以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
図1には、本実施形態1に係る制御装置が適用されたエンジン1の構成を示す。本実施形態1のエンジン1は車両の搭載されるエンジンである。このエンジン1は、エンジン本体1aと、エンジン本体1aに燃焼用の空気を導入するための吸気通路20と、エンジン本体1aで生成された排気を排出するための排気通路30とを備える。
エンジン本体1aは、直列4気筒式であって、4つの気筒2が図1の紙面と直交する方向に直列に配置されている。エンジン本体1aは上記車両の駆動源として利用される。本実施形態1では、エンジン本体1aは、ガソリンを含む燃料が供給されて駆動される。
エンジン本体1aは、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復動(ここでは上下動)可能に嵌装されたピストン5とを有する。
気筒2は燃焼室6が形成された気筒である。詳しくは、気筒2内におけるピストン5の上方に燃焼室6が形成されている。燃焼室6はいわゆるペントルーフ型であり、シリンダヘッド4の下面で構成される燃焼室6の天井面は吸気側および排気側の2つの傾斜面からなる三角屋根状をなしている。ピストン5の上面には、その中心部を含む領域をシリンダヘッド4とは反対側(下方)に凹ませたキャビティが形成されている。以下の説明では、ピストン5の位置や混合気の燃焼状態によらず気筒2の内側空間のうちピストン5の上面と燃焼室6の天井面との間に形成される空間を燃焼室6という。
ピストン5は、シリンダブロック3内においてコンロッド8を介してクランクシャフト7と連結されている。クランクシャフト7はピストン5の往復動により回転駆動される。
エンジン本体1aの幾何学的圧縮比、つまり、ピストン5が下死点にあるときの燃焼室6の容積とピストン5が上死点にあるときの燃焼室6の容積との比は、本実施形態1では、15〜25(例えば17程度)に設定されている。
シリンダヘッド4には、吸気通路20から供給される空気を気筒2(燃焼室6)内に導入するための吸気ポート9と、燃焼室6内で、燃料と空気との混合気が燃焼することにより生成された排気を排気通路30に導出するための排気ポート10とが形成されている。これら吸気ポート9と排気ポート10とは、気筒2毎にそれぞれ2つずつ形成されている。
シリンダヘッド4には、各吸気ポート9の燃焼室6側の開口をそれぞれ開閉する吸気弁11と、各排気ポート10の燃焼室6側の開口をそれぞれ開閉する排気弁12とが設けられている。
シリンダヘッド4には、燃料を噴射するインジェクタ14が設けられている。インジェクタ14は、噴射口が形成された先端部が燃焼室6の天井面の中央付近に位置して燃焼室6の中央を臨むように取り付けられている。インジェクタ14は、その先端に複数の噴口を有し、燃焼室の天井面の中央付近からピストン5の冠面に向かって、気筒2の中心軸を中心としたコーン状(詳しくはホローコーン状)に燃料を噴射するように構成されている。コーンのテーパ角(噴霧角)は、例えば90°〜100°である。なお、インジェクタ14の具体的な構成はこれに限らず、単噴口のものであってもよい。
インジェクタ14は、不図示の高圧ポンプから圧送された燃料を燃焼室6内に噴射する。インジェクタ14の噴射圧は、ノッキングが発生しやすいエンジン高負荷域では、30MPa以上に高められ、インジェクタ14から高圧で燃料が噴射される。なお、この噴射圧は、最大で70MPa程度まで高められるのが好ましい。この場合は、エンジン高負荷域において30MPa〜70MPaの範囲の噴射圧で燃料が噴射される。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内の混合気に点火するように構成された点火プラグ13が設けられている。点火プラグ13の先端には、火花を放電して混合気を点火し混合気に点火エネルギーを付与する電極が形成されている。点火プラグ13は、その先端が燃焼室6の天井面の中央付近に位置して燃焼室6の中央を臨むように配置されている。エンジン本体1aは、燃焼室6内で混合気を圧縮するとともに、点火プラグ13による点火によって、燃焼室6内で混合気を圧縮着火させるように構成されている。尚、本明細書において、「点火」とは、点火プラグ13による火花放電を意味し、「着火」とは、気筒2内の混合気に火炎が発生した状態を意味する。
上記吸気通路20には、上流側から順に、エアクリーナ21と、吸気通路20を開閉するためのスロットルバルブ22とが設けられている。本実施形態では、エンジン1の運転中、スロットルバルブ22は基本的に全開もしくはこれに近い開度に維持されており、エンジン1の停止時等の限られた運転条件のときにのみ閉弁されて吸気通路20を遮断する。
上記排気通路30には、排気を浄化するための浄化装置31が設けられている。浄化装置31は、例えば、三元触媒を内蔵している。
排気通路30には、排気通路30を通過する排気の一部をEGRガスとして吸気通路20に還流するためのEGR装置40が設けられている。EGR装置40は、吸気通路20のうちスロットルバルブ22よりも下流側の部分と排気通路30のうち浄化装置31よりも上流側の部分とを連通するEGR通路41、および、EGR通路41を開閉するEGRバルブ42を有する。また、本実施形態1では、EGR通路41に、これを通過するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ43が設けられており、EGRガスはEGRクーラ43にて冷却された後、吸気通路20に還流される。
図2は、エンジン1の制御系統を示すブロック図である。本実施形態1のエンジン1は、制御装置としてのパワートレイン・コントロール・モジュール100(以下、PCM100という)によって統括的に制御される。PCM100は、周知のように、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
車両には各種センサが設けられている。PCM100はこれらセンサと電気的に接続されており、PCM100には、各センサからの検出信号が入力される。例えば、シリンダブロック3には、クランクシャフト7の回転角度であるクランク角度を検出するクランク角センサ(クランク角検出手段)SN1が設けられている。また、吸気通路20を通って各気筒2に吸入される空気量を検出するエアフローセンサSN2が設けられている。また、シリンダヘッド4には、燃焼室6内の圧力を検出する筒内圧センサ(筒内圧検出手段)SN3が設けられている。筒内圧センサSN3は、各気筒2にそれぞれ1つずつ設けられている。また、車両には、運転者により操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSN4が設けられている。
PCM100は、クランク角センサSN1の検出結果からエンジン本体1aの回転数(エンジン回転数)を算出する。PCM100は、アクセル開度センサSN4の検出結果からエンジン負荷を算出する。
尚、詳しくは後述するが、PCM100には、筒内圧センサSN3で検出された筒内圧力に基づいて、燃焼室6内での熱発生率を推定する熱発生率推定部(熱発生率推定手段)101と、熱発生率推定部101で推定された推定熱発生率に基づいて、燃焼室6内での混合気の低温酸化反応の反応量を推定する低温酸化反応量推定部(低温酸化反応量推定手段)102と、燃焼室6内でのノッキングを抑制するためのノッキング抑制制御を実行するノッキング抑制部103とを含む。また、低温酸化反応量推定部102は、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、上記推定熱発生率の最大値と最小値との差を第1推定反応量として算出する第1反応量推定部102aを含む。さらに、低温酸化反応量推定部102は、クランク角度が第1クランク角度CA1である時の上記推定熱発生率である第1熱発生率と、クランク角度が第1クランク角度CA1よりも遅角側の第2クランク角度CA2である時の上記推定熱発生率である第2熱発生率との差を第2推定反応量として算出する第2反応量推定部102bとを含む。
PCM100は、これらセンサSN1〜SN4等からの入力信号に基づいて種々の演算
を実行して、点火プラグ13、インジェクタ14、スロットルバルブ22、EGRバルブ
42等のエンジン1の各部を制御する。
〈燃焼制御〉
図3は、横軸をエンジン回転数、縦軸をエンジン負荷とした制御マップである。エンジン1の運転領域は、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じて2つの領域に区画されている。本実施形態では、エンジン負荷が予め設定された基準負荷Tq1未満でありノッキングが生じ難い低負荷領域Bと、エンジン負荷が基準負荷Tq1以上でありノッキングが生じやすい高負荷領域Aとが設定されている。高負荷領域Aでは、ノッキングの発生を抑制するべく、上記ノッキング抑制制御が実施される。本実施形態1では、エンジン本体1aの幾何学的圧縮比が15〜25に設定されており、燃焼室6内の温度が非常に高い温度にまで高められる。このため、特にノッキングが生じやすい。
高負荷領域Aは、さらに、エンジン回転数が予め設定された基準回転数N1未満の高負荷低回転領域A1と、エンジン回転数が基準回転数N1以上の高負荷高回転領域A2とに区画されている。
本実施形態1では、点火プラグ13を用いた点火アシストによる圧縮着火燃焼(SPCCI燃焼、SPCCI:SPark Controlled Compression Ignition)が実施される。この圧縮着火燃焼では、まず、圧縮上死点(TDC)よりも前にインジェクタ14から燃焼室6内に燃料が噴射される。この燃料は圧縮上死点付近までに空気と混合する。燃焼室6に形成されたこの混合気に、圧縮上死点付近において点火プラグ13による点火が行われる。これにより、点火プラグ13周りの混合気が強制的に着火される。そして、点火プラグ13周りから周囲に火炎が伝播していき、周囲の混合気が昇温されて着火する。
図4は、通常制御の実施時(後述するノッキング抑制制御を実施しなかったとき)の高負荷低回転領域A1における燃料の噴射タイミングと点火タイミングと熱発生率の一例を示す。図4に示すように、例えば、高負荷低回転領域A1では、吸気行程の中期と後期に1回ずつインジェクタ14から燃料が噴射される。つまり、吸気行程の中期と後期に、燃料噴射Q1a、Q1bが実施される。そして、圧縮上死点(TDC)近傍に設定された点火時期で点火プラグ13により混合気に点火が行われる。燃料噴射Q1aは、要求されるエンジントルクを実現するためのメイン噴射、つまり、エンジントルクを生成するための燃料を噴射するメイン噴射である。一方、燃料噴射Q1bは、着火・燃焼時期を制御するためのサブ噴射である。サブ噴射の噴射量Q1bは、燃料噴射Q1a、Q1bの合計値の5%〜15%程度である。尚、本明細書においては、各行程の前期、中期、及び後期とは、各行程における実施期間(クランク角度での期間)を均等に3分割したときの、最も進角側の期間がそれぞれ前期に相当し、最も遅角側の期間がそれぞれ後期に相当し、前期と後期との間の期間がそれぞれ中期に相当する。
図4に示すように、高負荷低回転領域A1では、熱発生率は、着火によって急上昇する前に僅かに上昇する。すなわち、低温酸化反応した後に高温酸化反応している。低温酸化反応は、火炎を伴わずにわずかな発熱をする反応であり、混合気を燃焼室6内で圧縮することにより発生する。高温酸化反応は火炎を生じさせながら高い熱エネルギーを発する反応であり、混合気が実際に着火することにより発生する。尚、温度を基準にして、低温酸化反応と高温酸化反応とを区別する場合には、例えば、温度が1000K未満の酸化反応を低温酸化反応とみなし、温度が1000K以上になる酸化反応を高温酸化反応とみなすことができる。
図4に示す例では、圧縮行程後期でかつ着火前の期間において、低温酸化反応により熱発生率が立ち上がる。ここでは、低温酸化反応の段階であることから、熱発生率はあまり上昇しない。点火時期において点火プラグ13の点火により点火エネルギーが付与されてからしばらく後のクランク角度にて、混合気が着火して高温酸化反応が開始することに伴い、クランク角度以降、熱発生率は高い値に向けて急激に上昇していく。本実施形態1では、点火時期は、低温酸化反応が発生する時期と略同時期に設定されている。
図5は、基本制御の実施時の高負荷高回転領域A2における燃料の噴射タイミングと点火タイミングと熱発生率の一例を示す。例えば、高負荷高回転領域A2では、吸気行程の前期から後期にかけて1回だけ燃料噴射Q1が実施される。そして、圧縮上死点(TDC)近傍に設定された点火時期で点火プラグ13により混合気に点火が行われる。燃料噴射Q1は、要求されるエンジントルクを実現するためのメイン噴射であり、この噴射量は、基本的に、エンジントルクの要求値に対応する量とされる。
図5に示すようにでは、高負荷高回転領域A2における熱発生率は、高負荷低回転領域A1のときとは異なり、低温酸化反応による熱発生率の上昇が明確には見られない。これは、エンジン回転数が高いときには、ピストン5の上昇速度及び燃焼室6内の圧力上昇速度が速いために、燃焼室6の主たる混合気の低温酸化反応が生じる時間が非常に短くなる、あるいは、燃焼室6の主たる混合気が急激に昇温されて低温酸化反応をほとんど生じることなく高温酸化反応を開始するためと考えられる。
〈ノッキング抑制制御〉
次に、高負荷領域Aにおいて実施されるノッキング抑制制御について説明する。
本実施形態1では、まず、低温酸化反応の反応量に基づいてノッキング抑制制御を実行するか否かを判定するようにしている。
すなわち、点火プラグ13によって燃焼室6内の混合気に点火したときには、燃焼室6の点火プラグ13近傍で生じた火炎が、気筒2の外周側に向かって伝播する。このとき、燃焼室6の外周縁部付近では、未燃焼の混合気が局所的に圧縮される。これにより、燃焼室6の外周縁部付近は、局所的に高温かつ高圧の状態になる。ノッキングは、高温かつ高圧の状態になった混合気がそれぞれ個別に自着火することにより発生する。
燃焼室6内で低温酸化反応が発生するには、燃焼室6内の温度及び圧力の少なくとも一方が高いことが条件となる。このため、燃焼室6内で低温酸化反応が生じる場合には、高温酸化反応により生じた火炎が燃焼室6の外周部付近の混合気を圧縮したときに、燃焼室6の外周縁部付近が高温かつ高圧の状態になりやすい。よって、燃焼室6内で低温酸化反応が生じたときには、ノッキングが発生しやすくなる。また、低温酸化反応が生じると、その反応熱によって燃焼室6内の温度が昇温されやすくなる。このため、燃焼室6内で低温酸化反応が生じたときには、ノッキングが発生しやすくなる。
低温酸化反応が大きいとき、具体的には、低温酸化反応による熱発生率の上昇が大きいときには、燃焼室6内の温度及び圧力の少なくとも一方がかなり高く、低温酸化反応が活発に発生していることを意味するため、ノッキングが発生しやすい状態にある。一方で、低温酸化反応が全く生じないか、又は、低温酸化反応が生じたとしてもかなり小さい場合には、ノッキングが生じないか、又は、ノッキングが生じたとしても該ノッキングによる騒音の増大やピストン5等の損傷にほとんど影響しないことがある。そこで、本実施形態1では、低温酸化反応量推定部102で推定された低温酸化反応の反応量が、予め設定された特定反応量以上であるときに、燃焼室6内でのノッキングを抑制するためのノッキング抑制制御を実行するようにしている。
本実施形態1では、低温酸化反応量推定部102は、低温酸化反応の反応量を、熱発生率推定部101により推定された推定熱発生率に基づいて推定する。熱発生率推定部101は、該推定熱発生率を、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、筒内圧センサSN3で検出された筒内圧力に基づいて推定する。
図6は、低温酸化反応による熱発生率の変化の一例を示す図である。圧縮行程後期では、混合気が圧縮される一方で冷却損失が生じるため、低温酸化反応が発生するよりも前の期間では、熱発生率としては僅かに減少傾向になる。低温酸化反応が発生すると、減少傾向にあった熱発生率は、クランク角度が増加するに連れて上昇する。そして、図6に示す例では、着火前の低温酸化反応が生じる期間において、熱発生率が極大になった後、僅かに熱発生率が減少する。その後、混合気が着火されて高温酸化反応が生じることで、熱発生率が急激に増加する。
上記のように、圧縮行程後期における低温酸化反応が生じる期間中は、熱発生率は、例えば、極小になった後、極大となるような変化を示す。ここで、熱発生率における極小値から極大値への変化は、低温酸化反応が活発であるほど大きくなる。したがって、推定熱発生率の極小値と極大値との差、すなわち、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、推定熱発生率の最大値と最小値との差を低温酸化反応の反応量とみなすことができる。
しかしながら、高負荷高回転領域A2のように、低温酸化反応が小さい場合には、熱発生率の変化が小さく、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、推定熱発生率の最大値と最小値とを精度良く求めることが困難になる。また、高負荷低回転領域A1であっても、例えば、EGRガスの還流量が多い場合には、混合気中の酸素濃度が低くなって低温酸化反応が小さくなりやすい。このため、高負荷低回転領域A1であっても、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、推定熱発生率の最大値と最小値とを精度良く求めることが困難になることがある。
これに対して、本願発明者らが鋭意研究したところ、本願発明者らは、低温酸化反応により、熱発生率が極小となるクランク角度と熱発生率が極大となるクランク角度とが、エンジン回転数に応じて略一定に定められることを突き止めた。そこで、本実施形態1では、低温酸化反応量推定部102は、第1反応量推定部102aにより、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、推定熱発生率の最大値と最小値との差を第1推定反応量として算出する。また、低温酸化反応量推定部102は、第2反応量推定部102bにより、クランク角度が第1クランク角度CA1である時の推定熱発生率である第1熱発生率と、クランク角度が第1クランク角度CA1よりも遅角側の第2クランク角度CA2にある時の推定熱発生率である第2熱発生率との差を第2推定反応量として算出する。そして、低温酸化反応量推定部102は、第1推定反応量が所定反応量以上であるときには、該第1推定反応量に基づいて低温酸化反応の反応量を推定する一方、上記第1推定反応量が上記所定反応量未満であるときには、上記第2推定反応量に基づいて低温酸化反応の反応量を推定する。より詳しくは、本実施形態1では、低温酸化反応量推定部102は、第1推定反応量が所定反応量以上であるときには、該第1推定反応量を低温酸化反応の反応量として推定する一方、上記第1推定反応量が上記所定反応量未満であるときには、上記第2推定反応量を低温酸化反応の反応量として推定する。尚、本実施形態1では、所定反応量は、例えば1.5J/deg.に設定されている。
図7は、高負荷高回転域における、低温酸化反応による熱発生率の変化をシミュレーションにより算出した結果を示す。図7中の各曲線L1〜L3は、エンジン回転数がそれぞれ異なる。具体的には、曲線L1は、曲線L1〜L3の中で最も低いエンジン回転数における曲線であり、曲線L3は曲線L1〜L3の中で最も高いエンジン回転数における曲線である。曲線L2は、曲線L1のエンジン回転数と曲線L3のエンジン回転数との間のエンジン回転数における曲線である。
図7に示すように、各曲線L1〜L3は、熱発生率が急増する高温酸化反応が発生する直前において、極小となった後に極大となるような変化をすることが分かる。各曲線L1〜L3における、この極小となった後に極大となるような変化が低温酸化反応による熱発生率の変化に相当する。本実施形態1では、図7に示すように、低温酸化反応により熱発生率が変化する期間において、極小となるクランク角度をそれぞれ上記第1クランク角度CA1に設定し、極大となるクランク角度をそれぞれ上記第2クランク角度CA2に設定する。第1クランク角度CA1は、低温酸化反応により熱発生率が変化する期間内、すなわち、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内において、熱発生率が最小になると推定されるクランク角度である。一方で、第2クランク角度CA2は、低温酸化反応により熱発生率が変化する期間内、すなわち、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内において、熱発生率が最大になると推定されるクランク角度である。尚、第1クランク角度CA1は熱発生率が最小になると推定されるクランク角度であればよく、実際の熱発生率の変化において、クランク角度が第1クランク角度CA1である時に熱発生率が厳密に最小である必要はない。また、第2クランク角度CA2は熱発生率が最大になると推定されるクランク角度であればよく、実際の熱発生率の変化において、クランク角度が第2クランク角度CA2である時に熱発生率が厳密に最大である必要はない。
また、図7に示すように、エンジン回転数が高いほど、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2が進角側になることが分かる。つまり、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2は、エンジン回転数に依存して変化する。このため、第2反応量推定部102bは、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2を、エンジン回転数に応じて設定するようにしている。より具体的には、本実施形態1では、第2反応量推定部102bは、エンジン回転数が高いほど、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2を、進角側に設定するように構成されている。
さらに、図7に示すように、エンジン回転数が変化したとしても、第1クランク角度CA1から第2クランク角度CA2までの期間の長さ、すなわち、第1クランク角度CA1と第2クランク角度CA2との角度差は、略一定であることがわかる。よって、本実施形態1では、第2反応量推定部102bは、第1クランク角度CA1から第2クランク角度CA2までの期間の長さを略一定に設定するように構成されている。
PCM100には、上記のシミュレーションによって算出された、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2をそれぞれ設定するためのマップや関係式が格納されている。実際には、第2反応量推定部102bは、上記マップや上記関係式を読み込んで、エンジン回転数に応じた第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2をそれぞれ設定する。
そして、第2反応量推定部102bは、設定した第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2を用いて、上記第1熱発生率と上記第2熱発生率との差を第2推定反応量として算出する。これにより、筒内圧力の変化が小さく、推定熱発生率の最大値と最小値とから低温酸化反応の反応量を推定しにくいようなときであっても、低温酸化反応の反応量を精度良く推定することができる。
以上のように、低温酸化反応量推定部102は、推定熱発生率の変化が大きく、推定熱発生率の実際の最大値と最小値が精度良く推定可能であるときには、第1反応量推定部102aにより算出される第1推定反応量を低温酸化反応の反応量として推定する。一方で、低温酸化反応量推定部102は、推定熱発生率の変化が小さく、推定熱発生率の実際の最大値と最小値を精度良く推定し難いときには、第2反応量推定部102bにより算出される第2推定反応量を低温酸化反応の反応量として推定する。これにより、低温酸化反応の反応量を精度良く推定することができる。
尚、低温酸化反応による熱発生率の変化では、熱発生率が極大(最大)となった後に熱発生率が低下せずに略一定の値になることがある。このときには、例えば、略一定となった値を、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における推定熱発生率の最大値とみなして、低温酸化反応の反応量を推定するようにしてもよい。
低温酸化反応量推定部102で推定された、低温酸化反応の反応量は、PCM100のノッキング抑制部103に入力される。ノッキング抑制部103は、推定された低温酸化反応の反応量が、上記特定反応量以上、詳しくは、騒音の増大やピストン5等の損傷に影響を与えるような反応量以上であるときには、ノッキング抑制制御を実行する。
本実施形態1では、ノッキング抑制部103はノッキング抑制制御として、燃焼室6内で混合気の高温酸化反応が生じる期間の前半に、燃焼室6内に冷却媒体を供給する。具体的には、ノッキング抑制部103は、燃焼室6内に、冷却媒体としての燃料を追加噴射するように、インジェクタ14を制御する。
追加噴射を行う時期(クランク角度)は、予め実験等によって設定される。具体的には、ノッキング抑制制御(ここでは、燃料の追加噴射)を実行しなかったときの燃焼期間(高温酸化反応が生じる期間)を検出又は推定し、その半分の期間を求める。次に、得られた燃焼期間の半分以下のクランク角度を待機角度として設定して、PCM100に記憶させておく。次いで、点火プラグ13による点火時期から上記待機角度後の時期を追加噴射Q2の実施時期として設定する。そして、ノッキング抑制部103は、当該実施時期に追加噴射Q2を実行するようにインジェクタ14を制御する。
尚、本実施形態1では、上記待機角度は、燃焼が開始してから燃焼重心時期までの期間以下に設定されている。燃焼重心時期は、1燃焼サイクル中に生じる熱発生量の総量の50%の熱発生が生じる時期(クランク角度)である。上記待機角度は、例えば、高温酸化反応が開始してから、1燃焼サイクル中に生じる熱発生量の総量の30%程度の熱発生が生じるまでの時期(クランク角度)であって、圧縮上死点後15°程度である。また、追加噴射Q2における燃料の噴射量は、1燃焼サイクルで燃焼室6に供給される燃料の総量の10%以下、より詳しくは、5%程度に設定されている。
次に、ノッキング抑制制御を実行する際のPCM100の処理動作について、図8及び図9を参照して説明する。以下に説明する処理動作では、低温酸化反応の反応量を推定する処理動作は低温酸化反応量推定部102により実行され、ノッキング抑制制御はノッキング抑制部103により実行される。また、熱発生率の推定は、熱発生率推定部101により実行される。このフローチャートに基づく処理動作は、エンジン1が作動している間は1燃焼サイクル毎に実行される。
まず、ステップS1において、PCM100は、各センサSN1〜SN4からの情報を読み込む。
次のステップS2では、PCM100は、エンジン1の運転領域が高負荷領域Aであるか否かを判定する。エンジン1の運転領域が高負荷領域AであるYESのときには、ステップS3に進む一方で、エンジン1の運転領域が低負荷領域BであるNOのときには、リターンする。
上記ステップS3では、PCM100は、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2をそれぞれ設定する。このステップS3では、PCM100は、クランク角センサSN1からの情報に基づいて、エンジン回転数を算出し、該エンジン回転数に応じて、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2をそれぞれ設定する。
次のステップS4では、PCM100は、圧縮行程後期であるか否かを判定する。圧縮行程後期であるか否かは、クランク角センサSN1により検出されるクランク角度により判定する。PCM100は、圧縮行程後期であるYESのときには、ステップS5に進む一方、圧縮行程中期以前であるNOのときには、圧縮行程後期になるまで、このステップS4の判定を繰り返す。
上記ステップS5では、PCM100は、熱発生率を推定する。熱発生率は筒内圧センサSN3の検出結果に基づいて算出する。
続くステップS6では、低温酸化反応の反応量を推定する。低温酸化反応の反応量を推定するフローチャートについては後述する。
次のステップS7では、PCM100は、低温酸化反応の反応量が特定反応量以上か否かを判定する。低温酸化反応の反応量が特定反応量以上であるYESのときにはステップS8に進む一方で、低温酸化反応の反応量が特定反応量未満であるNOのときにはリターンする。
上記ステップS8では、PCM100は、ノッキング抑制制御を実行する。このノッキング抑制制御では、上述したように、燃焼室6内で混合気の高温酸化反応が生じる期間の前半に、燃焼室6内に燃料を追加噴射する。ステップS8の後はリターンする。
図9は、低温酸化反応の反応量を推定するサブルーチン、すなわち、上記ステップS6の内容を示すフローチャートである。
低温酸化反応の推定では、まず、第1推定反応量を算出するための各ステップS101〜S103と、第2推定反応量を推定するための各ステップS104〜S108が平行して実行される。
ステップS101では、PCM100は、圧縮行程後期における推定熱発生率の最小値を算出する。次のステップS102では、PCM100は、圧縮行程後期における推定熱発生率の最大値を算出する。
続くステップS103では、PCM100は、上記ステップS101で算出した、推定熱発生率の最小値と、上記ステップS102で算出した、推定熱発生率の最大値との差、具体的には、上記ステップS102で算出した、推定熱発生率の最大値から、上記ステップS101で算出した、推定熱発生率の最小値を引いた値を求めて、第1推定反応量を算出する。
一方で、ステップS104では、PCM100は、クランク角度が第1クランク角度CA1なったか否かを判定する。この第1クランク角度CA1は、上記ステップS3で設定された第1クランク角度CA1である。クランク角度が第1クランク角度CA1になったか否かは、クランク角センサSN1の検出結果から判定される。PCM100は、クランク角度が第1クランク角度CA1になったYESのときには、ステップS105に進み、クランク角度が第1クランク角度CA1である時の推定熱発生率である第1熱発生率を算出する。ステップS105の後はステップS106に進む。一方で、PCM100は、クランク角度が第1クランク角度CA1になっていないNOのときには、クランク角度が第1クランク角度CA1になるまでステップS104の判定を繰り返す。
次のステップS106では、PCM100は、クランク角度が第2クランク角度CA2なったか否かを判定する。この第2クランク角度CA2は、上記ステップS3で設定された第2クランク角度CA2である。クランク角度が第2クランク角度CA2になったか否かは、クランク角センサSN1の検出結果から判定される。PMC100は、クランク角度が第2クランク角度CA2になったYESのときには、ステップS107に進み、クランク角度が第2クランク角度CA2である時の推定熱発生率である第2熱発生率を算出する。ステップS107の後はステップS108に進む。一方で、PCM100は、クランク角度が第2クランク角度CA2になっていないNOのときには、クランク角度が第2クランク角度CA2になるまでステップS106の判定を繰り返す。
続くステップS108では、PCM100は、上記ステップS105で算出した、上記第1熱発生率と、上記ステップS107で算出した、上記第2熱発生率との差、具体的には、上記第2熱発生率から、上記第1熱発生率を引いた値を求めて、第2推定反応量を算出する。
上記第1推定反応量及び上記第2推定反応量が算出された後の、ステップS109では、PCM100は、第1推定反応量が所定反応量以上であるか否かを判定する。PCM100は、第1推定反応量が所定反応量以上であるYESのときには、ステップS110に進む一方、第1推定反応量が所定反応量未満であるNOのときには、ステップS111に進む。
上記ステップS110では、PCM100は、第1推定反応量を低温酸化反応の反応量として採用する。一方で、上記ステップS111では、PCM100は、第2推定反応量を低温酸化反応の反応量として採用する。上記ステップS110の後、及び、上記ステップS111の後は、リターンして、ノッキング抑制制御を実行するための処理動作に戻る。
以上のようにして、低温酸化反応の反応量を推定することで、低温酸化反応の反応量の推定精度を高くすることができる。これにより、ノッキングが発生するおそれがあるか否かの判定精度が高くなるため、ノッキングを効果的に抑制することができる。
図10は、第2推定反応量から推定される低温酸化反応の反応量に基づいて、ノッキング抑制制御を実行する際のタイムチャートの一例である。ここでは、低温酸化反応の反応量が特に小さくなりやすい高負荷高回転領域におけるタイムチャートを示している。第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2は、エンジン回転数に応じて算出されている。
まず、吸気行程において、燃料噴射Q1が実施される。その後、圧縮下死点を通過して圧縮行程に入る。そして、圧縮行程中期を経て圧縮行程後期に入り、ピストン5が圧縮上死点近傍に位置すると、低温酸化反応が発生して熱発生率が上昇する。
熱発生率が極小値(圧縮行程後期でかつ着火前の最小値)を示す付近で、クランク角度が第1クランク角度CA1になり、第1クランク角度CA1の検出フラグが立つ。PCM100は、第1クランク角度CA1の検出フラグが立ったときの推定熱発生率を 第1熱発生率として算出する。
ピストン5が圧縮上死点に近づくと、低温酸化反応が進み、熱発生率が極大値(圧縮行程後期でかつ着火前の最大値)を示す。熱発生率が極大値を示す付近で、クランク角度が第2クランク角度CA2になり、第2クランク角度CA2の検出フラグが立つ。PCM100は、第2クランク角度CA2の検出フラグが立ったときの推定熱発生率を第2熱発生率として算出する。
その後、PCM100が第2推定反応量を算出し、該第2推定反応量が特定反応量以上であるときには、図10に示すように、燃焼室6内の混合気の着火前のクランク角度、特に点火プラグ13の点火開始時期よりも前のクランク角度において、ノッキング抑制制御実行フラグが立つ。ノッキング抑制制御実行フラグが立ったときには、PCM100はノッキング抑制制御を実行して、燃焼室6内で混合気の高温酸化反応が生じる期間の前半に、追加噴射Q2を実行する。これにより、燃焼室6内に局所的な高温領域が発生するのが抑制されて、ノッキングが適切に抑制される。
したがって、本実施形態では、低温酸化反応量推定部102は、圧縮行程後期でかつ着火前の期間内における、推定熱発生率の最大値と最小値との差を第1推定反応量として算出する第1反応量推定部102aと、クランク角度が第1クランク角度CA1である時の推定熱発生率とクランク角度が第1クランク角度CA1よりも遅角側の第2クランク角度CA2である時の推定熱発生率との差を第2推定反応量として算出する第2反応量推定部102bとを有し、第1推定反応量が所定反応量以上であるときには、該第1推定反応量を低温酸化反応の反応量として推定する一方、第1推定反応量が上記所定反応量未満であるときには、第2推定反応量を低温酸化反応の反応量として推定するように構成されているため、筒内圧力の変化が小さく、推定熱発生率の最大値と最小値とから低温酸化反応の反応量を推定しにくいようなときであっても、低温酸化反応の反応量を精度良く推定することができる。
また、推定された低温酸化反応の反応量が、予め設定された特定反応量以上であるときには、ノッキング抑制制御として燃料の追加噴射が実行されるため、燃焼室6内に局所的な高温領域が発生するのが抑制されて、ノッキングが適切に抑制される。
さらに、ノッキング抑制制御として燃料の追加噴射は、高温酸化反応が生じる期間の前半であるため、追加噴射された燃料も十分に燃焼させることができるようになる。これにより、燃料の追加噴射によって燃焼室6内を冷却したとしても、エンジントルクが低下してしまうことを抑制することができる。
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
実施形態2では、ノッキング抑制制御の内容が実施形態1とは異なる。具体的には、実施形態2では、ノッキング抑制制御として、点火プラグ13による点火開始時期を、低温酸化反応の反応量が上記特定反応量未満のときの点火開始時期よりも遅角させる。より詳しくは、点火プラグによる点火開始時期を、圧縮上死点よりも後にする。点火プラグ13による点火開始時期が遅角されることにより、混合気の着火時期が遅角される。これにより、高温酸化反応時における筒内圧力を低下させることができる。この結果、ノッキングを適切に抑制することができる。
図11は、本実施形態2において、第2推定反応量から推定される低温酸化反応の反応量に基づいて、ノッキング抑制制御を実行する際のタイムチャートの一例である。第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2は、エンジン回転数に応じて算出されている。
図11に示すように、PCM100が第2推定反応量を算出し、該第2推定反応量が特定反応量以上であるときには、点火プラグ13の点火開始時期よりも前のクランク角度において、ノッキング抑制制御実行フラグが立つ。そして、ノッキング抑制制御実行フラグが立ったときには、PCM100は、ノッキング抑制制御を実行して、点火プラグ13による点火開始時期を圧縮上死点よりも後にする。これにより、図11に示すように、ノッキング抑制制御を実行しないとき(熱発生率のグラフに一点鎖線で示す)と比較して、高温酸化反応の開始時期が遅角される。このため、高温酸化反応時における筒内圧力は、ノッキング抑制制御を実行しないときと比較して低くなる。この結果、燃焼室6内に局所的な高圧領域が発生するのが抑制されて、ノッキングが適切に抑制される。
尚、実施形態2における低温酸化反応の反応量の推定は、上記実施形態1と同じであるため、説明を省略する。
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態1及び2では、クランク角度が、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2になったか否かをクランク角センサSN1の検出結果により判定していたが、これに限らず、例えば、圧縮下死点からの経過時間に基づいて判定するようにしてもよい。すなわち、エンジン回転数に応じて、圧縮下死点から第1クランク角度CA1になるまでの時間及び圧縮下死点から第2クランク角度CA2になるまでの時間をそれぞれ算出し、算出した時間が経過したときに、クランク角度が、第1クランク角度CA1及び第2クランク角度CA2になったと判定するようにしてもよい。
また、上記実施形態1では、追加噴射Q2において燃焼室6に噴射する冷却媒体を燃料としたが、これに限らず、例えば水であってもよい。この場合、水を噴射するためのインジェクタを別途設ける必要がある。
さらに、上記実施形態1では、追加噴射Q2における噴射量を1サイクル中に燃焼室6に供給される燃料の総量の10%以下としたが、これに限らず、追加噴射の噴射量を10%以上としてもよい。
また、上記実施形態2では、点火プラグ13による点火開始時期を圧縮上死点よりも後まで遅角させているが、これに限らず、ノッキングが抑制できさえすれば、点火開始時期が圧縮上死点よりも前であってもよい。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。