JP6252702B1 - 微生物発電方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間安定した高効率発電を維持する微生物発電方法を提供する。【解決手段】負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とからなる単位セルが複数個積層された微生物発電装置を用いた微生物発電方法において、一部の単位セルの負極室にアルカリを含む洗浄液を導入して洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする微生物発電方法。【選択図】図1

Description

本発明は、微生物の代謝反応を利用する発電方法及び装置に関する。本発明は特に、有機物を微生物に酸化分解させる際に得られる還元力を電気エネルギーとして取り出す微生物発電方法及び装置に関する。
微生物の代謝反応を利用する発電方法及び装置として、特開2004−342412号には、正極室と負極室とを区画する電解質膜に接するように、正極板として多孔質体を設置し、正極室に空気を流通させ、多孔質体の空隙中で空気と液とを接触させる(以下、このように正極室内に空気を流通させ、空気中の酸素を電子受容体として利用する正極を「エアーカソード」と称す。)方法及び装置が記載されている。エアーカソードを用いることで、正極室に単に空気を流通させるのみで良く、カソード液中への曝気の必要がないといった利点がある。
特開2010−33823号には、単位体積当りの発電量が多い微生物発電装置を提供することを目的として、平板状の正極を有した正極室と平板状の負極を有した負極室とからなる単位セルを複数個積層した微生物発電装置が記載されている。
特開2011−65821号には、エアーカソードを用いた微生物発電装置で、カソードに酸、アルカリを含む洗浄液を間欠的に導入し、発電効率を低下させる要因であるエアーカソード及びこれに接する隔膜(イオン透過性非導電性膜)に発生したスケール、スライムを除去することが記載されている。
特開2004−342412号公報 特開2010−33823号公報 特開2011−65821号公報
本発明者らがエアーカソードを用いた微生物発電装置を継続運転したところ、カソードの洗浄を間欠的に行っても経時的に発電量が低下してしまうことが判明した。本発明は、エアーカソードを用いた微生物発電装置における発電効率の経時低下を防止して、長期間安定した高効率発電を維持する微生物発電方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の要旨は次の通りである。
[1] 負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とからなる単位セルが複数個積層された微生物発電装置を用いた微生物発電方法において、一部の単位セルの負極室にアルカリを含む洗浄液を導入して洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする微生物発電方法。
[2] [1]において、該アルカリを含む洗浄液のpHが10以上であることを特徴とする微生物発電方法。
[3] [1]または[2]において、該負極室にアルカリを含む洗浄液を導入する前に、酸を含む洗浄液を導入して酸洗浄することを特徴とする微生物発電方法。
[4] [3]において、該酸を含む洗浄液のpHが3以下であることを特徴とする微生物発電方法。
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、該負極室内を該洗浄液で満たすと共に、曝気することを特徴とする微生物発電方法。
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、該アルカリを含む洗浄液を導入した後、洗浄液を導入していない他の単位セルの負極室から排出される処理液を導入することを特徴とする微生物発電方法。
[7] 負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とからなる単位セルが複数個積層された微生物発電装置において、各単位セルの負極室にアルカリを含む洗浄液を導入して洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする微生物発電装置。
[8] [7]において、前記洗浄手段は、前記負極室にアルカリを含む洗浄液と、酸を含む洗浄液とを切り替えて供給するよう構成されていることを特徴とする微生物発電装置。
[9] [7]又は[8]において、前記負極室内を、曝気する曝気手段を備えたことを特徴とする微生物発電装置。
本発明者による研究の結果、発電効率低下の原因は、負極室内で以下の(a)〜(c)が発生するためであることが認められた。
(a) エアーカソードから隔膜を透過して負極室内に入り込んだ酸素を消費して好気性スライムが発生する。
(b) 嫌気条件下で、有機物を電極と電子を授受することなしに資化する嫌気性スライム(メタン発酵微生物)が増加する。
(c) 負極に接する隔膜表面にスケール(炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなど)付着する。
これらの原因に対し、スライムはアルカリ洗浄、スケールは酸洗浄で除去することができる。また、アルカリ洗浄によりスライムを除去した際には同時に電極と電子を授受する発電微生物も除去されるものの、他の微生物発電装置の処理液を通水することで速やかに発電微生物を増殖させ、発電効率を回復させることができる。負極室と、イオン透過性非導電性膜により隔てられたエアーカソードを有する正極室からなる単位セルが3個以上、好ましくは20個以上積層された微生物発電装置で、順に一部の単位セルの負極室を洗浄していくことにより、装置全体の発電量を低下させることなく、長期的に安定して運転することができる。
このようにして、本発明によると、エアーカソードを用いた微生物発電装置における発電効率の経時低下を防止して、長期間安定した高効率発電を維持することができるようになる。
微生物発電装置の模式的な断面図である。
次に、図1を参照して実施の形態に係る微生物発電装置による発電方法を説明する。なお、図1はこの微生物発電装置の模式的な断面図である。この微生物発電装置は、単位セルを複数個(図1では2個)積層し、両端にエンドプレート30,30を配置し、積層方向の両末端に正極室33を配置したものである。
1対のエンドプレート30,30の間にイオン透過性非導電性膜として4枚のアニオン交換膜31が互いに平行に配置されることにより、左から1番目及び2番目の該アニオン交換膜31,31同士と左から3番目及び4番目のアニオン交換膜31,31同士の間にそれぞれ負極室32が形成されている。左から1番目のアニオン交換膜と左側エンドプレート30との間、左から4番目のアニオン交換膜と右側エンドプレート30との間、及び、左から2番目及び3番目のアニオン交換膜同士の間にそれぞれ正極室33が形成されている。
負極室32内には、各アニオン交換膜31と直に、又は1層〜2層程度の生物膜を介して接するように、多孔質材料よりなる負極34が配置されている。負極34は、アニオン交換膜31に対し軽く(例えば0.1kg/cm以下の圧力で)押し付けられるのが好ましい。
正極室33内には、アニオン交換膜31と接して正極35が配置されている。この正極35は、パッキン36に押圧されてアニオン交換膜31に押し付けられている。正極35とアニオン交換膜31との密着性を高めるために、両者を溶着したり、接着剤で接着してもよい。
左から1番目及び4番目の正極35と各エンドプレート30との間は、酸素含有ガスの流通スペースとなっている。また、左から2番目及び3番目の正極35,35同士の間も酸素含有ガスの流通スペースとなっている。
この正極35及び負極34は、端子37,39を介して外部抵抗(図示略)に並列に接続されている。
負極室32には、負極溶液の給液ライン61及び該給液ライン61から分岐して各負極室32に連なる分岐ライン61Aを介して、流入口32aから負極溶液が導入され、流出口32bから廃液が廃液ライン62へ流出する。負極室32内は嫌気性とされる。各分岐給液ライン61にそれぞれ洗浄液の給液ライン81が接続されている。
各負極室32内の負極溶液は、循環往口41、循環配管42、循環ポンプ43及び循環戻口44を介して循環される。この循環配管42に、pH計47が設けられると共に、アルカリ添加用配管45が接続されている。負極室32から流出する負極溶液のpHをpH計47で検出し、このpHが好ましくは7〜9となるように水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリが添加される。
各正極室33には、空気ライン71を介してガス流入口51から空気が流入し、排ガスがガス流出口52から廃空気ライン72へ流出する。
この微生物発電装置において、正極室33に酸素含有ガス(この実施の形態では空気)を流通させ、負極室32に負極溶液を流通させ、好ましくは負極溶液を循環させることにより、正極35と負極34との間に電位差が生じ、発電が行われる。
単位セルの数は、3〜50程度が好適である。なお、この実施の形態では、積層方向の両端側に正極室が配置されているが、一方又は双方の末端側に負極室を配置してもよい。
間欠的に各負極室32に順番に洗浄液ライン81から洗浄液が導入されて、負極34や隔膜であるアニオン交換膜31、負極室32に発生ないしは付着したスケールやスライムが洗浄除去される。
本発明では、各負極室32をアルカリで順番に洗浄するが、この洗浄に際しては、負極室32をまず酸を含む洗浄液で洗浄し、次いでアルカリを含む洗浄液で洗浄することが好ましい。
この酸を含む洗浄液(以下「酸洗浄液」と称す。)の酸としては、硫酸、塩酸の他、硝酸、クエン酸、シュウ酸等の1種又は2種以上が使用できる。
上記酸洗浄液としては、通常酸の水溶液が用いられるが、この酸洗浄液のpHが高いと十分な洗浄効果が得られず、低過ぎると負極の劣化を招く恐れがあることから、pH3以下、特にpH1〜3程度の酸洗浄液を用いることが好ましい。
酸洗浄液による洗浄方法としては、負極室内を酸洗浄液で満たすか、或いは、負極室内を酸洗浄液で満たした上でガス(例えば空気や、窒素など)を通気して、負極室内の酸洗浄液を曝気する方法が挙げられる。この場合、負極室内を酸洗浄液で満たす時間(以下「浸漬時間」と称す場合がある。)を2時間以上、特に4時間〜1日が好ましい。酸洗浄液とスケールとを接触させ、効率よく除去するため、導入した洗浄液がわずかに動く程度に曝気するのが好ましい。洗浄廃液は廃液ライン62から排出される。
上述のような酸洗浄液による洗浄操作で、負極やイオン透過性非導電性膜に発生ないし付着したスケールが洗浄除去される。この酸洗浄液による洗浄の後、アルカリを含む洗浄液(以下「アルカリ洗浄液」と称す。)による洗浄操作を行う。これにより、良好なスライムの洗浄除去効果を得ることができると共に、酸洗浄液による負極の劣化を軽減することができる。ただし、本発明では、アルカリ洗浄のみを行ってもよい。
アルカリ洗浄液のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、次亜塩素酸ナトリウム等の1種又は2種以上を用いることができる。
このアルカリ洗浄液としても、通常アルカリの水溶液が用いられるが、このアルカリ洗浄液のpHが低いと十分な洗浄効果が得られず、特にスライム剥離効果が小さくなる。またpHが高過ぎると残存するアルカリによるスケール発生が生じる可能性があり、また、イオン透過性非導電性膜がアニオン交換膜の場合は膜劣化を招く恐れがあることから、pH10以上、例えばpH10〜12であることが好ましい。
アルカリ洗浄液による洗浄方法としても、負極室内をアルカリ洗浄液で満たすか、或いは、負極室内をアルカリ洗浄液で満たした上でアルカリ洗浄液を前記ガスで曝気する方法が挙げられる。
アルカリ洗浄液に浸漬洗浄する時間は2時間以上、特に4時間〜1日が好ましい。アルカリ洗浄液とスライムとを接触させ、効率よく除去するため、導入した洗浄液がわずかに動く程度に曝気するのが好ましい。洗浄排液は廃液ライン62から排出される。
同一セルの負極室の薬品洗浄間隔は、2週間〜3ヶ月、特に3週間〜6週間が好ましい。この間隔で洗浄することで、負極室内で発電微生物以外のスライムが優占したり、スケールが過度に付着したりすることを防止できる。
前述の通り、酸洗浄によりスケールが除去され、アルカリ洗浄によりスライムが除去される。また、アルカリ洗浄によりスライムを除去した際には同時に電極と電子を授受する発電微生物も除去されるものの、他の微生物発電装置の処理液を通水することで速やかに発電微生物を増殖させ、発電効率を回復させることができる。このように、負極室と、イオン透過性非導電性膜により隔てられたエアーカソードを有する正極室からなる単位セルが3個以上、好ましくは20個以上積層された微生物発電装置で、順に一部の単位セルの負極室を洗浄していくことにより、装置全体の発電量を低下させることなく、長期的に安定して運転することができる。
次に、この微生物発電装置の微生物、負極溶液などのほか、イオン透過性非導電性膜、負極、正極の好適な材料等について説明する。
負極溶液中に含有させることで電気エネルギーを産生させる微生物は、電子供与体としての機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、Saccharomyces、Hansenula、Candida、Micrococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Leuconostoa、Lactobacillus、Corynebacterium、Arthrobacter、Bacillus、Clostridium、Neisseria、Escherichia、Enterobacter、Serratia、Achromobacter、Alcaligenes、Flavobacterium、Acetobacter、Moraxella、Nitrosomonas、Nitorobacter、Thiobacillus、Gluconobacter、Pseudomonas、Xanthomonas、Vibrio、Comamonas及びProteus(Proteus vulgaris)の各属に属する細菌、糸状菌、酵母などを挙げることができる。このような微生物を含む汚泥として下水等の有機物含有水を処理する生物処理槽から得られる活性汚泥、下水の最初沈澱池からの流出水に含まれる微生物、嫌気性消化汚泥等を植種として負極室に供給し、微生物を負極に保持させることができる。発電効率を高くするためには、負極室内に保持される微生物量は高濃度であることが好ましく、例えば微生物濃度は1〜50g/Lであることが好ましい。
負極溶液としては、微生物又は細胞を保持し、かつ発電に必要な組成を有する溶液が用いられる。例えば、呼吸系の発電を行う場合は、負極側の溶液としては、ブイヨン培地、M9培地、L培地、Malt Extract、MY培地、硝化菌選択培地などの呼吸系の代謝を行うのに必要なエネルギー源や栄養素などの組成を有する培地が利用できる。また、下水、有機性産業排水、生ごみ等の有機性廃棄物を用いることができる。
負極溶液中には、微生物又は細胞からの電子の引き抜きをより容易とするために電子メディエーターを含有させてもよい。この電子メディエーターとしては、例えば、チオニン、ジメチルジスルホン化チオニン、ニューメチレンブルー、トルイジンブルー−O等のチオニン骨格を有する化合物、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン等の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン骨格を有する化合物、ブリリアントクレジルブルー、ガロシアニン、レソルフィン、アリザリンブリリアントブルー、フェノチアジノン、フェナジンエソスルフェート、サフラニン−O、ジクロロフェノールインドフェノール、フェロセン、ベンゾキノン、フタロシアニン、あるいはベンジルビオローゲン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
さらに、微生物の発電機能を増大させるような材料、例えばビタミンCのような抗酸化剤や、微生物中の特定の電子伝達系や物質伝達系のみを働かせる機能増大材料を溶解すると、さらに効率よく電力を得ることができるので好ましい。
負極溶液は、必要に応じ、リン酸バッファを含有していてもよい。
負極溶液は有機物を含むものである。この有機物としては、微生物によって分解されるものであれば特に制限はなく、例えば水溶性の有機物、水中に分散する有機物微粒子などが用いられる。負極溶液は、下水、食品工場排水などの有機性廃水であってもよい。負極溶液中の有機物濃度は、発電効率を高くするために100〜10000mg/L程度の高濃度であることが好ましい。
正極室に流通させる酸素含有ガスとしては、空気が好適である。正極室からの排ガスを、必要に応じ脱酸素処理した後、負極室に通気し、負極溶液Lからの溶存酸素のパージに用いてもよい。
イオン透過性非導電性膜としては、非導電性、かつイオン透過性を有するものであればほとんどのものが使用できるが、アニオン交換膜またはカチオン交換膜が好適である。アニオン交換膜としては、アストム製アニオン交換膜やトクヤマ製アニオン型電解質膜などが好適である。一方カチオン交換膜としてはデュポン製カチオン交換膜が好適である。イオン透過性非導電性膜は、薄くて丈夫であることが好ましく、通常、その膜厚は10〜300μm、特に30〜200μm程度であることが好ましい。
負極は、多くの微生物を保持できるよう、表面積が大きく空隙が多く形成され通水性を有する多孔体が好ましい。具体的には、少なくとも表面が粗とされた導電性物質のシートや導電性物質をフェルト状その他の多孔性シートにした多孔性導電体(例えばグラファイトフェルト、発泡チタン、発泡ステンレス等)が挙げられる。
複数のシート状導電体を積層して負極としてもよい。この場合、同種の導電体シートを積層してもよく、異なる種類の導電体シート同士(例えばグラファイトフェルトと粗面を有するグラファイトシート)を積層してもよい。
負極は全体の厚さが3mm以上40mm以下、特に5〜20mm程度であることが好ましい。積層シートによって負極を構成した場合、シート同士の合わせ面(積層面)に沿って液が流れるように、積層面を液の流入口と流出口とを結ぶ方向に配向させるのが好ましい。
正極は、導電性基材と、該導電性基材に担持された酸素還元触媒とを有する。
導電性基材としては、導電性が高く、耐食性が高く、厚みが薄くても十分な導電性と耐食性、更には導電性基材としての機械的強度を得ることがあるものであれば良く、特に制限はないが、グラファイトペーパー、グラファイトフェルト、グラファイトクロス、ステンレスメッシュ、チタンメッシュ等を用いることができ、これらのうち、特に耐久性と加工のしやすさ等の点から、グラファイトペーパー、グラファイトフェルト、グラファイトクロス等のグラファイト系基材が好ましく、とりわけグラファイトペーパーが好ましい。なお、これらのグラファイト系基材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂によって疎水化されたものであっても良い。
導電性基材の厚さは、厚過ぎると酸素の透過が悪くなり、薄過ぎると、基材に必要な強度等の要求特性を満たすことができないことから、20〜3000μm程度であることが好ましい。
酸素還元触媒としては、白金等の貴金属のほか、安価で且つ触媒活性が良好であるところから、二酸化マンガン等の金属酸化物が好適である。
一つのセルの負極室の上記アルカリ洗浄後は、他の微生物発電装置や、同じ装置の稼働中の他のセルの負極室から排出された負極溶液を1〜7日、好ましくは2〜5日間通水する。負極溶液には、活性の高い発電微生物が含まれているため、速やかに(1週間以内に)元の性能まで回復させることができる。
[比較例1]
5個の単位セルから構成される微生物発電装置を洗浄なしに運転した。セル、隔膜、負極及び正極の構成は次の通りである。
各セルの負極室の容積:350mL
正極室の容積:175mL
隔膜(イオン透過性非導電性膜):カチオン交換膜(デュポン製「ナフィオン115」)
負極:250mm×70mmで厚さ10mmのグラファイトフェルト(東洋カーボン製)2枚を導電性接着剤で貼り合わせて構成。2枚のグラファイトフェルトの積層体は負極室の厚さと同じ厚さを有し、負極室内全体に充填され、隔膜と接する。従って、負極室に供給された液はすべて多孔性の負極を透過するように構成されており、負極内を通らずに負極室を通過すること(ショートパス)が実質的にないよう構成される。負極室には種菌として下水処理場の生物処理槽から採取した活性汚泥を添加して培養し、負極を構成する各グラファイトフェルトの表面に微生物を付着させた。
正極:厚さ3mmのグラファイトフェルト1枚で構成し、厚さ5mmのパッキンを配置し、正極を隔膜に接触させた。正極用グラファイトフェルトは、PTFEで撥水処理し、田中貴金属製Pt触媒(Pt担持カーボンブラック,Pt含有量50重量%)を、5重量%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン製)に分散させた液を、Pt付着量が0.5mg/cmとなるように負極側表面に塗布し、50℃で乾燥させて用いた。
各セルの負極のグラファイトフェルトと正極のグラファイトフェルトには、ステンレス製針金を導電性ペーストで接着して電気引出し線とし、2Ωの抵抗で接続した。
各正極室に空気を700mL/minの流量で通気する一方、各負極室には1,000mg/Lの濃度の酢酸と、50mMの濃度のリン酸バッファ、及び、塩化アンモニウム50mg/Lを含む負極溶液を70mL/minの流入量で供給し、同量の処理液を排出させた。各循環配管の流量は50mL/minとし、pH計の検出pHが7.5となるように2Nの水酸化ナトリウムを循環液に添加した。
この装置で負極温度を35℃に維持して運転を開始した結果、装置全体平均の発電量は、1週間後には負極体積あたり200W/m−負極に達した。その後、1週間、発電量は180〜230W/m−負極の範囲で維持された。しかし、さらに運転を継続すると徐々に低下し、運転開始から4週間後には50W/m−負極を下回った。
[実施例1]
比較例1と同様の装置を用いて、同様の運転条件で発電を行った。
装置全体平均の発電量は、1週間後には負極体積あたり200W/m−負極に達した。その後、1週間、発電量は180〜230W/m−負極の範囲で維持された。そこで、運転開始から2週間後より、1週間間隔で順に、セルの負極室への負極溶液の供給を停止し、pH12の水酸化ナトリウム水溶液を負極室に満たして、空気で140mL/minで曝気しながら4時間保持した後排出する洗浄操作を行った。洗浄後は他のセルの負極室から排出された負極溶液を3日間供給した後、負極溶液を供給するようにした。その結果、装置全体平均の発電量は、3ヶ月間、120〜150W/m−負極で維持された。
[実施例2]
比較例1と同様の装置を用いて、同様の運転条件で発電を行った。
装置全体平均の発電量は、1週間後には負極体積あたり200W/m−負極に達した。その後、1週間、発電量は180〜230W/m−負極の範囲で維持された。そこで、運転開始から2週間後より、1週間間隔で順に、セルの負極室への負極溶液の供給を停止し、pH2の硫酸水溶液を負極室に満たして、空気で140mL/minで曝気しながら4時間保持した後、pH12の水酸化ナトリウム水溶液を負極室に満たして、空気で140mL/minで曝気しながら4時間保持した後排出する洗浄操作を行った。洗浄後は他のセルの負極室から排出された負極溶液を3日間供給した後、負極溶液を供給するようにした。その結果、装置全体平均の発電量は、3ヶ月間、180〜230W/m−負極で維持された。
以上の実施例及び比較例より、本発明によって、エアーカソードを用いた微生物発電装置における発電効率の経時低下を防止して、長期間安定した高効率発電を維持することができるようになることが認められた。
31 アニオン交換膜
33 正極室
32 負極室
35 正極
34 負極
30 エンドプレート

Claims (9)

  1. 負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とからなる単位セルが複数個積層された微生物発電装置を用いた微生物発電方法において、一部の単位セルの負極室にアルカリを含む洗浄液を導入して洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする微生物発電方法。
  2. 請求項1において、該アルカリを含む洗浄液のpHが10以上であることを特徴とする微生物発電方法。
  3. 請求項1または2において、該負極室にアルカリを含む洗浄液を導入する前に、酸を含む洗浄液を導入して酸洗浄することを特徴とする微生物発電方法。
  4. 請求項3において、該酸を含む洗浄液のpHが3以下であることを特徴とする微生物発電方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、該負極室内を該洗浄液で満たすと共に、曝気することを特徴とする微生物発電方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、該アルカリを含む洗浄液を導入した後、洗浄液を導入していない他の単位セルの負極室から排出される処理液を導入することを特徴とする微生物発電方法。
  7. 負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とからなる単位セルが複数個積層された微生物発電装置において、各単位セルの負極室にアルカリを含む洗浄液を導入して洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする微生物発電装置。
  8. 請求項7において、前記洗浄手段は、前記負極室にアルカリを含む洗浄液と、酸を含む洗浄液とを切り替えて供給するよう構成されていることを特徴とする微生物発電装置。
  9. 請求項7又は8において、前記負極室内を、曝気する曝気手段を備えたことを特徴とする微生物発電装置。
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