JP6251574B2 - 切削方法 - Google Patents

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Description

本発明は、サファイア等の難切削材で構成された被加工物を切削する切削方法に関する。
光デバイスウエーハは、難切削材、例えば、サファイア等で構成された基板の表面に、格子状に設定される分割予定ラインによって多数の領域が区画され、それら領域に窒化ガリウム系化合物半導体等からなる光デバイスが形成されている。このような光デバイスウエーハは、分割予定ラインに沿って個々の光デバイスに分割され、光デバイスが電気機器に広く利用されている。
サファイア等で構成された光デバイスウエーハの分割は、透過性を有するレーザビームを分割予定ラインに沿って照射して、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿った改質層を形成して分割予定ラインの強度を低下させる。次いで、分割予定ラインに外力を与え、改質層を起点として分割するといった方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、レーザー照射装置は、高価であるため安価な切削装置によりサファイア等の難切削材で構成された被加工物を切削したいという要望がある。
特許第3762409号公報
しかし、サファイア等の難切削材で構成された被加工物は、非常に硬いため、現状の切削ブレードによる通常の切削を行うと、切削ブレードが異常磨耗を起こすことがあった。また、切削ブレードによる通常の切削を行うと、低速で切削を行わなければならず相当の時間を要し生産性が悪い等の技術的な課題が多数存在する。一方で、金属基板等の靱性材は、切削ブレードによる切削では摩擦熱の影響で切削が困難である。
本発明の目的は、サファイア等の難切削材で構成された被加工物を切削ブレードの異常磨耗を起こさず、良好に分割可能な切削方法を提供することである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削方法は、難切削材で構成された被加工物を保持する保持面を有する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを装着したスピンドルを有する切削手段と、該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に鉛直方向に移動するZ軸移動手段と、を少なくとも備えた切削装置において該切削水を供給しながら該難切削材で構成された被加工物を切削する切削方法であって、Z軸を所定量下降させて回転する切削ブレードを被加工物に対して所定深さ切り込みつつ該切削ブレードと該保持手段とを相対的にX軸方向に第一の送り量切削送りさせて被加工物を分割予定ラインに沿って第一の送り量切削する切削送り工程と、該切削送り工程を実施した後に、該所定深さを維持した状態で該第一の送り量よりも少ない第二の送り量該保持手段と該切削ブレードを相対的にX軸方向に該切削送り工程と反対方向に戻すX軸戻し送り工程と、を備え、該切削水供給手段から該切削水を供給しながら該切削送り工程を実施した後、X軸戻し送り工程を実施して、該切削送り工程と該X軸戻し送り工程とを分割予定ラインに沿って複数回交互に行い、該第一の送り量よりも該第二の送り量を少なく、切削送り工程の送り速度よりもX軸戻し送り工程の戻し送り速度を速くして、分割予定ラインに沿って被加工物の切削を行うことを特徴とする。
また、上記切削方法は、前記切削送り工程及び前記X軸戻し送り工程の任意のタイミングで、回転する切削ブレードをZ軸を該所定量よりもさらに下降させてすぐに上昇させるZ軸揺動工程を備えることが好ましい。また、上記切削方法は、該難切削材が、サファイアであることが好ましい。
本発明は、切削ブレードをX軸方向に揺動させながら切削を行うことで、切削水が被加工物と切削ブレードの間に行き渡り加工点の冷却効率が向上するため、サファイア等の難切削材であっても異常摩耗を起こさずに切削ブレードで切削を行うことができる。
更に、本発明は、Z軸方向に揺動させることで切削ブレードの消耗が促進され、難切削材で構成された被加工物の切削時における切削ブレードの目詰まりを防止することができる。
図1は、実施形態に係る切削方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。 図2(a)は、実施形態に係る切削方法の切削送り工程開始時の状態を示す断面図であり、図2(b)は、実施形態に係る切削方法の初めの切削送り工程後の状態を示す断面図であり、図2(c)は、実施形態に係る切削方法のX軸戻し送り工程後の状態を示す断面図であり、図2(d)は、実施形態に係る切削方法の次の切削送り工程後の状態を示す断面図である。 図3(a)は、実施形態に係る切削方法のZ軸揺動工程前の状態を示す断面図であり、図3(b)は、実施形態に係る切削方法のZ軸揺動工程中の状態を示す断面図である。 図4は、図1に示された切削装置の制御手段のフローチャートの一例である。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態〕
実施形態に係る切削方法を、図1から図4に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る切削方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。図2(a)は、実施形態に係る切削方法の切削送り工程開始時の状態を示す断面図である。図2(b)は、実施形態に係る切削方法の初めの切削送り工程後の状態を示す断面図である。図2(c)は、実施形態に係る切削方法のX軸戻し送り工程後の状態を示す断面図である。図2(d)は、実施形態に係る切削方法の次の切削送り工程後の状態を示す断面図である。図3(a)は、実施形態に係る切削方法のZ軸揺動工程前の状態を示す断面図である。図3(b)は、実施形態に係る切削方法のZ軸揺動工程中の状態を示す断面図である。図4は、図1に示された切削装置の制御手段のフローチャートの一例である。
実施形態に係る切削方法は、図1に示された切削装置1において、切削水を供給しながら被加工物Wを切削して、個々のデバイスDに分割する方法である。なお、本実施形態に係る切削方法により個々のデバイスDに分割される被加工物Wは、本実施形態では、サファイア、窒化ケイ素などの硬質な難切削材で構成された被加工物であって、円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物Wは、図1に示すように、上面Waに格子状に形成された分割予定ラインLで区画された各領域にデバイスDが形成されている。被加工物Wは、上面Waの裏側の裏面WbにダイシングテープTが貼着され、ダイシングテープTに環状フレームFが貼着されて、ダイシングテープTを介して環状フレームFに貼着される。被加工物Wは、切削装置1により分割予定ラインLに沿って切削されて個々のデバイスDに分割される。
切削装置1は、図1に示すように、被加工物Wを保持する保持面10aを有するチャックテーブル10(保持手段に相当)と、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削する切削手段20と、切削手段20に切削水を供給する切削水供給ノズル25(切削水供給手段に相当)と、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段30と、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段40と、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的に鉛直方向に移動するZ軸移動手段50と、制御手段100とを少なくとも備える。切削装置1は、図1に示すように、切削手段20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
チャックテーブル10は、切削加工前の被加工物Wが保持面10a上に載置されて、ダイシングテープTを介して環状フレームFの開口に貼着された被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル10は、保持面10aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面10aに載置された被加工物Wを吸引することで保持する。なお、チャックテーブル10は、X軸移動手段30によりX軸方向に移動自在に設けられかつ回転駆動源(図示せず)により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転自在に設けられている。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動して被加工物Wの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部11が複数設けられている。
切削手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削する切削ブレード21を装着したスピンドル22を有するものである。切削手段20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物Wに対して、Y軸移動手段40によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動手段50によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
一方の切削手段20は、図1に示すように、Y軸移動手段40、Z軸移動手段50などを介して、装置本体2から立設した一方の柱部3aに設けられている。他方の切削手段20は、図1に示すように、Y軸移動手段40、Z軸移動手段50などを介して、他方の柱部3bに設けられている。
切削手段20は、Y軸移動手段40及びZ軸移動手段50により、チャックテーブル10の表面の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。また、一方の切削手段20は、被加工物Wの上面Waを撮像する図示しない撮像手段が一体的に移動するように固定されている。撮像手段は、チャックテーブル10に保持された分割加工前の被加工物Wの分割すべき領域を撮像するCCDカメラを備えている。CCDカメラは、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを撮像して、被加工物Wと切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を制御手段100に出力する。
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドル22は、切削ブレード21を回転させることで被加工物Wを切削する。スピンドル22は、スピンドルハウジング23内に収容され、スピンドルハウジング23は、Z軸移動手段50に支持されている。切削手段20のスピンドル22及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
切削水供給ノズル25は、切削手段20のスピンドルハウジング23の前端部に取り付けられて、切削ブレード21に切削水を供給するものである。
制御手段100は、切削装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物Wに対する切削方法を切削装置1に行わせるものである。なお、制御手段100は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態や前記画像などを表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない操作手段と接続されている。
次に、実施形態に係る切削装置1を用いた切削方法について説明する。切削方法は、切削送り工程と、X軸戻し送り工程と、Z軸揺動工程とを少なくとも備え、切削装置1の制御手段100により実施される。切削方法では、オペレータが加工内容情報を制御手段100に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1が加工動作を開始する。まず、オペレータが切削手段20から離間したチャックテーブル10の保持面10aに被加工物Wを載置し、オペレータから加工動作の開始指示があると、制御手段100が、チャックテーブル10の表面に被加工物Wを吸引保持し、クランプ部11で環状フレームFを挟持する。
次に、制御手段100は、X軸移動手段30によりチャックテーブル10を切削手段20の下方に向かって移動して、一方の切削手段20に固定された撮像手段の下方にチャックテーブル10に保持された被加工物Wを位置付け、撮像手段に撮像させる。撮像手段は、撮像した画像の情報を制御手段100に出力する。そして、制御手段100が、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの分割予定ラインLと、切削手段20の切削ブレード21との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、チャックテーブル10に保持された被加工物Wと切削手段20との相対位置を調整する。
そして、制御手段100は、n=0を記憶し(図4に示されたステップST1)、切削手段20の切削ブレード21を回転させる。制御手段100は、加工内容情報に基づいて、X軸移動手段30とY軸移動手段40と回転駆動源により、最初に切削する分割予定ラインLの一端の上方に切削手段20の切削ブレード21を位置付ける。そして、制御手段100は、Z軸移動手段50により切削手段20を所定量下降させて、切削水供給ノズル25から切削水を供給する。制御手段100は、図2(a)に示すように、Z軸を所定量下降させて回転する切削ブレード21を被加工物Wの分割予定ラインLに対して所定深さH切り込みつつ、図2(b)に示すように、X軸移動手段30により切削ブレード21とチャックテーブル10とを相対的にX軸方向に第一の送り量D1切削送りさせて、被加工物Wを分割予定ラインLに沿って第一の送り量D1切削する切削送り工程(ステップST2)を実施する。
なお、本実施形態の切削送り工程では、例えば、Z軸移動手段50が、切削ブレード21がダイシングテープTの中央まで切り込むように、切削手段20を所定量下降させるのが望ましい。なお、本発明の切削送り工程では、X軸移動手段30がチャックテーブル10をX軸方向に送る送り速度、第一の送り量D1及び切削ブレード21の先端のチャックテーブル10の保持面10aからの高さ(以下、ブレードハイトと記す)は、適宜設定される。
制御手段100は、切削送り工程を実施した後に、図2(c)に示すように、切削ブレード21の所定深さHを維持した状態で、第一の送り量D1よりも少ない第二の送り量D2、チャックテーブル10と切削ブレード21をX軸方向に切削送り工程と反対方向に戻すX軸戻し送り工程(ステップST3)を実施する。なお、本発明のX軸戻し送り工程では、X軸移動手段30がチャックテーブル10をX軸方向に切削送り工程と反対方向に戻す戻し送り速度、第二の送り量D2は、適宜設定される。また、戻し送り速度は、切削送り工程の送り速度よりも早いことが望ましい。
そして、制御手段100は、n=n+1として記憶し(ステップST4)、記憶したn即ち切削送り工程とX軸戻し送り工程の数が、予め定められた所定回数以上であるか否かを判定する(ステップST5)。制御手段100は、n即ち切削送り工程とX軸戻し送り工程の数が、予め定められた所定回数以上でないと判定する(ステップST5:No)と、ステップST2に戻り、図2(d)に示すように、切削送り工程を実施する(ステップST2)。制御手段100は、切削送り工程とX軸戻し送り工程の数が予め定められた所定回数以上となるまで、ステップST2〜ステップST5を繰り返して、切削送り工程とX軸戻し送り工程を分割予定ラインLに沿って複数回交互に行い、分割予定ラインLに沿って被加工物Wの切削を行うこととなる。
制御手段100は、n即ち切削送り工程とX軸戻し送り工程の数が、予め定められた所定回数以上であると判定する(ステップST5:Yes)と、図3(a)に示すように、切削ブレード21の所定深さHを維持した状態で、ステップST2と同様に、X軸移動手段30により切削ブレード21とチャックテーブル10とを相対的にX軸方向に第一の送り量D1切削送りさせて、被加工物Wを分割予定ラインLに沿って第一の送り量D1切削する切削送り工程(ステップST6)を実施する。そして、制御手段100は、切削送り工程を実施した後に、図3(b)に示すように、チャックテーブル10の保持面10aに接触しないように回転する切削ブレード21を更にH1下降させて、Z軸を所定量よりもさらに下降させてすぐに上昇させるZ軸揺動工程(ステップST7)を実施する。なお、本発明では、Z軸移動手段50が切削ブレード21を下降させてすぐに上昇させる速度、切削ブレード21を更に下降させる量H1は、適宜設定される。
制御手段100は、すべての分割予定ラインLを切削したか否かを判定する(ステップST8)。制御手段100は、すべての分割予定ラインLを切削していないと判定する(ステップST8:No)と、ステップST1に戻る。このように、制御手段100は、すべての分割予定ラインLを切削するまで、ステップST1〜ステップST8を繰り返して、切削送り工程とX軸戻し送り工程とを分割予定ラインLに沿って複数回交互に行い、分割予定ラインLに沿って被加工物Wの切削を行い、切削送り工程とX軸戻し送り工程の所定回数毎に、Z軸揺動工程を実施する。
制御手段100は、すべての分割予定ラインLを切削したと判定する(ステップST8:Yes)と、チャックテーブル10を切削手段20の下方から退避させた後、チャックテーブル10の吸引保持及びクランプ部11の挟持を解除する。そして、オペレータが分割された複数のデバイスDなどをチャックテーブル10上から取り除くとともに、切削前の被加工物Wを再度、チャックテーブル10上に載置し、前述の工程を繰り返して、被加工物Wを個々のデバイスDに分割する。
以上のように、実施形態に係る切削方法によれば、切削ブレード21を第一の送り量D1切削する切削送り工程を実施した後、切削送り工程と反対方向に切削ブレード21を第二の送り量D2戻すX軸戻し送り工程を実施する。このために、切削方法によれは、特に、X軸戻し送り工程後に、切削水が被加工物Wと切削ブレード21の間に行き渡り加工点の冷却効率が向上する。したがって、切削方法によれば、切削ブレード21の温度上昇を抑制することができ、切削ブレード21においてサファイア等の難切削材で構成された被加工物Wを切削ブレード21の異常磨耗を起こさず、良好に分割可能である。また、切削方法によれば、第一の送り量D1よりも第二の送り量D2が少なく、切削送り工程の送り速度よりもX軸戻し送り工程の戻し送り速度が速いので、切削に係る所要時間が長時間化することを抑制でき、生産性の悪化を抑制できる。
更に、実施形態に係る切削方法によれば、Z軸揺動工程においてZ軸方向に切削ブレード21を揺動させるので、切削ブレード21の消耗が促進される。よって、切削方法によれば、サファイア等の難切削材により被加工物Wが構成されていても、Z軸揺動工程において切削抵抗の増加により砥粒が劈開して新たな切れ刃が発生して、切削ブレード21の目詰まりを防止することができる。
次に、本発明の発明者らは、本発明の効果を実験により確認した。結果を表1に示す。
Figure 0006251574
実験では、本発明品1、本発明品2、比較例ともに、切削ブレード21としてダイヤモンド砥粒をレジンボンドで固めて構成されるレジンボンドブレードを用い、被加工物Wとしてサファイアを母材とする円板状の光デバイスウエーハ(φ4×0.85mmのサファイアウエーハであって、裏面Wbに厚み0.165mmのダイシングテープTが貼着されたもの)を用い、スピンドル22の回転数を30000(回転数/min)、ブレードハイトが0.065mmとなるように切削ブレード21を所定量下降させて、分割予定ラインLを切削した。また、比較例では、切削ブレード21の送り速度を15(mm/sec)とした。本発明品1では、前述した実施形態の切削送り工程、X軸戻し送り工程及びZ軸揺動工程のうち切削送り工程、X軸戻し送り工程を実施し、本発明品2では、切削送り工程、X軸戻し送り工程及びZ軸揺動工程を実施した。本発明品1、本発明品2では、切削ブレード21の切削送り工程の送り速度を15(mm/sec)とし、第一の送り量D1を1.5(mm)とし、切削ブレード21のX軸戻し送り工程の戻し送り速度を600(mm/sec)とし、第二の送り量D2を0.3(mm)とし、Z軸揺動工程に切削ブレード21を下降させる量ブレードハイトH1を0.030(mm)とした。本発明品1、本発明品2の切削送り工程及びX軸戻し送り工程では、切削ブレード21がダイシングテープTに100μm切り込んでおり、本発明品2のZ軸揺動工程では、更にその位置から30μm下方へ切削ブレード21がダイシングテープTへ切り込んでいる。また、実験では、切削中の切削ブレード21の焼け状況、切削状況を感応評価により評価し、焼け状況、切削状況が不良なものをバツ、両好なものを丸で示す。
表1によれは、比較例では、サファイアは熱伝導率が悪いため、焼けが発生して切削ブレード21の異常摩耗が発生し、最後まで切削することが困難であった。それに対し、本発明品1では、比較例では異常摩耗と焼けにより最後まで切削できなかったサファイアを、焼け、異常摩耗が発生せずに最後まで加工できた。さらに、本発明品2では、Z軸揺動工程を実施しているので、切削ブレード21の消耗量がZ軸揺動工程無しの状態と比較して1.5倍に消耗し(目詰まり改善傾向)、裏面WbのチッピングもZ軸揺動工程無しの状態と比較して小さくなった。よって、表1によれば、切削送り工程とX軸戻し送り工程とZ軸揺動工程を実施することで、切削ブレード21においてサファイア等の難切削材で構成された被加工物Wを切削ブレード21の異常磨耗を起こさず、良好に分割可能であることが明らかとなった。
なお、前述した実施形態では、切削送り工程とX軸戻し送り工程の所定回数毎に、Z軸揺動工程を実施しているが、本発明では、これに限定されない。本発明では、Z軸揺動工程を実施せずに、切削送り工程とX軸戻し送り工程のみを実施してもよい。また、本発明では、切削送り工程前、X軸戻し送り工程後などの任意のタイミングでZ軸揺動工程を実施してもよく、切削送り工程及びX軸戻し送り工程の任意のタイミングでZ軸揺動工程を実施すればよい。さらに、前述した実施形態では、Z軸揺動工程を切削送り工程及びX軸戻し送り工程と異なるタイミングで実施したが、本発明では、Z軸揺動工程を切削送り工程及びX軸戻し送り工程の一方と同時に実施してもよい。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
1 切削装置
10 チャックテーブル(保持手段)
10a 保持面
20 切削手段
21 切削ブレード
22 スピンドル
25 切削水供給ノズル(切削水供給手段)
30 X軸移動手段
40 Y軸移動手段
50 Z軸移動手段
W 被加工物
L 分割予定ライン
H 所定深さ
D1 第一の送り量
D2 第二の送り量
ST2,ST6 切削送り工程
ST3 X軸戻し送り工程
ST7 Z軸揺動工程

Claims (3)

  1. 難切削材で構成された被加工物を保持する保持面を有する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを装着したスピンドルを有する切削手段と、該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に鉛直方向に移動するZ軸移動手段と、を少なくとも備えた切削装置において該切削水を供給しながら該難切削材で構成された被加工物を切削する切削方法であって、
    Z軸を所定量下降させて回転する切削ブレードを被加工物に対して所定深さ切り込みつつ該切削ブレードと該保持手段とを相対的にX軸方向に第一の送り量切削送りさせて被加工物を分割予定ラインに沿って第一の送り量切削する切削送り工程と、
    該切削送り工程を実施した後に、該所定深さを維持した状態で該第一の送り量よりも少ない第二の送り量該保持手段と該切削ブレードを相対的にX軸方向に該切削送り工程と反対方向に戻すX軸戻し送り工程と、を備え、
    該切削水供給手段から該切削水を供給しながら該切削送り工程を実施した後、X軸戻し送り工程を実施して、該切削送り工程と該X軸戻し送り工程とを分割予定ラインに沿って複数回交互に行い、該第一の送り量よりも該第二の送り量を少なく、切削送り工程の送り速度よりもX軸戻し送り工程の戻し送り速度を速くして、分割予定ラインに沿って被加工物の切削を行うことを特徴とする切削方法。
  2. 前記切削送り工程及び前記X軸戻し送り工程の任意のタイミングで、
    回転する切削ブレードをZ軸を該所定量よりもさらに下降させてすぐに上昇させるZ軸揺動工程を備えること、を特徴とする請求項1記載の切削方法。
  3. 該難切削材が、サファイアであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の切削方法。
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