JP6266842B2 - マスクブランク、マスクブランクの製造方法、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、マスクブランクの製造方法、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクおよびその製造方法に関するものである。また、本発明は、上記の位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。このパターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクが使用されており、特に微細なパターンを形成する場合には、位相差を利用することにより解像度を代表とする転写性能を高めた位相シフトマスクが多用されている。また、半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、位相シフトマスクに代表される転写用マスクの改良、改善に加え、フォトリソグラフィで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。よって、半導体デバイスの製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
位相シフトマスクの一態様である掘込レベンソン型の位相シフトマスクは、透光性基板に形成された掘込部および非掘込部からなる透光部と、ライン・アンド・スペース等のパターンが形成された遮光部とを備える。具体的には、透光性基板上の遮光膜が存在する領域で遮光部を形成し、遮光膜が存在しない透光性基板が露出した領域で透光部を形成する。掘込部の掘込深さは、掘込部を透過する露光光と、非掘込部を透過する露光光との間で位相シフト効果が得られる所定の位相差を付与できる深さとなっている。従来、掘込レベンソン型の位相シフトマスクは、例えば特許文献1に開示されているように、透明基板上にクロム系材料からなる遮光膜が設けられたマスクブランクを用いたプロセスにより製造されている。
一方、特許文献2には、積層膜を用いたレベンソン型の位相シフトマスクを製造する方法が開示されている。この方法では、石英からなる透明基板の上に、エッチングストッパーの機能を持つアルミナ(Al)からなる透明導電膜と、SiOからなる透明な位相シフト膜、Crを主成分とする遮光膜をこの順に形成し、遮光膜に主透光部と補助透光部のパターンを形成し、その後、位相シフト膜に補助透光部のパターンを形成している。
位相シフトマスク等の転写用マスクの欠陥は、その転写用マスクを用いて製造される半導体装置の欠陥や歩留まりの低下に直結する。このため、転写用マスクに欠陥が見つかった場合、マスク欠陥修正が行われる。このマスク欠陥修正技術として、特許文献3には、遮光膜の黒欠陥部分に対して、二フッ化キセノン(XeF)ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射することで黒欠陥部をエッチングして除去する欠陥修正技術(以下、このような電子線等の荷電粒子を照射して行う欠陥修正を単に「EB欠陥修正」という。)が開示されている。このEB欠陥修正は、当初、EUVリソグラフィ(Extreme Ultraviolet Lithography)用の反射型マスクの吸収体膜における黒欠陥修正に用いられていたが、近年では位相シフトマスクの欠陥修正においても使用されている。
特開平9−160218号公報 特開2006−084507号公報 特表2004−537758号公報
従来の掘込レベンソン型の位相シフトマスクは、基板に掘込部および非掘込部を形成し、掘込部を透過する露光光と非掘込部を透過する露光光との間で位相シフト効果が生じるように構成されている。掘込部を透過する露光光と非掘込部を透過する露光光との間の位相差は、露光光が基板を透過する距離の差によって生じるものである。掘込レベンソン型の位相シフトマスクでは、位相シフトマスクの面内の各所で生じる位相シフト効果の間に差がないことが理想的である。このため、掘込レベンソン型の位相シフトマスクの場合、位相シフトマスクの面内の各掘込部の深さが等しくなることが理想的である。位相シフトマスクの各掘込部は、基板にドライエッチングを行うことによって同時に形成する。位相シフトマスクにおける各掘込部のパターンの底面形状や深さは、マイクロトレンチ現象やマイクロローディング現象等の影響を受けるため、ドライエッチングで各掘込部の底面形状や深さを同じになるように制御することは容易ではない。近年、マスクパターンの微細化に伴い、掘込部のパターン幅が微細になってきており、各掘込部の深さを制御することは困難になってきている。一方で、微細化に伴い、光学上の理由から、より高い位相制御、すなわち、各掘込部の深さにも、より高い制御性が求められている。
なお、マイクロトレンチ現象とは、パターンエッジ部の近傍で深い掘り込みが生じて微細な溝が形成される現象である。また、マイクロローディング現象とは、微細なパターンの場合において、パターンの開口部の幅に応じてエッチングされる深さが異なる現象である。
特許文献2に開示されている位相シフトマスクは、SiOからなる透明な位相シフト膜にパターンが形成された補助透光部を透過する露光光と、その位相シフト膜にパターンが形成されていない主透光部を透過する露光光との間で位相シフト効果が生じるように構成されている。すなわち、特許文献2に開示されている位相シフトマスクは、従来の掘込レベンソン型の位相シフトマスクの掘込部に代えて、SiOの位相シフト膜を位相シフトパターンとして、掘込部を形成する場合と同様の高い位相シフト効果を生じさせるようにしている。さらに、特許文献2の位相シフトマスクは、透明基板とSiOからなる位相シフト膜との間に、Alからなる透明導電膜(エッチングストッパー膜)を設けている。Alからなるエッチングストッパー膜は、SiOからなる位相シフト膜にパターンを形成するときに、フッ素系ガスにより行われるドライエッチングに対して高い耐性を有する。このため、SiOからなる位相シフト膜にパターンを形成するときに基板を掘り込むことを抑制することができ、位相制御性が向上して、位相シフトマスクの面内での位相シフト効果の差を小さくすることができるようになる。
しかし、Alからなるエッチングストッパー膜は、薬液洗浄に対する耐性が低い傾向がある。マスクブランクから位相シフトマスクを製造するプロセスの途上において、薬液を用いた洗浄がマスクブランクに対して何度も行われる。また、完成後の位相シフトマスクに対しても、定期的に薬液による洗浄が行われる。これらの洗浄では、アンモニア過水やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液が洗浄液として用いられることが多いが、Alからなるエッチングストッパー膜は、これらの洗浄液に対する耐性が低い。
例えば、ガラスからなる透光性基板上に、Alからなるエッチングストッパー膜と位相シフトパターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクに対し、アンモニア過水による洗浄を行うことがある。このとき、位相シフトマスクにおけるエッチングストッパー膜の表面が露出している透光部で、そのエッチングストッパー膜が表面から徐々に溶解していき、溶解が進行するとその透光部で基板の主表面が露出してしまう。そして、さらに洗浄を行うと、位相シフト膜が存在するパターン部分の直下のエッチングストッパー膜も位相シフト膜の側壁側から内部側に向かって溶解していく。このエッチングストッパー膜が溶解する現象は、位相シフト膜のパターンの両方の側壁側からそれぞれ進行するため、位相シフト膜のパターン幅よりも溶解せずに残存しているエッチングストッパー膜の幅の方が小さくなってしまう。このような状態になると、位相シフト膜のパターンが脱落する現象が発生しやすくなる。
また、位相シフトマスクを露光装置にセットして、転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)に露光転写する際、露光光は位相シフトマスクの透光性基板の位相シフトパターンが設けられている主表面とは反対側の主表面側から入射する。透光性基板に入射後の露光光は、掘込部ではエッチングストッパー膜を経由して大気中に出射し、非掘込部ではエッチングストッパー膜および位相シフト膜を経由して大気中に出射する。位相シフトマスクの位相シフト膜の光学特性や厚さは、掘込部および非掘込部を透過する各露光光がともにエッチングストッパー膜を経由することを前提に設計されている。しかし、位相シフトマスクに対して上記の洗浄を行うことで非掘込部のエッチングストッパー膜が膜減りしたり消失したりすると、掘込部と非掘込部のそれぞれを透過した露光光との間の位相差が設計通りにはならなくなり、予定していた位相シフト効果を得られにくくなる恐れがある。
さらに、Alからなるエッチングストッパー膜は、位相シフトマスクの透光性基板の材料に用いられる合成石英ガラスよりも露光光に対する透過率が低いという問題がある。ArFエキシマレーザー(波長193nm)を露光光に適用する位相シフトマスクの場合、より顕著にその傾向が表れる。Alからなるエッチングストッパー膜は、位相シフトマスクが完成した段階において、透光部の掘込部および非掘込部のいずれにも残されるものである。位相シフトマスクの透光部における露光光の透過率が低下することは、単位時間当たりの転写対象物への露光光の積算照射量が低下することに繋がる。このため、露光時間を長くする必要が生じ、半導体デバイスの製造における露光転写工程のスループットの低下に繋がる。
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものである。すなわち、透光性基板上に位相シフト膜や遮光膜のようなパターン形成用薄膜を備えたマスクブランクで透光性基板とパターン形成用薄膜の間にエッチングストッパー膜を介在させる構成とする場合において、パターン形成用薄膜をパターニングする際に用いられるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、薬液洗浄に対する耐性が高く、さらに露光光に対する透過率が高いエッチングストッパー膜を備えた位相シフトマスク用のマスクブランクを提供することを目的としている。また、このマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクを提供することを目的としている。さらに、このような位相シフトマスクを製造する方法を提供することを目的としている。そして、本発明は、このような位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板の主表面上に遮光膜を備えたマスクブランクであって、前記透光性基板上に、エッチングストッパー膜、位相シフト膜および前記遮光膜がこの順に積層された構造を備え、前記位相シフト膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなり、前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなることを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記エッチングストッパー膜は、酸素含有量が60原子%以上であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記エッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする構成1または2記載のマスクブランク。
(構成4)
前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記エッチングストッパー膜は、前記透光性基板の主表面に接して形成されていることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以上であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記位相シフト膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなる下層と、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなる上層がこの順に積層された構造を備えることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜を透過した露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能を有することを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記位相シフト膜は、露光光を95%以上の透過率で透過させる機能を有することを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
前記遮光膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成11)
前記遮光膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成12)
前記遮光膜上に、ケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする構成10記載のマスクブランク。
(構成13)
前記遮光膜上に、クロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする構成11記載のマスクブランク。
(構成14)
構成1から11のいずれかに記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に位相シフトパターンを有し、前記遮光膜に遮光パターンを有することを特徴とする位相シフトマスク。
(構成15)
構成1から6のいずれかに記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、ドライエッチングにより前記遮光膜に位相シフトパターンを形成する工程と、前記位相シフトパターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより前記位相シフト膜に位相シフトパターンを形成する工程と、ドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含む遮光パターンを形成する工程とを備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
(構成16)
構成14記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトマスク上のパターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成17)
構成15記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトマスク上のパターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、透光性基板の主表面上に遮光膜を備えた位相シフトマスク用のマスクブランクであって、その透光性基板と遮光膜の間に、エッチングストッパー膜および位相シフト膜がこの順に積層して設けられ、その位相シフト膜は、ケイ素および酸素を含有し、そのエッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有することを特徴としている。このような構造のマスクブランクとすることにより、エッチングストッパー膜は、位相シフト膜にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が実用上十分に高いエッチングストッパー機能を有し、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たすことができる。
本発明の第1および第2の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第1および第2の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 本発明の第1および第2の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の第3および第4の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第3および第4の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 本発明の第3および第4の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の第5の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第5の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 本発明の第5の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。 別の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 別の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 別の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。
まず、本発明の完成に至った経緯を述べる。本発明者らは、Alからなるエッチングストッパー膜が有している技術的課題を解決すべく鋭意研究を行った。エッチングストッパー膜の材料であるAlは、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高いが、ArFエキシマレーザー(波長:約193nm)の露光光に対する透過率は、後述の比較例1で示すようにあまり高くはなく、位相シフトマスクの洗浄に用いられる洗浄液に対する耐性も低い。他方、透光性基板の主材料であるSiOは、ArFエキシマレーザーの露光光に対する透過率が高く、位相シフトマスクの洗浄に用いられる洗浄液に対する耐性も高い材料であるが、フッ素系ガスによるドライエッチングに対してエッチングされやすい材料である。そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、エッチングストッパー膜をAlとSiOを混合させた材料で形成することで、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性、ArFエキシマレーザー(波長:約193nm)の露光光に対する高い透過率、位相シフトマスクの洗浄に用いられる洗浄液に対する耐性の3つの条件をいずれも満たすことができる可能性を見出した。
AlとSiOを混合させた材料からなるエッチングストッパー膜を用いて検証してみたところ、フッ素系ガスによるドライエッチングに対して実用上十分な耐性を有しており、この膜がエッチングストッパー膜として十分に機能することが判明した。また、ArFエキシマレーザーの露光光に対する透過率については、Alのみからなるエッチングストッパー膜に比べると透過率が格段に高く、実用に耐えることが判明した。さらに、洗浄液(アンモニア過水、TMAH等)に対する耐性も、Alのみからなるエッチングストッパー膜に比べて格段に高く、実用上問題ないことが判明した。また、EB欠陥修正で行われる二フッ化キセノン(XeF)ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射する処理をAlとSiOを混合させた材料からなるエッチングストッパー膜に対して行ったところ、SiOのみからなる材料を用いた場合に比べて十分に耐性が高いことも判明した。これは、従来の掘込レベンソン型位相シフトマスクでは困難であった掘込部に対してEB欠陥修正が行える可能性があることを意味する。
以上の鋭意検討の結果、Alからなるエッチングストッパー膜が有している技術的課題を解決するには、エッチングストッパー膜をケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成する必要があるという結論に至った。すなわち、本発明のマスクブランクは、透光性基板の主表面上に位相シフト膜と遮光膜を備えた位相シフトマスク用のマスクブランクであって、位相シフト膜は、ケイ素および酸素を含有し、透光性基板と位相シフト膜の間にエッチングストッパー膜を有し、そのエッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有することを特徴としている。次に、本発明の各実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
以下、各実施の形態について図面を参照しながら説明を行う。なお、各実施の形態について同様の構成要素について同一の符号を使用して説明を簡略化若しくは省略することがある。
本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクは、レベンソン型位相シフトマスクを製造するために使用されるマスクブランクである。レベンソン型位相シフトマスクは、露光光を吸収する遮光パターンを挟む2つの透光部をそれぞれ透過する2つの露光光の間で所定の位相差(一般に180度程度の位相差)が生じる構造を備える。そのような構造を備えることで、2つの透光部を透過する2つの露光光の間で生じる干渉によって回折光が相殺され、パターンの解像度が大幅に高まる(これを位相シフト効果と呼ぶ。)。また、レベンソン型位相シフトマスクの場合、遮光パターンから露光光が透過しない方が2つの透光部間での位相シフト効果が高まるため、バイナリマスクの場合と同様に、遮光パターンを高い遮光性能を有する遮光膜で形成するのが一般的である。
図1に、この第1の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第1の実施形態に係るマスクブランク101は、透光性基板1の主表面上に、エッチングストッパー膜2、位相シフト膜3、および遮光膜5を備えている。
透光性基板1は、露光光に対して高い透過率を有し、十分な剛性を持つものであれば、特に制限されない。本発明では、合成石英ガラス基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。これらの基板の中でも特に合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)またはそれよりも短波長の領域で透過率が高いので、高精細の転写パターン形成に用いられる本発明のマスクブランクの基板として好適である。ただし、これらのガラス基板は、いずれもフッ素系ガスによるドライエッチングに対してエッチングされやすい材料である。このため、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を設ける意義は大きい。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成される。このエッチングストッパー膜2は、位相シフトマスク201が完成した段階において、転写パターン形成領域の全面で除去されずに残されるものである(図2参照)。すなわち、位相シフトパターン3cがない領域である透光部にもエッチングストッパー膜2が残存した形態をとる。このため、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間に他の膜を介さず、透光性基板1に接して形成されていることが好ましい。
エッチングストッパー膜2は、露光光に対する透過率が高いほど好ましいが、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間でフッ素系ガスに対する十分なエッチング選択性も同時に求められるため、露光光に対する透過率を透光性基板1と同じ透過率とすることは難しい。すなわち、露光光に対する透光性基板1(合成石英ガラス)の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、100%未満となる。露光光に対する透光性基板1の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、95%以上であることが好ましく、96%以上であるとより好ましく、97%以上であるとさらに好ましい。
エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が60原子%以上であることが好ましい。露光光に対する透過率を上記の数値以上とするには、エッチングストッパー膜2中に酸素を多く含有させることが求められるためである。また、酸素と未結合のケイ素よりも酸素と結合した状態のケイ素の方が、薬液洗浄(特に、アンモニア過水やTMAH等のアルカリ洗浄)に対する耐性が高くなる傾向があるので、エッチングストッパー膜2中に存在する全てのケイ素のうちの酸素と結合状態となっているものの比率を高くすることが好ましい。他方、エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が66原子%以下であることが好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)の合計含有量[原子%]に対するケイ素(Si)の含有量[原子%]の比率(以下、「Si/[Si+Al]比率」という。)が4/5以下であることが好ましい。エッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を4/5以下とすることにより、フッ素系ガスによるドライエッチングに対するエッチングストッパー膜2のエッチングレートを透光性基板1のエッチングレートの1/3以下とすることができる。すなわち、透光性基板1とエッチングストッパー膜2との間で3倍以上のエッチング選択比が得られる。また、エッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は3/4以下であるとより好ましく、2/3以下であるとさらに好ましい。Si/[Si+Al]比率が2/3以下の場合、フッ素系ガスによるドライエッチングに対するエッチングストッパー膜2のエッチングレートを透光性基板1のエッチングレートの1/5以下とすることができる。すなわち、透光性基板1とエッチングストッパー膜2との間で5倍以上のエッチング選択比が得られる。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)のSi/[Si+Al]比率が1/5以上であることが好ましい。エッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を1/5以上とすることにより、露光光に対する透光性基板1(合成石英ガラス)の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率を95%以上とすることができる。また、同時に、薬液洗浄に対する耐性も高くすることができる。また、エッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は1/3以上であるとより好ましい。Si/[Si+Al]比率が1/3以上の場合、露光光に対する透光性基板(合成石英ガラス)1の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率を97%以上とすることができる。
エッチングストッパー膜2は、アルミニウム以外の金属の含有量を2原子%以下とすることが好ましく、1原子%以下とするとより好ましく、X線光電子分光法による組成分析を行ったときに検出下限値以下であるとさらに好ましい。エッチングストッパー膜2がアルミニウム以外の金属を含有していると、露光光に対する透過率が低下する要因となるためである。また、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素以外の元素の合計含有量が5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料で形成するとよい。ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料とは、これらの構成元素のほか、スパッタ法で成膜する際、エッチングストッパー膜2に含有されることが不可避な元素(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の希ガス、水素(H)、炭素(C)等)のみを含有する材料のことをいう。エッチングストッパー膜2中にケイ素やアルミニウムと結合する他の元素の存在を極小にすることにより、エッチングストッパー膜2中におけるケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合の比率を大幅に高めることができる。このため、エッチングストッパー膜2に含有されることが不可避な上記元素(希ガス、水素、炭素等)においても合計含有量は3原子%以下が好ましい。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング耐性をより高くし、薬液洗浄に対する耐性をより高め、露光光に対する透過率をより高めることができる。エッチングストッパー膜2は、アモルファス構造とすることが好ましい。より具体的には、エッチングストッパー膜2は、ケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合を含む状態のアモルファス構造であることが好ましい。このことにより、エッチングストッパー膜2の表面粗さを良好なものとすることができつつ、露光光に対する透過率を高めることができる。
エッチングストッパー膜2は、厚さが3nm以上であることが好ましい。エッチングストッパー膜2をケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成することにより、フッ素系ガスに対するエッチングレートが大幅に小さくはなっても、全くエッチングされないわけではない。また、エッチングストッパー膜2を薬液洗浄した場合においても、全く膜減りしないというわけではない。マスクブランクから位相シフトマスクを製造するまでに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングによる影響、薬液洗浄による影響を考慮すると、エッチングストッパー膜2の厚さは3nm以上あることが望まれる。エッチングストッパー膜2の厚さは4nm以上であると好ましく、5nm以上であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、露光光に対する透過率が高い材料を適用してはいるが、厚さが厚くなるにつれて透過率は低下する。また、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1を形成する材料よりも屈折率が高く、エッチングストッパー膜2の厚さが厚くなるほど、位相シフト膜3に実際に形成するマスクパターン(マスクパターンバイアス補正やOPC(Optical Proximity Correction)やSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)等を付与したパターン)を設計する際に与える影響が大きくなる。これらの点を考慮すると、エッチングストッパー膜2は、20nm以下であることが望まれ、15nm以下であると好ましく、10nm以下であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する屈折率n(以下、単に屈折率nという。)が1.73以下であると好ましく、1.72以下であるとより好ましい。位相シフト膜3に実際に形成するマスクパターンを設計する際に与える影響を小さくするためである。エッチングストッパー膜2は、アルミニウムを含有する材料で形成されるため、透光性基板1と同じ屈折率nとすることができない。エッチングストッパー膜2は、屈折率nが1.57以上で形成される。一方、エッチングストッパー膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する消衰係数k(以下、単に消衰係数kという。)が0.04以下であると好ましい。エッチングストッパー膜2の露光光に対する透過率を高くするためである。エッチングストッパー膜2は、消衰係数kが0.000以上の材料で形成される。
エッチングストッパー膜2は、厚さ方向で組成の均一性が高い(すなわち、厚さ方向における各構成元素の含有量の差が5原子%以内の変動幅に収まっている)ことが好ましい。他方、エッチングストッパー膜2を、厚さ方向で組成傾斜した膜構造としてもよい。この場合、エッチングストッパー膜2の透光性基板1側のSi/[Si+Al]比率を位相シフト膜3側のSi/[Si+Al]比率よりも高くなるような組成傾斜とすることが好ましい。エッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3側がフッ素系ガスによるドライエッチングの耐性が高く、かつ薬液耐性が高いことが優先的に望まれる反面、透光性基板1側の方は、露光光に対する透過率が高いことが望まれるためである。
透光性基板1とエッチングストッパー膜2の間に他の膜を介在させてもよい。この場合、他の膜は、エッチングストッパー膜2よりも露光光に対する透過率が高く、屈折率nが小さい材料を適用することが求められる。マスクブランクから位相シフトマスクが製造されたとき、その位相シフトマスクにおける位相シフト膜3のパターンがない領域の透光部には、この他の膜とエッチングストッパー膜2との積層構造が存在することになる。透光部は露光光に対する高い透過率が求められ、この積層構造全体での露光光に対する透過率を高くする必要があるためである。他の膜の材料は、例えば、ケイ素と酸素からなる材料、あるいはこれらにハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)およびホウ素(B)から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。上記のほかの膜を、ケイ素とアルミニウムおよび酸素を含有する材料であり、エッチングストッパー膜2よりもSi/[Si+Al]比率が高い材料で形成してもよい。この場合においても、他の膜の方が露光光に対する透過率が高くなり、屈折率nは小さくなる(透光性基板1の材料により近づく。)。
位相シフト膜3は、ケイ素と酸素を含有する露光光に対して透明な材料からなり、所定の位相差を有するものである。具体的には、遮光膜5で形成されたパターン(遮光部)に挟まれた遮光膜5が存在しない2つの透光部のうち一方の透光部のみ位相シフト膜3をパターニングし、位相シフト膜3が存在している透光部と存在していない透光部とを形成し、位相シフト膜3が存在していない透光部を透過した露光光(ArFエキシマレーザー露光光)に対して、位相シフト膜3が存在している透光部を透過した露光光の位相が実質的に反転した関係(所定の位相差)になるようにする。こうすることにより、回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が打ち消し合うようにして、境界部における光強度をほぼゼロとし、境界部のコントラスト、即ち解像度を向上させるものである。レベンソン型位相シフトマスクの場合には、この境界部に遮光部が存在するが、その遮光部の両側から透過してくる光同士の干渉によってよりコントラストの高い光学像が得られる。
位相シフト膜3は、露光光を95%以上の透過率で透過させる機能(透過率)と、位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することが好ましい。また、この位相シフト膜3の位相差は、150度以上180度以下であるとより好ましい。位相シフト膜3の露光光透過率は、露光効率向上の観点から、96%以上であるとより好ましく、97%以上であるとさらに好ましい。
近年、位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)に露光転写する際、位相シフトパターンのパターン線幅(特にライン・アンド・スペースパターンのパターンピッチ)による露光転写のベストフォーカスの差が大きいことが問題となってきている。位相シフトパターンのパターン線幅によるベストフォーカスの変動幅を小さくするには、位相シフト膜3における所定の位相差を170度以下とするとよい。
位相シフト膜3の厚さは180nm以下であることが好ましく、177nm以下であるとより好ましく、175nm以下であるとより好ましい。一方で、位相シフト膜3の厚さは143nm以上であることが好ましく、153nm以上であるとより好ましい。
位相シフト膜3において、前記の光学特性と膜の厚さに係る諸条件を満たすため、位相シフト膜の露光光(ArFエキシマレーザー光)に対する屈折率nは、1.52以上であると好ましく、1.54以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の屈折率nは、1.68以下であると好ましく、1.63以下であるとより好ましい。位相シフト膜3のArFエキシマレーザー露光光に対する消衰係数kは、0.02以下が好ましく、0に近いことがより好ましい。
なお、位相シフト膜3を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜するときの諸条件を調整して、その薄膜が所定の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。位相シフト膜3を反応性スパッタリングで成膜する場合、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、希ガスと反応性ガス(酸素ガス)の混合ガスの比率を調整することが有効であるが、それだけに限られることではない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板1との間の距離等の位置関係など多岐に渡る。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される位相シフト膜3が所定の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
従来のレベンソン型位相シフトマスクの場合、透光性基板を所定の深さまで掘り込んで掘込部を形成し、その掘込部の深さによって非掘込部と掘込部を透過する各露光光の間の位相差(位相シフト量)を調節する。その透光性基板が合成石英で形成されており、ArFエキシマレーザーを露光光に適用し、その位相差を例えば180度にする場合、必要となる掘込部の深さは173nm程度となる。近年のバイナリマスクの遮光膜やハーフトーン型位相シフトマスクのハーフトーン位相シフト膜の厚さは、100nm未満であることが多い。これらの薄膜にドライエッチングでパターンを形成する場合に比べ、透光性基板にドライエッチングで掘込部を形成する場合の方が、エッチングする深さが大幅に深い。
ドライエッチングで形成する掘込部の深さが深いほど、各掘込部間の線幅や形状の相違等によって生じる各掘込部を形成するときのドライエッチングにおけるエッチングレート差が大きくなりやすい傾向がある。転写用マスクにおける転写パターンの微細化は著しく、掘込部の線幅も非常に細くなってきている。掘込部の線幅が細くなるほどエッチングガスが掘込部に入り込みにくくなるため、面内での各掘込部間でのエッチングレート差はより大きくなりやすい。
従来行われている透光性基板に掘込部を形成するドライエッチングでは、透光性基板上に設けられた位相シフト膜をエッチングでパターニングする場合と異なり、エッチング終点を検出する方法がない。一般的な掘込レベンソン型の位相シフトマスクにおける掘込部の形成は、基板の表面から掘り込むドライエッチングのエッチング時間で調整している。このため、面内での各掘込部間でのエッチングレート差が大きいと、出来上がる位相シフトマスクにおける各掘込部の掘込深さの差が大きくなり、面内での位相シフト効果に差が生じる恐れがあるという問題があった。
一方、掘込部のパターンの側壁の垂直性をより高めることを目的に、透光性基板に掘込部を形成するドライエッチング時に掛けるバイアス電圧を従来よりも高くする(以下、「高バイアスエッチング」という。)ことが行われている。しかし、この高バイアスエッチングを行うことによって、掘込部の側壁近傍の底面が局所的にエッチングでさらに掘り込まれる現象、いわゆるマイクロトレンチが発生することが問題となっている。このマイクロトレンチの発生は、透光性基板にバイアス電圧を掛けることで生じるチャージアップにより、イオン化したエッチングガスが透光性基板よりも抵抗値の低い掘込部近傍の遮光膜のパターン側壁側に引き寄せられることに起因していると考えられている。
他方、透光性基板1に掘込部を形成するのではなく、透光性基板1上にAlで形成されたエッチングストッパー膜と透過率が高い材料で形成された位相シフト膜3をこの順に積層し、位相シフト膜3をドライエッチングして掘込部に代わる位相シフトパターンを形成する場合を考える。すなわち、位相シフト膜3に位相シフトパターン3c(図2参照)を形成し、その位相シフトパターン3cの側壁とエッチングストッパー膜の底面とからなる構造体が掘込部と同様の光学的機能を有する。この場合、位相シフト膜3に位相シフトパターン3cを形成するドライエッチングを行うときに面内のエッチングレート差が大きいと、ドライエッチングの進行が面内のある箇所で先に位相シフト膜3の下端まで到達することが生じる。しかし、そのまま面内の他の全ての箇所で位相シフト膜3の下端に到達するまでドライエッチングを継続した場合、先に位相シフト膜3が全て除去された領域でエッチングストッパー膜がエッチングガスに晒されてもエッチングされる量は微小であり、透光性基板1はドライエッチングされることはない。このため、最終的に出来上がった位相シフトパターン3cとエッチングストッパー膜とからなる構造体は、その高さ方向(厚さ方向)の均一性が高い。このため、出来上がる位相シフトマスクは面内での位相シフト効果の差を小さくできる。
また、エッチングストッパー膜が設けられていることにより、高バイアスエッチングで生じやすいマイクロトレンチも抑制できる。しかし、その後に薬液洗浄を行われなければならず、薬液洗浄に対する耐性の低いエッチングストッパー膜が溶解してしまい、位相シフトパターンが脱落するという問題がある。
このエッチングストッパー膜の洗浄液耐性の問題を解決するため、第1の実施の形態のエッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料としている。このようにすることによって、位相シフト膜3に対してオーバーエッチングを行っても、エッチングストッパー膜2が消失するようなことはなく、高バイアスエッチングで生じやすいマイクロトレンチも抑制でき、さらにその後に行われる薬液洗浄に対する耐性も十分に高く、位相シフトパターンが脱落する現象も抑制される。
位相シフト膜3は、単層で構成してもよく、また複数層の積層で構成してもよいが、ケイ素および酸素を含有する材料からなる。ケイ素に酸素を含有させることで、露光光に対して高い透明度を確保することができ、位相シフト膜として好ましい光学特性を得ることができる。
位相シフト膜3は、上述のようにケイ素と酸素を含有する材料からなるが、露光光に対する透過率や耐光性を高め、また、ドライエッチングによる加工性を高めるためには、ケイ素と酸素以外の元素の含有量を5原子%以下とすることが好ましく、3原子%以下とすることがより好ましい。さらに好ましくは、ケイ素と酸素からなる材料、例えばSiOが好ましい。位相シフト膜3をスパッタ法で成膜する場合は、この膜にバッファーガスとして用いられたヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の希ガスや、真空中に存在する水素(H)、炭素(C)等が不可避的に含有されるが、その場合でも、成膜条件を最適化することや、成膜後にアニールを行うことにより、位相シフト膜3に含まれるケイ素と酸素以外のこれらの元素の合計含有量を5原子%以下にすることが好ましく、3原子%以下とすることがより好ましい。
酸化ケイ素系材料の位相シフト膜3は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、SiOターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することが好ましい。
EB欠陥修正のエッチング終点検出は、黒欠陥に対して電子線を照射したときに、照射を受けた部分から放出されるオージェ電子、2次電子、特性X線、後方散乱電子の少なくともいずれか1つを検出することによって行われている。例えば、電子線の照射を受けた部分から放出されるオージェ電子を検出する場合には、オージェ電子分光法(AES)によって、主に材料組成の変化を見ている。また、2次電子を検出する場合には、SEM像から主に表面形状の変化を見ている。さらに、特性X線を検出する場合には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や波長分散X線分光法(WDX)によって、主に材料組成の変化を見ている。後方散乱電子を検出する場合には、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって、主に材料の組成や結晶状態の変化を見ている。
ガラス材料からなる透光性基板1の主表面に接してケイ素と酸素を含有する材料からなる位相シフト膜3が設けられた構成のマスクブランクでは、透光性基板1の主構成元素がケイ素と酸素であることから、透光性基板1と位相シフト膜3の差は、基本的に、ケイ素と酸素の僅かな構成比率の差と分子結合状態の差でしかない。このため、EB欠陥修正のエッチング終点の検出が困難な組み合わせであった。これに対し、エッチングストッパー膜2の表面に接して位相シフト膜3が設けられた構成の場合、位相シフト膜3がケイ素と酸素がほとんどの成分であるのに対し、エッチングストッパー膜2にはケイ素と酸素のほかにアルミニウムが含まれている。このため、EB欠陥修正のエッチング終点検出では、アルミニウムの検出を目安にすればよく、終点検出が比較的容易となる。
遮光膜5は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であってもよく、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
図1に記載のマスクブランク101は、位相シフト膜3の上に、他の膜を介さずに遮光膜5を積層した構成となっている。この構成の場合の遮光膜5では、位相シフト膜3にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。
この条件を満たす材料として、本実施の形態1では、クロムを含有する材料を遮光膜5としている。遮光膜5を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)およびフッ素(F)から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が挙げられる。一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜5を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が好ましい。また、遮光膜を形成するクロムを含有する材料にモリブデン(Mo)、インジウム(In)およびスズ(Sn)のうち1つ以上の元素を含有させてもよい。モリブデン、インジウムおよびスズのうち1つ以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスに対するエッチングレートをより速くすることができる。
クロムを含有する材料からなる遮光膜5は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。この中で、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することが好ましい。
遮光膜5は、露光光を高い遮光率で遮光する機能が求められる。位相シフトパターン3cのスペース部(従来の掘込レベンソン型位相シフトマスクの掘込部に相当)を透過する露光光と上部に遮光パターン5a(図2参照)がないパターン部(従来の掘込レベンソン型位相シフトマスクの透光部に相当)を透過する露光光との間で生じる位相シフト効果を高めるには、遮光パターン5aから露光光が透過しないことが好ましいためである。これらのことから、バイナリマスクと同様に、遮光膜5は、2.0よりも大きい光学濃度(OD)を確保することが求められ、2.8以上のODがあると好ましく、3.0以上のODがあるとより好ましい。ここで、図2に示されているように、遮光帯形成領域901とは、露光転写の対象となるパターン(回路パターン)が形成されているパターン形成領域900の外側に形成された遮光領域のことで、ウェハへの露光転写の際に隣接露光による悪影響(露光光の被り)を防止する目的で形成される。
本実施の形態1では、遮光膜5上にハードマスク膜6を積層することができる(図3参照)。ハードマスク膜6は、遮光膜5をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成している。これにより、以下に述べるように、レジスト膜を遮光膜5のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の厚さを大幅に薄くすることができる。
遮光膜5は、上記のとおり、所定の光学濃度を確保して十分な遮光機能を有する必要があるため、その厚さの低減には限界がある。一方、ハードマスク膜6は、その直下の遮光膜5にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜厚があれば十分であり、基本的に光学面での制限を受けない。このため、ハードマスク膜6の厚さは、遮光膜5の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜6にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜厚があれば十分であるので、レジスト膜を遮光膜5のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の膜厚を大幅に薄くすることができる。このようにレジスト膜を薄膜化できるため、レジスト解像度を向上できるとともに、形成されるパターンの倒壊を防止することができる。
このように、遮光膜5上に積層したハードマスク膜6を上述の材料で形成することが好ましいが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、マスクブランク101において、ハードマスク膜6を形成せずに、遮光膜5上にレジストパターンを直接形成し、そのレジストパターンをマスクにして遮光膜5のエッチングを直接行うようにしてもよい。
このハードマスク膜6は、遮光膜5がクロムを含有する材料で形成されている場合は、ケイ素(Si)を含有する材料で形成されることが好ましい。ここで、この場合のハードマスク膜6は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜6の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜6は、SiO、SiN、SiON等で形成されるとより好ましい。
また、遮光膜5がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜6の材料として、タンタル(Ta)を含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。なお、この場合におけるハードマスク膜6は、ケイ素を含まないようにして形成することが好ましい。ケイ素の許容含有量は、5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、実質的に含有していないとさらに好ましい。
マスクブランク101において、ハードマスク膜6の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜6に形成すべき転写用パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)が設けられることがある。このような場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比は1:2.5と低くなるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊することや脱離することが抑制される。なお、レジスト膜の膜厚は、80nm以下であると、レジストパターンの倒壊や脱離がさらに抑制されるため、より好ましい。
エッチングストッパー膜2、位相シフト膜3、遮光膜5、ハードマスク膜6は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用するとより好ましい。
エッチングストッパー膜2の成膜方法に関しては、成膜室内にケイ素および酸素の混合ターゲットとアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットの2つのターゲットを配置し、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を形成することが好ましい。具体的には、その成膜室内の基板ステージに透光性基板1を配置し、アルゴンガス等の希ガス雰囲気下(あるいは、酸素ガスまたは酸素を含有するガスとの混合ガス雰囲気)で、2つのターゲットのそれぞれに所定の電圧を印加する(この場合、RF電源が好ましい。)。これにより、プラズマ化した希ガス粒子が2つのターゲットに衝突してそれぞれスパッタ現象が起こり、透光性基板1の表面にケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2が形成される。なお、この場合の2つのターゲットにSiOターゲットとAlターゲットを適用するとより好ましい。
このほか、ケイ素、アルミニウムおよび酸素の混合ターゲット(好ましくは、SiOとAlの混合ターゲット、以下同様。)のみでエッチングストッパー膜2を形成してもよく、ケイ素、アルミニウムおよび酸素の混合ターゲットとケイ素ターゲット、あるいはアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットとアルミニウムターゲットの2つのターゲットを同時放電させ、エッチングストッパー膜2を形成してもよい。
以上のように、この実施の形態1のマスクブランク101は、透光性基板1と位相シフト膜3の間に、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2を備えている。そして、このエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3に位相シフトパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板1に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たす。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで位相シフト膜3に位相シフトパターン3cを形成するときにエッチングストッパー膜2がエッチングされることを大幅に抑制できる。そして、その形成された位相シフトパターン3cとエッチングストッパー膜2の底面とからなる各構造体は、面内における高さ方向(厚さ方向)の均一性が大幅に高くなる。このため、最終的に出来上がる位相シフトマスク201は、面内での位相シフト効果の均一性が高い。また、位相シフトマスクの製造途上で発見された位相シフトパターンの欠陥をEB欠陥修正で修正するときに、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく欠陥を修正することができる。
[位相シフトマスクとその製造]
この第1の実施形態に係る位相シフトマスク201(図2参照)では、マスクブランク101のエッチングストッパー膜2は透光性基板1の主表面上の全面で残され、位相シフト膜3に位相シフトパターン3cが形成され、遮光膜5に遮光パターン5aが形成されていることを特徴としている。マスクブランク101にハードマスク膜6が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク201の作製途上でハードマスク膜6は除去される(図3参照)。
すなわち、この第1の実施形態に係る位相シフトマスク201は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、位相シフトパターン3c、および遮光パターン5aがこの順に積層された構造を備え、位相シフトパターン3cは、ケイ素および酸素を含有する材料からなり、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなることを特徴とするものである。
この第1の実施形態に係る位相シフトマスク201の製造方法は、前記のマスクブランク101を用いるものであり、塩素系ガスを用いるドライエッチングにより遮光膜5に遮光帯を含む遮光パターン5aを形成する工程と、遮光パターン5aを有する遮光膜5とレジストパターン8bを有するレジスト膜をマスクとして、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより位相シフト膜3に位相シフトパターン3cを形成する工程とを備えることを特徴としている(図3参照)。
以下、要部断面構造図である図3に示す製造工程にしたがって、この第1の実施形態に係る位相シフトマスク201の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜5の上にハードマスク膜6が積層されたマスクブランク101を用いて位相シフトマスク201を製造する方法について説明する。また、実施の形態1では、遮光膜5にクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜6にはケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク101におけるハードマスク膜6に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜5に形成すべき遮光パターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第1のレジストパターン7aを形成する(図3(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン7aをマスクとして、CF等のフッ素系ガスを用いた第1のドライエッチングを行い、ハードマスク膜6に第1のハードマスクパターン6aを形成する(図3(b)参照)。
次に、レジストパターン7aを除去してから、ハードマスクパターン6aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いた第2のドライエッチングを行い、遮光膜5に第1の遮光パターン5aを形成する(図3(c)参照)。この第2のドライエッチングにより、ハードマスクパターン6aは、膜厚がこのドライエッチング前の膜厚よりも薄くなる。
続いて、レジスト膜をスピン塗布法によって形成し、その後、レジスト膜に対して、電子線で描画して、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第2のレジストパターン8bを形成する(図3(d)参照)。
その後、CF等のフッ素系ガスを用いた第3のドライエッチングを行い、位相シフト膜3に位相シフトパターン3cを形成する(図3(e)参照)。この位相シフト膜3に対する第3のドライエッチングでは、第2のレジストパターン8bと遮光パターン5aがエッチングマスク用のパターンになるが、位相シフトパターン3cのエッジ部の位置を決めるのは遮光パターン5aのエッジ部のため、第2のレジストパターン8bの描画転写位置精度(アライメント精度)は、比較的緩いものとすることができる。なお、この第3のドライエッチングにより、ハードマスクパターン6aは、第2のレジストパターン8bをマスクにしてドライエッチングされたハードマスクパターン6dとなる。
この位相シフト膜3のフッ素系ガスによる第3のドライエッチングの際、位相シフトパターン3cのパターン側壁の垂直性を高めるため、また位相シフトパターン3cの面内のCD(Critical Dimension)均一性を高めるために追加のエッチング(オーバーエッチング)を行う。そのオーバーエッチング後においても、エッチングストッパー膜2の表面は微小にエッチングされる程度であり、位相シフトパターン3cの開口部の表面701において透光性基板1の表面は露出しない。
その後、第2のレジストパターン8bをアッシングや剥離液等を用いて除去し(図3(f)参照)、次いで、遮光パターン5aの上に残っているハードマスクパターン6dを除去する(図3(g)参照)。ハードマスクパターン6dの除去は、フッ素系ガスのドライエッチングで行うことができる。なお、ハードマスクパターン6dを除去せずに残したままでも露光転写に影響が少ないため、ハードマスクパターン6dを残しておくことも可能ではあるが、マスクパターン欠陥検査のときに疑似欠陥の発生源となりうることから、除去しておくことが好ましい。
その後、洗浄工程を行って、必要に応じてマスク欠陥検査を行う。さらに、欠陥検査の結果によっては必要に応じて欠陥修正を行なって、位相シフトマスク201が製造される。ここでの洗浄工程ではアンモニア過水を用いたが、エッチングストッパー膜2の表面はほとんど溶解しておらず、位相シフトパターン3cの開口部(その表面701)において透光性基板1の表面は露出しなかった。
なお、遮光膜5のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、塩素(Cl)が含まれていれば特に制限はない。例えば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、BCl等が挙げられる。また、マスクブランク101は、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を備えているため、ハードマスク膜6および位相シフト膜3のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスは、フッ素(F)が含まれていれば特に制限はない。例えば、CHF、CF、C、C、SF等が挙げられる。
この実施の形態1の位相シフトマスク201は、前記のマスクブランク101を用いて作製されたものである。このため、この実施の形態1の位相シフトマスク201は、位相シフトパターン3cの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3cの面内のCD均一性も高い。位相シフトパターン3cとエッチングストッパー膜2の底面とからなる各構造体は、面内における高さ方向(厚さ方向)の均一性も大幅に高い。このため、この位相シフトマスク201は、面内での位相シフト効果の均一性が高い。また、位相シフトマスク201の製造途上において、位相シフトパターン3cに欠陥が発見され、その欠陥に対してEB欠陥修正で修正するとき、エッチングストッパー機能が高いことと、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく欠陥を修正することができる。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態1の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態1の位相シフトマスク201または実施の形態1のマスクブランク101を用いて製造された位相シフトマスク201を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。実施の形態1の位相シフトマスク201は、位相シフトパターン3cの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3cの面内のCD均一性も高く、面内での位相シフト効果の均一性も高い。このため、実施の形態1の位相シフトマスク201を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、その製造途上で位相シフトパターン3cに存在していた欠陥をEB欠陥修正で修正した位相シフトマスクを用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合においても、精度よく欠陥が修正されており、その位相シフトマスクの欠陥が存在していた位相シフトパターン3cの部分に対応する半導体デバイス上のレジスト膜に転写不良が発生することを防止できる。このため、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
なお、ここまでは第1の実施形態のマスクブランクをレベンソン型の位相シフトマスクを製造するために適用する態様について説明してきた。しかし、この第1の実施形態のマスクブランクは、CPL(Chromeless Phase Lithography)マスクを製造する用途にも同様に適用できる。CPLマスクは、転写パターン形成領域内は、大パターンの領域を除いて、基本的に遮光膜は設けられず、透光性基板の掘込部と非掘込部とによって転写パターンを構成するタイプの位相シフトマスクである。一般に、CPLマスクは、非掘込部と掘込部の繰り返しパターンが透光性基板に形成されている。また、非掘込部を透過する露光光と掘込部を透過する露光光との間で干渉効果(位相シフト効果)が生じるように掘込部の深さが調整されている。
CPLマスクでは、非掘込部を透過した露光光がその非掘込部の両側を挟む2つの掘込部から透過した各露光光の回折光に干渉され、その領域の露光光の光量はほぼゼロとなり、この領域がCPLマスクを透過した光学像の暗部領域になる。第1の実施形態のマスクブランクは、このCPLマスクの掘込部を、位相シフト膜3のパターンとエッチングストッパー膜2による構造体で代わることができるため、CPLマスクを容易に製造することができる。なお、この第1の実施形態のマスクブランクをCPLマスクの製造に適用した場合の効果については、上記のレベンソン型位相シフトマスクに適用した場合と同様である。
<第2の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第2の実施形態に係るマスクブランクは、遮光膜とハードマスク膜の材料を実施の形態1で使用したものから変更した位相シフトマスク用のマスクブランクである。第2の実施の形態のマスクブランクにおいては、遮光膜5をケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有した膜とし、ハードマスク膜6はクロムを含有した膜としている。そのほかの第2の実施形態に係るマスクブランクの構成については、第1の実施形態のマスクブランクと同様である。この第2の実施形態に係るマスクブランクは、第1の実施形態のマスクブランクの場合と同様の効果が得られる。また、この第2の実施形態のマスクブランクは、同様にCPLマスクの製造にも適用できる。
遮光膜5には、遮光性、加工性、膜の平滑性、量産性、および低欠陥性が求められる。
このような特性を有する材料としては、ケイ素を含有する材料や、遷移金属およびケイ素を含有する材料が挙げられる。遷移金属およびケイ素を含有する材料は、遷移金属を含有しないケイ素を含有する材料に比べて遮光性能が高く、遮光膜5の厚さを薄くすることが可能となる。遮光膜5に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。また、ケイ素を含有する材料で遮光膜5を形成する場合、遷移金属以外の金属(スズ(Sn)インジウム(In)、ガリウム(Ga)等)を含有させてもよい。
遮光膜5は、ケイ素と窒素からなる材料、またはケイ素と窒素からなる材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成することができる。この場合の遮光膜5には、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると、遮光膜5をスパッタリング法で成膜するときにターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
遮光膜5は、下層と上層を含む積層構造である場合、下層をケイ素からなる材料またはケイ素に炭素、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成し、上層をケイ素と窒素からなる材料またはケイ素と窒素からなる材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成することができる。
遮光膜5は、タンタルを含有する材料で形成してもよい。この場合、遮光膜5のケイ素の含有量は、5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、実質的に含有していないとさらに好ましい。これらのタンタルを含有する材料は、フッ素系ガスによるドライエッチングで転写パターンをパターニング可能な材料である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
遮光膜5を形成する材料には、光学濃度が大きく低下しない範囲であれば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)、水素(H)から選ばれる1以上の元素を含有させてもよい。特に窒素を含有させたタンタル窒化膜(TaN膜)は、遮光膜の平滑性が向上し、遮光パターンのラフネスが改善される傾向がある。また、Ta金属は大気中で酸化しやすいため、マスクパターン作製後にTa金属単体からなるパターン側壁が露出すると、時間とともに線幅が変化するという問題がある。Ta金属に窒素を加えると酸化しにくくなるので、遮光膜5にタンタル(Ta)を用いる場合は、窒素を含有させるのが好ましい。また、タンタル窒化膜の平滑性をさらに向上させるため、タンタル窒化膜にホウ素、炭素等を加えてもよい。これらの元素はTa金属が有する遮光性能もしくはエッチング性能を低下させるため、添加量は20原子%以下が好ましい。具体的にはホウ素、炭素を添加すると遮光性能が低下する。炭素を添加すると、エッチング速度が低下する。
遮光膜5は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。遮光膜5の透光性基板1とは反対側の表面における露光光に対する反射率を低減させるために、その透光性基板1とは反対側の表層(下層と上層の2層構造の場合は上層。)に酸素や窒素を多く含有させてもよい。
ハードマスク膜6は、クロムを含有する材料で形成されている。また、ハードマスク膜6は、クロムのほかに、窒素、酸素、炭素、水素およびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料で形成するとより好ましい。ハードマスク膜6は、これらのクロムを含有する材料に、インジウム(In)、スズ(Sn)およびモリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(以下、これらの金属元素を「インジウム等金属元素」という。)を含有させた材料で形成してもよい。
[位相シフトマスクとその製造]
この第2の実施形態に係る位相シフトマスクは、遮光膜5を形成する材料が変わったこと以外は、第1の実施形態に係る位相シフトマスクと同様であり、これにより得られる効果も同様である。
この第2の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法が、第1の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法と相違する点は、遮光膜5を形成する材料が変わったことと、ハードマスク膜6を形成する材料が変わったことによって変更する必要性が生じたプロセスのみである。具体的には、ハードマスク膜6に第1のハードマスクパターン6aを形成するため行われる第1のドライエッチングは、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いる。遮光膜5に遮光パターン5aを形成するため行われる第2のドライエッチングは、フッ素系ガスを用いる。
この第2の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法では、位相シフト膜3に位相シフトパターン3cを形成するときのフッ素系ガスによる第3のドライエッチング時、ハードマスクパターン6aのパターン形状は、基本的に変わらない。この第2の実施の形態におけるハードマスク膜6は、クロムを含有する材料で形成されており、フッ素系ガスに対して高いエッチング耐性を有するためである。そして、このハードマスクパターン6aは、この第3のドライエッチング時、遮光パターン5aがフッ素系ガスでエッチングされないように保護する役割を担う。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態2の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態2の位相シフトマスクを用いること以外は、実施の形態1の半導体デバイスの製造方法と同様である。また、実施の形態2の位相シフトマスクを用いることによって得られる効果についても、実施の形態1の半導体デバイスの製造方法と同様である。
<第3の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第3の実施形態に係るマスクブランク103(図4参照)は、実施の形態1で説明したマスクブランク構造の位相シフト膜3を、積層型の位相シフト膜4としたものである。すなわち、この積層型の位相シフト膜4は、ケイ素と酸素を含有する材料(SiO系材料)からなる下層31とケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料(SiAlO系材料)からなるエッチングストッパー機能を持つ上層32で構成される。位相シフト膜4は、下層31と上層32とを合わせて所定の位相差を得るものである(図4参照)。実施の形態3における透光性基板1、エッチングストッパー膜2、遮光膜5、およびハードマスク膜6は実施の形態1と同じものであり、材料も製法も同じである。下層31も実施の形態1における位相シフト膜3と同じ材料で、同じ製法によるものである。
実施の形態3における下層31は、下層31と上層32の積層構造の位相シフト膜4の全体によって露光光に対して所定の位相差を付与するようにする必要があるため、実施の形態1における位相シフト膜3とは、膜厚が異なっている。詳しく述べると、この位相シフト膜4は、この位相シフト膜4を透過した露光光に対し、この位相シフト膜4の厚さと同じ距離だけ空気中を透過した露光光との間で、150度以上200度以下(好ましくは150度以上180度以下)の位相差を生じさせる機能を有し、露光光に対する透過率は少なくとも95%以上とする。位相シフト膜4の透過率は、96%以上であるとより好ましく、97%以上であるとさらに好ましい。ここで、SiAlO系材料からなる上層32の膜厚は、3nm以上、好ましくは4nm以上、より好ましくは5nm以上で、20nm以下、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下である。一方、SiO系材料からなる下層31の膜厚は、120nm以上、好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上で、170nm以下、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下である。以下、実施の形態1と相違する点を中心にして、実施の形態3について述べる。
上層32は、構成元素等については、エッチングストッパー膜2と同様である。上層32とエッチングストッパー膜2を同じ構成元素および組成とすることができ、また、異なる構成元素および組成とすることもできる。上層32は、上述した位相シフト機能とともに、ハードマスクパターン6dを除去するときに位相シフトパターンの表面がエッチングされないようにするエッチングストッパー機能を兼ね備える。すなわち、ハードマスクパターンを除去する際のエッチングによって、露出した上層パターン32cの表面700がエッチングされて、位相シフトパターンの膜厚が所定の値から外れたり、その表面が荒れたりすることを防止するためのものである(図6参照)。膜厚が所定の値から外れると、位相シフトパターンの露光光に対する位相差が所定の値から外れる恐れがあり、表面が荒れると露光光の透過率が下がる可能性がある。
[位相シフトマスクとその製造]
この第3の実施形態に係る位相シフトマスク203(図5参照)では、実施の形態1の特徴に加え、位相シフトパターン4cが、下層パターン31cと上層パターン32cとの積層パターンからなっており、その積層構造によって露光光に対して所定の位相差を与える位相シフトパターンとなっていることが第1の特徴である。そして、エッチングストッパー機能を有する上層パターン32c上に遮光パターン5aが形成されていることが第2の特徴である。
すなわち、この第3の実施形態に係る位相シフトマスク203は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、位相シフトパターン4c、および遮光パターン5aがこの順に積層された構造を備え、位相シフトパターン4cは、ケイ素および酸素を含有する材料からなる下層パターン31cと、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなる上層パターン32cがこの順に積層された構造を備え、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなることを特徴とするものである。
この第3の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランク103を用いるものであり、以下、図6に示す製造工程にしたがって、この第3の実施形態に係る位相シフトマスク203の製造方法を説明する。ここでは、遮光膜5にクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜6にはケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、第1のレジストパターン7aを形成し(図6(a)参照)、続いて、レジストパターン7aをマスクとして、CF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜6にハードマスクパターン6aを形成する(図6(b)参照)。次に、レジストパターン7aを除去してから、ハードマスクパターン6aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜5に第1の遮光パターン5aを形成する(図6(c)参照)。
続いて、位相シフトパターン4cを形成するための第2のレジストパターン8bを形成する(図6(d)参照)。その後、塩化ホウ素(BCl)と塩素(Cl)の混合ガスを用いたドライエッチングを行い、上層32に上層パターン32cを形成(図6(e)参照)し、引き続いてCF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行って下層31に下層パターン31cを形成する(図6(f)参照)。このようにして、下層パターン31cと上層パターン32cからなる位相シフトパターン4cを形成する。
その後、第2のレジストパターン8bをアッシングや剥離液等を用いて除去し(図6(g)参照)、さらに、残存するハードマスクパターン6dをCF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングで除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク203を得る(図6(h)参照)。この際、上層パターン32cの表面700が露出する部分においても、それを構成する材料がエッチングストッパー機能を有するSiAlO系材料であるため、その表面700はほとんどエッチングされず、位相シフトパターン4cは、露光光に対する所定の位相差が確保されたものとなる。ここでの洗浄工程においては、アンモニア過水を用いたが、エッチングストッパー膜2の表面はほとんど溶解しておらず、位相シフトパターン4cの透光部において透光性基板1の表面は露出しない。また、上層パターン32cが露出する表面700もほとんど溶解せず、所望の形状と膜厚を保っている。なお、前記のドライエッチングで使用されている塩素系ガスおよびフッ素系ガスは、実施の形態1で使用されているものと同様である。
実施の形態3の位相シフトマスク203は、下層パターン31cが主体を占める位相シフトパターン4cの側壁の垂直性が高く、面内のCD均一性も高く、面内での位相シフト効果の均一性も高い。このため、実施の形態3の位相シフトマスク203を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。なお、この第3の実施形態のマスクブランクは、第1の実施形態と同様にCPLマスクの製造にも適用できる。
<第4の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第4の実施形態に係るマスクブランクは、実施の形態3で説明したマスクブランク構造において、遮光膜5とハードマスク膜6を実施の形態2で説明した遮光膜5とハードマスク膜6の材料に変更したものである。すなわち実施の形態4では、遮光膜5をケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有した膜とし、ハードマスク膜6はクロムを含有した膜とした。その他に関しては実施の形態3のマスクブランクと同様である。この第4の実施形態に係るマスクブランクは、第3の実施形態のマスクブランクの場合と同様の効果が得られる。また、このような構成とすることにより、上層32が、遮光膜5をエッチングするときのエッチングストッパーとなる。このため、フッ素系ガスを使ったドライエッチングにより形成される遮光パターン5aの形状と面内CD均一性が向上するとともに、位相制御性の高い位相シフトパターン4cを得ることが可能になる。
この実施の形態4の遮光膜5は位相シフト膜4の上層32に接して設けられる。遮光膜5をEB欠陥修正で欠陥修正するときのエッチング終点検出のことを考慮すると、ケイ素を含有する材料で遮光膜5を形成する場合、その遮光膜5にはアルミニウムを含有させないことが好ましい。
[位相シフトマスクとその製造]
この第4の実施形態に係る位相シフトマスクは、遮光膜5を形成する材料を第2の実施形態に係る遮光膜の材料に変えたこと以外は、第3の実施形態に係る位相シフトマスクと同様であり、これにより得られる効果も同様である。この第4の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランクを用いるものであり、第3の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法との相違は、遮光膜5を形成する材料が変わったことと、ハードマスク膜6を形成する材料が変わったことによって変更が生じたプロセスのみである。その変更されるプロセスも第2の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法の対応するプロセスと同様とする。
この第4の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法では、上層32に上層パターン32cを形成するときのドライエッチング時、および下層31に下層パターン31cを形成するときのドライエッチング時において、ハードマスクパターン6aのパターン形状は、基本的に変わらない。この第4の実施の形態におけるハードマスク膜6は、クロムを含有する材料で形成されており、これらのエッチングガスに対して高いエッチング耐性を有するためである。そして、このハードマスクパターン6aは、この下層31のドライエッチング時、遮光パターン5aがフッ素系ガスでエッチングされないように保護する役割を担う。
ここで、フッ素ガスを用いたドライエッチングにて遮光パターン5aを形成する際、上層パターン32cの表面700が露出する部分においてもその表面はほとんどエッチングされない。それゆえ、下層パターン31cと上層パターン32cからなる位相シフトパターン4cは、露光光に対する所定の位相差が確保されたものとなる。この実施の形態4の位相シフトマスク203は、下層パターン31cが主体を占める位相シフトパターン4cの側壁の垂直性が高く、面内のCD均一性も高く、面内での位相シフト効果の均一性も高い。このため、実施の形態4の位相シフトマスク203を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。なお、この第4の実施形態のマスクブランクは、第1の実施形態の場合と同様にCPLマスクの製造にも適用できる。
<第5の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第5の実施形態に係るマスクブランク106(図7参照)は、実施の形態2で説明したマスクブランク構造において、位相シフト膜3と遮光膜5の間にハードマスク膜9を設けたものである。ハードマスク膜9は、ハードマスク膜6と同様にクロムを含有する材料で形成されている。ハードマスク膜9に係るその他の事項については、ハードマスク膜6の場合と同様である。この第5の実施形態に係るマスクブランクは、特にCPLマスクを製造する用途で好適である。
[位相シフトマスクとその製造]
この第5の実施形態に係る位相シフトマスク206(図8参照)は、CPLマスクであり、マスクブランク106のエッチングストッパー膜2は透光性基板1の主表面上の全面で残され、位相シフト膜3に位相シフトパターン3eが形成され、ハードマスク膜9にハードマスクパターン9fが形成され、遮光膜5に遮光パターン5fが形成されていることを特徴としている。この位相シフトマスク206の作製途上で、ハードマスク膜6は除去される(図9参照)。
すなわち、この第5の実施形態に係る位相シフトマスク206は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、位相シフトパターン3e、ハードマスクパターン9fおよび遮光パターン5fがこの順に積層された構造を備え、位相シフトパターン3eはケイ素および酸素を含有する材料からなり、ハードマスクパターン9fはクロムを含有する材料からなり、遮光膜5はケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する材料からなり、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなることを特徴とするものである。
この第5の実施形態に係る位相シフトマスク206の製造方法は、前記のマスクブランク106を用いるものであり、塩素系ガスを用いるドライエッチングによりハードマスク膜6に遮光パターンを形成する工程と、遮光パターンを有するハードマスク膜(ハードマスクパターン)6fをマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより、遮光膜5に遮光パターン5fを形成する工程と、塩素系ガスを用いるドライエッチングによりハードマスク膜9に位相シフトパターンを形成する工程と、位相シフトパターンを有するハードマスク膜(ハードマスクパターン)9eをマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより位相シフト膜3に位相シフトパターン3eを形成する工程と、遮光パターン5fをマスクとし、塩素系ガスを用いるドライエッチングによりハードマスク膜9eにハードマスクパターン9fを形成する工程と、を備えることを特徴としている(図9参照)。
以下、要部断面構造図である図9に示す製造工程にしたがって、この第5の実施形態に係る位相シフトマスク206の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜5にケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク106におけるハードマスク膜6に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜5に形成すべき遮光パターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによってレジストパターン17fを形成する(図9(a)参照)。続いて、レジストパターン17fをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜6にハードマスクパターン6fを形成する(図9(b)参照)。
次に、レジストパターン17fを除去してから、ハードマスクパターン6fをマスクとして、CF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜5に遮光パターン5fを形成する(図9(c)参照)。
続いて、レジスト膜をスピン塗布法によって形成し、その後、レジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべき位相シフトパターンを電子線で描画して、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによってレジストパターン18eを形成する(図9(d)参照)。
その後、レジストパターン18eをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜9にハードマスクパターン9eを形成する(図9(e)参照)。次に、レジストパターン18eを除去してから、CF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に位相シフトパターン3eを形成する(図9(f)参照)。
続いて、遮光パターン5fをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスクパターン9fを形成する。このとき、ハードマスクパターン6fは同時に除去される。
その後、洗浄工程を行って、必要に応じてマスク欠陥検査を行う。さらに、欠陥検査の結果によっては必要に応じて欠陥修正を行なって、位相シフトマスク206が製造される。ここでの洗浄工程ではアンモニア過水を用いたが、エッチングストッパー膜2の表面はほとんど溶解しておらず、位相シフトパターン3eの開口部において透光性基板1の表面は露出しなかった。なお、上記のプロセスのドライエッチングで用いられる塩素系ガス、フッ素系ガスについては、実施の形態1の場合と同様である。
この実施の形態5の位相シフトマスク(CPLマスク)206は、前記のマスクブランク106を用いて作製されたものである。このため、この実施の形態5の位相シフトマスク206は、位相シフトパターン3eの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3eの面内のCD均一性も高い。位相シフトパターン3eとエッチングストッパー膜2の底面とからなる各構造体は、面内における高さ方向(厚さ方向)の均一性も大幅に高い。このため、この位相シフトマスク206は、面内での位相シフト効果の均一性が高い。また、位相シフトマスク206の製造途上において、位相シフトパターン3eに欠陥が発見され、その欠陥に対してEB欠陥修正で修正するとき、エッチングストッパー機能が高いことと、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく欠陥を修正することができる。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態5の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態5の位相シフトマスク206または実施の形態5のマスクブランク106を用いて製造された位相シフトマスク206を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。実施の形態5の位相シフトマスク206は、位相シフトパターン3eの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3eの面内のCD均一性も高く、面内での位相シフト効果の均一性も高い。このため、実施の形態5の位相シフトマスク206を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、その製造途上で位相シフトパターン3eに存在していた欠陥をEB欠陥修正で修正した位相シフトマスクを用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合においても、精度よく欠陥が修正されており、その位相シフトマスクの欠陥が存在していた位相シフトパターン3eの部分に対応する半導体デバイス上のレジスト膜に転写不良が発生することを防止できる。このため、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
<別の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
この別の実施形態に係るマスクブランクは、掘込レベンソン型位相シフトマスクを製造する用途に適したものである。図10に示すように、このマスクブランク105は、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2および遮光膜5が順次積層された構成を備える。また、必要に応じて遮光膜5上にハードマスク膜6(図12参照)が形成される。透光性基板1およびエッチングストッパー膜2のそれぞれの詳細については、第1の実施の形態の場合と同様である。遮光膜5とハードマスク膜6に関しては、第1の実施の形態と同様、クロムを含有する材料からなる遮光膜5と、ケイ素を含有する材料あるいはタンタルを含有する材料からなるハードマスク膜6の組み合わせが適用可能である。また、遮光膜5とハードマスク膜6に関しては、第2の実施の形態と同様、ケイ素を含有する材料、遷移金属およびケイ素を含有する材料およびタンタルを含有する材料のいずれかからなる遮光膜5と、クロムを含有する材料からなるハードマスク膜6の組み合わせも適用可能である。遮光膜5およびハードマスク膜6のそれぞれの詳細については、第1の実施の形態および第2の実施の形態の場合と同様である。
このマスクブランク105は、透光性基板1と遮光膜5の間にエッチングストッパー膜2が設けられている。このため、遮光膜5がフッ素系ガスによるドライエッチングでパターニングされる材料(ケイ素を含有する材料、遷移金属およびケイ素を含有する材料およびタンタルを含有する材料のいずれか)の場合、遮光パターン5aの側壁の垂直性を高めることができ、遮光パターン5aの側壁近傍の透光性基板1にマイクロトレンチが発生することを抑制することができる。また、フッ素系ガスによるドライエッチングでハードマスク膜6を除去する場合においても、透光性基板1の表面が荒れることを抑制することができる。表面が荒れると露光光の透過率が下がる。
[位相シフトマスクとその製造]
この別の実施形態に係る位相シフトマスク205(図11参照)は、マスクブランク105の遮光膜5に遮光パターン5aを形成し、遮光膜5のパターンが除去されている透光性基板1のパターン形成領域900に、表面から所定の深さで掘り込まれている掘込部と掘り込まれていない透光部をそれぞれ設け、エッチングストッパー膜2に掘込部上の領域のみ除去されたパターンであるエッチングストッパーパターン2cを形成した構成を有する。この位相シフトマスク205は、掘込部を透過した露光光と透光部を透過した露光光との間で所定の位相差が生じるように、透光性基板1の掘込の深さとエッチングストッパー膜2の光学特性および膜厚が調整される。なお、マスクブランク105にハードマスク膜6が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク205の作製途上でハードマスク膜6は除去される(図12参照)。
以下、要部断面構造図である図12に示す製造工程にしたがって、この別の実施形態に係る位相シフトマスク205の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜5の上にハードマスク膜6が積層されたマスクブランク105を用いて位相シフトマスク205を製造する方法について説明する。また、ここでは、遮光膜5に遷移金属とケイ素を含有する材料を適用し、ハードマスク膜6にはクロムを含有する材料を適用している場合について説明する。なお、エッチングガス等の詳細については、第1の実施形態の場合と同様である。
まず、マスクブランク101におけるハードマスク膜6に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜5に形成すべき遮光パターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第1のレジストパターン7aを形成する(図12(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン7aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いた第1のドライエッチングを行い、ハードマスク膜6に第1のハードマスクパターン6aを形成する(図12(b)参照)。
次に、レジストパターン7aを除去してから、ハードマスクパターン6aをマスクとして、フッ素系ガスを用いた第2のドライエッチングを行い、遮光膜5に第1の遮光パターン5aを形成する(図12(c)参照)。この第2のドライエッチングにより、ハードマスクパターン6aは、膜厚がこのドライエッチング前の膜厚よりも薄くなる。
この遮光膜5のフッ素系ガスによるドライエッチングの際、遮光パターン5aのパターン側壁の垂直性を高めるため、また遮光パターン5aの面内のCD(Critical Dimension)均一性を高めるために追加のエッチング(オーバーエッチング)を行う。そのオーバーエッチング後においても、エッチングストッパー膜2の表面は微小にエッチングされる程度であり、遮光パターン5aの透光部の表面700において透光性基板1の表面は露出しない。
続いて、レジスト膜をスピン塗布法によって形成し、その後、レジスト膜に対して、電子線で描画して、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第2のレジストパターン8bを形成する(図12(d)参照)。
続いて、エッチングストッパーパターン2cおよび掘込部702を形成するための第2のレジストパターン8bを形成する(図12(d)参照)。その後、塩化ホウ素(BCl)と塩素(Cl)の混合ガスを用いたドライエッチングを行い、エッチングストッパー膜2にエッチングストッパーパターン2cを形成(図12(e)参照)する。引き続いてCF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行って透光性基板1を表面から所定の深さまで掘り込み、掘込部702を形成する(図12(f)参照)。
その後、第2のレジストパターン8bをアッシングや剥離液等を用いて除去し(図12(g)参照)、次いで、遮光パターン5aの上に残っているハードマスクパターン6aを除去する(図12(h)参照)。ハードマスクパターン6aの除去は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスのドライエッチングで行うことができる。
その後、洗浄工程を行って、必要に応じてマスク欠陥検査を行う。さらに、欠陥検査の結果によっては必要に応じて欠陥修正を行なって、位相シフトマスク205が製造される。ここでの洗浄工程ではアンモニア過水を用いたが、エッチングストッパー膜2の表面はほとんど溶解しておらず、エッチングストッパーパターン2cの透光部(その表面700)において透光性基板1の表面は露出しなかった。
この別の実施の形態に係る位相シフトマスク205は、前記のマスクブランク105を用いて作製されたものである。このため、この別の実施の形態における位相シフトマスク205は、遮光パターン5aの側壁の垂直性が高く、遮光パターン5aの面内のCD均一性も高い。また、位相シフトマスク205の製造途上において、遮光パターン5aに黒欠陥が発見され、その黒欠陥に対してEB欠陥修正で修正するとき、エッチングストッパー機能が高いことと、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく黒欠陥を修正することができる。
[半導体デバイスの製造]
この別の実施の形態に係る半導体デバイスの製造方法は、別の実施の形態に係る位相シフトマスク205または別の実施の形態に係るマスクブランク105を用いて製造された位相シフトマスク205を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。別の実施の形態に係る位相シフトマスク205は、遮光パターン5aの側壁の垂直性が高く、遮光パターン5aの面内のCD均一性も高い。このため、別の実施の形態に係る位相シフトマスク205を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、その製造途上で遮光パターン5aに存在していた黒欠陥をEB欠陥修正で修正した位相シフトマスクを用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合においても、精度よく黒欠陥が修正されており、その位相シフトマスクの欠陥が存在していた遮光パターン5aの部分に対応する半導体デバイス上のレジスト膜に転写不良が発生することを防止できる。このため、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さ以下(二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
次に、透光性基板1の表面に接して、アルミニウム、ケイ素および酸素からなるエッチングストッパー膜2(AlSiO膜)を10nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、AlターゲットとSiOターゲットを同時放電させ、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、エッチングストッパー膜2を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Al:Si:O=21:19:60(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は、0.475である。なお、X線光電子分光分析法による分析では、RBS分析(ラザフォード後方散乱法による分析)の結果を基に数値補正を行っている(以下の分析においても同様。)。
また、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてエッチングストッパー膜2の各光学特性を測定したところ、波長193nmの光における屈折率nは1.625、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。
次に、エッチングストッパー膜2の表面に接して、ケイ素と酸素を含有したSiOからなる位相シフト膜3を173nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内にエッチングストッパー膜2が形成された後の透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガス、RF電源の電力を1.5kWとして、RFスパッタリングにより、エッチングストッパー膜2の上に、SiOからなる位相シフト膜3を173nmの厚さで形成した。なお、別の透光性基板の主表面に対して、同条件でSiOからなる位相シフト膜3のみを形成し、前記の分光エリプソメーターを用いてこの最上層の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nは1.563、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。
その後、位相シフト膜3の表面に接して、クロムを含有する遮光膜5を59nmの厚さで形成した。この遮光膜5は、クロムのほかに酸素と炭素を含有するCrOC膜である。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に位相シフト膜3が形成された後の透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用いて、二酸化炭素(CO)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、遮光膜5を形成した。
次に、上記遮光膜5(CrOC膜)が形成された透光性基板1に対して、加熱処理を施した。具体的には、ホットプレートを用いて、大気中で加熱温度を280℃、加熱時間を5分として、加熱処理を行った。
加熱処理後の遮光膜5に対し、X線光電子分光分析法(ESCA、RBS補正有り)で分析を行った。この結果、遮光膜5の透光性基板1側とは反対側の表面近傍の領域(表面から2nm程度の深さまでの領域)は、それ以外の領域よりも酸素含有量が多い組成傾斜部(酸素含有量が40原子%以上)を有することが確認できた。また、遮光膜5の組成傾斜部を除く領域における各構成元素の含有量は、平均値でCr:71原子%、O:15原子%、C:14原子%であることがわかった。さらに、遮光膜5の組成傾斜部を除く領域の厚さ方向における各構成元素の差は、いずれも3原子%以下であり、厚さ方向の組成傾斜は実質的にないことが確認できた。
なお、以下に示すほかの膜の組成についても、上記遮光膜5と同様に、X線光電子分光分析法(ESCA、RBS補正有り)によって得られたものである。
また、加熱処理後の遮光膜5に対し、分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用いてArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であることが確認できた。
次に、遮光膜5の表面に接して、ケイ素と酸素を含有したSiOからなるハードマスク膜6を12nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に遮光膜5が形成された後の透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガス、RF電源の電力を1.5kWとして、RFスパッタリングにより、遮光膜5の上に、SiOからなるハードマスク膜6を12nmの厚さで形成した。以上の手順で、実施例1のマスクブランクを製造した。
なお、別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜2のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板1の透過率を100%としたときの透過率が98.3%であり、この実施例1のエッチングストッパー膜2を設けることによって生じる透過率の低下の影響は小さいことがわかった。また、そのエッチングストッパー膜2が形成された透光性基板1を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、0.1nm/minであった。この結果から、この実施例1のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
透光性基板1、別の透光性基板1に形成されたエッチングストッパー膜2、およびさらに別の透光性基板1に形成された位相シフト膜3のそれぞれに対し、CFエッチングガスに用いたドライエッチングを同条件で行った。そして、それぞれのエッチングレートを算出し、エッチング選択比の比較を行った。位相シフト膜3のエッチングレートに対する実施例1のエッチングストッパー膜2のエッチング選択比は0.11であった。一方、位相シフト膜3のエッチングレートに対する実施例1で用いた透光性基板1のエッチング選択比はほぼ1であり、実施例1のエッチングストッパー膜2は十分高いエッチングストッパー機能を有することがわかった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例1のマスクブランク101を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク201を作製した。最初に、ハードマスク膜6の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜6の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、電子線描画し、所定の現像処理を行い、第1のレジストパターン7aを形成した(図3(a)参照)。
次に、第1のレジストパターン7aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜6に第1のハードマスクパターン6aを形成した(図3(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン7aをTMAHにより除去した。続いて、ハードマスクパターン6aをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜5に第1の遮光パターン5aを形成した(図3(c)参照)。
次に、薄膜のハードマスクパターン6aを有するマスクブランクにHMDS処理を行って、ハードマスクパターン6aの表面の疎水性化を通してレジストとの密着性が向上する処理を行った。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスクパターン6aや表面が露出した位相シフト膜3の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚300nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、電子線描画し、所定の現像処理を行い、第2のレジストパターン8bを形成した(図3(d)参照)。ここで、第2のレジストパターン8bには、位相シフト膜に欠陥が形成されるように、本来形成されるべき位相シフトパターンのほかにプログラム欠陥を加えておいた。
次に、第2のレジストパターン8bと遮光パターン5aをマスクとして、CFガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に位相シフトパターン3cを形成した(図3(e)参照)。このエッチングの初期段階では、遮光パターン5aの上に形成されているハードマスクパターン6aもエッチングマスクとなるが、このハードマスクの材料と位相シフト膜3の材料が同じSiOであることから、ハードマスクパターン6aは、早い段階でパターンの一部がエッチング消失したハードマスクパターン6dとなる。
このフッ素系ガス(CFガス)による位相シフト膜3のドライエッチングでは、位相シフト膜3のエッチングの開始からエッチングが位相シフト膜3の厚さ方向に進行してエッチングストッパー膜2の表面が露出し始めるまでのエッチング時間(ジャストエッチングタイム)に加え、そのジャストエッチングタイムの20%の時間(オーバーエッチングタイム)だけ追加のエッチング(オーバーエッチング)を行った。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは25Wの電力でバイアスを掛けており、いわゆる高バイアスエッチングの条件で行われた。
次に、第2のレジストパターン8bをアッシングにより除去した。ただし、アッシング除去に代えてTMAHで除去することも可能である。続いて、フッ素系ガス(CFガス)によるドライエッチングにより、ハードマスクパターン6dを除去した。
作製した実施例1のレベンソン型の位相シフトマスク201に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン3cに欠陥が確認された。その欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
実施例1の方法で作製した別のマスクブランクを用い、同様の手順でレベンソン型の位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜の掘込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。したがって、実施例1のレベンソン型位相シフトマスクは、位相シフト効果の面内均一性が高いといえる。また、実施例1のマスクブランクから、位相シフト効果の面内均一性の高いレベンソン型位相シフトマスクを製造可能であることもわかった。
EB欠陥修正を行った後の実施例1のレベンソン型位相シフトマスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べて遜色のないものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の実施例1のレベンソン型位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
この実施例2のマスクブランクは、エッチングストッパー膜2の材料組成を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。したがって、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2、位相シフト膜3および遮光膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造と、透光性基板1、位相シフト膜3、遮光膜5の材料や製法は実施例1と同じものである。以下、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
この実施例2のエッチングストッパー膜2は、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、AlターゲットとSiOターゲットを同時放電させ、アルゴンガスをスパッタリングガスとするRFスパッタリングにて成膜されるAlSiO膜であって、その元素比率をAl:Si:O=13:26:61(原子%比)としたものである。したがって、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は0.67である。このエッチングストッパー膜2を透光性基板1の表面に接して10nmの厚さで形成した。このエッチングストッパー膜2の光学定数を分光エリプソメーターで測定したところ、波長193nmの光における屈折率nは1.600、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。
実施例1と同じ方法で、エッチングストッパー膜2のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を測定したところ、透光性基板1の透過率を100%としたときの透過率は99.4%であり、この実施例2のエッチングストッパー膜2を設けることによる透過率の低下は小さかった。また、エッチングストッパー膜2が形成された透光性基板を濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、エッチングレートは0.1nm/minであった。この結果から、この実施例2のエッチングストッパー膜2は、位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
また、実施例1と同じ方法で、CFエッチングガスに用いたドライエッチングにおける、位相シフト膜3のエッチングレートに対する実施例2のエッチングストッパー膜2のエッチング選択比を調べたところ0.24であり、実施例2のエッチングストッパー膜2は実用上十分高いエッチングストッパー機能を有するものであった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例2のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で実施例2の位相シフトマスク201を作製した。位相シフトパターン3cに配置したプログラム欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
製造された位相シフトマスク201は、位相シフトパターン3cの面内のCD均一性および側壁断面の垂直性が高く、エッチングストッパー膜2への掘込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。AIMS193を用いてこの位相シフトマスクを用いたときの露光転写像のシミュレーションを行ったところ、EB欠陥修正を行ったところを含めて設計仕様を十分に満たしていた。
(実施例3)
この実施例3のマスクブランクは、エッチングストッパー膜2の材料組成を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。したがって、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2、位相シフト膜3および遮光膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造と、透光性基板1、位相シフト膜3、遮光膜5の材料や製法は実施例1と同じものである。以下、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
この実施例3のエッチングストッパー膜2は、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、AlターゲットとSiOターゲットを同時放電させ、アルゴンガスをスパッタリングガスとするRFスパッタリングにて成膜されるAlSiO膜であって、その元素比率をAl:Si:O=7:28:65(原子%比)としたものである。したがって、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は0.8である。このエッチングストッパー膜2を透光性基板1の表面に接して10nmの厚さで形成した。このエッチングストッパー膜2の光学定数を分光エリプソメーターで測定したところ、波長193nmの光における屈折率nは1.589、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。
実施例1と同じ方法で、エッチングストッパー膜2のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を測定したところ、透光性基板1の透過率を100%としたときの透過率は99.8%であり、この実施例3のエッチングストッパー膜2を設けることによる透過率の低下は小さかった。また、エッチングストッパー膜2が形成された透光性基板を濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、エッチングレートは0.1nm/minであった。この結果から、この実施例3のエッチングストッパー膜2は、位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
また、実施例1と同じ方法で、CFエッチングガスに用いたドライエッチングにおける、位相シフト膜3のエッチングレートに対する実施例3のエッチングストッパー膜2のエッチング選択比を調べたところ0.42であり、実施例3のエッチングストッパー膜2は実用に耐える高いエッチングストッパー機能を有するものであった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例3のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で実施例3の位相シフトマスク201を作製した。位相シフトパターン3cに配置したプログラム欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
製造された位相シフトマスク201は、位相シフトパターン3cの面内のCD均一性および側壁断面の垂直性が高く、エッチングストッパー膜2への掘込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。AIMS193を用いてこの位相シフトマスクを用いたときの露光転写像のシミュレーションを行ったところ、EB欠陥修正を行ったところを含めて設計仕様を十分に満たしていた。
(実施例4)
[マスクブランクの製造]
この実施例4のマスクブランクは、エッチングストッパー膜2の材料組成を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。したがって、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2、位相シフト膜3および遮光膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造と、透光性基板1、位相シフト膜3、遮光膜5の材料や製法は実施例1と同じものである。以下、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
この実施例4のエッチングストッパー膜2は、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、AlターゲットとSiOターゲットを同時放電させ、アルゴンガスをスパッタリングガスとするRFスパッタリングにて成膜されるAlSiO膜であって、その元素比率をAl:Si:O=31:8:61(原子%比)としたものである。したがって、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は0.20である。このエッチングストッパー膜2を透光性基板1の表面に接して10nmの厚さで形成した。このエッチングストッパー膜2の光学定数を分光エリプソメーターで測定したところ、波長193nmの光における屈折率nは1.720、消衰係数kは0.0328であった。
実施例1と同じ方法で、エッチングストッパー膜2のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を測定したところ、透光性基板1の透過率を100%としたときの透過率は95.2%であり、この実施例4のエッチングストッパー膜2を設けることによる透過率の低下は、実用に耐える範囲のものであることがわかった。また、エッチングストッパー膜2が形成された透光性基板を濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、エッチングレートは0.2nm/minであった。この結果から、この実施例4のエッチングストッパー膜2は、位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
また、実施例1と同じ方法で、CFエッチングガスに用いたドライエッチングにおける、位相シフト膜3のエッチングレートに対する実施例4のエッチングストッパー膜2のエッチング選択比を調べたところ0.035であり、実施例4のエッチングストッパー膜2は十分高いエッチングストッパー機能を有するものであった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例4のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で実施例4の位相シフトマスク201を作製した。位相シフトパターン3cに配置したプログラム欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
製造された位相シフトマスク201は、位相シフトパターン3cの面内のCD均一性および側壁断面の垂直性が高く、エッチングストッパー膜2への掘込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。AIMS193を用いてこの位相シフトマスクを用いたときの露光転写像のシミュレーションを行ったところ、EB欠陥修正を行ったところを含めて設計仕様を十分に満たしていた。
(実施例5)
[マスクブランクの製造]
この実施例5のマスクブランク101は、実施の形態2に対応した実施例であり、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2、位相シフト膜3および遮光膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造を持つ。さらに、遮光膜5の上にはCrNからなるハードマスク膜6が形成されている。この中で、透光性基板1、エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3の材料や製法は実施例1と同じものであり、実施例1と異なるのは、遮光膜5およびハードマスク膜6である。実施例5の遮光膜5は、下層のMoSiNと上層のMoSiNからなる積層構造のSi含有材料からなる。以下、実施例5のマスクブランクについて、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
この実施例5の遮光膜5は、上述のように下層のMoSiN層と上層のMoSiN層からなる積層構造膜であるが、その積層膜は下記のようにして作製した。ここで、下層のMoSiN層は主に露光光の吸収機能(遮光機能)を有し、上層のMoSiN層は露光光およびマスクパターン欠陥検査光に対する表面反射防止機能を有する。
位相シフト膜3上にMoSiN層(下層(遮光層))を膜厚47nmで成膜し、引き続いて、MoSiN層(上層(表面反射防止層))を膜厚4nmで成膜することにより、ArFエキシマレーザー(波長193nm)用遮光膜5(総膜厚51nm)を形成した。具体的には、位相シフト膜3が形成された透光性基板1を枚葉式スパッタリング装置内に設置後、スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(原子%比 Mo:Si=13:87)を用い、アルゴンと窒素との混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、MoSiN膜(下層(遮光層))を膜厚47nmで成膜し、引き続いて、Mo/Siターゲット(原子%比 Mo:Si=13:87)を用いて、アルゴンと窒素との混合ガス雰囲気で、MoSiN膜(上層(表面反射防止層))を膜厚4nmで成膜した。
次に、遮光膜5が形成された透光性基板1に対して、450℃で30分間加熱処理(アニール処理)を行い、遮光膜5の膜応力を低減させる処理を行った。なお、同様の手順でアニール処理まで行った遮光膜5を備えた基板を製造し、X線光電子分光分析(ESCA)で分析(ただし、分析値にRBS補正を行っている。)したところ、下層(Mo:9.2原子%,Si:68.3原子%,N:22.5原子%)、下層側近傍の上層(Mo:5.8原子%,Si:64.4原子%,N:27.7原子%,O:2.1原子%)の膜組成であることが確認された。なお、上層の表層についてのX線光電子分光分析(ESCA)の結果は、窒素が14.4原子%、酸素が38.3原子%であった。また、この遮光膜5の下層の193nmの光に対する屈折率nは1.88であり、消衰係数kは2.20であった。上層の屈折率nは2.07であり、消衰係数kは1.14であった。遮光膜5の光学濃度(OD)は3.0であり、ArFエキシマレーザー光を十分に遮光する機能が遮光膜5に備わっていた。
遮光膜5を作製後、遮光膜5の上層の表面に接して、クロムおよび窒素からなるハードマスク膜6(CrN膜)を5nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に加熱処理後の遮光膜5まで備えた透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、ハードマスク膜6を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したハードマスク膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Cr:N=72:28(原子%比)であった。以上の手順で、実施例5のマスクブランクを製造した。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例5のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で実施例5の位相シフトマスク201を作製した。製造工程的に実施例1と異なる点は、遮光膜5とハードマスク膜6に関連する工程のみであるため、ここではその点に絞って説明する。
実施例5では、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜6に遮光パターン5a用のハードマスクパターン6aを形成した(図3(b)参照)。
また、フッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングにより、ハードマスクパターン6aをエッチングマスクとして、遮光膜5に遮光パターン5aを形成した(図3(c)参照)。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは10Wの電力でバイアスを掛けており、いわゆる高バイアスエッチングの条件で行われた。
ハードマスクパターン6dの除去工程(図3(g)参照)では、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングでハードマスクパターン6dを除去した。これ以外の工程は実施例1のプロセスに準じた。
実施例5により作製された位相シフトマスク201は、透光性基板1上にAlSiO膜からなるエッチングストッパー膜2が形成されているため、実施例1の位相シフトマスク201と同様の効果があった。すなわち、位相シフトパターン3cの面内のCD均一性および側壁断面の垂直性が高く、エッチングストッパー膜2への掘込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。また、位相シフトパターン3cの欠陥もEB欠陥修正で高精度に修正することができた。薬液洗浄耐性も実施例1と同様の耐性があり、薬液洗浄に伴うパターン剥がれ等の異常は観察されなかった。AIMS193を用いてこの位相シフトマスクを用いたときの露光転写像のシミュレーションを行ったところ、EB欠陥修正を行ったところを含めて設計仕様を十分に満たしていた。
(実施例6)
[マスクブランクの製造]
この実施例6のマスクブランク103は、実施の形態3に対応した実施例であり、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2、下層31、エッチングストッパー機能を持つ上層32、および遮光膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造を持つ(図4参照)。さらに、遮光膜5の上にはハードマスク膜6が形成されている。この中で、透光性基板1、エッチングストッパー膜2、下層31、遮光膜5およびハードマスク膜6の材料や製法は実施例1と同じものである。実施例1と異なるのは、下層31の膜厚と、AlSiOからなるエッチングストッパー機能を持つ上層32の導入である。以下、実施例6のマスクブランクについて、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
エッチングストッパー膜2の表面に接して、ケイ素と酸素を含有したSiOからなる下層31を166nmの厚さで形成した。成膜条件は実施例1と同じで、成膜時間を制御してこの膜厚を得た。実施例1と同じ条件で成膜したため、実施例1と同様に、下層31の波長193nmにおける屈折率nは1.563、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。
続いて、下層31の表面に接して、アルミニウム、ケイ素および酸素からなるエッチングストッパー機能を持つ上層32(AlSiO膜)を5nmの厚さで形成した。成膜条件はエッチングストッパー膜2と同じであり、したがって構成元素の組成もエッチングストッパー膜2と同じで、Al:Si:O=21:19:60(原子%比)であり、Si/[Si+Al]は、0.475である。位相シフト機能の一部を合わせ持つ上層32は、下層31と合わせて、露光光の位相を反転させる積層構造の位相シフト膜4を形成する。
上層32は、エッチングストッパー膜2と同一組成の膜なので、実施例1の結果から、この実施例6の上層32は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有する。上層32は位相シフト機能を担うので、薬液洗浄に対して十分な耐性を有することは位相制御性を高める観点から大きな意味を持つ。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例6のマスクブランク103を用い、実施例1と同様の手順で実施例6の位相シフトマスク203を作製した。製造工程的に実施例1と異なる点は、上層32とハードマスク膜6に関連する工程のみであるため、ここではその点に絞って説明する。
実施例6では、上層パターン32cの形成は、第2のレジストパターン8bとハードマスクパターン6aをマスクとして、塩化ホウ素(BCl)と塩素(Cl)の混合ガスを用いたドライエッチングによって行った(図6(e)参照)。
ハードマスクパターン6dの除去は、フッ素系ガス(CFガス)によるドライエッチングにより行った(図6(h)参照)。これ以外の工程は実施例1のプロセスに準じた。
実施例6により作製された位相シフトマスク203は、透光性基板1上にAlSiO膜からなるエッチングストッパー膜2が形成されているため、実施例1の位相シフトマスク201で示されたものと同様の効果がある。また、上層32もフッ素系ガスのエッチングに対して十分なエッチングストッパー機能があるため、ハードマスクパターン6d除去のドライエッチングに際して、ほとんどエッチングされず表面荒れも起こさなかった。このため、下層パターン31cと上層パターン32cとからなる位相シフトパターン4cは、露光光(ArFエキシマレーザー光)に対して所定の位相差を与える極めて精度の高い位相シフトパターンとなった。
この実施例6の位相シフトマスク203は、洗浄用の薬液に十分な耐性がある材料で構成されているので、十分な薬液洗浄耐性があり、薬液洗浄に伴うパターン剥がれ等の異常は観察されない。確認のため、AIMS193を用いてこの位相シフトマスクを用いたときの露光転写像のシミュレーションを行ったところ、EB欠陥修正を行ったところを含めて設計仕様を十分に満たしていた。
(実施例7)
[マスクブランクの製造]
この実施例7のマスクブランク103は、実施の形態4に対応した実施例であり、透光性基板1、エッチングストッパー膜2、下層31、上層32よび遮光膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造を持つ。さらに、遮光膜5の上には実施例5と同様にCrNからなるハードマスク膜6が形成されている。この中で、構成部材である透光性基板1、下層31、上層32および遮光膜5の材料や製法は実施例5と同じものである。上層32は、Al:Si:O=21:19:60(原子%比)の組成比を持つAlSiOからなるフッ素系ガスに対してエッチングストッパー機能を持つ膜である。上層32は、下層31と合わせて、露光光の位相を反転させる積層構造の位相シフト膜4を形成する。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例7のマスクブランク103を用い、実施例5と同様の手順で実施例7の位相シフトマスク203を作製した。製造工程的に実施例5と異なるところは、上層32に関連する工程のみであるため、ここではその点に絞って説明する。
実施例7では、ハードマスクパターン6aをマスクとしてフッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜5に遮光パターン5aを形成している(図6(c)参照)。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは10Wの電力でバイアスを掛けており、いわゆる高バイアスエッチングの条件で行われる。上層32の上に形成される遮光パターン5aは、上層32が十分なエッチングストッパーとして機能するため、遮光パターン5aの形成において必要にして十分なオーバーエッチングを行うことができ、垂直な断面形状で、面内CDの高いものとなった。また、このエッチングの際に、上層32が露出している表面700はほとんどエッチングされず、位相シフト膜としての位相制御性を高く保つことができた。
上層パターン32cの形成に関しては、実施例6と同様に、第2のレジストパターン8bとハードマスクパターン6aをマスクとして、塩化ホウ素(BCl)と塩素(Cl)の混合ガスを用いたドライエッチングによって行った(図6(e)参照)。
実施例7により作製された位相シフトマスク203は、透光性基板1上にAlSiO膜からなるエッチングストッパー膜2が形成されているため、実施例1の位相シフトマスク201で示されたものと同様の効果がある。また、上層32もフッ素系ガスのエッチングに対して十分なエッチングストッパー機能があるため、遮光パターン5aを形成するときのドライエッチングに際して、ほとんどエッチングされず表面荒れも起こさなかった。このため、下層パターン31cと上層パターン32cは、露光光(ArFエキシマレーザー光)に対して所定の位相差を与える極めて精度の高い位相シフトパターンとなった。また、遮光パターン5aは、面内CD均一性が高く、断面側壁形状が垂直に近い所望のものとなった。
また、この実施例7の位相シフトマスク203は、洗浄用の薬液に十分な耐性がある材料で構成されているので、十分な薬液洗浄耐性があり、薬液洗浄に伴うパターン剥がれ等の異常は観察されない。確認のため、AIMS193を用いてこの位相シフトマスクを用いたときの露光転写像のシミュレーションを行ったところ、EB欠陥修正を行ったところを含めて設計仕様を十分に満たしていた。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、エッチングストッパー膜をアルミニウムと酸素からなる材料で形成したことを除き、実施例1のマスクブランクと同様の構成を備える。この比較例1のエッチングストッパー膜は、透光性基板1の表面に接して、10nmの厚さで形成したアルミニウムおよび酸素からなるAlO膜である。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、Alターゲットを用い、アルゴンガスをスパッタリングガスとするRFスパッタリングによって、エッチングストッパー膜を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Al:O=42:58(原子%比)であった。したがって、このエッチングストッパー膜のSi/[Si+Al]は0である。このエッチングストッパー膜の光学定数を分光エリプソメーターを用いて測定したところ、波長193nmの光における屈折率nは1.864、消衰係数kは0.0689であった。
実施例1と同じ方法で、このエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を測定したところ、透光性基板1の透過率を100%としたときの透過率は91.7%であり、この比較例1のエッチングストッパー膜を設けることによって生じる透過率の低下の影響は比較的大きいことがわかった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、エッチングレートは4.0nm/minであった。この結果から、この比較例1のエッチングストッパー膜は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有していないことがわかる。
また、実施例1と同じ方法で、CFエッチングガスに用いたドライエッチングにおける、位相シフト膜のエッチングレートに対する比較例1のエッチングストッパー膜のエッチング選択比を調べたところ0.015であり、比較例1のエッチングストッパー膜は十分なエッチングストッパー機能を有していた。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で比較例1の位相シフトマスクを作製した。作製した比較例1のレベンソン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥以外の欠陥が多数検出された。各欠陥箇所を調べたところ、位相シフトパターンが脱落していることに起因する欠陥がほとんどであった。なお、プログラム欠陥を配置していた箇所の欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜の表面へのエッチングを最小限にとどめることはできた。
別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンが脱落していない箇所について、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、透光部のエッチングストッパー膜が消失(薬液洗浄による溶解)しており、位相シフトパターンが存在している領域の直下のエッチングストッパー膜も、位相シフトパターンの側壁側から内側に向かって溶解が進行しているのが確認できた。この結果から、エッチングストッパー膜が薬液洗浄によって溶解したことが、位相シフトパターンの脱落が多発した要因であると推察できた。
EB欠陥修正を行った後の比較例1のレベンソン型位相シフトマスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たすことができていなかった。位相シフトパターンの脱落によって正常な露光転写ができてない箇所が多数見つかった。また、位相シフトパターン自体は精度よく形成されている箇所においても、エッチングストッパー膜のArFエキシマレーザー光に対する透過率が低いことに起因するものと思われる転写像の精度低下がみられた。この結果から、EB欠陥修正の有無にかかわらず、比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が多発することが予想される。
1…透光性基板
2…エッチングストッパー膜
3…位相シフト膜
3c、3e…位相シフトパターン
4…位相シフト膜
4c…位相シフトパターン
5…遮光膜
5a、5f…遮光パターン
6、9…ハードマスク膜
6a、6d、6f、9e、9f…ハードマスクパターン
7a…レジストパターン
8b…レジストパターン
31…下層
31c…下層パターン
32…上層(エッチングストッパー膜)
32c…上層パターン(エッチングストッパーパターン)
101、103、105…マスクブランク
201、203、205…位相シフトマスク
700…位相シフト膜の表面
701…位相シフトパターンの開口部の表面
702…掘込部
900…パターン形成領域
901…遮光帯形成領域

Claims (21)

  1. 透光性基板、エッチングストッパー膜、位相シフト膜および遮光膜がこの順に積層された構造を備えたマスクブランクであって
    前記位相シフト膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなり、
    前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなる単層膜であることを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記エッチングストッパー膜は、酸素含有量が60原子%以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記エッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記エッチングストッパー膜は、厚さ方向における各構成元素の含有量の差が5原子%以内であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記エッチングストッパー膜は、ケイ素および酸素の結合と、アルミニウムおよび酸素の結合とを含む状態のアモルファス構造を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記エッチングストッパー膜は、Al とSiO を混合させた材料からなることを特徴とする請求項6記載のマスクブランク。
  8. 前記エッチングストッパー膜は、前記透光性基板の主表面に接して形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  9. 前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以上であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  10. 前記位相シフト膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなる下層と、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなる上層がこの順に積層された構造を備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  11. 前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜を透過した露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
  12. 前記位相シフト膜は、露光光を95%以上の透過率で透過させる機能を有することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のマスクブランク。
  13. 前記遮光膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のマスクブランク。
  14. 前記遮光膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のマスクブランク。
  15. 前記遮光膜上に、ケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  16. 前記遮光膜上に、クロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  17. 請求項1から1のいずれかに記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に位相シフトパターンを有し、前記遮光膜に遮光パターンを有することを特徴とする位相シフトマスク。
  18. 透光性基板上に、エッチングストッパー膜、位相シフト膜および遮光膜がこの順に積層された構造を備えるマスクブランクの製造方法であって、
    成膜室内に、ケイ素を含有するターゲットとアルミニウムを含有するターゲットを配置し、基板ステージに前記透光性基板を配置し、前記ケイ素を含有するターゲットと前記アルミニウムを含有するターゲットの双方に対して電圧を印加するスパッタリングを行うことによって、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなる前記エッチングストッパー膜を形成する工程と、
    前記エッチングストッパー膜の上に、ケイ素および酸素を含有する材料からなる単層膜である前記位相シフト膜を形成する工程と
    を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  19. 請求項1からのいずれかに記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
    ドライエッチングにより前記遮光膜に位相シフトパターンを形成する工程と、
    前記位相シフトパターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより前記位相シフト膜に位相シフトパターンを形成する工程と、
    ドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含む遮光パターンを形成する工程と
    を備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
  20. 請求項1記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトマスク上のパターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
  21. 請求項1記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトマスク上のパターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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