JP6296114B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ピストンが往復動可能に嵌装されるとともに内側に燃焼室が形成された気筒を備えたエンジンの制御装置に関する。
従来より、エンジンにおいて、その燃費性能を高めるための各種検討が行われている。
例えば、特許文献1には、エンジンの負荷や回転数に応じて吸気弁の閉弁時期を変更することで燃費性能を高めるようにしたものが開示されている。
具体的には、特許文献1のエンジンでは、エンジンの負荷が低く、かつ、エンジンの回転数が低い場合には、吸気弁の閉弁時期を進角側に制御して、これにより有効圧縮比を高めて燃費性能の向上を図る一方、エンジンの負荷が低く、かつ、エンジンの回転数が高い場合には、吸気弁の閉弁時期を遅角側に制御して、これによりポンピングロスを小さくして燃費性能の向上を図るようにしている。
特開2012−197753号公報
しかしながら、上記特許文献1のエンジンでは、冷却損失に対して考慮がされていないため、十分に燃費性能を高めることができないおそれがある。すなわち、エンジンの損失には、上記ポンピングロスの他に、気筒内の高温のガスが有する熱エネルギーが気筒の壁面から外部に放出される冷却損失があり、燃費性能を高めるためにはこの冷却損失を小さく抑えることが望ましい。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、冷却損失を効果的に低減することのできるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ピストンが往復動可能に嵌装されるとともに内側に燃焼室が形成された気筒を備えたエンジンの制御装置であって、上記気筒内に吸気を導入する吸気ポートと、上記吸気ポートの開口部分を開閉する吸気弁と、上記吸気弁の閉弁時期を変更可能な吸気閉弁時期変更手段とを備え、上記燃焼室は、上記ピストンの冠面と対向する天井面を有し、上記燃焼室の天井面には、上記ピストンの冠面に向かって燃料を噴射する燃料噴射手段が取り付けられており、上記吸気閉弁時期変更手段は、エンジン負荷が予め設定された基準負荷未満の低負荷領域において、上記吸気弁の閉弁時期を、吸気下死点よりも遅角側、かつ、エンジン回転数が高いほど進角側となる時期にするとともに、少なくともエンジン回転数が低い側では気筒内の吸気が上記吸気ポートに吹き返す時期にし、上記低負荷領域において、上記燃料噴射手段は、上記燃焼室の中央部分の方が外周部分よりも燃焼開始直前の燃料濃度が高くなるように圧縮行程後期に燃料を複数回にわたって噴射することを特徴とするエンジンの制御装置を提供する(請求項1)。
本発明によれば、エンジン負荷が低い低負荷領域において、吸気弁の閉弁時期が吸気下死点よりも遅角側の時期にされるため、吸気を圧縮するための仕事を少なく抑えてポンピングロスを小さく抑えることができる。
しかも、本発明では、低負荷領域において、エンジン回転数が高いほど吸気弁の閉弁時期が進角側の時期に制御される。そのため、エンジン回転数が高いときには、有効圧縮比
ひいては熱効率を高めてこれにより燃費性能を高めることができるとともに、エンジン回転数が低いときには、冷却損失を小さく抑えてこれにより燃費性能を高めることができる。
具体的には、吸気弁の閉弁時期が同じであっても、エンジン回転数が低い方が吸気が圧縮される時間は長くなる。そのため、エンジン回転数が低い場合に吸気弁の閉弁時期を進角側にすると、吸気の圧縮時間が過剰に長くなることに伴って高温の吸気から外部に放出される熱エネルギーが大きくなる。一方、エンジン回転数が高い場合には、吸気弁の閉弁時期を進角側にしても吸気の圧縮時間は比較的短く抑えられる。そのため、この場合には、吸気弁の閉弁時期を進角側にすることに伴う冷却損失の増大は比較的小さく、吸気弁の閉弁時期の進角に伴う有効圧縮比ひいては熱効率の向上効果の方が大きくなる。
そこで、本発明では、上記のようにエンジン回転数が高いほど吸気弁の閉弁時期を進角側にする(エンジン回転数が低いほど遅角側にする)。
これにより、エンジン回転数が低い場合において吸気の圧縮時間が過剰に長くなるのを抑制することができ、上記熱エネルギーの放出を小さく抑えて冷却損失を小さくすることができる。具体的には、吸気弁の閉弁時期を吸気下死点よりも遅角側とすれば、吸気弁が閉弁してから圧縮上死点までの時間であって吸気が圧縮される時間を短くすることができる。すなわち、圧縮されることに伴って高温となった吸気と気筒の壁面との接触時間を短く抑えることができる。そのため、高温となった吸気から気筒の壁面を介して外部に放出される熱エネルギーを小さく抑えることができる。そして、エンジン回転数が高い場合において有効圧縮比を高くして熱効率を高めることができる。従って、低負荷領域全体で燃費性能を高めることができる。
また、本発明では、低負荷領域において、燃料噴射手段によって、燃焼室の中央部分の方が外周部分よりも燃焼開始直前の燃料濃度が高くなるように圧縮行程後期に燃料が複数回にわたって噴射される。
そのため、燃焼室の壁面近傍で生じる燃焼ガスの量を少なく抑えることができ、燃焼室の壁面を通じて外部に放出される燃焼ガスの熱エネルギーを小さく抑えて冷却損失を小さくすることができる。
しかも、本発明では、上記のように、低負荷領域において、吸気弁の閉弁時期が、吸気下死点よりも遅角側とされ、かつ、エンジン回転数が高いほど進角側となるように制御される。そのため、エンジン回転数が高い場合において、燃焼ガスが燃焼室の壁面と接触しやすくなるのを抑制することができる。
具体的に、吸気弁の閉弁時期を吸気下死点よりも遅角側にした場合には、吸気下死点付近から吸気弁が閉弁するまでの間、ピストンの上昇(燃焼室の天井面側への移動)に伴って気筒内の吸気は吸気ポートに向かう。
ここで、この吸気ポートに向かう吸気の勢いが強い場合には、吸気弁が閉弁されても吸気は吸気ポートに向かって移動する。その結果、吸気弁の閉弁後において吸気ポートに向かって移動した吸気は吸気弁およびその周りの燃焼室の天井面に衝突し、さらに、これに沿って移動するようになる。これにより、圧縮上死点付近において、燃焼室内には、その天井面に沿う比較的強い流が生じるので、たとえ上記のように混合気を成層化したとしても、燃焼ガスが燃焼室の天井面すなわち燃焼室の壁面と接触しやすくなってしまう。
これに対して、上記構成では、低負荷領域においてエンジン回転数が高いほど進角側となるように制御される。すなわち、エンジン回転数が高い(ピストンの移動スピードが速い)ことに伴って気筒内において上方に移動する吸気の勢いが強くなる運転条件の方が、より吸気下死点に近い時期、つまりピストンの上昇量が小さく気筒内の吸気の勢いが比較的小さいタイミングで吸気弁が閉弁される。そのため、燃焼室の天井面に沿う吸気ひいては混合いおよび燃焼ガスの流れを十分に弱めることができ、燃焼ガスと燃焼室の壁面との接触を効果的に抑制することができる。
前記構成において、上記吸気閉弁時期変更手段は、エンジン負荷が上記基準負荷以上の高負荷領域のうちエンジン回転数が予め設定された基準回転数以上となる高速高負荷領域において、上記吸気弁の閉弁時期を、吸気下死点よりも遅角側、かつ、エンジン回転数が高い方が遅角側となる時期にするのが好ましい(請求項2)。
この構成によれば、高速高負荷領域においてエンジン回転数が高いほど吸気弁の閉弁時期が遅角側とされるため、吸気の慣性力を利用して各エンジン回転数において充填効率を効果的に高めることができ、要求に応じた高いエンジン出力を確保することができる。
以上説明したように、本発明のエンジンの制御装置によれば、効果的に冷却損失を小さくして燃費性能を高めることができる。
本発明の一実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示した図である。 エンジン本体の概略断面図である。 燃焼室の天井面の概略平面図である。 燃料噴射装置の概略断面図である。 エンジンの制御系統を示すブロック図である。 エンジンの運転領域を示す図である。 低負荷領域における吸気弁の閉弁時期とエンジン回転数との関係を示した図である。 吸気弁の閉弁時期を説明するために吸気弁のバルブリフトを示した図である。 燃焼室に形成される混合気を模式的に示した図である。 低負荷領域での噴射パターンと混合気層の形状との関係を示した図であり、(a)は第1噴射モードでの図、(b)は切替噴射モードでの図、(c)は第2噴射モードでの図である。 吸気弁の閉弁時期を遅角側としたときの気筒内の吸気の流れを模式的に示した図であり、(a)は吸気下死点前の図、(b)は吸気下死点後かつ吸気弁の閉弁直前の図、(c)は吸気弁の閉弁後の図、(d)圧縮上死点付近の図である。 吸気弁の閉弁時期と混合気の分布との関係を説明するための図である。 本実施形態における気筒内の吸気の流れを模式的に示した図であり、(a)は吸気下死点前の図、(b)は吸気下死点後かつ吸気弁の閉弁直前の図、(c)は吸気弁の閉弁後の図、(d)圧縮上死点付近の図である。 高負荷領域における吸気弁の閉弁時期とエンジン回転数との関係を示した図である。
(1)エンジンシステムの全体構成
図1は、本発明の実施形態にかかる直噴エンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムの構成を示した図である。本実施形態のエンジンシステムは、4ストロークのエンジン本体1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排ガスを排出するための排気通路40と、排ガスの一部を吸気に還流するEGR装置50とを備える。エンジン本体1は、例えば、4つの気筒2を有する4気筒エンジンである。エンジン本体1に供給する燃料の種類は限定されないが、本実施形態ではガソリンを含む燃料が用いられる。このエンジンシステムは車両に搭載され、エンジン本体1は車両の駆動源として利用される。
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31、スロットルバルブ32、サージタンク33が設けられており、これらを通過した後の空気がエンジン本体1に導入される。
スロットルバルブ32は、吸気通路30を開閉するものである。ただし、本実施形態では、エンジンの運転中、スロットルバルブ32は基本的に全開もしくはこれに近い開度に維持されており、エンジンの停止時等の限られた運転条件のときにのみ閉弁されて吸気通路30を遮断する。
排気通路40には、三元触媒等を含み排ガスを浄化するための触媒装置41が設けられている。
EGR装置50は、EGR通路51と、これを開閉するEGRバルブ52と、EGRクーラ53とを有する。EGR通路51は、排気通路40のうち触媒装置41の上流側の部分と吸気通路30のうちスロットルバルブの下流側の部分(図1の例では、サージタンク33)とを接続しており、排気通路40を流通する排ガスの一部は、EGR通路51を通って吸気通路30に還流する。吸気通路30に還流する排ガスすなわちEGRガスの量は、EGRバルブ52の開弁量によって調整される。EGRクーラ53は、EGRガスを冷却するためのものであり、EGRガスはEGRクーラ53にて冷却された後、吸気通路30に還流される。
(2)エンジン本体の構成
エンジン本体1の構成について次に説明する。
図2は、エンジン本体1の一部を拡大して示した断面図である。以下では、図2に示す上下方向を単に上下方向といい、図2の上、下を単に上、下として説明する。
図2に示すように、エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復動可能に嵌装されたピストン5とを有している。
ピストン5の上方には燃焼室8が形成されている。具体的には、燃焼室8は、気筒2の壁面(内側面)と、ピストン5の冠面6と、シリンダヘッド4の下面とで区画されている。燃焼室8は、外周側から中央に向かって上方に傾斜するいわゆるペントルーフ型であり、燃焼室8の天井面8a(シリンダヘッド4の下面)は、後述する吸気弁13が設けられる吸気側と、後述する排気弁14が設けられる排気側との2つの傾斜面からなる三角屋根状をなしている。
ピストン5の冠面6には、その中心部を含む領域を下方に凹ませたキャビティ7が形成されている。詳細には、ピストン5の冠面6には、その中心部を囲むように上方に隆起する部分が設けられており、この隆起部分の内側にキャビティ7が区画されている。キャビティ7は、ピストン5が上死点まで上昇したときの燃焼室8の大部分を占める容積を有するように形成されている。一方、ピストン5の冠面6のうち上記隆起部分よりも外周側すなわちキャビティ7よりも外周側の部分は、ピストン5が上死点まで上昇したときに燃焼室8の天井面8aにほぼ沿って延びている。
本実施形態では、エンジン本体1の幾何学的圧縮比、つまり、ピストン5が下死点にあるときの燃焼室8の容積とピストン5が上死点にあるときの燃焼室8容積との比は、17以上35以下(例えば25程度)に設定されている。
シリンダヘッド4には、吸気通路30から供給される空気を気筒2内に導入するための吸気ポート11と、気筒2内で生成された燃焼ガスを排気通路40に導出するための排気ポート12とが設けられている。各ポート11,12は、それぞれ燃焼室8の天井面8aに開口している。各ポート11,12の開口部分はそれぞれ吸気弁13,排気弁14によって開閉される。すなわち、シリンダヘッド4には、燃焼室8の天井面8aに形成された吸気ポート11の開口部分を開閉する吸気弁13と、燃焼室8の天井面8aに形成された排気ポート12の開口部分を開閉する排気弁14とが設けられている。
本実施形態では、1つの気筒2に対して吸気ポート11と排気ポート12とがそれぞれ2つずつ設けられており、図3(燃焼室8の天井面8aの概略平面図)に示すように、燃焼室8の天井面8aには吸気ポート11と排気ポート12とがそれぞれ2つずつ開口している。そして、1つの気筒2に対して、吸気弁13と排気弁14とがそれぞれ2つずつ設けられている。また、これら吸気弁13と排気弁14(吸気ポート11の開口部分と排気ポート12の開口部分)とは、燃焼室8の天井面8aのうちその中心を通る直線を挟んで互いに反対側となる部分に設けられている。図3に示す例では、吸気ポート11の開口部分の面積すなわち吸気弁13のバルブヘッドの面積の方が、排気ポート12の開口部分の面積すなわち排気弁14のバルブヘッドの面積よりも小さくなっている。
図2に示すように、吸気ポート11は、いわゆるタンブルポートであって、燃焼室8の天井面8aから上方かつ燃焼室8の径方向の外側に向かって緩やかに湾曲している。より詳細には、吸気ポート11は、その中心線が、燃焼室8の天井面8aに対して略直角(85°〜95°程度)となる姿勢で形成されている。
吸気弁13は、吸気弁開閉機構15によって開閉される。吸気弁開閉機構15には、吸気弁13の開閉時期を変更可能な吸気開閉時期変更機構(吸気閉弁時期変更手段)15aが設けられており、運転条件等に応じて吸気弁13の開弁時期および閉弁時期が変更されるようになっている。本実施形態では、吸気弁13の開弁期間が一定に維持された状態でその開閉時期が変更される。
ここで、本実施形態では、燃焼室8内の燃焼ガスの熱が燃焼室8の外部に放出されるのを抑制して冷却損失を低減するべく、燃焼室8の壁面(内側面)の表面に、熱伝導率が低い断熱材71が設けられている。具体的には、気筒2の内側面の上端部分と、ピストン5の冠面6と、燃焼室8の天井面8aと、吸気弁13および排気弁14の各バルブヘッドの面とに、それぞれ断熱材71が設けられている。なお、気筒2の壁面に設けられた断熱材71は、ピストン5が上死点に位置した状態でピストンリングよりも上側となる部分に限定されており、ピストンリングが断熱材71上を摺動しないようになっている。
断熱材71としては、上記のように熱伝導率が低い材料で形成されればよく具体的な材料は限定されない。ただし、断熱材71として、燃焼室8の壁面よりも容積比熱が小さい材料を用いるのが好ましい。すなわち、エンジン本体1が冷却水により冷却される場合、燃焼室8内のガス温度は燃焼サイクルの進行によって変動する一方、燃焼室8の壁面の温度は略一定に維持される。そのため、この温度差に伴って冷却損失が大きくなる。そこで、断熱材71を容積比熱の小さい材料で形成すれば、断熱材71の温度が燃焼室8内のガスの温度の変動に追従して変化するため、冷却損失を小さく抑えることができる。
例えば、断熱材71は、燃焼室8の壁面上にZrO2等のセラミック材料がプラズマ溶射によりコーティングされることで形成されている。なお、このセラミック材料の中に多数の気孔が含まれるようにし、これにより断熱材71の熱伝導率および容積比熱をさらに小さくしてもよい。また、図2に示す例では、吸気ポート11の内側面にも断熱層72が形成されている。
シリンダヘッド4には、さらに、燃焼室8内に燃料を噴射する燃料噴射装置21と、燃焼室8内に形成された燃料と空気の混合気を点火するための点火プラグ22(図3参照)とが取り付けられている。
図2および図3に示すように、燃料噴射装置21は、その先端(燃焼室8側の端部)が燃焼室8の天井面8aの中心に位置してキャビティ7のほぼ中央を臨むように配置されている。一方、点火プラグ22は、その先端が、燃料噴射装置21の側方であって吸気弁13と排気弁14との間に位置するように配置されている。
燃料噴射装置21は、図外の燃料ポンプにより圧送された燃料を燃焼室8内に噴射する。本実施形態では外開き弁式の燃料噴射装置21が用いられている。
図4は、燃料噴射装置21の概略断面図である。この図4に示すように、燃料噴射装置21は、先端(燃焼室8側の端部)にノズル口21bが形成された燃料管21cと、燃料管21cの内側に配設されてノズル口21bを開閉する外開き弁21aとを有する。燃料噴射装置21は、上記のようにその先端すなわちノズル口21bがキャビティ7の中央を臨むように配置されているとともに、ノズル口21bおよび燃料管21cの中心軸が気筒2の中心軸と平行に延びる姿勢で配置されている。外開き弁21aは、印加された電圧に応じて変形するピエゾ素子21dに接続されている。外開き弁21aは、ピエゾ素子21dに電圧が印加されていない状態でノズル口21bと当接してノズル口21bを閉弁し、ピエゾ素子21dが電圧の印加に伴って変形することで、ノズル口21bから先端側に突き出してノズル口21bを開弁する。
ノズル口21bおよび外開き弁21aのうちノズル口21bと当接する部分は、先端側ほど径が大きくなるテーパ状を有しており、ノズル口21bからは、ノズル口21bの中心軸すなわち気筒2のほぼ中心軸を中心として、燃料がコーン状(詳しくはホローコーン状)に噴射される。例えば、このコーンのテーパ角は90°〜100°(ホローコーンにおける内側の中空部のテーパ角は70°程度)となっている。
ここで、外開き弁21aの開弁期間およびリフト量(リフト量は、外開き弁21aの閉弁位置からの突出量でありノズル口21bの開口量である)は、ピエゾ素子21dへの電圧の印加期間および電圧の大きさに応じて変化する。そして、外開き弁21aのリフト量に応じて、ノズル口21bから噴射される燃料噴霧のペネトレーション、単位時間あたりに噴射される燃料量および燃料噴霧の粒径は変化する。具体的には、リフト量が大きくノズル口21bの開口量が大きくなると、燃料噴霧のペネトレーションは大きくなり、単位時間あたりの噴射燃料量が大きくなるとともに燃料噴霧の粒径が大きくなる。
上記構成に伴い、燃料噴射装置21は、1〜2msecの間に20回程度の多段噴射を行うことができる。また、燃料噴射装置21は、燃料噴射の間隔と、リフト量とをそれぞれ変更することによって、径方向(ノズル口21bの中心軸と直交する方向)に対する燃料噴霧の広がりと、軸方向(ノズル口21bの中心軸に沿う方向)に対する燃料噴霧の広がりとを独立して制御することが可能となっている。
例えば、燃料の噴射間隔が短くされることで、燃料噴霧の軸方向の広がりは促進される。すなわち、燃料の噴射間隔が短い方が、ホローコーンの内側により継続して負圧領域が形成されて軸方向により長い負圧領域が形成される。そのため、燃料の噴射間隔が短い方が、この負圧領域に引き寄せられて燃料噴霧が軸方向に広がりやすくなる。
一方、燃料噴射装置21のリフト量が大きくされると、燃料噴霧の径方向の広がりが促進される。すなわち、リフト量が大きい場合には、上記のように燃料噴霧の粒径が大きくなって燃料噴霧の運動量が大きくなる。そのため、リフト量が大きい場合には、燃料噴霧は負圧領域に引き寄せられにくくなり、径方向の外方へより広がることになる。
(3)制御系統
(3−1)システム構成
図5は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示すように、当実施形態のエンジンシステムは、PCM(パワートレイン・コントロール・モジュール、制御手段)100によって統括的に制御される。PCM100は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
PCM100は、エンジンの運転状態を検出するための各種センサと電気的に接続されている。
例えば、シリンダブロック3には、クランク軸の回転角度および回転速度すなわちエンジン回転数を検出するクランク角センサSN1が設けられている。また、吸気通路30には、エアクリーナ31を通過して各気筒2に吸入される空気量(新気量)を検出するエアフローセンサSN2が設けられている。また、車両には、運転者により操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSN3が設けられている。
PCM100は、上記各種センサからの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、PCM100は、スロットルバルブ32、吸気開閉時期変更機構15a、燃料噴射装置21、EGRバルブ52、点火プラグ22等と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
具体的には、PCM100は、アクセル開度とエンジン回転数等から求められるエンジン負荷の要求値に応じて燃料の噴射量を算出して、これに対応する燃料を燃料噴射装置21に噴射させる。また、PCM100は、図6に示す運転領域に応じて、吸気弁13の閉弁時期の制御および噴射モード等を変更する。図6は、横軸がエンジン回転数、縦軸がエンジン負荷のマップであり、本実施形態では、運転領域として、大きく、エンジン負荷が予め設定された基準負荷T1未満の低負荷領域A1と、エンジン負荷が基準負荷T1以上の高負荷領域A2とに分けられている。そして、低負荷領域A1が、エンジン負荷に応じて第1領域A1_aと、第2領域A1_cと、切替領域A1_bとに分けられており、高負荷領域A2が、エンジン回転数に応じて低速高負荷領域A2_aと、高速後負荷領域A2_bとに分けられている。各領域の制御内容について以下に説明する。
(3−2)低負荷領域
低負荷領域A1では、燃料と空気との混合気を予め混合させて、この混合気を圧縮上死点(TDC)付近で自着火させる予混合圧縮自着火燃焼が実施される。そのため、低負荷領域A1では、点火プラグ22の駆動は停止される。
低負荷領域A1では、エンジン負荷が小さいため有効圧縮比を小さくすることができる。そこで、低負荷領域A1では、吸気を圧縮するための仕事を少なく抑えてポンピングロスを小さく抑えるべく有効圧縮比が小さい値とされる。具体的には、吸気開閉時期変更機構15aによって、吸気弁13の閉弁時期が吸気下死点よりも遅角側の時期に制御される。
また、低負荷領域A1では、吸気開閉時期変更機構15aによって、吸気弁13の閉弁時期が、エンジン回転数が高いほど進角側の時期に、すなわち、吸気下死点(BDC)に近づく時期に変更される。本実施形態では、図7に示すように、エンジン回転数にほぼ比例して吸気弁13の閉弁時期の進角量が増大される。
吸気弁13の閉弁時期をこのように制御するのは、次の理由による。
吸気弁13の閉弁時期が同じであっても、エンジン回転数が低い方が吸気が圧縮される時間は長くなる。そのため、エンジン回転数が低い場合に吸気弁13の閉弁時期を進角側にすると、吸気の圧縮時間が過剰に長くなることに伴って高温の吸気から外部に放出される熱エネルギーが大きくなる。一方、エンジン回転数が高い場合には、吸気弁13の閉弁時期を進角側にしても吸気の圧縮時間は比較的短く抑えられる。そのため、この場合には、吸気弁13の閉弁時期を進角側にすることに伴う冷却損失の増大は比較的小さく、吸気弁の閉弁時期の進角に伴う有効圧縮比ひいては熱効率の向上効果の方が大きくなる。
そこで、本実施形態では、上記のように吸気弁13の閉弁時期をエンジン回転数が高いほど進角側の時期に制御することで、エンジン回転数が低い場合において吸気の圧縮時間が過剰に長くなるのを抑制して冷却損失を小さく抑え、これにより燃費性能を高めるとともに、エンジン回転数が高い場合であって冷却損失が比較的小さく抑えられる場合において有効圧縮比を高めることで熱効率を高める。そして、これにより、低負荷領域A1での燃費性能を高めるようにする。
なお、吸気弁13の閉弁時期とは、図8に示すように、吸気弁13のバルブリフトが最大となった後にランプ部Rを除いて最も小さくなるときの時期(クランク角での時期)であって気筒2内への気筒の流入が実質的に停止する時期をいう。例えば、吸気弁13の閉弁時期は、バルブリフトが0.4mm以下に低下した時期をいう。
また、低負荷領域A1では、混合気の発熱量が小さく燃焼温度が比較的低いため、燃焼により生成されるNOx(いわゆるRaw NOx)が少なく抑えられる。そのため、この領域A1では、三元触媒41によりNOxを浄化させる必要がなく、空燃比を三元触媒によるNOx浄化が可能な理論空燃比にする必要がない。そこで、低負荷領域A1では、燃費性能を高めるべく混合気の空燃比がリーンすなわち空気過剰率λ>1とされる。
また、低負荷領域A1では、EGRガスが気筒2内に還流される。すなわち、低負荷領域A1では、EGRバルブ52が開弁されて、排気通路40内の排ガスの一部がEGRガスとして吸気通路30に還流される。
本実施形態では、低負荷領域A1において、燃料量に対する燃焼室8内の全ガス重量の割合であるG/Fが35以上となるようにEGRガスが還流される。また、エンジン負荷が高いほどEGR率(気筒2内の全ガス重量のうちEGRガスの重量が占める割合)が大きくされる。
また、低負荷領域A1では、圧縮行程後半(圧縮上死点前90°CA〜圧縮上死点まで
)に、燃料噴射装置21からすべての燃料(1燃焼サイクルで噴射される燃料の全量)が噴射される。例えば、圧縮上死点前30°CA付近で全燃料が燃焼室8内に噴射される。
このように圧縮行程後半にすべての燃料が噴射されることで、低負荷領域A1では、図9に示すように、圧縮上死点付近すなわち燃焼室8内での混合気の燃焼開始直前において、燃焼室8の中央部分に燃料濃度の高い混合気Qが形成される。すなわち、燃焼室8内には、その中央部分において燃料濃度が高く、その外周部分において燃料濃度が低い成層化された混合気が形成される。なお、燃焼室8の外周部分とは、ピストン5の冠面6の表面(冠面6上の断熱材71の表面)、気筒2の壁面(壁面上の断熱材71の表面)および燃焼室8の天井面8a付近を指す。
ここで、本実施形態では、混合気の燃焼開始直前において燃焼室8の外周部分に燃料をほぼ含まないガス層(以下、適宜、非燃焼ガス層という)が形成されるように、すなわち、燃焼室8の外周部分の燃料濃度がほぼゼロとなるように、エンジン負荷に応じて噴射モードが切り替えられるようになっている。
具体的には、低負荷領域A1のうちよりエンジン負荷が低い第1領域A1_aと、これよりもエンジン負荷の高い第2領域A1_cと、第1領域A1_aと第2領域A1_cとの切替領域A1_bとにおいて、それぞれ噴射モードが、それぞれ図10(a)〜(c)に示される第1噴射モード、第2噴射モード、切替領域噴射モードとされる。以下、各噴射モードの詳細について説明する。
図10(a)は、低負荷領域A1のうちよりエンジン負荷が低い第1領域A1_aで実施される第1噴射モードである。第1噴射モードでは、燃料噴射装置21のリフト量が小さくかつ噴射間隔が短い噴射が複数回連続して行われる。なお、噴射回数は図の例に限らず適宜変更可能である。
上記のように、噴射間隔が短いと燃料噴霧は軸方向に長くなる。そして、リフト量が小さいと燃料噴霧の径方向の外方への広がりは抑制される。従って、第1噴射モードでは、燃料噴霧および燃料と空気との混合気は、径方向に対して軸方向の長さが相対的に長い縦長形状となる。ここで、第1領域A1_aはエンジン負荷が特に低く、噴射される燃料量が小さい。そのため、混合気層が縦長形状とされつつその軸方向の長さは短く抑えられる。従って、燃焼室8の外周部分に非燃焼ガス層を形成することができる。
図10(c)は、第2領域A1_cで実施される第2噴射モードである。第2噴射モードでは、燃料噴射装置21のリフト量が第1噴射モードのリフト量よりも大きくかつ噴射間隔が第1噴射モードよりも長い噴射が複数回連続して行われる。なお、噴射回数は図の例に限らず適宜変更可能である。
上記のように、噴射間隔が長いと燃料噴霧は軸方向に短くなる。そして、リフト量が大きいと燃料噴霧は径方向の外方へ広がる。従って、第2噴射モードでは、燃料噴霧および混合気は、軸方向に対して径方向の長さが相対的に長い横長形状となる。ここで、圧縮上死点付近における燃焼室8の寸法は軸方向よりも径方向の方が長く、径方向については空間に余裕がある。そのため、横長形状であっても燃焼室の壁面までは混合気は到達しない。従って、燃焼室8の外周部分に非燃焼ガス層を形成することができる。
図10(b)は、切替領域A1_bで実施される切替領域噴射モードである。切替領域噴射モードは、第1噴射モードと第2噴射モードとを組み合わせたモードである。例えば、図10(b)に示すように、第2噴射モードの噴射を行った後(リフト量が大きくかつ噴射間隔が長い噴射を複数回連続させた後)、第1噴射モードの噴射を行う(リフト量が
小さくかつ噴射間隔が短い噴射を複数回連続させる)。なお、これに代えて、第1噴射モードの噴射を行った後、第2噴射モードの噴射を行ってもよい。また、噴射回数は図の例に限らず適宜変更可能である。
切替領域噴射モードでは、第1噴射モードと第2噴射モードとの組み合わせにより、混合気層の特に径方向の外方への広がりが調整される。その結果、混合気層は、第1噴射モード時の混合気層よりも長くかつ、第2噴射モードの混合気層よりも短い形状となる。これにより、第1領域A1_aと第2領域A1_cとの境界領域である切替領域A1_bでは、混合気の軸方向および径方向の広がりが適切に調整されて、燃焼室8の外周部分に非燃焼ガス層を形成することが可能となる。
なお、切替領域噴射モードは省略可能である。また、本実施形態では、上記のように、低負荷領域A1では、空気過剰率λが1より大きくされて燃焼に寄与しない余剰の空気が存在するため、上記のように燃焼室8の外周部分に空気層が形成されても、燃焼室8の中央部分には燃焼に必要な空気が確保され、この部分の空燃比は適正な範囲におさめられる。
ここで、上記説明したように、低負荷領域A1の各領域A1_a〜A1_cにおいて上記の各噴射モードを実施すれば、基本的には、燃焼室8の外周部分に非燃焼ガス層を形成して燃焼室8の外周部分の燃料濃度をほぼゼロにすることができる。しかしながら、本願発明者らは、気筒2内で生成される混合気および燃焼ガスの分布について詳細に調べた結果、運転条件によっては、上記各噴射モードを実施しても燃焼室8の外周部分に適切に非燃焼ガス層が形成されない場合があることを突き止めた。具体的には、上記のように吸気弁13の閉弁時期を吸気下死点よりも遅角側とした場合において、この遅角量が比較的大きく、かつ、エンジン回転数が高い場合には、燃焼室8の外周部分に適切に非燃焼ガス層が形成されにくいことを突き止めた。
これについて図11(a)〜(d)および図12を用いて説明する。これら図は、吸気弁13の閉弁時期を吸気下死点よりも比較的大きく遅角側とし、かつ、エンジン回転数が高い場合における気筒2内の吸気の流れを模式的に示した図である。
まず、図11(a)に示すように、吸気下死点前であって吸気弁13が開いている状態でピストン5が下降しているときは、吸気ポート11から気筒2内に向かって吸気(空気とEGRガスとを含むガス)が流入する。このとき、気筒2内には、タンブル流が発生する。すなわち、気筒2内において、吸気は、吸気ポート11からピストン5の冠面6に向かって排気側寄りの部分を通過しながら下降した後、ピストン5の冠面6付近から吸気側を通って上昇する。
その後、吸気下死点を超えてピストン5が上昇を開始すると、図11(b)に示すように、ピストン5に押しあげられることで気筒2内の吸気の上向きの流れは強くなる。このとき、吸気弁13が開弁していると、気筒2内の吸気は吸気ポート11に戻ろうとし、気筒2内の吸気は吸気弁13に向かって流れる。この吸気弁13に向かう吸気の勢いは、ピストン5が上昇するほど、すなわち、燃焼室8の容積が小さくなるほど強くなる。また、この吸気の勢いは、ピストン5の上昇スピードが速いほどすなわちエンジン回転数が高いほど強くなる。
ピストン5がある程度上昇して吸気弁13に向かって吸気が勢いよく流れている状態で吸気弁13が閉弁すると、図11(c)に示すように、吸気は吸気弁13に衝突し、燃焼室8の天井面8aに沿って排気側に移動するようになる。従って、気筒2内すなわち燃焼室8内には、ピストン5の冠面6から吸気弁13に向かった後、燃焼室8の天井面8aに
沿って排気弁14側に向かう比較的強い吸気流が生じる。
従って、圧縮上死点付近では、図11(d)に示すように、吸気側から排気側に向かう吸気の勢いの方が、排気側から吸気側に向かう吸気の勢いよりも強くなる。具体的には、圧縮上死点付近では、ピストン5の冠面6の外周部分と燃焼室8の天井面8aとの間の空間から燃焼室8の中央に向かういわゆるスキッシュ流が発生する。しかし、吸気側から排気側に向かってはこのスキッシュ流に上記燃焼室8の天井面8aに沿う流れが加わるため、吸気側から排気側に向かう流れ(実線で示した流れ)の方が、排気側から吸気側に向かうスキッシュ流(破線矢印で示した流れ)よりも大きくなり、燃焼室8内には、その天井面8a付近において吸気側から排気側に向かう強い流れが生じることになる。
そのため、この状態では、圧縮上死点前において上記各噴射モードを実施しても混合気が燃焼室8の天井面8aに沿って排気側に流れてしまう。従って、本来ならば(燃焼室8の天井面8aに沿って排気側に向かう吸気の流れがほとんどない状態では)図12の実線で示すように混合気が形成されるところ、混合気は破線で示すように燃焼室8の天井面8aに沿うように形成されてしまう。
このように、上記各噴射モードを実施しても、気筒2内の吸気の流れる向きおよび勢いによっては混合気を適切な状態に形成することができない場合がある。
これに対して、本実施形態では、上記のように、低負荷領域A1において、エンジン回転数が高いほど吸気弁13の閉弁時期が進角側であって吸気下死点に近づくように制御される。そのため、混合気を適切な状態、すなわち、外周部分に非燃焼ガス層が形成される状態にすることができる。
すなわち、エンジン回転数が高くピストン5の上昇スピードが速く、これに伴って気筒内での吸気の流れが強くなりやすい条件、ひいては、図11(b)に示す状態において吸気弁13に向かう吸気の勢いが強くなりやすい条件ほど、ピストン5の上昇量がより少なく吸気弁13に向かう吸気の勢いが小さく抑えられるタイミングで吸気弁13が閉弁される。そのため、燃焼室8の天井面8aに沿う流れを弱くすることができ、燃焼室8の外周部分(燃焼室8の天井面8a近傍)に非燃焼ガスの層が形成された状態で混合気を形成することができる。
図13(a)〜(d)は、図11(a)〜(d)に対して吸気弁13の閉弁時期をより進角側に制御したときの気筒2内の吸気の流れを模式的に示した図である。この図13の(b)〜(d)に示すように、ピストン5の下降に伴って気筒2内にタンブル流が発生した場合であっても(図13(a))、図13(b)および図13(c)に示すように、ピストン5が上昇を開始してから早いタイミングで吸気弁13を閉弁すれば、吸気弁13に向かう吸気の勢いは弱くなり、吸気はゆるやかに燃焼室8の天井面8aの中央付近に向かって移動するようになる。そのため、図13(d)に示すように、圧縮上死点付近において、吸気側から排気側に向かう吸気の勢いと、排気側から吸気側に向かう吸気の勢いとの差を小さくして、燃焼室8の天井面8aに沿う流れを弱くすることができる。
(3−3)高負荷領域
高負荷領域A2では、スモークの悪化を抑制するべく、燃焼室8内の混合気がより均質化された状態(空燃比が均一とされた状態)で燃焼が開始するように圧縮行程後期から膨張行程初期にかけて燃料が噴射されるとともに、燃焼室8全体に形成された混合気に点火が行われて、これにより燃焼が開始される。
また、高負荷領域A2では、三元触媒によるNOx浄化が可能となるように、空燃比が
理論空燃比とされる。すなわち、空気過剰率λが1とされる。また、高負荷領域A2では、EGRバルブ52が閉弁側に設定されてEGRガスの還流が縮小あるいは停止され、G/Fが35より小さい値とされる。
また、高負荷領域A2では、吸気弁13の閉弁時期が図14に示すように制御される。
具体的には、高負荷領域A2においても、吸気弁13の閉弁時期は吸気下死点よりも遅角側に制御される。ただし、高負荷領域A2のうち低速高負荷領域A2_aでは、吸気弁13の閉弁時期が、エンジン回転数によらず、吸気下死点よりも遅角側であってその遅角量が比較的大きい所定時期に制御される。そして、高負荷領域A2のうち高速高負荷領域A2_bでは、吸気弁13の閉弁時期が、エンジン回転数が高くなるほど遅角側、すなわち、吸気下死点から離れる側に制御される。
吸気弁13の閉弁時期をこのように制御するのは、次の理由による。
低速高負荷領域A2_aでは、エンジン回転数が低い一方エンジン負荷が高く燃焼量が比較的大きいためにノッキングが生じやすい。これに対して、有効圧縮比を小さくすれば、圧縮時の気筒2内の吸気の温度を低く抑えてノッキングの発生を抑制することができる。そこで、本実施形態では、ノッキングを回避するべく、上記のように、低速高負荷領域A2_aでは吸気弁13の閉弁時期を十分に遅角側の時期に制御して、これにより有効圧縮比を小さくする。
一方、高速高負荷領域A2_bでは、ノッキングが生じ難く有効圧縮比を高めることができる。そこで、本実施形態では、高速高負荷領域A2_bでは、低速高負荷領域A2_aに比べて吸気弁13の閉弁時期を進角側に制御する。また、高速高負荷領域A2_bでは、要求される高いエンジン出力を確保するために吸気の充填効率を高くする必要がある。そこで、本実施形態では、吸気の慣性力を利用して充填効率を高めるべく、吸気エンジン回転数が高いほど吸気弁13の閉弁時期を遅角側として気筒2内に流入する吸気の量を多く確保する。
(4)作用等
以上のように、本実施形態では、低負荷領域A1において吸気弁13の閉弁時期が吸気下死点よりも遅角側の時期にされるため、ポンピングロスを小さく抑えることができる。
しかも、低負荷領域A1において、エンジン回転数が高いほど吸気弁13の閉弁時期が進角側の時期に制御される。そのため、上記のように、エンジン回転数が高いときには、有効圧縮比ひいては熱効率を高めてこれにより燃費性能を高めることができるとともに、エンジン回転数が低いときには、吸気の圧縮時間が過剰に長くなるのを抑制して、これにより、高温となった吸気から熱エネルギーが気筒2の壁面を介して外部に放出されるのを抑制して冷却損失を小さくすることができる。従って、低負荷領域A1全体で燃費性能を高めることができる。
さらに、本実施形態では、低負荷領域A1において、燃焼室8内にその中央部分の燃料濃度の方が外周部分の燃料濃度よりも高い混合気が形成されるように燃料が噴射されることで、燃焼室8の壁面近傍で生成される燃焼ガスの量を少なく抑えることができる。
特に、本実施形態では、圧縮上死点前において燃料が複数回に分けて噴射されることによって、燃焼室8の壁面近傍に燃料をほとんど含まない非燃焼ガスの層を形成して、この状態で混合気を燃焼させることができる。従って、非燃焼ガスの層によって燃焼ガスと燃焼室8の壁面との接触を抑制することができ、燃焼室8の壁面から外部に放出される燃焼
ガスの熱エネルギーの増大すなわち冷却損失の増大を抑制して燃費性能を高めることができる。
しかも、低負荷領域A1において、吸気弁13の閉弁時期が上記のように制御されることで、エンジン回転数が高い場合において、吸気弁13の閉弁後において吸気ポート11に向かおうとするガスの流れ、ひいては、圧縮上死点付近において燃焼室8の天井面8aに沿うガス流れを弱くすることができ、燃焼ガスと燃焼室8の天井面8aとの接触を抑制して冷却損失を効果的に小さく抑えることができる。
また、本実施形態では、高速高負荷領域A2_bであってエンジン負荷が高く高い充填効率が求められる領域では、低負荷領域A1と異なりエンジン回転数が高いほど吸気弁13の閉弁時期が遅角側とされ、これにより、充填効率を適切に確保することができる。そのため、低負荷領域A1では上記のように燃費性能を高めつつ高速高負荷領域A2_bでは、高いエンジン出力をより確実に得ることができる。
(5)変形例
上記実施形態では、低負荷領域A1において図10(a)〜(c)に示す噴射モードで燃料を噴射した場合について説明したが、低負荷領域A1では、燃焼開始直前の燃焼室8内の燃料濃度がその中央部分の方がその外周部分よりも高くなるように圧縮行程後期に燃料が噴射されればよく、具体的な噴射パターンはこれに限らない。ただし、図10(a)〜(c)に示す噴射モードとすれば、燃焼室8の外周部分に非燃焼ガスの層を形成することができ、冷却損失をより効果的に小さく抑えることができる。
また、断熱材71は省略可能である。ただし、断熱材71を設ければ、より効果的に冷却損失を小さく抑えることができる。
また、燃料として、ガソリンを含まない燃料が用いられてもよい。
1 エンジン本体
2 気筒
5 ピストン
6 ピストンの冠面
13 吸気弁
15a 吸気開閉時期変更機構(吸気閉弁時期変更手段)
21 燃料噴射装置
100 PCM(制御手段)

Claims (2)

  1. ピストンが往復動可能に嵌装されるとともに内側に燃焼室が形成された気筒を備えたエンジンの制御装置であって、
    上記気筒内に吸気を導入する吸気ポートと、
    上記吸気ポートの開口部分を開閉する吸気弁と、
    上記吸気弁の閉弁時期を変更可能な吸気閉弁時期変更手段とを備え、
    上記燃焼室は、上記ピストンの冠面と対向する天井面を有し、
    上記燃焼室の天井面には、上記ピストンの冠面に向かって燃料を噴射する燃料噴射手段が取り付けられており、
    上記吸気閉弁時期変更手段は、エンジン負荷が予め設定された基準負荷未満の低負荷領域において、上記吸気弁の閉弁時期を、吸気下死点よりも遅角側、かつ、エンジン回転数が高いほど進角側となる時期にするとともに、少なくともエンジン回転数が低い側では気筒内の吸気が上記吸気ポートに吹き返す時期にし、
    上記低負荷領域において、上記燃料噴射手段は、上記燃焼室の中央部分の方が外周部分よりも燃焼開始直前の燃料濃度が高くなるように圧縮行程後期に燃料を複数回にわたって噴射することを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
    上記吸気閉弁時期変更手段は、エンジン負荷が上記基準負荷以上の高負荷領域のうちエンジン回転数が予め設定された基準回転数以上となる高速高負荷領域において、上記吸気弁の閉弁時期を、吸気下死点よりも遅角側、かつ、エンジン回転数が高い方が遅角側となる時期にすることを特徴とするエンジンの制御装置。
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