JP2009036086A - 直噴式エンジン及びその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料噴射装置から燃焼室内に噴射された燃料の着火時期を簡便な手法で適切に調整できるようにして、着火時期のずれに起因する運転効率の低下を抑制できるようにする。
【解決手段】ECU30が、筒内圧力センサ25などの信号をもとに、燃料の着火時期が所望の時期からずれるかどうかを判定し、着火時期にずれが生じると判定した場合には、インジェクタ4からの燃料噴射タイミングの制御とあわせて、燃料加熱ヒータ24による燃料の加熱動作を制御して着火遅れ時間を調整することにより、燃料の着火時期のずれを解消させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ピストン上面とシリンダ内周面との間に形成される燃焼室内に燃料噴射装置から燃料を直接噴射する直噴式エンジン及びその制御方法に関する。
ディーゼルエンジンや直噴式ガソリンエンジンなどの内燃機関では、燃料噴射装置(インジェクタ)から燃焼室内に燃料が直接噴射されるが、例えば燃焼室内の温度が低い場合などには、噴射された燃料が気化して空気と十分に混合されるまでに時間がかかり、未燃の燃料の排出などを招くことなく噴射された燃料を適切に燃焼させるために、燃料の着火時期が遅角側にずれて、効率低下に繋がる場合がある。このため、燃焼室内に噴射された燃料の着火時期を適切に制御する技術の確立が強く求められている。なお、ディーゼルエンジンでは燃料の自己着火により、また、ガソリンエンジンでは点火プラグによる点火により燃焼が始まるが、ここでは、燃料が空気と十分に混合された状態で燃焼を開始するタイミングを燃料の着火時期として表記を統一する。
燃料の着火時期を制御する手法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、排気ガスの一部を吸気側に還流するEGR(Exhaust Gas recirculation)装置によるEGR率又はEGR量を制御して燃焼室内の酸素濃度を調整することで、噴射された燃料がピストンの圧縮上死点近傍で着火するように当該燃料の着火時期を制御するという手法が知られている。
特開2006−125376号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている手法では、EGR弁の開閉によりEGR率又はEGR量が制御されるが、弁の開閉に対してEGR率又はEGR量の変化(言い換えれば、EGRによる燃焼室内の酸素濃度の変化)は必ず遅れを伴うため、このような手法で燃料の着火時期を適切に制御することは極めて困難である。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、燃料噴射装置から燃焼室内に噴射された燃料の着火時期を簡便な手法で適切に調整できるようにして、着火時期のずれに起因する運転効率の低下を抑制する直噴式エンジン及びその制御方法を提供することを目的としている。
本発明は、燃料噴射装置から燃焼室内に噴射される燃料を加熱可能なヒータを設け、燃料噴射装置の燃料噴射のタイミングとヒータによる燃料の加熱動作とを制御することにより、燃焼室内の燃料の着火時期を制御する。燃料噴射装置から燃焼室内に噴射される燃料は、加熱によって気化が促進されて空気との十分な混合に要する時間が短縮されるので、ヒータによる燃料の加熱動作を制御することで、燃料噴射から燃料着火までの時間(着火遅れ時間)を調整できる。そして、このヒータによる加熱動作の制御と合わせて燃料噴射のタイミングを制御することで、所望のタイミングで着火するように、燃料の着火時期を適切に制御することができる。
本発明によれば、燃料噴射装置から燃焼室内に噴射された燃料の着火時期を簡便な手法で適切に制御でき、着火タイミングのずれに起因する運転効率の低下を有効に抑制することができる。
本発明は、燃料噴射装置(インジェクタ)から燃焼室内に燃料を直接噴射する直噴式エンジンを対象とし、燃焼室内に噴射される燃料の温度制御により燃料と空気との混合に要する時間を調整して燃料の着火時期を制御するものである。エンジンには、ガソリンエンジンを代表とする火花点火方式と、ディーゼルエンジンを代表とする圧縮着火方式とがあるが、本発明はそのどちらかに限定されるものでなく、直噴式のエンジンに対して広く適用可能である。
以下では、本発明の具体的な実施例として、ディーゼルエンジンに対して本発明を適用した例(第1実施例)と、直噴式ガソリンエンジンに対して本発明を適用した例(第2実施例)とを例示して説明するが、まず、これらの具体的な実施例の説明に先立ち、本発明適用の背景となるディーゼルエンジンの概要及びガソリンエンジンの概要について、簡単に説明する。
[ディーゼルエンジンについて]
ディーゼルエンジンは、火花点火方式であるガソリンエンジンのように、燃料の自己着火によって生じるノッキングの制約が無いため、圧縮比をガソリンエンジンと比べて高く設定することが可能である。圧縮比を高くすることは、すなわち燃焼室内の平均的な温度を高くすることにつながる。燃焼室内の温度が高い方が熱効率がよくなるので、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べて、熱効率がよく、燃料の燃焼によって生じる熱をより効率的に使用することが可能である。
しかしながら、拡散燃焼を主体とするディーゼルエンジンでは、局所的に燃料が空気に対してリッチな空間ができることが不可避であり、その結果、燃料リッチな状況で燃焼した燃料の一部は、内燃機関の運転に寄与することができず、未燃のまま内燃機関外に排出されてしまう。この未燃の燃料はスモークなどと呼ばれ、スモーク中には人体に悪影響な成分が含まれるため、内燃機関の下流にある浄化装置で浄化されてから大気に放出される。つまり、スモークの発生は、燃料が未燃のまま排出されるために熱効率の観点から不利なだけでなく、排気ガス浄化装置を設置しなければならないという、装置の費用面からも不利であることが分かる。
そこで、拡散燃焼ではなく、予め燃料を空気と混合させてから自己着火させる予混合燃焼(以下、HCCI燃焼と呼ぶ)方式のディーゼルエンジンが提案されている。HCCI燃焼は、拡散燃焼で問題となるスモークの発生原因、すなわち局所的に燃料がリッチな状況を作り出す拡散燃焼を避けるために考案されたものであり、燃料を燃焼室内の空気と予め混合させた状態で燃焼させる。そのため、HCCI燃焼方式のディーゼルエンジンは、拡散燃焼を主体とするディーゼルエンジンと比べて、未燃燃料の排出が少ない。
しかしながら、HCCI燃焼のディーゼルエンジンは、燃料が燃焼室内で空気と十分に混合されるまでの所要時間が様々な要因で変動するため、燃料の着火時期の制御が難しいという問題がある。HCCI燃焼のディーゼルエンジンにおける燃料の着火時期は、燃料の噴射タイミングと、噴射された燃料が空気と十分に混合されて自己着火するまでの所要時間(以下、着火遅れ時間という。)とによって決まる。ここで、着火遅れ時間は、燃焼室に投入される空気の温度や、燃焼室自体の温度、燃焼室内の酸素濃度、あるいは燃料組成などによって変化する。例えば、燃焼室内の温度は内燃機関の運転状態によって変化し、高負荷で運転している場合は一般的に燃焼室内の温度が高く、アイドリングなどの低負荷時は燃焼室内の温度が低くなる。そして、燃焼室内に噴射された燃料の気化やミキシングの度合いは燃焼室内の温度によって左右されるので、燃焼室内の温度が変れば着火遅れ時間も変化する。また、燃料組成については、同じオクタン価あるいはセタン価の燃料であっても、芳香族などのベンゼン環構造を含む場合と含まない場合とでは、着火遅れ時間が変ってしまう。以上のように、着火遅れ時間は常に一定とはならないため、燃料の噴射タイミングを制御するだけでは、燃料の着火時期を適切に制御することができず、燃料の着火時期を適切に制御して内燃機関を効率よく運転するには、着火遅れ時間の調整が必要となる。
また、燃料の着火時期の制御は、失火を防止する上でも重要である。例えば、着火遅れ時間があまりにも長くなり過ぎると、燃料の着火時期が圧縮上死点(TDC)よりも大きく遅れる場合もあり、ピストンが下降を始め、燃焼室内の圧力と温度が低下して燃焼に必要な条件を満たさない状態になると、噴射された燃料を燃焼できなくなる場合がある。
また、HCCI燃焼のディーゼルエンジンでは、予混合燃焼により燃料を瞬間的に燃焼させるため、あまりにも燃焼が急激過ぎる、言い換えれば、大量の燃料をあまりにも短時間で燃焼させると、ディーゼルノックと呼ばれる、急激な圧力変動が起こるため、着火してからの燃焼時間を適切に制御することも求められる。
そこで、このようなHCCI燃焼のディーゼルエンジンに本発明を適用し、燃料の着火時期を適切に制御できるようにすることで、上述した問題を解決する。なお、ディーゼルエンジンには、HCCI燃焼と拡散燃焼とを燃料噴射のタイミングによって切り替えるものも存在し、本発明は、そのようなHCCI燃焼と拡散燃焼との切り替えが可能なディーゼルエンジンに対しても適用可能である。
[ガソリンエンジンについて]
ガソリンエンジンは火花点火方式であるが、燃料の供給方法で2つに大別することができる。1つは、燃焼室外に燃料を供給し、燃焼室外で空気と混合させてから、混合気として燃焼室内に燃料を供給する方式である。この方式のエンジンでは、一般的に燃焼室近くの吸気ポートから吸気バルブへ向かって燃料を噴射し、高温の燃焼室の熱を利用してガソリンを気化させている。
もう1つは、燃焼室内に直接燃料を噴射する方式であり、直噴式エンジンと呼ばれる。直噴式エンジンは燃料の噴射タイミングを変えることで2つの燃焼を切り替えることが可能である。1つ目の燃焼方式は、吸気行程に燃料を噴射して燃料を均質に空気と混合させてから燃焼させる、均質燃料と呼ばれる方式である。もう1つの燃焼方式は、成層燃焼と呼ばれ、圧縮行程で燃料を噴射し、ピストン上面に設けたキャビティと呼ばれる窪みによって、噴射した燃料を点火プラグ周辺に集めて燃焼させる方式である。
本発明は、この直噴式ガソリンエンジンにも適用が可能であるが、特に成層燃焼時に利用すると効果が大きい。成層燃焼時は圧縮行程中に燃料が噴射されるため、着火遅れ時間を短くする必要があり、着火遅れ時間を短い時間に保って燃料の着火時期を適切に制御することが特に強く求められるからである。
[第1実施例]
以下、ディーゼルエンジンに本発明を適用した第1実施例について、図面を参照しながら説明する。図1はディーゼルエンジンの概要を示す模式図であり、図2は図1に示したディーゼルエンジンの制御系のブロック図である。
ディーゼルエンジンは、図1に示すように、ピストン1が往復移動可能に嵌挿されたシリンダ2を有している。ピストン1上面とシリンダ2内周面との間には、燃焼室3が形成されている。なお、図1では簡単のために1つのシリンダ2のみを図示しているが、通常は複数のシリンダ2が直列、V型、水平対向などの方式で配列され、高出力化が図られている。
ピストン1上面とシリンダ2内周面との間に形成される燃焼室3の天井部分には、燃料を燃焼室3内に直接噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)4が配設されている。なお、このインジェクタ4には、詳細を後述するが、噴射する燃料を噴射直前に加熱する燃料加熱ヒータ24が内蔵されている。また、このインジェクタ4の周囲には吸気ポート5及び排気ポート6が設けられ、吸気ポート5が吸気流路7、排気ポート6が排気流路8にそれぞれ接続されている。また、吸気ポート5及び排気ポート6の開口部には、これらを開閉する吸気バルブ9及び排気バルブ10が配設されている。
吸気流路7には、吸気ポート5から燃焼室3内に供給される空気の流量を検知するエアフローセンサ11や空気流量を調整する吸気絞り弁12などが配置されている。また、排気流路8には、排気ポート6から排出された排気ガスを浄化する排気浄化装置13が設けられている。さらに、このディーゼルエンジンでは、排気ポート6と吸気ポート5とを接続するようにEGR(Exhaust Gas recirculation)流路14が設けられ、排気ガスの一部を吸気側に還流できるようにしている。EGR流路14にはEGRバルブ15が配置され、このEGRバルブ15の開度を制御することでEGR率が調整される。
シリンダ2内に嵌挿されたピストン1は、コネクティングロッド16を介してクランクシャフト17に連結されている。そして、シリンダ2内におけるピストン1の往復運動は、クランクシャフト17の回転運動に変換される。このクランクシャフト17の回転角は、クランク角センサ18によって検知される。
燃焼室3内に燃料を噴射するインジェクタ4は、高圧配管19を介して蓄圧部20に接続されている。蓄圧部20には、高圧ポンプ21によって圧縮された高圧の燃料が蓄積されている。この蓄圧部20内に蓄積された燃料の圧力は、燃料圧センサ22によって検知される。インジェクタ4は、図2に示すECU(Engine Control Unit)30からの指令に従って、蓄圧部20から高圧配管19を通じて供給される燃料を燃焼室3内に噴射する。インジェクタ4から噴射された燃料は、燃焼室3内で吸気ポート5からの空気と混合され、ピストン1の上昇による燃焼室3内の圧力上昇によって燃焼室3内が高温化することにより、燃焼室3内の少なくとも一部が燃料の自己着火温度に達した時点で自己着火を起こし、その火炎が伝播することで燃焼室3全体が燃焼する。
ECU30は、図2に示すように、各種センサからの信号を入力し、その信号を元にディーゼルエンジンの運転状態を判断して、ディーゼルエンジンに設けられた各種の駆動回路やアクチュエータに信号を出力することで、ディーゼルエンジンの運転状態を制御する。例えば、ECU30は、EGRバルブ15の開度を制御することでEGR率を最適化し、また、吸気絞り弁12の開度を制御することで燃焼室3内への空気供給量を制御する。また、ECU30は、高圧ポンプ21の動作を制御することで、蓄圧部20に蓄積される燃料の圧力、すなわち噴射前の燃料の元圧を制御する。また、ECU30は、ディーゼルエンジンの運転状態に応じて適切な時期に燃料が噴射されるように、インジェクタ4の噴射タイミング及び燃料噴射量を決定してインジェクタ4に指令を出す。具体的には、ECU30は、クランク角センサ18の時間に対する増減からエンジン回転数を算出し、アクセル開度センサ23から、運転者の要求するエンジントルクを算出する。そして、ディーゼルエンジンが現在の状態よりもトルクを要求している場合は、インジェクタ4から噴射される燃料量を増加させるか、あるいは噴射タイミングを進角させて所望のトルク量までディーゼルエンジンの運転状態を変化させる。つまり、ECU30は、ディーゼルエンジンの運転状態に応じて、燃料の噴射タイミングや噴射量を制御している。
また、特にこのECU30は、インジェクタ4内部に設けられた燃料加熱ヒータ24による燃料の加熱動作を制御することで、インジェクタ4から燃焼室3内に噴射された燃料の着火遅れ時間を調整する。そして、この燃料加熱ヒータ24の動作制御による燃料の着火遅れ時間の調整と、インジェクタ4からの燃料噴射タイミングの制御とにより、燃焼室3内の燃料の着火時期を所望の時期となるように制御する。
燃料加熱ヒータ24による燃料の加熱温度は、大別して、沸点以下、沸点以上着火点以下、着火点以上に分けられる。沸点は圧力によって異なるため、ここで言う沸点とは噴射後の圧力、つまり燃焼室3内の圧力での沸点のことであり、沸点以上に加熱するとは、噴射直後に燃料が沸騰する温度以上に加熱することである。また、同様に着火点以上に加熱するということも、噴射直後に燃料が自己着火する温度以上に加熱するということである。というのは、インジェクタ4内部で着火点以上に加熱したとしても、噴射後に燃料は膨張して温度が低下するためである。着火点以上に加熱するとは、この膨張による温度低下を考慮しても、自己着火するような温度以上に燃料を加熱することを意味する。
インジェクタ4から加熱しない燃料を噴射した場合、燃焼室3内に噴射された燃料は燃焼室3内の空気、あるいは燃焼室3壁面から熱を受け取ってその熱で蒸発し、空気と混合される。
インジェクタ4から燃料加熱ヒータ24で沸点以下に加熱した燃料を噴射した場合、上記の加熱しない燃料と概要は同じであるが、燃料の温度が加熱しない場合に比べて高いため、燃料が気化するまでの時間が短い。したがって、空気との混合が促進され、着火遅れ時間も短くなる。
インジェクタ4から燃料加熱ヒータ24で沸点以上着火点以下に加熱した燃料を噴射した場合、燃料は噴射直後に沸騰を始める。これは減圧沸騰と呼ばれ、沸騰によって燃料が微粒化するため、上記の沸点以下に加熱した場合よりも更に空気との混合が促進され、着火遅れ時間が短くなる。
インジェクタ4から燃料加熱ヒータ24で着火点以上に加熱した燃料を噴射した場合、燃料は噴射直後に空気(厳密に言えば、空気中の酸素)と混合された直後に燃焼反応を起こす。この場合は、着火遅れ時間が上述の3つの場合と比べて極端に短い。
本発明では、以上のような燃料加熱ヒータ24による燃料の加熱動作をECU30で制御することにより、噴射後の燃料の状態を制御して着火遅れ時間を調整し、燃焼室3内の燃料の着火時期を所望の時期となるように制御する。
ここで、燃料の加熱制御の一例を図3を用いて説明する。
図3(a)は、燃料を燃料加熱ヒータ24で加熱せずにインジェクタ4から噴射した場合である。この図3(a)のように、何らかの理由で燃焼による熱発生量のピーク(あるいは重心)が圧縮上死点(TDC)から遅角側にずれていたとする。何らかの理由とは、例えば燃焼室3内の温度が低い、あるいはEGRを大量に行って運転していたため燃焼室3内の酸素濃度が低い、あるいは燃料に芳香族などのベンゼン環構造を含む元素が多く含まれていたため、着火遅れ時間が長い場合などである。
このような場合には、図3(b)のように、インジェクタ4から噴射される燃料を噴射前にインジェクタ4内部に設けられた燃料加熱ヒータ24で加熱する。これにより、前述の理由で噴射後の燃料の蒸発時間が短縮されるため、着火遅れ時間が短くなって燃料の着火時期が進角側にシフトし、熱発生量のピーク(あるいは重心)をTDC付近まで進角させることが可能である。なお、図3(b)の燃料の温度は、沸点以下の加熱であっても、沸点以上の加熱であってもよいが、沸点以上に加熱したほうが、より熱発生量のピーク(あるいは重心)を進角させることができる。
一方、燃焼による熱発生量のピーク(あるいは重心)がTDCよりも進角側にずれていた場合には、インジェクタ4からの燃料の噴射タイミングを遅角側にずらすことで、熱発生量のピーク(あるいは重心)をTDC付近まで進角させることが可能である。また、熱発生量のピーク(あるいは重心)が遅角側にずれていた場合も、インジェクタ4からの燃料の噴射タイミングを進角側にずらすことである程度は対応可能であるが、あまりにも燃料の噴射タイミングを進角させると、まだ燃焼室3内が圧縮されていない低温の状態で燃料を噴射することになるので、ピストン1の上面やシリンダ2内周面など燃焼室3の壁面に燃料が液体のまま付着してしまい、燃費の悪化や排気ガスの悪化につながるため好ましくない。このように、インジェクタ4からの燃料の噴射タイミングをそれ以上進角できない場合には、図3(b)のように燃料を加熱して、着火遅れ期間を短くすることで、所望のタイミングで着火を起こすことが可能である。
図3(c)は、同一行程内における燃料の噴射を複数回に分けて行う場合である。この場合は、噴射ごとに燃料に温度差をつけて加熱して噴射することにより、燃焼を緩慢にしている。燃焼を緩慢にするとは、言い換えれば、単位時間当たりの熱発生量を少なくし、その分、熱発生する期間を長くすることである。
燃焼が緩慢になる理由であるが、燃焼室3内に温度分布があると燃焼が同時に起こらないためである。一般論を言えば、燃焼室3内の温度、燃料組成、空気との混合状態が均一であれば、燃焼はほぼ同時期に起こる。温度、燃料組成、空気との混合状態のいずれかが均一ではない場合は、燃焼は同時期に起こり難くなる。これは、燃焼しやすい状態の燃料から順次自己着火を起こし、すなわち燃焼期間が長くなるために、燃焼が緩慢になる。例えば、燃焼室3内の温度が不均質であった場合は、温度が高い空間から着火が起こるし、燃料組成が不均質であった場合も、着火遅れ時間が短い組成の燃料を多く含む空間から着火が始まる。このため、温度を不均一にするとにより燃焼を緩慢にすることが可能である。
ディーゼルエンジンでは、上述したように、大量の燃料をあまりにも短時間で燃焼させると、ディーゼルノックと呼ばれる急激な圧力変動が起こるため、同一行程内における燃料の噴射を複数回に分け、噴射ごとの燃料の温度を変えることで着火してからの燃焼時間(厳密に言えば、燃焼によって生じる熱発生率の時間分布)を適切に制御できるようにし、燃焼を緩慢にさせてディーゼルノックを抑制する。図3(c)では、例として温度の低い噴射を先に行い、その後に温度の高い噴射を行っているが、その逆に温度の高い噴射を先に行い、温度の低い噴射を後に行っても構わない。
また、燃料が着火してからの燃焼時間を制御して燃焼を緩慢にさせるためには、図3(c)のように同一行程内における燃料の噴射を複数回に分けて噴射ごとに温度差をつけるだけでなく、図3(d)のように、1回の噴射で、温度の高い燃料と温度の低い燃料を噴射してもよい。つまり、同一行程内で噴射される燃料が熱分布を持つように、燃料の加熱を行うようにすれば、燃料が着火してからの燃焼時間を制御して燃焼を緩慢にさせることが可能となる。なお、この図3(d)のような噴射は、図4に示すような燃料加熱ヒータ24を内蔵したインジェクタ4を用いることで実現可能である。
図3(e)は、噴射後に自己着火する温度以上に燃料を加熱して噴射する場合である。前述のとおり、この温度まで加熱した燃料を噴射すると、着火遅れ時間が極端に短くなり、燃料は噴射された直後に燃焼を始める。そのため、この温度の噴射は厳密に言えば拡散燃焼になる。拡散燃焼は上述したようにスモークの発生が多くなるので、図3(e)に示すように、噴射後に自己着火する温度以上に加熱した燃料の噴射量は極力少なくするのがよい。そこで、自己着火する温度以上に加熱した燃料の噴射を行う前に、それほど加熱していない燃料の噴射を行い、この燃料を燃焼室内の空気と予混合させておく。これにより、燃料の着火時期を適切に制御しながら、拡散燃焼によるスモークの発生を必要最低限に抑えることが可能である。
図4は、内部に燃料加熱ヒータ24が設けられたインジェクタ4の具体例を示す縦断面図である。この図4に示すインジェクタ4は、ノズルボディ41の先端に設けられた燃料噴射孔42を針弁43で開閉する構造である。針弁43は、燃料非噴射時においては、スプリング44によりノズルボディ41の先端側に付勢されて、燃料噴射孔42を閉塞している。一方、燃料噴射時においては、ECU30の指令によりコア45の周囲に巻装された開弁コイル46が通電され、電磁力の作用により針弁43がスプリング44の付勢力に抗してコア45側へと移動することで、ノズルボディ41先端に設けられた燃料噴射孔42が開放される。インジェクタ4のコア45側は上述した高圧配管19に接続されており、また、インジェクタ4の内部には、高圧配管19との接続部からノズルボディ41先端までつながる燃料流路47が形成されている。したがって、針弁43がコア45側に移動して燃料噴射孔42が開放されると、インジェクタ4に供給された高圧の燃料が燃料流路47を通ってノズルボディ41の先端に導かれて、燃料噴射孔42から噴射される。なお、燃料噴射時に保持コイル48に通電すると、開弁コイル46への通電を停止しても針弁43がコア45側に移動した状態が保持され、燃料噴射孔42からの燃料の噴射が継続される。ECU30は、開弁コイル46への通電のタイミングを制御することで燃料噴射時期を制御し、この保持コイル48への通電時間を制御することで、燃料噴射時間、すなわち燃料噴射量を制御している。
図4に示すインジェクタ4では、ノズルボディ41内周面と針弁43外周面との間の燃料流路47に沿って燃料加熱ヒータ24が配置されている。この燃料加熱ヒータ24は、例えば発熱状態を個別に制御可能な複数の発熱要素24aを、燃料流路47の上流側から下流側に沿って並ぶように、電気的絶縁性を有する断熱材24bを介してノズルボディ41内周面上に取り付けた構成とされる。この燃料加熱ヒータ24の発熱要素24aは、燃料噴射孔42の近傍までカバーするように配設されている。したがって、この燃料加熱ヒータ24は、燃料流路47内の燃料のうちで次回噴射される燃料を確実に加熱することができる。また、この燃料加熱ヒータ24は、ECU30の制御のもとで通電する発熱要素24aの数を変更することで、加熱する燃料の体積を燃料噴射量に合わせて調整して効率の良い加熱を行うことができ、さらに、各発熱要素24aの発熱量を個別に制御することで、燃料流路47内の燃料(すなわち次回噴射される燃料)が熱分布を持つように、当該燃料を加熱することが可能である。
燃焼室3内に噴射された燃料の着火時期は、燃焼室3内の圧力の変化から察知することができる。というのは、燃焼室3内の圧力が急激に上昇し始めた時期が、燃料の着火時期と一致するためである。そこで、燃焼室3内の圧力変化を検知する手段として、例えば燃焼室3内に圧力センサなどを設置して、図2に示すように、その圧力センサ(筒内圧力センサ)25からの信号をECU30に入力する。これにより、ECU30は、筒内圧力センサ25からの信号に基づいて燃焼室3内の燃料の着火時期を知ることができ、また、クランク角センサ18からの信号を受けてクランク角を認識しているため、燃料の着火時期が所望の時期からずれているかどうかを判定できる。なお、燃料の着火時期は内燃機関の運転状態に応じて最適な時期があるので、ECU30にそれぞれの運転状態に適した着火時期を記憶させ、圧力センサ25からの信号に基づいて得られた着火時期が、現在の運転状態に応じた最適な着火時期からずれているかどうかを判定することが望ましい。
ECU10は、以上の判定により燃焼室3内における燃料の着火時期のずれを監視して、燃料の着火時期が所望の時期からずれた場合に、インジェクタ4に信号を送って燃料噴射タイミングを進角、あるいは遅角させたり、インジェクタ4内の燃料加熱ヒータ24の加熱動作を制御して、図3を用いて説明したように噴射燃料を加熱することによって、燃料の着火時期のずれを解消する。
ただし、燃焼室3内の圧力を計測するセンサは一般に高価であり、しかも燃焼室3内に取り付ける手間がかかるため、コストアップに繋がる懸念がある。そこで、燃焼室3内の圧力変化を検知するのではなく、例えば、燃焼室3内の酸素量を検知して、これに基づいて燃料の着火時期のずれを予測するようにしてもよい。すなわち、燃焼室3内の酸素量は上述したように着火遅れ時間を長引かせる要因の一つとなっているので、この燃焼室3内の酸素量を検知することで、燃料の着火時期が所望の時期からずれることを予測可能である。
燃焼室3内の酸素量を検知するは、例えば図5に示すように排気流路8に酸素センサ26を設置すればよい。厳密に言えば、この酸素センサ26は燃焼室3内の酸素量ではなく排気ガスの酸素量を測定することになるが、排気ガスに含まれる酸素の量から、燃焼室3内の酸素量を推測することが可能である。図6に示すように、筒内圧力センサ25に代えて、この酸素センサ26からの信号をECU30に入力することにより、ECU30は、酸素センサ26からの信号に基づいて燃焼室3内の燃料の着火時期を予測することができ、燃料の着火時期が所望の時期からずれると予測される場合に、インジェクタ4の燃料噴射のタイミングと燃料加熱ヒータ24による燃料の加熱動作を制御することにより、燃料の着火時期のずれを解消させることができる。
なお、燃焼室3内の酸素量は、以上のような酸素センサ26を用いずとも、内燃機関の回転数と吸入空気量、すなわちEGRバルブ15と吸気絞り弁12の開閉状態から推定することも可能である。ここで、EGRバルブ15を開閉したときの燃焼室3内の酸素量の変化は、EGR流路14や吸気ポート5の形状と、内燃機関の運転状態とによって決まるある遅れを伴うので、予め実験を行ってEGRバルブ15の開閉のタイミングと燃焼室3内の酸素量の増減の遅れ具合との関係を求めてECU03に記憶させておくことが望ましい。これにより、ECU30は燃焼室3内の酸素量をより精度よく推定することが可能となる。また、図示しないが過給機(ターボチャージャー、スーパーチャージャー)などを用いているディーゼルエンジンの場合は、吸気圧センサの信号もECU30に入力することにより、燃焼室3内の酸素量をさらに精度よく推定することが可能となる。
図7は、ECU30による燃料の着火時期の制御の概要を示すフローチャートである。ECU30は、まずステップS1において、例えばクランク角センサ18やエアフローセンサ11、アクセル開度センサ23、燃料圧センサ22、筒内圧力センサ25(酸素センサ26)などの各種センサからの信号を読み込む。次に、ステップS2において、ステップS1で読み込んだ各種信号をもとに内燃機関の運転状態と要求トルクを判断し、これら運転状態及び要求トルクに応じて、インジェクタ4から噴射する燃料の噴射量及び噴射タイミングを決定する。また、ステップS3において、ステップS1で読み込んだ筒内圧力センサ25(酸素センサ26)の信号に基づいて、ステップS3で決定した噴射タイミングでインジェクタ4から噴射された燃料が燃焼室3内で着火する着火時期を予測する。そして、ステップS4において、ステップS3で予測した燃料の着火時期が所望の時期、すなわち運転状態に応じた最適な時期からずれているかどうかを判定する。ここで、ステップS3で予測した燃料の着火時期が所望の時期からずれていなければ、ステップS7に進んで、燃料の加熱を行うことなくステップS2で決定した噴射タイミングでインジェクタ4から燃料を噴射させる。一方、ステップS3で予測した燃料の着火時期が所望の時期からずれていれば、このずれを解消させるように、まず、ステップS5において、燃料の噴射タイミングを進角側または遅角側にシフトし、ステップS6において、インジェクタ4内の燃料加熱ヒータ24により燃料を加熱して着火遅れ時間を調整した後にステップS7に進んで、インジェクタ4から加熱された燃料をステップS5で変更された噴射タイミングで噴射させる。
以上のように、本発明では、燃料の加熱制御によって着火遅れ時間を調整して所望の時期に燃料が着火するように着火時期を制御しているが、燃料は加熱によって空気との混合が促進されるので、これを利用して、アイドル状態から急加速した場合などの要求トルク急増時の応答遅れを抑制して、加速性能の向上を図ることも可能となる。
一般に、燃料の噴射量はインジェクタ4のコイルへの通電によって調節され、この通電量の増減、すなわち燃料噴射量は0.1msec程度のオーダで制御することが可能となっている。一方で、燃焼室3内の空気の増減は吸気流路7に設けられた吸気絞り弁12やEGR流路14に設けられたEGR弁15の開閉によって行われるが、この増加、あるいは減少速度はインジェクタ4の制御と比べて遅く、急激に燃焼室3内の空気量を変化させることは難しい。また、過給機を具備する内燃機関の場合は、過給機の回転状態によって空気供給量が決定されるが、過給機は内燃機関の運転状態によって回転速度が決定されるため、急激に空気供給量を増加させることができない。
このため、アイドル状態から急加速した場合などの要求トルク急増時には、燃料供給量を急激に増加させることは比較的簡単に達成することができるが、燃焼室3内の空気(厳密に言えば、酸素量)を急激に増加させることは難しい。例えば、EGR量をアイドリング状態から加速状態に適した量に変化させる(EGR量を減らし、新気を増加させる)には、装置の構成や機関の運転状態にもよるが、数百mせcから数秒を要する。内燃機関は、600rpmで回転しているときは、単純に計算すれば500msecで吸気、圧縮、爆発、排気の4行程を行っているし、6000rpmで回転しているときは、単純に1/10の50msecで上記の4行程を行っている。これら4行程の時間と、前述のEGRの増減に必要な時間を比べれば、燃焼室3内の空気量(厳密に言えば、酸素量)の増加に遅れが生じることが分かる。
つまり、燃料供給量を急激に増加させることは容易に行えるが、燃焼室内の空気あるいは酸素量を急激に変化させることは難しく、そのため、燃焼室内に供給してもよい燃料の量は、燃焼室内の酸素量によって制限されてしまう。制限以上に、燃料を供給した場合は、燃料は効率的に燃焼することができず(未燃のまま排気される)、燃費と排気の両方が悪化してしまう。燃料の量が制限されると言うことは、内燃機関のトルクが制限されると言うことなので、例えば、アイドリング状態から、急加速を行いたい場合は、内燃機関のトルクをなるべく早く増加させることが必要であるが、そのような場合はトルクが制限されてしまうので、運転者は加速感を得られず不満を感じることもある。
インジェクタ4から燃焼室3内に噴射する燃料の望ましい噴射量はトルクの要求量から決定されるが、この際に燃焼室3内の酸素量が燃料量に対して少ない場合は、前述したように燃料が効率的に燃焼できない。なお、酸素量が燃料に対して少ないとは、必ずしも燃焼室全体の等量比(理論空燃比)が1以上であると言うわけではなく、局所的に等量比が1以上になり、燃費や排気の悪化が予測される場合も含む。
その場合は、燃料を加熱することで、燃料と空気との混合を促進し、燃焼室3内の空気を混合によって効率的に燃焼に使えるようにする。図8に噴射燃料量と燃焼室3内の酸素量との関係の概念図を示す。燃焼室3内の酸素量が同じであれば、燃料の温度が高くなるほど噴射可能な燃料量は増加する。つまり、燃料の温度が高くなるほど燃料の気化が早くなり、微粒化が促進されて、燃料と燃焼室3内との空気の混合が促進される。この混合促進によって燃焼室3内の酸素を燃焼により効率的に消費することが可能なので、噴射可能な燃料の量は増加する。図8のような燃焼室3内の酸素量と噴射可能な燃料量の関係は内燃機関の仕様によって異なるため、予め実験を行って燃料消費率や排気特性を計測することによって、図8のようなマップをECU30に記憶させておき、これに基づいて燃料の噴射制御を行えばよい。
前述したように、燃料を加熱すると微粒化が促進されるため、燃料と空気との混合が促進される。また、燃料を沸点以上に加熱すると、噴射直後に燃料は沸騰を開始しするので、沸騰によって噴射後の燃料の気流が乱れることによって、より微粒化が促進される。そのため、より微粒化が必要な場合は、燃料を沸点以上に加熱して噴射すればよい。燃焼室3内の温度が、燃料の沸点よりも低い場合は、燃料は燃焼室3内の空気と混合する際に、空気との熱交換を行い、温度が低下するので、その熱交換も考慮して沸点よりも高い温度に加熱しておくのがよい。
また、燃料を加熱することにより噴射後の燃料の気化が早まるが、一方でペネトレーションが減少してしまうという問題もある。燃料が気化して、液体から気体になると、運動量が減少するので、空気との衝突によって速度が急激に落ちるためである。つまり、気化した燃料は、液体の燃料と比べて燃焼室3内を進行する速度が遅い。このように燃料を加熱すると、ペネトレーションがあまりにも小さくなり過ぎて、インジェクタ4の燃料噴射孔42から近い領域だけに燃料が集中してしまい、燃料噴射孔42の周辺に燃料がリッチな空間ができてしまう。このことは、前述したように、燃焼室3内全体の空気を有効に消費することができなくなるため好ましくない。この場合は、同一行程内における燃料噴射を複数回に分ければよい。例えば、加熱しない、言い換えればペネトレーションの大きい燃料を先に噴射し、その後に加熱した、ペネトレーションの小さい燃料を噴射する。この複数回の噴射によって燃焼室3全体の酸素を効率的に消費することが可能となる。
[第2実施例]
次に、直噴式ガソリンエンジンに本発明を適用した第2実施例について、図面を参照しながら説明する。図9は直噴式ガソリンエンジンの概要を示す模式図であり、図10は図9に示した直噴式ガソリンエンジンの制御系のブロック図である。
直噴式ガソリンエンジンとディーゼルエンジンとの大きな違いは、点火プラグ50である。すなわち、直噴式ガソリンエンジンは、上述したように火花点火式燃焼機関なので、インジェクタ4から燃焼室3内に噴射された燃料を点火プラグ50によって着火させる必要がある。この点火プラグ50は、図9に示すように、ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ4の位置、すなわち燃焼室3上面のシリンダヘッド部の中心位置に設置されることが多い。
また、インジェクタ4は、成層燃焼時にピストン1上面のキャビティと呼ばれる窪みに燃料を反射させて、その燃料が点火プラグ50周辺に集まるような位置に設置される。このような位置に設置される理由は、成層燃焼は燃焼室3全体で見ればリーンな状態、すなわち理論混合比(ストイキオメトリック)よりも燃料が少ない状態で燃焼させるためであり、点火プラグ50の周辺に燃料を集めて、その周辺の着火性を向上させるためである。つまり、燃焼室3内の燃料がリーンな状態では、特に火炎の体積が小さい場合(点火プラグ50によって点火された直後の状態)には、燃焼で発生した熱量に対して、点火プラグ50や燃焼室3壁面に逃げていく熱量が大きくなることも想定され、このような場合、火炎の体積が増加せず(つまり、火炎の伝播が起こらない)、燃焼室3全体が燃焼を起こさずに極小体積の一部分のみが燃焼を起こして、失火してしまうことがある。そこで、インジェクタ4を上述した位置に設置することで、点火プラグ50の周辺に比較的濃い燃料の雰囲気を作って、失火を予防するようにしている。
以上のような直噴式ガソリンエンジンにおいても、インジェクタ4から燃焼室3内に噴射された燃料は空気と十分に混合させた状態で燃焼を開始させる必要があるが、燃料と空気との混合時間(着火遅れ時間)が様々な要因で変動するため、ディーゼルエンジンと同様に、着火時期の制御が難しい。直噴式ガソリンエンジンでは、点火プラグ50によって燃料の着火が行われるので、燃料と空気とが十分に混合していない状態でも着火は可能であるが、燃料と空気とが十分に混合していない状態で燃料を着火させると未燃ガスの排出や不完全燃焼につながるため、燃料と空気とを十分に混合させた状態で着火させる必要がある。つまり、ここでの燃料の着火時期の制御とは、燃料を空気と十分に混合させた状態で燃焼を開始させるタイミングをいう。
そこで、第1実施例と同様に、ECU30が、筒内圧力センサ25で検知される燃焼室3内の圧力変化、あるいは酸素センサ26の信号などから推測した燃焼室3内の酸素量に基づいて、燃料の着火時期が所望の時期からずれるかどうかを判定し、燃料の着火時期が所望の時期からずれると予測した場合には、インジェクタ4に信号を送って燃料噴射タイミングを進角、あるいは遅角させたり、インジェクタ4内の燃料加熱ヒータ24による加熱動作を制御して噴射燃料を加熱することによって、燃料の着火時期のずれを解消する。
また、ECU30は、第1実施例で説明したように、アイドル状態から急加速した場合などの要求トルク急増時には、インジェクタ4内の燃料加熱ヒータ24による加熱動作を制御して噴射燃料を加熱することによって、燃料と空気との混合を促進させて燃焼室3内の酸素を燃焼により効率的に消費できるようにし、要求トルク急増時の応答遅れを抑制して、加速性能の向上を図ることが望ましい。
[変形例]
以上、本発明を適用した具体的な実施例として第1実施例及び第2実施例を例示したが、本発明の技術的範囲は以上の実施例で開示した内容に限定されるものではなく、これらの開示から容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。例えば、上述した実施例では、燃料加熱ヒータ24を内蔵する1つのインジェクタ4を用いて、燃料加熱ヒータ24による加熱動作を制御することでインジェクタ4からの噴射燃料の温度を調整するようにしているが、燃料加熱ヒータ24を内蔵するインジェクタ4のほかに、ヒータが設けられていない一般的なインジェクタも設置するようにして、これらのインジェクタから加熱した燃料と加熱しない燃料とを同時に噴射するようにして、噴射燃料の温度を調整するようにしてもよい。この場合は、燃料加熱ヒータ24が燃料に熱分布を持たせるような加熱を行えなくても、図3(c)に例示したような熱分布を持った燃料の噴射が可能となる。
ディーゼルエンジンの概要を示す模式図である。 ディーゼルエンジンの制御系のブロック図である。 燃料の加熱制御の一例を説明する図である。 内部に燃料加熱ヒータが設けられたインジェクタの具体例を示す縦断面図である。 排気流路に酸素センサを設けた図1の変形例を示す模式図である。 筒内圧力センサに代えて酸素センサをECUに接続した図2の変形例を示すブロック図である。 ECUによる燃料の着火時期の制御の概要を示すフローチャートである。 噴射燃料量と燃焼室内の酸素量との関係を示す概念図である。 直噴式ガソリンエンジンの概要を示す模式図である。 直噴式ガソリンエンジンの制御系のブロック図である。
符号の説明
1 ピストン
2 シリンダ
3 燃焼室
4 インジェクタ
18 クランク角センサ
24 燃料加熱ヒータ
25 筒内圧力センサ
26 酸素センサ
30 ECU

Claims (10)

  1. ピストン上面とシリンダ内周面との間に形成される燃焼室内に燃料噴射装置から燃料を直接噴射する直噴式のエンジンにおいて、
    前記燃料噴射装置から前記燃焼室内に噴射される燃料を加熱可能に配置されたヒータと、
    前記燃料噴射装置の燃料噴射のタイミングと前記ヒータによる燃料の加熱動作とを制御することにより、前記燃焼室内の燃料の着火時期を制御する制御手段とを備えることを特徴とする直噴式エンジン。
  2. 前記燃焼室内の圧力変化を検知する圧力検知手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記圧力検知手段の検知結果に基づいて、前記燃焼室内の燃料の着火時期が所望の時期から遅角側にずれるていると判定される場合に、前記燃料噴射装置から噴射される燃料を前記ヒータにより加熱させることを特徴とする請求項1に記載の直噴式エンジン。
  3. 前記燃焼室内の酸素量を検知する酸素量検知手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記酸素量検知手段の検知結果に基づいて、前記燃焼室内の燃料の着火時期が所望の時期から遅角側にずれることが予測される場合に、前記燃料噴射装置から噴射される燃料を前記ヒータにより加熱させることを特徴とする請求項1に記載の直噴式エンジン。
  4. 前記制御手段は、燃料の着火時期のずれ量に応じて、前記ヒータによる燃料の加熱量を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の直噴式エンジン。
  5. 前記制御手段は、前記燃料噴射装置から噴射される燃料の少なくとも一部が噴射直後に沸騰する温度となるように、前記ヒータによる燃料の加熱動作を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の直噴式エンジン。
  6. 前記制御手段は、前記燃料噴射装置から噴射される燃料の少なくとも一部が噴射直後に自己着火する温度となるように、前記ヒータによる燃料の加熱動作を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の直噴式エンジン。
  7. 前記制御手段は、同一行程内に前記燃料噴射装置から噴射される燃料が熱分布を持つように、前記ヒータによる燃料の加熱動作を制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の直噴式エンジン。
  8. 前記燃料噴射装置は、同一行程内における燃料の噴射を複数回に分けて行い、
    前記制御手段は、同一行程内に前記燃料噴射装置から複数回に分けて噴射される燃料の温度が噴射ごとに異なる温度となるように、前記ヒータによる燃料の加熱動作を制御することを特徴とする請求項7に記載の直噴式エンジン。
  9. 前記制御手段は、所望の着火時期直前で前記燃料噴射装置から自己着火温度にまで加熱された燃料が噴射され、所望の着火時期直前以外のタイミングで前記燃料噴射装置から自己着火温度未満の燃料が噴射されるように、前記燃料噴射装置の燃料噴射のタイミングと前記ヒータによる燃料の加熱動作とを制御することを特徴とする請求項8に記載の直噴式エンジン。
  10. ピストン上面とシリンダ内周面との間に形成される燃焼室内に燃料噴射装置から燃料を直接噴射する直噴式エンジンの制御方法であって、
    前記燃料噴射装置から前記燃焼室内に噴射される燃料を加熱可能なヒータを設け、
    前記燃料噴射装置の燃料噴射のタイミングと前記ヒータによる燃料の加熱動作とを制御することにより、前記燃焼室内の燃料の着火時期を制御することを特徴とする直噴式エンジンの制御方法。
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