JP6283299B2 - 歯車および駆動装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、歯車のバックラッシュを調整する技術に関する。
例えば自動車の駆動装置等の歯車を用いた装置においては、騒音を低減するため適切なバックラッシュ管理が求められている。バックラッシュを管理する方法としては、従来、シム(スペーサー、ライナー)を用いたものが知られている。すなわちこの方法では、歯車の組み付け時に、2つの歯車の間にシムを挟む。そして、駆動装置が組み上がった後でシムを抜き取る。しかし、この方法では、シムが抜けなかったり、シムを抜き忘れたりしてしまうという問題があった。
特許文献1〜3はいずれも、歯面にコーティング層(被膜)を形成した歯車を用いて組み付けを行い、組み付け後に歯車を回転させてコーティング層を剥離することによりバックラッシュを調整する技術を開示している。
特開2002−266986号公報 特表2004−515732号公報 特開2010−38220号公報
コーティング層はバックラッシュの調整に用いられるもので、組み付けが終わってしまえば不要となるものである。しかし、特許文献1〜3の技術においては、コーティング層の剥離片が多量に発生してしまうという問題があった。
これに対し本発明は、コーティング層を用いてバックラッシュの調整を行う技術において、コーティング層の剥離片の量を低減する技術を提供する。
本発明は、回転軸を中心に回転する歯車本体と、前記歯車本体の周囲に前記回転軸の回転方向に沿って設けられた複数の歯と、前記複数の歯の歯面のうち歯幅方向の一部のみの領域に形成された樹脂コーティング層とを有する歯車を提供する。
前記樹脂コーティング層は、前記歯面のうち前記歯幅方向の中心を含む一部のみの領域に形成されていてもよい。
また、本発明は、回転軸を中心に回転する歯車本体、当該歯車本体の周囲に当該回転軸の回転方向に沿って設けられた複数の歯、および当該複数の歯の歯面のうち歯幅方向の一部のみの領域に形成された樹脂コーティング層を有する第1歯車を準備する工程と、前記第1歯車と噛み合う第2歯車を準備する工程と、前記第1歯車および前記第2歯車を、前記第2歯車の歯面が前記第1歯車の前記樹脂コーティング層に接するように駆動装置に組み付ける工程と、前記駆動装置において前記第1歯車の前記樹脂コーティング層を除去する工程とを含む駆動装置の製造方法を提供する。
前記樹脂コーティング層を除去する工程において、前記第1歯車および前記第2歯車を回転させることにより前記樹脂コーティング層が除去されてもよい。
本発明によれば、コーティング層の剥離片の量を低減することができる。
一実施形態に係る駆動装置1の概要を示す図。 駆動装置1の製造方法を示すフローチャート。 歯車10の構造を示す図。 歯面におけるコーティング層13の形成位置を例示する図。 ステップS2の後の状態を例示する図。 ステップS3の後の状態を例示する図。
図1は、一実施形態に係る駆動装置1の概要を示す図である。駆動装置1は、歯車(ギア)10、歯車20、およびシャフト30を有する。駆動装置1は、例えば、オイルポンプを備えたバランサ装置である。すなわちこの場合、シャフト30はバランスシャフトであり、歯車10はバランスシャフトに取り付けられたバランスシャフトギアであり、歯車20はオイルポンプを駆動するためのオイルポンプギアである。歯車10と歯車20との歯打ち音抑制のためには、歯車10と歯車20とのバックラッシュを狭くすることが求められる。なお図1では、図面を簡単にするため、歯車10、歯車20、およびシャフト30以外の要素は図示を省略している。
図2は、駆動装置1の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS1において、歯車10および歯車20が準備される。この例で、歯車10および歯車20は、斜歯歯車(ヘリカルギア)である。
図3は、歯車10の構造を示す図である。歯車10は、歯車本体11と、歯12と、コーティング層13とを有する。歯車本体11は、シャフト30に嵌め合わせまたは接合されており、シャフト30の回転に伴って回転する。歯車本体11は、ほぼ円板形状を有している。歯車本体11は、外周部に、径方向に延びる複数の歯12を有する。歯12の歯面には、コーティング層13が形成されている。歯車本体11および歯12は、例えば、鋼等の鉄系の材料で形成されている。あるいは、歯車本体11および歯12は、銅、アルミニウム、これらを基にした合金など、鉄系以外の材料で形成されていてもよい。
図4は、歯面におけるコーティング層13の形成位置を例示する図である。コーティング層13は、歯12の歯面のうち、歯幅方向において一部の領域のみに形成されている。この例では、コーティング層13は、歯幅方向の中心部周辺のみに形成されている。歯幅方向の両端部にはコーティング層13が形成されておらず、基材が露出している。コーティング層13は、例えば、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、これらの樹脂のジイソシアネート変性、BPDA変性、またはスルホン変性樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂もしくはフェノール樹脂のいずれか1種以上により形成される。なお、コーティング層13は、樹脂組成物に加え、添加物を含んでいてもよい。コーティング層13は、例えばパッド印刷により形成される。コーティング層3は、スプレー法、ロール転写法、タンブリング法、浸漬法、はけ塗り法、またはスクリーン印刷により形成されてもよい。
コーティング層13の膜厚は、バックラッシュの設計値の1/2程度であることが好ましい。例えば、バックラッシュの設計値が40〜80μmであれば、コーティング層13の膜厚は20〜40μmである。
また、後述するようにコーティング層13は歯車10の組み付け時にのみ存在してればよく、完成品の駆動装置1として作動しているときには、コーティング層13はなくなっていることが好ましい。理想的には、コーティング層13はすべて剥離または摩滅していることが好ましい。すなわちコーティング層13と歯車10の歯面との接合強度(接着強度)は強固である必要はなく、駆動装置1を作動させ歯車10および歯車20を数回、回転させると剥離する程度の強度で接合されていることが好ましい。
歯車20の詳細な構造については図示を省略する。歯車20は歯車10と噛み合い、コーティング層を有さない構造である。
再び図2を参照する。ステップS2において、歯車10および歯車20が駆動装置1に組み付けられる。
図5は、ステップS2の後の状態を例示する図である。歯車10および歯車20は、歯車20の歯面が歯車10のコーティング層13に接するように(または、歯車20をコーティング層13に押しつけて)組み付けられる。このとき、歯車10の歯面と歯車20との歯面との距離は、コーティング層13の厚さに相当する距離である。
再び図2を参照する。ステップS3において、コーティング層13が除去される。この例では、駆動装置1を作動させることにより、すなわち、歯車10および歯車20を回転させることにより、コーティング層13が除去される。歯車10および歯車20が回転すると、歯車20の歯面を介してコーティング層13に与えられる力により、コーティング層13が歯12の歯面から剥離する。あるいは、歯車20の歯面とコーティング層13との摩擦力により、コーティング層13が摩耗する。
図6は、ステップS3の後の状態を例示する図である。図5の状態から、コーティング層13が除去されている。したがって、歯車10の歯面と歯車20との歯面との間隔すなわちバックラッシュは、コーティング層13の厚さの約2倍に相当する距離である。
例えば、コーティング層13の膜厚が20〜40μmであれば、歯車10と歯車20とのバックラッシュはその倍の40〜80μmとなることが期待される。本実施形態によれば、シムの抜き忘れや駆動装置中へのシムの残存という問題もなく、また、コーティング層13は歯12の歯面全体に均一に形成されているのではなく、幅方向において一部の領域にのみ形成されており、歯面全体に均一にコーティング層が形成されている場合と比較してコーティング層の剥離片を低減することができる。
また、コーティング層13が歯12の歯面全体に均一に形成されていた場合において歯車20の歯面と歯車10の歯面とが片当たりしたときは、片当たりしている端部の近傍だけコーティング層13が剥離し、反対側の端部でコーティング層13が剥離しない可能性がある。しかし、図4のように、歯幅方向の中心部周辺のみにコーティング層13を形成すれば、片当たりしていない端部においてコーティング層が剥離せず残ってしまう可能性を低減することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、歯車10の歯面においてコーティング層13が形成される位置は、歯幅方向の中心部周辺に限定されない。コーティング層13は、歯幅方向の端部にのみ形成され、歯幅方向の中心部周辺には形成されていなくてもよい。
実施形態では歯車10が樹脂コーティング層を有する例を説明したが、歯車20が樹脂コーティング層を有していてもよい。この場合、歯車10は樹脂コーティング層を有していてもよいし、樹脂コーティング層を有していなくてもよい。
駆動装置1は、オイルポンプを備えたバランサ装置に限定されない。駆動装置1は、コピー機やプリンタなどの電子機器、またはロボットに用いられる駆動装置であってもよい。また、歯車10および歯車20は斜歯歯車に限定されず、平歯車等、他の形状の歯車であってもよい。
1…駆動装置、10…歯車、11…歯車本体、12…歯、13…コーティング層、20…歯車、30…シャフト

Claims (4)

  1. 回転軸を中心に回転する歯車本体と、
    前記歯車本体の周囲に前記回転軸の回転方向に沿って設けられた複数の歯と、
    前記複数の歯の歯面のうち歯幅方向の一部のみの領域に形成された樹脂コーティング層と
    を有する歯車。
  2. 前記樹脂コーティング層は、前記歯面のうち前記歯幅方向の中心を含む一部のみの領域に形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の歯車。
  3. 回転軸を中心に回転する歯車本体、当該歯車本体の周囲に当該回転軸の回転方向に沿って設けられた複数の歯、および当該複数の歯の歯面のうち歯幅方向の一部のみの領域に形成された樹脂コーティング層を有する第1歯車を準備する工程と、
    前記第1歯車と噛み合う第2歯車を準備する工程と、
    前記第1歯車および前記第2歯車を、前記第2歯車の歯面が前記第1歯車の前記樹脂コーティング層に接するように駆動装置に組み付ける工程と、
    前記駆動装置において前記第1歯車の前記樹脂コーティング層を除去する工程と
    を含む駆動装置の製造方法。
  4. 前記樹脂コーティング層を除去する工程において、前記第1歯車および前記第2歯車を回転させることにより前記樹脂コーティング層が除去される
    ことを特徴とする、請求項3に記載の駆動装置の製造方法。
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