JP6221902B2 - 圧縮着火式エンジンの制御装置 - Google Patents

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ここに開示する技術は、圧縮着火式エンジンの制御装置に関する。
圧縮着火式エンジンとは、気筒内の混合気を自己着火させる燃焼方式(圧縮着火燃焼)を用いたエンジンである。この場合、点火プラグにより着火した火炎が燃え広がることによって混合気を燃焼させる方式とは異なり、気筒内の各所で同時多発的に混合気が着火する。よって、燃焼期間が短くなるため、熱効率の向上による燃費の向上が期待される。
特許文献1には、圧縮着火式エンジンのための制御装置において、減速時などに燃料の噴射を中断する制御(いわゆる燃料カット制御)を実行することにより、燃費等を向上させることが記載されている。この場合、燃料カット制御から復帰すると、気筒内への燃料の噴射、ひいては噴射された燃料の燃焼が再開する。このエンジンでは、燃料カット制御からの復帰時には、筒内温度が低下していて安定した圧縮着火燃焼が行えないことから、復帰直後は火花点火燃焼を行って、筒内温度が高まった後に、圧縮着火燃焼に切り替えるようにしている。
特許第4159918号公報
ところで、圧縮着火式エンジンにおいて、圧縮着火のタイミングが早くなると(例えば圧縮上死点又はそれよりも前)、圧縮着火燃焼に伴う気筒内の圧力上昇が急峻になって、騒音(燃焼騒音)を招くという問題があり、さらには、燃焼温度、及び気筒内の圧力が過度に高くなることで、RawNOx生成が増大するという問題もある。
そこで、圧縮着火式エンジンにおいて、気筒から排出された排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる排気ガス再循環(EGR)装置を用いることによって、圧縮着火のタイミングをコントロールして、急峻な圧力上昇を回避すると共に、いわゆる緩慢燃焼により燃焼温度を抑制してRawNOx生成を抑止することが考えられる。
ところで、EGRガスを利用して、圧縮着火のタイミングのコントロール、及び緩慢燃焼を行うよう構成された圧縮着火式エンジンの制御装置において、前記のような燃料カット制御を実行可能なものを構成した場合、この制御装置が燃料カット制御を実行している最中には、混合気が燃焼しないため、気筒及び吸気通路内に排気ガス(具体的には、燃焼により酸素を消費した排気ガス)が新たに供給されることはない。そうした状況下で、アクセルペダルを踏み込むと、制御装置は、燃料噴射を再開すべく、当該ペダルの踏み込み量(開度)に応じてエンジンの運転状態を決定して、該運転状態に応じて、燃料噴射量、吸入空気量(吸気量)、そして、気筒内に吸入する全ガスに対する排気ガスの質量比(EGR率)等を設定する。エンジンは、これらの設定に基づいて燃焼を再開することとなるが、前述の事情により、気筒及び吸気通路内には排気ガスが十分に存在しない。ゆえに、燃料供給を再開した直後は、EGRガスが不足して、設定したEGR率を達成できなくなる。
したがって、EGRガスが不足した分だけ、吸気中に占める新気が増加してしまうため、圧縮着火のタイミングが早まって、燃焼騒音が増大したり、燃焼温度が高くなって、RawNoxの増加を招いたりする等の不都合を招く。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、EGR装置を備えた圧縮着火式エンジンにおいて、燃料カットからの復帰時に生じ得る、燃焼騒音及びNOx生成の低減を図ることにある。
ここに開示する技術は、圧縮着火式エンジンの制御装置に係る。この制御装置は、気筒を有するエンジン本体と、前記エンジン本体の運転状態に対応した量の少なくともガソリンを含む燃料を、該運転状態に対応した噴射タイミングで、前記気筒内に噴射する噴射手段と、前記気筒内の混合気を圧縮着火燃焼させることにより、前記エンジン本体を駆動させる制御手段と、前記エンジン本体の運転状態に応じたEGR率となるように、前記気筒内に、前記燃焼により生じた排気ガスの一部を還流させるEGR手段と、を備える。
前記制御手段は、前記エンジン本体の運転状態が所定負荷よりも低負荷側の運転領域にあるときには、混合気の空気過剰率が2.0以上に設定されるよう、前記燃料噴射手段を介して前記気筒内に燃料を噴射する。
前記制御手段はまた、所定の条件に基づいて、前記燃料噴射手段の作動を強制的に中断させる燃料カット制御を実行する。
前記制御手段はさらに、前記燃料カット制御を実行している最中に、アクセルペダルが踏み込まれたことを検出したときには、前記エンジン本体の運転状態が、前記アクセルペダルの踏み込みに対応する所定の運転状態となるように、前記燃料噴射手段による燃料の噴射を再開させると共に、その再開時には、燃料の噴射タイミングを、前記所定の運転状態に対応する噴射タイミングに対して所定のリタード量だけ遅らせる噴射リタード制御を実行する一方、前記燃料カット制御を実行している最中に、前記アクセルペダルの踏込を検出しないまま、前記エンジン本体のエンジン回転数が所定の回転数を下回ったときには、前記低負荷側の運転領域に対応した空気過剰率を実現するように、前記燃料噴射手段による燃料の噴射を再開させると共に、その再開時には、前記噴射リタード制御を実行しない
ここで、「所定の噴射タイミング」としては、例えば圧縮行程から膨張行程前期の期間で、噴射が開始するように、設定してもよい。膨張行程前期は、膨張行程を前期、中期及び後期に3等分したときの前期としてもよい。こうすることで、圧縮上死点付近において、混合気を圧縮着火させて燃焼させることが可能になる。
この構成によると、制御手段は、エンジン本体が定常運転しているときには、そのエンジン本体の運転状態に対応した量の燃料を、所定の噴射タイミングで気筒内に噴射させ、圧縮着火により燃焼させる。このときに、エンジン本体の運転状態に応じたEGR率となるように、気筒内には排気ガスが還流されており、これにより、圧縮着火のタイミングをコントロールして、圧縮着火燃焼による気筒内の圧力上昇が急峻になることを防止する。これは、燃焼騒音を抑制する。また、EGRガスは、圧縮着火燃焼の緩慢化により、燃焼温度が低下して、RawNOxの生成を抑制する。
制御手段はまた、所定の条件に基づいて燃料カット制御を実行する。燃料カット制御を実行している最中は、気筒内で燃焼が行われないため、排気ガスがなくなる。そうして、燃料カット制御の最中に、アクセルペダルが踏み込まれて、燃料噴射を再開させるときには、アクセルペダルの踏み込みの程度に対応する所定の運転状態となるように、燃料噴射を再開する。つまり、所定の運転状態に対応する量の燃料を噴射する。
しかしながら、燃焼カット制御の最中に排気ガスがなくなっているため、燃料噴射を再開するときには、所定の運転状態に応じたEGR率となるように、排気ガスを還流させることができない。そのため、気筒内には、新気が余分に導入されており、所定の運転状態に対応する噴射タイミングで燃料を噴射したのでは、圧縮着火のタイミングが早まって、気筒内の圧力上昇が急峻になったり、燃焼温度が高くなって、RawNOxが生成されたりする。そこで制御手段は、各サイクルにおける噴射タイミングを、所定の運転状態に対応する噴射タイミングに対して遅らせる(遅角させる)。そうすることによって、圧縮着火のタイミングも遅れるようになり、圧縮上死点から離れた時期に圧縮着火をして、その後、燃焼するようになる。その結果、圧縮着火燃焼による気筒内の圧力上昇が急峻になってしまうことが回避されると共に、燃焼温度が高くなることも防止される。こうして、EGRガスが不足する燃料カット制御からの復帰時に、燃焼騒音の抑制及びRawNOxの抑止が図られる。
また、前記気筒内でオゾンを生成するオゾン生成手段をさらに備え、前記制御手段は、前記噴射リタード制御を実行している最中に、前記オゾン生成手段を所定の添加タイミングで作動させて、気筒内でオゾンを生成する一方、前記燃料の噴射の再開時に、前記噴射リタード制御を実行しないときには、前記オゾン生成手段の作動を禁止する、としてもよい。
気筒内で生成したオゾンは、燃料の着火を誘発すると共に、燃焼を促進する。
前記構成によると、噴射タイミングを遅らせて圧縮着火のタイミングを、圧縮上死点から遅らせたときに、混合気内に所定の添加タイミングでオゾンを生成するようにした。これにより、気筒内の圧力が次第に低下をする膨張行程期間内において、過度に緩慢な燃焼を招くことなく、燃焼が適宜に促進されて、気筒内の燃料を燃やし尽くす上で有利になる。
こうしたオゾンを添加する添加タイミングとしては、燃料を噴射する前、燃料を噴射している最中、又は燃料が圧縮着火をして燃焼している期間で適宜設定すればよい。
また、前記制御手段は、前記燃料の噴射の再開後、EGR率が、前記所定の運転状態に応じたEGR率となるまで、前記噴射リタード制御を継続する、としてもよい。
この構成によると、燃焼を再開したときに設定したEGR率に達するまで、噴射タイミングを遅らせるよう構成したから、燃料噴射を再開したときの燃焼騒音の発生等が、確実に防止される。
また、前記制御手段は、前記EGR率が、前記所定の運転状態に応じたEGR率に近づくにつれて、前記リタード量を小さくする、としてもよい。
燃料カット制御から復帰した後、気筒内での燃焼が行われることで、吸気中に占めるEGRガスの割合は、設定したEGR率に近づくように、徐々に増加していく。
この構成によると、吸気中に占めるEGRガスの割合が設定値に近づくにつれて、リタード量をゼロに近づけるようにしたから、燃料供給を再開したときの燃焼騒音の発生等が、適切に防止される。
以上説明したように、前記の圧縮着火式エンジンの制御装置は、燃料カット制御からの復帰時に、EGRガスが不足することに対応して、気筒内に燃料を噴射するタイミングを遅らせるようにしたから、過早着火を防止しつつ、緩慢燃焼を実現することが可能であり、燃焼騒音及びNOxの発生を抑止することができる。
圧縮着火式エンジンの構成を示す概略図である。 圧縮着火式エンジンの制御に係るブロック図である。 (a)は、通常の運転時における、噴射タイミングの一例と、噴射された燃料の燃焼に伴う熱発生率の例示、(b)は、噴射リタード制御を実行している最中の噴射タイミングの一例と、そのときの熱発生率の例示である。 燃料カット制御、及び該燃料カット制御からの復帰時に実行される噴射リタード制御のフローチャート図である。 燃料カット制御及び噴射リタード制御を説明するタイムチャートである。 エンジンの運転領域を説明する説明図である。
以下、圧縮着火式エンジンの制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態の説明は、例示である。
(エンジンシステムの全体構成)
図1〜2は、実施形態に係るエンジンシステム1の構成を示している。このエンジンシステム1は、車両に搭載されるシステムであり、エンジン本体(以下では、単にエンジンと記載)10と、エンジン10に付随する様々なアクチュエータ、様々なセンサ、及び該センサからの信号に基づきアクチュエータを制御する、制御手段としてのPCM(Powertrain Control Module)100を含む。
以下では、エンジン10、エンジン10に付随する様々なアクチュエータ及びセンサについて、それぞれの構成の主要部について説明するが、周知のものを採用している部分については、一部を除き図示及び説明しないものとする。
このエンジン10は、自動車等の車両に搭載されるように構成されていて、少なくともガソリンを含む燃料が供給される圧縮着火式エンジンである。
図1に示すように、エンジン10は、シリンダブロック11と、その上に載置されて固定されるシリンダヘッド12と、を備えている。シリンダブロック11の内部には、複数の気筒(図1ではただ1つのみを示すが、実際は、複数の気筒が直列に並んでいる)13が形成されていると共に、気筒13の並びに沿って延びるように、クランクシャフト14が回転自在に支持されている。このクランクシャフト14は、コネクティングロッド15を介してピストン16に連結されている。
ピストン16は、各気筒13内に、それぞれ摺動可能に嵌挿されていて、このピストン16の頂面と、気筒13の壁面と、シリンダヘッド12の下面とによって、燃焼室17が区画されている。この実施形態では、ピストン16は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連のサイクルの過程で、ピストン16の頂面がシリンダヘッド12の下面に最も接近する上死点(TDC)と、ピストン16の頂面がシリンダヘッド12の下面から最も離れる下死点(BDC)との間を往復移動する。図1は、ピストン16が上死点から下死点に移動している状態を概略的に示している。
エンジン10は、燃料供給手段としての燃料供給装置20を備えていて、この燃料供給装置20は、インジェクタ21と、燃料供給システム22と、を含む。インジェクタ21は、シリンダヘッド12の燃焼室17毎に取り付けられていて、各燃焼室17内に燃料を直接噴射する(直噴)。このインジェクタ21は、その先端の噴射口がシリンダヘッド12の下面中央部から、燃焼室17の内部に向けて臨むように配設されており、当該中央部から、燃焼室17の内部に向かって放射状に広がるようにガソリンを噴射する。インジェクタ21としては、外開弁式のインジェクタや、多噴口型のインジェクタを採用することが可能である。
この実施形態では、インジェクタ21として、ピアゾ素子を用いて構成され、噴射口の高度な開度制御が可能なピアゾインジェクタ21が用いられている。従って、この構成によると、エンジン10の回転数が非常に大きい場合でも、単位時間当たりの噴射量や噴射タイミングなどを精度良く制御できるようになっている。
こうしたインジェクタ21を作動させる燃料供給システム22は、例えば、インジェクタ21の開度を変更するための電気回路と、インジェクタ21に燃料を供給する燃料供給系とを備えており、PCM100からの制御信号に従って、所定量の燃料を、所定のタイミングで燃焼室17内に噴射するよう、燃料供給装置20の作動を制御する。
ここで、エンジン10の燃料は、本実施形態ではガソリンであるが、バイオエタノール等を含むガソリンであってもよく、少なくともガソリンを含む燃料(液体燃料)であれば、どのような燃料であってもよい。
ここで、シリンダヘッド12の下側(燃焼室17の上面側)にはさらに、オゾン生成手段としてのオゾン発生器30が配設されている。このオゾン発生器30は、例えばねじ止めなどの周知の構造によって、シリンダヘッド12に取り付けられており、放電プラグ31とオゾン発生システム32とを備えている。
放電プラグ31の先端部は、インジェクタ21の噴射口の近傍から燃焼室17に突出しており、周囲が電気的に絶縁された棒状の電極が設けられている。この構成によって、電極は、シリンダヘッド12やシリンダブロック11などから電気的に絶縁された状態で、燃焼室17内に突出している。
オゾン発生システム32は、高電圧に対応した電気回路を有しており、PCM100からの制御信号に従って、パルス状の高電圧を電極に印加して、電極の周囲にオゾンを発生させる。この電圧の大きさ、印加期間及びパルス幅等を適宜変更することによって、燃焼室17内に生成するオゾンの濃度等を調整することができる。
シリンダヘッド12にはまた、気筒13毎に、インジェクタ21に隣接して吸気ポート18及び排気ポート19が開口していて、それぞれが燃焼室17に連通している。これら吸気ポート18及び排気ポート19には、燃焼室17側から開口を閉塞することができるように、吸気弁41及び排気弁42がそれぞれに配設されている。吸気弁41は吸気弁駆動機構により、排気弁42は排気弁駆動機構により、それぞれ駆動され、それによって所定のタイミングで往復移動して、各ポート18,19を開閉し、燃焼室17内のガス交換を行う。
吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、それぞれ吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有する。これらのカムシャフトは、周知の動力伝達機構を介して前記クランクシャフト14に駆動連結されていて、クランクシャフト14の回転に連動して回転する。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、例えばスイングアームを備えたロッカーアーム式に構成されている。
この実施形態では、少なくとも吸気弁駆動機構は、吸気カムシャフトの位相、ひいては吸気弁41の開閉時期を変更可能な、例えば電動式のバルブ位相可変機構(Variable Valve Timing:VVT)43を含んで構成されている。吸気弁駆動機構はさらに、VVT43に加えて、吸気弁41の移動量(弁リフト量)を連続的に変更可能な、連続可変バルブリフト機構(Continuous Variable Valve Lift:CVVL)44も含んで構成されている。VVT43及びCVVL44は、PCM100からの制御信号に従って、所定量のガスを所定のタイミングで燃焼室17内に導入するよう、吸気弁41の開閉量及び開閉タイミングを調整する。
各燃焼室17の吸気ポート18は、吸気通路50に連通している。一方で、各燃焼室17の排気ポート19は、排気通路60に連通している。
吸気通路50の上流側端部には、外部から吸入した空気を濾過するエアクリーナが配設されている一方で、吸気通路50における下流端近傍には、サージタンク51が配設されている。このサージタンク51よりもさらに下流側の吸気通路50は、燃焼室17毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各燃焼室17の吸気ポート18にそれぞれ接続されている。
吸気通路50におけるエアクリーナとサージタンク51との間には、各燃焼室17への吸入空気量を調節するスロットル弁52が配設されていて、PCM100からの制御信号に従って、所定量の新気を導入するように、スロットル弁52の開閉量を調整する。
排気通路60の上流側の部分は、燃焼室17毎に分岐して排気ポート19の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有するように構成されている。この排気通路60における集合部よりも下流側には、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置が接続されていて、この排気浄化装置としては、例えば、筒状ケースと、そのケース内の流路に配置した、例えば三元触媒とを備えて構成されている。この排気浄化装置のさらに下流側には、例えばマフラーが接続されていて、浄化した排気ガスを外部に排出する。
吸気通路50におけるサージタンク51とスロットル弁52との間の部分と、排気通路60における排気浄化装置よりも上流側の部分とは、排気ガスの一部を吸気通路50に還流するための、EGR手段としてのクールドEGR70を介して接続されている。このクールドEGR70は、排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ72が配設されたEGR通路71を含んで構成されていて、このEGR通路71には、排気ガスの吸気通路50への還流量を調整するためのEGR弁73が配設されている。PCM100からの制御信号に従って、このEGR弁73の開閉量を調整することによって、スロットル弁52と協働して所定のEGR率を実現するように構成されている。
エンジン10は、その幾何学的圧縮比が高く設定されている。幾何学的圧縮比εは、例えば20≦ε≦40、好ましくは25≦ε≦35である。エンジン10は、点火プラグによる点火を行わずに、インジェクタ21より燃焼室17内に噴射した燃料を、圧縮着火によって燃焼させる。
具体的には、この実施形態では、圧縮上死点の手前40度から180度付近(BTDC40〜180度付近)にて、吸気弁42が吸気ポート18を閉塞するようになっている。
そして、圧縮行程において、ピストン16が図1の紙面上方に移動することによって、取り込んだガスを断熱的に圧縮する。吸気行程から圧縮行程の期間内で、インジェクタ21が作動して、燃焼室17内で図1の紙面下方に向けて放射状に広がるように燃料を噴射する。こうして、燃焼室17内に、ガスと燃料とが混合した混合気を生成する。
生成した混合気は、気体の圧力等により定まる発火点に達し次第、自発火(圧縮着火)して、それによって燃焼する。具体的には、圧縮上死点付近において発火点に達し、燃焼室17内の各所において、同時多発的に自己着火する。着火した混合気は、図3(a)に示すように、燃焼の進行に伴って、所定の高さ及び幅を有するような熱量を発生する。燃焼重心は、この実施形態では、膨張行程前期、具体的には、圧縮上死点を通過した5度付近(ATDC5度付近)になるように設定されている。そして、この熱量によって急激に膨張したガスがピストン16を図1の紙面下方に押し動かすことによって、クランクシャフト14が回転し、その回転によるトルクが駆動力としてエンジン10から出力される。エンジン10からの出力を、変速機を介して連結された駆動輪に伝達することによって、車両が推進する。
その後、排気弁42が動作して排気ポート19が開口し、気筒13内のガスを当該ポート19より排気ガスとして排出する。
このとき排出されるガスの一部は、EGR弁73の開度に応じて、EGR通路71を経由して、冷却された上でサージタンク51に流入する。そして、外部から新たに導入された新気と混合して、吸気ポート18から再び燃焼室17内に導入され、混合気として再利用される。その一方で、排出される他のガスは、排気浄化装置を通過して、外部に排気される。
以下では、このように駆動するよう構成されたエンジン10の作動を制御するPCM100の構成の主要部について説明するが、周知のものを採用している部分については、一部を除き図示しないことにする。
PCM100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
PCM100には、図2に示すように、少なくとも、車両の推進速度(車速)を検出する車速センサSW1、アクセルペダルPの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSW2、及びエンジン10の出力回転(エンジン回転数)を検出するエンジン回転数センサSW3が接続されていて、各センサの検出値をPCM100に入力する。
PCM100にはまた、吸気通路50内の上流側に設けられ、吸気通路50を流れる新気の流量を検出するエアフローセンサSW4が接続されていて、その検出値をPCM100に入力する。
PCM100は、前述した各センサ等からの入力に基づいて、エンジン10や車両の状態を判断し、それに対応した燃料噴射、吸気及び放電等が行われるように、エンジン10の制御パラメータを設定する。そしてPCM100は、設定した各制御パラメータに基づいた制御信号を、燃料供給システム22、オゾン発生システム32、VVT43、CVVL44、スロットル弁52及びEGR弁73等に出力して、エンジン10を作動させる。
PCM100は、エンジン10を作動させるとき、アクセルペダルPの踏み込み量(アクセル開度)に応じて定まるエンジン負荷と、エンジン10のエンジン回転数とに応じて、空燃比(A/F)、EGR率、吸入空気量、燃料噴射量、噴射タイミング、吸気弁41の開閉タイミング、及びオゾンを添加するタイミング等を設定し、それら設定値を目標として種々のアクチュエータを作動させる。
なお、エンジン負荷は、図6に示すように、当該図面において実線で示す所定の負荷よりも高い運転領域R1と、それよりも低負荷側の運転領域R2とに区分される。
この実施形態では、高負荷側の運転領域R1において、空気過剰率λを1(つまり、A/Fを約14.7に設定する)に設定する。この運転領域R1は、比較的多量の燃料を燃焼させる領域であって、以下ではλ1領域とも記載する。λ1領域では、インジェクタ21が燃料噴射を開始する噴射開始タイミング(以下では、こうした噴射開始タイミングを噴射タイミングとも記載)が、圧縮行程終期から膨張行程初期に設定される。ここでいう、圧縮行程終期は、圧縮行程を、初期、中期、及び終期の3つに3等分したときの初期に相当する。λ1領域では、燃料噴射量が相対的に多くかつ、混合気の空燃比を理論空燃比に設定していることで、圧縮着火燃焼による気筒13内の圧力上昇が急嵯になって、燃焼騒音が増大してしまう可能性が有る。そのため、λ1領域では、燃料の噴射タイミングを比較的遅く設定することで、圧縮着火のタイミングを、圧縮上死点から離れた膨張行程内にして、それによって、圧縮着火燃焼を、気筒13内の圧力が低下する膨張行程中に設定する。λ1領域での燃料噴射は、一括で行ってもよいし、エンジントルクを生成する主燃焼(1サイクル中で最も大きな熱量を発生させる燃焼)を生じさせるための主噴射と、その主噴射の前に行う前段噴射とに分けて行ってもよい。λ1領域では、エンジン10の運転状態に応じて燃焼の噴射開始タイミング(この噴射開始タイミングは、主噴射の噴射開始タイミングに相当する)が設定される。
その一方で、低〜中負荷側の運転領域R2においては、燃焼室17内の空気過剰率λを例えば、2.0以上(つまり、A/Fが約30以上)に設定する。この運転領域R2は、以下では、リーン領域とも記載する。リーン領域では、インジェクタ21による燃焼噴射の開始タイミングが、例えば圧縮行程終期に設定される。リーン領域では、燃料噴射量が相対的に少なくかつ、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定していることで、圧縮着火燃焼による気筒13内の圧力上昇が抑制される。そのため、リーン領域では、燃料の噴射開始タイミングを相対的に早く設定する。リーン領域での燃料噴射は、一括で行ってもよいし、分割で行ってもよい。リーン領域でも、エンジン10の運転状態に応じて燃焼の噴射開始タイミングが設定される。
PCM100は、車両が減速している最中に所定の条件(燃料カット条件)が成立したとき、例えばアクセルペダルPが踏みこまれておらず(アクセル開度がゼロ)且つ、エンジン回転数が所定の回転数以上である、と判断したときには、インジェクタ21による燃焼室17内への燃料噴射を中断する燃料カット制御を実行する。
燃料カット制御を実行している最中、エンジン10は惰性によって動作を継続する。このとき、燃焼室17内では燃焼が生じないため、当該制御を実行すると、EGR率は、ゼロに向けて減少していくが、吸気通路50及びEGR通路71に残存する排気ガス等により、実際のEGR率は、EGR率をゼロに設定した後、やや遅れてゼロに達する。
そして、燃料カット制御を実行している最中に、アクセルペダルPを踏みこんで再加速をするか、エンジン回転数が所定の回転数を下回るかをすると、PCM100は、燃料カット制御を終了して、燃料噴射を再開する。
特に、前者の場合については、アクセルペダルPの踏み込み量に応じて、燃料供給を再開した後のエンジン10の運転領域を設定し、その設定とエンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて、A/F、吸入空気量、燃料噴射量、着火コントロール用噴射時期((主噴射の)噴射タイミング)、EGR率等を設定し、設定に基づいてエンジン10を運転する。
しかしながら、燃料噴射を再開した直後の数サイクルについては、それまで燃焼が行われておらず、排気ガスが存在しないため、後述するように、実際のEGR率は、やや遅れて所定の設定値に達する。
(噴射リタード制御に係るエンジンの燃料噴射制御)
PCM100はまた、燃料カット制御からの復帰時には、前記したようなEGR率の増加の遅れに対応すべく、インジェクタ21を作動させるタイミングを、設定されたタイミングに対して、所定の期間にわたって遅らせる噴射リタード制御を実行する。これにより、燃焼騒音の増大やRawNOxの生成を防止する。
以下では、この噴射リタード制御について詳細に説明するために、主にPCM100が実行する、前記燃料カット制御、及び該制御からの復帰時に実行される噴射リタード制御の一例を示すフローチャート(図4)と、こうした制御を実行したときのエンジン10の振る舞いを示すタイムチャート(図5)と、燃料が燃焼するときの熱発生率を示す説明図(図3)と、図5に示すタイムチャートに対応して、エンジン10の運転状態の移り変わりを示す説明図(図6)と、を用いて詳細に説明する。ここで説明する例は、図6にA1、A2及びA3の矢印で示すように、λ1領域内で定常運転をしている状態から、アクセルペダルPの踏み込みを解除して減速している最中に燃料カット制御を実行して、その後、アクセルペダルPを踏み込んで、エンジン10の運転状態が、λ1領域内の運転状態に至るまでの、エンジン10の振る舞いである。
まず、図5のT0からT1にかけての期間では、エンジン10は定常運転する。つまり、この期間では、アクセル開度は一定に保持されており、そのアクセル開度に応じて設定されたエンジン負荷に基づいて、運転領域R1(λ1領域)が選択される。そして、前記したように、PCM100によって、エンジン負荷及びエンジン回転数に応じて、その運転領域R1に対応するように、EGR率(気筒13内に流入する全ガスに対する排気ガスの質量比)、吸入空気量、燃料噴射量及び噴射タイミングが設定される。例えば、噴射タイミングについては、圧縮上死点前5度に選ばれている。
次に、図5のT1からT2にかけての期間では、車両を減速すべく、アクセルペダルPの踏み込みが解除されて、アクセル開度が単調に減少する。この期間では、アクセル開度の減少に応じて燃料噴射量が減少すると共に、空気過剰率λ(図5では、空気過剰率λではなくA/Fを示している)を一定に保つべく、吸入空気量も減少する。ところが、吸入空気量はアクセル開度よりも遅れて減少すると共に、燃料噴射量は、この遅れに合わせるような速度で減少する。つまり、図5の実線で示すように、吸入空気量及び燃料噴射量は、図5の破線で示す目標に対して遅れて減少する。
また、噴射タイミングについては、圧縮上死点前5度から10度に向けて増大(進角)する。この噴射タイミングについても、図5の破線に示す目標に遅れて、該図の実線に沿って増大する。
時間T2に達すると、アクセル開度がゼロに達する。
PCM100は、図4のステップS1及びS2に示すように、回転数センサSW2及びアクセル開度センサSW3からの入力を基に、アクセル開度がゼロで且つ、エンジン回転数が所定値を超えているか否かを判定するよう構成されており、この判定がYESであるときには、燃料カット条件を満たしたとしてステップS3に進み、燃料カット制御を実行する。この場合、エンジン回転数が十分に大きいものとすると、アクセルペダルPの踏み込みが解除されて、アクセル開度がゼロになったから、燃料噴射を中断する燃料カット制御を実行すべく、燃料供給システム22、スロットル弁52及びEGR弁73等に制御信号を出力する(ステップS3)。
燃料カット制御を実行することによって、図5のT2からT3にかけての期間では、燃料噴射量は、ゼロに達するまで減少を継続する一方、吸入空気量は、最低限のガスを吸入するよう、所定の値(min)まで減少する。噴射タイミングについては、燃料噴射量の減少に伴う進角を継続する。
図5のT0からT3にかけての期間では、エンジン負荷の減少に伴って、図6の矢印A1に示すように、運転領域R1からR2に移行する。
EGR率については、燃焼が継続している間は、ほとんど低下せず、燃焼終了以降である図5のT3以降の期間において、単調に減少することになる。EGR率は、図5の破線に示す目標に対して大きく遅れる。EGR率は、燃料噴射量がゼロになってEGRガスとして利用可能な排気ガス(燃焼によって酸素を消費したガス)が新たに生成されなくなってから、時間T4(>T3)でゼロ(つまり、EGR率=0%)に達する。
そして、図5のT3からT5にかけての期間では、燃料カット制御が継続しているため、エンジン10は、燃料の燃焼を伴わずに、最低限の吸入空気量の下で、惰性で動作する。この期間では、エンジン回転数は、図6の矢印A2に示すように、単調に減少する。
図5のT5からT6にかけての期間では、車両を再加速すべく、アクセルペダルPが再び踏み込まれて、アクセル開度が単調に増大する。
PCM100は、図4のステップS3から続くステップS4及び5において、ステップS1及びS2と同様に、回転数センサSW2及びアクセル開度センサSW3からの入力に基づいて、燃料カット制御から復帰する条件、すなわち、アクセル開度がノンゼロであること(つまり、アクセルペダルPが踏み込まれたこと)、又はエンジン回転数が所定値以下であるか否かを判定する。この場合、前記したように、アクセルペダルPが再び踏み込まれているから、車両の再加速が指示されたとして図4のステップS6に進み、燃料カット制御から復帰する。
続くステップS6では、PCM100は、燃料カット制御から復帰するように、すなわち、インジェクタ21からの燃料噴射を再開するよう制御信号を出力する。つまり、アクセル開度より算出されるエンジン負荷に基づいて、エンジン10の運転領域(運転状態)を選択する。この場合、エンジン負荷の増大に伴って、図6の矢印A3に示すように、運転領域R2から再び運転領域R1に移行する。そして、PCM100は、この運転領域R1中で選択したエンジン10の運転状態に対応するよう、A/F、EGR率、吸入空気量、燃料噴射量及び噴射タイミング等を設定し、設定したパラメータに基づいて燃料噴射を再開すべく、種々のアクチュエータに制御信号を出力する。
これによって、吸入空気量及び燃料噴射量が増加を始め、燃料の燃焼が再開する。図5に示すように、T5からT6にかけての期間では、吸入空気量は、設定値よりもやや遅れて増加すると共に、その増加に合わせて、燃料噴射量もやや遅れて増加する。そして、時間T6以降は、アクセル開度が一定に保持されているため、それに応じて、吸入空気量及び燃料噴射量も一定に保持される。このときのアクセル開度(エンジン負荷)は、T0からT1にかけてのアクセル開度(エンジン負荷)よりも小さく、それに応じて、T6以降の吸入空気量及び燃料噴射量は、T1以前よりも小さくなるよう設定される。
なお、図4のステップS6にて燃料噴射を再開してから続くステップS7では、燃料噴射の再開が、アクセルペダルPの踏み込みによる復帰であるか否かを判定して、この判定がNOであるときには、自然復帰を実行する一方、この判定がYESであるときには、EGRガスの不足に対応するよう、噴射リタード制御を実行する。この場合、アクセルペダルPの踏み込みによる復帰であるから、噴射リタード制御を実行する。
つまり、燃料カット制御から復帰して再加速するとき、EGR率については、前記設定値に向けてEGR率を上昇させようとしても、燃料の噴射を再開した直後は、EGRガスとして利用できる排気ガスは、燃焼室17、排気通路60、EGR通路71及び吸気通路50のいずれにも残存していない。ゆえに、燃料の燃焼が所定の期間にわたって行われて、排気ガスの還流が安定するまでは、EGR率は設定値に達しない。つまり、EGR率は、燃料カット制御から復帰した後、吸入空気量や燃料噴射量よりも、大きく遅れて増加する。
吸入空気量及び燃料噴射量が設定値に達している一方で、EGR率が設定値に達していない場合、気筒13内には、EGRガスが不足して、新気が過剰に導入された状態となる。
燃料カット制御から復帰した後の噴射タイミング(つまり、燃料噴射を開始するタイミング)は、吸入空気量、燃料噴射量及びEGR率と同様に設定された、所定の設定値(図5では圧縮上死点前5度)に向けて変化するように調整されるが、前述のようなEGRガスの不足に対応するために、燃料カット制御から復帰した直後の所定期間については、設定値よりも遅角側で噴射するよう、噴射リタード制御を実行する。
PCM100は、噴射リタード制御を実行すべく、各センサからの入力等を基に、燃料噴射を再開した後の、燃焼室17内の温度圧力、A/F、EGR率等の推移を推定して、その推定結果に基づいて、噴射タイミングを遅らせる噴射リタード量を設定する(図4のステップS8)。噴射リタード量の設定については、後述するように、遅らせる量の最大値や、その時間変化等が定められる。そして、設定した噴射リタード量に基づいて噴射タイミングを設定して、噴射リタード制御を開始すべく、種々のアクチュエータに制御信号を出力する。(図4のステップS9)
図5において、T5以降の噴射タイミングのタイムチャートは、燃料カット制御からの復帰時における、噴射リタード制御を実行しないときの噴射タイミングの設定値を意味し、実線は、噴射リタード制御を実行したときの噴射タイミングの設定値を意味する。
噴射リタード制御を実行しないときの噴射タイミングの設定値と、噴射リタード制御を実行したときの噴射タイミングの設定値との間の差分を示したのが、図5の最下段に示す噴射リタード量(以下、単にリタード量と記載)である。図に示すように、リタード量は、アクセルペダルPの踏み込みに伴って(つまりT5からT6にかけて)0度から12度まで単調に上昇した後、時間の経過に従って、0度に向けて単調に減少していく。このリタード量は、EGR率が設定値に達すると同時に(つまり時間T7で)ゼロになるように設定されている(図4のステップS8)。すなわち、EGRガスを安定して供給できるようになったときに、燃料を、遅角させずに、通常の噴射タイミングで噴射する。
以上より、エンジン10の運転状態に応じて設定される目標の噴射タイミングは、T5からT6にかけて圧縮上死点前10度から5度に遅角した後、T6以降は圧縮上死点前5度を保持するように推移する一方、噴射リタード制御時においては、T5からT6にかけて圧縮上死点前10度から膨張行程中まで遅角した後、T6からT7にかけて、圧縮上死点前5度に向けて徐々に進角する。
このときのエンジン10のサイクルについて説明すると、図3(b)の破線に示すように、燃料カット制御から復帰した直後は、EGR率の上昇の遅れから、燃焼室17内の混合気は、過度の着火性を有することになる。したがって、通常時(噴射リタード制御を実行していないとき)の噴射タイミングの設定を利用すると、この混合気は、燃焼室17内で過早着火を生じてしまう。これは、気筒13内の圧力上昇を急峻にして、燃焼騒音を増大する。また、燃焼温度を高くして、RawNOxの生成を招く。
一方、噴射リタード制御を実行しているときには、図3(b)の実線に示すように、噴射タイミングを遅角側にずらしているから、圧縮着火のタイミングを、圧縮上死点から離れた膨張行程中に設定することが可能になる。そのため、圧縮着火燃焼の時期も、圧縮上死点から離れるようになり、圧力上昇率が急峻になることが防止される。また、燃焼温度も低下する。その結果、燃焼騒音及びRawNOxの生成を、共に防止することが可能になる。
さらに、噴射リタード制御を実行しているとき、燃焼室17内に所定の添加タイミングでオゾンを供給するように、所定のタイミングで放電プラグ31に印加して、混合気にオゾンを添加する(図4のステップS10)。
具体的には、前述したように、圧縮着火のタイミングを遅らせ、それによって、圧縮着火燃焼が進行する時期を、膨張行程中の比較的遅い時期に設定しているため、混合気の燃焼期間を、燃焼期間前期と、燃焼期間後期とに2分したときの燃焼期間後期においては、気筒13内の温度及び圧力が低くなって、燃料が燃え残ってしまう恐れがある。そこで、この実施形態では、燃料を噴射する前、噴射している最中、及び/又は混合気が燃焼している最中に、オゾンを添加するよう設定することによって、圧縮着火の安定性を確保すると共に、燃え残りの発生を予防する。
このようにして、噴射リタード制御により調整された噴射タイミングは、前記したように、エンジン10の運転が進行するに伴って、徐々に通常の噴射タイミングに近づいていく。つまり、図3(b)の実線で示したタイミングから、図3(a)で示したタイミングに近づいていくことになって、双方が一致したとき、つまり噴射リタード制御が終了したとき(図4のステップS11)、オゾンの添加も終了する(図4のステップS12)。
以上より、PCM100は、燃料カット制御を終了して、燃料噴射を再開(再加速)させるときには、再開直後におけるEGRガスの不足を補うべく、圧縮上死点付近における噴射タイミングを遅角させる。そうすることによって、混合気の緩慢燃焼を実現するから、燃焼騒音を低減すると共に、RawNOxの生成を抑止する。
PCM100はまた、噴射リタード制御を実行すると共に、所定の添加タイミングで、燃焼室17内の混合気にオゾンを添加するようにしたから、圧縮着火の安定化を図り、
燃焼室17内に噴射された燃料を燃やし尽くす上で有利になる。
PCM100はまた、燃料噴射を再開するときに設定したEGR率に達するまで、噴射リタード制御を継続するよう構成したから、燃料噴射を再開したときの燃焼騒音の発生等を、確実に防止することができる。
PCM100はまた、EGR率が所定の設定値に近づくにつれて、リタード量をゼロに近づけるようにしたから、気筒13内のガスの状態に応じた燃焼を行うことが可能になる。
また、EGR手段として、排気ガスを冷却させた上で還流させるクールドEGR70を使用しているため、緩慢燃焼を実現する上で有利になる。
<他の実施形態>
PCM100による制御の例として、図4のフローチャートに基づく制御について説明したが、必ずしもこの構成に限定されるわけではない。各ステップの順番を、可能な範囲において変更することができる。また、可能な範囲において、これらのステップを並行して行うように構成してもよい。
また、燃料カット制御、及び噴射リタード制御を実行したときの種々のパラメータの振る舞いの一例として、図5のタイムチャートを用いて説明したが、必ずしもこれに限定されるわけではない。図5における各パラメータの数字、及び時間の経過に伴う変化等は例示に過ぎないため、可能な範囲において変更することができる。また、前記実施形態では、燃料噴射の再開後にエンジン10の運転状態がλ1領域に至るときの制御について説明したが、それに限定されるわけではない。運転状態がリーン領域内の運転状態に至るときについても同様である。
噴射リタード制御を実行している最中に、オゾン発生器30を作動させて混合気にオゾンを添加する構成について説明したが、必ずしもオゾンを添加する必要はない。また、オゾンを添加する方法についても可能な範囲において変更することができる。
また、EGR率が所定の設定値に達するまで、噴射タイミングを遅らせる構成について説明したが、この構成に限定されるわけではない。所定のEGR率に達する前に噴射タイミングを戻すようにしてもよい。
また、EGR率が所定の設定値に近づくにつれて、リタード量を減少させる構成について説明したが、この構成に限定されるわけではない。例えば、EGR率が増加を始めてから所定の設定値に達するまで、リタード量を一定に保つようにしてもよい。
吸気通路50、及び排気通路60の構成についても変更することができる。例えば、クールドEGR70において、EGRクーラ72をバイパスするためのバイパス通路を設けることができる。そうした場合、EGRガスの温度、ひいては混合気の着火性をより高度に制御できるようになる。
ここに開示する技術は、ターボ過給機付きエンジンに適用することも可能である。
吸気弁駆動機構にCVVL44を含む構成は、必須ではない。
以上の様に、EGR手段を備えた圧縮着火式エンジンの制御装置において、燃料カット制御からの復帰時に生じる燃焼騒音等を低減できるものであり、産業上の利用可能性はある。
10 エンジン本体
13 気筒
100 PCM(制御手段)
20 燃料供給装置(燃料供給手段)
30 オゾン発生器(オゾン生成手段)
70 クールドEGR(EGR手段)
P アクセルペダル

Claims (4)

  1. 気筒を有するエンジン本体と、
    前記エンジン本体の運転状態に対応した量の少なくともガソリンを含む燃料を、該運転状態に対応した噴射タイミングで、前記気筒内に噴射する燃料噴射手段と、
    前記気筒内の混合気を圧縮着火燃焼させることにより、前記エンジン本体を駆動させる制御手段と、
    前記エンジン本体の運転状態に応じたEGR率となるように、前記気筒内に、前記燃焼により生じた排気ガスの一部を還流させるEGR手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記エンジン本体の運転状態が所定負荷よりも低負荷側の運転領域にあるときには、混合気の空気過剰率が2.0以上に設定されるよう、前記燃料噴射手段を介して前記気筒内に燃料を噴射し、
    前記制御手段はまた、所定の条件に基づいて、前記燃料噴射手段の作動を強制的に中断させる燃料カット制御を実行し、
    前記制御手段はさらに
    前記燃料カット制御を実行している最中に、アクセルペダルが踏み込まれたことを検出したときには、前記エンジン本体の運転状態が、前記アクセルペダルの踏み込みに対応する所定の運転状態となるように、前記燃料噴射手段による燃料の噴射を再開させると共に、その再開時には、燃料の噴射タイミングを、前記所定の運転状態に対応する噴射タイミングに対して所定のリタード量だけ遅らせる噴射リタード制御を実行する一方、
    前記燃料カット制御を実行している最中に、前記アクセルペダルの踏込を検出しないまま、前記エンジン本体のエンジン回転数が所定の回転数を下回ったときには、前記低負荷側の運転領域に対応した空気過剰率を実現するように、前記燃料噴射手段による燃料の噴射を再開させると共に、その再開時には、前記噴射リタード制御を実行しない圧縮着火式エンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載の圧縮着火式エンジンの制御装置において、
    前記気筒内でオゾンを生成するオゾン生成手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記噴射リタード制御を実行している最中に、前記オゾン生成手段を所定の添加タイミングで作動させて、気筒内でオゾンを生成する一方、前記燃料の噴射の再開時に、前記噴射リタード制御を実行しないときには、前記オゾン生成手段の作動を禁止する圧縮着火式エンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の圧縮着火式エンジンの制御装置において、
    前記制御手段は、前記燃料の噴射の再開後、EGR率が、前記所定の運転状態に応じたEGR率となるまで、前記噴射リタード制御を継続する圧縮着火式エンジンの制御装置。
  4. 請求項3に記載の圧縮着火式エンジンの制御装置において、
    前記制御手段は、前記EGR率が、前記所定の運転状態に応じたEGR率に近づくにつれて、前記リタード量を小さくする圧縮着火式エンジンの制御装置。
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