JP4026324B2 - エンジンオイル劣化判定方法および判定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンのエンジンオイル劣化判定方法および判定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンを使用していると、時の経過と共にエンジンオイルに異物が混入してくる。異物の主たるものは、エンジンでの燃料の燃焼によって生ずる煤(Soot)である。エンジンオイルに含まれる煤の量が大となると、潤滑性が悪くなると共に、エンジン内壁面等を傷めることになる。即ち、煤の混入により、エンジンオイルとしての性能が劣化させられる。そこで、頃合いを見てエンジンオイルを交換する必要がある。
【0003】
従来、エンジンオイルの交換は、走行距離が所定値(例、5000Km)に達したところで行うように定められているのが殆どであった。電子制御式ではない旧来のディーゼルエンジンにおいては、エンジン回転数,噴射圧,負荷(燃料噴射量),エンジンオイル温度等のそれぞれと、発生する煤の量との間には、相関関係があることが知られている。
従って、これらの相関関係に基づき、どの位の距離を走行すれば、どの位の煤がエンジンオイルに含まれることになるかを予測することが出来た。エンジンオイル交換の走行距離は、このような予測を踏まえて定められていた。
【0004】
エンジンオイルの交換時期を知らせるその他の技術としては、走行距離と負荷とをモニターしていて知らせるものとか、エンジンオイル温度,エンジン回転数に応じて劣化重み係数を定め、この係数により走行距離を補正して知らせるもの(特開昭59−43299号公報)とか、煤の含有量,粘性増加度,アルカリ価の減少等を考慮して知らせるもの(特開2000−227018号公報)等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来の技術には、次のような問題点があった。
第1の問題点は、煤の発生量は、エンジン回転数等との相関関係に基づいて算出していたが、それによる算出はあまり正確なものとは言えないものであったので、安全を考えて、算出した発生量に対応する走行距離より短い距離を、オイル交換すべき走行距離と定めていたという点である。
つまり、早めにオイル交換をするよう定めていたので、エンジンオイルとして使える寿命がまだ残っているにも係わらず、廃棄してしまうことになり、資源を無駄に消費すると共にコストが高いものとなっていた。
【0006】
第2の問題点は、コンピュータにより電子制御されているディーゼルエンジンでは、エンジン回転数や噴射圧等と煤の発生量との間には相関関係があまりなく、従来の相関関係を利用して煤の発生量を算出してみても、それは実態とは合わないものとなっているという点である。
電子制御ではない旧来のディーゼルエンジンでは、エンジンの機械的作動状況(例、回転数の大小等)に応じて自ずと噴射圧,噴射タイミング等が決まっていたから、煤の発生量との間にも相関関係が認められた。しかし、電子制御のものでは、噴射圧等は、エンジンの機械的作動状況には必ずしも拘束されず、運転条件により任意に制御されるので、従来のような相関関係は認められなくなっている。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明では、ディーゼルエンジンにおける煤の発生量を求めることにより行うエンジンオイル劣化判定方法において、燃料を噴射する毎に噴射終了時点が予め定めてあるオイル劣化度分散時点より前であるか後であるかを判定し、前である場合には、噴射終了時点より今回噴射分劣化値を求め、後である場合には、噴射終了時点とオイル劣化度分散時点後噴射量とより今回噴射分劣化値を求め、前記今回噴射分劣化値を累積することによりオイル劣化の判定を行う方法とした。
【0008】
また、エンジンオイル劣化判定装置を、噴射終了時点を求めるのに必要な信号を検出するセンサからの信号が入力され、噴射終了時点が予め定めてあるオイル劣化度分散時点より前である場合に、噴射終了時点より今回噴射分劣化値を求める第1のマップと、噴射終了時点が予め定めてあるオイル劣化度分散時点より後である場合に、噴射終了時点とオイル劣化度分散時点後噴射量とより今回噴射分劣化値を求める第2のマップとを少なくとも格納したマップ格納部と、燃料を噴射する毎に前記第1または第2のマップにより該噴射におけるオイル劣化値を求め、該値を格納する今回噴射分劣化値部と、噴射終了毎に前記今回噴射分劣化値部の値を累積加算して累積劣化値を求め、該値を格納する累積劣化値部と、前記累積劣化値を基にしてオイル劣化を判定するオイル劣化判定部とを具え、判定信号を出力する構成とした。
【0009】
なお、前記エンジンオイル劣化判定装置のオイル劣化判定部は、最大許容劣化値と累積劣化値との差の最大許容劣化値に対する割合を表す残存寿命率を求め、該残存寿命率を格納する残存寿命率部と、該残存寿命率と比較してオイル交換警報を発生するか否かを判断する所定のオイル交換警報発生値を格納するオイル交換警報発生値部とを具えた構成のものとすることが出来る。
更に、エンジンオイル劣化判定装置の判定出力により動作する装置として、オイル交換の警報を含むところの判定結果を表示する判定結果表示装置を具備させることも出来る。
【0010】
(作 用)
ディーゼルエンジンのオイル劣化度は、噴射終了時点が或る特定な時点より早くなるような噴射の仕方をした場合は噴射終了時点に応じて決まるが、噴射終了時点がその特定時点より遅くなるような噴射の仕方をした場合は、該特定時点以後の噴射量と噴射終了時点とに応じて決まるという現象(相関関係)が発見された。該特定時点をオイル劣化度分散時点と呼ぶことにすると、このオイル劣化度分散時点は予め実験により求めることが出来るが、その値はディーゼルエンジンの種類やエンジンオイルの種類によって異なった値となる。
燃料を噴射する度に噴射終了時点がオイル劣化度分散時点より前か後かを判定し、前か後かに応じ、それぞれ予め定めてあるマップを使用して今回噴射分劣化値を求める。
そのようにして求めた今回噴射分劣化値を累積加算した値を求め、この値に基づいてオイル劣化を判定する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、エンジンオイルの劣化度(煤の発生量)に関する新たな現象(相関関係)の発見に基づきなされたものである。従って、発明の実施形態の説明に入る前に、先ずこの現象について説明する。なお、この新たな現象は、本発明の発明者により発見されたものである。
図6は、本発明の基となったオイル劣化度に関する図である。縦軸はオイル劣化度であり、その単位は、ディーゼルエンジンを100時間運転した場合に、エンジンオイル中に含まれることになる煤の量を、重量%で表したものである。
横軸は、噴射終了時点TE であり、単位はクランクアングルである(ATDCは、「アフター上死点」の意)。横軸の右方に上死点TDCが位置せしめてあり、横軸の矢印が原点方向に向けて描いてあるから、上死点TDCより原点方向にある時点(TE1やTE2など)は、ピストンが下がりつつある過程における時点を意味している。
【0012】
横軸の値がTE1で縦軸の値がR1 である曲線上の点Aの意味について説明する。これは、噴射終了時点がTE1となるような燃料噴射を100時間行った場合、エンジンオイルは、その中にR1 重量%の煤が含まれるという劣化度になってしまうということを意味している。
TB は、「オイル劣化度分散時点」と名付けた時点である。この時点より遅い時点(図6中の第2領域の時点)で噴射が終了するような噴射の仕方をした場合、オイル劣化度は噴射終了時点TE に応じて略一義的には決まらずに、後に図7で説明するオイル劣化度分散時点後噴射量QBEによって、いろいろな値に分散する。このようにオイル劣化度が分散し始めるオイル劣化度分散時点TB は、実験的に求められるが、使用するエンジンオイルの種類,使用するディーゼルエンジンの種類等によって異なった値となる。
【0013】
例えば、点Cはオイル劣化度分散時点後噴射量がQBE1 である曲線上の点であるが、この点Cは、オイル劣化度分散時点後噴射量がQBE1 で且つ噴射終了時点がTE2となるような噴射の仕方を100時間行った場合、エンジンオイルは、その中にR2 重量%の煤が含まれるという劣化度になってしまうということを意味している。また、オイル劣化度分散時点後噴射量がQBE2 である曲線上の点Dは、オイル劣化度分散時点後噴射量がQBE2 で且つ噴射終了時点がTE2となるような噴射の仕方を100時間行った場合、エンジンオイルは、その中にR3 重量%の煤が含まれるという劣化度になってしまうということを意味している。
他方、オイル劣化度分散時点TB より早い時点(図6中の第1領域の時点)で噴射が終了するような噴射の仕方をした場合、オイル劣化度は噴射終了時点TE に応じて略一義的に決まる。
【0014】
この新たな現象をまとめると、次のようになる。
▲1▼ 噴射終了時点TE が第1領域(オイル劣化度分散時点TB より早い領域)にある場合、オイル劣化度は、噴射終了時点TE に応じて決まる。
▲2▼ 噴射終了時点TE が第2領域(オイル劣化度分散時点TB より遅い領域)にある場合、オイル劣化度は、噴射終了時点TE とオイル劣化度分散時点後噴射量QBEとに応じて決まる。
【0015】
図7は、本発明で使用する用語の意味を説明する図である。符号は図6のものに対応し、TF は噴射開始時点、TFEは噴射期間、TBEはオイル劣化度分散時点後噴射期間、QM はメイン噴射量である。横軸tは時間を表し、縦軸は単位時間噴射量を表し、曲線fは単位時間噴射量の変化を表している。なお、図7では、時間の経過と共に横軸を右方へ進んで行く(図6の横軸とは時間の経過方向が逆)。
この図に表した噴射例は、次のようなものである。上死点TDCより前の時点(ピストンが上昇中の時点)であるTF に噴射が開始され、上死点TDCより後の、オイル劣化度分散時点TB より更に後の時点であるTE に、噴射が終了されたという噴射例である。
【0016】
噴射期間TFEは、噴射開始時点TF から噴射終了時点TE までの期間であり、その間に噴射された全噴射量がメイン噴射量QM である。オイル劣化度分散時点後噴射期間TBEは、オイル劣化度分散時点TB から噴射終了時点TE までの期間であり、その間に噴射された噴射量がオイル劣化度分散時点後噴射量QBEである。噴射終了時点TE がオイル劣化度分散時点TB より遅くなると、このオイル劣化度分散時点後噴射量QBEが、オイル劣化度に影響を及ぼす。
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のエンジンオイル劣化判定装置を示す図である。図1において、1はディーゼルエンジン装置、2はオイル交換スイッチ、3は噴射圧センサ、4はエンジン回転センサ、5はエンジンオイル温度センサ、6はエンジン冷却水温度センサ、7は吸気温度センサ、8はスタータ駆動センサ、9はスタータ、10はアクセル開度センサ、11はオイル劣化判定装置、12は判定結果表示装置、20はオイル交換フラグ、21は今回噴射分劣化値部、22は累積劣化値部、23は残存寿命率部、24はオイル交換警報発生値部、25はオイル劣化判定部、26はマップ格納部である。
【0018】
ディーゼルエンジン装置1には、ディーゼルエンジンの他、燃料噴射装置等の周辺装置も含まれている。
オイル交換スイッチ2は、ディーゼルエンジン装置1のエンジンオイルを交換したとの信号を発生するためのスイッチである。オイル交換した時、作業員がこのスイッチをオンする。このオンにより、オイル劣化判定装置11内のオイル交換フラグ20が「1」とされる(セット)。なお、オイル交換スイッチ2はオイル交換したとの信号を発生させる手段の1例であり、他の手段によって発生させることも可能である。例えば、オイル交換した後、所定回数アクセルペダルを踏むことによって発生させるようにしてもよい。
スタータ駆動センサ8は、スタータ9が駆動中であるか否かを検出するセンサであり、これは、スタータ9への電流の有無を検出するセンサであってもよいし、スタータ9の回転を検出するセンサであってもよい。
【0019】
オイル劣化判定装置11は、CPU(中央演算装置)や記憶装置等を具え、コンピュータ的に構成される。このオイル劣化判定装置11では、オイル交換スイッチ2や各センサからの信号を基に、燃料の噴射毎にオイル劣化値を求めて今回噴射分劣化値部21に保持すると共に、オイル交換してからの累積劣化値を求めて累積劣化値部22に保持し、累積劣化値が所定値に達したかどうかをオイル劣化判定部25で判定する。
【0020】
その判定は、累積劣化値が予め定めてある最大許容劣化値に達したかどうかによって行ってもよいし、残存寿命率(=最大許容劣化値と累積劣化値との差の最大許容劣化値に対する割合)を求め、それが所定値まで減少したかどうかによって行ってもよい。残存寿命率部23は前記のような残存寿命率を算出,格納するところであり、オイル交換警報発生値部24は、前記の所定値であるオイル交換警報発生値K0 を格納するところである。
マップ格納部26は、オイル劣化値等を求めるためのマップ(後に述べる図5,図8,図9等のマップ)を格納しておく部分である。
判定結果表示装置12は、オイル劣化判定部25における判定の結果を表示する装置である。オイル劣化が限界に達したとか、オイル交換せよといったことが表示される。
【0021】
図2は、本発明のエンジンオイル劣化判定装置の動作を説明するフローチャートである。
ステップ1…オイル交換スイッチ2より、オイル交換を行ったとの信号が入力されたかどうかを調べる。入力されなかった場合は、ステップ3に進む。
ステップ2…該信号が入力されたならば、オイル交換フラグ20を「1」とする(セット)。
【0022】
ステップ3…オイル交換フラグ20の値が、「1」となっているかどうか調べる。
ステップ4…「1」となっていれば、オイル交換した直後ということであるから、エンジンオイルは新しい。従って、累積劣化値L(N)=0とする(なお、Nは何回目の噴射であるかを示す。以下も同様。)。
ステップ5…累積劣化値L(N)=0とした時は、オイル交換フラグ20の値を「0」とする(リセット)。
【0023】
ステップ6…ディーゼルエンジンが、オイル劣化を生ずる運転状態か否かを調べる。具体的に言えば、噴射量>0であり且つエンストしておらず且つエンジン始動モードではない(=燃料が噴射され、通常に回転している状態)か否かを調べる。
ステップ7…オイル劣化を生じない運転状態(例、噴射量=0なら煤は生ぜずオイルは劣化しない)の場合は、今回噴射分劣化値M(N)=0とする。
【0024】
ステップ8…オイル劣化を生じる運転状態の場合は、今回の燃料噴射における噴射終了時点TE が、オイル劣化度分散時点TB より早いかどうか調べる。オイル劣化度分散時点TB は、予め与えられている固定値である(但しその値は、ディーゼルエンジンの種類やエンジンオイルの種類によって異なる。)。噴射終了時点TE は、例えば図3のようにして求めることが出来る。
【0025】
図3のステップ1…まず噴射量を求める。これは、アクセル開度やエンジン回転数等を基に、公知の如く求められる。アクセル開度は図1のアクセル開度センサ10で検出され、エンジン回転数はエンジン回転センサ4で検出される。
図3のステップ2…噴射圧センサ3で検出された噴射圧が、正常範囲内の値かどうか調べる。これは、正常範囲を規定する上限値,下限値と比較して行う。
図3のステップ3…検出した噴射圧が正常範囲内の値であった場合には、図3のステップ5で使用する噴射圧として、検出噴射圧を採用する。
【0026】
図3のステップ4…正常範囲内の値でなかった場合(噴射圧センサ3が故障していた場合などは、そのような値となってしまう)、ステップ5で使用する噴射圧として、予め定めてある設定噴射圧を採用する。この設定噴射圧としては、通常ならばこの位の噴射圧となっているというような値に定めておく。
図3のステップ5…噴射量と噴射圧とから噴射期間を求めるマップにより、噴射期間を求める。図5は噴射量,噴射圧と噴射期間の関係を示すマップである。P1 〜P4 は噴射圧であり、P1 >P2 >P3 >P4 である。例えば噴射量Q1 で噴射圧P3 の場合、点線矢印の如く辿り、噴射期間はTFE1 と求められる。
図3のステップ6…噴射終了時点TE を求める。噴射開始時点TF は予め分かるが、これに噴射期間TFEを加算することにより、求めることが出来る。
(以上で図3による噴射終了時点TE の求め方の説明を終わり、図2に戻る。)
【0027】
ステップ9…噴射終了時点TE がオイル劣化度分散時点TB より早い場合(図6の第1領域の場合)は、TE がTB より早い場合に使用するマップを用いて、今回噴射分劣化値を求める。
図8は、TE がTB より早い場合に使用するマップであり、噴射終了時点TE より今回噴射分劣化値Mを求めるマップである。例えば点線で示す如く、噴射終了時点がTE1であれば、今回噴射分劣化値はM1 と求められる。
【0028】
ステップ10…噴射終了時点TE がオイル劣化度分散時点TB より遅い場合(図6の第2領域の場合)は、TE がTB より遅い場合に使用するマップを用いて、今回噴射分劣化値Mを求める。
図9は、TE がTB より遅い場合に使用するマップであり、噴射終了時点TE とオイル劣化度分散時点後噴射量QBEとより、今回噴射分劣化値Mを求めるマップである。例えば、噴射終了時点がTE3であり、オイル劣化度分散時点後噴射量がQBE2 であれば、今回噴射分劣化値はM23と求められる。
なお、図7を見れば明らかなように、TE =TB +TBEという関係があり、TB は固定値であるから、図9のマップの代わりに、そのTE の部分をTBEに置き換えて作り直したマップを用いるようにしてもよい。
【0029】
図4は、ステップ9で用いるオイル劣化度分散時点後噴射量QBEの求め方を示すフローチャートである。図4のステップ1で、噴射開始時点TF がオイル劣化度分散時点TB より早いか否かを判断する。
TF がTB より早い場合の噴射状況を示す図は、YESの方向に進む経路の脇に記したような図となるから、オイル劣化度分散時点後噴射量QBEは、図4のステップ2において、オイル劣化度分散時点TB から後の斜線部の噴射量として求められる。
他方、TF がTB より遅い場合の噴射状況を示す図は、NOの方向に進む経路の上に記したような図となるから、オイル劣化度分散時点後噴射量QBEは、図4のステップ3において、噴射開始時点TF から噴射終了時点TE までの噴射量(つまりメイン噴射量QM )として求められる。
(図2の説明に戻る。)
【0030】
ステップ11…エンジンオイルの劣化は、温度によっても異なるから、ここで温度に応じた補正処理を行う。例えば、エンジンオイル温度,エンジン冷却水温度,吸気温度に対応した補正係数を予めマップの形で保持しておき、図1のエンジンオイル温度センサ5,エンジン冷却水温度センサ6,吸気温度センサ7からの温度検出信号により、この時の補正係数を求め、それを今回噴射分劣化値Mに乗じるなどして補正する。
ステップ12…今回噴射分劣化値M(N)が求められ、補正処理がなされた後、それを積算した累積劣化値L(N)を更新する。即ち、L(N)=L(N)+M(N)の演算を行う。
【0031】
ステップ13…この例では、図1のオイル劣化判定部25は、残存寿命率K(N)を求め、それが所定のオイル交換警報発生値K0 まで減少したかどうかを判定するようにされているものを説明する(前記したように、累積劣化値L(N)が最大許容劣化値(累積劣化値がこれ以上大になったらエンジンオイルとして不適格であるという値)に達したかどうかを判定するように構成することも出来るが、その場合はステップ13〜15の動作内容も、それに応じて異なったものとなる)。
このステップで残存寿命率K(N)を計算する。最大許容劣化値をLMAX とした場合、次式により算出されるK(N)を残存寿命率と言うことが出来る。
K(N)={LMAX −L(N)}/LMAX
【0032】
ステップ14…残存寿命率K(N)が、予め設定してあるオイル交換警報発生値K0 まで低下したかどうか調べる。オイル交換警報発生値K0 としては、例えば、0%に近い2%とか3%とかという値に設定しておく。0%と設定しないのは、オイル交換の警報は、残存寿命率K(N)が0%になる少し前に発した方が良いからである。
ステップ15…オイル交換警報発生値K0 に達した場合には、判定結果表示装置12に信号を送り、オイル交換の警報を出す。
【0033】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明のエンジンオイル劣化判定方法および判定装置によれば、次のような効果を奏する。
▲1▼ ディーゼルエンジンにおける煤発生量を、従来より正確に求めることが出来る新発見の現象(相関関係)を基礎としたものであるので、エンジンオイルの劣化を、従来より正確に判定することが出来るようになった。
▲2▼ 従来は走行距離を目安にして早め早めにオイル交換するようにしていたので、まだ使えるのに廃棄してしまうことが多かったが、本発明によれば、エンジンオイル中に累積される煤の量でオイル劣化を判定しているので、オイル寿命が殆ど尽きるまで使うことが出来るようになった(資源の有効利用)。
それに伴い、オイル交換の回数を少なくすることが出来、コスト低減と共にメンテナンス性を向上させることが出来た。
▲3▼ オイル劣化判定出力により判定結果表示装置にオイル交換警報を表示するようにすれば、運転者にオイル交換すべき時期であることを知らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエンジンオイル劣化判定装置を示す図
【図2】本発明のエンジンオイル劣化判定装置の動作を説明するフローチャート
【図3】噴射終了時点の求め方を示すフローチャート
【図4】オイル劣化度分散時点後噴射量の求め方を示すフローチャート
【図5】噴射量,噴射圧と噴射期間の関係を示すマップ
【図6】本発明の基となったオイル劣化度に関する図
【図7】本発明で使用する用語の意味を説明する図
【図8】噴射終了時点より今回噴射分劣化値を求めるマップ
【図9】噴射終了時点とオイル劣化度分散時点後噴射量より、今回噴射分劣化値を求めるマップ
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン装置、2…オイル交換スイッチ、3…噴射圧センサ、4…エンジン回転センサ、5…エンジンオイル温度センサ、6…エンジン冷却水温度センサ、7…吸気温度センサ、8…スタータ駆動センサ、9…スタータ、10…アクセル開度センサ、11…オイル劣化判定装置、12…判定結果表示装置、20…オイル交換フラグ、21…今回噴射分劣化値部、22…累積劣化値部、23…残存寿命率部、24…オイル交換警報発生値部、25…オイル劣化判定部、26…マップ格納部
Claims (4)
- ディーゼルエンジンにおける煤の発生量を求めることにより行うエンジンオイル劣化判定方法において、
燃料を噴射する毎に噴射終了時点が予め定めてあるオイル劣化度分散時点より前であるか後であるかを判定し、
前である場合には、噴射終了時点より今回噴射分劣化値を求め、
後である場合には、噴射終了時点とオイル劣化度分散時点後噴射量とより今回噴射分劣化値を求め、
前記今回噴射分劣化値を累積することにより
オイル劣化の判定を行うことを特徴とするエンジンオイル劣化判定方法。 - 噴射終了時点を求めるのに必要な信号を検出するセンサからの信号が入力され、
噴射終了時点が予め定めてあるオイル劣化度分散時点より前である場合に、噴射終了時点より今回噴射分劣化値を求める第1のマップと、噴射終了時点が予め定めてあるオイル劣化度分散時点より後である場合に、噴射終了時点とオイル劣化度分散時点後噴射量とより今回噴射分劣化値を求める第2のマップとを少なくとも格納したマップ格納部と、
燃料を噴射する毎に前記第1または第2のマップにより該噴射におけるオイル劣化値を求め、該値を格納する今回噴射分劣化値部と、
噴射終了毎に前記今回噴射分劣化値部の値を累積加算して累積劣化値を求め、該値を格納する累積劣化値部と、
前記累積劣化値を基にしてオイル劣化を判定するオイル劣化判定部と
を具え、
判定信号を出力することを特徴とするエンジンオイル劣化判定装置。 - オイル劣化判定部を、
最大許容劣化値と累積劣化値との差の最大許容劣化値に対する割合を表す残存寿命率を求め、該残存寿命率を格納する残存寿命率部と、
該残存寿命率と比較してオイル交換警報を発生するか否かを判断する所定のオイル交換警報発生値を格納するオイル交換警報発生値部とを具えたものとした
ことを特徴とする請求項2記載のエンジンオイル劣化判定装置。 - 判定出力によりオイル交換の警報を含むところの判定結果を表示する判定結果表示装置を具備したことを特徴とする請求項2または3記載のエンジンオイル劣化判定装置。
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