従来のカウンタウェイト装置の中には、本来のカウンタウェイトとして機能するカウンタウェイト本体に加え、当該カウンタウェイト本体を収容するためのスペースを囲むカウンタウェイトケースを備え、当該スペースから当該カウンタウェイト本体を抜き取るように吊り上げることが可能なものが、存在する。この種のカウンタウェイト装置において、特許文献1に記載される技術を適用することは困難である。
具体的に、前記のようなカウンタウェイトケースを備えたカウンタウェイト装置において、特許文献1に記載のようにカウンタウェイト本体の上面にそのままカメラを固定した場合、前記カウンタウェイトケースが前記カウンタウェイト本体とカウンタウェイト装置の外部との間に介在することにより、前記カウンタウェイト本体上のカメラからの良好な視界を遮る可能性がある。さらに、前記カウンタウェイト本体の外縁から前記カメラが僅かでも外向きに突出していると、当該カウンタウェイト本体を吊り上げる際に当該カメラが当該カウンタウェイトケースと干渉して破損に至る可能性が高い。
また、前記カメラを前記カウンタウェイト本体ではなく前記カウンタウェイトケースに不都合なく取付けることも困難である。前記カウンタウェイトケースの幅寸法は一般に小さいため、当該カウンタウェイトケースにカメラを取付けるにはその取付位置の自由度が極めて小さい。従って、当該カウンタウェイトケースにおいて好適な取付位置を設定することは難しい。例えば、カウンタウェイトケースに取付けられるカメラが当該カウンタウェイトケースの内側面を超えて少しでも内方に突出していると、当該カウンタウェイトケースの内側のスペースから吊り上げられるカウンタウェイト本体と干渉してしまうため、当該吊り上げの度に当該カメラを当該カウンタウェイトケースから脱着しなければならない不便が生ずる。逆に、このような不便を避けるために前記カメラ全体が前記カウンタウェイトケースの内側面よりも外側に位置するように当該カメラを外側寄りに取付けると、当該カメラは当該カウンタウェイトケースの外縁から外方に大きく突出してしまい、当該カメラと建設機械以外の他の物体とが接触する可能性が高くなる。また、このような厳しい制約下で監視のための良好な視界が得られるようにカメラの設置位置を選定することは極めて困難である。
本発明は、前記のような課題を解決することが可能な建設機械のカウンタウェイト装置を提供することを目的とする。提供されるのは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えた建設機械の当該上部旋回体の後部に配置されるカウンタウェイト装置であって、カウンタウェイト本体と、前記カウンタウェイト本体が格納されるスペースを囲むとともに当該スペースから前記カウンタウェイト本体が吊り上げられるのを許容するように当該スペースを上向きに開放する形状をもつカウンタウェイトケースと、前記カウンタウェイトケースよりも上側の位置から見た映像を撮影するためのカメラと、前記カメラを支持するカメラブラケットと、を備える。前記カメラブラケットは、前記カウンタウェイト本体の上面に固定されながら前記カメラを前記カウンタウェイトケースよりも上側の位置であって当該カメラの少なくとも一部が前記カウンタウェイトケースの直上に存在するような撮影位置に支持する形状を有する。
このカウンタウェイト装置によれば、前記カメラブラケットは前記カウンタウェイト本体の上面に固定されるので、当該カメラブラケットの固定位置の自由度が高い。また、当該カメラブラケット及びこれに支持されるカメラをカウンタウェイト本体から脱着しなくても当該カウンタウェイト本体を前記カウンタウェイトケースの内側のスペースから吊り上げることが可能である。
しかも、当該カメラブラケットは、前記のように前記カウンタウェイト本体の上面に固定されながらも、前記カメラを監視用映像を撮影するのに好適な撮影位置に支持することができる。具体的に、この撮影位置は、前記カウンタウェイトケースよりも上側の位置であって当該カメラの少なくとも一部が前記カウンタウェイトケースの直上に存在するような位置であるため、当該カメラは、当該カウンタウェイトケースに著しく視界を妨げられることなく、監視に適した映像を撮影することが可能である。さらに、当該撮影位置は前記カウンタウェイトケースよりも上側の位置であるため、選定の自由度が高いことに加え、前記カウンタウェイト本体の吊り上げの際に当該カウンタウェイト本体が多少傾いても当該カメラと当該カウンタウェイトケースとの干渉を回避することが可能である。
前記撮影位置には、例えば、前記カメラが撮影する映像に前記上部旋回体の外端が含まれる位置を設定することが可能である。このように前記上部旋回体の外端(例えばカウンタウェイトケースの外端またはその前方の上部旋回体の部分の外端)を含む撮影映像は、運転者等に当該撮影位置からの遠近間隔を与えることを可能にする。そして、このような好ましい撮影位置の選定は、前記のようにカウンタウェイト本体の上面に固定されながらカメラをその少なくとも一部がカウンタウェイトケースの直上に存在するような位置に支持する前記カメラブラケットによって可能となるものである。
このように、前記カメラブラケットは、前記カメラの撮影位置の選択の自由度を著しく高める。例えば、前記カウンタウェイトケースが、その前端に位置する左右のコーナー部を有する場合、前記カメラブラケットは、前記カメラの一部が前記カウンタウェイトケースよりも上側の高さ位置において前記コーナー部のいずれか一方の前端面よりも前側にはみ出る位置に撮影位置を設定することも可能にする。つまり、前記カメラブラケットは、カウンタウェイト装置が占める領域だけでなくこれよりも前方の領域に前記カメラの撮影位置を設定することも可能にする。
本発明において、さらに、前記カメラブラケットは、前記カメラを保持するカメラ保持部と、前記カウンタウェイト本体の上面に固定される基部と、前記カメラ保持部と前記基部とを連結する連結部と、を含み、当該連結部は、前記基部が前記カウンタウェイト本体の上面に固定された状態で前記カメラ保持部に保持される前記カメラが前記撮影位置に位置するように前記基部に対して前記カメラ保持部が上側及び前記カウンタウェイトケースに近づく側にそれぞれオフセットする相対位置関係で当該基部と当該連結部とを連結する形状を有する。このカメラブラケットによれば、前記基部と前記カメラ保持部とを連結する前記連結部の形状によって前記カメラの撮影位置を自由に設定することが可能である。
例えば、前記のようにカウンタウェイトケースがその前端に位置する左右のコーナー部を有する場合、前記カメラブラケットの連結部は、前記基部が前記カウンタウェイト本体の上面に固定された状態で前記カメラ保持部に保持される前記カメラが前記撮影位置に位置するように前記基部に対して前記カメラ保持部を上側、前記カウンタウェイトケースに近づく側、及び前記上部旋回体の前後方向の前側にそれぞれオフセットさせる形状を有することにより、前記カメラが前記カウンタウェイトケースよりも上側の高さ位置において前記コーナー部のいずれか一方とそれよりも前側に位置する前記上部旋回体の部分とに跨る位置に当該カメラの撮影位置を設定することを可能にする。
本発明に係るカウンタウェイト装置では、前記カウンタウェイト本体は、その上面において前記カメラブラケットの前記基部を保持するブラケット保持部を有し、当該ブラケット保持部は、前記カウンタウェイト本体に設けられたねじ孔にねじ込まれることが可能な固定ボルトを含むとともに、当該固定ボルトが当該ねじ孔にねじ込まれて締め付けられることにより前記カメラが前記撮影位置及び当該撮影位置から少なくとも水平方向に外れた退避位置にそれぞれ位置する状態で前記カウンタウェイト本体の上面上での前記基部の位置を固定する固定状態と、前記固定ボルトが緩められまたは前記ねじ孔から抜き取られることにより前記カメラ保持部に保持される前記カメラが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように前記カウンタウェイト本体の上面上での前記基部の動きを許容する許容状態と、に切換可能なものであり、前記退避位置は上から見て前記カメラ及びカメラブラケット全体が前記カウンタウェイト本体の外縁の内側に収まる位置である。
このカウンタウェイト装置によれば、前記ブラケット保持部は前記許容状態において前記カメラが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように前記基部の動きを許容するため、この状態で前記カメラを前記退避位置、すなわち、上から見て前記カメラ全体が前記カウンタウェイト本体の外縁の内側に収まる位置に移動させ、この位置で前記基部を固定することにより、カウンタウェイト本体の吊り上げ時に前記カメラ及び前記カメラブラケットが前記カウンタウェイトケースに干渉することをより確実に回避することができる。
さらに、前記固定状態と許容状態とに切換可能なブラケット保持部は、前記カウンタウェイトケースが、当該カウンタウェイトケースを吊り上げるための吊り装置に連結される吊り部を有し、当該吊り部が前記カウンタウェイトケースにおいて他の部分の上面よりも上側に突出する場合において、前記撮影位置を前記カメラの少なくとも一部が前記吊り部の直上に存在する位置に設定することも可能にする。この場合、前記カメラが前記退避位置へ移動することによって、前記吊り部全体を上方に開放することができ、この状態で当該吊り部に支障なく吊り装置(例えば補助クレーン)を連結してカウンタウェイト本体を吊り上げることが可能である。
前記ブラケット保持部は、例えば、前記基部のスライド運動を許容するものでもよいが、前記基部を上下方向に貫通した状態で前記カウンタウェイト本体に固定されることにより前記基部の動きを当該回動支軸を中心とする回動に制限する回動支軸を含み、前記許容状態において前記カメラが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように前記基部が前記カウンタウェイト本体の上面に沿って前記回動支軸を中心に回動することを許容することが、より好ましい。このような回動支軸を中心とした基部の回動の許容は、当該基部の少ない動きで前記カメラが前記撮影位置と前記退避位置との間を移動することを可能にする。
また、前記カメラと前記上部旋回体に搭載された回路とを接続する電線と、前記カメラブラケットまたは前記カウンタウェイト本体に設けられ、前記電線を前記回動支軸の近傍の位置で拘束する電線拘束部と、をさらに備えることにより、前記基部の回動に伴う電線の動きを効果的に抑制することが可能であり、これにより、当該電線の絡まりや他の要素との接触による損傷を防ぐことができる。
前記カメラブラケットが、前記撮影位置における前記カメラの前端が前記回動支軸よりも前記上部旋回体の前側に位置するように当該カメラを支持する形状を有する場合、前記回動支軸は、当該回動支軸から当該カメラの前端、つまり前記上部旋回体の前後方向について最も前側に位置する端、までの前後方向の距離よりも前記カウンタウェイト本体の側縁から当該回動支軸までの距離が大きい位置に設けられていることが、好ましい。このような回動支軸の位置の設定は、少ない回動角度(具体的には90°以下)で前記カメラが前記撮影位置から前記退避位置まで退避することを、可能にする。
以上のように、本発明によれば、カウンタウェイト本体の吊り上げ時におけるカメラとカウンタウェイトケースとの干渉を回避しながら当該カメラについて良好な撮影位置を選定することが可能なカウンタウェイト装置が、提供される。
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明に係るカウンタウェイト装置が設けられる建設機械が図1に示す油圧ショベル10に適用された例であるが、本発明が適用される建設機械は油圧ショベルに限られない。本発明は、カウンタウェイト装置を具備する建設機械であって当該カウンタウェイト装置からの撮影を要するものに広く適用されるものである。
前記油圧ショベル10は、下部走行体12と、その上に旋回可能に搭載される上部旋回体14と、この上部旋回体14に支持される作業アタッチメント16と、を備える。前記上部旋回体14は、上部旋回体本体18と、その後ろ側に配置されて上部旋回体14の後部を構成するカウンタウェイト装置20と、を有し、前記上部旋回体18は、アッパーフレーム22と、その上に搭載される運転室24及びエンジンルーム26と、を含む。
前記カウンタウェイト装置20は、図2に示すように、カウンタウェイト本体30と、カウンタウェイトケース40と、後部用カメラ50Aと、一対の側部用カメラ50Bと、後部用カメラブラケット60Aと、一対の側部用カメラブラケット60B,60Bと、を備える。
前記カウンタウェイト本体30は、カウンタウェイト装置20の総重量のうち主たる部分を占める重量を有する。この実施の形態に係るカウンタウェイト本体30は、前端面31と、後端面32と、左右側面33,34と、図示されない底面と、上面35と、を有する。前記前端面31は左右方向に延びる鉛直面であるのに対し、前記後端面32の左右両端部は外側に向かうにつれて前側に変位する向きに傾斜した面となっている。換言すれば、カウンタウェイト本体30は、前後方向の途中部分から前記後端面32に向かうに従って当該カウンタウェイト本体30の幅寸法(上部旋回体14の左右方向の寸法)が連続的に小さくなる形状を有する。前記前端面31の左右端部と前記左右側面33,34はそれぞれ前側の左右のコーナー部36を規定する。前記上面35の適所には、上向きに突出する複数の吊り輪部38が設けられ、当該吊り輪部38には、それぞれ、カウンタウェイト本体30を吊り上げるための吊り装置の適当な部位、例えば補助クレーンのフック、が連結される。
この実施の形態に係るカウンタウェイト本体30は、単一の部材で構成されている。しかし、本発明に係るカウンタウェイト本体は、上下方向に分割された複数の要素により構成されてもよい。すなわち、上下方向に積層される複数のカウンタウェイト要素によってカウンタウェイト本体が構成されてもよい。
前記カウンタウェイトケース40は、前記カウンタウェイト本体30が格納されるスペースを囲むとともに、当該スペースから前記カウンタウェイト本体30が吊り上げられるのを許容するように当該スペースを上向きに開放する形状を有する。
具体的に、この実施の形態に係るカウンタウェイトケース40は、ケース本体42と、左右の側板43,43と、前板44と、を有する。ケース本体42は、前記カウンタウェイト本体30の後半部を外側から覆う形状を有し、左右の前端面を有する。左右の側板43,43は、前記ケース本体42の前記左右の前端面から前方に延びる平板である。前記前板44は、前記左右の側板43の前端同士をつなぐように当該側板43の前端にそれぞれ接続される。こうして、前記ケース本体42、左右側板43,43及び前板44は、前記カウンタウェイト本体30を収容するためのスペースを前後左右から包囲する形状を構成する。
この実施の形態では、前記左右側板43,43の外側に外装カバー46が配置されるとともに、当該左右側板43,43から上方にそれぞれ吊り輪部48,48が突出する。各吊り輪部48は、前記カウンタウェイトケース40を吊り上げるための吊り装置の適当な部位、例えば補助クレーンのフック、が当該吊り輪部48に連結されることが可能な形状を有する。
本発明に係るカウンタウェイトケースは、前記カウンタウェイトケース40のように前記スペースを全周にわたって囲むものに限られない。例えば、前記カウンタウェイトケース40の前板44が省略されてその前側の上部旋回体本体18の後端面が前記スペースの前端を規定してもよい。
前記後部用カメラ50A及び一対の側部用カメラ50B,50Bは、前記油圧ショベル10の後方及び後部両側方の状態をそれぞれ監視するための映像を撮影すべく配置される。具体的に、前記後部用カメラ50Aは、前記カウンタウェイト本体30の後方に配置され、前記一対の側部用カメラ50Bは前記カウンタウェイト本体30の左右のコーナー部36に対応する位置にそれぞれ配置される。
前記後部用カメラブラケット60Aは、前記後部用カメラ50Aを支持し、前記一対の側部用カメラブラケット60B,60Bは、前記一対の側部用カメラ50A,60Bをそれぞれ支持する。これらのカメラブラケット60A,60B,60Bのうちの側部用カメラブラケット60B,60B及びこれらに支持される側部用カメラ50A,50Bが、それぞれ、本発明に係る「カメラブラケット」及び「カメラ」の一例に相当する。
前記後部用カメラブラケット60Aは、前記カウンタウェイトケース40におけるケース本体42の後端部すなわち左右方向の中央部に固定される。これは、この実施の形態に係る前記ケース本体42の後端部が比較的大きな幅(上部旋回体14の前後方向についての寸法)を有しており、当該ケース本体42に対して後部用カメラブラケット60Aを固定するための位置の自由度が高いためである。このようなケース本体42では、後部用カメラブラケット60Aを当該ケース本体42に固定しながら後部用カメラ50Aのための良好な撮影位置を選定することが可能である。
これに対して前記各側部用カメラブラケット60B,60Bは、カウンタウェイトケース40ではなくカウンタウェイト本体30の上面、詳しくは左右のコーナー部36の上面、に固定される。これは、当該カウンタウェイトケース40の側部を構成する各側板43の板厚が小さく、側部用カメラブラケット60B,60Bを固定する位置の自由度がきわめて低いためである。そこで、前記各側部用カメラブラケット60B,60Bは、位置選定の自由度が高い前記カウンタウェイト本体30の上面に固定されながら前記後部用カメラ50を監視用映像の撮影に好適な撮影位置に支持するための有用な形状を有する。
次に、前記各後部用カメラ50Bの具体的な撮影位置及びその支持のための各側部用カメラブラケット60B,60Bの具体的な構成について、図3〜図7を併せて参照しながら説明する。以下の説明及び図3〜図7の開示は、左右の側部用カメラ50B,50B及び左右の側部用カメラブラケット60B,60Bのうち代表的に左側の側部用カメラ50B及び側部用カメラブラケット60Bについて行われる。また、当該説明において前記側部用カメラ50B及び側部用カメラブラケット60Bはそれぞれ単に「カメラ50B」及び「カメラブラケット60B」と称される。
この実施の形態に係るカウンタウェイト装置20は、後に詳述するように、カメラ50Bの位置を図3,図5及び図6に示される撮影位置と図4及び図7に示される退避位置との間で切換えることを可能にする構成を含む。後述のように、前記撮影位置は、前記カメラ50Bからの側方の撮影に好適な位置であり、前記退避位置は、前記カメラ50B及び前記カメラブラケット60Bを搭載したままカウンタウェイト本体30やカウンタウェイトケース40を吊り上げるのに適した位置である。
前記カメラ50Bは、図5に示されるように、カメラ本体52と、当該カメラ本体52を支持するカメラフレーム54と、前記カメラ本体52を覆うカメラカバー56と、を有する。前記カメラ本体52は、上部旋回体14の後部側方の撮影と、その撮影画像の電気信号への変換と、を行う。前記カメラフレーム54は、この実施の形態では、図5に描かれた矢印Acに示すように前記カメラ本体52が側方かつ斜め下方を向く姿勢で当該カメラ本体52を支持する形状を有する。当該カメラ本体52の具体的な姿勢は撮影目的等に応じて自由に設定されることが可能である。
前記カメラ50Bの撮影位置は、前記カウンタウェイトケース40よりも上側の位置であって当該カメラ50Bの少なくとも一部が前記カウンタウェイトケース40の直上に存在するような位置である。具体的に、この実施の形態に係る撮影位置は、図3,図5及び図6に示すように、前記カメラ50B全体が前記カウンタウェイトケース40の吊り輪部48よりも上側にある高さ位置において、当該カメラ50Bが当該カメラ50Bに対応するコーナー部36とそれよりも前側に位置する上部旋回体本体18の部分(図3,図5及び図6では外装パネル19)とに跨る位置に設定されている。つまり、この実施の形態に係るカメラブラケット60Bは、当該カメラブラケット60Bがカウンタウェイト本体30のコーナー部36に固定されるにもかかわらず、前記カメラ50Bの一部が前記カウンタウェイトケース40の直上に位置するように前記コーナー部36よりも外側にはみ出す位置であってさらに当該カメラ50Bの一部が上記上部旋回体本体18の直上に位置するように当該コーナー部36から前側にもはみ出す位置に、当該カメラ50Bを支持することが可能である。
また、当該カメラブラケット60Bの形状は、前記撮影位置として、前記カメラ50Bが撮影する映像に前記上部旋回体14の外端(この実施の形態では上部旋回体本体18の外装パネル19の外端19a及びカウンタウェイトケース40の外装カバー46の外端46a)が含まれる位置を選定することを可能にする。このように前記上部旋回体14の外端を含む撮影映像は、当該外端とそれよりも外側の景色との対比により、運転者等に当該撮影位置からの遠近間隔を与えることを可能にする。
前記カメラブラケット60Bは、基部62と、カメラ保持部64と、連結部66と、を有する。
前記基部62は、前記カウンタウェイト本体30のコーナー部36の上面に固定される部位である。この実施の形態に係る基部62は、平坦な下面62aを有する水平な平板状をなし、略正方形の平面視形状を有する。前記カメラ保持部64は、前記カメラ62を保持する部位であり、この実施の形態に係るカメラ保持部64は、平坦な上面を有する水平な平板からなり、当該上面の上に前記カメラフレーム64が載置されてボルト65により固定されることを許容する形状を有する。
前記連結部66は、前記基部62と前記カメラ保持部64とを連結する部位である。この連結部66は、前記基部62が前記カウンタウェイト本体30のコーナー部36に固定されるにもかかわらず、前記カメラ保持部64に保持される前記カメラ50Bが前記撮影位置に位置することを可能にする形状を有する。詳しくは、当該連結部66は、i)前記カメラ50B及びこれを保持する前記カメラ保持部64が前記吊り輪部48の上端よりも上側の高さ位置に存在するように当該基部62に対して当該カメラ保持部64を上側にオフセットさせ、ii)当該カメラ50B及び当該カメラ保持部64の一部が前記吊り輪部48を含む前記カウンタウェイトケース40の直上に位置するようにこれらをカウンタウェイトケース40に近づく側(上部旋回体14の左右方向の外側)にオフセットさせ、さらに、iii)当該カメラ50B及び当該カメラ保持部64の一部が前記カウンタウェイト本体30の前端面31よりも前側にはみ出るようにこれらを前記基部62に対して前側にオフセットさせる形状を、有する。
具体的に、この実施の形態に係る前記連結部66は、前記カメラ50Bが前記撮影位置にある状態において、図5に示すように上部旋回体14の前方から見て前記基部62の外端(図5では基部62の四辺のうちの右側辺)から垂直上向きに延び、かつ、図6に示すように左右方向の内側から見て前記基部62から前側寄りにシフトした形状を有する。また、カメラブラケット60Bは、前記連結部66の立直姿勢を正確に保つためのリブ67を含み、このリブ67は当該連結部66の下端部と基部62とに跨るように配置される。
一方、前記カメラ50Bの退避位置は、前記撮影位置から水平方向に外れた位置であって、図4及び図7に示すように、上から見て前記カメラ50B及びこれを支持する前記カメラブラケット60B全体が前記カウンタウェイト本体30のコーナー部36の外縁の内側、つまり、当該カウンタウェイト本体30の前端面31の後ろ側でかつ前記左側面33の内側、に収まる位置である。具体的に、この実施の形態に係る前記退避位置は、前記カメラ50Bが前記撮影位置から後ろ側に90°回動することにより当該カメラ50Bが上部旋回体14の後方を向く位置であり、当該カメラ50Bのカメラカバー56の右端面57が前記カウンタウェイト本体30のコーナー部36を規定する左右側面33,34(図3では左側面33)の内側に位置しながら当該左右側面33,34に沿う位置である。
前記カメラ50Bの撮影位置と退避位置との間の移動を可能にすべく、前記カウンタウェイト本体30は、左右一対のブラケット保持部70を有する。当該一対のブラケット保持部70は、左右のコーナー部36にそれぞれ配置され、当該コーナー部36の上面上において前記カメラブラケット60Bの前記基部62を保持する。さらに、各ブラケット保持部70は、前記カメラ保持部64に保持される前記カメラ50Bが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように前記基部62の動きを許容する許容状態と、前記カメラ50Bが前記撮影位置及び前記退避位置にそれぞれ位置する状態で前記基部62の位置を固定する固定状態と、に切換可能である。
具体的に、前記ブラケット保持部70は、基台72と、回動支軸74と、一対の固定ボルト75,76と、を含む。
前記基台72は、上面72aを有し、この上面72aが上を向く姿勢で前記コーナー部36の上面上に固定される。前記上面72aは、平坦でかつ前記コーナー部36の上面と平行な面である。前記基部62は、その下面62aが前記上面72aに対して水平方向に摺動可能となるように当該上面72aの上に載置される。この基台72における前記基部62の向きは、前記カメラ50Bが前記撮影位置にある状態で、基部62の四辺のうち前記連結部66とつながる辺及びこれに隣接する前側辺がそれぞれ前記カウンタウェイト本体30の前端面31及び左右側面33または34に沿うように、設定されている。
前記回動支軸74は、前記基部62の動きを当該回動支軸74を中心とする回動に限定するように当該基部62を拘束する。具体的に、この実施の形態に係る回動支軸74は、雄ねじを含む下端部を有するボルトからなり、この下端部よりも上側の部位が前記基部62の適当な部位を上下方向に貫通する状態で前記下端部が前記基台72に設けられたねじ孔に螺着されている。前記基部62において、この基部62を前記回動支軸74が貫通する部位は、当該基部62に含まれる4つのコーナー部のうちの一つであって、図3に示すように前記カメラ50Bが撮影位置にある状態で前記カウンタウェイトケース40から遠い側(すなわち左右方向の内側)のコーナー部であってかつ上部旋回体14の前後方向の前側のコーナー部である。
前記一対の固定ボルト75,76は、前記基部62を前記撮影位置と前記退避位置とにそれぞれ固定するためのもので、それぞれ雄ねじを含む下端部を有し、当該下端部が前記基台72に着脱可能に螺着される。当該基台72には、前記回動支軸74が螺着されるねじ孔に加え、前記各固定ボルト75,76が螺着可能な第1ねじ孔73A、第2ねじ孔73B及び第3ねじ孔73Cを有する。前記第1ねじ孔73Aは、前記回動支軸74と前記上部旋回体14の前後方向に並ぶ位置であって当該回動支軸74の後方の位置に設けられる。前記第2及び第3ねじ孔73B,73Cは、前記回動支軸74と前記上部旋回体14の左右方向に並ぶ位置であって前記回動支軸74の外方及び内方にそれぞれ位置する。
前記基部62には、前記固定ボルト75,76の上下方向の挿通を許容する貫通長孔63が形成されている。この貫通長孔63は、上から見て、前記回動支軸74を中心とする略90°の円弧状をなす。この貫通長孔63の一方の端部は、図3に示すように前記カメラ50Bが撮影位置にある状態で前記第1ねじ孔73Aに対応する位置にあり、他方の端部は当該状態で第2ねじ孔に対応する位置にある。
このブラケット保持部70は、次の要領で前記固定状態と前記許容状態とに切換得られることが可能である。
固定状態(撮影位置):図3,図5及び図6に示すように前記カメラ50Bが前記撮影位置にある状態で前記固定ボルト75,76がそれぞれ前記貫通長孔63の両端部に挿通されて前記第1及び第2ねじ孔63A,63Bにねじ込まれ、締め付けられる。これにより、基部62が基台72に締結され、当該基部62を含むカメラブラケット60Bに支持されるカメラ50Bも撮影位置に固定される。
許容状態:前記固定状態から前記固定ボルト75が緩められるとともに前記固定ボルト76が前記第2ねじ孔63Bから抜き取られることにより、前記基部62に対する前記固定ボルト75の前記貫通長孔63に沿った相対移動を伴いながら、前記回動支軸74を中心とする前記基部62の回動が許容される。この基部62の回動は、前記カメラ50Bが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動することを可能にする。
固定状態(退避位置):前記許容状態での基部62の回動によりカメラ50Bが図4及び図7に示す退避位置に移動した後、前記固定ボルト75が締め付けられるとともに、前記固定ボルト76が前記貫通長孔63の他方の端部に挿通されて今度は前記第3ねじ孔63Cにねじ込まれ、締め付けられることにより、この位置で基部62が基台72に締結され、カメラ50Bは前記退避位置に固定される。また、これと逆の操作により、前記退避位置から前記撮影位置へのカメラ50Bの移動、及び当該撮影位置へのカメラ50Bの固定がなされる。
なお、前記基部62には前記貫通長孔73に代えて当該貫通長孔73の両端部に相当する2つの貫通孔のみが設けられてもよい。ただし、この場合は、許容状態への切換のために、前記固定ボルト76のみならず固定ボルト75も前記基部62及び前記基台72から抜き取られる必要がある。
前記ブラケット保持部70において、前記回動支軸74の位置は、図3に示すようにカメラ50Bが前記撮影位置にある状態で、当該回動支軸74から当該カメラ50Bの前端(この実施の形態ではカメラカバー56の右端面57)までの前後方向の距離d1よりも前記カウンタウェイト本体30の側縁である左右側面33,34から当該回動支軸74までの距離d2が大きい、という条件を満たす位置に設定されている。この条件を満たす回動支軸74の位置は、カメラ50Bが少ない回動角度(具体的には90°以下)で前記撮影位置から前記退避位置まで退避すること(具体的には前記右側面57が前記左右側面33,34の内側に収まること)こと、を可能にする。
このカウンタウェイト装置20は、さらに、図3,図4,図6及び図7に示される電線80を備える。電線80は、前記カメラ50Bのカメラ本体52と、上部旋回体本体18に搭載された本体側回路(例えば電源回路や信号処理回路)と、を接続するためのもので、前記カメラ本体52に接続された一端部と、コネクタ82が接続された他端部と、を有し、その中間部が上部旋回体本体18を構成する水平板17に設けられた貫通穴17aに挿通されている。前記コネクタ82は、前記本体側回路から導出される電線の端末に設けられた相手方コネクタと着脱可能に結合し、その結合状態で当該本体側回路からの電線と前記電線80とを互いに導通させる。このコネクタ82が前記相手方コネクタと切り離された状態で、当該コネクタ82及びこれにつながる前記電線80は、前記カメラ50B及びカメラブラケット60Bとともに、前記カウンタウェイト本体30に搭載されたまま吊り上げられることが可能である。
一方、前記カメラブラケット60Bは、電線拘束部68をさらに含む。この電線拘束部68は、例えば前記基部62の上面に設けられ、前記回動支軸74の近傍の位置にいて、前記電線80の所定部位の前記基部62に対する動きを抑制するように当該所定部位を拘束する。このように回動支軸74の近傍の位置で電線80を拘束する電線拘束部68は、前記回動支軸74を中心とするカメラブラケット60B及びカメラ50Bの回動に伴う電線80の動きを効果的に抑制し、当該動きに起因する電線80の絡まりや他の要素との接触による損傷を有効に抑止しながら、当該電線80が前記カメラ本体52に接続されたまま前記カメラ50Bが回動することを可能にする。この効果は、前記電線拘束部68が前記カメラブラケット60Bではなくカウンタウェイト本体30に設けられる場合にも同様に得ることが可能である。
以上説明したカウンタウェイト装置によれば、カメラ50Bを支持するカメラブラケット60Bがカウンタウェイト本体30の上面に固定されながら当該カメラ50Bをカウンタウェイトケース40よりも高い位置に支持するので、当該固定位置の制約が少なく、選定の自由度が高い。また、当該カメラブラケット60B及びこれに支持されるカメラ50Bをカウンタウェイト本体30から脱着しなくても当該カウンタウェイト本体30をカウンタウェイトケース40の内側のスペースから吊り上げることが可能である。
しかも、前記カメラブラケット60Bは、前記のように前記カウンタウェイト本体30の上面に固定されながらも、前記カメラを監視に好適な撮影位置に支持することができる。具体的に、この撮影位置は、前記カウンタウェイトケース40よりも上側の位置であって当該カメラ50Bの少なくとも一部(全部でもよい。)が前記カウンタウェイトケース40の直上(前記実施の形態では吊り輪部48の直上)に存在するような位置であるため、当該カメラ50Bは、当該カウンタウェイトケース40に著しく視界を妨げられることなく、監視に適した映像を撮影することが可能である。特に、前記外装パネル19の外端19aや外装カバー46の外端46aに例示される上部旋回体14の外端を含む映像は、当該映像を見た使用者が容易に遠近間隔を得ることを可能にする。
さらに、前記実施の形態に係るカウンタウェイト本体30は、固定状態と許容状態とに切換可能なブラケット保持部70を有し、このブラケット保持部70は、前記許容状態(第1ねじ孔63Aに螺合されている固定ボルト75が緩められ、かつ、固定ボルト76が脱着されている状態)において前記カメラ50Bが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように前記基部62の動きを許容するため、この状態で前記カメラ50Bを図4及び図7に示す退避位置、すなわち、上から見て前記カメラ50B全体が前記カウンタウェイト本体30の外縁の内側に収まる位置に移動させ、この位置で前記基部62を固定することにより、カウンタウェイト本体30の吊り上げ時に前記カメラ50B及び前記カメラブラケット60Bが前記カウンタウェイトケース40に干渉することをより確実に回避することができる。
さらに、前記実施の形態のように前記カウンタウェイトケース40が上向きに突出する吊り輪部48を有している場合においてその吊り輪部48の直上に前記カメラ50Bの少なくとも一部が存在するような位置に撮影位置が設定されても、当該カメラ50Bを退避位置に移動させて前記吊り輪部48を上方に開放することにより、当該カメラ50B及びカメラブラケット60Bをカウンタウェイト本体30に搭載したままカウンタウェイトケース40を補助クレーン等によって吊り上げることが可能である。
ただし、本発明は、カメラが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能であるものに限定されない。例えば、当該カメラが撮影位置に固定されて他の位置に移動することが不能なものであっても、当該撮影位置がカウンタウェイトケースよりも十分高い位置に設定されていれば、当該カメラと当該カウンタウェイトケースとの干渉を避けながらカウンタウェイト本体を吊り上げることが可能である。
また、カメラが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように基部の動きを許容しながらこれを保持するブラケット保持部を備える場合、当該基部の動きは前記実施の形態のような垂直方向の回動支軸74を中心とする回動に限定されない。例えば、当該基部の動きは、垂直方向の回動支軸回りの回動ではなく、水平方向の回動支軸回りの回動(すなわち起伏運動)や、スライド運動(例えば直線運動)であってもよい。ただし、前記の実施の形態のように、前記カメラ50Bが前記撮影位置と前記退避位置との間で移動可能となるように前記基部62が前記カウンタウェイト本体30の上面(詳しくは基台72の上面72a)に沿って垂直方向の回動支軸74を中心に回動するものは、当該基部62の少ない動きで前記カメラ50Bが前記撮影位置と前記退避位置との間を移動することを可能にする。
また、本発明に係る「カメラ」及びこれを支持する「カメラブラケット」は、前記実施の形態に係るカメラ50B及びカメラブラケット60Bに限定されない。例えば、図2に示される後部用カメラ50Aについても、カウンタウェイトケース40への取付位置に著しい制約があって良好な撮影位置を設定することが困難な場合、カウンタウェイト本体に固定されながら当該後部用カメラ50Aをその少なくとも一部がカウンタウェイトケース40の直上に存在する撮影位置に保持するカメラブラケットを備えることが、当該後部用カメラ50Aを脱着することなく当該カウンタウェイト本体30を吊り上げることを可能にしながら好適な撮影位置を選定することを可能にする。