以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
<実施例1>
先ず、本発明の第1の実施例について図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。
図1に示す内燃機関1は、予混合燃焼運転と拡散燃焼運転を適宜切り換え可能な圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。
内燃機関1は、各気筒2内へ直接燃料を噴射可能な燃料噴射弁3と、各気筒2内へ空気を導く吸気通路4とを備えている。吸気通路4の途中には、ターボチャージャ5のコンプレッサハウジング50とインタークーラ6が配置されている。
コンプレッサハウジング50により過給された吸気は、インタークーラ6で冷却された後に各気筒2内へ導かれるようになっている。各気筒2内へ導かれた吸気は、燃料噴射弁3から噴射された燃料とともに気筒2内で着火及び燃焼される。
各気筒2内で燃焼されたガス(既燃ガス)は、排気通路7へ排出される。排気通路7へ排出された排気は、排気通路7の途中に配置されたタービンハウジング51及び排気浄化触媒8を経由して大気中へ放出される。
前記の排気浄化触媒8としては、酸化能とNOx吸蔵能を有する吸蔵還元型NOx触媒、酸化能とPM捕集能を有するパティキュレートフィルタ、吸蔵還元型NOx触媒が担持されたパティキュレートフィルタ、或いは吸蔵還元型NOx触媒とパティキュレートフィルタが直列に配置されたもの等を例示することができる。
前記した吸気通路4のインタークーラ6より下流の部位と排気通路7のタービンハウジング51より上流の部位は、EGR通路9により相互に接続されている。EGR通路9の途中には、該EGR通路9を流れる排気(以下、「EGRガス」と称する)の流量を調節するEGR弁10と、該EGR通路9を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ11が配置されている。
また、吸気通路4においてインタークーラ6より下流且つEGR通路9の接続部より上流の部位には吸気絞り弁12が配置されている。
上記した燃料噴射弁3、EGR弁10、及び、吸気絞り弁12は、ECU13によって電気的に制御される。ECU13は、吸気通路4に配置されたエアフローメータ14の測定値、排気浄化触媒8より下流の排気通路7に配置された空燃比センサ(A/Fセンサ)15の測定値、内燃機関1に取り付けられたクランクポジションセンサ16の測定値、及びアクセルポジションセンサ17の測定値などをパラメータとして、燃料噴射弁3、EGR弁10、及び吸気絞り弁12を制御する。
例えば、ECU13は、内燃機関1の負荷(アクセルポジションセンサ17の出力信号(アクセル開度))Accp及び機関回転数Neから定まる機関運転状態が図2に示す予混合燃焼領域にある時には、各気筒2の圧縮上死点より早い時期(圧縮行程の初期又は中期)に燃料噴射弁3から燃料を噴射させて予混合気を形成し、該予混合気の圧縮自着火を生起させる予混合燃焼運転を行う。
内燃機関1の負荷Accp及び機関回転数Neから定まる機関運転状態が図2に示す拡散燃焼運転領域にある時には、ECU13は、各気筒2の圧縮上死点より前に少量の燃料をパイロット噴射させるとともに、圧縮上死点近傍で燃料噴射弁3から多量の燃料を噴射させることにより、拡散燃焼を生起させる拡散燃焼運転を行う。
また、ECU13は、機関回転数Neが所定回転数以上である、及びアクセル開度Accpが零である等の条件が成立した時には、燃料噴射弁3からの燃料噴射を停止させて内燃機関1をフューエルカット運転させる。
ところで、内燃機関1が予混合燃焼運転される場合は、気筒2内の燃料が過早着火する可能性がある。予混合燃焼運転時の過早着火を抑制する方法としては、EGR通路9を介
して気筒2内へ再循環させられる排気(EGRガス)を増量する方法が有効である。
しかしながら、内燃機関1が拡散燃焼運転やフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する時には、気筒2内へ導入されるEGRガス量が過早着火を抑制し得る量に対して過少となる。
これに対し、内燃機関1が拡散燃焼運転やフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する場合には、気筒2内へ導入されるEGRガス量が過早着火を抑制し得る量となるまで移行時期を遅延させる方法が考えられる。
上記した方法によれば、内燃機関1が予混合燃焼運転へ移行する時および/または移行直後における過早着火を抑制することはできるが、移行期間が長くなるという欠点がある。特に、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する場合には、気筒2内へ導入されるEGRガス量が過早着火を抑制し得る量となるまでに長い時間を要するため、移行期間が著しく長くなる可能性があった。
そこで、本実施例における内燃機関の燃焼制御システムでは、ECU13が以下に示す燃焼制御を行うことにより、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ速やかに移行できるようにした。
すなわち、本実施例における燃焼制御では、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する期間に燃料噴射弁3から噴射された燃料の粒径を小径化或いは微粒化させる。
予混合燃焼運転時の過早着火は、予混合気中に燃料粒径の大きな部分(言い換えれば、燃料が密集した部分)が存在する場合に発生し易い。これは、予混合気中に燃料粒径の大きな部分が存在すると、その部分の周囲の空燃比が燃料過濃となって着火性が高まるためと考えられる。
これに対し、燃料噴射弁3から噴射された燃料の粒径が小径化或いは微粒化されると、燃料が気筒2内(燃焼室内)に拡散するため、予混合気全体において燃料と空気が均質に混合するようになる。
この場合、予混合気中において燃料過濃な部分が減少又は無くなるため、過早着火が発生し難くなる。更に、予混合気中に燃料過濃な部分が少なくなると、たとえ過早着火が発生しても、比較的多量の燃料が急峻に燃焼することに起因した振動や騒音の発生も低減される。
燃料噴射弁3から噴射された燃料の粒径を小径化或いは微粒化する方法としては、気筒2内へ流入するガスの流速を変動させる方法が有効である。気筒2内へ流入するガスの流速が変動すると、燃料噴射弁3から噴射された燃料が気筒2内へ流入したガスと衝突を繰り返すようになる。その結果、燃料噴射弁3から噴射された燃料が微細な粒に分裂して小径化及び微粒化するとともに、前記ガスと均質に混合するようになる。
気筒2内へ流入するガスの流速を変動させる具体的な方法としては、吸気絞り弁12を開閉動作(全開と全閉を繰り返す動作)させる方法を例示することができる。
吸気絞り弁12が開閉動作すると、気筒2内へ流入する新気(空気)の流速が変化するとともにEGR経路(内燃機関1の燃焼室を起点に、排気通路7、EGR通路9、及び吸気通路4を順次経て再び燃焼室へ戻る経路)を介して気筒2内へ流入するEGRガスの流
速も変化する。その結果、燃料噴射弁3から噴射された燃料の分裂及び小径化(微粒化)が図られるとともに、燃料と新気とEGRガスの均質な混合も促進される。
また、内燃機関1が予混合燃焼運転されている時には、排気中の窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)が低減される一方、未燃燃料成分(HC)が増加し易い。
排気中に多量の未燃燃料成分が含有されると、EGR経路内に未燃燃料成分が付着する上、その未燃燃料成分に排気中の煤などが堆積して通路断面積を狭め、或いはEGR弁10を固着させる可能性があった。
これに対し、従来では内燃機関1の運転停止時(イグニッションスイッチがオフにされた時)やトランスミッションの変速時等に、吸気絞り弁12やEGR弁10を強制的に開閉動作させる等して未燃燃料成分を掃気および/または各種弁の固着を防止していた。
しかしながら、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に上記した吸気絞り弁12の開閉動作が行われると、EGR経路を流れるガスの流速変動によりEGR経路内に付着した未燃燃料成分や煤などを取り除くことができ、通路断面積の狭小化やEGR弁10の固着を防止することが可能となる。
依って、内燃機関1の運転停止時やトランスミッションの変速時等に、吸気絞り弁12やEGR弁10を強制的に開閉動作させる必要がなくなる。
ここで、吸気絞り弁12弁の開閉動作時期について図3に基づいて説明する。図3は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際の吸気絞り弁12の開閉動作時期を示すタイミングチャートである。
内燃機関1がフューエルカット運転されている時は、気筒2内で燃料が燃焼されないため、EGR経路内のガスの大部分が新気(空気)となる。更に、フューエルカット運転中は低温の空気が気筒2内を通過するため、気筒2内の温度が低下する。
依って、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した直後は、気筒2内へ導入されるガスの大部分が空気になるとともに燃料噴射弁3から噴射された燃料が気化又は霧化し難くい状態となる。上記した状態の時に内燃機関1が予混合燃焼運転されると、吸気絞り弁12が開閉動作しても過早着火を回避できない可能性がある。
これに対し、本実施例の燃焼制御では、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時には、内燃機関1を一旦拡散燃焼運転させる。すなわち、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時(図3中のt1)には、圧縮上死点より前に少量の燃料をパイロット噴射させるとともに圧縮上死点近傍に多量の燃料を噴射(メイン噴射)させるべく、燃料噴射弁3を制御する。
更に、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時t1に、EGRガス量が予混合燃焼運転時の過早着火を抑制し得る量(以下、「目標EGRガス量」と記す)となるようにEGR弁10を制御する。
EGRガス量は内燃機関1の吸入空気量と相関するため、図3の例ではEGRガス量が目標EGRガス量となる時の吸入空気量(図3中のGN1)を目標吸入空気量と定め、内燃機関1の実際の吸入空気量(図3中の実GN)が目標吸入空気量GN1となるようにEGR弁10が制御される。
尚、ECU13がEGR弁10に対する指令値を出力した時点t1から実GNが変化し始める時(図3中のt2)までには応答遅れ(図3中の期間P1)が生じる。このため、ECU13は、上記した期間P1においては、内燃機関1の拡散燃焼運転を継続させるように燃料噴射弁3を制御する。
また、実GNが変化し始める時t2から実GNが目標吸入空気量GN1に達する時点(図3中のt3)までにも応答遅れ(図3中の期間P2)が生じる。
上記した期間P2においては、気筒2内へ導入されるEGRガス量が前記目標EGRガス量より少ないため、当該期間P2に内燃機関1を拡散燃焼運転から予混合燃焼運転へ移行させると過早着火が生じる可能性がある。
依って、上記期間P2の終了後に内燃機関1を拡散燃焼運転から予混合燃焼運転へ切り換えることが妥当であるが、移行期間(期間P1と期間P2を合計した期間)が長くなるという問題がある。
これに対し、ECU13は、上記期間P1が終了した時(実GNが変化し始める時)t2に、内燃機関1の運転を拡散燃焼運転から予混合燃焼運転へ切り換えるとともに吸気絞り弁12を開閉動作させるようにしている。
内燃機関1の運転を拡散燃焼運転から予混合燃焼運転へ切り換える場合には、燃料噴射弁3の噴射形態(噴射時期、噴射量、噴射回数など)を変更する必要があるが、その際の変更が急激に行われると排気エミッションの悪化やトルク変動等を招く可能性がある。
そこで、ECU13は、燃料噴射弁3の噴射形態を拡散燃焼運転用の噴射形態から予混合燃焼運転用の噴射形態へ連続的又は離散的に変更するようにしている。具体的には、ECU13は、パイロット噴射量を連続的又は離散的(段階的)に減量するとともにメイン噴射時期を圧縮上死点近傍から連続的又は離散的(段階的)に進角させる(以下、この処理を「運転移行処理」と称する)。
その際、噴射形態の変更速度(例えば、1サイクル当たりのパイロット噴射量の減少量及びメイン噴射時期の進角量)は、内燃機関1の排気エミッションやトルク変動等が許容範囲に収まるように定められるものとする。
ECU13は、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角し且つパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminに減少すると(図3中のt4)、上記した運転移行処理の実行を終了する。
上記したような運転移行処理により燃料噴射弁3の噴射形態が変更されると、排気エミッションの悪化やトルク変動の発生を抑制しつつ内燃機関1の運転を切り換えることが可能となる。
更に、上記した運転移行処理の実行期間(図3中の期間P3)中はEGRガス量が目標EGRガス量より少ないが、吸気絞り弁12が開閉動作することにより燃料の分裂、小径化(微粒化)、及び拡散が図られるため、過早着火の発生が抑制され或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
尚、吸気絞り弁12の開閉動作は、期間P3の終了(図3中のt4)と同時に終了されてもよいが、期間P3の終了前であってもEGRガス量が目標EGRガス量に近似した時点(図3中のt3)で終了されることが好ましい。これは、EGRガス量がある程度多く
なった後も吸気絞り弁12の開閉動作が継続されると、EGRガス量の増加を妨げる可能性があるからである。
次に、本実施例における燃焼制御について図4に沿って説明する。図4は、燃焼制御ルーチンを示すフローチャートである。燃焼制御ルーチンは、予めECU13のROMに記憶されているルーチンであり、ECU13によって所定時間毎に繰り返し実行される。
燃焼制御ルーチンでは、ECU13は、先ずS101において内燃機関1がフューエルカット運転されているか否かを判別する。
前記S101において否定判定された場合にはECU13は、本ルーチンの実行を終了する。一方、前記S101において肯定判定された場合は、ECU13は、S102へ進む。
S102では、ECU13は、フューエルカット運転が終了したか否かを判別する。具体的には、ECU13は、フューエルカット運転の終了条件が成立したか否かを判別する。フューエルカット運転の終了条件としては、アクセル開度Accpが零より大きい、或いは機関回転数Neが所定回転数より低い等の条件を例示することができる。
前記S102において否定判定された場合は、ECU13は、フューエルカット運転の終了条件が成立するまで該S102の処理を繰り返し実行する。一方、前記S102において肯定判定された場合は、ECU13は、S103へ進む。
S103では、ECU13は、内燃機関1の負荷(アクセル開度Accp)及び機関回転数Neが前述した図2のマップにおける予混合燃焼運転領域にあるか否かを判別する。
前記S103において否定判定された場合は、ECU13は、本ルーチンの実行を終了する。一方、前記S103において肯定判定された場合は、ECU13は、S104へ進む。
S104では、ECU13は、内燃機関1を拡散燃焼運転させるように燃料噴射弁3を制御する。すなわち、ECU13は、圧縮上死点より前に少量の燃料をパイロット噴射させるとともに圧縮上死点近傍に多量の燃料を噴射(メイン噴射)させるべく燃料噴射弁3を制御する。
S105では、ECU13は、EGR弁10の開度が目標開度となるようにEGR弁10を制御する。目標開度は、内燃機関1へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量となる開度、言い換えれば内燃機関1の実GNが目標吸入空気量GN1となる開度である。
S106では、タイマCを起動させる。このタイマCは、ECU13がEGR弁10を目標開度に制御するための指令値を出力した時点からの経過時間を計時するタイマである。
S107では、ECU13は、前記タイマCの計測時間Cが第1の所定時間T1以上であるか否かを判別する。すなわち、ECU13は、S107において、EGR弁10に対する指令値を出力した時点から第1の所定時間T1が経過したか否かを判別する。第1の所定時間T1は、前述した図3における期間P1と同等であり、ECU13がEGR弁10に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間に相当する。この第1の所定時間T1は、予め実験的に求められている。
前記S107において否定判定された場合(C<T1)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが前記第1の所定時間T1以上となるまでS107の処理を繰り返し実行する。一方、前記S107において肯定判定された場合(C≧T1)は、ECU13は、S108へ進む。
S108では、ECU13は、前述した運転移行処理の実行を開始する。次いで、ECU13は、S109において吸気絞り弁12の開閉動作を開始する。この場合、EGRガス量が目標EGRガス量に対して過少となるが、吸気絞り弁12の開閉動作により燃料の小径化及び微粒化が図られるため、燃料の過早着火が抑制される。
S110では、ECU13は、内燃機関1に対して加速運転要求が発生したか否かを判別する。具体的には、ECU13は、アクセル開度Accpの増加速度(単位時間当たりの増加量)をモニタし、アクセル開度Accpの増加速度が所定値を超えているか否かを判別する。
前記S110において肯定判定された場合は、ECU13は、S116及びS117において吸気絞り弁12の開閉動作及び運転移行処理を終了させた後に、本ルーチンの実行を終了する。
内燃機関1の加速運転時に吸気絞り弁12が開閉動作を継続すると、燃料噴射量の増量に対して吸入空気量が過小となるため、内燃機関1の発生トルクが要求トルクより少なくなる、或いはスモークが増加する等の不具合を発生する可能性がある。これに対し、内燃機関1の加速運転要求が発生した時点で吸気絞り弁12の開閉動作及び運転移行処理が中止されると、吸入空気量の不足が回避されるため、ドライバビリティの低下や排気エミッションの悪化を抑制することができる。
一方、前記S110において否定判定された場合は、ECU13は、S111へ進む。S111では、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第2の所定時間T2以上であるか否かを判別する。第2の所定時間T2は、前述した図3における期間P1と期間P2の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10に対する指令値を出力した時点から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等となる時点までの時間(図3中のt1〜t3までの時間)に相当する。この第2の所定時間T2は、予め実験的に求められている。
尚、ECU13は、前記S111において、エアフローメータ14の測定値から実GNを求め、求められた実GNが目標吸入空気量GN1と等しいか否かを判別するようにしてもよい。
前記S111において否定判定された場合(C<T2)は、ECU13は、前述したS110以降の処理を再度実行する。一方、前記S111において肯定判定された場合(C≧T2)は、ECU13は、S112へ進む。
S112では、ECU13は、吸気絞り弁12の開閉動作を終了させる。吸気絞り弁12の開閉動作が終了すると、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化が図られなくなるが、気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に近似しているため、燃料の過早着火が抑制される。
S113では、ECU13は、タイマCの計測時間が第3の所定時間T3以上であるか否かを判別する。第3の所定時間T3は、前述した図3における期間P1と期間P3の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間(図3中のt1〜t2までの時間)と運転移行処理
の実行時間(図3中のt2〜t4まで時間)とを加算した時間に相当する。
尚、ECU13は、前記S113において、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角したか否か、或いはパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminまで減少したか否かを判別するようにしてもよい。
前記S113において否定判定された場合(C<T3)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第3の所定時間T3以上となるまでS113の処理を繰り返し実行する。一方、前記S113において肯定判定された場合(C≧T3)は、ECU13は、S114へ進む。
S114では、ECU13は、運転移行処理の実行を終了する。続いて、ECU13は、S115においてタイマCの計測時間を零にリセットして本ルーチンの実行を終了する。
以上述べたようにECU13が図4の燃焼制御ルーチンを実行すると、本発明に係る小径化手段、噴射制御手段、及び切換制御手段が実現される。依って、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料の過早着火又は過早着火による弊害を抑制しつつ移行期間を短縮することができる。更に、吸気絞り弁12の開閉動作が行われると、EGR経路を流れるガスの流速が変動するため、EGR経路内に付着した未燃燃料成分や煤などを取り除くことができ、通路断面積の狭小化やEGR弁10の固着を抑制又は解消することも可能となる。また、運転移行処理の実行中に内燃機関1が加速運転された場合には吸気絞り弁12の開閉動作が中止されるため、ドライバビリティの低下や排気エミッションの悪化を抑制することもできる。
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について図5〜図7に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例と本実施例との相違点は、前述した第1の実施例では気筒2内へ流入するガスの流速を変動させる場合に吸気絞り弁12を開閉動作させるのに対し、本実施例では、気筒2内へ流入するガスの流速を変動させる場合にEGR弁10を開閉動作させる点にある。
EGR弁10が開閉動作させられると、EGR経路を介して気筒2内へ導入されるガスの流速が変動するとともに大気中から吸気通路4を介して気筒2内へ導入される空気の流速も変動する。
依って、前述した実施例1と同様に、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化を図ることができ、以て予混合気中における燃料過濃な部分を減少或いは無くすことが可能となる。
ここで、EGR弁10の開閉動作時期について図5に基づいて説明する。図5は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際のEGR弁10の開閉動作時期を示すタイミングチャートである。
内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時(図5中のt1)には、ECU13は、前述した第1の実施例と同様に、内燃機関1を一旦拡散燃焼運転させる。更に、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時t1に、EGRガス量が目標EGRガス量となるように吸気絞り弁12を制御する。その際、ECU13は、気筒2
内へ必要最小限の空気が吸入される範囲内で吸気絞り弁12の開度を最小の開度に設定してもよい。
尚、ECU13が吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点t1から実GNが変化し始める時(図5中のt5)までには応答遅れ(図5中の期間P4)が生じる。このため、ECU13は、上記した期間P4においては、内燃機関1の拡散燃焼運転を継続させるように燃料噴射弁3を制御する。
ECU13は、実GNが変化し始める時t5にEGR弁10の開閉動作を開始させるとともに運転移行処理の実行を開始する。運転移行処理は、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角し且つパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminに減少した時点(図5中のt6)まで行われる。
上記した運転移行処理の実行期間(図5中のt5〜t6までの期間P5)中はEGRガス量が目標EGRガス量より少ないが、EGR弁10が開閉動作することにより燃料の分裂、小径化(微粒化)、及び拡散が図られるため、過早着火の発生が抑制され或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
尚、EGR弁10の開閉動作が長期間にわたって繰り返された場合、言い換えればEGR弁10の開閉動作が多数回繰り返された場合には、運転移行処理の実行期間内にEGRガス量が目標EGRガス量まで増加しない可能性がある。
このため、EGRガス量の増加速度が過剰に低下しない範囲でEGR弁10を開閉動作させることが好ましい。そこで、本実施例では、ECU13は、EGR弁10の開閉動作を所定回数(図5の例では1回)に制限するようにしている。
このようにEGR弁10の開閉動作回数が制限されると、EGRガス量の増加速度を過剰に低下させることなく、気筒2内へ導入されるガスの流速を変動させることができる。
また、EGR弁10の開閉動作中に内燃機関1の加速運転要求が発生した場合には、ECU13は、EGR弁10の開閉動作を中止することにより、内燃機関1の吸入空気量が不足しないようにしている。
次に、本実施例における燃焼制御について図6に沿って説明する。図6は、本実施例における燃焼制御ルーチンを示すフローチャートである。燃焼制御ルーチンは、予めECU13のROMに記憶されているルーチンであり、ECU13によって所定時間毎に繰り返し実行される。
図6の燃焼制御ルーチンにおいて、前述した第1の実施例における図4の燃焼制御ルーチンと同様の処理については同等の符号を付してある。
ECU13は、S101〜S104の処理を実行した後にS205へ進む。S205では、ECU13は、吸気絞り弁12の開度が目標開度となるように吸気絞り弁12を制御する。目標開度は、内燃機関1へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量となる開度、言い換えれば内燃機関1の実GNが目標吸入空気量GN1となる開度である。
S206では、タイマCを起動させる。このタイマCは、ECU13が吸気絞り弁12を目標開度に制御するための指令値を出力した時点からの経過時間を計時するタイマである。
S207では、ECU13は、前記タイマCの計測時間Cが第4の所定時間T4以上であるか否かを判別する。すなわち、ECU13は、S207において、吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から第4の所定時間T4が経過したか否かを判別する。第4の所定時間T4は、前述した図5における期間P4と同等であり、ECU13が吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間に相当する。この第4の所定時間T4は、予め実験的に求められている。
前記S207において否定判定された場合(C<T4)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが前記第4の所定時間T4以上となるまでS207の処理を繰り返し実行する。一方、前記S207において肯定判定された場合(C≧T4)は、ECU13は、S108へ進む。
S108では、ECU13は、運転移行処理の実行を開始する。次いで、ECU13は、S209においてEGR弁10の開閉動作を開始する。この場合、EGRガス量が目標EGRガス量に対して過少となるが、EGR弁10の開閉動作により燃料の小径化及び微粒化が図られるため、燃料の過早着火が抑制される。
S110では、ECU13は内燃機関1の加速運転要求が発生したか否かを判別する。S110において肯定判定された場合は、ECU13は、S216及びS117においてEGR弁10の開閉動作及び運転移行処理を終了させた後に、本ルーチンの実行を終了する。内燃機関1の加速運転要求が発生した時点でEGR弁10の開閉動作及び運転移行処理が中止されると、吸入空気量の不足が回避されるため、ドライバビリティの低下や排気エミッションの悪化を抑制することができる。
一方、前記S110において否定判定された場合は、ECU13は、S211へ進む。S211では、ECU13は、EGR弁10の開閉動作回数が所定回数(例えば、1回)に達したか否かを判別する。
前記S211において否定判定された場合は、ECU13は、前述したS110以降の処理を再度実行する。一方、前記S211において肯定判定された場合は、ECU13は、S212へ進む。
S212では、ECU13は、EGR弁10の開閉動作を終了させる。EGR弁10の開閉動作が終了すると、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化が図られなくなるが、気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に近似しているため、燃料の過早着火が抑制される。
S213では、ECU13は、タイマCの計測時間が第5の所定時間T5以上であるか否かを判別する。第5の所定時間T5は、前述した図5における期間P4と期間P5の総和と同等であり、ECU13が吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間(図5中のt1〜t5までの所要時間)と運転移行処理の実行時間(図5中のt5〜t6まで所要時間)とを加算した時間に相当する。
尚、ECU13は、前記S213において、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角したか否か、或いはパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminまで減少したか否かを判別するようにしてもよい。
前記S213において否定判定された場合(C<T5)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第5の所定時間T5以上となるまでS213の処理を繰り返し実行する。一方、前記S213において肯定判定された場合(C≧T5)は、ECU13は、S114
とS115の処理を順次実行する。
以上述べたようにECU13が図6の燃焼制御ルーチンを実行すると、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料の過早着火又は過早着火による弊害を抑制しつつ移行期間を短縮することができる。更に、EGR弁10の開閉動作が行われると、EGR経路を流れるガスの流速が変動するため、EGR経路内に付着した未燃燃料成分や煤などを取り除くことができ、通路断面積の狭小化やEGR弁10の固着を抑制又は解消することも可能となる。また、運転移行処理の実行中に内燃機関1が加速運転された場合にはEGR弁10の開閉動作が中止されるため、ドライバビリティの低下や排気エミッションの悪化を抑制することもできる。
尚、図7に示すように、EGRクーラ11を迂回するようにEGR通路9に接続された第1バイパス通路18と、EGRクーラ11の導通と第1バイパス通路18の導通を切り換える第1流路切換弁19とを備えた内燃機関1においては、前述したEGR弁10の開閉動作の代わりに第1流路切換弁19の切換動作が行われるようにしてもよい。
EGRクーラ11と第1バイパス通路18とは圧力損失の大きさが相違するため、上記したように第1流路切換弁19の切換動作が行われると、EGRガス経路を介して気筒2内へ導入されるガスの流速が変化し、それに応じて吸気通路4を介して気筒2内へ導入される空気の流速も変化するようになる。
依って、第1流路切換弁19の切換動作が行われた場合もEGR弁10の開閉動作が行われた場合と同様の効果を得ることが可能となる。また、第1流路切換弁19の切換動作は、EGR弁10の開閉動作に比べ、EGRガス量の与える影響が少ないため、前述した運転移行処理実行期間の略全域にわたって行うことも可能である。
更に、第1流路切換弁19の切換動作期間中は、EGRクーラ11を経由するEGRガス量が減少するため、EGRクーラ11の通路に付着する未燃燃料成分量を減少させることができるとともに、第1流路切換弁19の固着を抑制或いは解消することも可能となる。
<実施例3>
次に、本発明の第3の実施例について図8〜図10に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例と本実施例との相違点は、前述した第1の実施例では気筒2内へ流入するガスの流速を変動させる場合に吸気絞り弁12を開閉動作させるのに対し、本実施例では可変容量型ターボチャージャのノズルベーンを開閉動作させる点にある。
図8は、本実施例における内燃機関の概略構成を示す図である。本実施例における内燃機関1の吸排気通路4、7には、可変容量型のターボチャージャ500が配置されている。
可変容量型ターボチャージャ500は、タービンハウジング51に取り付けられたノズルベーン502の開度を変更することにより、タービンハウジング51とタービンホイールとの間の通路(ノズル通路)の容積を変更する過給機である。ノズルベーン502はアクチュエータ503によって開閉駆動され、アクチュエータ503はECU13によって電気的に制御される。その他の構成は、前述した第1の実施例で述べた内燃機関と同様である。
このように構成された内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する場合には、ECU13は、前記ノズルベーン502を開閉動作(全開と全閉を繰り返す動作)させる。
ノズルベーン502が開閉動作させられると、吸気の過給圧が増減を繰り返すため、吸気通路4を介して気筒2内へ流入する空気の流速が変動する。更に、過給圧が増減されると、EGR通路9の上流端(EGR通路9と排気通路7の接続部位近傍)と下流端(EGR通路9と吸気通路4の接続部位近傍)との圧力差が変動するため、EGRガス経路を介して気筒2内へ導入されるガスの流速も変動する。
従って、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際にノズルベーン502が開閉動作すると、気筒2内へ流入するガスの流速が変動するため、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化を図ることができる。その結果、混合気中における燃料過濃な部分を減少或いは無くすことが可能となる。
ここで、ノズルベーン502の開閉動作時期について図9に基づいて説明する。図9は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際のノズルベーン502の開閉動作時期を示すタイミングチャートである。
内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時(図9中のt1)には、ECU13は、前述した第1の実施例と同様に、内燃機関1を一旦拡散燃焼運転させる。更に、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時t1に、EGRガス量が目標EGRガス量となるようにEGR弁10及び吸気絞り弁12を制御する。その際、ECU13は、気筒2内へ必要最小限の空気が吸入される範囲内で吸気絞り弁12の開度を最小且つEGR弁10の開度を最大に設定してもよい。
尚、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点t1から実GNが変化し始める時(図9中のt7)までには応答遅れ(図9中の期間P6)が生じる。このため、ECU13は、上記した期間P6においては、内燃機関1の拡散燃焼運転を継続させるように燃料噴射弁3を制御する。
ECU13は、実GNが変化し始める時t7にノズルベーン502の開閉動作を開始させるとともに運転移行処理の実行を開始する。ノズルベーン502の開閉動作は、実GNが変化し始める時t7から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等になる時(図9中のt8)までの期間(図9中の期間P7)行われる。また、運転移行処理は、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角し且つパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminに減少した時点(図9中のt9)まで行われる。
上記した運転移行処理の実行期間(図9中のt7〜t9までの期間P8)中はEGRガス量が目標EGRガス量より少ないが、ノズルベーン502の開閉動作により燃料の分裂、小径化(微粒化)、及び拡散が図られるため、過早着火の発生が抑制され或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
次に、本実施例における燃焼制御について図10に沿って説明する。図10は、本実施例における燃焼制御ルーチンを示すフローチャートである。燃焼制御ルーチンは、予めECU13のROMに記憶されているルーチンであり、ECU13によって所定時間毎に繰り返し実行される。
図10の燃焼制御ルーチンにおいて、前述した第1の実施例における図4の燃焼制御ル
ーチンと同様の処理については同等の符号を付してある。
ECU13は、S101〜S104の処理を実行した後にS305へ進む。S305では、ECU13は、EGR弁10及び吸気絞り弁12を各々の目標開度に制御する。EGR弁10及び吸気絞り弁12の各々の目標開度は、内燃機関1へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量となる開度、言い換えれば実GNが目標吸入空気量GN1となる開度である。
S306では、タイマCを起動させる。このタイマCは、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12を目標開度に制御するための指令値を出力した時点からの経過時間を計時するタイマである。
S307では、ECU13は、前記タイマCの計測時間Cが第6の所定時間T6以上であるか否かを判別する。すなわち、ECU13は、S307において、EGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から第6の所定時間T6が経過したか否かを判別する。第6の所定時間T6は、前述した図9における期間P6と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間に相当する。この第6の所定時間T6は、予め実験的に求められている。
前記S307において否定判定された場合(C<T6)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが前記第6の所定時間T6以上となるまでS307の処理を繰り返し実行する。一方、前記S307において肯定判定された場合(C≧T6)は、ECU13は、S108へ進む。
S108では、ECU13は、運転移行処理の実行を開始する。次いで、ECU13は、S309においてノズルベーン502の開閉動作を開始する。この場合、EGRガス量が目標EGRガス量に対して過少となるが、ノズルベーン502の開閉動作により燃料の小径化及び微粒化が図られるため、燃料の過早着火および/または過早着火による振動・騒音の発生が抑制される。
S110では内燃機関1の加速運転要求が発生したか否かが判別される。このS110において肯定判定された場合は、ECU13は、S316及びS117においてノズルベーン502の開閉動作及び運転移行処理を終了させた後に、本ルーチンの実行を終了する。内燃機関1の加速運転要求が発生した時点でノズルベーン502の開閉動作及び運転移行処理が中止されると、過給圧の上昇に遅れが生じ、或いは吸入空気量が不足する等の不具合を回避することができる。
一方、前記S110において否定判定された場合は、ECU13は、S311へ進む。S311では、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第7の所定時間T7以上であるか否かを判別する。第7の所定時間T7は、前述した図9における期間P6と期間P7の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等となる時点までの時間(図9中のt1〜t8までの時間)に相当する。この第7の所定時間T7は、予め実験的に求められている。
尚、ECU13は、前記S311において、エアフローメータ14の測定値から実GNを求め、求められた実GNが目標吸入空気量GN1と等しいか否かを判別するようにしてもよい。
前記S311において否定判定された場合(C<T7)は、ECU13は、前述したS110以降の処理を再度実行する。一方、前記S311において肯定判定された場合(C≧T7)は、ECU13は、S312へ進む。
S312では、ECU13は、ノズルベーン502の開閉動作を終了させる。ノズルベーン502の開閉動作が終了すると、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化が図られなくなるが、気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に近似しているため、燃料の過早着火が抑制される。
S313では、ECU13は、タイマCの計測時間が第8の所定時間T8以上であるか否かを判別する。第8の所定時間T8は、前述した図9における期間P6と期間P8の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間(図9中のt1〜t7までの所要時間)と運転移行処理の実行時間(図9中のt7〜t9まで所要時間)とを加算した時間に相当する。
尚、ECU13は、前記S313において、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角したか否か、或いはパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminまで減少したか否かを判別するようにしてもよい。
前記S313において否定判定された場合(C<T8)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第8の所定時間T8以上となるまでS313の処理を繰り返し実行する。一方、前記S313において肯定判定された場合(C≧T8)は、ECU13は、S114とS115の処理を順次実行する。
以上述べたようにECU13が図10の燃焼制御ルーチンを実行すると、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料の過早着火又は過早着火による弊害を抑制しつつ移行期間を短縮することができる。更に、ノズルベーン502の開閉動作が行われると、EGR経路を流れるガスの流速が変動するため、EGR経路の通路断面積の狭小化、EGR弁10の固着、及びノズルベーン502の固着を抑制或いは解消することも可能となる。また、運転移行処理の実行中に内燃機関1が加速運転された場合にはノズルベーン502の開閉動作が中止されるため、ドライバビリティの低下や排気エミッションの悪化を抑制することもできる。
<実施例4>
次に、本発明の第4の実施例について図11〜図13に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例と本実施例との相違点は、前述した第1の実施例では気筒2内へ流入するガスの流速を変動させる場合に吸気絞り弁12を開閉動作させるのに対し、本実施例では吸気流制御弁の開度を変更する点にある。
図11は、本実施例における内燃機関の吸気系の概略構成を示す図である。本実施例における内燃機関1の吸気通路4は、インテークマニフォルド40を具備している。インテークマニフォルド40は、気筒数と同数(図11の例では4本)の枝管41に分岐され、各枝管41は更に2本の分岐管41a,41bに分岐されている。
2本の分岐管41a,41bの一方には、スワールコントロールバルブ(SCV)42が設けられている。スワールコントロールバルブ(SCV)42は、気筒2内にスワール
流を生起する吸気流制御弁である。その他の構成は、前述した第1の実施例で述べた内燃機関と同様である。
このように構成された内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する場合には、ECU13は、前記スワールコントロールバルブ(SCV)42を開閉動作(全開と全閉を繰り返す動作)させる。
スワールコントロールバルブ(SCV)42が開閉動作させられると、吸気抵抗の大きさが変化するため、気筒2内へ流入する新気(空気)の流速が変化するとともにEGR経路を介して気筒2内へ流入するEGRガスの流速も変化する。
従って、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際にスワールコントロールバルブ(SCV)42が開閉動作すると、気筒2内へ流入するガスの流速及び流れ方向が変動する。このため、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化を図ることができる。その結果、混合気中における燃料過濃な部分を減少或いは無くすことが可能となる。
ここで、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作時期について図12に基づいて説明する。図12は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際のスワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作時期を示すタイミングチャートである。
内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時(図12中のt1)には、ECU13は、前述した第1の実施例と同様に、内燃機関1を一旦拡散燃焼運転させる。更に、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時t1に、EGRガス量が目標EGRガス量となるようにEGR弁10及び吸気絞り弁12を制御する。その際、ECU13は、気筒2内へ必要最小限の空気が吸入される範囲内で吸気絞り弁12の開度を最小且つEGR弁10の開度を最大に設定してもよい。
尚、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点t1から実GNが変化し始める時(図12中のt10)までには応答遅れ(図12中の期間P9)が生じる。このため、ECU13は、上記した期間P9においては、内燃機関1の拡散燃焼運転を継続させるように燃料噴射弁3を制御する。
ECU13は、実GNが変化し始める時t10にスワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作を開始させるとともに運転移行処理の実行を開始する。スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作は、実GNが変化し始める時t10から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等になる時(図12中のt11)までの期間(図12中の期間P10)行われる。また、運転移行処理は、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角し且つパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminに減少した時点(図12中のt12)まで行われる。
上記した運転移行処理の実行期間(図12中のt10〜t12までの期間P11)中はEGRガス量が目標EGRガス量より少ないが、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作により燃料の分裂、小径化(微粒化)、及び拡散が図られるため、過早着火の発生が抑制され或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
次に、本実施例における燃焼制御について図13に沿って説明する。図13は、本実施例における燃焼制御ルーチンを示すフローチャートである。燃焼制御ルーチンは、予めECU13のROMに記憶されているルーチンであり、ECU13によって所定時間毎に繰
り返し実行される。
図13の燃焼制御ルーチンにおいて、前述した第1の実施例における図4の燃焼制御ルーチンと同様の処理については同等の符号を付してある。
ECU13は、S101〜S104の処理を実行した後にS405へ進む。S405では、ECU13は、EGR弁10及び吸気絞り弁12を各々の目標開度に制御する。EGR弁10及び吸気絞り弁12の各々の目標開度は、内燃機関1へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量となる開度、言い換えれば実GNが目標吸入空気量GN1となる開度である。
S406では、タイマCを起動させる。このタイマCは、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12を目標開度に制御するための指令値を出力した時点からの経過時間を計時するタイマである。
S407では、ECU13は、前記タイマCの計測時間Cが第9の所定時間T9以上であるか否かを判別する。すなわち、ECU13は、S407において、EGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から第9の所定時間T9が経過したか否かを判別する。第9の所定時間T9は、前述した図12における期間P9と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間に相当する。この第9の所定時間T9は、予め実験的に求められている。
前記S407において否定判定された場合(C<T9)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが前記第9の所定時間T9以上となるまでS407の処理を繰り返し実行する。一方、前記S407において肯定判定された場合(C≧T9)は、ECU13は、S108へ進む。
S108では、ECU13は、運転移行処理の実行を開始する。次いで、ECU13は、S409においてスワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作を開始する。この場合、EGRガス量が目標EGRガス量に対して過少となるが、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作により燃料の小径化及び微粒化が図られるため、燃料の過早着火および/または過早着火による振動・騒音の発生が抑制される。
S110では内燃機関1の加速運転要求が発生したか否かが判別される。このS110において肯定判定された場合は、ECU13は、S416及びS117においてスワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作及び運転移行処理を終了させた後に、本ルーチンの実行を終了する。内燃機関1の加速運転要求が発生した時点でスワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作及び運転移行処理が中止されると、吸入空気量が不足する等の不具合を回避することができる。
一方、前記S110において否定判定された場合は、ECU13は、S411へ進む。S411では、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第10の所定時間T10以上であるか否かを判別する。第10の所定時間T10は、前述した図12における期間P9と期間P10の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等となる時点までの時間(図12中のt1〜t11までの時間)に相当する。この第10の所定時間T10は、予め実験的に求められている。
尚、ECU13は、前記S411において、エアフローメータ14の測定値から実GN
を求め、求められた実GNが目標吸入空気量GN1と等しいか否かを判別するようにしてもよい。
前記S411において否定判定された場合(C<T10)は、ECU13は、前述したS110以降の処理を再度実行する。一方、前記S411において肯定判定された場合(C≧T10)は、ECU13は、S412へ進む。
S412では、ECU13は、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作を終了させる。スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作が終了すると、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化が図られなくなるが、気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に近似しているため、燃料の過早着火が抑制される。
S413では、ECU13は、タイマCの計測時間が第11の所定時間T11以上であるか否かを判別する。第11の所定時間T11は、前述した図12における期間P9と期間P11の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間(図9中のt1〜t7までの所要時間)と運転移行処理の実行時間(図12中のt10〜t12まで所要時間)とを加算した時間に相当する。
尚、ECU13は、前記S413において、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角したか否か、或いはパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminまで減少したか否かを判別するようにしてもよい。
前記S413において否定判定された場合(C<T11)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第11の所定時間T11以上となるまでS413の処理を繰り返し実行する。一方、前記S413において肯定判定された場合(C≧T11)は、ECU13は、S114とS115の処理を順次実行する。
以上述べたようにECU13が図13の燃焼制御ルーチンを実行すると、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料の過早着火又は過早着火による弊害を抑制しつつ移行期間を短縮することができる。更に、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作が行われると、EGR経路を流れるガスの流速が変動するため、EGR経路の通路断面積の狭小化、EGR弁10の固着、及びスワールコントロールバルブ(SCV)42の固着を抑制或いは解消することも可能となる。また、運転移行処理の実行中に内燃機関1が加速運転された場合にはスワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作が中止されるため、ドライバビリティの低下や排気エミッションの悪化を抑制することもできる。
尚、本実施例では、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際にスワールコントロールバルブ(SCV)42が開閉動作させられる例について述べたが、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開度が減少させられるようにしてもよい。この場合、気筒2内へ流入するガスの流速が増加するとともに気筒2内にスワール流が生起されるため、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化を図ることができる。
その際、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開度は、EGR率の変化に応じて可変にされてもよい。例えば、前述した図12において実GNが変化し始める時(図12中のt10)にスワールコントロールバルブ(SCV)42を全閉させ、その後は時間の経過とともにスワールコントロールバルブ(SCV)42の開度を増加させるようにし
てもよい。
<実施例5>
次に、本発明の第5の実施例について図14〜図15に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例と本実施例との相違点は、前述した第1の実施例では気筒2内へ流入するガスの流速を変動させることにより燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化或いは微粒化を図っているのに対し、本実施例では燃料噴射弁3の噴射圧力を高めることにより燃料の小径化および/または微粒化を図る点にある。
燃料噴射弁3の噴射圧力が高められると、燃料の推力が高まるため、燃料と気筒2内のガスとの衝突エネルギが大きくなる。その結果、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化および/または微粒化が促進される。
従って、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に燃料噴射弁3の噴射圧力が高められると、混合気中における燃料過濃な部分を減少或いは無くすことが可能となる。
尚、燃料噴射弁3の噴射圧力を高める方法としては、燃料噴射弁3と連通するコモンレールの圧力(レール圧)を高める方法を例示することができる。詳細には、レール圧が所望の圧力に到達するまでリリーフ弁を閉弁する方法、若しくは燃料ポンプの吐出圧力を高める方法等が考えられる。
ところで、燃料噴射弁3の噴射圧力が高まると、該燃料噴射弁3から単位時間当たりに噴射される燃料量が増加する。このため、噴射圧力の変更前後における噴射期間が同等であると、燃料噴射弁3から噴射される燃料量が不要に増加して内燃機関1のトルク変動等が発生する可能性もある。
これに対し、ECU13は、燃料噴射弁3の噴射圧力を変更する場合に、噴射圧力が高くなるほど噴射期間を減少させる。これにより、内燃機関1のトルク変動等を併発することなく、燃料の小径化および/または微粒化を図ることが可能となる。更に、燃料噴射弁3の噴射期間が短縮されると、燃料噴射弁3から噴射された燃料と気筒2内のガスとの混合に費やすことができる時間が長くなるため、燃料とガスが均質に混合するようになる。
ここで、燃料噴射弁3の噴射圧力を変更する手順について図14に基づいて説明する。図14は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際の噴射圧力の変更時期を示すタイミングチャートである。
内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時(図14中のt1)には、ECU13は、前述した第1の実施例と同様に、内燃機関1を一旦拡散燃焼運転させる。更に、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時t1に、EGRガス量が目標EGRガス量となるようにEGR弁10及び吸気絞り弁12を制御する。その際、ECU13は、気筒2内へ必要最小限の空気が吸入される範囲内で吸気絞り弁12の開度を最小且つEGR弁10の開度を最大に設定してもよい。
尚、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点t1から実GNが変化し始める時(図14中のt13)までには応答遅れ(図14中の期間P12)が生じる。このため、ECU13は、上記した期間P12においては、内燃機関1
の拡散燃焼運転を継続させるように燃料噴射弁3を制御する。
ECU13は、実GNが変化し始める時t13に、燃料噴射弁3の噴射圧力を予混合燃焼運転時の噴射圧力Pinj2より高く設定するとともに運転移行処理の実行を開始する。上記した噴射圧力の制御は、実GNが変化し始める時t13から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等になる時(図14中のt14)までの期間(図14中の期間P13)行われる。また、運転移行処理は、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角し且つパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminに減少した時点(図14中のt15)まで行われる。
上記した運転移行処理の実行期間(図14中のt13〜t15までの期間P15)中はEGRガス量が目標EGRガス量より少ないが、燃料噴射弁3の噴射圧力が予混合燃焼運転時の噴射圧力Pinj2より高められているため、燃料の小径化(微粒化)及び拡散が図られる。その結果、燃料の過早着火が抑制され或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
尚、前記した期間P13において、燃料噴射弁3の噴射圧力は、EGR率が低くなるほど高く設定されるとともに、EGR率が高くなるほど低くなるように設定されてもよい。具体的には、ECU13は、図14において実GNが変化し始める時(図14中のt13)は噴射圧力を拡散燃焼運転時の噴射圧力Pinj1と同等に設定し、その後は時間の経過とともに噴射圧力を低下させるようにしてもよい。
このように噴射圧力がEGR率に応じて可変にされると、過早着火及び過早着火に起因した騒音・振動の発生を抑制することができる上、気筒2のシリンダボア壁面に付着する燃料量を最小限に抑えることが可能となる。
次に、本実施例における燃焼制御について図15に沿って説明する。図15は、本実施例における燃焼制御ルーチンを示すフローチャートである。燃焼制御ルーチンは、予めECU13のROMに記憶されているルーチンであり、ECU13によって所定時間毎に繰り返し実行される。
図15の燃焼制御ルーチンにおいて、前述した第1の実施例における図4の燃焼制御ルーチンと同様の処理については同等の符号を付してある。
ECU13は、S101〜S104の処理を実行した後にS505へ進む。S505では、ECU13は、EGR弁10及び吸気絞り弁12を各々の目標開度に制御する。EGR弁10及び吸気絞り弁12の各々の目標開度は、内燃機関1へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量となる開度、言い換えれば実GNが目標吸入空気量GN1となる開度である。
S506では、タイマCを起動させる。このタイマCは、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12を目標開度に制御するための指令値を出力した時点からの経過時間を計時するタイマである。
S507では、ECU13は、前記タイマCの計測時間Cが第12の所定時間T12以上であるか否かを判別する。すなわち、ECU13は、S507において、EGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から第12の所定時間T12が経過したか否かを判別する。第12の所定時間T12は、前述した図14における期間P12と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間に相当する。この第12の所定時間
T12は、予め実験的に求められている。
前記S507において否定判定された場合(C<T12)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが前記第12の所定時間T12以上となるまでS507の処理を繰り返し実行する。一方、前記S507において肯定判定された場合(C≧T12)は、ECU13は、S108へ進む。
S108では、ECU13は、運転移行処理の実行を開始する。次いで、ECU13は、S509において燃料噴射弁3の噴射圧力制御を開始する。具体的には、ECU13は、噴射圧力を予混合燃焼運転時の噴射圧力より高く設定するとともに、噴射期間を噴射圧力が高くなるほど短く設定する。この場合、EGRガス量が目標EGRガス量に対して過少となるが、燃料噴射弁3の噴射圧力が高められることにより燃料の小径化及び微粒化が図られるため、燃料の過早着火および/または過早着火による振動・騒音の発生が抑制される。
S110では内燃機関1の加速運転要求が発生したか否かが判別される。このS110において肯定判定された場合は、ECU13は、S516及びS117において前記噴射圧力制御及び運転移行処理を終了させた後に、本ルーチンの実行を終了する。内燃機関1の加速運転要求が発生した時点で噴射圧力制御及び運転移行処理が中止されると、噴射圧力が機関負荷に適した圧力となる。
一方、前記S110において否定判定された場合は、ECU13は、S511へ進む。S511では、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第13の所定時間T13以上であるか否かを判別する。第13の所定時間T13は、前述した図14における期間P12と期間P13の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが目標吸入空気量GN1と略同等となる時点までの時間(図14中のt1〜t14までの時間)に相当する。この第13の所定時間T13は、予め実験的に求められている。
尚、ECU13は、前記S511において、エアフローメータ14の測定値から実GNを求め、求められた実GNが目標吸入空気量GN1と等しいか否かを判別するようにしてもよい。
前記S511において否定判定された場合(C<T13)は、ECU13は、前述したS110以降の処理を再度実行する。一方、前記S511において肯定判定された場合(C≧T13)は、ECU13は、S512へ進む。
S512では、ECU13は、噴射圧力制御を終了する。噴射圧力制御が終了すると、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化及び微粒化が図られなくなるが、気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に近似しているため、燃料の過早着火が回避される。
S513では、ECU13は、タイマCの計測時間が第14の所定時間T14以上であるか否かを判別する。第14の所定時間T14は、前述した図14における期間P12と期間P14の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間(図14中のt1〜t13までの所要時間)と運転移行処理の実行時間(図14中のt13〜t15まで所要時間)とを加算した時間に相当する。
尚、ECU13は、前記S513において、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射
時期まで進角したか否か、或いはパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminまで減少したか否かを判別するようにしてもよい。
前記S513において否定判定された場合(C<T14)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第14の所定時間T14以上となるまでS513の処理を繰り返し実行する。一方、前記S513において肯定判定された場合(C≧T14)は、ECU13は、S114とS115の処理を順次実行する。
以上述べたようにECU13が図15の燃焼制御ルーチンを実行すると、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料の過早着火又は過早着火による弊害を抑制しつつ移行期間を短縮することができる。また、運転移行処理の実行中に内燃機関1が加速運転された場合には噴射圧力及び噴射期間が通常の噴射圧力及び噴射期間に戻されるため、燃料噴射弁3の噴射状態が機関運転状態に対して不適当な状態に陥ることもない。
<実施例6>
次に、本発明の第6の実施例について図16〜図18に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例ではEGR通路がタービンハウジングの上流からコンプレッサハウジングの下流へガスを導くように構成されている場合の燃焼制御について述べたが、本実施例ではEGR通路が排気浄化触媒の下流からコンプレッサハウジングの上流へガスを導くように構成されている場合の燃焼制御について述べる。
図16は、本実施例における内燃機関の概略構成を示す図である。図16において、排気通路7の排気浄化触媒8より下流の部位と吸気通路4のコンプレッサハウジング50より上流の部位とは、EGR通路90により接続されている。EGR通路90の途中にはEGR弁100とEGRクーラ110が配置されている。
このように構成された内燃機関1では、EGRガス経路が前述した第1の実施例におけるEGRガス経路より長くなるため、該内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に達するまでの所要時間が一層長くなる。
そこで、本実施例では、インタークーラ6を迂回する第2バイパス通路20と、インタークーラ6と第2バイパス通路20の何れか一方を選択的に導通させる第2流路切換弁21を吸気通路4に設け、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際には、前記第2バイパス通路20が導通するように第2流路切換弁21が制御されるようにした。
この場合、EGRガス経路が短縮されるため、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に気筒2内へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量に達するまでの所要時間が過剰に長くなることを回避することができる。
また、ECU13は、内燃機関1をフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行させる際に前述した第1の実施例と同様の運転移行処理を行うが、運転移行処理の実行開始直後は気筒2内へ導入されるEGRガス量が極めて少ないため、前記第2流路切換弁21を切換動作(インタークーラ6の導通と第2バイパス通路20の導通を繰り返し切り換える動作)を行うようにしてもよい。
インタークーラ6と第2バイパス通路20は圧力損失が相違するため、第2流路切換弁21の切換動作が行われると、吸気通路4を介して気筒2内へ導入される空気の流速及びEGRガス経路を介して気筒2内へ導入されるガスの流速が変動する。その結果、燃料噴射弁3から噴射された燃料の分裂、小径化(微粒化)、及び拡散が図られるため、過早着火或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
ここで、第2流路切換弁21の切換動作時期について図17に基づいて説明する。図17は、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際の第2流路切換弁21の切換動作時期を示すタイミングチャートである。
内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時(図17中のt1)には、ECU13は、前述した第1の実施例と同様に、内燃機関1を一旦拡散燃焼運転させる。更に、ECU13は、内燃機関1がフューエルカット運転から復帰した時t1に、EGRガス量が目標EGRガス量となるようにEGR弁10及び吸気絞り弁12を制御する。その際、ECU13は、気筒2内へ必要最小限の空気が吸入される範囲内で吸気絞り弁12の開度を最小且つEGR弁10の開度を最大に設定してもよい。
尚、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点t1から実GNが変化し始める時(図17中のt16)までには応答遅れ(図17中の期間P15)が生じる。このため、ECU13は、上記した期間P15においては、内燃機関1の拡散燃焼運転を継続させるように燃料噴射弁3を制御する。
ECU13は、実GNが変化し始める時t16に第2流路切換弁21の切換動作(第2バイパス通路20が導通する開度とインタークーラ6が導通する開度を交互に切り換える動作)を開始するとともに、運転移行処理の実行を開始する。
上記した運転移行処理の実行期間(図17中のt16〜t17までの期間P16)中はEGRガス量が目標EGRガス量より少ないが、第2流路切換弁21が切換動作することにより燃料の分裂、小径化(微粒化)、及び拡散が図られるため、過早着火の発生が抑制され或いは過早着火による騒音や振動の発生が抑制されるようになる。
尚、第2流路切換弁21の切換動作が長期間にわたって繰り返された場合、言い換えれば第2流路切換弁21の切換動作が多数回繰り返された場合には、運転移行処理の実行期間においてEGRガス量の増加速度が低下する可能性がある。
このため、EGRガス量の増加速度が過剰に低下しない範囲で第2流路切換弁21の切換動作させることが好ましい。そこで、ECU13は、第2流路切換弁21の切換動作を所定回数(図17の例では1回)に制限するとともに、第2流路切換弁21の切換動作回数が所定回数に達した後は第2流路切換弁21を第2バイパス通路20が導通する状態(開度)に固定するようにしている。
第2バイパス通路20の長さはインタークーラ6内の通路に比して十分に短いため、第2流路切換弁21が第2バイパス通路20を導通させる開度に固定されれば、EGRガスの輸送遅れ時間(EGRガスが気筒2内へ到達するまでに要する時間)が短縮され、以てフューエルカット運転から予混合燃焼運転への移行を速やかに行うことができる。
従って、第2流路切換弁21の切換動作回数が所定回数に制限されると、EGRガス量の増加速度を過剰に低下させることなく、気筒2内へ導入されるガスの流速を変動させることができる。
また、第2流路切換弁21の切換動作中に内燃機関1の加速運転要求が発生した場合には、ECU13は、第2流路切換弁21の切換動作を中止するとともに該第2流路切換弁21をインタークーラ6が導通する状態に固定することにより、内燃機関1へ吸入されるガスの温度上昇や空気量の不足を防止するようにしている。
次に、本実施例における燃焼制御について図18に沿って説明する。図18は、本実施例における燃焼制御ルーチンを示すフローチャートである。燃焼制御ルーチンは、予めECU13のROMに記憶されているルーチンであり、ECU13によって所定時間毎に繰り返し実行される。
図18の燃焼制御ルーチンにおいて、前述した第1の実施例における図4の燃焼制御ルーチンと同様の処理については同等の符号を付してある。
ECU13は、S101〜S104の処理を実行した後にS605へ進む。S605では、ECU13は、EGR弁10及び吸気絞り弁12を各々の目標開度に制御する。EGR弁10及び吸気絞り弁12の各々の目標開度は、内燃機関1へ導入されるEGRガス量が目標EGRガス量となる開度、言い換えれば実GNが目標吸入空気量GN1となる開度である。
S606では、タイマCを起動させる。このタイマCは、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12を目標開度に制御するための指令値を出力した時点からの経過時間を計時するタイマである。
S607では、ECU13は、前記タイマCの計測時間Cが第15の所定時間T15以上であるか否かを判別する。すなわち、ECU13は、S607において、EGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から第15の所定時間T15が経過したか否かを判別する。第15の所定時間T15は、前述した図17における期間P15と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間に相当する。この第15の所定時間T15は、予め実験的に求められている。
前記S607において否定判定された場合(C<T15)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが前記第15の所定時間T15以上となるまでS607の処理を繰り返し実行する。一方、前記S607において肯定判定された場合(C≧T15)は、ECU13は、S108へ進む。
S108では、ECU13は、運転移行処理の実行を開始する。次いで、ECU13は、S609において第2流路切換弁21の切換動作を開始する。この場合、EGRガス量が目標EGRガス量に対して過少となるが、第2流路切換弁21の切換動作により燃料の小径化及び微粒化が図られるため、燃料の過早着火および/または過早着火による振動・騒音の発生が抑制される。
S110では内燃機関1の加速運転要求が発生したか否かが判別される。このS110において肯定判定された場合は、ECU13は、S616及びS117において第2流路切換弁21の開度をインタークーラ6が導通する開度に固定するとともに及び運転移行処理を終了させる。このように内燃機関1の加速運転要求が発生した時点で第2流路切換弁21の開度がインタークーラ6を導通させる開度に固定されるとともに運転移行処理が中止されると、過給圧の上昇によって内燃機関1の吸気温度が過昇温し、或いは吸入空気量が不足する等の不具合を回避することができる。
一方、前記S110において否定判定された場合は、ECU13は、S611へ進む。S611では、ECU13は、第2流路切換弁21の切換動作回数が所定回数(例えば、1回)に達したか否かを判別する。
前記S611において否定判定された場合は、ECU13は、前述したS110以降の処理を再度実行する。一方、前記S611において肯定判定された場合は、ECU13は、S612へ進む。
S612では、ECU13は、第2流路切換弁19の切換動作を終了させるとともに、該第2流路切換弁21の開度を第2バイパス通路20が導通する開度に制御する。第2流路切換弁21の切換動作後に該第2流路切換弁21の開度が第2バイパス通路20を導通させる開度に制御されると、EGRガス経路の短縮によりEGRガスの輸送遅れが最小限に抑えられるようになる。その結果、気筒2内へ導入されるEGRガス量が速やかに目標EGRガス量に到達するようになる。
S613では、ECU13は、タイマCの計測時間が第16の所定時間T16以上であるか否かを判別する。第16の所定時間T16は、前述した図17における期間P15と期間P16の総和と同等であり、ECU13がEGR弁10及び吸気絞り弁12に対する指令値を出力した時点から実GNが変化し始める時点までの応答遅れ時間(図17中のt1〜t17までの所要時間)と運転移行処理の実行時間(図17中のt16〜t17まで所要時間)とを加算した時間に相当する。
尚、ECU13は、前記S613において、メイン噴射時期が予混合燃焼運転用の噴射時期まで進角したか否か、或いはパイロット噴射量が燃料噴射弁3の最低噴射量Qpminまで減少したか否かを判別するようにしてもよい。
前記S613において否定判定された場合(C<T16)は、ECU13は、タイマCの計測時間Cが第16の所定時間T16以上となるまでS613の処理を繰り返し実行する。一方、前記S613において肯定判定された場合(C≧T16)は、ECU13は、S114とS115の処理を順次実行する。
以上述べたようにECU13が図18の燃焼制御ルーチンを実行すると、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料の過早着火又は過早着火による弊害を抑制しつつ移行期間を短縮することができる。
更に、第2流路切換弁21の切換動作が行われると、EGR経路を流れるガスの流速が変動するため、EGR経路やインタークーラ6の通路断面積の狭小化、EGR弁10の固着、吸気絞り弁12の固着、及び第2流路切換弁21の固着等を抑制或いは解消することも可能となる。
また、運転移行処理の実行中に内燃機関1が加速運転された場合には第2流路切換弁21の切換動作が中止されるとともに該第2流路切換弁21がインタークーラ6を導通させるように動作するため、吸気温度の上昇による過早着火の発生や吸入空気量の不足によるスモークの発生などを抑制することも可能となる。
尚、運転移行処理の実行時に第2流路切換弁21の切換動作の代わりに前述した第1〜第3の実施例で述べた吸気絞り弁12の開閉動作、EGR弁100の開閉動作、第1流路切換弁19の切換動作、可変容量型ターボチャージャのノズルベーンの開閉動作、スワールコントロールバルブ(SCV)42の開閉動作、或いは燃料噴射弁3の噴射圧力制御を
行うとともに、前記第2流路切換弁21を第2バイパス通路20が導通する状態に固定するようにしてもよい。
この場合、EGRガスの輸送遅れを最小限に抑えつつ運転移行処理実行時における燃料の過早着火や過早着火による振動・騒音の発生を抑えることが可能となる。
<実施例7>
次に、本発明の第7の実施例について説明する。ここでは、前述した第1〜第6の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1〜第6の実施例では、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行する際に、燃料噴射弁3から噴射された燃料の小径化および/または微粒化を図っている。
ところで、内燃機関1がフューエルカット運転から予混合燃焼運転へ移行し始める時は、気筒2内へ導入されるEGRガス量が極僅かであるため、上記した燃料の小径化および/または微粒化のみでは過早着火を抑制しきれない場合も想定される。
そこで、燃料噴射弁3の噴射時期を遅角させることにより、着火時期を所望の時期まで遅らせるようにしてもよい。具体的には、図19に示すように、運転移行処理においてメイン噴射時期を非線形に変化させるようにしてもよい。この場合、運転移行処理が開始(図19中のt18)された直後におけるメイン噴射時期の進角率(単位時間当たりの進角量)は、運転移行処理が終了(図19中のt19)する直前における進角率より低くなる。
その結果、気筒2内のEGRガス量が極めて少ない時にはメイン噴射時期が前述した第1〜第6の実施例に比して遅角されるため、燃料の着火時期が所望の時期に対して過剰に早まることを防止することができる。
尚、以上述べた第1〜第7の実施例は適宜組み合わせることができる。例えば、第5及び第7の実施例を他の実施例の少なくとも一つと組み合わせると、気筒2内に導入されるEGRガス量が極僅かな時であっても燃料の過早着火を抑制することができるため、フューエルカット運転後に行われる拡散燃焼運転の時間を短縮することも可能となる。