<積層体の製造方法(第1の実施形態)>
図1を用いて、一実施形態(第1の実施形態)に係る積層体10の製造方法をより詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る積層体10の製造方法について説明する模式図である。
本実施形態に係る積層体の製造方法は、基板1aに、モールド材を塗布して基板1aに設けられた素子dを封止するモールド材層1bを形成するモールド材層形成工程と(図1の(a)及び(b))、封止基板(基板)1上に光を吸収することによって変質する分離層2を形成する分離層形成工程(図1の(c))と、サポートプレート(支持体)3上に接着層5を形成する接着層形成工程(図1の(d)及び(e))と、封止基板1、分離層2、接着層5、及びサポートプレート3をこの順なるように積層する積層工程と、積層工程の後、接着層5を硬化させる硬化工程と、を包含している(図1の(f))。
〔モールド材層形成工程〕
図1の(a)に示すように、モールド材層形成工程では、基板1aに設けられた素子dをモールド材によって封止する。
基板1aは、典型的には、Siインターポーザー等であり、表面に素子dが形成されている。
モールド材層1bは、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、及び酸無水物を含む樹脂等を含んでいるモールド材によって形成され得る。
基板1aにモールド材層1bを塗布するための方法としては、限定されるものではないが、所定の形状のキャビティーを備えた金型を用いて形成する方法が挙げられる。金型のキャビティーにより、基板1aにおける素子dが設けられた側の面を覆い、キャビティーと基板1aとによって構成される空間内にモールド材を充填することでモールド材層1bを形成する。その後、金型を取り外し、基板1a上に形成されたモールド材層1bを研削することでモールド材層1bを成形する(図1の(b))。また、モールド材層1bが設けられた封止基板1は、後の分離形成工程の前に、予め、加熱することによってモールド材層1bが含んでいる水分を除去しておくことがより好ましい。
〔分離層形成工程〕
図1の(c)に示すように、分離層形成工程では、封止基板1のモールド材層1bが形成された側の面に、光を吸収することによって変質する分離層2を形成する。
これによって、図1の(c)に示すように、モールド材層1bを分離層2によって覆うことができる。このため、後の工程において、モールド材層1bが形成された封止基板1に、硬化型接着剤によって形成される接着層5が直接積層されることを防止ることができる。
〔分離層2〕
分離層2は、サポートプレート3、剥離層4及び接着層5を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。
分離層2の厚さは、例えば、0.05μm以上、50μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.3μm以上、1μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。分離層2の厚さが0.05μm以上、50μm以下の範囲に収まっていれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層2に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層2の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲に収まっていることが特に好ましい。
また、分離層2は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して分離層2を形成してもよい。また、分離層2における接着層5に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層2の形成が容易に行なえ、且つ貼り付けにおいても均一に貼り付けることが可能となる。
(フルオロカーボン)
分離層2は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層2は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート3を持ち上げる等)ことによって、分離層2が破壊されて、サポートプレート3と封止基板1とを分離し易くすることができる。分離層2を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって好適に成膜することができる。
フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層2に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層2における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
分離層2に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
(光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体)
分離層2は、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。該重合体は、光の照射を受けて変質する。該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層2は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート3を持ち上げる等)ことによって、分離層2が破壊されて、サポートプレート3と封止基板1とを分離し易くすることができる。
光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰り返し単位として該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。該構造は、例えば、置換若しくは非置換のベンゼン環、縮合環又は複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、該構造は、カルド構造、又は上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造若しくはジフェニルアミン構造であり得る。
上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、該構造は以下の式によって表され得る。
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基又はN(R1)(R2)であり(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、又は−CO−、−SO2−、−SO−若しくは−NH−であり、nは0又は1〜5の整数である。)
また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)の何れかによって表される繰り返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、又は(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
(式中、lは1以上の整数であり、mは0又は1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の“化1”に示した式のいずれかであり、(f)において上記の“化1”に示した式のいずれかであるか、又は存在せず、Y1及びY2はそれぞれ独立して、−CO−又はSO2−である。lは好ましくは10以下の整数である。)
上記の“化1”に示されるベンゼン環、縮合環及び複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオリム、置換フルオリム、フルオリモン、置換フルオリモン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナントレン、置換フェナントレン、ピレン及び置換ピレンが挙げられる。例示した置換基がさらに置換基を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノ及びアリールアミノから選択される。
上記の“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO2−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、及びビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
上記の“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。
上記の“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、及び4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰り返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層2の光の透過率が0.001%以上、10%以下になる範囲内にある。該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層2が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体10からのサポートプレート3の除去が容易であり、該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100nm以上、2,000nm以下の範囲内であることがより好ましい。この範囲内のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100nm以上、500nm以下の範囲内である。例えば、上記構造は、好ましくはおよそ300nm以上、370nm以下の範囲内の波長を有している紫外光を吸収することによって、該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm以上、436nm以下)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(波長:308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)若しくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、又はg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)若しくはi線(波長:365nm)等である。
上述した分離層2は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層2はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、及びサポートプレート3の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、及び重合体の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
(無機物)
分離層2は、無機物からなっていてもよい。分離層2は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート3を持ち上げる等)ことによって、分離層2が破壊されて、サポートプレート3と封止基板1とを分離し易くすることができる。
上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物及びカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO2、SiN、Si3N4、TiN、及びカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層2に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
無機物からなる分離層2に照射する光としては、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
無機物からなる分離層2は、例えば、スパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術により、サポートプレート3上に形成され得る。無機物からなる分離層2の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05μm以上、10μm以下の範囲内の膜厚とすることがより好ましい。また、分離層2を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面又は片面に予め接着剤を塗布し、サポートプレート3及び封止基板1に貼り付けてもよい。
なお、分離層2として金属膜を使用する場合には、分離層2の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層2の上下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
(赤外線吸収性の構造を有する化合物)
分離層2は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層2は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体を持ち上げる等)ことによって、分離層2が破壊されて、サポートプレート3と封止基板1とを分離し易くすることができる。
赤外線吸収性を有している構造、又は赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコール及びフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタン及びチオフェノール及びチオール酸等の硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A1結合(A1は、H、C、O又はハロゲン)、P−A2結合(A2は、H、C又はO)、又はTi−O結合であり得る。
上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2I、−CF2−、−CF3、−CH=CF2、−CF=CF2、フッ化アリール、及び塩化アリール等が挙げられる。
上記Si−A1結合を含む構造としては、SiH、SiH2、SiH3、Si−CH3、Si−CH2−、Si−C6H5、SiO−脂肪族、Si−OCH3、Si−OCH2CH3、Si−OC6H5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF2、及びSiF3等が挙げられる。Si−A1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格及びシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
上記P−A2結合を含む構造としては、PH、PH2、P−CH3、P−CH2−、P−C6H5、A3 3−P−O(A3は脂肪族又は芳香族)、(A4O)3−P−O(A4はアルキル)、P−OCH3、P−OCH2CH3、P−OC6H5、P−O−P、P−OH、及びO=P−OH等が挙げられる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm以上、20μm以下の範囲内であり、2μm以上、15μm以下の範囲内をより好適に吸収することができる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合及びTi−O結合である場合には、9μm以上、11μm以下の範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
分離層2の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解させることができ、固化されて固層を形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層2における化合物を効果的に変質させ、サポートプレート3と封止基板1との分離を容易にするには、分離層2における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層2に赤外線を照射したときの赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層2における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記化学式(1)で表される繰り返し単位及びアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
(化学式(2)中、R3は、水素、炭素数10以下のアルキル基、又は炭素数10以下のアルコキシ基である。)
中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(3)で表される繰り返し単位の共重合体であるt−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(3)で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(4)で表される繰り返し単位及び下記化学式(5)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
(化学式(4)中、R4は、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、化学式(5)中、R5は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、又はフェニル基である。)
シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)、及び特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用することができる。
中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記化学式(6)で表される繰り返し単位、及び下記化学式(7)で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記化学式(6)で表される繰り返し単位及び下記化学式(7)で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、及び籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
また、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート等のアルコキシチタン;(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、及びプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のキレートチタン;(iii)i−C3H7O−[−Ti(O−i−C3H7)2−O−]n−i−C3H7、及びn−C4H9O−[−Ti(O−n−C4H9)2−O−]n−n−C4H9等のチタンポリマー;(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、及び(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等のアシレートチタン;(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン等の水溶性チタン化合物等が挙げられる。
中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC4H9)2[OC2H4N(C2H4OH)2]2)が好ましい。
上述した分離層2は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層2はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、及びサポートプレート3の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、及び化合物の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
(赤外線吸収物質)
分離層2は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層2は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート3を持ち上げる等)ことによって、分離層2が破壊されて、サポートプレート3と封止基板1とを分離し易くすることができる。
赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、又はアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層2に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層2に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
〔接着層形成工程〕
図1の(e)に示すように、接着層形成工程では、光を透過することができる反応型接着剤を、サポートプレート3上に塗布することによって接着層5を形成する。本実施形態に係る積層体10の製造方法では、接着層5を形成するための反応型接着剤として、熱硬化型接着剤を用いる。
〔サポートプレート3〕
図1の(d)に示す、サポートプレート(支持体)3は、封止基板1を支持する支持部材であり、封止基板1の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、封止基板1の破損又は変形を防止するために必要な強度を有していればよい。以上の観点から、サポートプレート、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。
接着層5を形成するための熱硬化型接着剤の塗布方法としては、熱可塑性樹脂の塗布方法としては、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法を挙げることができる。また、接着層5は、例えば、熱硬化型接着剤を直接、サポートプレート3上に塗布する代わりに、熱硬化型接着剤が両面に予め塗布されているフィルム(いわゆる、ドライフィルム)を、サポートプレート3に貼付することで形成してもよい。
接着層5の厚さは、貼り付けの対象となる封止基板1及びサポートプレート3の種類、貼り付け後の封止基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、10〜150μmの範囲内であることが好ましく、15〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
〔接着層5〕
接着層5は、封止基板(基板)1と、サポートプレート(支持体)3とを接着するための層であり、光を透過する熱硬化型接着剤によって形成される層である。
(熱硬化型接着剤)
本実施形態に係る積層体10の製造法方法では、接着層5を形成するために、シクロオレフィン系ポリマーと、当該ポリマーに相溶する(メタ)アクリレートモノマーとを含んでいる熱硬化型接着剤を用いる。シクロオレフィン系ポリマーと(メタ)アクリレートモノマーとによって形成された接着層は加熱することで重合反応させることができ、重合反応後において分離層2を変質させることができる光を透過させることができる。
本実施形態に係る積層体10の製造方法に用いる接着層5を形成するための熱硬化型接着剤は、シクロオレフィン系ポリマー、及び(メタ)アクリレートモノマーを含んでいる。
熱硬化型接着剤をサポートプレート3上に塗布して接着層5を形成した後に、当該接着層を加熱する。これにより、接着層5を形成している(メタ)アクリレートモノマーを重合反応させ、隣接する部材との相互作用により接着層5の密着性を向上させる。結果として、積層体10における接着層5のヒートサイクル特性を向上させることができ、例えば、積層体10が温度変化によって歪むことを好適に防止することができる。
(シクロオレフィン系ポリマー)
熱硬化型接着剤は、シクロオレフィン系ポリマーを含んでいる。シクロオレフィン系ポリマーは透過率等に優れているため、分離層2を変質させるための光を好適に透過させることができる。
シクロオレフィン系ポリマー(シクロオレフィン構造を有するポリマー)としては、具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ヒドロキシジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーがより好ましい。
シクロオレフィン系ポリマーは、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、炭素数2〜10のアルケンモノマーが挙げられ、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
また、シクロオレフィン系ポリマーは、シクロオレフィン系モノマーを含有するため、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)を有している。シクロオレフィン系ポリマーを構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィン系モノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、シクロオレフィン系ポリマーを構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィン系モノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
また、シクロオレフィン系ポリマーの単量体成分として、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有していてもよい。シクロオレフィン系ポリマーを構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
なお、シクロオレフィン系ポリマーは、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
シクロオレフィン系ポリマーの重量平均分子量は、50,000以上、150,000以下の範囲であることが好ましく、80,000以上、120,000以下の範囲であることがより好ましい。シクロオレフィン系ポリマーの重量平均分子量が50,000以上、120,000以下であることにより、当該ポリマーの軟化温度をガラスとの貼り合わせに適した温度にすることができる。
また、シクロオレフィン系ポリマーのガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。シクロオレフィン系ポリマーのガラス転移点が60℃以上であると、高温環境に曝されたときに接着層の軟化を抑制することができる。
シクロオレフィン系ポリマーとして用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
また、例えば、下記化学式(8)で表される繰り返し単位及び下記化学式(9)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着剤成分として用いることができる。
(化学式(9)中、nは0又は1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、及びAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)等を使用することができる。
((メタ)アクリレートモノマー)
また、熱硬化型接着剤は、(メタ)アクリレートモノマーを含んでいる。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能の(メタ)アクリレートモノマー又は多官能の(メタ)アクリレートモノマー等が好ましい。つまり、上記(メタ)アクリレートモノマーは、単官能の(メタ)アクリレートモノマー及び多官能の(メタ)アクリレートモノマーから選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。熱硬化型接着剤を剥離層又は支持体等に塗布した後、加熱することによって、(メタ)アクリレートモノマーの重合が起こり、当該基板と(メタ)アクリレート重合体との相互作用により密着性が向上する。
上記単官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら単官能の(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記多官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(即ち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、等が挙げられる。これら多官能の(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(メタ)アクリレートモノマーの中でも、特に環式基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及びプロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
熱硬化型接着剤は、シクロオレフィン系ポリマー100重量部に対して、(メタ)アクリレートモノマーを、1重量部以上、30重量部以下の範囲で含むことが好ましく、5重量部以上、15重量部以下の範囲で含むことがより好ましい。シクロオレフィン系ポリマー100重量部に対して、(メタ)アクリレートモノマーが1重量部以上であることにより、シリコン等の基板との密着性を高めることができる。シクロオレフィン系ポリマー100重量部に対して、(メタ)アクリレートモノマーが30重量部以下であることにより、過剰なモノマーが接着界面に染み出すことによる密着性の低下を防ぐことができる。
(低分子のシクロオレフィン系ポリマー)
熱硬化型接着剤は、低分子のシクロオレフィン系ポリマーをさらに含んでいてもよい。低分子のシクロオレフィン系ポリマーを含むことにより、熱硬化型接着剤を熱可塑させるための温度を下げることができ、より低温にて基板と支持体との貼り合せを行なうことができる。
低分子のシクロオレフィン系ポリマーの重量平均分子量は、5,000以上、20,000以下の範囲であることが好ましい。
さらに、熱硬化型接着剤は、シクロオレフィン系ポリマー100重量部に対して、低分子のシクロオレフィン系ポリマーを10重量部以上、30重量部以下の範囲でさらに含むことが好ましい。
(熱重合開始剤)
熱硬化型接着剤は、(メタ)アクリレートモノマーの重合反応を促進させる熱重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
熱重合開始剤は、(メタ)アクリレートモノマーの重合反応を促進させることができればよく、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化物、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。これら熱重合開始剤は、加熱されることによりラジカルを発生させて(メタ)アクリレートモノマーの重合反応を促進させる。
過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル等が挙げられる。具体的には、過酸化アセチル、過酸化ジクミル、過酸化tert−ブチル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化2−クロロベンゾイル、過酸化3−クロロベンゾイル、過酸化4−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化4−ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過4−メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等が挙げられる。市販されている過酸化物としては、例えば、日本油脂株式会社製の商品名「パークミル(登録商標)」、商品名「パーブチル(登録商標)」等が挙げられる。
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等が挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対する熱重合開始剤の割合は、0.5重量部以上、5重量部以下であることが好ましく、1重量部以上、3重量部以下であることがより好ましい。
(主溶剤)
熱硬化型接着剤に含まれる主溶剤は、シクロオレフィン系ポリマー及び当該ポリマーに相溶する(メタ)アクリレートモノマーを溶解する機能を有するものであればよく、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等を用いることができる。
好ましくは、主溶剤は、縮合多環式炭化水素を含み得る。溶剤が縮合多環式炭化水素を含むことによって、熱硬化型接着剤を液状形態で(特に低温にて)保存したときに生じ得る白濁化を避けることができ、製品安定性を向上させることができる。
炭化水素系溶剤としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素が挙げられる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素;p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン等の飽和脂肪族炭化水素、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、α−ピネン、β−ピネン、α−ツジョン、β−ツジョン等が挙げられる。
また、石油系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
また、縮合多環式炭化水素とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給してできる縮合環の炭化水素であり、2つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
そのような炭化水素としては、5員環及び6員環の組み合わせ、又は2つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環及び6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられ、2つの6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)及びデカヒドロナフタレン(デカリン)等が挙げられる。
また、主溶剤が上記縮合多環式炭化水素を含む場合、主溶剤に含まれる成分は上記縮合多環式炭化水素のみであってもよいし、例えば、飽和脂肪族炭化水素等の他の成分を含有していてもよい。この場合、縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量部以上である場合には、上記樹脂に対する高い溶解性を発揮することができる。縮合多環式炭化水素と飽和脂肪族炭化水素との混合比が上記範囲内であれば、縮合多環式炭化水素の臭気を緩和させることができる。
なお、熱硬化型接着剤における主溶剤の含有量としては、当該熱硬化型接着剤を用いて成膜する接着層の厚さに応じて適宜調整すればよいが、例えば、熱硬化型接着剤の全量を100重量部としたとき、20重量部以上、90重量部以下の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であれば、粘度調整が容易となる。
(熱重合禁止剤)
熱硬化型接着剤は、熱重合禁止剤を含有していてもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有する。具体的には、熱重合禁止剤はラジカルに対して高い反応性を示すため、モノマーよりも優先的に反応してモノマーの重合を禁止する。そのような熱重合禁止剤を含む熱硬化型接着剤は、高温環境下(特に、250℃〜350℃)において重合反応が抑制される。
例えば半導体製造工程において、支持体が接着されたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスがある。このとき、高温により熱硬化型接着剤の重合が起こると高温プロセス後にウエハから支持体を剥離する剥離液への溶解性が低下し、ウエハから支持体を良好に剥離することができない。しかし、熱重合禁止剤を含有している本発明の熱硬化型接着剤では、熱による酸化及びそれに伴う重合反応が抑制されるため、高温プロセスを経たとしてもサポートプレートを容易に剥離することができ、残渣の発生を抑えることができる。
熱重合禁止剤としては、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効であれば特に限定されるものではないが、フェノールを有する熱重合禁止剤が好ましい。これにより、大気下での高温処理後にも良好な溶解性を確保することができる。そのような熱重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが可能であり、例えば、ピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert−ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n−ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−[1−〔4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”−エチリデントリス(2−メチルフェノール)、4,4’,4”−エチリデントリスフェノール、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、n−オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010、BASF社製)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。熱重合禁止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱重合禁止剤の含有量は、シクロオレフィン系ポリマーの種類、当該ポリマーに相溶する(メタ)アクリレートモノマーの種類、並びに熱硬化型接着剤の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、シクロオレフィン系ポリマーの量を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、熱硬化型接着剤の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑えることができる。
(添加溶剤)
また、熱硬化型接着剤は、熱重合禁止剤を溶解し、シクロオレフィン系ポリマー及び当該ポリマーに相溶する(メタ)アクリレートモノマーを溶解するための溶剤とは異なる組成からなる添加溶剤を含有する構成であってもよい。添加溶剤としては、特に限定されないが、熱硬化型接着剤に含まれる成分を溶解する溶剤を用いることができる。
添加溶剤としては、例えば、熱硬化型接着剤の各成分を溶解し、均一な溶液にすることができればよく、任意の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
添加溶剤の具体例としては、例えば、後述する〔剥離層4〕の(溶剤)の欄に記載されている溶剤のうち、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール等の、極性基として酸素原子、カルボニル基又はアセトキシ基等を有するテルペン溶剤、ラクトン類、ケトン類、多価アルコール類、エチレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい)、ジオキサンのような環式エーテル類、エステル類、アニソール等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
添加溶剤の含有量は、熱重合禁止剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、シクロオレフィン系ポリマーを溶解する溶剤(主溶剤)と熱重合禁止剤を溶解する溶剤(添加溶剤)との合計を100重量部としたとき、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、1重量部以上、30重量部以下であることがさらに好ましい。添加溶剤の含有量が上記範囲内であれば、熱重合禁止剤を十分に溶解することができる。
(その他の成分)
熱硬化型接着剤には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
〔積層工程〕
図1の(f)に示すように、積層工程では、分離層2が形成された封止基板1と、剥離層4及び接着層5が形成されたサポートプレート3とを、真空条件下において、接着層5を加熱し、半硬化させた状態で重ね合わせる。
熱硬化型接着剤を半硬化させることによって、封止基板1上に形成された分離層2と、接着層5との密着性を向上させることができる。なお、本明細書中において半硬化とは、重合反応の開始後、重合反応の完了前において、熱硬化型接着剤が加熱条件下において流動性を無くさない程度に増粘している状態のことを意味する。
また、接着層5の半硬化では、加熱することによって熱硬化型接着剤が含んでいる溶剤を蒸発させることによって除去する。これにより、接着層を形成している(メタ)アクリレートモノマーを適度に半硬化させることができ、積層体10における接着層5の密着性を向上させることができる。
つぎに、重ね合わせた封止基板1とサポートプレート3とを、積層体を貼り付けるための貼付装置が備えている一対のプレート部材によって挟み込むことで押圧力を加える。これによって、積層体10を形成することができる。なお、積層体10を形成するための条件は、接着層の種類、積層体の大きさによって適宜調整すればよい。
〔硬化工程〕
硬化工程では、図1の(f)に示す、積層体10における接着層5を硬化させる。
本実施形態に係る積層体10の製造方法が包含する硬化工程では、接着層5を加熱することによって、半硬化状態の接着層5を完全に硬化させる。
硬化工程では、150℃以上、250℃以下の範囲内の温度によって、5分間以上、2時間以下の範囲内の時間、接着層5を反応させることが好ましく、200℃以上、220℃以下の範囲内の温度によって、30分以上、1時間以下の範囲内の時間、接着層5を反応させることがより好ましい。これによって、封止基板1における分離層2と接着層5との密着性を高めつつ、十分に接着層5を硬化させることができる。従って、サポートプレート3によって、封止基板1を好適に支持させることができる。
<積層体10(第1の実施形態)>
本実施形態に係る積層体の製造方法によって製造された積層体10も、本発明の範疇である。
図1の(f)に示す、積層体10は、一例として、グラインダ等の研削手段によって、封止基板1が所定の厚さになるように薄化処理が行なわれる。また、封止基板1における基板1aには、様々な素子が実装され得る。積層体10における接着層5は、熱重合によって硬化しているため、分離層2との密着性が高い。このため、モールド材層1bに含まれている水分等に起因して、封止基板1と接着層5との間にボイドが発生することを好適に防止することができ、ボイドに起因して封止基板1と接着層5との間においてデラミネーションが生じることを好適に防止すことができる。このため、積層体10が破損することを好適に防止することができる。また、封止基板1を接着層5によって均一に固定することができるため、精度よく封止基板1を処理することができる。
また、積層体10は、接着層5を熱によって硬化させているため、高いヒートサイクル特性を備えている。従って、積層体10の封止基板1に対して、様々な処理を行なうときの温度の変化により、積層体10に歪が生じることを好適に防止することができ、封止基板1を精度よく処理することができる。
<基板の処理方法(第1の実施形態)>
本実施形態に係る基板の処理方法は、一実施形態(第1の実施形態)に係る積層体の製造方法によって、積層体12を製造する積層体製造工程と、光を照射することで分離層2を変質させ、積層体10からサポートプレート3を分離する分離工程(図2の(a)及び(b))と、積層体10から分離されたサポートプレート3から、接着層5を剥離する剥離工程(図2の(c)及び(d))と、を包含している。
〔分離工程〕
図2の(a)及び(b)に示すように、分離工程では、積層体10における分離層2に光Lを照射することによって分離層2を変質させる。
図2の(a)に示す積層体10は、光を透過することができる材料により、サポートプレート3及び接着層5のいずれもが構成されている。このため、図2の(a)に示すように、分離工程では、積層体10におけるサポートプレート3側から、サポートプレート3及び接着層5を介して分離層2に光Lを照射することができる。これによって、分離層2を変質させることで、分離層2の接着力を低下させることができる。従って、積層体10にわずかな力を加えることで、封止基板1とサポートプレート3とを分離することが可能になる。
図2の(a)に示す積層体10は、光を透過することができる材料により、サポートプレート3、剥離層4及び接着層5のいずれもが構成されている。このため、図2の(a)に示すように、分離工程では、積層体10におけるサポートプレート3側から、サポートプレート3、剥離層4及び、接着層5を介して分離層2に光Lを照射することができる。これによって、分離層2を変質させることで、分離層2の接着力を低下させることができる。従って、積層体10にわずかな力を加えることで、封止基板1とサポートプレート3とを分離することが可能になる。
本明細書において、分離層が「変質する」とは、分離層をわずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。また、分離層の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性又は非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化又は官能基の解離(そして、これらにともなう分離層の硬化、脱ガス、収縮又は膨張)等であり得る。
分離工程における、レーザ光照射条件は、分離層の種類によって適宜調整すればよく、限定されないが、レーザ光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下の範囲であることが好ましく、3.0W以上、4.0W以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザ光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下の範囲であることが好ましく、30kHz以上、50kHz以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザ光の波長は、300nm以上、700nm以下であることが好ましく、450nm以上、650nm以下の範囲であることがより好ましい。このような条件によれば、分離層2に照射するパルス光のエネルギーを、分離層2を変質させるための適切な条件にすることができる。このため、封止基板1がレーザ光によってダメージを受けることを防止することができる。
また、パルス光のビームスポット径及びパルス光の照射ピッチは、隣接するビームスポットが重ならず、かつ分離層2を変質させることが可能なピッチであればよい。
積層体10は封止基板1と接着層5との間に形成された分離層2の接着力を低下することで封止基板1を分離できるため、硬化した接着層5の残渣は、封止基板1ではなく、サポートプレート3側に残る(図2の(b))。このため、積層体10から分離した封止基板1において、硬化した接着層5を剥離する必要はなく、溶剤を用いた洗浄により、分離層2の残渣を除去することで足りる。つまり、分離工程を行なうことによって、封止基板1から硬化した接着層5を好適に剥離することができる。
〔剥離工程〕
図2の(c)及び(d)に示すように、剥離工程では、分離工程において、封止基板1から分離されたサポートプレート3上に残る接着層5をサポートプレート3から剥離する。
接着層5は、熱硬化型接着剤を硬化工程において重合させることで形成されるため、層状に硬化している。また、接着層5は、シクロオレフィン系ポリマーと、当該ポリマーに相溶する(メタ)アクリレートモノマーとを含んでいる熱硬化型接着剤を用いて形成されているため、接着力が調整されている。このため、本実施形態に係る基板の処理方法が包含する剥離工程では、分離工程において分離されたサポートプレート3上に付着している層状に硬化した接着層5を、フィルムを剥がすように機械的に剥離することができる(図2の(c))。従って、剥離工程において、接着層5を剥離したサポートプレート3の洗浄を簡素化することができる(図2の(d))。
従って、本実施形態に係る基板の処理方法によれば、封止基板1のみならず、サポートプレート3に硬化した接着層5を好適に剥離することができ、サポートプレート3の洗浄を容易にすることができる。
<積層体の製造方法(第2の実施形態)>
本発明に係る積層体の製造方法は、上記実施形態(第1の実施形態)に限定されない。例えば、一実施形態(第2の実施形態)に係る積層体11の製造方法は、基板1aに、モールド材を塗布して基板1aに設けられた素子dを封止するモールド材層1bを形成するモールド材層形成工程と(図3の(a)及び(b))、封止基板(基板)1上に光を吸収することによって変質する分離層2を形成する分離層形成工程(図3の(c))と、サポートプレート(支持体)3に剥離層4を形成する剥離層形成工程(図3の(d)及び(e))と、サポートプレート3上に形成された剥離層4上に接着層5を形成する接着層形成工程(図3の(f))と、封止基板1、分離層2、接着層5、剥離層4及びサポートプレート3をこの順なるように積層する積層工程と、積層工程の後、接着層5を硬化させる硬化工程と、を包含している(図3の(g))。
以下に、本実施形態に係る積層体11の製造方法をより詳細に説明する。なお、封止基板1を形成するためのモールド材層形成工程(図3の(a)及び(b))、分離層形成工程(図3の(c))及び硬化工程(図3の(g))については、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
〔剥離層形成工程〕
図3の(d)及び(e)に示すように、本実施形態に係る積層体10の製造方法が包含する剥離層形成工程では、サポートプレート(支持体)3上に熱可塑性樹脂を含んでいる剥離層4を形成する。剥離層4は、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解し、サポートプレート3上に塗布することによって形成される(図3の(e))。
剥離層4を形成するための熱可塑性樹脂を塗布するための方法は、接着層5を形成するための熱硬化型接着剤の塗布方法と同様の方法を採用することができ、例えば、スピンコート等の方法で行なうことができる。
また、サポートプレート3上に塗布された熱可塑性樹脂から溶剤を除去することで、光を透過する熱可塑性樹脂である剥離層4を形成する。なお、サポートプレート3上に塗布された熱可塑性樹脂から溶剤を除去するための方法は、減圧による除去、加熱による除去等の公知の方法によって行なうとよい。
〔剥離層4〕
剥離層4は、サポートプレート3から接着層5を剥離するための層である。また、剥離層4は、光を透過する熱可塑性樹脂の層である。光を透過する熱可塑性樹脂である剥離層4を形成することによって、剥離層4は、積層体10における分離層2を変質させるための光を透過させることができる。
剥離層4の厚さは、貼り付けの対象となる封止基板1及びサポートプレート3の種類、貼り付け後の封止基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、5〜50μmの範囲内であることが好ましく、5〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
剥離層4を形成するための熱可塑性樹脂には、例えば、アクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の当該分野において公知の種々の熱可塑性樹脂を含んでいる接着剤を用いることができ、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、又はこれらを組み合わせたもの等をより好ましく用いることができる。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
樹脂(A)としては、上述の〔接着層5〕における(シクロオレフィン系ポリマー)の欄に記載されたものを挙げることができる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80〜160℃であると、積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。
樹脂(B)の重量平均分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の重量平均分子量が300以上であると、耐熱性が十分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の重量平均分子量が3,000以下であると、炭化水素系溶剤への剥離層の溶解速度が良好なものとなる。このため、支持体を分離した後の基板上の剥離層の残渣を迅速に溶解し、除去することができる。なお、本実施形態における樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて共重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐鎖状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易且つ迅速に剥離層を除去することができる。また、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上記の範囲内であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGME等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
なお、エラストマーには、上述した(メタ)アクリル酸エステルをさらに混合してもよい。
また、スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、また、より好ましくは40重量%以下である。
重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、また、より好ましい範囲は150,000以下である。
エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、種々のエラストマーを用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、及び、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製)、SeptonV9475(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレンブロックコポリマー(SEEPS−OH:末端水酸基変性)等が挙げられる。エラストマーのスチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上述の範囲内であるものを用いることができる。
また、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
また、エラストマーの中でも両端がスチレンのブロック重合体であるものがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
より具体的には、エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
剥離層4を構成する接着剤に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、株式会社クラレ製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
剥離層4を構成する接着剤に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、50重量部以上、99重量部以下の範囲内が好ましく、60重量部以上、99重量部以下の範囲内がより好ましく、70重量部以上、95重量部以下の範囲内が最も好ましい。これら範囲内にすることにより、耐熱性を維持しつつ、ウエハと支持体とを好適に貼り合わせることができる。
また、エラストマーは、複数の種類を混合してもよい。つまり、剥離層4を構成する接着剤は複数の種類のエラストマーを含んでいてもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいればよい。また、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内である、又は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、本発明の範疇である。また、剥離層4を構成する接着剤において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲内となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、従って14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを重量比1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。また、剥離層4を構成する接着剤に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲内でスチレン単位を含み、且つ、上記の範囲内の重量平均分子量であることが最も好ましい。
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて剥離層4を形成することが好ましい。光硬化性樹脂以外の樹脂を用いることで、剥離層4の剥離又は除去の後に、被支持基板の微小な凹凸の周辺に残渣が残ることを防ぐことができる。特に、剥離層4を構成する接着剤としては、あらゆる溶剤に溶解するものではなく、特定の溶剤に溶解するものが好ましい。これは、封止基板1に物理的な力を加えることなく、剥離層4を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。剥離層4の除去に際して、強度が低下した封止基板1からでさえ、封止基板1を破損させたり、変形させたりせずに、容易に剥離層4を除去することができる。
(溶剤)
溶剤は、剥離層を溶解することができるものであればよく、以下に示す溶剤を用いることができる。
溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン及びトリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素数4から15の分岐鎖状の炭化水素;例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン及びテトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン及びジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン及び2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル及びエトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール及びブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
(その他の成分)
また、剥離層4を形成するために用いられる接着剤は、本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、熱重合禁止剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
〔接着層形成工程〕
図3の(f)に示すように、本実施形態に係る積層体11の製造方法が包含している接着層形成工程では、光を透過することができる反応型接着剤を、サポートプレート3上に形成された剥離層4の上に塗布することによって接着層5を形成する。
なお、本実施形態に係る積層体の製造方法において、接着層5の形成するための熱硬化型接着剤の塗布方法は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略し、第1の実施形態との相違点である接着層5の膜厚についてのみ以下に説明する。
接着層5の厚さは、貼り付けの対象となる封止基板1及びサポートプレート3の種類、貼り付け後の封止基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、50μm以上、100μm以下の範囲内で厚さであることが好ましい。接着層5を50μm以上、100μm以下の範囲内の膜厚で形成し、剥離層4を5μm以上、50μm以下の範囲内の膜厚で形成することによって、接着層5による封止基板1に形成れさた分離層2への密着性を高めつつ、後の工程において、剥離層4を溶解することによって、サポートプレート3を好適に剥離することができる。
〔積層工程〕
図3の(g)に示すように、本実施形態に係る積層体11の製造方法では、封止基板1、分離層2、接着層5、剥離層4及びサポートプレート3をこの順に積層する。なお、本実施形態に係る積層体11の製造方法においても、積層工程では、封止基板1とサポートプレート3とを、貼り付ける前に接着層5を加熱することにより、半硬化させることが好ましいことは言うまでもない。その後、第1の実施形態に係る積層体10の製造方法と同じく、硬化工程を行うことによって、積層体11における接着層5を完全に硬化させる。
<積層体11(第2の実施形態)>
本実施形態に係る積層体の製造方法によって製造された積層体11も、本発明の範疇である。
図3の(g)に示す、積層体11は、剥離層を備えている点において、積層体10と異なる。しかしながら、積層体10と同様に、積層体11における接着層5は、熱重合によって硬化しているため、分離層2との密着性が高い。このため、封止基板1と接着層5との間にボイドが発生することを好適に防止することができ、ボイドに起因して封止基板1と接着層5との間においてデラミネーションが生じることを好適に防止すことができる。
また、積層体11は、積層体10と同様に、接着層5を熱によって硬化させているため、高いヒートサイクル特性を備えている。従って、積層体11の封止基板1に対して、様々な処理を行なうときの温度の変化により、積層体11に歪が生じることを好適に防止することができる。
<基板の処理方法(第2の実施形態)>
図4を用いて、本実施形態(第1の実施形態)に係る基板の処理方法をより詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る基板の処理を説明するための模式図である。
本実施形態に係る基板の処理方法は、一実施形態(第2の実施形態)に係る積層体の製造方法によって、積層体11を製造する積層体製造工程と、光を照射することで分離層2を変質させ、積層体11からサポートプレート3を分離する分離工程(図4の(a)及び(b))と、積層体11から分離されたサポートプレート3から、接着層5を剥離する剥離工程(図4の(c)及び(d))と、を包含しており、剥離工程では、積層体11から分離されたサポートプレート3を剥離液Sに浸漬することで、熱可塑性樹脂を含んでいる剥離層4を溶解することにより、接着層5をサポートプレート3から剥離する。
〔分離工程〕
図4の(a)に示す積層体11は、光を透過することができる材料により、サポートプレート3、剥離層4及び接着層5のいずれもが構成されている。このため、図4の(a)に示すように、分離工程では、積層体11におけるサポートプレート3側から、サポートプレート3、剥離層4及び、接着層5を介して分離層2に光Lを照射することができる。これによって、分離層2を変質させることで、分離層2の接着力を低下させることができる。従って、積層体11にわずかな力を加えることで、封止基板1とサポートプレート3とを分離することが可能になる。
また、積層体10の場合と同様に、硬化した接着層5はサポートプレート3に付着した状態で積層体11から分離されるため、封止基板1側において硬化した接着層5を剥離する必要はない。従って、封止基板1は、溶剤を用いた洗浄により、分離層2の残渣を除去することで足りる。なお、分離工程における光の波長以外のレーザ光照射条件は第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
〔剥離工程〕
図4の(c)及び(d)に示すように、剥離工程では、積層体10から分離されたサポートプレート3を剥離液Sに浸漬することで、熱可塑性樹脂を含んでいる剥離層4を溶解することにより、接着層5をサポートプレート3から剥離する。
図4の(c)に示すように、剥離工程では、剥離層4上に接着層5の硬化物が残るサポートプレート3を、剥離液槽50に浸漬することによって、剥離層4を溶解させる。ここで、剥離液には上述の(溶剤)の欄において説明した剥離層4を形成するために用いられる熱可塑性樹脂の溶剤を用いることができる。これによって、サポートプレート3から硬化した接着層5を好適に剥離することができる(図4の(d))。
<積層体の製造方法(第3の実施形態)>
本発明に係る積層体の製造方法は、上記実施形態(第1の実施形態及び第2の実施形態)に限定されない。例えば、一実施形態(第3の実施形態)に係る積層体12の製造方法は、封止基板1上に光を吸収することによって変質する分離層2を形成する分離層形成工程と、光を透過する材料からなるサポートプレート3上に、光を吸収することによって変質する剥離層4’を形成する剥離層形成工程と、剥離層4’上に接着剤を塗布して接着層5を形成する接着層形成工程と、封止基板1、分離層2、接着層5、剥離層4’及びサポートプレート3をこの順になるように積層する積層工程と、積層工程の後、接着層5を硬化させる硬化工程と、を包含している。
以下に、本実施形態に係る積層体12の製造方法をより詳細に説明する。なお、封止基板1を形成するためのモールド材層形成工程(図3の(a)及び(b)に対応)、並びに積層工程及び硬化工程(図3の(g)に対応)については、第2の実施形態と剥離層の種類が異なる以外は、同じであるため、その説明を省略する。また、接着層形成工程(図3の(f))については、剥離層4’を形成している以外は、第1の実施形態と同じであるためその説明を省略する。
〔分離層形成工程〕
本実施形態に係る分離層形成工程(図3の(c)に対応)では、封止基板1のモールド材層1bが形成された側の面に、上述の〔分離層2〕の欄におけるフルオロカーボン等の450nm以上、650nm以下の範囲の波長の光を吸収する材料によって分離層2を形成する。
〔剥離層形成工程〕
本実施形態に係る剥離層形成工程(図3の(e)に対応)では、ガラスからなるサポートプレート3上に、〔分離層2〕における赤外線吸収性の構造を有する化合物等の1μm以上、20μm以下の範囲の波長の光を吸収する材料によって、剥離層4’を形成する。
<積層体11(第2の実施形態)>
本実施形態に係る積層体の製造方法によって製造された積層体12も、本発明の範疇である。
図5の(a)に示す、積層体12は、光を吸収することによって変質する剥離層4’を備えている点において、第1の実施形態に係る積層体10及び第2の実施形態に係る積層体11と異なる。しかしながら、積層体10及び積層体11と同様に、積層体12における接着層5は、熱重合によって硬化しているため、分離層2との密着性が高い。このため、封止基板1と接着層5との間にボイドが発生することを好適に防止することができ、ボイドに起因して封止基板1と接着層5との間においてデラミネーションが生じることを好適に防止すことができる。
また、積層体12は、積層体10及び積層体11と同様に、接着層5を熱によって硬化させているため、高いヒートサイクル特性を備えている。従って、積層体12の封止基板1に対して、様々な処理を行なうときの温度の変化により、積層体12に歪が生じることを好適に防止することができる。
<基板の処理方法(第3の実施形態)>
図5を用いて、本実施形態(第3の実施形態)に係る基板の処理方法をより詳細に説明する。図5は、本実施形態(第3の実施形態)に係る基板の処理方法を説明するための模式図である。
本実施形態に係る基板の処理方法は、一実施形態(第3の実施形態)に係る積層体の製造方法によって、積層体12を製造する積層体製造工程と、光を照射することで分離層2を変質させ、積層体12からサポートプレート3を分離する分離工程(図5の(a)及び(b))と、積層体12から分離されたサポートプレート3から、接着層5を剥離する剥離工程(図5の(c)及び(d))と、を包含しており、剥離工程では光を吸収することによって変質する剥離層4’を変質させ、接着層5をサポートプレート3から剥離する。
〔分離工程〕
図5の(a)及び(b)に示すように、分離工程では、積層体12における分離層2に光を照射することによって分離層2を変質させる。
図5の(a)に示す積層体12は、サポートプレート3、剥離層4’及び接着層5が、いずれも光を透過することができる材料によって構成されている。このため、分離工程において、積層体12におけるサポートプレート3側から、分離層2に光を照射することによって分離層2を変質させることができる。従って、図5の(b)に示すように、積層体12にわずかな力を加えることによって、封止基板1とサポートプレート3とを分離することができる。
また、積層体10及び積層体11の場合と同様に、硬化した接着層5はサポートプレート3に付着した状態で積層体12から分離されるため、封止基板1側において硬化した接着層5を剥離する必要はない。従って、封止基板1は、溶剤を用いた洗浄により、分離層2の残渣を除去することで足りる。
本実施形態に係る基板の処理方法が包含している分離工程では、分離層2に照射する光の波長は、450nm以上、650nm以下の範囲であることがより好ましい。分離層2に照射する光の波長は、450nm以上、650nm以下の範囲であれば、分離層2を好適に変質させることができる。また、本実施形態に係る積層体12では、剥離層4’は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されているため、450nm以上、650nm以下の範囲の波長の光を好適に透過させることができる。従って、分離工程において、照射される光を、剥離層4’を透過させて、分離層2に吸収させることができ、分離工程において、剥離層4’が当該光を吸収することで分離することを防止することができる。なお、分離工程における光の波長以外のレーザ光照射条件は第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
〔剥離工程〕
本実施形態に係る基板の処理方法が包含する剥離工程では、分離工程において分離されたサポートプレート3における硬化した接着層5の側から、剥離層4’に向かって光を照射することによって剥離層4’を変質させる(図5の(c))。これによって、剥離層4’の接着力を低下させることができ、サポートプレート3から硬化した接着層5を剥離することができる(図5の(d))。
剥離層4’は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されているため、剥離層4’に照射する光の波長は、1μm以上、20μm以下の範囲内であり、2μm以上、15μm以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、赤外線吸収性の構造を有する化合物がSi−O結合、Si−C結合及びTi−O結合を備えている場合には、9μm以上、11μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、剥離工程における光の波長以外のレーザ光照射条件は第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
また、剥離工程によって接着層5を剥離したサポートプレート3は、上記(溶剤)の欄に記載された溶剤を用いて洗浄することで、剥離層4’の残渣を好適に除去することができる。
〔変形例〕
本発明に係る積層体の製造方法は、上記の実施形態に限定されない。例えば、一変形例に係る積層体の製造方法では、第3の実施形態に係る積層体の製造方法が包含する、分離層形成工程において1μm以上、20μm以下の範囲の波長の光を吸収する赤外線吸収性の構造を有する化合物を用いて分離層を形成し、剥離層形成工程においてフルオロカーボン等の450nm以上、650nm以下の範囲の波長の光を吸収する分離層の材料を用いて剥離層を形成する。
上記構成によっても、例えば、基板とサポートプレートとを分離することができ、基板及びサポートプレートに硬化した接着層の残渣が残ることを防止することができる。
一実施形態に係る積層体の製造方法及び基板の処理方法では、分離層が吸収する光の波長と剥離層が吸収する光の波長とが互いに異なる材料を用いて分離層及び剥離層を形成すれば、分離層及び剥離層を形成するための材料の選択は限定されない。
<別の実施形態>
本発明に係る積層体の製造方法は、上記実施形態に限定されない。別の実施形態に係る積層体の製造方法は、基板上に光を吸収することによって変質する分離層を形成する分離層形成工程と、光を透過する材料からなるサポートプレート(支持体)上に、接着剤を塗布して接着層を形成する接着層形成工程と、基板、分離層、接着層及びサポートプレートをこの順になるように積層する積層工程と、積層工程の後、接着層を硬化させる硬化工程と、を包含しており、ここで、接着剤は、光を透過することができる熱硬化型接着剤であれば、その種類は限定されない。
本実施形態に係る積層体の製造方法においても、基板上に分離層を形成することができ、例えば、加熱することによって、接着層を硬化させることができる。従って、基板から発生するガスに起因して、基板と接着層との間にボイドが発生することを抑制することができる。また、熱硬化型接着剤を用いるため、ヒートサイクル特性に優れた積層体を形成することができる。さらに、基板上に設けられた分離層の接着力を低下させることによって、接着層が形成されたサポートプレートから基板を分離させることができるため、接着層の硬化物の残渣が基板に残ることを防止することができ、基板の洗浄を容易にすることができる。従って、本実施形態に係る積層体の製造方法、基板の処理方法及び積層体も、本発明の範疇である。
また、さらに別の実施形態に係る積層体の製造方法では、基板は、封止基板に限定されない。例えば、本実施形態に係る積層体の製造方法では、基板として、シリコン、セラミックス基板、薄いフィルム基板及びフレキシブル基板等の任意の基板を使用する。
上記構成によっても、基板側に分離層を形成することによって、基板から発生するガスに起因する基板と接着層との間におけるボイドの発生を防止することができる。また、硬化型の接着剤を用いても、基板に接着剤の硬化物の残渣が残ることを防止することができる。従って、本実施形態に係る積層体の製造方法、基板の処理方法及び積層体も、本発明の範疇である。