JP6255035B2 - 分離方法、検出方法、シグナル測定方法、疾患の判定方法、疾患治療薬の薬効評価方法、キット及び液状組成物 - Google Patents

分離方法、検出方法、シグナル測定方法、疾患の判定方法、疾患治療薬の薬効評価方法、キット及び液状組成物 Download PDF

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Description

本発明は、分離方法、検出方法、シグナル測定方法、疾患の判定方法、疾患治療薬の薬効評価方法、キット及び液状組成物に関する。より詳細には、エクソソームなどの脂質二重膜を有する小胞の分離方法、該方法を利用した核酸又はタンパク質の検出方法、シグナル測定方法、疾患の判定方法、疾患治療薬の薬効評価方法、疾患判定又は薬効評価用キット、及び上記分離方法に用いる液状組成物に関する。
小胞は脂質二重膜に包まれた構造を有するものであり、斯様な小胞のうち、生体内の体液中に存在する小胞顆粒としてエクソソームが知られている。エクソソームの表面には、一般的な細胞表面と同様に、種々の膜タンパク質が存在することが知られており、その一方で、エクソソームの内部には、サイトカイン等各種タンパク質以外にもmicroRNA(miRNA)が含まれることも分かってきた。
また、免疫系の細胞や各種癌細胞等の種々の細胞からエクソソームが分泌されることが知られており、生体内の細胞間コミュニケーションの媒介役としてのエクソソームの機能、エクソソームと生理現象や癌等の疾患との関連性が注目され、これについて検討が進められている。例えば、腫瘍マーカーであるEpCAMの抗体を用いた場合に、卵巣癌患者の循環血中からエクソソームが分離され、エクソソーム由来のmiRNA発現量と卵巣癌の進行との間に関連性があることが既に報告されている(非特許文献1)。
また、エクソソーム上に発現する4回膜貫通型の膜タンパク質として、テトラスパニンファミリーに属するCD9、CD63及びCD81があり、非特許文献2には、メラノーマ患者の血漿中のエクソソーム量が健常者のものと比べて高く、これがCD63に対する抗体や腫瘍関連マーカーのCaveolin−1に対する抗体で検出・定量化できることが報告されている。また、遠心分離後の血漿サンプルに、CD63抗体や種々の膜タンパク質に対する抗体等を組み合わせて反応させることで、癌患者におけるエクソソームに由来するシグナルを定量して解析することが行われている(特許文献1)。
国際公開第2010/065968号
D.D.Taylor.,et al.,Gynecol.Oncol.,110,13−21(2008) M.Logozzi.,et al.,PLoS ONE.,4,1−10(2009)
ところで、抗体を結合した固相担体の反応液や洗浄液、抗体結合粒子を懸濁するバッファーの機能として、プレートなどの反応容器や粒子表面への非特異吸着や反応中に生じる粒子の凝集を低減する機能が要求される。
しかしながら、上記エクソソームのような脂質二重膜に覆われた小胞を磁性粒子のような粒子で捕捉させた場合は、上記非特異吸着が起こりやすいというだけでなく、粒子同士の凝集が発生しやすく、小胞の回収率や粒子の洗浄効率に悪影響を及ぼす場合があった。反応後の抗体結合粒子の洗浄が不十分であると、検体由来の夾雑タンパク質が混入し、エクソソームの精製度が低下するという問題がある。
そのため、脂質二重膜に覆われた小胞を分離しようとする場合であっても、固相担体への非特異吸着と粒子の凝集を低減でき、洗浄能の高いバッファーが求められる。
しかるところ、一般に非特異吸着や粒子の凝集を抑えるために使用されているBSA等のタンパク質を粒子保存バッファーや反応バッファー等に添加しても、脂質二重膜に覆われた小胞を分離しようとする場合は粒子が凝集してしまい、更にその後に行われる精製エクソソームのプロテオーム解析等に影響を及ぼすことが判明した。
また、脂質二重膜に覆われた小胞を分離するに際し、脂質二重膜を有する小胞の破壊が少ないことも要求される。
本発明が解決しようとする課題は、夾雑物の除去効率に優れ、かつ、脂質二重膜を有する小胞が破壊されにくい、脂質二重膜を有する小胞の分離方法を提供することである。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、前記小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体とを接触させ、前記小胞と前記固相担体との複合体を形成させる複合体形成工程と、前記複合体を洗浄する洗浄工程を含む脂質二重膜を有する小胞の分離方法において、前記複合体形成工程及び前記洗浄工程の少なくともいずれかを、非イオン性界面活性剤の存在下で行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、<1>脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、前記小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体とを接触させ、前記小胞と前記固相担体との複合体を形成させる複合体形成工程と、前記複合体を洗浄する洗浄工程を含み、前記複合体形成工程及び前記洗浄工程の少なくともいずれかを、非イオン性界面活性剤の存在下で行うことを特徴とする脂質二重膜を有する小胞の分離方法を提供するものである。
また、本発明は、<2>上記<1>の分離方法の後に、さらに小胞中の核酸を検出する核酸検出工程を含むことを特徴とする小胞中の核酸の検出方法を提供するものである。
更に、本発明は、<3>上記<1>の分離方法の後に、さらに小胞の内側及び表面の少なくとも一方に存在するタンパク質を検出するタンパク質検出工程を含むことを特徴とする小胞由来のタンパク質の検出方法を提供するものである。
更に、本発明は、<4>上記<1>の分離方法の後に、さらに前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定するシグナル測定工程を含むことを特徴とする小胞由来のシグナル測定方法を提供するものである。
更に、本発明は、<5>被検者が疾患を発症しているか否かを判定するための方法であって、被検者由来の生体試料を用いて、上記<4>のシグナル測定方法により前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定する工程を含むことを特徴とする疾患の判定方法を提供するものである。
更に、本発明は、<6>疾患治療薬の薬効評価方法であって、疾患治療薬の投与前及び投与後の被検者由来の生体試料を用いて、上記<4>のシグナル測定方法により、前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定する工程を含むことを特徴とする疾患治療薬の薬効評価方法を提供するものである。
更に、本発明は、<7>脂質二重膜を有する小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体と、非イオン性界面活性剤を含む液状組成物とを備えることを特徴とするキットを提供するものである。
更に、本発明は、<8>脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、前記小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体とを接触させ、前記小胞と前記固相担体との複合体を形成させる複合体形成工程と、前記複合体を洗浄する洗浄工程とを含む、脂質二重膜を有する小胞の分離方法に使用される、前記複合体を洗浄するための液状組成物であって、非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする液状組成物を提供するものである。
本発明の脂質二重膜を有する小胞の分離方法は、夾雑物の除去効率に優れ、かつ、脂質二重膜を有する小胞が破壊されにくいものである。
また、本発明のキット、液状組成物を、脂質二重膜を有する小胞の分離に用いた場合、夾雑物が十分に除去され、かつ、脂質二重膜を有する小胞が破壊されにくい。
粒子に結合した抗体とエクソソームとの反応に対する非イオン性界面活性剤の影響を示すグラフである。 非イオン性界面活性剤を含む洗浄バッファーの洗浄能を示す銀染色像である。 非イオン性界面活性剤を含む洗浄バッファーが、粒子に結合した抗体からエクソソームを剥離させにくいことを示すウェスタンブロット像である。 抗CD63抗体を結合した磁性粒子で捕捉したエクソソームの粒径に問題にないことを示す粒度分布の波形である。 各抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームの粒径に問題にないことを示す粒度分布のグラフである。 抗CD9抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームの形態に問題がないことを示す透過型電子顕微鏡像である。 抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームの中から核酸を検出することができたことを示すバイオアナライザの解析図である。 抗体結合磁性粒子から捕捉したエクソソーム中のmicroRNAを定量できることを示す増幅曲線である。 抗体結合磁性粒子で捕捉した小胞から小胞由来の内側及び表面のタンパク質を検出できることを示すウェスタンブロット像である。 抗体結合磁性粒子による小胞の捕捉量が、反応させる小胞の量に比例することを示すウェスタンブロット像である。 各種培養上清及び体液から抗体結合磁性粒子で捕捉した小胞由来の表面タンパク質を検出できたことを示すウェスタンブロット像である。
〔脂質二重膜を有する小胞の分離方法〕
本発明の脂質二重膜を有する小胞の分離方法は、脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、前記小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体とを接触させ、前記小胞と前記固相担体との複合体を形成させる複合体形成工程と、前記複合体を洗浄する洗浄工程を含み、前記複合体形成工程及び前記洗浄工程の少なくともいずれかを、非イオン性界面活性剤の存在下で行うことを特徴とするものである。
(非イオン性界面活性剤)
本発明の分離方法で用いる非イオン性界面活性剤としては、芳香族基を分子中に含まないものが好ましい。このような芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤を使用することで、エクソソーム等の小胞を構成する脂質二重膜の破壊を招くことなく、固相担体への夾雑物の非特異吸着を低減できる。また、小胞と固相担体との捕捉反応の反応性が向上する。さらに、精製されたエクソソームのプロテオーム解析等への影響を抑えることもできる。
上記のような芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、グリセロールやペンタエリスリトールなどの多価アルコールに疎水性基を付加した多価アルコール型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
上記ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド鎖を親水性基として有するものであれば特に限定されないが、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
これらの中では、非特異吸着低減効果や小胞へのダメージが少ないことから、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物が好ましい。
上記ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物としては、ブロック共重合型のものが好ましく、ポリエチレンオキサイドからなるブロック(以下、ブロックAともいう)と、ポリアルキレンオキサイドからなり前記アルキレンの炭素数が3以上であるブロック(以下、ブロックBともいう)とを有するブロック共重合体がより好ましい。また、ブロックBに含まれるアルキレンオキシ基の炭素数としては、3〜6が好ましく、3又は4がより好ましく、3が特に好ましい。なお、ブロックBに含まれるアルキレンオキシ基の炭素数が3のものは、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物である。
また、ブロックAの合計含有量としては、ブロック共重合体中、15〜99質量%が好ましく、50〜99質量%がより好ましく、60〜95質量%が更に好ましく、70〜90質量%が特に好ましい。
また、ブロックBの合計含有量としては、細胞毒性の観点から、ブロック共重合体中、1〜85質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
なお、これら含有量はNMR等で測定可能であり、ブロックAが2つ以上ある場合は、2つ以上のブロックAの各含有量の合計値を意味する。同様に、ブロックBが2つ以上ある場合は、2つ以上のブロックBの各含有量の合計値である。
このようなポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物の中でも、プルロニック型非イオン性界面活性剤等に例示されるような、2つのブロックAでブロックBが挟まれた構造をもつ、ABA型トリブロック共重合体が好ましい。
ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、Pluronic F−68、Pluronic L−62(いずれもADEKA製)等が挙げられる。
また、上記多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ソルビトール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
また、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物における「脂肪酸」は、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸のいずれでもよい。また、脂肪酸は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。また、脂肪酸の炭素数は、好ましくは8〜18、より好ましくは10〜20、更に好ましくは12〜18である。具体的には、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween65、Tween80、Tween85(いずれも和光純薬製)などが挙げられる。
また、多価アルコールに疎水性基を付加した多価アルコール型非イオン性界面活性剤としては、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール又はソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの中でも、疎水性基として脂肪酸残基を有するものが好ましい。なお、脂肪酸残基は、上記多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物に含まれる脂肪酸残基と同様のものが好ましい。
斯様な脂肪酸残基を有するものの中でも、ソルビトール又はソルビタンの脂肪酸エステルが好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルがより好ましい。
また、上記のような芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤の中でも、非特異吸着低減効果や小胞へのダメージが少ないことから、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物がより好ましく、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物が更に好ましい。
なお、非イオン性界面活性剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物以外の非イオン性界面活性剤のHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値は、好ましくは13.1以上、より好ましくは13.5以上である。
なお、本明細書において、HLB値は、GriffinによるHydrophile−Lipophile Balanceを意味し、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値である。例えば、Tween20のHLB値は16.7であり、Tween80のHLB値は15.0である。また、芳香族基を含む非イオン性界面活性剤である、TritonX−100のHLB値は13.5であり、Nonidet P−40のHLB値は13.1である。
また、非イオン性界面活性剤の重量平均分子量としては、細胞毒性の観点から、500〜50000が好ましく、1000〜30000がより好ましく、2000〜20000が更に好ましい。
なお、重量平均分子量は、液体クロマトグラフィー、NMR、MALDI−TOF/MS等で測定可能である。
非イオン性界面活性剤の濃度は、系内の液相の総量(生体試料やバッファーなどの全容積から固相担体等の固形分を除いた量)に対して、終濃度で、好ましくは0.005%(w/v)以上、より好ましくは0.01%(w/v)以上、更に好ましくは0.015%(w/v)以上、特に好ましくは0.02%(w/v)以上であり、また、好ましくは10%(w/v)以下、より好ましくは5%(w/v)以下、更に好ましくは3.5%(w/v)以下、特に好ましくは2%(w/v)以下である。なお、複合体形成工程、洗浄工程いずれにおいても、上記の終濃度が好ましい。
非イオン性界面活性剤の濃度が、上記の数値の範囲内であると、非特異吸着低減効果に優れ、固相担体が粒子の場合には凝集防止作用に優れる。また、リガンドと表面抗原との間の結合を阻害しない。
また、本発明においては、複合体形成工程及び洗浄工程のうちいずれか一方を非イオン性界面活性剤の存在下で行ってもよく、複合体形成工程及び洗浄工程の両方を非イオン性界面活性剤の存在下で行ってもよい。また、複合体形成工程に先立ち、非イオン性界面活性剤を含むバッファーなどの組成物を生体試料に予め添加しておき、これを用いてもよい。
具体的には、固相担体がプレートや繊維状で液相中に分散しない形状の場合には複合体形成工程の際の液相中や、洗浄工程で使用される洗浄液中などとして、非イオン性界面活性剤が系内に添加されていればよい。また、固相担体が磁性粒子のような粒子状で液相中に分散されるものの場合には、検体である生体試料に添加する前の粒子分散液に予め添加しておき、これを用いること、或いは生体試料を調整するバッファー中、洗浄工程で使用される洗浄液中等に添加されることが好ましい。
例えば、抗体結合粒子の保存バッファーに非イオン性界面活性剤を添加することで、BSAやその他のポリマーと比較して粒子状の固相担体の分散性を高め、凝集及び保存容器や反応容器への非特異吸着を低減することができる。また、洗浄バッファー中に非イオン性界面活性剤を添加することで、動物細胞やエクソソーム等の小胞を破壊することなく、検体由来の非特異成分の吸着を激減させることができ、芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤を用いた場合であっても、抗体結合粒子の洗浄能を、芳香族基を有する非イオン性界面活性剤であるTriton X−100と同等のレベルまで上げることができる。
(複合体形成工程)
複合体形成工程は、脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体とを接触させ、小胞と固相担体との複合体を形成させる工程である。上記接触により、リガンドに小胞が捕捉され、小胞と固相担体との複合体が形成される。なお、複合体形成工程の反応系には、上記固相担体に結合したリガンド以外に、脂質二重膜を有する小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドも共存していてもよい。
上記生体試料は脂質二重膜を有する小胞を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、体液、菌体液、細胞培養の培地、細胞培養上清、組織細胞の破砕液等の各種液体が挙げられる。この中でも、体液、細胞培養上清が好ましい。体液としては、全血、血清、血漿、血液成分、各種血球、血餅、血小板等の血液組成成分の他、尿、精液、母乳、汗、間質液、間質性リンパ液、骨髄液、組織液、唾液、胃液、関節液、胸水、胆汁、腹水、羊水等が挙げられ、好ましくは血液組成成分、尿である。本発明の分離方法によれば、広範な種類の生体試料から選択的かつ効率よく小胞を分離できる。例えば、生体試料として血漿や血清を用いた場合でも非特異吸着が起こりにくい。
なお、血液組成成分は、クエン酸、ヘパリン、EDTA等の抗凝固剤で処理されたものでもよい。
上記生体試料は、非イオン性界面活性剤を含むバッファー組成物に添加しておくなどして予め前処理したものを用いてもよいが、生体から摂取したものをそのまま用いることもできる。すなわち、本発明の分離方法によれば、PEG沈殿法、超遠心機等を用いた単離法等による前処理を行わず簡便に選択的な分離をすることも可能である。
また、上記脂質二重膜を有する小胞としては、細胞、細胞から細胞外に放出されるエクソソームのような小胞が挙げられるが、本発明の分離方法は、小胞がエクソソームである場合に特に好ましく用いられる。一般的には、固相担体が磁性粒子のような粒子状のものである場合、粒子に結合した抗体を介してエクソソームを捕捉した際に、粒子同士が凝集しやすくなり、粒子の再分散が困難になるため、夾雑物の洗い流しが困難になることがあるが、本発明においては、非イオン性界面活性剤を添加することで粒子同士の凝集を低減することができる。
また、小胞の表面に存在する表面抗原は、小胞の表面に存在する物質で抗原性のあるものであれば特に限定されない。エクソソームの表面抗原を例に挙げると、CD9、CD63、CD81等のテトラスパニン類;MHCI、MHCII等の抗原提示関連タンパク質;インテグリン、ICAM−1、EpCAMなどの接着分子;EGFRvIII、TGF−βなどのサイトカイン/サイトカイン受容体、酵素類等が挙げられる。これらの中でも、エクソソーム表面に存在する抗原タンパク質が好ましい。
また、上記生体試料の使用量は、系内の液相の総量(生体試料やバッファーなどの全容積から固相担体等の固形分を除いた量)に対して、終濃度で、1〜90%(w/v)が好ましく、10〜50%(w/v)がより好ましい。
また、本発明の分離方法に用いる固相担体は、小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合したものであれば特に限定されない。
リガンドとしては、小胞の表面に存在する表面抗原を認識する抗体が好ましく、エクソソームの表面に存在する抗原タンパク質を認識する抗体がより好ましい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、好ましくはモノクローナル抗体である。
上記モノクローナル抗体は、特に限定されるものではなく、公知の方法、例えば、K.Watanabe et al.,Vasohibin as an endothelium−derived negative feedback regulator of angiogenesis,J.Clin.Invest.114(2004),898−907に記載された方法に従って調製したものでよい。また、エクソソームの表面抗原CD9、CD63、CD81等のテトラスパニン類を認識するモノクローナル抗体は、国際公開第2013/099925号公報等を参照して作製できる。
なお、上記抗体のクラスとしては、IgG、IgMが挙げられるが、IgGが好ましい。また、これらを低分子化したフラグメントを用いてもよい。例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab等が挙げられる。
上記リガンドを結合させる固相担体の材質としては、例えば、ポリスチレン類、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリエステル類、ポリ(メタ)アクリロニトリル類、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド等の高分子化合物;ガラス;金属;磁性体;磁性体を含む樹脂組成物;これらの組み合わせ等が挙げられる。
また、固相担体の形状は特に限定されるものではなく、例えば、トレイ状、球状、粒子状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、マイクロプレート、試験管等が挙げられる。
本発明においては、固液分離や洗浄の容易性の観点から、磁性粒子が好ましい。
上記磁性粒子としては、例えば、四三酸化鉄(Fe)、三二酸化鉄(γ−Fe)、各種フェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属;コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金からなる磁性体微粒子;これら磁性体を樹脂中に含む磁性粒子が挙げられる。樹脂としては、疎水性重合体、親水性重合体などが挙げられる。
中でも、磁性体を樹脂中に含む磁性粒子が好ましく、超常磁性微粒子を含む母粒子の表面にポリマー層が形成されたものがより好ましい。例えば、特開2008−32411号公報に記載の、超常磁性微粒子を含む母粒子の表面に、疎水性の第1ポリマー層が形成され、当該第1ポリマー層上に、少なくとも表面にグリシジル基を有する第2ポリマー層が形成され、当該グリシジル基を化学修飾することにより極性基が導入された磁性粒子が挙げられる。
ここで、超常磁性微粒子としては、粒子径20nm以下(好ましくは粒子径5〜20nm)の酸化鉄系の微粒子が代表的であり、XFe(X=Mn、Co、Ni、Mg、Cu、Li0.5Fe0.5等)で表現されるフェライト、Feで表現されるマグネタイト、γ−Feが挙げられ、飽和磁化が強く、かつ残留磁化が少ない点で、γ−Fe及びFeのいずれか一方を含むことが好ましい。
また、上記疎水性の第1ポリマー層を形成するためのモノマーは、単官能性モノマー、架橋性モノマーに大別される。
上記単官能性モノマーとして、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル系モノマー;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル系モノマーを例示することができる。
また、上記架橋性モノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンの他、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどを例示することができる。
また、上記第2ポリマー層を形成するためのモノマーは、粒子表面への官能基導入を主目的とするものであり、グリシジル基含有モノマーを含むものである。グリシジル基含有モノマーの含有量としては、第2ポリマー層を形成するためのモノマー中、20質量%以上が好ましい。ここで、グリシジル基を含む共重合性モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
第2ポリマー層のグリシジル基を化学修飾することにより導入される極性基としては、リガンドと反応可能な官能基であることが好ましく、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含むものがより好ましい。中でも、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、活性エステル基がより好ましい。特に、磁性粒子の第2ポリマー層が前記極性基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する場合、リガンドとの結合性が良好となる。
リガンドを固相担体に結合する方法としては、物理的吸着法や、共有結合法、イオン結合法といった化学的に結合する方法などが用いられる。物理的吸着法としては、固相担体にリガンドを直接固定する方法、アルブミンなどの他のタンパク質に化学的に結合させてから吸着させて固定する方法などが挙げられる。化学的に結合させる方法としては、固相担体表面に導入した、リガンドと反応可能な官能基を利用して、固相担体上に直接結合する方法、固相担体とリガンドとの間にスペーサー分子(カルボジイミド化合物など)を化学結合で導入してから結合する方法、アルブミンなどの他のタンパク質にリガンドを結合させた後、そのタンパク質を固相担体に化学結合する方法などが挙げられる。
また、上記リガンドが結合した固相担体の使用量は、系内の液相の総量(生体試料やバッファーなどの全容積から固相担体等の固形分を除いた量)に対して、終濃度で、0.005〜5%(w/v)が好ましく、0.01〜1%(w/v)がより好ましい。
複合体形成工程は、上記各成分の他に、必要に応じて、塩類や、アルブミン等のタンパク質、前述した非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤等を用いて行ってもよいが、後の分析等を考慮すると、タンパク質や核酸は使用しない方が好ましい。
複合体形成工程における反応温度は、通常2〜42℃の範囲内であり、反応時間は、通常5分〜24時間である。2〜8℃で反応を行う場合、反応時間は好ましくは8〜30時間程度、室温(20℃)〜42℃で反応を行う場合、反応時間は好ましくは5〜60分間程度である。
複合体形成工程において、系中のpHは特に限定されないが、好ましくはpH5〜10の範囲、より好ましくはpH6〜8の範囲である。目的のpHを維持するために、通常、緩衝液が用いられ、例えば、リン酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液等が挙げられる。
(洗浄工程)
洗浄工程は、上記複合体形成工程で形成された小胞と固相担体との複合体を洗浄する工程である。これによって、未反応の成分や未反応の標識物質等が除去される。複合体形成工程における複合体を含む系をそのまま洗浄してもよい。
上記洗浄工程は、通常、固相担体の形状により2種類に分けられる。磁性粒子のように固相担体が粒子状である場合には、例えば洗浄液中に磁性粒子を分散させて洗浄する方法が挙げられ、一方、固相担体がマイクロプレートのような形態である場合には、その表面に洗浄液を接触させて洗浄する方法が挙げられる。いずれの態様であっても、本発明においては、洗浄液として、上記芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤を含む洗浄液を使用することが好ましい。
また、固相担体が磁性粒子の場合、洗浄工程としては、磁性粒子を磁力により集めて磁性粒子と液相とを分離する集磁工程、及び該集磁工程で分離された磁性粒子を洗浄液中に分散させる分散工程とを含むことが好ましい。これによって、未反応の物質や生体試料中の夾雑物を磁性粒子表面から更に効率よく洗浄・分離除去できる。
具体的には、反応容器に磁場を作用させ、磁性粒子を反応容器壁に付着させて集めた後、反応上清を除去し、さらに必要に応じて洗浄液を加え、同様に磁場を作用させた後上清を除去する操作を繰り返すことにより行えばよい。
洗浄液としては、上記芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤と上記複合体形成工程で挙げた緩衝液を含む洗浄液が好ましい。洗浄液のpHは、好ましくはpH5〜10の範囲、より好ましくはpH6〜8の範囲である。具体的には、0.01%非イオン性界面活性剤含有TBS等が挙げられる。
(解離工程)
本発明の分離方法は、上記洗浄工程後、捕捉された小胞をリガンドから解離する解離工程を有していてもよい。
リガンドが特定の抗体である場合に抗原・抗体反応による特異的な結合を解離される条件としては、アフィニティークロマトグラフィー等で種々のものが知られている(例えば、“Afinity Chromatography principles & methods” Pharmacia LKB Biotechnology参照)。上記解離工程はこれに準じて行えばよい。即ち、本発明で使用される解離液としては、塩酸、硫酸、プロピオン酸、酢酸、グリシン/塩酸バッファー等の酸性溶液;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、ジエチルアミン等のアルカリ性溶液;3M塩化ナトリウム水溶液、4.5M塩化マグネシウム水溶液等の高イオン強度溶液;SDS、TritonX−100、Tween20等の界面活性剤含有溶液;ジオキサン、エチレングリコール等の極性を下げる物質を含有する緩衝液;トリクロロ酢酸、チオシアン酸などのカオトロピックイオンの他、尿素、塩酸グアニジン等を含有する緩衝液が挙げられる。
〔核酸の検出方法及びタンパク質の検出方法〕
本発明の小胞中の核酸の検出方法は、上記分離方法の後に、さらに小胞中の核酸を検出する核酸検出工程を含むものである。
また、本発明の小胞由来のタンパク質の検出方法は、上記分離方法の後に、さらに小胞の内側及び表面の少なくとも一方に存在するタンパク質を検出するタンパク質検出工程を含むものである。
これら検出方法は、上記分離方法を行う以外は常法にしたがっておこなえばよい。上記脂質二重膜を有する小胞がエクソソームである場合、回収されたエクソソームから核酸やタンパク質を、PCR法、電気泳動法、ウェスタンブロッティング法、免疫化学的方法等の公知の方法に従って検出すればよい。また、核酸としては、miRNAやmRNAが挙げられる。
特に、エクソソームは、種々の細胞、例えば免疫系の細胞や各種癌細胞から分泌されることから、本発明の核酸の検出方法によれば、エクソソーム由来の核酸(特にmiRNA等)を検出し、それを解析することによって、生理現象や各種疾患の判定が可能になる。
〔シグナル測定方法〕
本発明の小胞由来のシグナル測定方法は、上記分離方法の後に、さらに前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定するシグナル測定工程を含むものである。
上記シグナル強度の測定は免疫測定法により行えばよく、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、酵素イムノメトリックアッセイ法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射線免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、イムノブロット法、ウェスタンブロット法等が挙げられ、簡便に感度よく抗体を検出できる点から、ELISA法が好ましい。ELISA法としては、競合法、サンドイッチ法などが挙げられる。
ここで、サンドイッチELISA法を使用する場合の分離方法の一例を示す。まず、小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドを固相担体に結合した後、脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料を接触させて複合体を形成させ、その後洗浄する。そこに、モノクローナル抗体又はその抗体断片や疾患特異的膜タンパク質抗体又はその抗体断片を修飾した標識抗体を添加して、さらなる複合体を形成させる。そして、形成された複合体中の標識量を検出することにより、生体試料に含まれる小胞に由来するシグナル量や、生体試料に含まれる疾患特異的小胞量を測定することができる。
〔疾患の判定方法〕
本発明の被検者が疾患を発症しているか否かを判定するための方法は、被検者由来の生体試料を用いて、上記シグナル測定方法により前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定する工程(以下、工程(I)ともいう)を含むことを特徴とするものである。
そして、工程(I)で測定されたシグナル強度と、対照者由来の生体試料のシグナル強度とを対比して、被検者におけるシグナル強度が対照者におけるシグナル強度より強いと認められる場合に、被検者が疾患を発症していると判定すればよい(以下、工程(II)ともいう)。
本発明の疾患の判定方法で判定可能な疾患としては、癌疾患(大腸癌、乳癌、子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵癌、胃癌、食道癌、肝癌、肺癌、腎癌、皮膚癌など)、炎症系疾患(リウマチ、変形性関節症、腎症、膵炎、肝炎、アレルギーなど)、アルツハイマー等の神経変性疾患、脳疾患、免疫不全に関連する疾患、不妊、うつ病、自閉症等の精神疾患、パーキンソン病等の難治療性疾患、自己免疫性疾患、循環器疾患、血液疾患、消化器疾患、老化に伴う疾患、感染症等が例示される。これらの中でも、癌疾患、免疫系疾患の判定に有用であり、特に癌疾患の判定に特に有用である。
また、細胞障害性T細胞(CTL)の免疫活性の指標に応用すれば、癌ワクチンの癌疾患に対する効果判定にも応用できる。
工程(I)は、上記シグナル測定方法で測定を行うこと以外は常法にしたがって行えばよい。
また、工程(II)は、工程(I)で測定されたシグナル強度について、対照者由来の生体試料のシグナルに基づいて統計学的な解析を行って比較を行う。解析方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、その後の判定は、例えば、被検者由来の生体試料のシグナルが対照者におけるシグナルと比べて強い場合に、疾患を発症している可能性が高いと判断される。なお、本発明において、対照者とは、疾患を発症していない被検者と同年代・同性の者の平均をいい、対照者におけるシグナル強度は被検者におけるシグナル強度と共に測定してもよく、別途予め測定した値から得られた統計値を用いてもよい。
〔疾患治療薬の薬効評価方法〕
本発明の疾患治療薬の薬効評価方法は、疾患治療薬の投与前及び投与後の被検者由来の生体試料を用いて、上記シグナル測定方法により、複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定する工程(以下、工程(A)ともいう)を含むことを特徴とするものである。
そして、疾患治療薬の投与後の被検者由来の生体試料における複合体由来のシグナル強度が、疾患治療薬の投与前の被検者由来の生体試料における複合体由来のシグナル強度より弱いと認められる場合に、疾患治療薬が薬効を示している可能性が高いと判定すればよい(以下、工程(B)ともいう)。
上記疾患治療薬としては、上記判定方法で判定可能な疾患を治療する薬物が挙げられる。好適な具体例は、抗癌剤、抗免疫系疾患薬である。
工程(A)は、上記シグナル測定方法で測定を行うこと以外は常法にしたがって行えばよい。
また、工程(B)は、工程(A)で測定されたシグナル強度について、疾患治療薬の投与前の生体試料におけるシグナルに基づいて統計学的な解析を行って比較を行う。解析方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、その後の判定は、例えば、疾患治療薬の投与後の生体試料におけるシグナル量が投与前の生体試料におけるシグナル量と比べて少ない場合に、該薬が疾患を抑える効果を有している可能性が高いと判断される。
特に、エクソソームは、種々の細胞、例えば免疫系の細胞や各種癌細胞から分泌されることから、疾患治療薬の投与の前後での血中エクソソームの変化(存在量の増減だけに加え、膜タンパク質の量の変動を含む)を測定することにより、患者における薬効を評価することが可能になると考えられる。また、例えば、癌細胞に特異的な膜タンパク質に対するリガンドとエクソソームの表面抗原に対するリガンドとを組み合わせれば、癌診断の特異性の向上や癌種の特定などが期待でき、より癌疾患に特異的な診断薬の開発が可能となると考えられる。
〔キット〕
本発明のキットは、脂質二重膜を有する小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体と、非イオン性界面活性剤を含む液状組成物とを備えることを特徴とするものである。斯かるキットは、上記分離方法、上記疾患の判定、上記疾患治療薬の薬効評価に有用である。
固相担体、液状組成物に含まれる非イオン性界面活性剤としては、上記分離方法で用いるものと同様のものが挙げられる。非イオン性界面活性剤の濃度は、液状組成物全量に対して、0.005〜10%(w/v)が好ましく、0.02〜2%(w/v)がより好ましい。また、液状組成物のpHは特に限定されないが、好ましくはpH5〜10の範囲、より好ましくはpH6〜8の範囲である。目的のpHを維持するために、通常、緩衝液が用いられ、例えば、リン酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液等が挙げられる。
〔液状組成物〕
本発明の液状組成物は、脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した固相担体とを接触させ、小胞と固相担体との複合体を形成させる複合体形成工程と、複合体を洗浄する洗浄工程とを含む、脂質二重膜を有する小胞の分離方法に使用される、複合体を洗浄するための液状組成物であって、非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とするものである。
本発明の液状組成物の組成、pHは、上記本発明のキットが備える液状組成物と同様である。
本発明の液状組成物は、本発明の分離方法に使用されるものである。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(試験例1 凝集確認試験(1))
まず、コントロールのバッファーとして、トリス緩衝生理食塩水(TBS、pH7.4)を、実施例1のバッファーとして、濃度が0.1%(w/v)になるように非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール Pluronic F−68(ADEKA、以下同じ))をTBS(pH7.4)に添加したものを、それぞれ準備した。
次いで、上記各バッファーに、抗CD63抗体結合磁性粒子(Exosome−Dynabeads Human CD63 Isolation/Detection、Life technologies社製Ref 10606D)を、濃度が0.1%(w/v)になるように添加し、この粒子保存バッファー100μLと、エクソソームを含むHT29細胞の培養上清(100倍濃縮液をTBSで5倍希釈)100μLとを、1.5mLチューブに入れて混合した。これを25℃で1時間振とうした後、チューブの内壁面に付着した抗体結合磁性粒子の凝集体を目視で確認した。結果を表1に示す。
表1に示すように、TBSのみに磁性粒子を懸濁した場合(コントロール)は、磁性粒子凝集体の内壁面への付着が確認されたが、TBSに非イオン性界面活性剤を0.1%(w/v)添加して磁性粒子を懸濁した場合(実施例1)には、この凝集体の付着は確認されなかった。
(試験例2 凝集確認試験(2))
まず、コントロールのバッファーとしてTBS(pH7.4)を、実施例2〜7のバッファーとして、下記表2に示す濃度になるように非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール Pluronic F−68)をTBS(pH7.4)に添加したものを、比較例1及び2のバッファーとして、下記表2に示す濃度になるようにウシ血清アルブミン(BSA)をTBS(pH7.4)に添加したものを、それぞれ準備した。
次いで、上記各バッファーに、抗EpCAM抗体(JSRライフサイエンス社製、以下同じ)を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl、以下同じ)を、濃度が0.2%(w/v)になるように添加し、この粒子保存バッファー100μLと、エクソソームを含むHT29細胞の培養上清(100倍濃縮液をTBSで5倍希釈)100μLとを、1.5mLチューブに入れて混合した。これを25℃で1時間振とうした後、チューブの内壁面に付着した抗体結合磁性粒子の凝集体を目視で確認した。結果を表2に示す。
表2に示すように、抗EpCAM抗体結合磁性粒子においても、TBSのみに懸濁した場合(コントロール)には、磁性粒子の凝集体が壁面に付着している様子が確認された。また、BSAを添加してもこの凝集は低減されなかった(比較例1、2)。
一方、TBSに非イオン性界面活性剤を0.02〜1.0%(w/v)添加して懸濁した場合(実施例2〜7)には、この凝集体の付着は確認されなかった。
なお、抗EpCAM抗体を、抗CD9抗体(アブカム社製 ab2215、以下同じ)又は抗CD63抗体(JSRライフサイエンス社製、以下同じ)に変更した以外は上記試験例2と同様にして試験を行ったところ、試験例2と同様の結果が得られた。
(試験例3 非イオン性界面活性剤添加による反応への影響)
96ウェル白色プレート(コーニング社製)に、(i)抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.05%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)1.0%(w/v)を含有するTBSと、(ii)上記(i)と同じ抗体をアルカリホスファターゼで標識した抗体のMES溶液(1μg/mL)と、(iii)HT29細胞の培養上清(100倍濃縮液をTBSで100倍希釈)とを、それぞれ25μLずつ入れて混合した。これを、25℃で20分間振とうした後、集磁しながら洗浄バッファー(0.01%(w/v)Tween20含有TBS)を用いて反応後の抗体結合磁性粒子を洗浄した。発光基質(ルミパルス基質液)を50μL添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax)を用いて発光強度を測定した。
また、上記(i)の粒子懸濁液における非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)の濃度を、1.0%(w/v)から、0%(w/v)、0.01%(w/v)、0.02%(w/v)、0.05%(w/v)、0.1%(w/v)、0.2%(w/v)、0.5%(w/v)に変更して得た粒子保存バッファーについても、上記と同様にして発光強度を測定した。
これら結果を図1に示す。
図1に示すとおり、粒子保存バッファーに非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)を0.01〜1.0%(w/v)(終濃度0.0033〜0.33%(w/v))添加しても、磁性粒子に結合された4種の抗体とエクソソームとの反応は阻害されなかった。
(試験例4 洗浄能確認試験)
抗体結合磁性粒子に検体(血清、血漿、尿)を反応させた場合、TBS(pH7.4)のみによる粒子洗浄では、検体由来の非特異吸着を十分に低減できないことをSDS−PAGEの銀染色で確認した。特に、血清を用いた場合に非特異吸着が多かったため、非イオン性界面活性剤を含む粒子洗浄バッファーの洗浄能を、血清を用いて以下の手順で確認した。
まず、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)150μLと、ヒト健常者由来の血清150μLとを1.5mLチューブに入れ、混合した。
これを、25℃で1時間振とうした後、集磁して血清を除去し、0.5mLの洗浄バッファー((i)TBS、(ii)0.01%(w/v)Triton X−100含有TBS、又は(iii)0.01%(w/v)Pluronic F−68含有TBSにて洗浄を2回行った。
次いで集磁して洗浄液を廃棄後、抗体結合磁性粒子を1×サンプルバッファー(NuPAGE LDS Sample Buffer (4×), invitrogen Cat no. NP0008、以下同じ)20μLで懸濁し、95℃で5分間静置した。全量をSDS−PAGEにアプライし、銀染色(コスモバイオ社製)を行った。結果を図2に示す。
図2に示すとおり、4種の抗体結合磁性粒子すべてにおいて、TBSのみによる洗浄(図2:レーンTBS)では、多量の血清由来成分が粒子に非特異吸着したままであったが、洗浄バッファーに0.01%(w/v)の非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68又はTriton X−100)を添加することで(図2:レーンPL、レーンTX)、非特異吸着は劇的に減少した。
なお、芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)は、脂質二重膜への影響が少ないため、このような芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤が特に最適であると考えられる。
(試験例5 非イオン性界面活性剤含有洗浄バッファーによる特異的結合への影響)
非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)含有洗浄バッファーによって、検体由来の非特異成分の吸着だけでなく、抗体結合磁性粒子に特異的に反応した抗原(エクソソーム)までもが抗体から剥がれていないかを確認するために、ウェスタンブロットによるタンパク質検出を以下の手順で行った。
まず、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)100μLと、エクソソームを含むHT29細胞の培養上清(100倍濃縮液をTBSで10倍希釈)100μLとを1.5mLチューブに入れて混合した。
これを、25℃で1時間振とうした後、集磁して培養上清を除去し、0.5mLの洗浄バッファー((i)0.1%(w/v)BSA含有PBS、又は(ii)0.01%(w/v)非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)含有TBS)にて洗浄を3回行った。
次いで集磁して洗浄液を廃棄後、抗体結合磁性粒子を1×サンプルバッファー20μLで懸濁し、95℃で5分間静置した。各抗体結合磁性粒子に対する各洗浄バッファーによる洗浄後のサンプルを全量(20μL)アプライし、SDS−PAGEを行った。ゲルをPVDF膜(Trans−Blot Turbo Transfer Pack Midi format, 0.2μm PVDF(BIO−RAD, Control 400072019))に転写後、ブロッキングバッファー(1%(w/v)BSA及び0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて37℃で2時間振とうした。これを洗浄バッファー(0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて洗浄した後、一次抗体として、抗CD81抗体(Clone M38、Abnova MAB6435)を1μg/mL含む溶液(溶剤:0.5%(w/v)BSA含有TBS)、及び標識抗体として、HRP標識抗マウスIgG抗体(Mouse TrueBlot ULTRA: Anti−Mouse IgG HRP、Rockland 18−8817−33)を1μg/mL含む溶液(溶剤:0.5%(w/v)BSA含有TBS)を、それぞれ25℃で1時間反応させ、これを洗浄バッファー(0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて洗浄した後、発光基質(SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity substrate、Thermo scientific Cat#34095)を反応させ、発光測定器(LAS−3000, FUJIFILM)にてウェスタンブロット像を確認した。結果を図3に示す。
図3に示すとおり、反応後の抗体結合磁性粒子(抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体、抗EpCAM抗体)を0.01%(w/v)非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)を含むTBSで洗浄しても(図3、レーンPLU)、0.1%BSA含有PBSによる洗浄と比較して(図3、レーンBSA)、抗体からエクソソームが剥がれていないことが確認された。
(試験例6 安定性試験)
抗体結合磁性粒子の反応時及び洗浄時に非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)が含まれていても、エクソソームが安定であることを確認するために、エクソソームの粒度分布を以下の手順で測定した。
まず、(i)TBS(pH7.4)又は(ii)0.1%(w/v)非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)含有TBS(pH7.4)にて、HT29細胞の培養上清(100倍濃縮液)を10倍希釈し(10×培養上清)、冷蔵で3日間保存した。その後、10×培養上清をTBSで100倍希釈して、NanoSight LM10(NANO SIGHT社)を用いてエクソソームの粒度分布を確認した。
エクソソームを0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)を含むTBS中で保存しても、TBSのみによる保存と比較して、エクソソームの粒度分布に変化はみられなかった。このため、抗体結合磁性粒子の保存バッファー及び洗浄バッファー中に非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)を添加しても、エクソソームの安定性に影響はないと考えられた。
(試験例7 非イオン性界面活性剤)
表3に示す各種非イオン性界面活性剤による反応時における影響を確認するために、各非イオン性界面活性剤存在下における抗体結合磁性粒子とエクソソームとの反応性を以下の手順で測定した。
まず、(i)抗CD81抗体を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.05%(w/v)及び表3に示す非イオン性界面活性剤1.0%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)200μL、又は(ii)抗CD81抗体を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.05%(w/v)及びBSA0.1%(w/v)を含有するPBS200μLと、エクソソームを含むHT29細胞の培養上清(100倍濃縮液をTBSで10倍希釈)10μLとを1.5mLチューブに入れて混合し、25℃で1時間振とうした。
これを96ウェル白色プレート(コーニング社製)に50μL添加し、集磁しながら洗浄バッファー(0.01%(w/v)Tween20含有TBS)を用いて反応後の抗体結合磁性粒子を洗浄した。これに、抗CD81抗体をアルカリホスファターゼで標識した抗体のMES溶液(1μg/mL)50μLを入れて混合した。
これを25℃で20分間振とうした後、集磁しながら洗浄バッファー(0.01%(w/v)Tween20含有TBS)を用いて反応後の抗体結合磁性粒子を洗浄した。発光基質(富士レビオ製、ルミパルス基質液)を50μL添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax)を用いて発光強度を測定した。結果を表4に示す。
表4に示すとおり、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物(Pluronic F−68、Pluronic L−62)及びソルビタンの脂肪酸エステル(Tween20、Tween80)を添加しても、エクソソームの破壊による抗体結合磁性粒子との反応性の低下は確認されなかった。一方、芳香族基を含む非イオン性界面活性剤であるTritonX−100(HLB値13.5)及びNonidet P−40(HLB値13.1)では、エクソソームの破壊が原因と思われる反応性の低下が確認された。
以上より、抗体結合磁性粒子の保存バッファー及び洗浄バッファー中に非イオン性界面活性剤(芳香族基を分子中に含まないもの)を添加しても、エクソソームの安定性及び抗体結合磁性粒子との反応性に影響はないと考えられた。
(試験例8 捕捉小胞の確認)
抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームが破壊されていないことを確認するために、粒度分布計及び透過型電子顕微鏡を用いて、エクソソームの粒径と形態を以下の手順で測定した。
抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合した磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)を終粒子濃度で0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)100μLと、エクソソームを含むHT29細胞の培養上清100μLとを、1.5mLチューブに入れて混合した。これを、25℃で1時間振とうした後、集磁して培養上清を除去し、0.5mLの洗浄バッファー(0.1%(w/v)Pluronic F−68含有TBS)にて洗浄を3回行った。
集磁して洗浄バッファーを除去し、エクソソーム溶出バッファー(JSRライフサイエンス社製 ExoCapTM Exosome Isolation and Enrichment Kits Exosome Elution Buffer)にて抗体結合磁性粒子を懸濁し、溶出エクソソームを調製した。その後、溶出エクソソームの粒度分布をナノ粒子解析装置(NanoSight LM10、NANO SIGHT社)にて計測した。結果を図4及び図5に示す。なお、図4は、抗CD63抗体結合磁性粒子を用いた場合の溶出エクソソームの粒度分布図である。
その結果、100nm前後にピークを有する粒度分布の波形が確認された(図4)。また、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合した粒子で捕捉したすべての溶出エクソソームで同様の粒度分布が確認された(図5)。
抗CD9抗体を結合した磁性粒子を用いて、上記と同様に調製した溶出エクソソームについて、透過型電子顕微鏡により形態を直接観察した。リンタングステン酸又は酢酸ウラニルによるネガティブ染色を行った。結果を図6に示す。
その結果、小胞様の球形の構造体(図6)と小胞の脂質二重膜が確認された(図6中の矢印)。
以上の結果から、各抗体結合磁性粒子で捕捉した小胞は、既報のエクソソームの粒径と同様に100nm前後の粒径を有し、且つ形態も既報の観察結果とよく一致しているため、エクソソームであり、捕捉工程と洗浄工程によりエクソソームが破壊されていないと考えられた。
(試験例9 小胞中の核酸の検出)
抗体結合磁性粒子で捕捉した小胞中の核酸(全RNA)を、マイクロチップ型電気泳動装置を用いて検出した。サンプルとして使用するスタンダードエクソソームは、HT29細胞の培養上清から超遠心法によりエクソソームを分離し、PBSで調整後、タンパク定量(BIO−RAD DC Protein Assay)を行った。具体的手順を以下に示す。
抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合した磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)を終粒子濃度で0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)100μLと、スタンダードエクソソーム(0μg、1μg、3μg又は10μg)含有PBS100μLとを、1.5mLチューブに入れて混合した。これを、4℃で約18時間振とうした後、集磁して未反応のエクソソームを除去し、1mLの洗浄バッファー(0.1%(w/v)Pluronic F−68含有TBS)にて洗浄を3回行い、集磁して洗浄バッファーを除去した。
抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームから、RIP−Assay Kit for microRNA(MBL社製、2−step method参照)を用いて、全RNAを抽出後、RNase−free waterで調整した。
抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームからの全RNAを、マイクロチップ型電気泳動装置バイオアナライザ(アジレント・テクノロジー社製)を用いて検出した。結果を図7に示す。
図7に示すとおり、Small RNAとmRNAなどのピークが確認された。また、検出される核酸の量は、スタンダードエクソソーム量に比例して増加した。
(試験例10 小胞中のmicroRNAの検出)
抗体結合磁性粒子で捕捉した小胞中の核酸(microRNA)を、定量PCR法を用いて、以下の手順で測定した。
まず、抗体結合磁性粒子として、(i)抗CD63抗体結合磁性粒子、又は(ii)抗CD9抗体結合磁性粒子と抗CD63抗体結合磁性粒子と抗CD81抗体結合磁性粒子と抗EpCAM抗体抗体結合磁性粒子との混合物(質量比1:1:1:1)を、それぞれ終粒子濃度で0.1%(w/v)で用いた以外は試験例9と同様の方法で全RNAを抽出した。次いで、miScript II RT kit(QIAGEN社製)及びmiScript SYBR Green PCR kit(QIAGEN社製)を用いて、microRNA(let−7a−1)を定量した。結果を図8に示す。
その結果、図8に示すような増幅曲線が得られ、抗体結合磁性粒子で捕捉したエクソソームから、特異的なmicroRNAを検出することができた。これにより、抗体結合磁性粒子を用いて小胞由来の各種microRNAを定量し、プロファイリングすることで疾患の判定に利用できる。
(試験例11 小胞由来のタンパク質の検出)
抗体結合磁性粒子で捕捉した小胞の内側及び表面に存在する小胞由来のタンパク質を、ウェスタンブロット法を用いて検出した。
まず、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合した磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)100μLと、エクソソームを含むHT29細胞の培養上清(100倍濃縮液をTBSで10倍希釈)0.1mLとを、1.5mLチューブに入れて混合した。
これを、25℃で1時間振とうした後、集磁して培養上清を除去し、0.5mLの洗浄バッファー(0.1%(w/v)非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)含有TBS)にて洗浄を3回行った。
次いで集磁して洗浄液を廃棄後、抗体結合磁性粒子を1×サンプルバッファー20μLで懸濁し、95℃で5分間静置した。なお、表面タンパク質(CD9、CD63、CD81、EpCAM)の検出は非還元処理で、内側タンパク質(Alix、Hsp70)の検出は還元処理で行った。各サンプルを全量(20μL)アプライし、SDS−PAGEを行った。ゲルをPVDF膜に転写後、ブロッキングバッファー(1%(w/v)BSA及び0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて37℃で2時間振とうした。これを洗浄バッファー(0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて洗浄し、一次抗体及び標識抗体をそれぞれ25℃で1時間反応させた。
なお、Hsp70以外のタンパク質の検出は、一次抗体として、抗CD9抗体(アブカム社製 ab2215)、抗CD63抗体(MX−49.129.5、Mouse IgG1、SantaCruz sc−5275)、抗CD81抗体(Clone M38、Abnova MAB6435)、抗EpCAM抗体(JSRライフサイエンス社製)、抗Alix抗体(Alix (3A9)Mouse mAb、Cell signaling technology #2171S)を、標識抗体として、HRP標識抗マウスIgG抗体(Mouse TrueBlot ULTRA: Anti−Mouse IgG HRP、Rockland 18−8817−33)を、それぞれ使用した。また、Hsp70の検出は、Anti−HSP70,Rabbit−Poly,with HRP Conjugated Secondary Antibody(SBI社製、EXOAB−Hsp70A−1)を使用した。
上記一次抗体及び標識抗体の反応が終了した後、洗浄バッファー(0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて洗浄し、発光基質(SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity substrate、Thermo scientific Cat#34095)を反応させ、発光測定器(LAS−3000, FUJIFILM)にてウェスタンブロット像を確認した。結果を図9に示す。
その結果、すべての抗体結合磁性粒子において、捕捉したエクソソームから、小胞由来の表面タンパク質(CD9、CD63、CD81、EpCAM)及び内側タンパク質(Alix、Hsp70)のバンドを目的のサイズで検出した(図9)。
また、上記反応に使用したHT29細胞の培養上清0.1mLを、スタンダードエクソソーム(1、3、10μg)、HT29細胞の培養上清1mLにそれぞれ変えて、上記と同様の方法により、小胞由来のタンパク質の量(表面タンパク質CD9)を検出した。一次抗体として抗CD9抗体を使用した場合の結果を図10に示す。
その結果、反応させるスタンダードエクソソーム量(1、3、10μg)及び培養上清の液量(0.1、1mL)に比例して、検出される小胞由来のタンパク質の量が増加した(図10)。このため、小胞由来のタンパク質を定量することで、体液又は培養上清中の小胞の量を測定することができる。
(試験例12 体液及び培養上清からの小胞の検出)
各種細胞培養上清及び体液(血清、血漿、尿)中の小胞由来のタンパク質を、ウェスタンブロット法を用いて検出した。なお、血清として、ヒト健常者血清3検体(Serum A、Serum B、Serum C)を、血漿として、ヒト健常者ヘパリン血漿3検体(Plasma(Heparin) A、Plasma(Heparin) B、Plasma(Heparin) C)を、尿として、ヒト健常者尿3検体(Urine D、Urine E、Urine F)を、それぞれ使用した。具体的手順を以下に示す。
まず、(i)抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合した磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)100μLと、(ii)細胞培養上清(HT−29、293T又はNCI−H520)又はヒト健常者由来の体液(血清、血漿又は尿(各3検体))100μLとを、1.5mLチューブに入れて混合した。
これを、25℃で20分間振とうした後、集磁して未反応液を除去し、0.5mLの洗浄バッファー(0.1%(w/v)非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)含有TBS)にて洗浄を3回行った。
次いで集磁して洗浄液を廃棄後、抗体結合磁性粒子を1×サンプルバッファー20μLで懸濁し、95℃で5分間静置した。各サンプルを全量(20μL)アプライし、SDS−PAGEを行った。ゲルをPVDF膜に転写後、ブロッキングバッファー(1%(w/v)BSA及び0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて37℃で2時間振とうした。これを洗浄バッファー(0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて洗浄した。
一次抗体として抗CD9抗体、及び標識抗体としてHRP標識抗マウスIgG抗体(Mouse TrueBlot ULTRA: Anti−Mouse IgG HRP、Rockland 18−8817−33)をそれぞれ25℃で1時間反応させ、これを洗浄バッファー(0.1%(w/v)Tween20含有TBS)にて洗浄した後、発光基質を反応させ、発光測定器(LAS−3000,FUJIFILM)にてウェスタンブロット像を確認した。結果を図11に示す。
その結果、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体を結合した磁性粒子において、すべての培養上清及び体液から捕捉した小胞由来の表面タンパク質(CD9)を検出した(図11)。一方、抗EpCAM抗体を結合した磁性粒子においては、EpCAM産生細胞のHT29及びNCI−H520の培養上清からは、小胞由来の表面タンパク質(CD9)を検出したが、EpCAM非産生細胞の293T及びすべての健常者体液(血清、血漿、尿)から小胞由来の表面タンパク質(CD9)は検出されなかった(図11)。
このため、癌マーカーなど疾患由来の抗原に対するリガンドを結合した粒子を用いることで、健常者由来及び罹患者由来の小胞を分離し、検出することができる。これにより、被検者由来の生体試料におけるシグナル強度を健常者由来の生体試料のシグナル強度と対比することで、被検者が疾患を発症していることを判定することができる。
(試験例13 ELISAによる小胞の検出)
小胞由来のシグナル強度を、ELISA法を用いて定量的に検出した。具体的手順を以下に示す。
96ウェル白色プレート(コーニング社製)に、抗CD9抗体、抗CD63抗体、抗CD81抗体又は抗EpCAM抗体を結合させた磁性粒子(JSRライフサイエンス社製MS300/Carboxyl)0.1%(w/v)及び非イオン性界面活性剤(Pluronic F−68)0.1%(w/v)を含有するTBS(pH7.4)と、細胞(293T、NCI−H520、HT29又は22Rv−1)の培養上清とを、それぞれ25μLを入れて混合した。これを、25℃で20分間振とうした後、集磁しながら洗浄バッファー(0.01%(w/v)Tween20含有TBS)を用いて反応後の抗体結合磁性粒子を洗浄した。集磁しながら洗浄バッファーを除去し、抗CD9抗体又は抗CD81抗体をアルカリホスファターゼで標識した抗体のMES溶液(0.5μg/mL)50μLを入れた。これを、25℃で20分間振とうした後、集磁しながら洗浄バッファー(0.01%(w/v)Tween20含有TBS)を用いて反応後の抗体結合磁性粒子を洗浄した。発光基質(富士レビオ製、ルミパルス基質液)を50μL添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax)を用いて発光強度を測定した。
その後、癌細胞(NCI−H520、HT29、22Rv−1)由来の小胞から測定したシグナル強度を、293T細胞由来の小胞から測定したシグナル強度と対比した。結果を表5及び6に示す。
その結果、抗CD9抗体、抗CD63抗体、又は抗CD81抗体を結合させた磁性粒子では、ALP標識抗CD9抗体による検出(表5)及びALP標識抗CD81抗体(表6)による検出ともに、癌細胞外小胞由来のシグナル強度は、293T細胞外小胞由来のシグナル強度と近接していた。一方、抗EpCAM抗体を結合させた磁性粒子では、癌細胞外小胞由来のシグナル強度は、293T細胞外小胞由来のシグナル強度と対比して顕著に高かった。
また、抗CD9抗体、抗CD63抗体、又は抗CD81抗体を結合させた磁性粒子に捕捉されるエクソソームの割合は、NCI−H520細胞外小胞の抗CD81抗体結合磁性粒子による捕捉率が高いこと等、癌細胞の種類によって異なっていた(表5、表6)。
このため、小胞由来の共通マーカータンパク質(CD9、CD63、CD81等)及び癌マーカーなど(EpCAM等)疾患由来の抗原に対するリガンドを結合した粒子を用いることで、健常者由来及び罹患者由来の小胞を分離し、ELISA法等により定量的に検出することができる。これにより、被検者由来の生体試料におけるシグナル強度を健常者由来の生体試料のシグナル強度と対比することで、被検者が疾患を発症していると判定することができる。
また、疾患治療薬の投与前及び投与後の被検者由来の生体試料から、同様の方法で小胞由来のシグナル強度を検出し、対比することで、疾患治療薬の薬効を評価することができる。

Claims (17)

  1. 脂質二重膜を有する小胞を含む生体試料と、前記小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した粒子状の固相担体とを接触させ、前記小胞と前記固相担体との複合体を形成させる複合体形成工程と、
    前記複合体を洗浄する洗浄工程を含み、
    前記複合体形成工程及び前記洗浄工程のうち少なくとも複合体形成工程を、芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤の存在下で行い、前記固相担体同士の凝集を低減させることを特徴とする、
    脂質二重膜を有する小胞の分離方法。
  2. 前記非イオン性界面活性剤が、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物、ソルビタンの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、及びソルビトール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の分離方法。
  3. 前記非イオン性界面活性剤が、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物、及びソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の分離方法。
  4. 前記非イオン性界面活性剤が、ブロック共重合型のポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離方法。
  5. 前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレンオキサイドからなるブロックと、ポリアルキレンオキサイドからなり前記アルキレンの炭素数が3以上であるブロックとを有するブロック共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分離方法。
  6. 前記生体試料が、体液又は細胞培養上清である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離方法。
  7. 前記小胞が、エクソソームである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分離方法。
  8. 前記表面抗原が、エクソソーム表面に存在する抗原タンパク質であり、前記リガンドが、エクソソーム表面に存在する抗原タンパク質を認識する抗体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分離方法。
  9. 前記固相担体が、磁性粒子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の分離方法。
  10. 前記洗浄工程が、前記磁性粒子を磁力により集めて磁性粒子と液相とを分離する集磁工程、及び該集磁工程で分離された磁性粒子を洗浄液中に分散させる分散工程を含む、請求項9に記載の分離方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離方法の後に、
    さらに小胞中の核酸を検出する核酸検出工程を含むことを特徴とする、
    小胞中の核酸の検出方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離方法の後に、
    さらに小胞の内側及び表面の少なくとも一方に存在するタンパク質を検出するタンパク質検出工程を含むことを特徴とする、
    小胞由来のタンパク質の検出方法。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離方法の後に、
    さらに前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定するシグナル測定工程を含むことを特徴とする、
    小胞由来のシグナル測定方法。
  14. 被検者が疾患を発症しているか否かを判定するため、被検者由来の生体試料を用いて、請求項13に記載のシグナル測定方法により前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定する工程(I)を含む、
    工程(I)で測定されたシグナル強度と、被検者と同年代且つ同性の疾患を発症していない者に由来する生体試料のシグナル強度の平均とを対比して、被検者におけるシグナル強度が、被検者と同年代且つ同性の疾患を発症していない者に由来する生体試料のシグナル強度の平均より強いと認められる場合に、被検者が疾患を発症していると判定するための、
    小胞由来のシグナル測定方法。
  15. 疾患治療薬の薬効評価方法であって、
    疾患治療薬の投与前及び投与後の被検者由来の生体試料を用いて、請求項13に記載のシグナル測定方法により、前記複合体を形成した小胞由来のシグナル強度を測定する工程を含み、
    疾患治療薬の投与後の被検者由来の生体試料における複合体由来のシグナル強度が、疾患治療薬の投与前の被検者由来の生体試料における複合体由来のシグナル強度より弱いと認められる場合に、疾患治療薬が薬効を示している可能性が高いと判定することを特徴とする、
    疾患治療薬の薬効評価方法。
  16. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離方法に用いるためのキットであって、
    脂質二重膜を有する小胞の表面に存在する表面抗原を認識するリガンドが結合した粒子状の固相担体と、
    芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤を含む液状組成物とを備えることを特徴とする、
    キット。
  17. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離方法に用いるための液状組成物であって、
    芳香族基を分子中に含まない非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、
    液状組成物。
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