本発明に係る処理方法は、第一支持体に、第一接着剤層を介して基板を貼り付ける第一貼付工程と、第一貼付工程の後、上記基板における第一支持体が貼り付けられた面に背向する面に、第二接着剤層を形成する第二接着剤層形成工程と、該第二接着剤層形成工程の後、該基板上における第二接着剤層の外周部に溶剤を吐出し、当該外周部を除去する第一溶剤吐出工程と、第一溶剤吐出工程の後、該基板に、第二接着剤層を介して第二支持体を貼り付ける第二貼付工程と、第二貼付工程の後、第一支持体と該基板とを分離する分離工程とを包含する。
図1を用いて、本発明の一実施形態についてより詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る処理方法の概略を説明する図である。
本発明の一実施形態に係る処理方法では、まず、基板11及び第一支持体13の少なくとも一方に、第一接着剤層12を形成する第一接着剤層形成工程を実施する。そして、基板11上における第一接着剤層12の外周部に溶剤を吐出し、当該外周部を除去する。その後、第一支持体13に、第一接着剤層12を介して基板11を貼り付ける第一貼付工程を実施する。その後、基板11をグラインダ等により研削することで所定の厚さにまで薄化し、基板11の研削された側の面に回路15およびバンプ16を形成する(図1の(a)参照)。なお、これはあくまでも一例であり、目的に応じて基板11に種々の加工を施すことができる。
続いて、基板11における第一支持体が貼り付けられた面に背向する面に、第二接着剤層22を形成する第二接着剤層形成工程を実施する(図1の(b)参照)。そして、基板11上における第二接着剤層22の外周部に溶剤を吐出し、当該外周部を除去する第一溶剤吐出工程、および、第一支持体13上における第一接着剤層12の外周部に溶剤を供給する第二溶剤吐出工程を実施する(図1の(c)および(d)参照)。
その後、基板11に、第二接着剤層22を介して第二支持体23を貼り付ける第二貼付工程を行う(図1の(e)参照)。最後に、第一支持体13と基板11とを分離する分離工程を行う。
〔第一接着剤層形成工程〕
続いて、各工程の詳細について説明する。まず、一実施形態に係る処理方法では、第一貼付工程の前に、第一支持体13及び基板11の少なくとも一方に接着剤を塗布して第一接着剤層12を形成する第一の接着剤塗布工程を包含する。
これによって、基板11を第一支持体13に固定することができる。従って、後の工程において、基板11が破損することを防止することができる。
まず、基板11に第一の接着剤を塗布して第一接着剤層12を形成する。なお、本実施形態においては、基板11に第一接着剤層12を形成しているが、これに限定されず、第一支持体13に形成された分離層14の上に第一の接着剤を塗布して第一接着剤層12を形成してもよい。
〔基板11〕
基板11としては、例えば、ウエハ基板、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を使用することができる。
〔第一接着剤層12〕
第一接着剤層12の形成方法としては、基板11に接着剤を塗布してもよいし、基板11に接着剤が両面に塗布された接着テープを貼り付けてもよい。接着剤の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、ドクターブレード法、スプレー法、スリットノズル法による塗布法等が挙げられる。又、接着剤を塗布した後、加熱により乾燥させてもよい。又、接着剤を直接、基板11に塗布する代わりに、接着剤が両面に予め塗布されているフィルム(いわゆる、両面テープ)を、基板11に貼付してもよい。
第一接着剤層12の厚さは、貼り付けの対象となる基板11及び第一支持体13の種類、貼り付け後の基板11に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、10〜150μmの範囲内であることが好ましく、15〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が、本発明に係る第一接着剤層12を構成する接着剤として使用可能である。以下、本実施の形態における第一接着剤層12が含有する樹脂の組成について説明する。
第一接着剤層12が含有する樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
接着剤のガラス転移温度(Tg)は、上記樹脂の種類や分子量、及び接着剤への可塑剤等の配合物によって変化する。上記接着剤に含有される樹脂の種類や分子量は、基板及び支持体の種類に応じて適宜選択することができるが、接着剤に使用する樹脂のTgは−60℃以上、200℃以下の範囲内が好ましく、−25℃以上、150℃以下の範囲内がより好ましい。接着剤に使用する樹脂のTgが−60℃以上、200℃以下の範囲内であることによって、冷却に過剰なエネルギーを要することなく、好適に第一接着剤層12の接着力を低下させることができる。又、第一接着剤層12のTgは、適宜、可塑剤や低重合度の樹脂等を配合することによって調整してもよい。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、公知の示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することができる。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂等が挙げられる。
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィン等が挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
又、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。又、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性及び溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
又、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性及び柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」及び「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」等が挙げられる。
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに第一接着剤層12の軟化をさらに抑制することができる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。
樹脂(B)の重量平均分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の重量平均分子量が300以上であると、耐熱性が充分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の重量平均分子量が3,000以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。なお、本実施形態における樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性及び剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。又、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
(化学式(2)中、nは0又は1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、及びAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)等を使用することができる。
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。又、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易且つ迅速に第一接着剤層を除去することができる。又、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上記の範囲内であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGME等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
なお、エラストマーには、上述した(メタ)アクリル酸エステルをさらに混合してもよい。
又、スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、又、より好ましくは40重量%以下である。
重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、又、より好ましい範囲は150,000以下である。
エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、種々のエラストマーを用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、及び、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))等であって、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上述の範囲内であるものを用いることができる。
又、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。又、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
又、エラストマーの中でも両端がスチレンのブロック重合体であるものがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
より具体的には、エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。又、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
第一接着剤層12を構成する接着剤に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、株式会社クラレ製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
第一接着剤層12を構成する接着剤に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、50重量部以上、99重量部以下の範囲内が好ましく、60重量部以上、99重量部以下の範囲内がより好ましく、70重量部以上、95重量部以下の範囲内が最も好ましい。これら範囲内にすることにより、耐熱性を維持しつつ、ウエハと支持体とを好適に貼り合わせることができる。
又、エラストマーは、複数の種類を混合してもよい。つまり、第一接着剤層12を構成する接着剤は複数の種類のエラストマーを含んでいてもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいればよい。又、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内である、又は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、本発明の範疇である。又、第一接着剤層12を構成する接着剤において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲内となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、従って14重量%以上となる。又、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを重量比1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。又、第一接着剤層12を構成する接着剤に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲内でスチレン単位を含み、且つ、上記の範囲内の重量平均分子量であることが最も好ましい。
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて第一接着剤層12を形成することが好ましい。光硬化性樹脂以外の樹脂を用いることで、第一接着剤層12の剥離または除去の後に、被支持基板の微小な凹凸の周辺に残渣が残ることを防ぐことができる。特に、第一接着剤層12を構成する接着剤としては、あらゆる溶剤に溶解するものではなく、特定の溶剤に溶解するものが好ましい。これは、基板11に物理的な力を加えることなく、第一接着剤層12を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。第一接着剤層12の除去に際して、強度が低下した基板11からでさえ、基板11を破損させたり、変形させたりせずに、容易に第一接着剤層12を除去することができる。
(希釈溶剤)
第一接着剤層12(および後述する分離層14)を形成するときに使用する希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
(その他の成分)
第一接着剤層12を構成する接着剤は、本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
〔第一接着剤層12の外周部分の除去〕
本実施形態に係る処理方法では、第一接着剤層12を形成した後、基板11上に形成された第一接着剤層12の外周部分を除去してもよい。これによって、過剰に塗布された第一の接着剤を除去することができる。このため、第一貼付工程において第一接着剤層12が基板11と第一支持体13との外周部分からはみ出し、第一支持体13に過剰に付着することを防止することができる。
基板11上における外周部分に形成された第一接着剤層12を除去する方法としては、公知の方法を用いればよく、特に限定されないが、例えば、第一接着剤層12の外周部分に対して溶剤をスプレーしてもよいし、ディスペンスノズルを用いて溶剤を供給してもよい。また、溶剤のスプレー、供給等は、基板11を回転させながら行ってもよい。
なお、第一接着剤層12を溶解するための溶剤は、接着剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、上述した希釈溶剤として使用される溶剤を用いることができ、特に、直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、モノテルペン類、ジテルペン類等の環状の炭化水素(テルペン類)を好適に使用することができる。
〔第一支持体13〕
第一支持体13は、基板11を支持する支持プレートであり、サポートプレートとも称される。第一支持体13は、第一接着剤層12を介して、基板11に貼り付けられる。
第一支持体13としては、基板11の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板11の破損または変形を防止するために必要な強度を有しており、分離層14を変質させるための光を透過するものであればよい。以上の観点から、第一支持体13としては、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。
〔分離層14〕
分離層14は、光の照射によって変質する層であり、第一支持体13における、第一接着剤層12を介して基板11が貼り合わされる側の表面に設けられる。これにより、第一支持体13を介して光を分離層に照射することで、容易に基板11と第一支持体13とを容易に分離することができる。
分離層14の厚さは、例えば、0.05μm以上、50μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.3μm以上、1μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。分離層14の厚さが0.05μm以上、50μm以下の範囲に収まっていれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層14に所望の変質を生じさせることができる。又、分離層14の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲に収まっていることが特に好ましい。
なお、分離層14と第一支持体13との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これによって、分離層14への光の入射を妨げることなく、積層体に好ましい性質等を付与する層を、適宜追加することができる。分離層14を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、すべての光を透過させる必要はなく、分離層14を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択し得る。
又、分離層14は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層14を形成してもよい。又、分離層14における第一接着剤層12に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層14の形成が容易に行え、且つ貼り付けにおいても均一に貼り付けることが可能となる。
分離層14は、レーザから照射される光を吸収することによって変質するものであってもよい。すなわち、分離層14を変質させるために分離層14に照射される光は、レーザから照射されたものであってもよい。分離層14に照射する光を発射するレーザの例としては、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光等が挙げられる。分離層14に照射する光を発射するレーザは、分離層14を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層14を構成する材料を変質させ得る波長の光を照射するレーザを選択すればよい。
(フルオロカーボン)
分離層14は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層14は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、第一支持体13を持ち上げる等)ことによって、分離層14が破壊されて、第一支持体13と基板11とを分離し易くすることができる。分離層14を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって好適に成膜することができる。
フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層14に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層14における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
分離層14に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
(光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体)
分離層14は、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。該重合体は、光の照射を受けて変質する。該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層14は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、第一支持体13を持ち上げる等)ことによって、分離層14が破壊されて、第一支持体13と基板11とを分離し易くすることができる。
光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰り返し単位として該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。該構造は、例えば、置換若しくは非置換のベンゼン環、縮合環又は複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、該構造は、カルド構造、又は上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造若しくはジフェニルアミン構造であり得る。
上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、該構造は以下の式によって表され得る。
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基又はN(R1)(R2)基であり(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、又は−CO−、−SO2−、−SO−若しくは−NH−であり、nは0又は1〜5の整数である。)
又、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)の何れかによって表される繰り返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、又は(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
(式中、lは1以上の整数であり、mは0又は1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の“化2”に示した式のいずれかであり、(f)において上記の“化2”に示した式のいずれかであるか、又は存在せず、Y1及びY2はそれぞれ独立して、−CO−又は−SO2−である。lは好ましくは10以下の整数である。)
上記の“化2”に示されるベンゼン環、縮合環及び複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオレン、置換フルオレン、フルオレノン、置換フルオリレノン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナンスレン、置換フェナンスレン、ピレン及び置換ピレンが挙げられる。例示した置換基がさらに置換基を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノ及びアリールアミノから選択される。
上記の“化2”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO2−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、及びビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
上記の“化2”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。
上記の“化2”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、及び4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰り返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層14の光の透過率が0.001%以上、10%以下になる範囲内にある。該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層14が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体100からの第一支持体13の除去が容易であり、該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100nm以上、2,000nm以下の範囲内であることがより好ましい。この範囲内のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100nm以上、500nm以下の範囲内である。例えば、上記構造は、好ましくはおよそ300nm以上、370nm以下の範囲内の波長を有している紫外光を吸収することによって、該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm以上、436nm以下)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(波長:308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)若しくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、又はg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)若しくはi線(波長:365nm)等である。
上述した分離層14は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層14はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、及び第一支持体13の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、及び重合体の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
(無機物)
分離層14は、無機物からなっていてもよい。分離層14は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、第一支持体13を持ち上げる等)ことによって、分離層14が破壊されて、第一支持体13と基板11とを分離し易くすることができる。
上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物及びカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO2、SiN、Si3N4、TiN、及びカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層14に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
無機物からなる分離層14に照射する光としては、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
無機物からなる分離層14は、例えばスパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術により、第一支持体13上に形成され得る。無機物からなる分離層14の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05μm以上、10μm以下の範囲内の膜厚とすることがより好ましい。又、分離層14を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面又は片面に予め接着剤を塗布し、第一支持体13及び基板11に貼り付けてもよい。
なお、分離層14として金属膜を使用する場合には、分離層14の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層14の上下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
(赤外線吸収性の構造を有する化合物)
分離層14は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層14は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体を持ち上げる等)ことによって、分離層14が破壊されて、第一支持体13と基板11とを分離し易くすることができる。
赤外線吸収性を有している構造、又は赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコール及びフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタン及びチオフェノール及びチオール酸等の硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A1結合(A1は、H、C、O又はハロゲン)、P−A2結合(A2は、H、C又はO)、又はTi−O結合であり得る。
上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2I、−CF2−、−CF3、−CH=CF2、−CF=CF2、フッ化アリール、及び塩化アリール等が挙げられる。
上記Si−A1結合を含む構造としては、SiH、SiH2、SiH3、Si−CH3、Si−CH2−、Si−C6H5、SiO−脂肪族、Si−OCH3、Si−OCH2CH3、Si−OC6H5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF2、及びSiF3等が挙げられる。Si−A1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格及びシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
上記P−A2結合を含む構造としては、PH、PH2、P−CH3、P−CH2−、P−C6H5、A3 3−P−O(A3は脂肪族又は芳香族)、(A4O)3−P−O(A4はアルキル)、P−OCH3、P−OCH2CH3、P−OC6H5、P−O−P、P−OH、及びO=P−OH等が挙げられる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm以上、20μm以下の範囲内であり、2μm以上、15μm以下の範囲内をより好適に吸収することができる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合及びTi−O結合である場合には、9μm以上、11μm以下の範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
分離層14の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解することができ、固化されて固層を形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層14における化合物を効果的に変質させ、第一支持体13と基板11との分離を容易にするには、分離層14における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層14に赤外線を照射したときの赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層14における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(3)で表される繰り返し単位及び下記化学式(4)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記化学式(3)で表される繰り返し単位及びアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
(化学式(4)中、R3は、水素、炭素数10以下のアルキル基、又は炭素数10以下のアルコキシ基である。)
中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記化学式(3)で表される繰り返し単位及び下記化学式(5)で表される繰り返し単位の共重合体であるt−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(3)で表される繰り返し単位及び下記化学式(5)で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
又、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(6)で表される繰り返し単位及び下記化学式(7)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
(化学式(6)中、R4は、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、化学式(7)中、R5は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、又はフェニル基である。)
シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)及び特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用することができる。
中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記化学式(8)で表される繰り返し単位及び下記化学式(9)で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記化学式(8)で表される繰り返し単位及び下記化学式(9)で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、及び籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
又、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート等のアルコキシチタン;(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、及びプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のキレートチタン;(iii)i−C3H7O−[−Ti(O−i−C3H7)2−O−]n−i−C3H7、及びn−C4H9O−[−Ti(O−n−C4H9)2−O−]n−n−C4H9等のチタンポリマー;(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、及び(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等のアシレートチタン;(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン等の水溶性チタン化合物等が挙げられる。
中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC4H9)2[OC2H4N(C2H4OH)2]2)が好ましい。
上述した分離層14は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層14はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、及び第一支持体13の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、及び化合物の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
(赤外線吸収物質)
分離層14は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層14は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、第一支持体13を持ち上げる等)ことによって、分離層14が破壊されて、第一支持体13と基板11とを分離し易くすることができる。
赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、又はアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層14に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層14に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
〔第一貼付工程〕
続いて、第一貼付工程の詳細について説明する。まず、一実施形態において、第一貼付工程では、第一接着剤層12が形成された基板11と、分離層14が形成された第一支持体13とを貼り合わせる。但し、本発明はこれに限定されず、第一接着剤層12を第一支持体13側に設けてもよい。また、分離層14は形成しなくともよい。
第一貼付工程において、基板11と第一支持体13とを貼り付ける貼付温度は100℃以上、250℃以下であることが好ましい。貼付温度を上記温度範囲内にすることにより、第一接着剤層12を流動させて基板11と第一支持体13とを好適に貼り付けることができる。なお、第一貼付工程にて基板11と第一支持体13とを貼り付ける貼付温度は、後述する第二貼付工程にて基板11と第二支持体23とを貼り付ける貼付温度よりも高いことが好ましい。
以降、基板11、第一接着剤層12、分離層14、及び第一支持体13が、この順になるようにして貼り付けられた積層体を中間積層体50と称することもある。
〔第二接着剤層形成工程〕
一実施形態において、第二接着剤層形成工程では、基板11の回路15などが設けられた面に、接着剤を塗布して第二接着剤層22を形成する。接着剤の塗布方法は、第一接着剤層12における接着剤の塗布方法と同様に行うことができる。
ここで、第二接着剤層22の厚さは、貼り合わせの対象となる基板11および第二支持体23の種類、接着後に施される基板11に施される処理等に応じて適宜設定することが可能である。第二接着剤層22の厚さは、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、30μm以上、150μm以下であることがより好ましい。
第二接着剤層22を構成する接着剤としては、第一接着剤層12を構成する接着剤と同じ接着剤を用いてもよく、異なる接着剤を用いてもよい。
〔第一溶剤吐出工程〕
第一溶剤吐出工程では、基板11上における第二接着剤層22の外周部に溶剤を吐出し、当該外周部を除去する。
これにより、中間積層体50の基板11上に形成された第二接着剤層22の外周部分を好適に除去することができる。このように、第二接着剤層22の外周部分を予め除去しておくことにより、第二貼付工程において、第二接着剤層22が流動したとしても、積層体から第二接着剤層22が露出することを避けることができる。
なお、第二貼付工程において第二接着剤層22が流動する距離は、第二貼付工程において第一接着剤層12が流動する距離よりも長いことが想定される。そのため、第一溶剤吐出工程では、第二接着剤層22の端部が、第一接着剤層12の端部よりも内側になるように、第二接着剤層22の外周部を除去することが好ましい。
第一溶剤吐出工程において吐出する溶剤を当てる位置は、第二接着剤層22の膜厚などにより、適宜調整することができる。このため、特に限定されるものではないが、図2の(a)に示す通り、第一溶剤吐出工程において吐出する溶剤を当てる位置を、第一支持体13の平面部の端部から内側に向かう幅aで示すと、幅aは、一例として、0.1mm以上、5.0mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上、3.0mm以下であることが特に好ましい。幅aが0.1mm以上、5.0mm以下であれば、第二接着剤層22の外周部を好適に除去することができる。これによって、後の第二貼付工程において基板11と第二支持体23とを第二接着剤層22を介して貼り付けるときに、第二接着剤層22が第一接着剤層12および第一支持体13に接着することをより好適に抑制することができる。
第一溶剤吐出工程に用いる溶剤は、接着剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、上述した希釈溶剤として使用される溶剤を用いることができ、特に、直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、モノテルペン類、ジテルペン類等の環状の炭化水素(テルペン類)を好適に使用することができる。
また、第一溶剤吐出工程において、溶剤を吐出する方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されないが、例えば、第二接着剤層22の外周部分に対して溶剤をスプレーしてもよいし、ディスペンスノズルを用いて吐出してもよい。また、第一溶剤吐出工程では、基板11を回転させながら、基板11上における外周部分に形成された第二接着剤層22を除去してもよい。
また、第一溶剤吐出工程では、使用する第二接着剤層の種類、および溶剤の種類に応じて、溶剤の供給量および吐出時間を適宜調整すればよい。
〔第二溶剤吐出工程〕
第二溶剤吐出工程では、第一支持体13上における第一接着剤層12の外周部に溶剤を供給する。これにより、図2の(b)に示すように、第一支持体13上における第一接着剤層12の外周部を、基板11よりも内周側の位置まで除去することができる。
第一支持体13上における第一接着剤層12の外周部を、基板11よりも内周側の位置まで除去した場合、第二貼付工程において、流動した第一接着剤層12が基板11と第一支持体13との間から過剰にはみ出ることを抑制することできる。これにより、はみ出した第一接着剤層12が第一支持体13と基板11とを強固に接着することを防ぎ、第一支持体13を積層体100から好適に分離することができる。
第二溶剤吐出工程では、第一支持体上における上記基板の端部が重なる位置に向けて溶剤を吐出することが好ましい。このような位置に向けて溶剤を吐出することにより、一部は、基板11を回り込んで第一接着剤層12に到達し、一部は、直接第一接着剤層12に到達する。これにより、第一接着剤層12の外周を好適に除去することができる。特に、第一支持体13上における第一接着剤層12の端部が、基板11よりも内周側に0mm以上、0.5mm以下、好ましくは0.1mm以上、0.5mm以下の位置になるように、第一接着剤層12の外周を除去することが好ましい。
例えば、第二溶剤吐出工程において、上記溶剤を吐出する位置は、第一支持体13における第一接着剤層12が形成される面の端部から0.3mm以上、1.5mm以下の範囲であることが好ましく、0.3mm以上、1.0mm以下の範囲であることがより好ましい。ここで、図2の(b)に示す通り、第二溶剤吐出工程において溶剤を吐出する位置の基準は、第一支持体13の平面部の端部から内側に向かう幅bで表すことができる。つまり、幅bが、0.3mm以上、1.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上も1.0mm以下であることがより好ましい。
また、第二溶剤吐出工程において、上記溶剤を吐出する角度は、第一支持体13上における第一接着剤層12の外周部に溶剤を供給するような角度を適宜選定すればよい。
第二溶剤吐出工程は、第一溶剤吐出工程と同じく、第二接着剤層形成工程の後、第二貼付工程の前に行われる。第一溶剤吐出工程および第二溶剤吐出工程の実施順序は特に限定されず、第一溶剤吐出工程を先に行ってもよし、第二溶剤吐出工程を先に行ってもよいし、第一溶剤吐出工程および第二溶剤吐出工程を並行して行ってもよい。また、第一溶剤吐出工程においてノズルを介して溶剤を吐出し、ノズルを移動させてから、第二溶剤吐出工程において同じノズルを介して溶剤を吐出するようにしてもよい。
第二溶剤吐出工程において用いる溶剤は、接着剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、上述した希釈溶剤として使用される溶剤を用いることができ、特に、直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、モノテルペン類、ジテルペン類等の環状の炭化水素(テルペン類)を好適に使用することができる。
また、第二溶剤吐出工程において、溶剤を吐出する方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されないが、例えば、第一接着剤層12の外周部分に対して溶剤をスプレーしてもよいし、ディスペンスノズルを用いて吐出してもよい。また、第一溶剤吐出工程では、基板11を回転させながら、基板11上における外周部分に形成された第一接着剤層12を除去してもよい。
また、第二溶剤吐出工程では、使用する第一接着剤層の種類、および溶剤の種類に応じて、溶剤の供給量および吐出時間を適宜調整すればよい。
〔第二貼付工程〕
第二貼付工程では、第二接着剤層22を介して第二支持体23と中間積層体50における基板11とを貼り付ける。
第二貼付工程では、加熱された一対のプレート部材によって、中間積層体50の基板11に形成された第二接着剤層22と第二支持体23とが向き合うように重ね、これらを挟み込むようにして貼り合わせてもよい。これによって、積層体100を形成することができる。なお、第二貼付工程では、基板11と第二支持体23とを貼り付ける貼付温度、貼付圧力、及び貼付時間は、第二接着剤層22の種類に応じて適宜調整すればよい。
〔第二支持体23〕
第二支持体23は、例えば、基板11の搬送、フリップチップ実装等のプロセス時に、基板11の破損または変形を防止するために必要な強度を有しており、分離層14を変質させるための光を透過するものであればよい。以上の観点から、第二支持体23としては、第一支持体13と同様に、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。
〔分離層24〕
分離層24は、光の照射によって変質する層であり、第二支持体23における、第二接着剤層22を介して基板11が貼り合わされる側の表面に設けられる。これにより、第二支持体23を介して光を分離層に照射することで、容易に基板11と第二支持体23とを容易に分離することができる。
分離層24の厚さ、材料、製造方法等は、分離層14について説明したものと同様のものを用いることができる。なお、分離層24を構成する材料としては、分離層14を構成する材料と同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
〔積層体100〕
図3は、以上の工程によって得られた積層体および従来の積層体を説明する図である。ここで、図3の(a)は、本実施形態に係る処理方法が包含している第二貼付工程により形成された積層体100を説明する図であり、図3の(c)は従来の方法で形成される積層体102を説明する図である。
図3の(a)に示す通り、積層体100は、第一溶剤吐出工程によって第二接着剤層22の外周部分が除去されているため、第二接着剤層22が第一接着剤層12および第一支持体13にまで接着していない。また、第二溶剤吐出工程によって第一接着剤層12の外周部分が除去されているため、第一接着剤層が分離層14上からはみ出し、第一支持体13に過剰に付着していない。このため、後の分離工程によって、第一支持体13を積層体100から首尾よく分離することができる。
これに対して、図3の(c)に示す通り、従来の方法で形成される積層体102は、過剰な第二接着剤層22が第一接着剤層12と接着している。また、分離層14上からはみ出した過剰な第一接着剤層12が、第一支持体13に接着している。このため、後の分離工程において、積層体102から第一支持体13を分離することが困難になる場合がある。
(変形例)
上記の通り本発明に係る処理方法が包含している第二溶剤吐出工程では、第一接着剤層12の外周部分を除去するが、第二溶剤吐出工程の実施形態はこれに限定されない。例えば、本発明に係る処理方法の一変形例が包含する第二溶剤吐出工程では、第一支持体13上における第一接着剤層12の外周部に溶剤を供給することにより、図2の(c)に示すように、第一接着剤層12の内部に溶剤を浸入させ、第一接着剤層12の内部を溶解することができる。
また、図3の(b)に示すように、第一接着剤層12の外周部分に溶剤を浸入させることにより、本変形例により形成された積層体101では第一接着剤層12の外周部分に溶剤が浸み込んでいる。これにより、第一接着剤層12の外周部分の接着力を低下させることができる。このため、第一接着剤層12が第一支持体13の外周部分に付着しても、分離工程において第一支持体13を介して分離層14に光を照射することで、基板11から第一支持体13を首尾よく分離することができる。
〔分離工程〕
図4の(a)および(b)は、本実施形態に係る処理方法が包含している分離工程の概略を説明する図である。本実施形態に係る処理方法が包含している分離工程では、第二貼付工程の後、第一支持体(支持体)13と該基板11とを分離する分離工程とを包含している。ここで、上記第一支持体(支持体)13は透光性を有し、第一支持体13における上記基板11が貼り付けられる面には、光の照射によって変質する分離層14が設けられており、上記分離工程では、上記分離層14に光を照射することによって、上記第一支持体13と上記基板11とを分離する。
ここで、図4の(a)に示す通り、積層体100における第一接着剤層12は、第一支持体13上に過剰にはみ出していない。また、第二接着剤層は、第一支持体13にまで流動していない。このため、第一支持体13を介して光を照射することにより、分離層14は変質させれば、基板11と第一支持体13とを首尾よく分離することができる(図4の(b))。このため、第一支持体13を積層体100から分離するときに、基板11と第二支持体23とが分離することを防止することができる。このため、後のフリップチップ実装等の工程において、基板11を第二支持体23によって好適に支持することができる。また、第二支持体23の役目が終われば、分離層24に対して第二支持体23を介して光を照射することにより、第二支持体23を容易に基板11から分離することもできる。
〔他の実施形態〕
本発明に係る処理方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第一支持体13を介して分離層14に光を照射することにより、第一支持体13と基板11と分離する実施形態に代わり、孔あき支持体を第一支持体として用いて、第一接着剤層12に溶剤を供給することで基板11と孔あき支持体を分離する実施形態にすることもできる。
図5の(a)は、本実施形態に係る処理方法が包含している分離工程の概略を説明する図であり、孔あき支持体33を第一支持体として用いた積層体103の概略を説明する図である。ここで、積層体103は、孔あき支持体33に設けられた複数の貫通孔から第一接着剤層12に溶剤を供給することができるようになっている。孔あき支持体33の貫通孔から溶剤を供給することで、積層体103における第一接着剤層12の外周部分より内側の部分を溶解することができる。
ここで、積層体103は、本発明に係る処理方法が包含している第二溶剤吐出工程によって、積層体103の第一接着剤層12の外周部分には溶剤が浸み込んでいる。このため、積層体103における第一接着剤層12の外周部分の接着力は低下している。従って、外周部分より内側の部分の第一接着剤層12を孔あき支持体33の貫通孔から供給する溶剤によって溶解すれば、基板11と孔あき支持体33とを好適に分離することができる(図5の(b))。
また、さらに他の実施形態に係る処理方法においては、第二支持体23に代わり、孔あき支持体を用い、第二接着剤層22を孔あき支持体の貫通孔から供給する溶剤で溶解することによって分離工程を行なってもよい。
また、さらに他の実施形態に係る処理方法においては、第二支持体23に、第一支持体13と同様に分離層を形成してもよい。つまり、基板11と第二支持体23とが、分離層と第二接着剤層22を介して積層されるように積層体を形成してもよい。本実施形態では、基板11にフリップチップ実装等の工程を行った後に、第二支持体23を介して光を照射することによって、当該分離層を変質させることができる。従って、フリップチップ実装後の基板11に大きな力を加えることなく、基板11から第二支持体23を分離することができる。
また、さらに他の実施形態においては、第一接着剤層塗布工程は、基板11に接着剤を塗布するのではなく、分離層14を形成した第一支持体13の該分離層14を形成した側の面に接着剤を塗布することによって第一接着剤層を形成してもよい。また、第二接着剤層塗布工程は、中間積層体50における基板11に接着剤を塗布するのではなく、第二支持体に接着剤を塗布することによって第二接着剤層を形成してもよい。
また、さらに他の実施形態においては、第二貼付工程の後、積層体100の外周部分における第一接着剤層12および第二接着剤層22に対して、さらに溶剤を吐出する工程を包含してもよい。
〔実施例1〕
(第一および第二接着剤層の形成)
半導体ウエハ基板(12インチ、シリコン)にTZNR(登録商標)−A3007T(東京応化工業株式会社製)を膜厚50μmでスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークし、第一接着剤層を形成した。その後、第一接着剤層を形成した半導体ウエハ基板を1,500rpmで回転させつつ、EBRノズルによって、TZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)を10cc/minの供給量で5〜15分間、供給することによって、半導体ウエハ基板の外周部分に形成された第一接着剤層の外周部分を、ウエハ基板の端部を基準にして内側に向かって1.3mmまで第一接着剤層を除去した。
次いで、第一支持体として、ベアガラス支持体(12インチ、厚さ700μm)を用い、フルオロカーボンを用いたプラズマCVD法により第一支持体の上に分離層を形成した。第一分離層形成工程の条件としては、流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500Wおよび成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC4F8を使用したCVD法を行うことによって、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ1μm)を第一支持体上に形成した。
次に、第一支持体、分離層、第一接着剤層、およびウエハ基板がこの順になるように重ね合わせ、真空下、215℃で、180秒間予熱し、その後、2000kgfの貼付圧力で360秒間押圧することで第一支持体とウエハ基板とを貼り付けた(第一貼付工程)。これにより、中間積層体を作製した。
次に、得られた中間積層体のウエハ基板の裏面をDISCO社製バックグラインド装置にて薄化(50μm)処理を行なった。また、ウエハ基板の薄化処理した面にTZNR(登録商標)−A4012(東京応化工業株式会社製)を膜厚120μmとなるようにスピン塗布し、90℃、160℃で10分間、さらに220℃で5分間ベークした(第二接着剤層形成工程)。
上記工程によって得られた中間積層体に対して、第一溶剤吐出工程を行ない、当該工程によって第一接着剤層が除去された幅の評価を行なった。なお、第一溶剤吐出工程における溶剤の吐出位置の基準は、第一支持体13の外周における平面部分の端部である。(図2の(a)参照)。
中間積層体を1,500rpmで回転させつつ、ベアガラス支持体(第一支持体)の外周における平面部分の端部から中間積層体50の内側に向かって2.5mmの位置に、EBRノズルによって、10cc/minの供給量で5分間、TZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)を吐出した。これにより、第二接着剤層の外周部分の除去を行った。
その後、第一溶剤吐出工程により第一接着剤層が除去された部分の幅を測定した。第一接着剤層が除去された部分の幅の測定は、積層体を平面視した場合において、積層体の外周部分における上部、下部、右側、および左側の4点において測定した。なお、下部は、積層体におけるノッチ部分に該当する。
接着剤層が除去された部分の幅を測定する基準は、ウエハ基板の外周部分の端部を基準とし、そこから中間積層体の内側に向かうときの幅をマイナスの値で評価し、積層体の外側に向かうときの幅をプラスの値で評価した。
結果として、第一溶剤吐出工程においては、第一接着剤層へのかすかな溶剤の浸み込みが認められるものの、測定値は、3箇所において0μmとなり、第一接着剤層は基板の端部からはみ出すことなく、ウエハ基板の外周部の端部に沿うようにきれいに除去されていた。
上記評価を行なった中間積層体に対して、第二溶剤吐出工程を行ない、当該工程によって第一接着剤層が除去された幅の評価を行なった。なお、第二溶剤吐出工程における溶剤の吐出位置の基準は、第一支持体13の外周における平面部分の端部を基準とした(図2の(b)参照)。
中間積層体を1,500rpmで回転させつつ、第一支持体の外周における平面部分の端部から中間積層体の内側に向かって1.0mmの位置に、EBRノズルによって、10cc/minの供給量で2分間、TZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)を吐出した。これにより、第一接着剤層の外周部分の除去を行った(第二溶剤吐出工程)。この状態において、第一接着剤層が除去された部分の評価を行なった。
結果として、第二溶剤吐出工程によって、中間積層体の外周部分における上部、下部、右側、および左側の4点において、第一接着剤層は、ウエハ基板の外周部分の端部から内側に向かって除去されていることが確認できた。
第二支持体として、ベアガラス支持体(12インチサイズ、厚さ700μm)を用い、該第一支持体の上に分離層を形成した(第二分離層形成工程)。第二分離層形成工程は、第一分離層形成工程と同じ方法により行った。
次に、中間積層体、分離層および第二支持体がこの順になるように重ね合わせ、真空下、180℃で180秒間予熱し、1500kgfの貼付圧力で600秒間押圧することで第二支持体と中間積層体とを貼り付けた(第二貼付工程)。
(接着剤層の流動した幅の評価)
第二貼付工程を行なった後、積層体における第一接着剤層の流動した幅について評価を行なった。
第一および第二接着剤層の流動した幅を測定した部分は、ウエハ基板の外周部分の端部である。また、第一接着剤層が移動した幅の基準も、ウエハ基板の外周部分の端部とし、そこから積層体の外側に向かって流動したときの距離をプラスの値で評価した。
結果として、第一接着剤層は、第二貼付工程において押圧されることによってウエハ基板の端部から、76.3〜280.4μmの幅にわたり流動していた。従って、第一接着剤層は、第二溶剤吐出工程により第一接着剤層が除去された部分の幅と合計すると、第二貼付工程において押圧されることで174、7〜453.9μmの幅にわたり流動していたことになる。ここで、第一および第二接着剤層の積層体からはみ出しは認められず、これら接着剤層は第一支持体および第二支持体の外周部分の端部から内側に留まっていた。
〔実施例2〜4〕
第一接着剤層の種類が異なる中間積層体を作製し、第一溶剤吐出工程および第二溶剤吐出工程を行ない、積層体の外周部分における各第一接着剤層の状態を評価した。評価に用いた第一の接着剤は、以下の通りである。
実施例2:TZNR(登録商標)−A3007T(東京応化工業株式会社製)
実施例3:TZNR(登録商標)−A4005(東京応化工業株式会社製)
実施例4:TZNR(登録商標)−A4012(東京応化工業株式会社製)
(第一および第二接着剤層の形成)
まず、実施例2〜4の接着剤をそれぞれ別個に、半導体ウエハ基板(12インチ、シリコン)に膜厚50μmとなるようにスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークし、第一接着剤層を形成した(第一接着剤層形成工程)。
次いで、第一支持体として、ベアガラス支持体(12インチ、厚さ700μm)を用い、該第一支持体の上に分離層を形成した(第一分離層形成工程)。第一分離層形成工程の条件としては、流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500Wおよび成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC4F8を使用したCVD法を行うことによって、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ1μm)を第一支持体上に形成した。
次に、実施例2〜4の接着剤層を形成したウエハ基板のそれぞれを別個に、第一支持体、分離層、第一接着剤層、およびウエハ基板がこの順になるように重ね合わせ、真空下、215℃、2000kgfの貼付圧力で、180秒間、押圧することで第一支持体とウエハ基板とを貼り付けた(第一貼付工程)。これにより、実施例2〜4の中間積層体を作製した。
次に、ウエハ基板の裏面をDISCO社製バックグラインド装置にて薄化(50μm)処理を形成した(薄化工程)。また、実施例2〜4の中間積層体において、ウエハ基板の薄化処理した面にTZNR(登録商標)−A4012(東京応化工業株式会社製、粘度10000cP)を膜厚120μmとなるようにスピン塗布した。その後、実施例2〜4の中間積層体をピンアップした状態で90℃/5分間、ピンダウンした状態で90℃/5分間、160℃/10分間、および220℃/5分間の条件でベークした。
(第一および第二溶剤吐出工程)
実施例2〜4の中間積層体を1,500rpmで回転させつつ、第一支持体の外周における平面部分の端部から内側に向かって2.5mmの位置に、EBRノズルによって、10cc/minの供給量で4分間、TZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)を吐出した(第一溶剤吐出工程)。次に、ウエハ基板の外周部分の端部から内側に向かって0.8mmの位置に、EBRノズルによって、10cc/minの供給量で2分間、TZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)を吐出した。これにより、第一接着剤層および第二接着剤層の外周部分の除去を行った(第二溶剤吐出工程)。
(中間積層体における端部の状態の評価)
上記の通り、第一および第二溶剤吐出工程を行なった実施例2〜4の中間積層体の外周部分の第一接着剤層の状態の評価を行なった。結果としては、実施例2〜4のいずれの中間積層体においても、外観上では第一接着剤層の外周部分は溶解されておらず、残留する結果となった。また、実施例2では、予備加熱によって中間積層体の外周部分における第一接着剤層に気泡の発生が認められた。
(積層体における端部の状態の評価)
実施例2〜4の中間積層体について、第二支持体を貼り付け、積層体を作製し、積層体の外周部分における第一および第二接着剤層の状態を評価した。
実施例2〜4について、第一支持体、分離層、第一接着剤層、ウエハ基板、第二接着剤層、分離層、および第二支持体がこの順になるように重ね合わせ、真空下、215℃で3分間予備加熱し、1500kgfの貼付圧力で、6分間、押圧することで第二支持体とウエハ基板とを貼り付けた(第二貼付工程)。
実施例2〜4の積層体の外周部分の第一および第二接着剤層を評価したところ、実施例2〜4のいずれにおいても、第一接着剤層および第二接着剤層の接触は認められなかった。また、実施例2〜4のいずれの積層体においても、第一接着剤層の内部へHCシンナーが浸み込み、内部が溶解していることが認められた。
〔分離性の評価〕
上記実施例1〜4の積層体について、第一支持体を介して分離層に光を照射する分離工程を行った。分離工程の条件としては、各実施例の積層体に、それぞれ第一支持体側から、レーザ光の波長を532nm、レーザ光の直径を180μmとして、レーザパルスにおける被照射領域同士の中心間距離を180μm、走査速度を7200mm/sとして、繰り返し周波数40kHzでレーザ光照射を行った(分離工程)。その後、各積層体について、第一支持体の積層体からの分離性を評価した。
実施例1〜4のいずれの積層体においても、大きな力を加える必要なく、積層体の自重によって第一支持体を分離することができた。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。