JP6290460B2 - アクリル酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸留中におけるアクリル酸の蒸留システムのトラブルや、蒸留後における廃油処理におけるトラブルを抑制しつつ、アクリル酸を効率的に製造する方法に関するものである。
アクリル酸は、一般的に、触媒の存在下、プロピレンやアクロレインを接触気相酸化してアクリル酸含有ガスを得、当該アクリル酸含有ガスを水などの捕集液で捕集するか或いは凝縮してアクリル酸水溶液を得、蒸留や晶析などによって精製することにより製造される。
アクリル酸の製造プロセスにおいて、アクリル酸の精製により生じる残渣には不純物が多く含まれているが、アクリル酸も含まれるため、残渣を蒸留に付することなどによりアクリル酸が回収される。また、残渣にはアクリル酸二量体も含まれており、アクリル酸二量体は、熱分解槽と蒸発器からなる熱分解装置などを用いて、加熱によりアクリル酸に分解して回収される(特許文献1)。
アクリル酸を蒸留などにより精製した後の残渣は、高沸点不純物や重合物などを含んでおり、粘稠なものとなる。よって、かかる蒸留後残渣、即ち蒸留装置の底液を廃棄する場合、蒸留装置の底部からの抜出しや移送が困難になったり、貯蔵タンクで安定的に貯蔵できないことがある。この様な問題は、アクリル酸の蒸留を多段で行う場合の後段の蒸留装置や、加熱によるアクリル酸二量体の分解工程でより一層顕在化する。
そこで特許文献2の発明では、(メタ)アクリル酸の製造に伴って生じる廃油に、水、アルコール、エーテル、カルボン酸、ケトン、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素から選択される溶媒を添加することにより、廃油の取扱性を高めている。また、特許文献3には、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの蒸留後の蒸留釜残液に、水、酢酸、サリチル酸、エタノールアミン類またはメタノールを添加することにより、当該残液を安定化する方法が開示されている。
また、特許文献4には、アクリル酸オリゴマーの分解反応器中に残留する高沸点残留物を、燃焼のために、エチルヘキサン酸やプロピオン酸などの有機酸や、エタノールやメタノールといったアルカノールなどの親水性有機液体で希釈することが記載されている。
特公昭61−35977号公報 特開2000−290225号公報 特公昭60−43055号公報 特表2002−539104号公報
上述したように、廃棄段階にあるアクリル酸蒸留装置の底液は粘稠なものであり、その取扱性を高めるため溶媒を添加する技術はあった(特許文献2,3)。また、特許文献4には、アクリル酸オリゴマーの分解反応器中に残留する高沸点残留物を燃焼のために希釈することが記載されている。
しかし、精製段階が後段になるほど、また、蒸留の進行に連れて、蒸留装置底液の粘度や不純物濃度は高まっていく。その結果、蒸留後における廃油の取り扱いが難しいばかりでなく、蒸留中においても蒸留装置の底部に汚れが付着したり、先述したアクリル酸二量体の加熱分解においては、熱分解槽から蒸発器への循環ラインなどで閉塞が起こることがある。
また、特許文献2,3に記載の発明は蒸留後の廃油の取扱いに関するものであり、また、実験例で実際に廃油へ添加されている溶媒は水、酢酸、メタノールなどである。もしもこれら溶媒を蒸留後ではなく蒸留中に添加するとすれば、上記の蒸留中におけるトラブルは抑制できるかもしれないが、アクリル酸蒸留装置頂部から得られるアクリル酸にこれら溶媒が混入するおそれがある。さらに、特許文献4に記載の実験例では高沸点残留物を希釈することは具体的に記載されていないし、また、高沸点残留物を希釈するものとして例示されている希釈剤は、有機酸であるか或いはエタノールやメタノールといった低沸点のものである。
そこで本発明は、アクリル酸の蒸留後における廃油処理におけるトラブルのみでなく、蒸留中におけるアクリル酸の精製システムのトラブルを抑制しつつ、アクリル酸を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、蒸留装置底部や廃油処理システムのトラブルは、主に無水マレイン酸が原因であることを見出した。必ずしも明らかではないが、無水マレイン酸が加熱などにより分解し、かかる分解の過程でラジカルが発生し、このラジカルによりトラブルの原因となる重合物が生成する可能性が考えられる。また、マレイン酸や無水マレイン酸はアクリル酸を得るための接触気相酸化反応で不可避的に生成し、さらにマレイン酸は加熱などにより脱水されて無水マレイン酸となる。そこで本発明者らは、アクリル酸蒸留装置へ粗アクリル酸に加えて特定の溶媒を導入すれば、アクリル酸蒸留装置頂部から得られるアクリル酸に溶媒が混入することもなく、また、蒸留中においても蒸留後においても、おそらくは無水マレイン酸を原因とする精製システムにおけるトラブルを抑制できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
[1] アクリル酸を製造するための方法であって、
アクリル酸蒸留装置へ、少なくとも、粗アクリル酸と、アクリル酸の沸点よりも50℃以上高い沸点を有するアルコール溶媒とを導入し、アクリル酸を蒸留する工程を含むことを特徴とする製造方法。
[2] 上記粗アクリル酸と上記アルコール溶媒とを混合した上で上記アクリル酸蒸留装置へ導入する上記[1]に記載の製造方法。
[3] 上記粗アクリル酸と上記アルコール溶媒とを別々に上記アクリル酸蒸留装置へ導入する上記[1]に記載の製造方法。
[4] 上記アルコール溶媒の導入量を、上記粗アクリル酸に含まれるマレイン酸および無水マレイン酸の合計量に対して1.0質量%以上にする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 上記アルコール溶媒として多価アルコール溶媒を用いる上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 上記アルコール溶媒としてエチレングリコールを用いる上記[5]に記載の製造方法。
本発明に係るアクリル酸の製造方法においては、精製段階の後段における蒸留工程であっても、粘稠なアクリル酸蒸留装置底液を原因とする底部の汚れや循環ラインの閉塞といった蒸留中のトラブルが抑制されている。また、蒸留後においても、アクリル酸蒸留装置底液を廃油として保管タンクへ移送するための配管や保管タンクにおける析出物の生成、それに起因する閉塞などのトラブルが抑制されており、また、廃油であるアクリル酸蒸留装置底液を長期にわたり安定して保管することが可能である。さらに、本発明方法によっては、精製アクリル酸の純度が低下することは実質的にない。よって本発明方法は、アクリル酸の効率的で安定的な製造を可能にするものとして、産業上極めて有用である。
図1は、本発明方法で用いることができる蒸留システムの一例を示す概略図である。 図2は、本発明方法で用いることができる蒸留システムの一例を示す概略図である。
本発明は、精製システムのトラブルを抑制しつつ、粗アクリル酸からアクリル酸を精製する方法に関するものである。粗アクリル酸は、一般的な方法により得ることができる。以下、本発明を工程ごとに説明する。
1. 接触気相酸化反応工程
アクリル酸は、原料化合物であるプロピレンやアクロレインを接触気相酸化反応に付すことにより製造することができる。具体的には、例えば、触媒を充填し、所定の温度範囲に加熱した反応器に、酸素または空気などの分子状酸素含有ガスとプロピレンやアクロレインを含む原料ガスを導入し、プロピレンまたはアクロレインを酸化することによりアクリル酸含有ガスが得られる。
原料ガスの組成は適宜調整すればよいが、例えば、プロピレンまたはアクロレインを1容量%以上、15容量%以下、分子状酸素を0.5容量%以上、25容量%以下、水蒸気を0容量%以上、30容量%以下、残部が窒素などの不活性ガスからなる混合ガスを用いることができる。
触媒は、アクリル酸を製造するために用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、モリブデン、バナジウム、ビスマス、鉄などの金属の酸化物を含む複合金属酸化物触媒が主に用いられる。また、原料化合物としてプロピレンを用い、前段でプロピレンからアクロレインへの酸化反応を行い、後段でアクロレインからアクリル酸への酸化反応を行うことも可能である。このような場合には、それぞれの段階でそれぞれの反応に適した触媒を選択し、反応器内に二層に分けて充填してもよい。かかる二層の触媒層の間には、不活性物質層を設けてもよい。
反応条件は、使用する原料ガスなどに応じて適宜調整すればよい。例えば反応温度は、200℃以上、500℃以下程度とすることができる。また、上記のように二段階で反応させる場合には、各反応で反応温度を調整してもよい。
2. 捕集または凝縮工程
次に、上記接触気相酸化反応工程で得られるアクリル酸含有ガスを水などの捕集液と接触させるか或いは凝縮することにより、粗アクリル酸としてアクリル酸水溶液を得る。
アクリル酸の捕集は、一般的には捕集塔を用いて行われる。捕集塔は、下部にアクリル酸含有ガスの導入口を有し、上部に捕集液の導入口を有する。捕集塔に導入された捕集液は、重力により上部から下部へ移動しつつ、下部から導入されたアクリル酸含有ガスと向流接触する。その際、アクリル酸などアクリル酸含有ガスに含まれる水溶性成分は捕集液に溶解し、アクリル酸水溶液となり捕集塔の下部から抜き出される。捕集塔としては、棚段塔、充填塔、濡壁塔、スプレー塔などの種類があり、アクリル酸含有ガスと捕集液との接触がより効率的になるよう工夫されている。
凝縮は、一般的には凝縮塔を用いて行われる。凝縮塔は、その下部に導入されたアクリル酸含有ガスを冷却し、粗アクリル酸と気体成分とを分離する設備である。凝縮塔は、導入されたアクリル酸含有ガスを冷却水や熱交換などで段階的に冷却することにより、各成分をその沸点などに応じて分離できるようにすることも可能である。
以上で得られる粗アクリル酸には様々な不純物が含まれていることから、以降の工程で不純物を除去し、アクリル酸を精製する。精製手段は除去すべき不純物の種類などに応じて適宜選択したり組み合わせればよい。
3. アクロレイン放散工程
上記工程2で得られる粗アクリル酸には、原料化合物または中間生成物であるアクロレインが含まれている。そこで、粗アクリル酸をアクロレイン放散塔へ導入してアクロレインを分離することが好ましい。アクロレイン放散塔の塔頂部から得られるアクロレインは、上記接触気相酸化反応工程および/または捕集工程もしくは凝縮工程へ返送することができる。但し、本工程の実施は任意である。
4. 水分除去工程
上記工程2で得られる粗アクリル酸には、原料ガスに含まれる水分や捕集液などに由来する水が含まれることから、水を除去することが好ましい。但し、本工程の実施は任意である。
粗アクリル酸から水分を除去するためには、一般的に共沸分離が行われる。共沸分離は、水と共沸混合物を形成する共沸溶媒を用いて蒸留し、粗アクリル酸から水や酢酸などを分離するものである。
共沸分離で用いられる共沸溶媒としては、特に制限されないが、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトンなどのケトン系共沸溶媒;酢酸n−プロピルなどのエステル系共沸溶媒;トルエンなどの芳香族炭化水素系共沸溶媒;ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系共沸溶媒;およびこれら2以上の混合共沸溶媒を挙げることができる。
また、酢酸などの低沸点不純物を分離するために、共沸分離の前または後に、軽沸点物質分離塔を用いてアクリル酸よりも低沸点の不純物を除去してもよい。
以上の工程を経て得られた粗アクリル酸からアクリル酸を分離するためには、一般的に蒸留と晶析が適用される。
粗アクリル酸から晶析によりアクリル酸を精製する場合には、粗アクリル酸の冷却により生じたアクリル酸結晶を母液から分離するが、かかる母液には不純物と共にアクリル酸が含まれている。よって、アクリル酸の晶析工程から得られた母液から、蒸留によりアクリル酸を回収することが好ましい。また、粗アクリル酸から蒸留によりアクリル酸を直接精製してもよいし、蒸留により精製したアクリル酸を、さらに晶析により精製してもよい。
本発明では蒸留によりアクリル酸から分離される廃油による精製システムのトラブルや廃油の取扱性を改善することを主な目的としていることから、以下ではアクリル酸蒸留について説明する。
5. アクリル酸の蒸留工程
アクリル酸蒸留工程で用いられるアクリル酸蒸留装置は、少なくとも、精製されたアクリル酸を留出させるための排出口、留出されたアクリル酸の少なくとも一部を還流させるための還流液供給口、重合防止剤供給口、粗アクリル酸供給口を有する。アクリル酸蒸留装置としては、例えば、塔内に複数のトレイを備えた棚段塔;充填物を充填した充填塔;濡壁塔;スプレー塔など、いずれも好適に使用することができる。また、アクリル酸の蒸発器を別途備えるアクリル酸蒸留装置を用いてもよい。なお、本発明において「アクリル酸の蒸留」とは、不純物として主に高沸点不純物を含む粗アクリル酸を加熱して、粗アクリル酸中のアクリル酸を気体として蒸発させることにより分離することをいうものとする。
重合防止剤としては、特に制限されないが、例えば、ハイドロキノン、メトキノン(p−メトキシフェノール)などのキノン類;フェノチアジンなどのフェノチアジン類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどのN−オキシル化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸銅などの銅塩化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガンなどのマンガン塩化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンやその塩などのニトロソ化合物等が挙げられる。これらの重合防止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル酸の蒸留は一段階で行ってもよいが、二段階以上で行ってもよい。アクリル酸の蒸留を一段階で行う場合には、アクリル酸の純度と精製効率を両立させることが難しくなる場合がある。即ち、粗アクリル酸に含まれるアクリル酸を一段階の蒸留ですべて留出させようとすると、留出アクリル酸に不純物が混入して純度が低下したり、重合防止剤が存在するにも関わらず、アクリル酸蒸留装置の底部において加熱によりアクリル酸の重合が進行したりするおそれがある。一方、留出アクリル酸への不純物の混入や重合物の生成を抑制すべく、アクリル酸留出率を比較的低く設定した条件で蒸留を行えば、蒸留効率は当然に低下する。そこで、蒸留を二段階以上で行い、前段階ではアクリル酸留出率を比較的低く設定した条件で蒸留を行い、アクリル酸が残留しているアクリル酸蒸留装置底液をさらなる蒸留に付すことにより、アクリル酸の純度と精製効率の両立が可能になる。
当該段階数としては、五段階以下が好ましく、三段階以下がより好ましく、二段階が特に好ましい。
なお、上記のアクリル酸留出率(%)は、式:[(留出したアクリル酸の量)/(蒸留装置へ導入した粗アクリル酸に含まれるアクリル酸の量)]×100により求めることができる。
二段階以上で蒸留を行う場合には、後段になるほどアクリル酸蒸留装置底液の粘度が高くなり、通常の蒸留装置では蒸留が難しくなる場合がある。このような場合には、アクリル酸の蒸留を効率的に行うために、薄膜蒸発器を備えたアクリル酸蒸留装置を用いることが好ましい。
アクリル酸を蒸留する場合には、アクリル酸蒸留装置の底部において、加熱により不純物が増加することがある。アクリル酸の蒸留を多段階で行う場合には、前段のアクリル酸蒸留装置の底液を後段の蒸留に付すことになるが、後段の留出アクリル酸にはかかる不純物が混入するおそれがある。このような場合には、後段の留出アクリル酸の全部または一部を、前段のアクリル酸蒸留装置に返送し、前段のアクリル酸蒸留工程の粗アクリル酸の一部として利用することが好ましい。
アクリル酸の製造プロセスにおいて副生する高沸点不純物としては、例えば、アクリル酸のミカエル付加物であるアクリル酸二量体があるが、アクリル酸二量体は加熱によりアクリル酸へ再分解する。そこで、アクリル酸の蒸留中においては、アクリル酸蒸留装置の底液を連続的または断続的に抜き出し、加熱することによりアクリル酸二量体をアクリル酸へ再分解し、アクリル酸蒸留装置へ循環して回収することが好ましい。蒸留を二段階以上で行う場合には後段になるほど高沸点不純物の濃度は高まるので、より後段のアクリル酸蒸留工程において、上記のアクリル酸二量体の分解を行うことが好ましい。
アクリル酸二量体をアクリル酸に熱分解するための温度としては、120℃以上、220℃以下程度に調整することができる。また、アクリル酸蒸留装置底液を熱分解反応に付す時間は適宜調整すればよいが、例えば、1時間以上、100時間以下程度とすることができる。なお、熱分解を連続的に行う場合の熱分解反応時間は、熱分解装置における蒸留装置底液の滞留時間をいうものとし、アクリル酸蒸留装置からの底液の抜出し量や、熱分解装置からアクリル酸蒸留装置への循環量により調整することができる。
アクリル酸二量体の熱分解装置は、加熱によりアクリル酸二量体をアクリル酸へ分解できるものであれば特に制限されないが、熱分解槽や、特開2010−184871号公報に記載されている反応蒸留装置などを挙げることができる。なお、反応蒸留装置とは、アクリル酸二量体を含むアクリル酸蒸留装置底液を加熱により分解しつつ蒸留できる装置をいう。
本発明方法では、アクリル酸蒸留装置へ、粗アクリル酸に加え、少なくとも、アクリル酸の沸点よりも50℃以上高い沸点を有するアルコール溶媒を導入する。かかるアルコール溶媒を導入することにより、無水マレイン酸の分解により起こると考えられるアクリル酸の重合を防止できる。その結果、アクリル酸蒸留装置の底部や蒸発器における高沸点不純物の付着、アクリル酸二量体の熱分解中における熱分解槽からアクリル酸蒸留装置への循環ラインの閉塞、蒸留後に得られる廃油の移送用配管の閉塞、当該廃油の保管タンクにおける析出物の発生などを抑制することが可能になる。また、アクリル酸の重合を抑制しつつアクリル酸二量体のアクリル酸への分解を十分に行うことなどにより、アクリル酸の製造効率を高め、全体的な廃油量を低減することも可能になり得る。
アクリル酸の蒸留を二段階以上で行う場合には、後段になるほどアクリル酸蒸留装置底液における高沸点不純物の濃度が高まるので、上記アルコール溶媒のアクリル酸蒸留装置への導入の効果は、後段のアクリル酸蒸留工程において行うほど有効に発揮される。好適には、蒸留後のアクリル酸蒸留装置底液がそのまま廃油として廃棄されることから、最終段階のアクリル酸蒸留工程におけるアクリル酸蒸留装置へ上記アルコール溶媒を導入する。
本発明方法で用いるアルコール溶媒は、アクリル酸の沸点よりも50℃以上高い沸点を有するものである。具体的には、アクリル酸の沸点は常圧で約141℃であるので、常圧で約190℃以上の沸点を示すアルコール溶媒を用いる。本発明において「沸点」とは、常圧における沸点を意味するものとする。
本発明方法で用いるアルコール溶媒は、上記沸点を有し、室温(25℃)および常圧の条件下で液体のものであり、且つ、置換基として1以上の水酸基を有する炭化水素であれば特に制限されないが、例えば、n−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノールなどの一価アルコール溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール溶媒;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒を挙げることができる。中でも、一価アルコール溶媒または多価アルコール溶媒が好ましく、多価アルコール溶媒がより好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセリンがさらに好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。
特に上記アルコール溶媒は、蒸留システムや廃油処理システムにおけるトラブルの原因であると考えられる無水マレイン酸と反応してマレイン酸エステルとなる。無水マレイン酸は加熱などにより分解し、かかる分解過程で生じるラジカルがアクリル酸の重合を促進すると考えられるが、上記マレイン酸エステルは、無水マレイン酸に比べて分解し難いため、アクリル酸の重合を促進しない。即ち、上記アルコール溶媒の導入により無水マレイン酸の分解が抑制され、ひいてはアクリル酸重合物の生成が抑制されることが考えられ、結果として上記アルコール溶媒は精製システムと廃油処理システムのトラブルを特に有効に抑制することができる。
アクリル酸蒸留装置への上記アルコール溶媒の導入方法は、アクリル酸蒸留装置内で粗アクリル酸と混合された状態にできれば特に制限されない。例えば、粗アクリル酸とアルコール溶媒とを混合した上でアクリル酸蒸留装置へ導入してもよいし、アクリル酸蒸留装置に粗アクリル酸用とアルコール溶媒用の導入口を別々に設け、粗アクリル酸とアルコール溶媒とを別々にアクリル酸蒸留装置へ導入してもよい。また、導入すべき上記アルコール溶媒のうち一部を粗アクリル酸と混合してからアクリル酸蒸留装置へ導入し、残部のみをアルコール溶媒用の導入口から分けて導入してもよい。
上記アルコール溶媒またはその混合物は、アクリル酸蒸留装置へ直接導入する他、結果的にアクリル酸蒸留装置へ導入されるのであれば、上記の捕集または凝縮工程、アクロレイン放散工程、水分除去工程などにおいて導入してもよい。これらの場合、アクロレイン放散工程や水分除去工程で除去されるのはアクリル酸よりも低沸点の不純物であるため、上記アルコール溶媒は粗アクリル酸から分離されることなく、粗アクリル酸と共にアクリル酸蒸留装置へ導入されることになる。
上記アルコール溶媒の導入量は、本発明の効果が発揮される範囲で適宜調整すればよいが、例えば、マレイン酸および無水マレイン酸の合計量を基準にして調整することが好ましい。本発明者らは、アクリル酸蒸留装置の底部の汚れや廃油移送用配管の閉塞などの原因につき検討し、その原因として、マレイン酸と無水マレイン酸を特定した。即ち、本発明においては、上記アルコール溶媒を用いてアクリル酸蒸留装置底液やアクリル酸蒸留装置から排出される廃油におけるこれら不純物の濃度を低減することにより、これら不純物を原因とする汚れや閉塞などのアクリル酸精製システムにおけるトラブルを抑制する。
具体的には、上記アルコール溶媒の導入量を、アクリル酸蒸留装置へ導入される粗アクリル酸に含まれるマレイン酸および無水マレイン酸の合計量に対して1.0質量%以上、100質量%以下に調整することが好ましい。当該割合が1.0質量%以上であれば、精製システムのトラブルを抑制するという本発明の効果がより確実に発揮される。一方、当該割合が大き過ぎると廃油量が過剰に増大してアクリル酸の全体的な製造効率が低下するおそれがあり得るので、当該割合としては100質量%以下が好ましい。当該割合としては、2.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましく、5.0質量%以上または8.0質量%以上がよりさらに好ましく、80質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がよりさらに好ましい。
また、上記アルコール溶媒の導入量決定の簡便化の観点や、アクリル酸自体が上記のアクリル酸精製システムトラブルの原因である可能性もあることから、上記アルコール溶媒の導入量は、上記アルコール溶媒を導入すべきアクリル酸蒸留装置へ導入する粗アクリル酸に対して0.01質量%以上、10質量%以下に調整することもできる。当該割合としては、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.8質量%以上がよりさらに好ましく、また、8.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。
上記アルコール溶媒の導入量は、例えば、上記のとおり、汚れなどのトラブルを抑制すべきアクリル酸蒸留装置へ導入する粗アクリル酸の量に応じて決定したり、当該粗アクリル酸の試料を分析し、特定の不純物の含有量を求め、当該含有量に基づいて決定すればよい。
本発明方法により、アクリル酸の蒸留工程中におけるアクリル酸蒸留装置の底部や蒸発器などにおける高沸点不純物の付着や、蒸留後における廃油移送ラインの閉塞や廃油タンクでの析出物の生成など、アクリル酸精製システムのトラブルを抑制することができる。
本願は、2015年2月5日に出願された日本国特許出願第2015−21295号に基づく優先権の利益を主張するものである。2015年2月5日に出願された日本国特許出願第2015−21295号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、特に断らない限り、以下の「%」は「質量%」を表す。
実施例1
プロピレンを接触気相酸化して得られるアクリル酸含有ガスを水と接触させて粗アクリル酸とし、図1に模式的に示すアクリル酸精製システムにおける蒸留塔1へ導入した。蒸留して得られたアクリル酸を塔頂部から抜出し、塔底液を800kg/hrの速度で塔底部から抜出した。この塔底液に含まれるアクリル酸の含有量を以下に示す条件のガスクロマトグラフィーで測定した。
カラム: アジレントテクノロジー社製,DB−WAX,30m×0.53mm i.d.,膜厚:5μm
キャリアガス: ヘリウム(0.5kgf/cm2)
インジェクション温度: 250℃
検出器: 水素炎イオン化検出器
検出温度: 250℃
カラム温度: 50〜220℃(10℃/分で昇温)
また、上記塔底液の一部をサンプルとして採取して水で希釈することによりサンプル中の無水マレイン酸を加水分解した上で、以下に示す条件の液体クロマトグラフィーでマレイン酸の含有量を測定し、サンプル中のマレイン酸と、無水マレイン酸の加水分解により生じるマレイン酸との合計濃度を求めた。また、上記塔底液から別途採取したサンプルをエチレングリコールで希釈してサンプル中の無水マレイン酸をエステル化し、以下に示す条件の液体クロマトグラフィーでサンプル中のマレイン酸の濃度を求めた。さらに上記の前者マレイン酸合計濃度から後者のサンプル中マレイン酸濃度を差し引くことにより、サンプル中の無水マレイン酸の濃度を算出した。結果を表1に示す。
カラム: GLサイエンス社製,Inertsil(登録商標) ODS−3,4.6×250mm,粒子径:5μm
溶離液: 0.1%リン酸水溶液/アセトニトリル=6/4(体積比)の混合溶液
流速: 1mL/min
カラム温度: 50℃
検出器: 紫外可視分光光度計
検出波長: 210nm
当該塔底液を、6.5kg/hrのエチレングリコールと共に蒸留塔2の中段へ供給した。蒸留塔2としては、段数15段の多段塔である無堰多孔板蒸留塔を用い、塔底温度が89℃となるように薄膜蒸発器3を制御し、操作圧力34mmHg、還流比0.7の条件下でアクリル酸を蒸留し、塔頂からアクリル酸を含む液を600kg/hrで回収した。薄膜蒸発器3としては、伝熱面積が7.5m2の横型のものを用いた。
薄膜蒸発器3からの缶液は容量11m3の熱分解槽4へ導入し、槽内温度150℃、滞留時間45時間の条件下でアクリル酸二量体を熱分解した。熱分解槽4の缶液の一部を2800kg/hrの循環量で薄膜蒸発器3へ循環し、また、200kg/hrで廃油として廃棄した。
蒸留塔2の留出液を分析したが、導入したエチレングリコールの混入は認められなかった。また、上記の条件で6ヶ月にわたりアクリル酸の精製を継続したが、蒸留塔2の塔底部から薄膜蒸発器3および熱分解槽4に至るまでの汚れ、循環ラインおよび蒸留塔2から廃油タンクまでの送液ラインの閉塞、廃油タンクにおける廃油中の析出物など、廃油が原因となるアクリル酸精製システムのトラブルは認められず、図1のアクリル酸精製システムを安定的に稼働することができた。
実施例2
エチレングリコールの供給量を6.5kg/hrから2.2kg/hrに変更した以外は上記実施例1と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、留出液にエチレングリコールは観測されず、また、上記実施例1に示すようなアクリル酸精製システムのトラブルは認められず、6ヶ月安定に稼働することができた。
比較例1
エチレングリコールを導入しない以外は上記実施例1と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、2ヶ月稼働した時点で廃油用の配管が詰まり、稼働を停止せざるをえなくなった。
比較例2
エチレングリコールの代わりに1−ヘプタノールを用いた以外は上記実施例1と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、留出液中に1−ヘプタノールが1340ppm観測された。
以上の結果を表2にまとめる。
表2に示す結果のとおり、粗アクリル酸溶液からアクリル酸を蒸留するに当たり溶媒を導入しない場合には、廃油用の配管が詰まってしまい、稼働を停止せざるをえなくなった。また、溶媒として1−ヘプタノールを導入した場合には、目的化合物であるアクリル酸に導入溶媒が混入してしまい、純度の高いアクリル酸を得ることができなかった。
一方、アクリル酸より沸点が50℃以上高い溶媒を廃油に導入した場合には、廃油用配管の閉塞といったアクリル酸精製システムのトラブルは認められず、且つアクリル酸への導入溶媒の混入も認められず、アクリル酸の精製を長期間にわたり効果的に実施することが可能となった。
実施例3
アクリル酸86.9質量%、水5.0質量%、酢酸4.0質量%、マレイン酸0.8%、フルフラール0.2%、ベンズアルデヒド0.1%、アクリル酸二量体2.0%を含む粗アクリル酸溶液を、図2に模式的に示すアクリル酸精製システムの、段数20段のシーブトレイとリボイラーを備えた蒸留塔1の10段目に2.54kg/hrの速度で供給し、圧力93hPa、還流比0.3、塔底温度100℃の条件でアクリル酸を蒸留した。
段数20段のシーブトレイとリボイラーを備えた反応蒸留装置5の10段目に、上記蒸留塔1の塔底液を190kg/hrの速度で、また、エチレングリコールを2.1kg/hrの速度で供給した。
上記蒸留塔1の塔底液を、上記実施例1と同様の条件で分析した。結果を表3に示す。
反応蒸留装置5では、圧力270hPa、還流比2、塔底温度170℃、滞留時間10時間の条件で、アクリル酸二量体を分解しつつアクリル酸を蒸留し、上記蒸留塔へ返送した。また、70kg/hrの速度で反応蒸留装置から塔底液を抜き出し、廃油として廃油タンクへ送液した。
上記反応蒸留装置の留出液を分析したが、添加したエチレングリコールの混入は認められなかった。また、上記の条件で2ヶ月にわたりアクリル酸の精製を継続したが、反応蒸留装置の塔底部の汚れ、塔底部から廃油タンクまでの送液ラインの閉塞、廃油タンクにおける廃油中の析出物など、廃油が原因となるアクリル酸精製システムのトラブルは認められず、アクリル酸精製システムを安定的に稼働することができた。
実施例4
エチレングリコールの供給量を2.1kg/hrから0.7kg/hrに変更した以外は上記実施例3と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、留出液にエチレングリコールは観測されず、2ヶ月安定に稼働することができた。但し、稼働後の点検で塔底部と廃油の送液ラインに若干の汚れが観測された。
実施例5
エチレングリコールの供給量を2.1kg/hrから4.2kg/hrに変更した以外は上記実施例3と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、留出液にエチレングリコールは観測されず、また、アクリル酸精製システムのトラブルは認められず、2ヶ月安定に稼働することができた。
実施例6
エチレングリコールの供給位置を反応蒸留装置の中段(20段中の10段目)から塔底に変更した以外は上記実施例5と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、留出液にエチレングリコールは観測されず、また、アクリル酸精製システムのトラブルは認められず、2ヶ月安定に稼働することができた。
実施例7
エチレングリコールをグリセリンに変更した以外は上記実施例3と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、留出液にグリセリンは観測されず、2ヶ月安定に稼働することができた。
比較例3
エチレングリコールを導入せず、反応蒸留装置の塔底温度を165℃とし、塔底抜出量を75kg/hrとした以外は実施例3と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、2週間稼働した時点で廃油用の配管が詰まり、稼働を停止せざるを得なくなった。
比較例4
エチレングリコールの代わりにメタノールを導入した以外は上記実施例3と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、蒸留アクリル酸にメタノールが混入し、また、2週間稼働した時点で廃油用の配管が詰まり、稼働を停止せざるをえなくなった。
比較例5
エチレングリコールの代わりに酢酸を導入した以外は上記実施例3と同様にしてアクリル酸を精製した。その結果、2週間稼働した時点で廃油用の配管が詰まり、稼働を停止せざるをえなくなった。
実施例3〜7および比較例3〜5の結果を表4にまとめる。
表4に示す結果のとおり、粗アクリル酸溶液からアクリル酸を蒸留するに当たり溶媒を導入しない場合には、廃油用の配管が詰まってしまい、稼働を停止せざるをえなくなった。また、メタノールや酢酸を導入した場合も同様であった。
一方、アクリル酸より沸点が50℃以上高いアルコール溶媒であるエチレングリコールとグリセリンを添加した場合には、廃油を原因とする致命的なトラブルは認められず、アクリル酸の精製を効果的に実施することが可能となった。但し、粗アクリル酸に含まれるマレイン酸と無水マレイン酸に対するアルコール溶媒の割合が3.0質量%未満である場合には、蒸留装置の塔底部と廃油の送液ラインに若干の汚れが認められた。それに対して当該割合が3.0質量%以上であれば、かかる汚れも認められなかった。
1: 蒸留塔
2: 蒸留塔
3: 薄膜蒸発器
4: 熱分解槽
5: 反応蒸留塔

Claims (8)

  1. アクリル酸を製造するための方法であって、
    蒸留塔とアクリル酸二量体の熱分解装置を含むアクリル酸精製システムへ、少なくとも、粗アクリル酸と、アクリル酸の沸点よりも50℃以上高い沸点を有し、室温(25℃)および常圧の条件で液体であり、且つ、置換基として1以上の水酸基を有する炭化水素であるアルコール溶媒とを導入し、アクリル酸を蒸留するに当たり、蒸留塔の底液を連続的または断続的に熱分解装置へ抜き出し、加熱することによりアクリル酸二量体をアクリル酸へ再分解する工程を含むことを特徴とする製造方法。
  2. アクリル酸二量体をアクリル酸に熱分解するための温度が、120℃以上、220℃以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記粗アクリル酸と上記アルコール溶媒とを混合した上で上記アクリル酸精製システムへ導入する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 上記粗アクリル酸と上記アルコール溶媒とを別々に上記アクリル酸精製システムへ導入する請求項1または2に記載の製造方法。
  5. 上記アルコール溶媒の導入量を、上記粗アクリル酸に含まれるマレイン酸および無水マレイン酸の合計量に対して1.0質量%以上にする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  6. 上記アルコール溶媒として多価アルコール溶媒を用いる請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  7. 上記アルコール溶媒としてエチレングリコールを用いる請求項に記載の製造方法。
  8. 粗アクリル酸に含まれるマレイン酸および無水マレイン酸の合計量に対して100質量%以下のアルコール溶媒をアクリル酸精製システムへ導入する請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
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