JP6281576B2 - エンジンオイルの劣化診断装置 - Google Patents

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Description

ここに開示する技術は、エンジンオイルの劣化診断装置に関する。
特許文献1には、エンジン回転数と、燃料噴射量(つまり、エンジン負荷)とに基づいて、スモークの発生量を推定演算すると共に、推定したスモーク量を積算した値に基づいて、オイルの劣化状態を診断することが記載されている。これにより、エンジンの運転状態に基づいて、オイルの劣化状態を精度良く診断することが可能になる。
実公平1−38250号公報
ところが、本願発明者らの検討によれば、エンジン回転数とエンジン負荷とからなるエンジンの運転状態に基づいてスモークの発生量を推定することは、推定精度が低いことが判明した。例えば暖気完了前のように、燃焼室の温度状態が低いときは、燃料が気化し難いため、必要な気化燃料量を確保できるように、燃料噴射量を増量する制御が行われる。しかしながら、燃料噴射量を増量すると燃料の噴射期間が長くなるから、噴射期間の終盤が圧縮行程の遅い時期になって、噴射期間の終盤に噴射した燃料がスモークになりやすい。つまり、エンジンの運転状態が同じであっても燃焼室の温度状態に応じて、発生するスモーク量が変化し得る。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スモーク量の推定精度を高めることで、エンジンオイルの劣化状態の診断精度を高めることにある。
ここに開示する技術は、所定期間内にエンジンの燃焼室内で発生するスモーク量を推定演算するよう構成されたスモーク発生量推定手段を備え、推定演算したスモーク量を積算した積算値に基づいてエンジンオイルの劣化度合いを診断するよう構成されたエンジンオイルの劣化診断装置を対象とする。
エンジンオイルの劣化診断装置は、エンジン回転数を検出するよう構成された手段と、エンジン負荷を推定又は決定するよう構成された手段と、燃焼室温度を推定又は検出するよう構成された手段と、を備え、前記スモーク発生量推定手段は、前記エンジン回転数と、前記エンジン負荷に関係する負荷パラメータと、に基づいて、スモーク量を算出し、前記スモーク発生量推定手段はまた、前記燃焼室の温度に相関関係のある温度パラメータに基づき、前記温度パラメータが所定の第1温度を下回るときには、算出したスモーク量を増量する補正を行う。
この構成によると、スモーク発生量推定手段は、エンジン回転数と、エンジン負荷に関係するパラメータとに基づいて、スモーク量を算出すると共に、算出したスモーク量を、燃焼室の温度に相関関係のある温度パラメータに基づいて補正することによって、スモーク量を推定演算する。
具体的に、スモーク発生量推定手段は、温度パラメータが所定の第1温度を下回るときには、エンジンの運転状態に基づいて算出したスモーク量を増量する補正を行う。燃焼室の温度状態が低いときには、燃料が気化し難い上に、必要な気化燃料量を確保するために、燃料噴射量を増量する。燃料噴射量の増量によって、エンジンの運転状態(回転数、及び、い負荷)が同じであっても、燃焼室の温度状態が低いときには、高いときよりもスモーク量が増える傾向にある。
前記の構成は、燃焼室の温度に相関関係のある温度パラメータに基づいて、算出したスモーク量を補正することにより、スモーク量の推定精度を高めることが可能になる。尚、エンジンの運転状態によっては、第1温度を下回るときであってもスモーク量が増えないこともある(例えば、燃焼室の温度の高低にかかわらず、スモーク量がゼロの場合等)。従って、第1温度を下回るときであってもスモーク量の補正を実質的に行わない場合がある。
そして、精度よく推定演算したスモーク量を積算した積算値に基づいて、エンジンオイルの劣化度合いを診断することにより、エンジンオイルの劣化度合いの診断精度も高まる。その結果、エンジンオイルの交換を適切なタイミングでユーザに促すことが可能になる。このことにより、エンジンの劣化を抑制することも可能になる。
前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第1温度よりも低い第2温度以下のときには、低回転域では、前記エンジンの回転数が高くなるほど、前記スモーク量が少なくなるよう推定演算し、前記低回転域よりも回転数の高い高回転域では、前記エンジンの回転数が高くなるほど、前記スモーク量が多くなるように推定演算する、としてもよい。
一般的に、エンジンの回転数が低いときには、燃焼室内のガス流動が弱くなるため、気筒内に噴射した燃料が燃焼室の壁面に付着しやすくなると共に、混合気が不均質になりやすい。よって、エンジン回転数が低いほど、スモークが発生しやすい。エンジン回転数が高くなれば、スモーク量は少なくなる。
従って、温度パラメータが第2温度以下のときであって、エンジンの回転数が相対的に低い低回転域では、エンジンの回転数が高くなるほど、スモーク量が少なくなるように推定演算する。これにより、スモーク量の推定精度が向上する。
ここで、エンジンの回転数が相対的に高い高回転域では、クランク角変化に対する実時間が短くなる。前述したように、温度パラメータが第2温度以下のとき、言い換えると、燃焼室の温度状態が低いときには、燃料が気化し難い上に、温度状態が低いために燃料噴射量が増量される。そのため、燃料の噴射期間(つまり、噴射に必要な実時間)が長くなる。温度パラメータが第2温度以下のときでかつ、エンジンの回転数が高い高回転域では、回転数が高くなると、噴射期間の終盤に噴射した燃料が燃焼室の壁面に付着しやすくなり、スモークの発生量が増える。
そこで、温度パラメータが第2温度以下のときの高回転域では、エンジンの回転数が高くなるほど、スモーク量が多くなるように推定演算する。このことで、スモーク量の推定精度が向上する。
前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第2温度を超えかつ、前記第1温度を下回るときには、前記高回転域における、前記エンジンの回転数が高くなることに対する、前記スモーク量の増大割合を、前記温度パラメータが高くなるほど小さくする、としてもよい。
前述したように、温度パラメータが低いときには燃料噴射量が増えるため、高回転域においては、エンジンの回転数が高くなるに従いスモーク量が増大する。一方、温度パラメータが高くなれば、燃料噴射量が、その分、減るため、スモークが発生し難くなる。つまり、高回転域において、エンジンの回転数が高くなることに対する、スモーク量の増大割合は、温度パラメータが高くなると減少する。尚、スモーク量の増大割合は、横軸にエンジンの回転数、縦軸にスモーク量とした二次元平面における傾きと定義することができる。
従って、温度パラメータが第2温度を超えかつ、第1温度を下回るときには、高回転域における、エンジンの回転数が高くなることに対する、スモーク量の増大割合を、温度パラメータが高くなるほど小さくする。このことにより、スモーク量の推定精度が向上する。
前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第1温度の時の、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記スモーク量との関係を示す第1温度データと、前記温度パラメータが前記第2温度の時の、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記スモーク量との関係を示す第2温度データと、を有し、前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第1温度以上のときには、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第1温度データとに基づいて前記スモーク量を推定演算しかつ、前記温度パラメータが前記第2温度以下のときには、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第2温度データとに基づいて前記スモーク量を推定演算し、前記スモーク発生量推定手段はまた、前記温度パラメータが、前記第2温度を超えかつ、前記第1温度を下回るときには、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第1温度データとから第1温度スモーク量を算出すると共に、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第2温度データとから第2温度スモーク量を算出しかつ、前記第1温度スモーク量と前記第2温度スモーク量との線形補間によって、前記スモーク量を推定演算する、としてもよい。ここで、第1温度データ及び第2温度データはそれぞれ、実機において得られたデータとしてもよい。
前記の構成によると、温度パラメータが第1温度以上のとき、言い換えると、燃焼室の温度状態が所定よりも高いときには、温度が変化しても、発生するスモーク量に大きな変化はない。このため、エンジンの回転数と、負荷パラメータと、第1温度データとに基づいて、スモーク量を推定演算する。つまり、スモーク量は、エンジンの運転状態と第1温度データとに基づいて推定演算され、温度が変化しても、スモーク量は変わらない。これにより、精度よく、スモーク量を推定演算することが可能になる。尚、ここでいうスモーク量の推定演算には、スモーク量をゼロと推定演算することも含まれる。
温度パラメータが第2温度以下のとき、言い換えると、燃焼室の温度状態が所定よりも低いときには、エンジンの回転数と、負荷パラメータと、第2温度データとに基づいて、スモーク量を推定演算する。つまり、スモーク量は、エンジンの運転状態と第2温度データとに基づいて推定演算される。
温度パラメータが第2温度を超えかつ、第1温度を下回るときには、第1温度データと第2温度データとの両方を利用する。具体的には、エンジンの回転数と、負荷パラメータと、第1温度データとから第1温度スモーク量を算出する。また、エンジンの回転数と、負荷パラメータと、第2温度データとから第2温度スモーク量を算出する。そうして、第1温度スモーク量と第2温度スモーク量との線形補間によって、当該温度パラメータ時のスモーク量を推定演算する。こうすることで、スモーク発生量推定手段が有するデータ量(つまり、記憶するデータ量)をできるだけ少なくしながら、スモーク量の推定精度を向上させることが可能になる。
以上説明したように、前記のエンジンオイルの劣化診断装置によると、エンジンの運転状態に加えて、燃焼室の温度状態を考慮してスモーク量を推定演算することにより、推定精度が向上し、エンジンオイルの劣化度合いの診断精度を高めることができる。
図1は、エンジンオイルの劣化診断装置が適用されるエンジンシステムを例示する概念図である。 図2は、エンジンオイルの劣化診断装置におけるスモーク発生量推定手段の構成を示すブロック図である。 図3は、スモーク量の推定演算に利用する第1温度データマップと第2温度データマップとを示す概念図である。 図4は、高負荷域における、エンジン回転数とスモーク発生量との関係を例示する図である。 図5は、所定のエンジン運転状態における、水温とスモーク量の推定値との関係を示す図である。 図6は、エンジンオイルの劣化診断に係るフローチャートである。 図7は、エンジンシステムの構成を示すブロック図である。
以下、エンジンオイルの劣化診断装置について、図を参照しながら説明する。尚、以下の説明は、エンジンオイル劣化診断装置の例示である。図1は、エンジンオイル劣化診断装置10(図2参照)が適用されるエンジンシステム1を例示している。図7は、エンジンシステム1の構成を示すブロック図である。
エンジンシステム1は、火花点火式内燃機関として構成されたエンジン2を備えている。エンジン2は、ターボ過給機付きエンジンである。エンジン2は、図示は省略するが、自動車等の車両における前部のエンジンルーム内で、いわゆる横置きに搭載される。エンジン2は縦置きであってもよい。エンジン2の出力軸であるクランクシャフト21は、図示を省略する変速機を介して駆動輪に連結されている。エンジン2の出力を駆動輪に伝達することによって、車両が走行する。
エンジン2は、シリンダブロック22と、シリンダブロック22の上に載置されるシリンダヘッド23と、を備えている。シリンダブロック22の内部には、複数の気筒24が設けられている。この例では、エンジン2は、4つの気筒24を有する。4つの気筒24は、図1における紙面に垂直な方向に並んで配置されている。尚、エンジン2が有する気筒24の数、及び、気筒24の配列は、特定の数及び配列に限定されない。
シリンダブロック22の下側には、エンジンオイルを貯留するオイルパン29が取り付けられている。シリンダブロック22によって、クランクシャフト21を収容するクランクケース26が区画される。エンジン2は、クランクシャフト21の回転数、つまりエンジン2の回転数を検知するクランク角センサ211を有している。
クランクシャフト21は、一部の図示を省略するコネクティングロッド271を介してピストン27に連結されている。ピストン27は、各気筒24内に往復動可能に内挿されている。ピストン27と、シリンダヘッド23と、気筒24とは、燃焼室28を区画形成する。
シリンダヘッド23には、気筒24毎に吸気ポート231が形成されている。吸気ポート231は、燃焼室28に連通する。吸気ポート231には、燃焼室28と吸気ポート231との間を遮断可能な吸気バルブ31が配設されている。吸気バルブ31は、吸気動弁機構32によって駆動される。吸気バルブ31は、所定のタイミングで吸気ポート231を開閉する。
シリンダヘッド23にはまた、気筒24毎に排気ポート232が形成されている。排気ポート232は、燃焼室28に連通する。排気ポート232には、燃焼室28と排気ポート232との間を遮断可能な排気バルブ33が配設されている。排気バルブ33は、排気動弁機構34によって駆動される。排気バルブ33は、所定のタイミングで排気ポート232を開閉する。
吸気動弁機構32及び排気動弁機構34はそれぞれ、図示は省略するが、吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有する。これらのカムシャフトは、図示は省略するが、タイミングチェーンを介してクランクシャフト21に駆動連結される。吸気カムシャフト及び排気カムシャフトはそれぞれ、クランクシャフト21の回転に連動して回転する。
吸気動弁機構32は、吸気バルブ31のリフト量及び吸気バルブ31の開弁期間を変更可能に構成されている。吸気動弁機構32は、公知の様々な構成を採用することが可能である。吸気動弁機構32は、例えばカムシャフトによって昇圧される油圧を利用することによって、吸気バルブ31のリフト量及び吸気バルブ31の開弁期間を、連続的に変更する構成を採用してもよい。吸気動弁機構32は、図では明示していないが、エンジン制御部7からの信号を受けて、吸気バルブ31のリフト量及び吸気バルブ31の開弁期間を変更する。
排気動弁機構34も、排気バルブ33のリフト量及び排気バルブ33の開弁期間を変更可能に構成されている。排気動弁機構34は、公知の様々な構成を採用することが可能である。排気動弁機構34は、例えばカムシャフトによって昇圧される油圧を利用することによって、排気バルブ33のリフト量及び排気バルブ33の開弁期間を、連続的に変更する構成を採用してもよい。排気動弁機構34は、図では明示していないが、エンジン制御部7からの信号を受けて、排気バルブ33のリフト量及び排気バルブ33の開弁期間を変更する。
吸気ポート231には、吸気通路51が接続されている。吸気通路51は、気筒24に吸気を導く。吸気通路51には、スロットルバルブ511が介設している。スロットルバルブ511は、電気制御式である。エンジン制御部7が出力した制御信号を受けたスロットルアクチュエータ512が、スロットルバルブ511の開度を調整する。
吸気通路51におけるスロットルバルブ511よりも上流には、ターボ過給機9のコンプレッサ91が配設されている。コンプレッサ91が作動することにより、吸気の過給を行う。スロットルバルブ511とコンプレッサ91との間には、コンプレッサ91により圧縮された空気を冷却するインタークーラ513が配設されている。
吸気通路51におけるスロットルバルブ511よりも下流には、サージタンク521と、サージタンク521の下流側で4つの気筒24のそれぞれに分岐される独立通路522とが設けられている。
吸気通路51において、コンプレッサ91よりも下流には、気筒24に導入する吸入空気量と、吸気の温度とを検出するエアフローセンサ50が配設されている。
排気ポート232には、排気通路53が接続されている。排気通路53には、ターボ過給機9のタービン92が配設されている。タービン92が排気ガス流により回転し、タービン92の回転により、タービン92と連結されたコンプレッサ91が作動する。
排気通路53には、排気ガスを、タービン92をバイパスして流すための排気バイパス通路531が設けられている。排気バイパス通路531には、ウエストゲートバルブ93が設けられている。ウエストゲートバルブ93は、排気バイパス通路531を流れる排気ガスの流量を調整する。ウエストゲートバルブ93の開度が大きいほど、排気バイパス通路531を流れる排気ガスの流量が増え、タービン92を流れる流量が少なくなる。
排気通路53において、タービン92よりも下流には、排気ガスを浄化するよう構成された、第1触媒装置81と第2触媒装置82とが配設されている。排気通路53にはまた、排気ガス中の酸素濃度を検知するための、2つのOセンサ83、84が介設している。各Oセンサ83、84はそれぞれ、エンジン制御部7に検知信号を出力する。
シリンダヘッド23には、気筒24毎に燃料噴射弁41が取り付けられている。燃料噴射弁41は、気筒24内に直接、燃料(ここでは、ガソリン、又は、ガソリンを含む燃料)を噴射するように構成されている。燃料噴射弁41の構成は、どのようなものであってみよいが、例えば多噴口型の燃料噴射弁としてもよい。燃料噴射弁41は、エンジン制御部7からの燃料噴射パルスに従って、所定の量の燃料を、所定のタイミングで、気筒24内に噴射する。尚、図1の例では、燃料噴射弁41を、気筒24の吸気側の側部に取り付けている。気筒24内における燃料噴射弁4の取り付け位置は、図例の位置に限らない。
シリンダヘッド23にはまた、気筒24毎に、点火プラグ42が取り付けられている。点火プラグ42は、シリンダヘッド23の天井面において、電極が気筒24の軸心上となるように取り付けられている。点火プラグ42は、燃焼室28内で火花を発生させることによって、燃焼室28内の混合気に点火する。点火プラグ42は、エンジン制御部7からの点火信号により、所望の点火タイミングで火花を発生させる。
エンジン2は、燃焼室28から漏れ出たブローバイガスを、吸気通路51に戻すため連通部64を有している。連通部64は、エンジン2のクランクケース26と、サージタンク521とを互いに連通させるホースによって構成される。連通部64は、クランクケース26内のブローバイガスを、サージタンク521に導入する。サージタンク521には、PCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ65が取り付けられている。連通部64は、PCVバルブ65に接続される。PCVバルブ65は、連通部64を流れるブローバイガスの流量を調整する。PCVバルブ65は、この構成例では、クランクケース26と吸気通路51との圧力差に応じて開度を変更する機械式に構成されている。尚、PCVバルブ65は、サージタンク521ではなく、エンジン2のシリンダブロック22の側面に設けるオイルセパレータ(図示省略)に取り付けるようにしてもよい。
エンジン2の冷却水通路には、冷却水温を検知する水温センサ20が取り付けられている。また、後述するように、エンジン制御部7には、ユーザにエンジンオイルの交換を促すために点灯するオイル交換ランプ71が接続されると共に、エンジンオイルの交換完了時に操作されるリセットスイッチ72が接続される。尚、リセットスイッチは、ハードウエアスイッチに限らず、各種の操作画面が表示されるタッチパネル式の表示装置において設けられるソフトウエアスイッチとして構成される場合もある。
このエンジンシステム1は、エンジンオイルの劣化度合いを診断する劣化診断装置10を備えている。劣化診断装置の診断結果に基づいて、エンジンシステム1は、ユーザに対して、エンジンオイルの交換を促す警告を行う。エンジンオイルの劣化を診断し、ユーザに対しエンジンオイルの交換を促すことは、タイミングチェーンの摩耗を抑制するためである。つまり、チェーンを潤滑するエンジンオイルにスモークが多く含まれると、タイミングチェーンの摩耗が進行し、エンジンの性能が低下する。そこで、エンジンオイルの劣化度合いを診断し、それに基づいて、適切なタイミングで、エンジンオイルの交換を、ユーザに促す。これによって、エンジンオイルが新しいものに交換されれば、タイミングチェーンの摩耗の進行を抑制することができ、エンジン性能の低下を抑制することが可能になる。尚、このエンジンシステム1において、PCVバルブ65を電子制御式のものとし、クランクケース26と吸気通路51との圧力差に関わらず、エンジン2の運転状態に基づいて、必要時には、エンジン制御部7が、PCVバルブ65の開度を大きくすることにより、クランクケース26内の換気を適切なタイミングで行うようにしてもよい。これによっても、エンジンオイルに燃料及びスモークが混入することを抑制することができる。
図2は、エンジンオイルの劣化診断装置10におけるスモーク発生量推定手段100の構成を示している。スモーク発生量推定手段100は、エンジン制御部7によって構成される。
スモーク発生量推定手段100は、所定期間内(例えば0.1sec)にエンジン2の燃焼室28内で発生するスモーク量を推定演算する。エンジンオイルの劣化診断装置10は、推定演算されたスモーク量を積算すると共に、積算したスモーク量が所定量に達したときに、オイル交換ランプ71を点灯させる。
スモーク発生量推定手段100は、スモーク量の推定演算を、エンジン回転数、エンジン負荷、及び燃焼室28の温度状態に基づいて行う。エンジン回転数は、クランク角センサ211の検出信号に基づいて検出される。エンジン負荷は、この例では、アクセル開度センサ212、車速センサ214、変速機のギヤ段検出手段213の検出値に基づいて決定される。尚、エンジン負荷は、エアフローセンサ50によって検知される、気筒24内に導入される吸入空気量と吸気温度とにより推定してもよい。また、エンジン負荷は、例えば燃料噴射量に基づいて推定してもよい。
燃焼室温度は、この例では、エンジン2の冷却水温に基づく。つまり、水温センサ20の検出信号を利用する。冷却水温は、燃焼室温度に比例する。尚、燃焼室温度は、冷却水温に代えて、当該燃焼室温度と相関関係がある、エンジンオイルの温度や排気ガスの温度に基づいてもよい。また、燃焼室28の温度を、直接検出するようにしてもよい。
スモーク発生量推定手段100は、2つの温度データマップを有している。図3は、2つの温度データマップを概念的に示している。温度データマップは、高水温H(つまり、第1温度パラメータ、例えば90℃)のときの第1温度データマップ101、及び、冷却水温が低水温L(つまり、第2温度パラメータ、例えば20℃)のときの第2温度データマップ102である。各データマップ101、102は、例えば実機において得られたデータに基づいて作成してもよい。また、シミュレーションによって得られたデータに基づいて作成してもよい。
図3に示す例では、各データマップ101、102は、エンジン回転数を「行」、エンジン負荷を「列」にしたマトリックス状である。各データマップ101、102は、エンジン回転数とエンジン負荷とからなるエンジンの各運転状態に対し、燃焼室28内で発生し得るスモーク量(lij及びhij、但し、i=1〜3、j=1〜3)を示している。各データマップ101、102において、エンジン回転数は、低回転、中回転、及び高回転の3つに分けられている。また、エンジン負荷は、低負荷、中負荷、及び高負荷の3つに分けられている。尚、エンジン2の回転数領域は、図例のように3つに分割することに限定されず、2つに分割してもよいし、4つ以上に分割してもよい。同様に、エンジン2の負荷領域も、図例のように3つに分割することに限定されず、2つに分割してもよいし、4つ以上に分割してもよい。
ここで、エンジン2の運転状態の変化に対する、スモーク量の変化の傾向について、図3及び図4を参照しながら説明をする。図3に示す第1温度データマップ101及び第2温度データマップ102における「多」「中」「少」はそれぞれ、スモーク量(lij及びhij)の程度を示している。尚、「少」には、スモーク量がゼロの場合も含まれる。
先ず、第1温度データマップ101に示す高水温時のスモークの発生傾向について説明をする。高水温時においては、エンジン負荷が低負荷及び中負荷のときには、エンジン回転数の高低にかかわらず、スモークの発生量は「少」になる。エンジン負荷が高負荷のとき(このエンジンは、過給機付きエンジンであるため、充填量が1.0以上となる高負荷時)には、エンジン回転数が低いとスモーク量が「中」になり、エンジン回転数が高いとスモーク量が「少」になる。エンジン負荷が高負荷のときには、燃料噴射量が多くなることで、低負荷や中負荷と比べてスモークが発生しやすくなる。ここで、エンジン回転数が低いと、燃焼室28内のガス流動が弱くなるため、燃焼が燃焼室28の壁面に付着しやすくなると共に、混合気の濃度が不均一になりやすい。エンジン回転数が高いと、燃焼室28内のガス流動が強くなるため、燃料が燃焼室28の壁面に付着し難くなる。一方、高水温時の高回転時には燃焼室28内の壁面温度も高くなるため、仮に燃料が壁面に付着しても、燃料が気化しやすい。さらに、ガス流動が強いため、混合気の濃度が均一になりやすい。そのため、高水温時でかつ、エンジン負荷が高負荷のときには、図4に示すように、エンジン回転数が低いほど、スモーク量が増える傾向になる。図4におけるh11、h12,h13は、図3におけるh11,h12、h13に対応する。但し、高水温時には、低水温時と比較して発生するスモーク量自体は少ない。
次に、第2温度データマップ102に示す低水温時のスモークの発生傾向について説明をする。低水温時には、高水温時と比較してスモーク量は多くなる。これは、低水温時には、燃焼室温度も低いため、燃料が気化し難いこと、及び、燃料が気化し難いため、エンジン制御部7で推定又は決定したエンジン負荷を得るために必要な気化燃料量が確保できるよう、燃料噴射量を高水温時の同一エンジン負荷での運転時よりも増量補正することに起因する。燃料噴射量を増量すると、燃料噴射弁41の、一回の燃焼に対する燃料噴射期間が長くなって、噴射期間の終盤に噴射した燃料が、燃焼室28の壁面等に付着しやすくなる。低水温時には、燃焼室28の壁面温度も低く、付着した燃料が気化し難いため、高水温時よりもスモーク量が増える。
低水温時においても、エンジン負荷が低負荷及び中負荷のときには、高負荷時に比べてスモーク量は相対的に少なくなる。また、エンジン負荷が低負荷のときに、エンジン回転数が低いとスモーク量が「中」になり、エンジン回転数が高いとスモーク量が「少」になる傾向は、前記と高温時と同様である。
一方で、低水温時におけるエンジン負荷が中負荷又は高負荷のときには、エンジン回転数の高低に対するスモーク量の発生傾向は、高水温時とは異なる。つまり、図4に示すように、エンジン回転数が相対的に低い低回転域(図4における左半分の領域)では、エンジン回転数が高くなるほど、スモーク量は減少する。尚、図4におけるl11、l12,l13は、図3におけるl11,l12、l13に対応する。前述したように、エンジン回転数が高くなるに従って、燃焼室28内のガス流動が強くなるため、燃料が燃焼室28の壁面に付着し難くなると共に、ガス流動が強いことで、混合気の濃度が均一になりやすいためである。
これに対し、低水温時のエンジン回転数が相対的に高い高回転域(図4における右半分の領域)では、エンジン回転数が高くなるほど、スモーク量が増大する。これは、低水温でかつ、エンジン2の負荷が相対的に高いため、燃料噴射量が大幅に増えて、燃料の噴射期間(つまり、噴射に必要な実時間)が長くなることに加えて、エンジン2の回転数が高くなることで、クランク角変化に対する実時間が短くなり、噴射期間の終盤が、圧縮行程の遅い時期(例えば圧縮行程の後半)に相当し、噴射期間の終盤に噴射した燃料が燃焼室28の壁面に付着しやすくなるためである。高水温時であれば、燃焼室温度が高いので、壁面に付着しても気化しやすいが、低水温時であるため、壁面に付着した燃料は気化し難く、よって、スモークが発生しやすくなる。
従って、図4に示すように、低水温時の中高負荷時には、エンジン2の回転数の高低に対し、スモーク量の発生傾向が高水温時とは異なる特性になる。
スモーク発生量推定手段100は、冷却水温が高水温H以上のときには、第1温度データマップ101を用いて、エンジン回転数と、エンジン負荷と、からスモーク量を推定演算する。つまり、第1温度データマップ101の数値(hij)をそのまま、スモーク量と推定する。また、スモーク発生量推定手段100は、冷却水温が低水温L以下のときには、第2温度データマップ102を用いて、エンジン回転数と、エンジン負荷と、からスモーク量を推定演算する。つまり、第1温度データマップ101の数値(lij)をそのまま、スモーク量と推定する。
スモーク発生量推定手段100は、冷却水温が低水温Lを超えかつ、高水温Hを下回るとき(例えば水温T(図5参照))には、第1温度データマップ101と、第2温度データマップ102との両方を用いて、スモーク量を推定演算する。すなわち、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて、第1温度データマップ101から、第1温度スモーク量(hij)を算出すると共に、第2温度データマップ102から、第2温度スモーク量(lij)を算出する。そうして、図5に示すように、第1温度スモーク量hijと、第2温度スモーク量lijとの線形補間によって、水温Tにおけるスモーク量mを推定演算する。
このように、冷却水温が低水温Lを超えかつ、高水温Hを下回るときに、線形補間を行うことにより、図4に一点鎖線で示すように、高負荷の高回転域においては、エンジン回転数の変化に対する、スモーク量の増大割合(つまり、図4の二次元平面における傾き)が、冷却水温が高くなるほど、小さくなる。
前述の通り、冷却水温が高水温Hのときには、高負荷の高回転域において、エンジン回転数が高くなると、低回転域よりもスモーク量が少なくなるのに対し、冷却水温が低水温Lのときには、高負荷の高回転域において、エンジン回転数が高くなると、燃料噴射期間の増大に対してピストンスピードも上昇するために、噴射期間の終盤に噴射された燃料が燃焼室壁面やピストン冠面に付着しやすくなることに加えて、噴射された燃料が気化し難い環境であるので、スモーク量が低回転域よりも多くなる。燃焼室28の温度が高まると、燃焼室28内に噴射された燃料が気化しやすくなると共に、同一エンジン負荷を得るために必要な燃料噴射量を高水温時よりも増量させる割合が少なくなる。そのため、スモーク量が少なくなる。その結果、冷却水温が高くなると、エンジン回転数の変化に対する、スモーク量の増大割合が小さくなる。
こうして、スモーク発生量推定手段100は、所定期間内に発生するスモーク量を、その時のエンジン回転数、エンジン負荷及び冷却水温に基づいて、推定演算する。
図6は、劣化診断装置10による、エンジンオイルの劣化診断に係るフローチャートを示している。このフローは、エンジン2が始動をすれば開始し、エンジン2が停止すれば終了する。エンジン2が運転している間は、所定期間で繰り返される。
先ず、ステップS1では、エンジン2の運転状態を読み込む。具体的には、図2に示すように、エンジン回転数、吸入空気量、吸気温度、及び、冷却水温を読み込む。
続くステップS2では、前述したように、冷却水温に応じて第1温度データマップ101、及び/又は、第2温度データマップ102を用い、エンジン2の運転状態に従って、所定期間内に発生するスモーク量を推定演算する。ステップS3では、推定演算したスモーク量を積算し、ステップS4で、積算したスモーク量が、予め設定した所定を超えたか否かを判定する。ステップS4の判定がNOのときには、ステップS1に戻り、所定期間内に発生するスモーク量の推定演算、及び、推定したスモーク量の積算を繰り返す。
一方、ステップS4の判定がYESのときにはステップS5に移行し、エンジンオイルの交換を、ユーザに対して促すために、オイル交換ランプ71を点灯する。
ステップS6では、オイル交換を行った後で行われるオイル交換リセット操作、つまり、リセットスイッチ72がオン操作されたか否かを判定する。リセット操作がないときには、ステップS6からステップS1に戻り、スモーク量の推定演算、及び、推定演算したスモーク量の積算を繰り返す。積算スモーク量が所定値を超えたままであるため、ステップS5において、オイル交換ランプ71は点灯したままになる。
一方、リセット操作が行われれば、ステップS6からステップS7に移行し、積算スモーク量をリセットした上で、ステップS1にリターンする。この場合、積算スモーク量がゼロになるため、ステップS4の判定がNOとなり、オイル交換ランプ71が消灯される。
以上説明したように、ここに開示するエンジンオイルの劣化診断装置10は、所定期間内にエンジン2の燃焼室28内で発生するスモーク量を推定演算するよう構成されたスモーク発生量推定手段100を備え、推定演算したスモーク量を積算した積算値に基づいてエンジンオイルの劣化度合いを診断するよう構成されている。
スモーク発生量推定手段100は、エンジン2の回転数と、エンジン2の負荷に関係する負荷パラメータ(ここでは、吸入空気量及び吸気温度)と、に基づいて、第1温度データマップ101及び/又は第2温度データマップ102から、スモーク量を算出する。スモーク発生量推定手段100はまた、燃焼室28の温度に相関関係のある温度パラメータ(ここでは、燃焼室28の温度に比例する冷却水温)に基づき、温度パラメータが所定の第1温度(つまり、高水温H)を下回るときには、算出したスモーク量を増量する補正を行う(図5参照)。
つまり、冷却水温が高水温Hを下回るときには、第1温度データマップ101及び第2温度データマップ102を用いた線形補間により、又は、第2温度データマップ102により、スモーク量が推定演算される。これにより、推定演算されるスモーク量は、第1温度データマップ101のスモーク量(hij)よりも増量された値となる。
燃焼室28の温度状態が低いときには、燃料が気化し難い上に、必要な気化燃料量を確保するために、燃料噴射量を増量するから、スモーク量が増える傾向にある。
前記の構成は、燃焼室28の温度に比例する冷却水温に基づいて、算出したスモーク量を補正することにより、スモーク量の推定精度を高めることが可能になる。
尚、エンジン2の運転状態によっては、冷却水温が高水温Hを下回るときであってもスモーク量が増えないこともある(例えば、図3に示すように、低負荷の中高回転時は、冷却水温が高くても、低くても、スモーク量が「少」で同じである)。この場合、冷却水温に基づくスモーク量を第1温度データの値よりも増量させる補正、すなわち第1温度データと第2温度データに基づく線形補完は、実質的に行われないこととなる。
そして、精度よく推定演算したスモーク量を積算した積算値に基づいて、エンジンオイルの劣化度合いを診断することにより、エンジンオイルの劣化度合いの診断精度も高まる。その結果、エンジンオイルの交換を適切なタイミングでユーザに促すことが可能になる。このことにより、エンジン2の劣化を抑制することも可能になる。
スモーク発生量推定手段100は、第2温度(つまり、低水温L)以下のときには、低回転域では、エンジン2の回転数が高くなるほど、スモーク量が少なくなるよう推定演算し、低回転域よりも回転数の高い高回転域では、エンジン2の回転数が高くなるほど、スモーク量が多くなるように推定演算する(図4参照)。
一般的に、エンジン2の回転数が低いときには、燃焼室28内のガス流動が弱くなるため、気筒24内に噴射した燃料が燃焼室28の壁面に付着しやすくなると共に、混合気が不均質になりやすい。よって、エンジン回転数が低いほど、スモークが発生しやすい。エンジン回転数が高くなるに従って、ピストンスピードも上昇し、それに伴ってガス流動も強くなるので、低回転時と比較してスモーク量は少なくなる傾向となる。
従って、図4に示すように、冷却水温が低水温L以下のときであって、エンジン2の回転数が相対的に低い低回転域では、エンジン2の回転数が高くなるほど、スモーク量が少なくなるように推定演算する。これにより、スモーク量の推定精度が向上する。
一方、冷却水温が低位水温L以下のときであって、エンジン2の回転数が相対的に高い高回転域(特に高負荷運転時)では、燃料の噴射期間(つまり、噴射に必要な実時間)が長くなるのに対し、クランク角変化に対する実時間が短くなるから、噴射期間の終盤が、圧縮行程の遅い時期に相当し、噴射期間の終盤に噴射した燃料が燃焼室28の壁面に付着しやすくなり、スモークの発生量が増える。そこで、冷却水温が低水温L以下のときの高回転域では、エンジン2の回転数が高くなるほど、スモーク量が多くなるように推定演算する。このことで、スモーク量の推定精度が向上する。
スモーク発生量推定手段100は、温度パラメータが第2温度(つまり、低水温L)を超えかつ、第1温度(つまり、高水温H)を下回るときには、高回転域における、エンジン2の回転数が高くなることに対する、スモーク量の増大割合を、温度パラメータが高くなるほど小さくする(図4の一点鎖線参照)。
前述したように、冷却水温が低いときには燃料が気化しにくく、高回転域においては、エンジン2の回転数が高くなるに従い、燃焼室28内のガス流動は強くなり、燃焼室28壁面への燃料付着は減る傾向となるものの、同時に、単位時間当たりの燃料噴射回数も増え、後者の影響が前者を上回り、スモーク量が増大することとなる。一方、冷却水温が高くなれば、燃料の気化が促進されるので、その分、気化せずに燃焼室28に残留する燃料量が減るため、スモークが発生し難くなる。つまり、高回転域において、エンジン2の回転数が高くなることに対する、スモーク量の増大割合は、温度パラメータが高くなると減少する。従って、冷却水温が低水温Lを超えかつ、高水温Hを下回るときには、高回転域における、エンジン2の回転数が高くなることに対する、スモーク量の増大割合を、冷却水温が高くなるほど小さくする。このことにより、スモーク量の推定精度が向上する。
スモーク発生量推定手段100は、温度パラメータが第1温度(つまり、高水温H)の時の、エンジン2の回転数と、負荷パラメータと、スモーク量との関係を示す第1温度データ(つまり、第1温度データマップ101)と、温度パラメータが第2温度(つまり、低水温L)の時の、エンジン2の回転数と、負荷パラメータと、スモーク量との関係を示す第2温度データ(つまり、第2温度データマップ102)と、を有し、スモーク発生量推定手段100は、温度パラメータが第1温度以上のときには、エンジン2の回転数と、負荷パラメータと、第1温度データマップ101と、に基づいてスモーク量(hij)を推定演算しかつ、温度パラメータが第2温度以下のときには、エンジン2の回転数と、負荷パラメータと、第2温度データマップ102とに基づいてスモーク量(lij)を推定演算し、スモーク発生量推定手段00はまた、温度パラメータが、第2温度を超えかつ、第1温度を下回るときには、エンジン2の回転数と、負荷パラメータと、第1温度データマップ101とから第1温度スモーク量(hij)を算出すると共に、エンジン2の回転数と、負荷パラメータと、第2温度データマップ102とから第2温度スモーク量(lij)を算出しかつ、第1温度スモーク量と第2温度スモーク量との線形補間によって、スモーク量を推定演算する。
この構成により、スモーク発生量推定手段100が有するデータ量(つまり、記憶するデータ量)を、第1温度データマップ101と第2温度データマップ102との2つに制限しながら、スモーク量の推定精度を向上させることが可能になる。
尚、前記の構成では、第1温度データマップ101と、第2温度データマップ102との2つのデータマップを用いるようにしているが、3つ以上のデータマップを備え、それらを用いて、スモーク量を推定するようにしてもよい。
また、第1温度データマップ101のみを備えるようにし、冷却水温が高水温Hよりも低いときには、第1温度データマップ101のスモーク量(hij)に、エンジンの運転状態及び温度に対応する係数を掛けて増量することで、スモーク量の推定演算をしてもよい。
10 劣化診断装置
100 スモーク発生量推定手段
101 第1温度データマップ(第1温度データ)
102 第2温度データマップ(第2温度データ)
2 エンジン
28 燃焼室

Claims (4)

  1. 所定期間内にエンジンの燃焼室内で発生するスモーク量を推定演算するよう構成されたスモーク発生量推定手段を備え、推定演算したスモーク量を積算した積算値に基づいてエンジンオイルの劣化度合いを診断するよう構成されたエンジンオイルの劣化診断装置であって、
    エンジン回転数を検出するよう構成された手段と、
    エンジン負荷を推定又は決定するよう構成された手段と、
    燃焼室温度を推定又は検出するよう構成された手段と、を備え、
    前記スモーク発生量推定手段は、前記エンジン回転数と、前記エンジン負荷に関係する負荷パラメータと、に基づいて、スモーク量を算出し、
    前記スモーク発生量推定手段はまた、前記燃焼室の温度に相関関係のある温度パラメータに基づき、前記温度パラメータが所定の第1温度を下回るときには、算出したスモーク量を増量する補正を行うエンジンオイルの劣化診断装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンオイルの劣化診断装置において、
    前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第1温度よりも低い第2温度以下のときには、
    低回転域では、前記エンジンの回転数が高くなるほど、前記スモーク量が少なくなるよう推定演算し、
    前記低回転域よりも回転数の高い高回転域では、前記エンジンの回転数が高くなるほど、前記スモーク量が多くなるように推定演算するエンジンオイルの劣化診断装置。
  3. 請求項2に記載のエンジンオイルの劣化診断装置において、
    前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第2温度を超えかつ、前記第1温度を下回るときには、前記高回転域における、前記エンジンの回転数が高くなることに対する、前記スモーク量の増大割合を、前記温度パラメータが高くなるほど小さくするエンジンオイルの劣化診断装置。
  4. 請求項2又は3に記載のエンジンオイルの劣化診断装置において、
    前記スモーク発生量推定手段は、
    前記温度パラメータが前記第1温度の時の、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記スモーク量との関係を示す第1温度データと、
    前記温度パラメータが前記第2温度の時の、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記スモーク量との関係を示す第2温度データと、を有し、
    前記スモーク発生量推定手段は、前記温度パラメータが前記第1温度以上のときには、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第1温度データとに基づいて前記スモーク量を推定演算しかつ、前記温度パラメータが前記第2温度以下のときには、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第2温度データとに基づいて前記スモーク量を推定演算し、
    前記スモーク発生量推定手段はまた、前記温度パラメータが、前記第2温度を超えかつ、前記第1温度を下回るときには、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第1温度データとから第1温度スモーク量を算出すると共に、前記エンジンの回転数と、前記負荷パラメータと、前記第2温度データとから第2温度スモーク量を算出しかつ、前記第1温度スモーク量と前記第2温度スモーク量との線形補間によって、前記スモーク量を推定演算するエンジンオイルの劣化診断装置。
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