JP6238821B2 - 定着部材、その製造方法および定着装置 - Google Patents
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Description
ここで、突出谷部深さRvkの数値範囲は、定着部材の柔軟性と離型性のバランスから規定されているものである。Rvkの下限値である「0.8μm」なる値は、弾性層の表面にフッ素樹脂から成る表面層を備えた定着部材において、表面マイクロ硬度を下げて表面層を柔軟化させるために最低限必要な値である。Rvkが0.8μm未満であると、表面層の柔軟性が不十分であるために、定着性の向上効果が得られない。また、Rvkが「2.0μm」を超えると、ディンプルの谷部に付着したトナーを表面層が保持するために、表面層の離型性能が損なわれる。
本発明に係る定着装置について説明する。本発明に係る定着装置は、電子写真画像形成装置に用いる定着装置であって、前述のような本発明の定着部材が定着ベルトあるいは定着ローラとして配置されているものである。電子写真画像形成装置としては、感光体、潜像形成手段、形成した潜像をトナーで現像する手段、現像したトナー像を記録材に転写する手段、および、記録材上のトナー像を定着する手段等を有する電子写真画像形成装置が挙げられる。
電子写真用定着部材の代表例として定着ベルトについて、更に詳しく説明する。定着ベルト3は、図1中の定着ベルトの部分拡大図に示すように、内側から基材5、弾性層6、表面層7が設けられた複層構造を有する無端状のベルト部材である。
円筒状基材は、例えば、薄肉の可撓性を有する無端状のベルトである。基材の材料として、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の薄肉耐熱性樹脂が用いられる。またより熱伝導性を高めるために、SUS、Ni等の薄肉金属を用いてもよい。また、基材は熱容量を小さくすることでクイックスタート性を満足させ、さらに一定の機械的強度も満足させる必要があるため、厚みは5μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上85μm以下とすることが望ましい。
基材の外周面にはシリコーンゴム等で形成される弾性層6が形成されている。弾性層を設けることで、高光沢で定着ムラのない良質画像を得ることが可能になる。すなわち、弾性層が定着ニップ部Nで記録材P上のトナーや、記録材Pの紙繊維の形状に対して変形し、未定着のトナー画像を包み込むことによって、トナー画像に対して均一に熱を与えることができるようになる。弾性層の厚みは薄すぎると弾性が十分に発揮できないため、高光沢で定着ムラのない画像を得ることができず、厚すぎると定着ベルトの熱容量が大きくなって、クイックスタート性が低下する。そのため、弾性層の厚みとしては、30μm以上500μm以下、好ましくは100μm以上300μm以下とすることが望ましい。
弾性層の外周面には、例えば、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)等のフッ素樹脂から形成される表面層7が設けられている。
〔1−1.Rvk及びRvk/Rpk〕
定着部材の表面形状の計測には、光干渉方式の非接触表面形状システム(商品名:VertScan 2.0/R3300G Lite、株式会社菱化システム製)を用いる。
表面層に形成されたディンプルの最大長さは、前記計測システムでの孔解析により算出する。以下に、孔解析の具体的な方法を説明する。
定着部材の表面層の硬さは、JIS−Aタイプのマイクロ硬度計MD−1型(高分子計器株式会社製)を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境においてピークホールドモードで測定する。マイクロ硬度計は、ゴム材料、熱可塑性エラストマー、軟質プラスチックなどの厚さ2mm以下の薄物の硬度測定に適している。定着部材の端部から15mm以上25mm以下の位置の両端部及び中央部の合計3点について、各点円周方向90°ごとに合計4点測定する。得られた合計12点の測定値の平均値をマイクロ硬度とする。
定着性の評価は、温度15℃、相対湿度20%の環境に保たれた実験室内で行う。定着部材を図1に示す定着装置に装着し、この定着装置を、60枚/分(プロセススピード350mm/sec)の高速定着を可能とするレーザービームプリンタに組み込む。通紙中の定着ベルトの表面温度は200℃になるように設定する。記録材としては坪量75g/cm2、レターサイズのラフ紙(Fox River Paper社製 フォックスリバーボンド)を用いる。
×:250枚について濃度低下率が20%を超える箇所が1ヵ所以上存在する。
○:上記の「×」に該当しない。
離型性の評価は、定着部材を定着性の評価と同様の定着装置およびレーザービームプリンタに組み込んで行う。記録材としては坪量68g/cm2、A4サイズのCS−680(キヤノン株式会社製)を用いる。10000枚を連続プリントした後の、定着部材の表面を目視およびVertScanで観察し、その汚れの程度で定着部材の汚れ難さを評価する。すなわち、定着部材の表面が汚れやすい場合には、表面層に形成したディンプルにトナーが付着することで孔が塞がるため、10000枚通紙前後の孔解析の結果を比較することで、定着部材の表面の汚れ難さを知ることができる。評価基準は以下の通りである。
○:通紙前と比較して、ディンプルが半数以上残っている。
×:通紙前と比較して、紙粉およびトナーの付着によりディンプルが半数未満になっている。
円筒状基材としてステンレス鋼(SUS)により製作された外径30mm、厚さ35μm、長さ240mmのものを使用した。上記基材の外周面にプライマー(商品名:DY39−051、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布し、熱風循環式オーブンで150℃、30分間熱処理した。プライマー処理後の基材の外周面に、弾性層として2液付加型液状シリコーンゴム混合物をリングコート法にて厚さ200μmで塗布形成し、180℃にて加熱硬化させた。その後、200℃の熱風循環式オーブン中で4時間、2次硬化を行い、弾性層を形成した。
微粉タイプのワックスの種類及び使用量を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、定着ベルト2〜5を得て評価した。評価結果を表2に示す。
微粉タイプのワックスを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、定着ベルトC1を得て評価した。評価結果を表2に示す。塗料中に微粉ワックスを混合していないため、表面層にディンプルは形成されず、表面粗さデータの高さゼロの位置からの深さ1.0μmにおける平均最大長さDは0μmであった。
水性フッ素樹脂分散塗料として、平均粒子径が0.1μmのPFAを水に分散させたフッ素樹脂分散塗料(商品名:EM−500、三井・デュポンフロロケミカル社製)と、平均粒子径が0.2μmのFEPを水に分散させたフッ素樹脂分散塗料(商品名:FEP120−JR、三井・デュポンフロロケミカル社製)を7/3(質量比)で混合したディスパージョンを用いた。このディスパージョン100質量部に対して、微粉タイプのポリエチレンワックス(商品名:Ceridust3610、クラリアントジャパン社製)を14質量部混合した表面層形成用塗料を調製した。これら以外は実施例1と同様にして、定着ベルトC2を得て評価した。評価結果を表2に示す。
水性フッ素樹脂分散塗料として、平均粒子径が0.1μmのPFAを水に分散させたフッ素樹脂分散塗料(商品名:EM−500、三井・デュポンフロロケミカル社製)と、平均粒子径が10μmのPFAを水に分散させたフッ素樹脂分散塗料(商品名:PFA350−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)を8/2(質量比)で混合したディスパージョンを用いた。また、微粉タイプのワックスを用いなかった。これら以外は実施例1と同様にして、定着ベルトC3を得て評価した。評価結果を表2に示す。塗料中に微粉ワックスを混合していないため、表面層にディンプルは形成されず、表面粗さデータの高さゼロの位置からの深さ1.0μmにおける平均最大長さDは0μmであった。
微粉タイプのワックスの種類及び使用量を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、定着ベルトC4及びC5を得て評価した。評価結果を表2に示す。
以上の各実施例及び比較例の構成における、Rvkと表面マイクロ硬度の関係を図4に示す。マイクロ硬度は、Rvkの値が最も小さい比較例1のマイクロ硬度をゼロとしたときの相対的な硬度ΔMDで表している。この結果より、Rvkの値が大きくなるほど、定着部材の表面のマイクロ硬度が低下すること、すなわち表面層が柔軟化することがわかる。
2 ヒータホルダ
3 定着ベルト
4 加圧ローラ
5 基材
6 弾性層
7 表面層
Claims (5)
- 円筒状基材の外周面に、弾性層、フッ素樹脂から成る表面層が順次積層され、
該表面層の表面がディンプルを有し、
該ディンプルは、
プラトー構造表面の潤滑性評価パラメータである突出谷部深さRvkが0.8μm以上2.0μm以下であり、且つ、
該突出谷部深さRvkと該表面層の表面の突出山部高さRpkの関係が1.8≦Rvk/Rpk≦20.0であることを特徴とする電子写真用定着部材。 - 前記ディンプルは、
前記表面層の表面粗さデータの高さゼロの位置からの深さ1.0μmにおける平均最大長さDが15μm以上26μm以下であり、且つ、
最大長さ分布の標準偏差σと平均最大長さDとの比として定義される変動係数CV=σ/Dが1.0未満である請求項1に記載の電子写真用定着部材。 - 前記表面層の厚みが8μm以上25μm以下である請求項1または2に記載の電子写真用定着部材。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の電子写真用定着部材を有することを特徴とする定着装置。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の電子写真用定着部材を製造する方法であって、
フッ素樹脂粒子と、該フッ素樹脂粒子の溶融温度以下で分解する微粉ワックスと、が分散されてなる表面層形成用塗料の塗膜を弾性層の上に形成する工程と、
該塗膜中のフッ素樹脂粒子を溶融させると共に、該微粉ワックスを分解せしめる工程と、を有することを特徴とする電子写真用定着部材の製造方法。
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