JP6256744B2 - 無アルカリガラス板 - Google Patents

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Description

本発明は、無アルカリガラスに関し、特に有機ELディスプレイに好適な無アルカリガラスに関する。
有機ELディスプレイ等の電子デバイスは、薄型で動画表示に優れると共に、消費電力も低いため、携帯電話のディスプレイ等の用途に使用されている。
有機ELディスプレイの基板として、ガラス板が広く使用されている。この用途のガラス板には、主に、以下の特性が要求される。特に、下記の(2)の要求特性が重要視される。
(1)熱処理工程で成膜された半導体物質中にアルカリイオンが拡散する事態を防止するために、実質的にアルカリ金属酸化物を含有しないこと。
(2)p−Si・TFTの製造工程において、ガラス板の熱収縮を低減するために、歪点が高いこと。
(3)ガラス板を低廉化するために、生産性に優れること、特に耐失透性や溶融性に優れること。
(4)フォトエッチング工程で使用される種々の酸、アルカリ等の薬品、特にフッ酸系の薬液によって劣化しないように、耐薬品性が高いこと。
(5)ガラス板が大型化、薄型化した場合に、ディスプレイの製造工程中でガラス板の撓み量(揺動幅)を低減するために、ヤング率、ヤング率/密度(比ヤング率)が高いこと。
特許第3804112号公報
有機ELディスプレイのパネルメーカーでは、ガラスメーカーで成形された大型のガラス板の上に複数個分のデバイスを作製した後、デバイス毎に分割切断して、コストダウンを図っている(所謂、多面取り)。この多面取り工程では、ガラス板を切断した後、2枚のガラス板の貼り合わせを行ったり、貼り合わせた後に切断を行って、有機ELディスプレイを完成させるため、ガラス板の周囲に面取り加工が施されることなく、切断面がそのまま存在する状態で後工程を流れたり、或いは最終製品になることが多い。このような事情から、多面取りを行う場合、耐クラック性を高めることが重要になる。
また、本発明者の詳細な実験によると、上記(2)の要求特性を満たすためには、ガラス組成中のBの含有量を低減することが有効である。しかし、ガラス組成中のBの含有量を低減すると、耐クラック性が低下し易くなる。更に耐薬品性、溶融性も低下し易くなり、上記(3)、(4)の要求特性を満たし難くなる。
そこで、本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、その技術的課題は、ガラス組成中のBの含有量が少ない場合でも、耐クラック性、耐薬品性を兼備し得る無アルカリガラスを創案することである。
本発明者等は、種々の実験を繰り返した結果、無アルカリガラスのガラス組成範囲を厳密に規制すると共に、ガラス特性を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の無アルカリガラスは、ガラス組成として、モル%で、SiO 66〜78%、Al 8〜15%、B 0〜1.8%、MgO 0〜8%、CaO 1〜15%、SrO 0〜8%、BaO 1〜8%を含有し、実質的にアルカリ金属酸化物を含有せず、歪点が725℃より高いことを特徴とする。ここで、「実質的にアルカリ金属酸化物を含有せず」とは、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)の含有量が0.5モル%以下の場合を指す。「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
第二に、本発明の無アルカリガラスは、Bの含有量が0.1モル%未満であることが好ましい。
第三に、本発明の無アルカリガラスは、Bの含有量が0.1〜1モル%未満であることが好ましい。
第四に、本発明の無アルカリガラスは、ガラス組成として、更に、SnOを0.001〜1モル%含むことが好ましい。
第五に、本発明の無アルカリガラスは、ヤング率が78GPaより大きいことが好ましい。ここで、「ヤング率」は、曲げ共振法により測定可能である。
第六に、本発明の無アルカリガラスは、比ヤング率が29.5GPa/g・cm−3より大きいことが好ましい。ここで、「密度」は、アルキメデス法により測定可能である。
第七に、本発明の無アルカリガラスは、液相温度が1260℃より低いことが好ましい。ここで、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定することにより算出可能である。
第八に、本発明の無アルカリガラスは、102.5ポアズにおける温度が1720℃以下であることが好ましい。ここで、「102.5ポアズにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。
第九に、本発明の無アルカリガラスは、液相温度における粘度(液相粘度)が104.8ポアズ以上であることが好ましい。ここで、「液相温度における粘度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。
第十に、本発明の無アルカリガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。
第十一に、本発明の無アルカリガラスは、有機ELデバイス、特に有機ELディスプレイに用いることが好ましい。
本発明の無アルカリガラスにおいて、上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に示す。なお、各成分の含有量の説明において、%表示はモル%を表す。
SiOは、ガラス骨格を形成する成分である。SiOの含有量は66〜78%であり、好ましくは69〜76%、70〜75%、71〜74%、特に72〜73%である。SiOの含有量が少な過ぎると、歪点を高めることが困難になり、また密度が高くなり過ぎる。一方、SiOの含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなり、またクリストバライト等の失透結晶が析出して、液相温度が高くなり易い。
Alは、ガラス骨格を形成する成分であり、また歪点を高める成分であり、更に分相を抑制する成分である。Alの含有量は8〜15%であり、好ましくは9〜14%、9.5〜13%、10〜12%、特に10.5〜11.5%である。Alの含有量が少な過ぎると、歪点が低下し易くなり、またガラスが分相し易くなる。一方、Alの含有量が多過ぎると、ムライトやアノーサイト等の失透結晶が析出して、液相温度が高くなり易い。
の含有量が多過ぎると、歪点が大幅に低下することに加えて、耐クラック性、耐薬品性が低下し易くなる。よって、Bの含有量は1.8%以下であり、好ましくは1.5%以下、1%以下、1%未満、0.7%以下、特に0.6%以下である。一方、Bを少量導入すれば、耐クラック性が改善し、また溶融性、耐失透性が向上する。よって、Bの含有量は、好ましくは0.01%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、特に0.5%以上である。
MgOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分である。MgOの含有量は0〜8%であり、好ましくは0〜5%、0〜4%、0.01〜3.5%、0.1〜3.2%、0.5〜3%、特に1〜2.7%である。MgOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し易くなる。
+MgOの含有量(BとMgOの合量)は、歪点を高める観点から、好ましくは6%以下、0.1〜5%、1〜4.5%、特に2〜4%である。なお、B+MgOの含有量が少な過ぎると、溶融性、耐クラック性、耐薬品性が低下し易くなる。
モル比B/MgOは、好ましくは0.3以下、0.25以下、0.22以下、0.01〜0.2、0.05〜0.18、特に0.1〜0.17である。このようにすれば、耐失透性を適正な範囲に制御し易くなる。
CaOは、歪点を低下させずに、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高める成分である。また、CaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、導入原料が比較的安価であるため、原料コストを低廉化する成分である。CaOの含有量は1〜15%であり、好ましくは3〜12%、4〜10%、4.7〜8.9%、特に5.8〜8.5%である。CaOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。一方、CaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎると共に、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、ガラスが失透し易くなる。
SrOは、分相を抑制し、また耐失透性を高める成分である。更に歪点を低下させずに、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であると共に、液相温度の上昇を抑制する成分である。SrOの含有量は0〜8%であり、好ましくは0.1〜6%、0.5〜5%、0.8〜4%、特に1〜3%である。SrOの含有量が少な過ぎると、分相を抑制する効果や耐失透性を高める効果を享受し難くなる。一方、SrOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、ストロンチウムシリケート系の失透結晶が析出し易くなる。
BaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、耐失透性を顕著に高める成分である。BaOの含有量は1〜8%、好ましくは2〜7%、3〜6%、3.5〜5.5%、特に4〜5%である。BaOの含有量が少な過ぎると、液相温度が高くなり、耐失透性が低下し易くなる。一方、BaOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、BaOを含む失透結晶が析出し易くなる。
RO(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)は、好ましくは12〜18%、13〜17.5%、13.5〜17%、特に14〜16.8%である。ROの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなる。一方、ROの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。
モル比MgO/ROは、好ましくは0.3以下、0.25以下、0.22以下、0.01〜0.2、0.05〜0.18、特に0.1〜0.17である。このようにすれば、歪点、耐クラック性、耐薬品性の低下を抑制し易くなる。
モル比CaO/ROは、好ましくは0.8以下、0.7以下、0.1〜0.7、0.2〜0.65、0.3〜0.6、特に0.45〜0.55である。このようにすれば、耐失透性と溶融性を最適化し易くなる。
モル比SrO/ROは、好ましくは0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.01〜0.2、0.03〜0.18、特に0.05〜0.15である。このようにすれば、ストロンチウムシリケート系の失透結晶の析出を抑制し易くなる
モル比BaO/ROは、好ましくは0.5以下、0.4以下、0.1〜0.37以下、0.2〜0.35、0.24〜0.32、特に0.27〜0.3である。このようにすれば、溶融性を高めつつ、耐失透性を高め易くなる。
上記成分以外にも、例えば、以下の成分をガラス組成中に添加してもよい。なお、上記成分以外の他成分の含有量は、本発明の効果を的確に享受する観点から、合量で10%以下、特に5%以下が好ましい。
ZnOは、溶融性を高める成分であるが、ZnOを多量に含有させると、ガラスが失透し易くなり、また歪点が低下し易くなる。ZnOの含有量は0〜5%、0〜3%、0〜0.5%、特に0〜0.3%が好ましく、実質的に含有しないことが望ましい。ここで、「実質的にZnOを含有しない」とは、ガラス組成中のZnOの含有量が0.2%以下の場合を指す。
は、歪点を高める成分であるが、Pを多量に含有させると、ガラスが分相し易くなる。Pの含有量は0〜1.5%、0〜1.2%、特に0〜1%が好ましい。
TiOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であると共に、ソラリゼーションを抑制する成分であるが、TiOを多量に含有させると、ガラスが着色して、透過率が低下し易くなる。よって、TiOの含有量は0〜3%、0〜1%、0〜0.1%、特に0〜0.02%が好ましい。
、Nb、Laには、歪点、ヤング率等を高める働きがある。しかし、これらの成分の含有量が多過ぎると、密度、原料コストが増加し易くなる。よって、Y、Nb、Laの含有量は、各々0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%が好ましい。
SnOは、高温域で良好な清澄作用を有する成分であると共に、歪点を高める成分であり、また高温粘性を低下させる成分である。SnOの含有量は0〜1%、0.001〜1%、0.05〜0.5%、特に0.1〜0.3%が好ましい。SnOの含有量が多過ぎると、SnOの失透結晶が析出し易くなる。なお、SnOの含有量が0.001%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。
SnOは、清澄剤として好適であるが、ガラス特性を著しく損なわない限り、SnO以外の清澄剤を使用してもよい。具体的には、As、Sb、CeO、F、Cl、SO、Cを合量で例えば1%まで添加してもよく、Al、Si等の金属粉末を合量で例えば1%まで添加してもよい。
As、Sbは、清澄性に優れるが、環境的観点から、極力導入しないことが好ましい。更に、Asは、ガラス中に多量に含有させると、耐ソラリゼーション性が低下する傾向にあるため、その含有量は0.5%以下、特に0.1%以下が好ましく、実質的に含有させないことが望ましい。ここで、「実質的にAsを含有しない」とは、ガラス組成中のAsの含有量が0.05%未満の場合を指す。また、Sbの含有量は1%以下、特に0.5%以下が好ましく、実質的に含有させないことが望ましい。ここで、「実質的にSbを含有しない」とは、ガラス組成中のSbの含有量が0.05%未満の場合を指す。
Clは、無アルカリガラスの溶融を促進する効果があり、Clを添加すれば、溶融温度を低温化し得ると共に、清澄剤の作用を促進し、結果として、溶融コストを低廉化しつつ、ガラス製造窯の長寿命化を図ることができる。しかし、Clの含有量が多過ぎると、歪点が低下する。よって、Clの含有量は0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。なお、Clの導入原料として、塩化ストロンチウム等のアルカリ土類金属酸化物の塩化物、或いは塩化アルミニウム等を使用することができる。
本発明の無アルカリガラスにおいて、歪点は725℃超であり、好ましくは730℃以上、より好ましくは735℃以上、更に好ましくは740℃以上である。このようにすれば、p−Si・TFTの製造工程において、ガラス板の熱収縮を抑制することができる。
ヤング率は78GPa超、78.5GPa以上、79GPa以上、79.5GPa以上、特に79.7Pa以上が好ましい。このようにすれば、ガラス板の撓みを抑制できるため、ディスプレイの製造工程等において、ガラス板の取扱いが容易になる。
ヤング率/密度が29.5GPa/g・cm−3超、29.8GPa/g・cm−3以上、30.1GPa/g・cm−3以上、30.3GPa/g・cm−3以上、特に30.5GPa/g・cm−3以上が好ましい。ヤング率/密度の値を大きくすると、ガラス板の撓み量を大幅に抑制することができる。
液相温度は1260℃未満、1250℃以下、特に1240℃以下が好ましい。このようにすれば、ガラス製造時に失透結晶が発生して、生産性が低下する事態を防止し易くなる。更に、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形し易くなるため、ガラス板の表面品位を高めることが可能になると共に、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。なお、液相温度は、耐失透性の指標であり、液相温度が低い程、耐失透性に優れる。
102.5ポアズにおける温度は1720℃以下、1700℃以下、1690℃以下、特に1680℃以下が好ましい。102.5ポアズにおける温度が高くなると、溶解性、清澄性を確保し難くなり、ガラス板の製造コストが高騰する。
液相温度における粘度は104.8ポアズ以上、105.0ポアズ以上、105.2ポアズ以上、特に105.3ポアズ以上が好ましい。このようにすれば、成形時に失透が生じ難くなるため、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形し易くなり、結果として、ガラス板の表面品位を高めることが可能になり、またガラス板の製造コストを低廉化することができる。なお、液相粘度は、成形性の指標であり、液相粘度が高い程、成形性に優れる。
本発明の無アルカリガラスにおいて、β−OH値を低下させると、歪点を高めることができる。β−OH値は、好ましくは0.5/mm以下、0.45/mm以下、0.4/mm以下、0.35/mm以下、0.3/mm以下、特に0.25/mm以下である。β−OH値が大き過ぎると、歪点が低下し易くなる。なお、β−OH値が小さ過ぎると、溶融性が低下し易くなる。よって、β−OH値は、好ましくは0.01/mm以上、特に0.05/mm以上である。
β−OH値を低下させる方法として、以下の方法が挙げられる。(1)含水量の低い原料を選択する。(2)ガラス中にβ−OH値を低下させる成分(Cl、SO等)を添加する。(3)炉内雰囲気中の水分量を低下させる。(4)溶融ガラス中でNバブリングを行う。(5)小型溶融炉を採用する。(6)溶融ガラスの流量を多くする。(7)電気溶融法を採用する。
ここで、「β−OH値」は、FT−IRを用いてガラスの透過率を測定し、下記の式を用いて求めた値を指す。
β−OH値 = (1/X)log(T/T
X:ガラス肉厚(mm)
:参照波長3846cm−1における透過率(%)
:水酸基吸収波長3600cm−1付近における最小透過率(%)
本発明の無アルカリガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を製造する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス板の表面になるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、未研磨で表面品位が良好なガラス板を安価に製造することができる。なお、オーバーフローダウンドロー法で用いる樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面精度を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行う際に、力を印加する方法も特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、ダウンドロー法(スロットダウン法等)、フロート法等でガラス板を成形することも可能である。
本発明の無アルカリガラスは、有機ELデバイス、特に有機ELディスプレイに用いることが好ましい。有機ELディスプレイのパネルメーカーでは、ガラスメーカーで成形された大型のガラス板の上に複数個分のデバイスを作製した後、デバイス毎に分割切断して、コストダウンを図っている(所謂、多面取り)。特にTV用途では、デバイス自体が大型化しており、これらのデバイスを多面取りするために、大型のガラス板が要求されている。本発明の無アルカリガラスは、液相温度が低く、また液相粘度が高いため、大型のガラス板を成形し易く、このような要求を満たすことができる。
本発明の無アルカリガラスにおいて、厚み(板厚)は0.7mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、特に0.05〜0.1mmが好ましい。厚みが小さい程、ディスプレイの軽量・薄型化、更にはフレキシブル化を図り易くなる。

以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1〜3は、本発明の実施例(試料No.1〜14)と比較例(試料No.15〜17)を示している。
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れた後、1600〜1650℃で24時間溶融した。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、板状に成形した後、徐冷点付近の温度で30分間徐冷した。得られた各試料について、密度、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数CTE、ヤング率、ヤング率/密度、歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Ts、高温粘度10ポアズにおける温度、高温粘度10ポアズにおける温度、高温粘度102.5ポアズにおける温度、液相温度TL、及び液相温度における粘度(液相粘度log10ηTL)を評価した。
密度は、周知のアルキメデス法で測定した値である。
30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数CTEは、ディラトメーターで測定した値である。
ヤング率は、曲げ共振法により測定した値である。
ヤング率/密度は、曲げ共振法により測定したヤング率をアルキメデス法で測定した密度で除した値である。
歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Tsは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
高温粘度10ポアズ、10ポアズ、102.5ポアズにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。また、液相温度における粘度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
以下のようにして耐クラック性を評価した。まず湿度30%、温度25℃に保持された恒温恒湿槽内において、ビッカース硬度計のステージに各試料を載置し、ガラス表面(光学研磨面)にビッカース圧子(菱形状のダイヤモンド圧子)を種々の荷重で15秒間押し付ける。次に、徐荷後15秒までに圧痕の四隅から発生するクラック数をカウントし、最大のクラック数(4ヶ)に対する割合を求め、クラック発生率とする。なお、このクラック発生率は、同一荷重で20回測定し、その平均値を求めたものである。最後に、クラック発生率が50%になる時の荷重をクラック抵抗値とし、そのクラック抵抗値が140gf以上のものを「○」、140gf未満のものを「×」として評価した。
以下のようにして耐薬品性を評価した。まず各試料の両面を光学研磨した後、一部をマスキングしてから63BHF溶液(HF:6質量%,NHF:30質量%)中に20℃で30分間浸漬した。浸漬後、マスクを除去し、マスク部分と浸食部分の段差を表面粗さ計で測定し、その値を浸食量とし、その侵食量が8.0μm以下のものを「○」、8.0μm超の場合を「×」として評価した。
本発明の無アルカリガラスは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用ガラス板以外にも、電荷結合素子(CCD)、等倍近接型固体撮像素子(CIS)等のイメージセンサー用カバーガラス、太陽電池用ガラス板及びカバーガラス、有機EL照明用ガラス板等に好適に使用可能である。

Claims (11)

  1. ガラス組成として、モル%で、SiO 66〜78%、Al 8〜15%、B 0〜1.8%、MgO 0〜8%、CaO 1〜15%、SrO 0〜8%、BaO 1〜8%を含有し(但し、Y +La の含有量が0.1%以上の場合を除く)、実質的にアルカリ金属酸化物を含有せず、歪点が725℃より高いことを特徴とする無アルカリガラス
  2. の含有量が0.1モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス
  3. の含有量が0.1〜1モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス
  4. ガラス組成として、更に、SnOを0.001〜1モル%含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の無アルカリガラス
  5. ヤング率が78GPaより大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の無アルカリガラス
  6. ヤング率/密度が29.5GPa/g・cm−3より大きいことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の無アルカリガラス
  7. 液相温度が1260℃より低いことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の無アルカリガラス
  8. 102.5ポアズにおける温度が1720℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の無アルカリガラス
  9. 液相温度における粘度が104.8ポアズ以上であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の無アルカリガラス
  10. オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の無アルカリガラス
  11. 有機ELデバイスに用いることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の無アルカリガラス
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