JP6255942B2 - ボイラシステム - Google Patents
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Description
従来、蒸気消費量の変動に対してヘッダ圧力を目標圧力に保つため、ボイラで発生すべき蒸気量をPIDアルゴリズムにより制御(以下、「PID制御」ともいう)する手法を用いたボイラシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一般にPID制御で用いる演算には2つの演算方式がある。その1つは制御周期毎に全体の操作量MVnを求めて出力する位置形演算方式である。他の1つは制御周期毎に操作量の今回変化量△MVnを求めた後、この変化量に前回操作量MVn−1
を加えることにより、今回の操作量MVnを求めて出力する速度形演算方式である。
特許文献1に記載されたPID制御は、位置形演算方式により制御する位置形PID制御である。これに対して、速度形演算方式により制御する速度形PID制御を用いたボイラシステムも知られている。
一例として、ボイラシステムの点検時には、複数のボイラのうち点検対象となるボイラを制御部の制御から切り離すことで、ボイラシステム全体を停止することなく切り離されたボイラの点検や試運転等を行うこととしている。
したがって、自動運転ボイラと手動運転ボイラとが混在して稼動しているボイラシステムにおいては、自動運転ボイラの生成した蒸気と手動運転ボイラの生成した蒸気とが蒸気ヘッダに供給される。
したがって、速度形PIDアルゴリズムにより制御されるボイラシステムの場合、自動運転ボイラと手動運転ボイラとが混在した状態では、速度形演算により算出した今回制御量MVn(自動運転ボイラから発生させる必要蒸気量)と手動運転ボイラの生成した発生蒸気量とを加えた状態で、ヘッダ圧力が安定するように制御されることとなる。
まず、本発明のボイラシステム1の全体構成につき、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るボイラシステムの概略を示す図である。
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留する。蒸気ヘッダ6は、燃焼させる1又は複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が一定に調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
台数制御装置3の詳細については、後述する。
また、燃焼量を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼量)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
ローカル制御部22は、蒸気消費量に応じてボイラ20の燃焼状態を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される制御信号又は運転者の手動操作により入力された制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、及びその他のデータ等が挙げられる。
制御部4の詳細な構成については後述する。
記憶部は、レジスタを含み、各ボイラ20から出力される実際の蒸気量等をレジスタに格納してもよい。
図3に示すように、制御部4は、蒸気量算出部41と、出力制御部42と、制御対象切換部43とを含んで構成される。
MVn = MVn−1 + ΔMVn ・・・(1)
ここで、Δtを制御周期、nを正の整数値としたとき、
MVnは制御周期n(起点t0+n*Δt)における複数のボイラ20から発生させる今回必要蒸気量、
MVn−1は制御周期(n−1)における前回必要蒸気量、
ΔMVnは制御周期毎の必要蒸気量変化分を表す。
速度形演算は、制御周期毎の必要蒸気量変化分ΔMVnのみを計算し、これに前回必要蒸気量MVn−1を加算して、今回必要蒸気量MVnを計算する方法である。
ΔMVn = ΔPn+ΔIn+ΔDn ・・・(2)
ここで、ΔPnはP制御出力(変化分)を、
ΔInはI制御出力(変化分)を、
ΔDnはD制御出力(変化分)を表す。
ΔPn = KP*(en−en−1) ・・・(3)
ここで、KPは、比例ゲインを、
enは、式(4)に示すように、今回の目標蒸気圧力値SVnと、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の今回蒸気圧力値PVnとの差(今回偏差量)を表す。
en = SVn−PVn ・・・(4)
ΔIn =KP*(Δt/TI)*en ・・・(5)
TIは積分時間を表す。
ΔDn = KP*(TD/Δt)*(en−2en−1+en−2)
・・・(6)
ここで、TDは微分時間を表す。
蒸気量算出部41は、式(1)のように、ΔMVnに前回必要蒸気量MVn−1を加算して、今回必要蒸気量MVnを計算する。
出力制御部42は、蒸気量算出部41が算出した今回必要蒸気量MVnに基づいて自動運転ボイラ20の燃焼状態(燃焼量)を制御する。すなわち、出力制御部42は、ボイラ群2から必要蒸気量分の蒸気が発生するように各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。
次に、本実施形態1のボイラシステム1の動作について、図4を参照して説明する。図4は、ボイラシステム1のフィードバック制御の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、蒸気量算出部41は、制御周期毎において、蒸気圧センサ7から送信された蒸気圧信号に基づいて、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値(以下、「ヘッダ圧力PV」ともいう)を取得する。
切り換えが、ボイラ群の一部の手動運転ボイラを制御部の制御に復旧し、自動運転に切り換える場合には、ステップS7へ移る。
切り換えが、全てのボイラを手動運転から自動運転に切り換える場合には、ステップS9へ移る。
なお、制御対象切換部43が、全てのボイラを自動運転から手動運転に切り換える場合は、図示しないが、PID制御は終了又は中断する。この際、PID制御は終了又は中断するものの、蒸気量算出部41は、ヘッダ圧力を監視して偏差量enを算出することを続行してもよい。
ステップS5において、蒸気量算出部41は、記憶部5から手動運転に切り換えられた自動運転ボイラが前回に出力した蒸気量Xn−1を取得する。なお、手動運転に切り換えられた自動運転ボイラが複数ある場合は、手動運転に切り換えられた各自動運転ボイラが前回に出力した蒸気量の合計値をXn−1とする。
その後、ステップS11に移る。
ステップS7において、蒸気量算出部41は、記憶部5から自動運転に切り換えられた手動運転ボイラが前回に出力した蒸気量Yn−1を取得する。なお、自動運転に切り換えられた手動運転ボイラが複数ある場合は、自動運転に切り換えられた手動運転ボイラが前回に出力した蒸気量の合計値をYn−1とする。
その後、ステップS11に移る。
ステップS9において、蒸気量算出部41は、記憶部5から自動運転に切り換えられた各手動運転ボイラが前回に出力した蒸気量合計値Σn−1を取得する。
その後、ステップS11に移る。
ステップS11において、蒸気量算出部41は、式(1)に基づいて、制御周期毎の必要蒸気量変化分ΔMVnに前回必要蒸気量MVn−1を加算して、今回必要蒸気量MVnを算出する。
その後、ステップS12に移る。
ステップS12において、蒸気量算出部41は、算出した今回必要蒸気量MVnを出力制御部42に出力する。
その後、ステップS1に戻る。
図5Aは、4台のボイラ20からなるボイラ群において、通常の速度形PIDアルゴリズムによる圧力制御を実施した場合に、4号機を自動運転から手動運転に切り換えた場合の燃焼状態の推移を示す。切り換え前は、1号機から4号機はそれぞれ50%の燃焼率で燃焼し、3500kg/hの蒸気量を出力している状態で、必要蒸気量及び出力蒸気量は、ともに14000kg/hとなり、ヘッダ圧力が安定している。
そして、蒸気量算出部41は、補正された前回必要蒸気量MVn−1に必要蒸気量変化分ΔMVnを加算して算出する。ヘッダ圧力が変化なしとして、ΔMVn=0とすると、今回必要蒸気量MVnは、10500kg/hとなる。
図6Aは、4台のボイラ20からなるボイラ群において、通常の速度形PIDアルゴリズムによる圧力制御が実施した場合に、4号機を手動運転から自動運転に切り換えた場合の燃焼状態の制御の概略を示す。切り換え前において、1号機から3号機はそれぞれ50%の燃焼率で燃焼し、3500kg/hの蒸気量を出力し、4号機は75%の燃焼率で燃焼し、4900kg/hの蒸気量を出力している。この状態で、必要蒸気量は10500kg/h、出力蒸気量は15400kg/hとなり、ヘッダ圧力が安定している。
そして、蒸気量算出部41は、補正された前回必要蒸気量MVn−1に必要蒸気量変化分ΔMVnを加算して算出する。ヘッダ圧力が変化なしとして、ΔMVn=0とすると、今回必要蒸気量MVnは、15400kg/hとなる。
図7Aは、4台のボイラ20からなるボイラ群において、通常の速度形PIDアルゴリズムによる圧力制御が実施した場合に、全てのボイラ20を手動運転から自動運転に切り換える場合の燃焼状態の推移を示す。
切り換え前において、1号機から4号機は、それぞれ手動運転状態で燃焼し、1号機が4900kg/h、2号機が5250kg/h、3号機が4550kg/h、及び4号機が5600kg/hの蒸気量を出力し、合計で、20300kg/hの蒸気量を出力している。なお、手動運転する場合は、一般的に圧力が高めで安定する傾向がある。
一括手動入力作動等により台数制御が効かずに全台手動運転が行われている場合、PID演算は停止している。したがって、各ボイラがそれぞれの判断により燃焼している状態で、全台を手動運転から自動運転に切り換えることにより速度形PID制御による自動運転を再開する場合、前回必要蒸気量MVn−1をどのようにして算出するかという課題が生じる。
仮に、切り換え直後の今回必要蒸気量を、一般的な「位置形」と呼ばれるPID演算式
MVn=比例ゲイン×(目標圧力−現在圧力)で算出すると、圧力が大幅に下回っている場合は必要蒸気量が全台100%燃焼時の蒸気量となるが、目標圧力近辺又は目標圧力を超えている場合は必要蒸気量が0となる。
したがって、手動運転状態で、ヘッダ圧力が目標圧力を超えた状態で自動運転に復旧した場合、必要蒸気量が0となるため、全台が停止することになる。
その結果、その後の圧力低下に追従できず、大幅な圧力低下を招くことになる。
このため、ボイラシステム1は、切り換え直後の出力変動、圧力変動を抑制できる。
こうすることで、ボイラシステム1は、一部ボイラを自動運転から手動運転に切り換えた場合、ボイラシステム1全体の出力蒸気量は、切り換え前後において、一定となり、圧力変動を抑制でき、ボイラシステム1の圧力安定性を向上させることができる。
こうすることで、ボイラシステム1は一部ボイラを手動運転から自動運転に切り換えた場合、ボイラシステム1全体の出力蒸気量は、切り換え前後において、一定となり、圧力変動を抑制でき、ボイラシステム1の圧力安定性を向上させることができる。
こうすることで、複数のボイラ20を備えるボイラシステム1は、全てのボイラを手動運転から自動運転に切り換える時点の各ボイラの出力蒸気量を起点に速度形PIDアルゴリズムを用いた台数制御を開始できるため、切り換え直後の出力変動、圧力変動を抑制でき、ボイラシステム1の圧力安定性を向上させることができる。
例えば、実施形態1では、本発明を、4台のボイラ20を備えるボイラシステムに適用したが、これに限らない。すなわち、本発明を、4台以上の複数ボイラを備えるボイラシステムに適用してもよく、また、3台以下の複数ボイラを備えるボイラシステムに適用してもよい。
2 ボイラ群
20 ボイラ
4 制御部
41 蒸気量算出部
42 出力制御部
43 制御対象切換部
Claims (2)
- 燃焼率を変更して燃焼可能な複数のボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群により生成された蒸気が集合する蒸気ヘッダと、
要求負荷に応じて前記ボイラ群に含まれる、燃焼状態の制御対象となる自動運転ボイラの燃焼状態を制御する制御部と、
を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記ボイラ群の自動運転ボイラを前記制御部の制御から切り離し、制御対象外の手動運転に切り換える、又は前記ボイラ群の手動運転ボイラを前記制御部の制御に復旧し、自動運転に切り換える、制御対象切換部と、
蒸気消費量の変動に対して前記蒸気ヘッダの蒸気圧力値を目標蒸気圧力値に保つように、制御周期nにおいて前記自動運転ボイラから発生させる今回必要蒸気量MVnを、制御周期(n−1)における前回必要蒸気量MVn−1、及び制御周期毎の必要蒸気量変化分ΔMVnに基づいて速度形PID制御方式により算出する蒸気量算出部と、
前記蒸気量算出部により算出された今回必要蒸気量MVnを発生させるよう、制御周期nにおける前記自動運転ボイラの燃焼状態を制御する出力制御部と、を備え、
前記制御対象切換部が、自動運転ボイラを手動運転に切り換える場合、前記蒸気量算出部は、前回必要蒸気量MVn−1に対して前記手動運転に切り換えられた自動運転ボイラが前回に出力した蒸気量を減算する補正を行い、
前記制御対象切換部が、手動運転ボイラを自動運転に切り換える場合、前記蒸気量算出部は、前回必要蒸気量MVn−1に対して前記自動運転に切り換えられた手動運転ボイラが前回出力した蒸気量を加算する補正を行う、ボイラシステム。 - 前記制御対象切換部が、全てのボイラを手動運転から自動運転に切り換える場合、前記蒸気量算出部は、前回必要蒸気量MVn−1に前記自動運転に切り換えられた全ての手動運転ボイラが前回に出力した蒸気量合計を代入する補正を行う、請求項1に記載のボイラシステム。
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