等を有するいわゆる複合機である。図1に示されるように、画像形成装置1は、上下方向7よりも左右方向9及び前後方向8が大きい幅広薄型の概ね直方体箱状の本体ケーシング2によってその外観が形成されている。なお、プリンタ機能以外の機能は任意であり、例えば、スキャナユニット20がなく、スキャン機能やコピー機能、ファクシミリ機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像形成装置が実施されてもよい。
本体ケーシング2の上面における前部位置には、入力操作用の各種操作ボタンが配置された操作部11と、メッセージ等の画像を表示する表示部(例えば液晶ディスプレイ)12とを有する操作パネル10が設けられている。また、操作パネル10の後方位置には、原稿から画像を読み取る読取手段としてのスキャナユニット20が設けられている。なお、スキャナユニット20は、スキャナ機能、コピー機能及びファクシミリ機能のために用いられる。
本体ケーシング2内における下部位置には、供給トレイ15が設けられている。供給トレイ15は、記録用紙やプラスチックシート等のシート状の被記録媒体(本発明のシートに相当)をほぼ水平に複数枚重ねた状態(積載した状態)で収容可能である。図1及び図2に示されるように、本体ケーシング2内に装着された供給トレイ15は、本体ケーシング2の前面に形成された開口2aから前方へ水平に引き出すことができる。本実施形態では、供給トレイ15は、本体ケーシング2からの脱着が可能となっている。一方、本体ケーシング2の開口2aから水平に供給トレイ15を挿入することで本体ケーシング2への装着が可能となっている。換言すれば、供給トレイ15は、本体ケーシング2の前面に形成された開口2aから挿抜可能に装着される。
図3に示されるように、本体ケーシング2内に、左右方向9に細長い金属製箱状のフレーム4が設けられている。フレーム4は、本体ケーシング2内における後方寄りの位置であって供給トレイ15の上方位置に設けられている。供給トレイ15の後端部上方位置に供給ユニット50が配置されている。供給ユニット50は、供給トレイ15に収容されている被記録媒体を後方の搬送経路5へ1枚ずつ供給(搬送)するためのものであり、被記録媒体に接触して回転する供給ローラ60を有する。供給ユニット50は、供給トレイ15の後端部上方位置でフレーム4によって支持されている。本体ケーシング2内における後端部には、供給トレイ15から後方へ搬送されてきた被記録媒体を上方へUターンさせて前方へ案内する搬送経路5が形成されている。そして、供給ユニット50の上方位置には、搬送経路5に案内されて搬送されてきた被記録媒体に画像を記録(印刷)する画像記録ユニット70(本発明の画像形成部の一例)が配置されている。この画像記録ユニット70において画像が記録された被記録媒体は、供給トレイ15の上面であって前方寄りの位置(後述するセカンドトレイ40の前方寄りの位置)に排出される。なお、画像記録ユニット70は、インクジェット方式や電子写真方式、或いは感熱記録方式など、種々の記録方式のものを適用することができる。
次に、各部の構成について詳細に説明する。
[供給トレイ15の構成]
供給トレイ15は、図4及び図5等に示されるように、大別すると、メイントレイ30(本発明の第1トレイの一例)と、摺動プレート45(本発明の移動部材の一例)と、セカンドトレイ40(本発明の第2トレイの一例)とを有する。
メイントレイ30は、上方から見て概ねA4サイズ大の長方形薄皿状の樹脂製部品であり、複数枚の被記録媒体を積載した状態で収容可能に構成されている。また、メイントレイ30は、その左右側端部に、一対の側端部ガイド31,32(図7参照)を備えており、収容される被記録媒体のサイズに関係なくその左右方向9(被記録媒体の幅方向)の中心線の位置が一定となるように被記録媒体を位置決め可能に構成されている。
図7に示されるように、側端部ガイド31,32には、被記録媒体が上面に載置される載置板部31a,32aと、載置板部31a,32aにおける左右方向9の外側の端部から上方へ垂直に立設された側板部31b,32bとがそれぞれ形成されている。そして、各載置板部31a,32aの底面からは、互いに他方の側端部ガイド31,32へ向けてリニアガイドバー31c,32cが延設されている。両リニアガイドバー31c,32cは、前後方向8に所定間隔を隔てて平行に配置されるとともに、メイントレイ30の底板33に左右方向9に沿って設けられた溝部33a,33b内に嵌合されている。
両側端部ガイド31,32は、リニアガイドバー31c,32cを溝部33a,33bに沿って摺動させることで左右方向9へ変位可能とされている。両リニアガイドバー31c,32cには、互いに対向する側にラックギア(不図示)が形成されており、各ラックギアはそれぞれ底板33における幅方向の中央位置に回転自在に設けられたピニオンギア(不図示)と噛み合っている。つまり、両側端部ガイド31,32は、ラックギアとピニオンギアとを介して互いに連結されており、両側板部31b,32bからメイントレイ30における左右方向9の中心線までの距離が常に等しくなるように(左右対称となるように)連動する。この結果、被記録媒体を、その左右方向9の中心線の位置が一定となるように位置決め可能となっている。ここで、側板部31b,32bにおける被記録媒体の左右方向9の端部と当接する部分は、前後方向8に沿って平行な平面状に形成されている。このため、側端部ガイド31,32により位置決めされた状態でメイントレイ30に収容されている被記録媒体は、左右方向9(供給ローラ60の回転軸55の方向)への移動が妨げられて傾きが防止される。したがって、供給ユニット50による供給動作が開始されると、被記録媒体は斜行することなく前後方向8の後向き(本発明の第1向きに相当)へ供給される。
メイントレイ30の底板33には、一方の溝部33bに沿って、複数の被係合部75が形成されている。被係合部75は、溝部33bよりも前方側に形成されている。各被係合部75は、断面形状が山及び谷からなる山形であり、その山形の尾根部分が前後方向8へ延出されている。側板部32bには、被係合部75と係合可能な爪を有するレバー76が設けられている。上記爪は、底板33と対向する面、つまり、側板部32bの裏面に突設されている。上記爪が被係合部75と係合することにより、両側端部ガイド31,32のスライドがロックされる。また、レバー76が操作されて左方向へ押圧されると、レバー76が撓まされることによって上記爪が持ち上げられる。これにより、爪が被係合部75から離脱して、両側端部ガイド31,32のロックが解除される。
メイントレイ30は、その後端部にガイド板34を備えている。そして、このガイド板34の左右方向9の中央部には、金属製の分離部材34aが設けられている。分離部材34aは、上下に所定間隔で並んだ複数の歯部を有しており、各歯部の先端がわずかにガイド板34の前面から突出している。これにより、供給ユニット50の供給ローラ60によって押し出された被記録媒体が仮に複数枚であったとしても、これらの被記録媒体が上記歯部の先端と当接することとなり、最上位の1枚の被記録媒体が分離される。更にガイド板34には、後述される係合爪43が進入して係合可能な係合溝部34bが設けられている。
図4及び図5に示されるように、メイントレイ30の上部には、摺動プレート45とセカンドトレイ40とが設けられている。摺動プレート45は、メイントレイ30の上部において前後方向8へ移動可能に支持されている。セカンドトレイ40は、はがきや封筒、更にはデジタルカメラ等で撮影された写真画像等を記録するためのL判サイズの光沢紙といった厚手でかつ小さいサイズの被記録媒体を左右方向9の中央部に収容可能に構成されている。このセカンドトレイ40は、摺動プレート45に対して回動可能に支持されている。
図6及び図7に示されるように、摺動プレート45は、メイントレイ30の左右方向9の寸法とほぼ同じ寸法を有する板状の部材であって、メイントレイ30に対して摺動可能に支持されている部材である。摺動プレート45の支持機構としては、例えば、メイントレイ30の側壁35の上端がレールとして機能し、摺動プレート45の両端に設けられた逆向きU字状の摺動溝73が側壁35の上端と係合することにより構成されるレール支持機構などの周知の機構が採用可能である。なお、摺動プレート45は、摺動可能に支持される機構に限られず、メイントレイ30の上部において移動可能に支持されていれば如何なる支持機構でも適用可能である。
摺動プレート45の左右方向9の両端には、セカンドトレイ40を回動可能に支持するための支持部91,92が設けられている。各支持部91,92は左右対称な関係にあり、実質的に同じ支持機構を有する。したがって、以下においては、支持部91の支持機構について説明し、支持部92の支持機構については支持部91の構成要素と同符号を付すことによりその説明を省略する。
支持部91は、摺動プレート45の左端部に設けられている。この支持部91は、左右方向9へ延出された回動軸94(本発明の支持軸の一例)を有する。セカンドトレイ40には回動軸94と係合可能な係合爪97が設けられている。この係合爪97が回動軸94と係合することによって、セカンドトレイ40が摺動プレート45に対して回動可能に支持される。本実施形態では、支持部91,92によってセカンドトレイ40が支持されることにより、セカンドトレイ40は、メイントレイ30に対して倒伏した倒伏姿勢(図4又は図5に示す姿勢)からメイントレイ30に対して起立した起立姿勢(図6に示す姿勢)に至る範囲で回動可能である。また、支持部91,92によってセカンドトレイ40が支持されることにより、セカンドトレイ40は、摺動プレート45とともに前後方向8へ移動可能となる。
摺動プレート45の後方側端部には、略L字状の係合爪43が2つ設けられている。係合爪43は、ガイド板34に設けられている係合溝部34bに進入して係合可能に形成されている。この係合爪43は、セカンドトレイ40が後述する使用可能状態となったときに、ガイド板34の係合溝部34bに進入して係合されることにより、セカンドトレイ40は使用可能状態の第2位置(図5に示す位置)に位置決めされることになる。このとき、係合爪43は係合溝部34b内に埋没してガイド板34の前面には突出しないため、セカンドトレイ40から被記録媒体が供給される際に、被記録媒体はガイド板34の分離部材34aには当接するものの、係合爪43には接触しない。従って、被記録媒体はセカンドトレイ40から一葉ずつ分離されて供給されるのである。更に係合爪43は、次のような作用も持っている。例えば、ユーザがメイントレイ30内に被記録媒体を補給しようとしてセカンドトレイ40を回動させることがある。このとき、係合爪43は摺動プレート45の上面から上方へ突出しているため、セカンドトレイ40上に被記録媒体が載置されたままでセカンドトレイ40が回動されたとしても、被記録媒体は係合爪43で停止され、被記録媒体はセカンドトレイ40上から滑り落ちることがない。
図4及び図5に示されるように、セカンドトレイ40は、左右方向9の寸法がメイントレイ30とほぼ同じであって、前後方向8の寸法がメイントレイ30に比べてやや短い長方形薄皿状の樹脂製部品である。セカンドトレイ40は、複数枚の被記録媒体をほぼ水平に積載した状態で収容可能に構成されている。また、セカンドトレイ40は、メイントレイ30と同様に、収容される被記録媒体のサイズに関係なくその左右方向9(被記録媒体の幅方向)の中心線の位置が一定となるように被記録媒体を位置決め可能とするための一対の側端部ガイド41,42を備えている。
側端部ガイド42には、上述した側端部ガイド32に設けられたレバー76と概ね同様のレバー46が設けられている。レバー46の構成及び作用は上述したレバー76と実質的に同じであるため、ここでは説明を省略する。図4及び図5に示されるように、レバー46側端部ガイド42の右側に凹部47が形成されている。この凹部47はユーザの手指が挿通可能なサイズに形成されている。この凹部47が設けられているため、ユーザは、凹部47に手指を挿通して、レバー46を容易に操作することができる。なお、この凹部47は、後述する解除レバー122の操作を容易にする役割も果たす。このように、凹部47は、レバー46及び解除レバー122の双方の操作に共用される位置に配置されているため、セカンドトレイ40の形状を簡素化することができ、また、セカンドトレイ40に配設される他の部材のレイアウトの自由度が向上する。
また、セカンドトレイ40の被記録媒体が収容される部分には、後述される供給ローラ60が対向可能な摩擦部材44(例えば、コルク等)が設けられている。この摩擦部材44の作用は、一般によく知られているので、ここでは詳述しない。セカンドトレイ40が使用可能状態にあって被記録媒体が存在しない場合に、摩擦部材44は供給ローラ60と当接する位置に配置されている。セカンドトレイ40が使用可能状態にあるときは、後述される供給ローラ60、摩擦部材44、ガイド板34及び分離部材34aの協働によって被記録媒体は一葉ずつ分離されて供給される。従って、これらの部材のうち1つでも正常に動作しない部材が存在すると、被記録媒体の正常な搬送が損なわれるばかりか、被記録媒体が破損したり損壊したりするおそれがある。
また、セカンドトレイ40がメイントレイ30の上部における後方寄りの第2位置(図5に示す位置)に配置された状態では、セカンドトレイ40に収容されている被記録媒体が、供給ローラ60のメイントレイ30側への(下方への)移動を妨げる位置に配置される。詳細には、第2位置にセカンドトレイ40が配置された状態で供給トレイ15が開口2aに挿入されると、ガイド板34がアーム部材52に当接されることによりアーム部材52が上方へ回動され、最終的に供給ローラ60がセカンドトレイ40上に配置される。このため、供給ユニット50の供給ローラ60は、メイントレイ30に収容された被記録媒体ではなく、セカンドトレイ40に収容された被記録媒体と当接することとなる。これにより、セカンドトレイ40に収容された被記録媒体が使用可能状態となる。言い換えれば、セカンドトレイ40に収容された被記録媒体が画像記録ユニット70へ向けて供給可能となる。
セカンドトレイ40が上記使用可能状態にあるときに、画像形成装置1に対してコピー機能やプリンタ機能などの実行指令が入力されると、セカンドトレイ40に収容された被記録媒体が搬送経路5へ供給されるのである。この場合、上述された通り、被記録媒体の供給中にセカンドトレイ40がメイントレイ30に対して前後方向8に容易に摺動することは許されない。もしも被記録媒体の供給中にセカンドトレイ40がメイントレイ30に対して前後方向8に容易に摺動可能であるとすると、セカンドトレイ40上の被記録媒体が供給ユニット50によって正確に供給されなくなってしまうのである。すなわち、被記録媒体の供給ミスやジャム等が発生する可能性があり、普通紙等の通常の被記録媒体に比較して高価なはがきや封筒等の被記録媒体が破損したり損壊したりするおそれがある。そこで、本実施形態のセカンドトレイ40は、メイントレイ30に対してセカンドトレイ40の位置決め及び固定のできるロック機構80を備えている。このロック機構80の詳細な構成は後述される。
[供給ユニット50の構成]
供給ユニット50は、図3に示されるように、供給トレイ15の左右方向9(図3の紙面垂直方向)に沿って配置されるようにフレーム4に支持された支軸51を備えている。また、供給ユニット50は、アーム部材52を備えている。アーム部材52は、先端部が後方へ下がった状態で支軸51を中心として揺動可能なように支軸51に支持されている。そして、アーム部材52の先端(揺動端)には、左右方向9に沿った回転軸55を中心として回転可能な状態で供給ローラ60が支持されている。つまり、アーム部材52は、供給ローラ60の回転軸55と平行であって、供給トレイ15に収容されている被記録媒体の上方でかつ供給ローラ60の回転軸55に対して供給ローラ60による被記録媒体の搬送方向(前後方向8における後方)側とは反対側(前側)に位置する支軸51を中心として揺動可能に設けられている。
供給ローラ60は、2つのゴム製のローラ部材がアーム部材52の先端に軸支されて構成されている。具体的には、アーム部材52の先端には、図示しない貫通孔が軸支部として形成されており、そこに2つのローラ部材の回転軸55が貫通されているのである。アーム部材52の内部には、複数の動力伝達歯車56からなる歯車列が配設されている。複数の動力伝達歯車56は、2つのローラ部材の回転軸55の左右方向9(図3における紙面垂直方向)における略中央部から支軸51に渡って配列されている。支軸51の一端に図示しない歯車が固定されている。この歯車に図示しない駆動源から伝達された駆動力が伝達されると、支軸51が回転される。従って、画像形成装置1にコピー機能やプリンタ機能などの実行指令が入力されると、供給ローラ60には、図示しない駆動源から、支軸51、図示しない歯車、アーム部材52内に配列されている動力伝達歯車56を介して駆動力が伝達される。そして、この駆動力が、メイントレイ30上の被記録媒体、若しくはセカンドトレイ40上の被記録媒体に伝達されて、該被記録媒体が搬送経路5へと供給される。
また、アーム部材52は、供給ローラ60の回転軸55が支軸51よりも下方に位置する後下がりの傾斜姿勢から、供給ローラ60の回転軸55が支軸51の中心とほぼ同じ高さとなる水平姿勢まで、支軸51を中心として揺動可能となっている。ここで、アーム部材52の基端部(支軸51側)には、揺動可能範囲全域においてアーム部材52を下方(メイントレイ30に収容されている被記録媒体に供給ローラ60を当接させる方向)へ付勢する図示しない第1ねじりコイルバネが設けられている。このため、供給ローラ60は、メイントレイ30に収容されている最上位の被記録媒体に圧接される。さらに、アーム部材52の先端部には、アーム部材52が水平姿勢に近い位置まで上昇している状態(換言すれば、被記録媒体の面を基準とした供給ローラ60の回転軸55及び支軸51を含む面の角度が所定の角度よりも小さい状態)でのみアーム部材52を下方(換言すれば、第1ねじりコイルバネの付勢力を増加させる方向)へ付勢する図示しない第2ねじりコイルバネが設けられている。この第2ねじりコイルバネは、フレーム4の図示しない当接片一部と当接して弾性変形することによりアーム部材52を付勢する。具体的には、アーム部材52が、セカンドトレイ40に収容されている被記録媒体に供給ローラ60が当接するように配置されている状態において、第2ねじりコイルバネの自由端がフレーム4に形成された図示しない当接片と当接し、アーム部材52を下方へ付勢するのである。
また、上述された通り、セカンドトレイ40が使用可能状態(図5に示す状態)にあって被記録媒体が存在しない場合に、供給ローラ60は摩擦部材44に当接する。
[ロック機構80の構成]
供給トレイ15には、メイントレイ30に対してセカンドトレイ40の位置決め及び固定が可能なロック機構80が設けられている。
ロック機構80は、摺動プレート45の右端部に設けられたロック部材81(本発明のロック部材の一例)及び圧縮バネ82(本発明の付勢部材の一例:図6及び図10参照)と、メイントレイ30の側壁35に設けられた2つの開口83,84とから構成されている。
図6及び図7に示されるように、摺動プレート45の右側端部に溝部45cが設けられている。ロック部材81及び圧縮バネ82は溝部45c内に配設されている。
ロック部材81は、係合片81aと、バネ受け部81bとを有する樹脂製の部材である。このロック部材81は、摺動プレート45の溝部40c内で回動軸94の軸線方向、換言すれば左右方向9へスライド可能に設けられている。より詳細には、ロック部材81は、メイントレイ30の開口83,84と係合して摺動プレート45をメイントレイ30に対して位置決めし且つ固定するロック位置(図8(A)に示す位置)と、メイントレイ30に対するロックを解除するアンロック位置(図8(B)に示す位置)との間をスライド可能に設けられている。係合片81aは、ロック位置においてセカンドトレイ40の側端から側壁35側へ突出し、アンロック位置において側壁35から離間する。
ロック部材81の右方向の側面であって後方側に第2係合部86(本発明の第2係合部の一例)が設けられている。第2係合部86は、後述するL形レバー141(本発明の第2リンク部材の一例)によって回動軸94の軸方向へ押圧される部分である。第2係合部86は、図9に示されるように、回動軸94の延長軸線上に設けられている。第2係合部86は、ロック部材81から上方へ立設された壁、具体的には、左右方向9の両側と後方側の3方が壁で囲まれた形状に形成されている。第2係合部86の内部、つまり、上記3方の壁で囲まれた内部空間に、L形レバー141に設けられた第1係合部142(本発明の第1係合部の一例)が挿入される。
溝部45c内にバネ支持用の突起85が設けられている。突起85はバネ受け部81bとの間で圧縮バネ82を支持する。圧縮バネ82は、回動軸94の軸線方向に伸縮するように配置されている。したがって、バネ受け部81bは、常に回動軸94の軸線方向へ所定のバネ力で付勢されている。換言すれば、ロック部材81が圧縮バネ2によってロック位置側へ付勢されている。なお、圧縮バネ82は、例えば、コイルバネである。もちろん、圧縮バネ82以外のバネ、例えば板バネなどを用いてもかまわない。また、バネに限られず、ゴムなどの弾性を有し、バネ受け部81bを右側へ付勢する部材であれば如何なるものでも採用可能である。
ロック部材81と圧縮バネ82とは、セカンドトレイ40ではなく摺動プレート45に設けられている。そのため、仮にセカンドトレイ40が回動されても、ロック機構80によるロックが解除されないので、摺動プレート45は移動しない。したがって、セカンドトレイ40からの被記録媒体の供給時における供給位置がずれることがない。これは、摺動プレート45がロック機構80によってロックされた場合、ユーザがロック機構80を解除するまでは摺動プレート45がメイントレイ30に対して正確に位置決めされているためである。
係合片81aは、メイントレイ30の側壁35に設けられた2つの開口83,84と選択的に係合する。バネ受け部81bが圧縮バネ82によって付勢されているため、ロック部材81に外力が加えられていない状態では、ロック部材81はロック位置へ移動しようとする。このとき、係合片81aが開口83に位置合わせされている場合は、ロック部材81が右側へ移動して、係合片81aが開口83に入り込む。これにより、摺動プレート45が図5に示される第2位置に位置決めされるとともに固定される。このときに被記録媒体の供給動作が実行されると、セカンドトレイ40上の被記録媒体が搬送経路5へと供給されることになる。すなわち、セカンドトレイ40が第2位置に配置されることにより、セカンドトレイ40は使用可能状態となる。一方、係合片81aが開口84に位置合わせされている場合は、ロック部材81が右側へ移動して、係合片81aが開口84に入り込む。これにより、摺動プレート45が図4に示される第1位置に位置決めされるとともに固定される。このときに被記録媒体の供給動作が実行されると、メイントレイ30上の被記録媒体が搬送経路5へと供給されることになる。すなわち、セカンドトレイ40が第1位置に配置されることにより、セカンドトレイ40は使用不可能状態となる。
[ロック解除機構120]
供給トレイ15には、ロック機構80によるメイントレイ30に対するセカンドトレイ40のロックを解除可能なロック解除機構120が設けられている。
ロック解除機構120は、大別すると、解除レバー122と、L形レバー141とから構成されている。
解除レバー122はセカンドトレイ40に設けられている。解除レバー122は、ロック機構80によるロックが解除される際にユーザが操作する操作部122a(本発明の操作部材の一例)と、レバー本体122b(本発明の第1リンク部材の一例)とを有する。この操作部122aは、ユーザの操作が可能なように、セカンドトレイ40の上面48(本発明の第2面に相当)に露出されている(図4及び図5参照)。図4及び図5に示されるように、操作部122aは、凹部47に隣接して配置されている。具体的には、操作部122aは、凹部47の後方側に隣接している。そのため、ユーザは、凹部47に手指を挿通して、操作部122aを矢印8で示される前後方向へ容易に操作することができる。
解除レバー122は、セカンドトレイ40に設けられた貫通口134(図6参照)を通って操作部122aの一部がセカンドトレイ40の裏面49(本発明の第1面に相当)側へ挿通可能に設けられている。ここで、セカンドトレイ40の裏面49とは、セカンドトレイ40がメイントレイ30に倒伏した姿勢においてメイントレイ30の底板33に対面する面である。解除レバー122は、セカンドトレイ40の上面48に沿って回動軸94に垂直な方向(セカンドトレイ40が倒伏姿勢にあるときは前後方向8)へ姿勢変化可能に支持されている。具体的には、解除レバー122は、操作部122aが回動軸94側に近づいてセカンドトレイ40の裏面49に設けられたストッパー133に当接する第3位置(本発明の第1姿勢の一例)と、操作部122aがこの第3位置よりも回動軸94から離れて凹部47の壁に当接する第4位置(本発明の第2姿勢の一例)との間でスライド可能に支持されている。なお、上記第3位置は、ロック機構80がロック状態にあるときに操作部122aが配置される位置であり、すなわち、ロック部材81のロック位置に対応している。また、上記第4位置は、ロック機構80がロック解除状態(アンロック状態)にあるときに操作部122aが配置される位置であり、すなわち、ロック部材81のアンロック位置に対応している。
レバー本体122bは、細幅で長尺に形成された棒状の部材からなり、その一端が操作部122aに連結されている。したがって、レバー本体122bは、操作部122aが操作されて第3位置と第4位置との間でスライドすると、そのスライドに連動して同方向へスライドする。すなわち、本実施形態では、解除レバー122は、レバー本体122bと解除レバー122とが一体に形成されることにより構成されている。なお、レバー本体122bと後述するL形レバー141とによって本発明のリンク機構が実現されている。
レバー本体122bは、セカンドトレイ40の裏面49において、操作部122aから回動軸94へ向けて延出している。図9に示されるように、レバー本体122bの延出端に鉤部135が設けられている。鉤部135は、後述するL形レバー141の端部に形成されたスリット143と係合して、レバー本体122bとL形レバー141とを連結する。鉤部135は、スリット143の縁部に引っ掛けられる部分が平坦ではなく突状に形成されている。本実施形態では、当該部分が三角形状に形成されている。
L形レバー141はセカンドトレイ40に設けられている。L形レバー141は、セカンドトレイ40の裏面49に回動可能に支持されている。具体的には、セカンドトレイ40の裏面49に垂直方向へ突出する軸144にL形レバー141の屈曲部に設けられた軸孔145が嵌め入れられることにより、L形レバー141が支持されている。
図8に示されるように、L形レバー141は、解除レバー122が操作されていない状態で、回動軸94の軸方向(セカンドトレイ40が倒伏姿勢にあるときは左右方向9)へ延びる第1延出部146と回動軸94に垂直な方向(セカンドトレイ40が倒伏姿勢にあるときは前後方向8)へ延びる第2延出部147とを有する。第1延出部146にスリット143が形成されている。スリット143は、回動軸94の軸方向へ延びている。このスリット143にレバー本体122bの鉤部135が引っ掛けられることにより、レバー本体122bとL形レバー141とが係合する。スリット143の縁部には切り欠き148が形成されている。切り欠き148は、回動軸94から遠い側の縁部に形成されている。切り欠き148は、鉤部135の形状に対応して、三角形状に形成されている。この切り欠き148に鉤部135が入り込むことにより、レバー本体122bとL形レバー141との係合位置が位置決めされる。
第2延出部147に第1係合部142が設けられている。第1係合部142は、第2延出部147の延出端に設けられている。第1係合部142は、ロック部材81に設けられた第2係合部86の内部に配置されている。上述したように、第2係合部86は、ロック部材81において回動軸94の延長軸線上に設けられている。したがって、セカンドトレイ40がメイントレイ30に対して倒伏姿勢(図4に示す姿勢)にあるときでも、図8に示されるように第1係合部142は第2係合部86の内部に配置される。また、セカンドトレイ40が起立姿勢(図6に示す姿勢)にあるときでも、図10に示されるように第1係合部142は第2係合部86の内部に配置される。つまり、第1係合部142はセカンドトレイ40の回動姿勢にかかわらず常に第2係合部86の内部に配置される。
このようにロック解除機構120が構成されているため、操作部122aが操作されて解除レバー122がスライドすると、解除レバー122の位置の変位(姿勢変化)に連動してL形レバー141が軸144を中心に回動する。つまり、解除レバー122のスライド動作がL形レバー141によって回転動作に変換される。そして、L形レバー141とともに回転する第1係合部142によって第2係合部86が回動軸94の軸方向へ押圧される。これにより、ロック部材81に回動軸94の軸方向への力が加えられて、ロック部材81が回動軸94の軸方向へ変位して、ロック部材81がロック位置若しくはアンロック位置に移動することになる。
[ロック機構80及びロック解除機構120の動作]
以下に、ロック機構80及びロック解除機構120の動作について説明する。
画像形成装置1にてプリンタ機能やコピー機能が実行されるとき、ユーザはその用途によって被記録媒体のサイズや種類を選択する。実際には、メイントレイ30上にもセカンドトレイ40上にも各種サイズや複数種類の被記録媒体が載置されるのだが、ここでは説明を簡便にするために、メイントレイ30上の被記録媒体に画像を形成するのか、セカンドトレイ40上の被記録媒体に画像を形成するのかが選択されることとする。現在の画像形成装置1の状態が、ユーザの所望するトレイから被記録媒体が供給されない状態である場合は、ユーザはセカンドトレイ40をメイントレイ30上で摺動させて、ユーザの所望するトレイから被記録媒体が供給されるようにする必要がある。
そこで、ユーザは、まず図1に示される状態の画像形成装置1の開口2aから、図2に示されるように供給トレイ15を抜き出してから、セカンドトレイ40を所定位置に配置させる作業を行う。ロック部材81は圧縮バネ82によって常に左右方向9の右側へ付勢されており、係合片81aはメイントレイ30の側壁35に設けられている開口83,84のうち何れか一方の開口に係合されている。この状態の摺動プレート45は、図4に示される第1位置か、或いは図5に示される第2位置のいずれかに位置決めされ且つ固定されている。ユーザがセカンドトレイ40をメイントレイ30上で摺動させようとするとき、ユーザはロック機構80によるロックを解除する必要がある。
まず、ユーザは、操作部122aに自分の指を引っ掛けて、解除レバー122の操作部122aを前方へスライドさせる。操作部122aが前方へスライドされると、レバー本体122bも同方向へ移動する。このとき、レバー本体122は、L形レバー141の第1延出部146を回動軸94から遠ざかる方向へ引っ張る。これにより、L形レバー141は、軸144を中心に図8の矢印137(図8における時計方向)へ回動する。この回動動作に連動して、第2延出部147に設けられた第1係合部142も同方向(矢印137)へ回動される。このとき、第1係合部142は、第2係合部86を左方向へ押圧する。これにより、ロック部材81が圧縮バネ82の弾性力に抗して左方向へ移動する。つまり、ロック部材81は、係合片81aが開口83又は開口84に挿入されてセカンドトレイ40をロックするロック位置から、開口83又は開口84から係合片81aが脱抜されてセカンドトレイ40のロックを解除するアンロック位置へ移動する。これにより、係合片81aと2つの開口83,84のうち何れかとの係合が解除されて、セカンドトレイ40はメイントレイ30上を摺動可能な状態となる。
そしてユーザは操作部122aを前方へスライドさせたままセカンドトレイ40をメイントレイ30上で所望の方向に摺動させる。このとき、ユーザは、操作部122aと凹部47の壁とを挟むように摘むことで、ロックを解除したままセカンドトレイ40を容易に摺動させることができる。なお、ユーザは、セカンドトレイ40を摺動させる際にメイントレイ30内の被記録媒体の種類或いは積載量などを確認する場合がある。この場合でも、本実施形態の供給トレイ15であれば、セカンドトレイ40の摺動中にセカンドトレイ40を上方へ回動させても、第1係合部142と第2係合部86との係合が外れない。そのため、セカンドトレイ40を回動させたとしても、第1係合部142と第2係合部86との確実な連結を維持することができる。その結果、供給トレイ15において、高い信頼性及び操作性を実現することができる。更に、言及するまでもないが、第1係合部142や第2係合部86、或いはロック部材81などの破損も生じない。
係合片81aと開口との係合が解除された状態で、セカンドトレイ40(摺動プレート45)がメイントレイ30に対して少し摺動されると、係合片81aは係合していた開口に戻ることができないので、ユーザは操作部122aから指を離しても構わない。その状態で、ユーザは更にセカンドトレイ40(摺動プレート45)をメイントレイ30に対して摺動させることにより、係合片81aを2つの開口83,84のうち所望の開口に係合させることができる。上述された通り、ロック部材81は圧縮バネ82によって右側へ付勢されているので、係合片81aがユーザの所望する開口に係合されるとき、ユーザはスナップ感、あるいはクリック感を感じる。従って、ユーザは、セカンドトレイ40が確実に使用可能な位置(第2位置)又は使用不可能な位置(第1位置)に配置されたことを確信することができる。その後、ユーザは、セカンドトレイ40をメイントレイ30上で所望の状態にした後、再び供給トレイ15を画像形成装置1の開口2aから本体ケーシング2内に装着する。ここで、セカンドトレイ40の所望の状態とは、ユーザが所望する被記録媒体をセカンドトレイ40上に載置したり、側端部ガイド41,42を被記録媒体のサイズに合わせて移動させたりする等の動作を施した状態をいう。
[実施形態の効果]
以上、詳述したような構成の供給トレイ15によれば、セカンドトレイ40がどの姿勢に回動されても、第1係合部142と第2係合部86とが外れることなく係合状態を維持する。そのため、セカンドトレイ40を回動させたとしても、第1係合部142と第2係合部86との連結を確実にすることができ、その結果、供給トレイ15において高い信頼性及び操作性を実現することができる。更に、言及するまでもないが、第1係合部142や第2係合部86、或いはロック部材81などの破損も生じない。また、セカンドトレイ40の回動位置にかかわらず、解除レバー122が操作されることにより、レバー本体122b及びL形レバー141を介してロック部材81が動作される。そのため、セカンドトレイ40が回動されてメイントレイ30から離された状態でも、セカンドトレイ40を前後方向8へ移動させることができ、その結果、ユーザの使い勝手が向上する。
なお、上述の実施形態では、圧縮バネ82を用いてロック部材81を付勢することとしたが、必ずしもロック部材81が付勢される必要はない。少なくとも、操作部122aの操作位置に応じて、ロック部材81がロック位置或いはアンロック位置に配置されていればよい。また、操作部122aに代えて、例えば、摘みを有する回転体を採用し、回転体の回転位置に応じてL形レバー141が回動するよう連結されたリンク機構を用いてもよい。