JP2010037958A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】機関温度が低い機関運転状態にある場合に、排気浄化触媒の暖機を可能としつつ、ピストンの頂面の燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減させることを可能とする燃料噴射制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、燃料噴射弁により気筒内へ直接に燃料噴霧を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関であって、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、機関温度が所定温度以下であるときには、点火栓による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、燃料噴射弁による燃料噴霧の噴射方向が、ピストンが上死点に位置するときのピストンの頂面と点火栓の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるような第1の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行されることを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】本発明は、燃料噴射弁により気筒内へ直接に燃料噴霧を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関であって、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、機関温度が所定温度以下であるときには、点火栓による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、燃料噴射弁による燃料噴霧の噴射方向が、ピストンが上死点に位置するときのピストンの頂面と点火栓の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるような第1の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行されることを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、所謂「直噴エンジン」、即ち、各気筒内へ直接にガソリンのような燃料を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関における燃料噴射制御装置に関する。
従来により、燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧の噴射方向を切換え制御できるようにした燃料噴射弁が知られている。また、このような燃料噴射弁を直噴エンジンに使用して、機関運転状態に応じて燃料噴射角度を切換え制御して燃焼状態の改善を図った直噴エンジンが知られている。
例えば、特許文献1に開示されている直噴エンジンにおいては、機関運転状態を低中回転領域と高回転領域と超高回転領域と始動時領域との4つの領域に分け、それぞれの領域に応じて燃料噴射角度を切換え制御して燃焼状態の改善を図ることを提案している。そして、特許文献1においては、点火時期を大幅遅角制御することで排気ガスの温度を高めて排気浄化触媒の暖機性を高めてNOxやHCなどの有害物質の発生を低減する始動時領域であって、着火性の低下を抑制するために燃料噴霧を点火栓の近傍に集中させる必要がある始動時領域においては、燃料噴霧をピストンの頂面に形成されたキャビティに向け、該キャビティの形状により燃料噴霧を点火栓の近傍に集中させて成層燃料を実行することで、排気浄化触媒の暖機性を高めつつ機関の始動性の向上を図ることが示されている。
ところで、燃料噴霧をピストンの頂面に形成されたキャビティに向け、このキャビティの形状により燃料噴霧を点火栓の近傍に集中させるような燃料噴射を実行する場合においては、ピストンの頂面に噴射された燃料が液状のまま付着する所謂「燃料ウエット」が増大することによって、燃料の不完全燃焼が発生しやすくなるため、特に機関温度が低くピストン温度が低い機関冷間始動時などには、従来の吸気ポート内噴射式の内燃機関に比べてスモークの排出量が増大するという傾向がある。このようなピストンの頂面などにおける燃料ウエットの問題は、機関温度の上昇によって自然に解消する問題として、従来は、それが内燃機関の性能に及ぼす悪影響を重要視していなかった。
しかしながら、最近は、機関冷間始動時のような機関温度が低い機関運転状態において多量の燃料を噴射する場合には、ピストンの頂面に燃料ウエットが長時間形成される結果、始動が完了した後でも暫くの間はスモークが排出され続けるということが問題になって来ている。
本発明は上記課題に鑑み、燃料噴射弁により気筒内へ直接に燃料噴霧を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関であって、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、機関運転状態が機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低くピストンの温度が低い機関運転状態にある場合に、排気浄化触媒の暖機を可能としつつ、ピストンの頂面の燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減させることを可能とする内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明によれば、先端部が内燃機関の気筒内の頂部に配設された点火栓と、前記気筒内を往復動可能に配設されたピストンと、前記気筒内へ燃料噴霧を噴射する燃料噴射弁と、前記点火栓による点火時期を制御する点火時期制御手段とを有し、前記燃料噴射弁により前記気筒内へ直接に燃料噴霧を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関であって、前記燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、機関温度が所定温度以下であるときには、前記点火栓による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、前記燃料噴射弁による燃料噴霧の噴射方向が、前記ピストンが上死点に位置するときの前記ピストンの頂面と前記点火栓の先端部との間の前記気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるような第1の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される、ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、機関温度が所定温度以下であるときには、点火栓による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、燃料噴射弁による燃料噴霧の噴射方向が、ピストンが上死点に位置するときのピストンの頂面と点火栓の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料が噴霧されるような噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される。このように、機関運転状態が機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低くピストンの温度が低い機関運転状態にある場合には、点火栓による点火時期が遅角制御され、且つ、ピストンが上死点に位置するときのピストンの頂面と点火栓の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料が噴霧されるように燃料噴霧の噴射方向が切換え制御されて成層燃焼が実行されることで、排気浄化触媒の暖機を可能としつつ、機関温度が低くピストンの温度が低いときにおける該ピストンの頂面への燃料噴霧の衝突を抑制することができ、ピストンの頂面の燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減させることが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、前記ピストンは、頂面に凹み状のキャビティを備え、機関温度が前記所定温度以下である場合であっても機関回転数が所定回転数を越えた場合には、前記燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧を前記キャビティ内に衝突させて前記点火栓に向かわせるように、燃料噴霧の噴射方向が、前記第1の噴射方向よりも前記ピストンの頂面側に向く第2の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
各請求項に記載の発明によれば、燃料噴射弁により気筒内へ直接に燃料噴霧を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関であって、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、機関運転状態が機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低くピストンの温度が低い機関運転状態にある場合に、排気浄化触媒の暖機を可能としつつ、ピストンの頂面の燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減させることを可能とする共通の効果を奏する。
以下、添付の図面に従って本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、図1によって、本発明の燃料噴射制御装置が適用されうる直噴エンジンのシステム構成の一実施形態について説明する。
図1において、1は直噴エンジンであって、その冷却水套等には冷却水の温度を検出する水温センサ2が設けられていると共に、オイルパン等にはエンジンオイルの温度を検出する油温センサ3が設けられている。また、吸気通路9の一部には吸気温度を検出する吸気温センサ4が設けられ、気筒内の燃焼室10へ直接に燃料を噴射することができる燃料噴射弁6には噴射される燃料の圧力、即ち噴射圧を検出する燃料噴射圧センサ5が設けられている。これらのセンサ類が出力する検出信号は直噴エンジン1の運転状態を制御するために設けられた電子式制御装置(ECU)8へ入力されていて、ECU8が出力する制御信号によって燃料噴射弁6等が自動的に制御される。
11は燃料を通常の噴射圧まで加圧して燃料噴射弁6へ圧送するフィードポンプである。図1に示したエンジンシステムは、フィードポンプ11によって加圧された燃料を、始動時にECU8の指令を受けて更に高圧まで加圧するための始動時噴射圧昇圧手段7を備えている。始動時噴射圧昇圧手段7としては、後述のように、アキュームレータとか、バッテリーの電力によって回転駆動される容積型等のポンプを使用することができる。始動時に必要な燃料の量は多くないから、定常的に大量の吐出量を発生させ得るポンプ等を使用する必要はない。始動時に一時的に噴射圧を増圧することによって、単位時間当たりの燃料噴射量、即ち噴射率が高くなるので、始動時に必要な量の燃料を短時間内に噴射することが可能になる。また、12は気筒内を往復動可能に配設されたピストン、13は先端部が気筒内の頂部に配設された点火栓、14は点火栓による点火時期を制御する点火時期制御手段、15は排気系に配設された排気浄化触媒をそれぞれ示す。
本実施形態の燃料噴射制御装置は、気筒内へ直接的に燃料を噴射することにより燃料噴射量を必要最小限として燃料消費率の悪化を防止するものであり、通常の機関運転時においては、吸気行程での燃料噴射によって気筒内に均質混合気を形成して均質燃焼を実施する。また、機関冷間始動時やファーストアイドル時のような機関温度が低い機関運転状態においては、圧縮行程で燃料を噴射し、点火栓の近傍だけに可燃混合気を形成して燃焼を行う成層燃焼が実行される。尚、機関温度が0℃以下のような極めて低温である場合には、ピストン12の頂面の燃料ウエットの更なる十分な抑制を図るべく、燃料噴霧の噴射が吸気工程と圧縮行程とに分割されて、例えば圧縮行程による燃料噴射が4割以下になるように実行されてもよい。
また、本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置は、燃料噴射弁6からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができるものとする。燃料噴射弁6からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御する手段としては種々の方法が考えられるが、本実施形態における燃料噴射制御装置においては、燃料噴射弁6のニードル弁の中心軸線の偏心量を変更することにより、燃料噴射弁6からの燃料噴霧の噴射方向の切換え制御を行うものとする。
図2は燃料噴射弁6のニードル弁及びインジェクションノズルの先端を示した図である。また、図3はインジェクションノズルの中心軸に対するニードル弁の中心軸の偏心量を変更するための手段を示した図である。図2及び図3において、21はインジェクションノズル、22はニードル弁、23はインジェクションノズルの先端に形成された噴孔、30はニードル弁22にN極を着磁せしめた着磁部である。31はインジェクタハウジング、32は着磁部30に対して引力又は斥力を及ぼすためにインジェクタハウジング31内に形成された電磁石部である。
着磁部30に対して電磁石部32から引力が及ぼされる時、図2(a)に示すように、ニードル弁22はインジェクションノズル21の中心軸に対して電磁石部32の側(図2(a)の右側)に偏心して位置せしめられる。その結果、噴孔23を介して噴射される燃料の噴射方向は電磁石部32の側(図2(a)の右側)に向けられる。
着磁部30に対して電磁石部32から引力も斥力も及ぼされない時、図2(b)に示すように、ニードル弁22はインジェクションノズル21の中心軸に対して同心に位置せしめられる。その結果、噴孔23を介して噴射される燃料の噴射方向はインジェクションノズル21の中心軸の方向、つまり、噴孔23の軸線方向に一致せしめられる。
着磁部30に対して電磁石部32から斥力が及ぼされる時、図2(c)に示すように、ニードル弁22はインジェクションノズル21の中心軸に対して電磁石部32の反対側(図2(c)の左側)に偏心して位置せしめられる。その結果、噴孔23を介して噴射される燃料の噴射方向は電磁石部32の反対側(図2(c)の左側)に向けられる。
尚、本実施形態では着磁部30はN極であるが、他の実施形態では着磁部をS極にすることも可能である。
本実施形態によれば、インジェクションノズル21の中心軸に対するニードル弁22の中心軸の偏心量が電磁石部32により制御されるため、燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射方向を変更することができる。
更に本実施形態によれば、ニードル弁22の中心軸がインジェクションノズル21の中心軸に対して電磁石部32の側に偏心して配置された第一の位置(図2(a))と、ニードル弁22の中心軸がインジェクションノズル21の中心軸と同心に配置された第二の位置(図2(b))と、ニードル弁22の中心軸がインジェクションノズル21の中心軸を隔てて第一の位置の反対側に配置された第三の位置(図2(c))とが設けられる。そのため、燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧の噴射方向を三段階に切り換えることができる。
また、本実施形態における内燃機関の燃料噴射制御装置においては、点火栓13による点火時期を制御する点火時期制御手段14を有し、例えば機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低い機関運転状態においては、点火時期を大幅遅角制御することで、燃焼を遅らせて排気行程まで燃焼を持続させ、排気ガスの温度を高めて排気浄化触媒15の暖機性を高めてNOxやHCなどの有害物質の発生を低減する。
ところで、機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低い機関運転状態において点火時期を大幅遅角制御する場合においては着火性の低下を抑制して機関の始動性の向上を図ることが必要となるが、その一手段として、燃料噴霧をピストンの頂面に形成されたキャビティに向け、このキャビティの形状により燃料噴霧を点火栓の近傍に集中させて成層燃焼を実行し機関の始動性の向上を図ることが知られている。
しかしながら、燃料噴霧をピストンの頂面に形成されたキャビティに向け、このキャビティの形状により燃料噴霧を点火栓の近傍に集中させるような燃料噴射を実行する場合においては、ピストンの頂面に噴射された燃料が液状のまま付着する所謂「燃料ウエット」が増大することによって、燃料の不完全燃焼が発生しやすくなるため、特に機関温度が低くピストン温度が低い機関冷間始動時には、従来の吸気ポート内噴射式の内燃機関に比べてスモークの排出量が増大するという傾向がある。機関冷間始動時のような機関温度が低い機関運転状態において多量の燃料を噴射する場合には、ピストンの頂面に燃料ウエットが長時間形成される結果、始動が完了した後でも暫くの間はスモークが排出され続けるということが問題となる場合がある。
このことに基づいて本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置においては、機関運転状態が、機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低くピストンの温度が低い機関運転状態にあるときには、点火栓13による点火時期を大幅遅角制御し、且つ、燃料噴射弁6による燃料噴霧の噴射方向を、ピストン12が上死点に位置するときのピストンの頂面と点火栓13の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料が噴霧されるような第1の噴射方向に切換え制御して成層燃焼を実行する。
このように、機関運転状態が機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低くピストンの温度が低い機関運転状態にある場合には、点火栓13による点火時期が遅角制御され、且つ、ピストン12が上死点に位置するときのピストン12の頂面と点火栓13の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるように燃料噴霧の噴射方向が切換え制御されて成層燃焼が実行されるようにすることで、排気浄化触媒の暖機を可能としつつ、機関温度が低くピストン12の温度が低いときにおける該ピストン12の頂面への噴霧燃料の衝突を抑制することができ、ピストンの頂面の燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減させることが可能となる。また、このような燃料噴霧の噴射方向の切換えによる成層燃焼の実行を行う本発明の燃料噴射制御装置によれば、ピストンの頂面に形成されるキャビティであって該キャビティに向けて噴射された燃料噴霧を点火栓の近傍に向かわせるのに適した形状を有するキャビティを設ける必要はなく、ピストンの頂面の形状に依存せずに成層燃焼の実行が可能となる。例えば、頂面が平坦であるようなピストンや、タンブル流を持続させるためのみに形成されたキャビティを頂面に有するようなタンブル流維持ピストンなどを使用する内燃機関に対しても、成層燃焼の実行が可能となる。
ところで、場合によっては、機関運転状態が機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低い機関運転状態期間中に、機関回転数が急激に上昇される場合がある。機関温度が低い機関運転状態においては、ピストンの温度が低いことはもちろんのこと、内燃機関の排気系に配設された排気浄化触媒もまた十分に昇温されていないことが考えられる。したがって、機関温度が低い機関運転状態期間中に機関回転数が急激に上昇される場合においても、排気浄化触媒の温度の昇温を図るための点火時期の大幅遅角制御と、着火性の低下を抑制して機関の始動性の向上を図るための成層燃焼の実行とを継続して行う必要がある。
しかしながら、機関回転数の高回転領域においては、吸気弁17の開放時期に吸気ポートから燃焼室10に吸気が吸入され、この燃焼室10内にタンブル流が生成されるが、ピストン12が高速に移動しているためにタンブル流が強い気流となり、ピストン12が上死点に位置するときのピストンの頂面と点火栓の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料が噴霧されるように燃料噴霧の噴射方向が制御される場合には、すなわち、燃料が点火栓近傍に直接的に噴霧される場合においては、噴射された燃料噴霧を点火栓近傍に維持させ続けることが困難となり、また、燃料噴霧を空気との混合が間に合わない場合があり、十分な成層燃焼が行われずに燃焼状態の悪化をもたらす場合がある。
このことに基づいて本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置においては、ピストン12の頂面に凹み状のキャビティを配設し、機関温度が所定温度以下である場合であっても機関回転数が所定回転数を越えた場合には、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧をキャビティ内に衝突させて点火栓に向かわせるように、燃料噴霧の噴射方向を上記第1の噴射方向よりもピストンの頂面側に向く第2の噴射方向に切換え制御する。
このように、機関温度が低温である場合であっても機関回転数が高回転である場合には、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧をピストン12の頂面のキャビティ内に衝突させて点火栓に向かわせるように、燃料噴霧の噴射方向を上記第1の噴射方向よりもピストンの頂面側に向く第2の噴射方向に切換え制御することで、燃料噴霧を点火栓近傍に確実に集中させることができ且つ噴霧燃料と空気との混合も促進することができ、機関温度が低い機関運転状態期間中に機関回転数が急激に上昇される場合においても、排気浄化触媒の温度の昇温を図るための点火時期の大幅遅角制御と、着火性の低下を抑制して機関の始動性の向上を図るための十分な成層燃焼の実行とを継続して行うことが可能となる。
図4は、本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置による燃料噴射制御の一実施形態を示すフローチャートである。上記に説明したように、本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置は、機関運転状態に応じて燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することが可能であり、機関運転状態が機関冷間始動時やファーストアイドリング時のような機関温度が低くピストンの温度が低い機関運転状態にある場合には、点火栓13による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、ピストン12が上死点に位置するときのピストン12の頂面と点火栓13の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるように燃料噴霧の噴射方向が切換え制御されて成層燃焼が実行されるようにする。これにより、排気浄化触媒15の暖機を可能としつつ、機関温度が低くピストン12の温度が低いときにおける該ピストン12の頂面への噴霧燃料の衝突を抑制して、ピストン12の頂面への燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減することを可能とする。
また、機関温度が所定温度以下である場合であっても機関回転数が所定回転数を越えた場合には、点火栓13による点火時期が遅角制御され、且つ、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧をピストン12の頂面のキャビティ内に衝突させて点火栓13に向かわせるように燃料噴霧の噴射方向を上記第1の噴射方向よりもピストンの頂面側に向く第2の噴射方向に切換え制御して成層燃焼を実行する。これにより、機関温度が低い機関運転状態期間中に機関回転数が急激に上昇される場合においても、排気浄化触媒の温度の昇温を図るための点火時期の大幅遅角制御と、着火性の低下を抑制して機関の始動性の向上を図るための十分な成層燃焼の実行とを継続して行うことを可能とする。
図4に示すフローチャートにおいては、まず、ステップ101において、機関冷却水温度やエンジンオイル温度などで代表される機関温度が所定温度以下であるか否かが判定される。具体的には、水温センサ2や油温センサ3などにより検出された機関冷却水の温度やエンジンオイルの温度に基づいて、ECU8にて機関温度が所定温度以下であるか否かが判定される。尚、ここでの所定温度は、本実施形態においては、機関運転状態が機関冷間始動時あるいはファーストアイドル運転時にあるか否かを判定する閾値となる温度であり、該閾値となる温度は予め設計仕様などにより設定されるものとする。
ステップ101にて機関温度が所定温度以下であると判定されると、ステップ102に進む。ステップ102においては、機関回転数が所定回転数以下であるか否かがECU8にて判定される。尚、ここでの所定回転数は、燃料噴霧の噴射方向を上記第1の噴射方向あるいは上記第2の噴射方向のいずれか一方の噴射方向に決定する際の閾値となる回転数であり、該閾値となる回転数は予め設計仕様などにより設定されるものとする。
ステップ102にて、機関回転数が所定回転数以下であると判定されると、ステップ103に進む。図5は、ステップ103において実行される燃料噴霧の噴射方向を示す図であり、すなわち、機関温度が低温であり且つ機関回転数が低回転である場合に最適な燃料噴霧の噴射方向を示す図である。ステップ103においては、点火栓13による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、燃料噴霧の噴射方向は図5に示されるように、ピストン12が上死点に位置するときのピストン12の頂面と点火栓13の先端部との間の気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるような第1の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される。これにより、排気浄化触媒15の暖機を可能としつつ、機関温度が低くピストン12の温度が低いときにおける該ピストン12の頂面への噴霧燃料の衝突を抑制して、ピストン12の頂面への燃料ウエットに起因するスモークの排出量を低減することを可能とする。
ステップ102にて、機関回転数が所定回転数を越えていると判定されると、ステップ104に進む。図6は、ステップ104において実行される燃料噴霧の噴射方向を示す図であり、すなわち、機関温度が低温であり且つ機関回転数が高回転である場合に最適な燃料噴霧の噴射方向を示す図である。ステップ104においては、点火栓13による点火時期が遅角制御され、且つ、燃料噴射弁5から噴射された燃料噴霧をピストン12の頂面のキャビティ内に衝突させて点火栓に向かわせるように、燃料噴霧の噴射方向は図6に示されるような上記第1の噴射方向よりもピストン12の頂面側に向く第2の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される。これにより、機関温度が低い機関運転状態期間中に機関回転数が急激に上昇される場合においても、排気浄化触媒の温度の昇温を図るための点火時期の大幅遅角制御と、着火性の低下を抑制して機関の始動性の向上を図るための十分な成層燃焼の実行とを継続して行うことが可能となる。
1 直噴エンジン
2 水温センサ
3 油温センサ
6 燃料噴射弁
8 ECU
10 燃料室
12 ピストン
13 点火栓
15 排気浄化触媒
2 水温センサ
3 油温センサ
6 燃料噴射弁
8 ECU
10 燃料室
12 ピストン
13 点火栓
15 排気浄化触媒
Claims (2)
- 先端部が内燃機関の気筒内の頂部に配設された点火栓と、前記気筒内を往復動可能に配設されたピストンと、前記気筒内へ燃料噴霧を噴射する燃料噴射弁と、前記点火栓による点火時期を制御する点火時期制御手段とを有し、前記燃料噴射弁により前記気筒内へ直接に燃料噴霧を噴射して燃焼させる火花点火式内燃機関であって、前記燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を切換え制御することができる火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、
機関温度が所定温度以下であるときには、前記点火栓による点火時期が大幅遅角制御され、且つ、前記燃料噴射弁による燃料噴霧の噴射方向が、前記ピストンが上死点に位置するときの前記ピストンの頂面と前記点火栓の先端部との間の前記気筒内の空間領域に燃料噴霧が噴射されるような第1の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される、ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記ピストンは、頂面に凹み状のキャビティを備え、
機関温度が前記所定温度以下である場合であっても機関回転数が所定回転数を越えた場合には、前記燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧を前記キャビティ内に衝突させて前記点火栓に向かわせるように、燃料噴霧の噴射方向が、前記第1の噴射方向よりも前記ピストンの頂面側に向く第2の噴射方向に切換え制御されて成層燃焼が実行される、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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JP (1) | JP2010037958A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017125409A (ja) * | 2016-01-12 | 2017-07-20 | マツダ株式会社 | エンジンオイルの劣化診断装置 |
JP2017166387A (ja) * | 2016-03-15 | 2017-09-21 | マツダ株式会社 | 多点火式エンジンの制御装置 |
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2008
- 2008-07-31 JP JP2008198660A patent/JP2010037958A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017125409A (ja) * | 2016-01-12 | 2017-07-20 | マツダ株式会社 | エンジンオイルの劣化診断装置 |
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