JP2004170859A - 弾性ローラ、定着部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性層の劣化を防止しつつ離型層のフッ素樹脂を焼成することで、柔軟性と離型性を兼ね備えた高耐久な弾性ローラを提供する。
【解決手段】芯金11または無端状ベルト基体と、芯金11または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層12と、弾性層12の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層13とを有する弾性ローラに関する。前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層12を離型層13の表面より低温に維持して焼成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】芯金11または無端状ベルト基体と、芯金11または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層12と、弾性層12の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層13とを有する弾性ローラに関する。前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層12を離型層13の表面より低温に維持して焼成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真装置の定着ローラ、定着ベルト等の定着部材及びその製造方法に関し、表面にフッ素樹脂層を有する弾性ローラに応用が可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は電子写真方式の画像形成プロセスの模式図である(図5は白黒画像の場合である。フルカラー画像の場合はマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色トナーの重ね合わせであることから、各色についての現像器とそれらを重ね合わせる機構を有する)。電子写真方式を用いる装置、例えば複写機、レーザプリンタは、回転する感光体ドラム31を有し、この感光体ドラム31の感光層を帯電装置32を用いて一様に帯電させた後で、レーザ走査ユニットからのレーザビームによって露光33して静電潜像を現像ローラ34のトナーによって現像してトナー像とし、そのトナー像を記録シート37上に転写ローラ36で転写させ、更にその記録シート37を熱定着装置(ローラ方式定着器42又はベルト定着器47)に通過させてトナー像を熱定着する様に構成されている。なお、図5中、符号35はパワーパック、符号38はクリーニング装置、符号39は表面電位計、符号40は加熱定着ローラ、符号41は加圧ローラ、符号43は定着ベルト、符号44は定着ローラ、符号45は加熱ローラ、符号46は加圧ローラをそれぞれ示す。
【0003】
従来、白黒(ブラックトナーのみ)の熱定着装置においては(図5のローラ方式)、例えば、アルミニウムなどの中空円筒体からなる芯金の外周面にトナーの粘着を防止する為のフッ素樹脂層などからなる離型層を設けた加熱定着ローラ40が使用されているが、この様な加熱定着ローラ40は芯金の中空部に回転中心線に沿ってハロゲンランプなどのヒータを配置し、その輻射熱によって加熱定着ローラ40を内側から加熱する様になっている。
【0004】
更に加熱定着ローラ40と平行にこれに圧接する加圧ローラ41を設けて、加圧ローラ41と加熱定着ローラ40との間に記録紙37を通過される事により記録紙上に付着しているトナーを加熱定着ローラ40の熱により軟化(溶融)させつつ、加圧により記録紙上に定着させている。
【0005】
上述したように、電子写真装置の定着装置においては、例えば、アルミニウムなどの中空円筒体からなる芯金の外周面にトナーの粘着を防止する為のフッ素樹脂層などからなる離型層を設けた加熱定着ローラが一般的である。
【0006】
この芯金上にフッ素樹脂層を設けた加熱定着ローラは、離型性には優れるものの、柔軟性、弾力性に劣るため、光沢を必要とするフルカラー複写機や、フルカラーレーザプリンタへの対応が困難である。これら光沢画像を形成するフルカラー複写機、レーザプリンタでは、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のカラートナーが用いられるが、カラー画像の定着時には、これらのカラートナーを溶融状態で混合する必要がある。そのためには、トナーを低融点化して溶融しやすくすると共に、加熱定着ローラ表面で、複数種のカラートナーを包み込むようにして、溶融状態で、均一に混合させることが必要になる。
また、紙搬送の安定性の面からも定着部材(定着ローラ、定着ベルト)に必要な特性の一つとして弾性が挙げられる。
【0007】
最近ではゴムの弾性と離型性とを兼ね備えたものとして、芯金の周囲に弾性層を、その外周に離型層を形成する構成の熱定着部材が種々実用化されている。これらの定着部材の製造方法としては、芯金の周囲に耐熱性ゴム(特にシリコーンゴム)からなる弾性層を成形し、フッ素樹脂チューブを被覆する方法や、円筒型内面にフッ素樹脂チューブを嵌挿し、円筒型中心に保持した芯金との隙間に液状シリコーンゴムを注型、加熱加硫する方法が公知である。
【0008】
これらの方法ではシリコーンゴムとフッ素樹脂チューブの接着が難しい。シリコーンゴムやフッ素樹脂チューブ内面にプライマーを塗布する構成が提案されているが、接着強度が充分でなく、加熱定着ローラとしての耐久性に問題がある。
【0009】
また、フッ素樹脂チューブの薄肉化に限界があり、フッ素樹脂チューブが厚いと弾性層の柔軟性がローラ表面に伝わらないことで、光沢ムラなど画質面での不具合も大きかった。
【0010】
一方、プライマーを塗布したシリコーンゴムにフッ素樹脂を主成分とする塗料をコーティングし、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成(溶融成膜)する方法もある。この方法では、フッ素樹脂とプライマーの融着により接着強度が確保でき、またフッ素樹脂の薄膜化が容易であるが、フッ素樹脂の融点が4フッ化エチレン樹脂(PTFE)で約327℃、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)で約306℃と非常に高温域であることから、弾性層のシリコーンゴムが熱劣化し、クラックを生じたり、硬化により弾性が低下したり、著しく強度が低下するなどの定着に適した条件を損なう不具合があった。
【0011】
これらの不具合に対し、特開昭62−153978号公報にはフッ素樹脂の誘電正接がシリコーンゴム弾性層よりも大きいことを利用して、表面から誘電加熱により弾性層を低温に維持して焼成する方法が開示されている。ところが、この方法によっても弾性層のフッ素樹脂界面近傍はフッ素樹脂融点近くの高温となり、フッ素樹脂との界面近傍が局所的に劣化してしまい、微小クラックを生ずるなどの不具合がある。
【0012】
また、表面の柔軟性を付与するために、従来の光沢画像のフルカラー定着ローラには、シリコーンゴムローラ上に、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム層(下地のゴムよりも、離型、耐久性を考慮したゴム材料を使用)を設けた構成の加熱定着ローラがある。
【0013】
熱ローラ定着法は、ヒートローラ全体を所定温度に保持すること、熱容量が大きいことなどから、プリント速度の高速化には適しているが、ヒートローラを所定の温度まで加熱するのにかなりの時間が必要である。また、このことから、ヒートローラ全体を加熱するのに、電力消費も大きくなる。
【0014】
近年、省エネルギー化への活動が活発になっており、立ち上がり時間の短縮が検討されている。その一つとして、特開平6−318001号公報に開示されているように、ヒーターにより熱せられたフィルム状のエンドレスベルトを介して、記録紙上のトナーを加熱するベルト定着方法が提案、商品化されている。この定着方法では、図5にベルト方式として示すように、薄いフィルム状の定着用ベルトを直接加熱することになり、電源投入後、加熱部は短時間で所定の温度に達するので、電源投入後の待ち時間を削減することが出来る。また、必要部分のみを加熱するので、電力消費も少ない利点がある。
【0015】
図5の符号47はベルトを使用した定着方式を用いたベルト定着器である。ベルトの表面は弾性を有するシリコーンゴム層が形成されているが、柔軟性にはすぐれるものの、トナー離型性が不足し、トナーのオフセット現象が発生しやすい。また耐摩耗性が低いことから表面の摩耗、劣化が激しいなどの不具合がある。そのため、シリコーンオイルを潤滑剤として定着ベルト表面に塗布する方法が採用されている。
【0016】
しかし、このオイル塗布方式もオイルによるシリコーンゴムの膨潤という問題や、オイル塗布の為の機構(塗布量制御機構も含む)およびオイルの補充などはユーザーメンテナンスの負荷、コスト高の不具合もあり、オイル不使用の定着が必要とされている。
【0017】
最近では、ベルト基体上にゴム弾性層を設け、その周囲に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、および四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)などフッ素系樹脂、もしくはこれらの混合物等の離型材料を被覆させた構成も提案されている。
【0018】
【特許文献1】
特開昭62−153978号公報
【特許文献2】
特開平6−318001号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この離型材料を被覆させた場合、前述した表面の重要特性である柔軟性が低下し、光沢ムラが発生しやすい不具合がある。ベルトの表面は未定着トナー画像と接触し、そのトナーに熱を与え、加圧することで記録紙上へ定着させるが、表面に凹凸がある場合、その山部分と谷部分の接触状態は違うものとなる。この接触状態の違いは、当然、熱の伝達やトナーへの圧力の違いに現れ、結果として、光沢ムラとなって現れる。
【0020】
そこで、本発明は、弾性層の劣化を防止しつつ離型層のフッ素樹脂を焼成することで、柔軟性と離型性を兼ね備えた高耐久な弾性ローラを提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、弾性層の劣化を防止しつつ離型層のフッ素樹脂を焼成することで、柔軟性と離型性を兼ね備えた高耐久な熱定着ローラ、ベルト等の定着部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、ベルト表面へのオイル塗布をすることなく、トナーオフセットしない表面の離型性を確保し、且つ弾性層のもつ柔軟性を損なわない構成とし、均一な定着画像を得ることができる定着部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、芯金または無端状ベルト基体と、芯金または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層と、該弾性層の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層とを有する弾性ローラにおいて、
前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、前記弾性層を前記離型層表面より低温に維持して焼成されていることを特徴とする弾性ローラである。
【0024】
また、請求項2の発明は、芯金または無端状ベルト基体と、芯金または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層と、該弾性層の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層とを有する定着部材において、
前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、前記弾性層を前記離型層表面より低温に維持して焼成されていることを特徴とする定着部材である。
【0025】
また、請求項3の発明は、前記弾性層は、芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスが吹きつけられて、前記離型層表面より低温に維持されることを特徴とする請求項2に記載の定着部材である。
【0026】
また、請求項4の発明は、芯金または無端状ベルト基体の周囲にゴムまたはエラストマからなる弾性層を形成し、次いで該弾性層の周囲にフッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料をコーティングした後、該フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層を形成する定着部材の製造方法において、
前記フッ素樹脂の焼成は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層を離型層表面より低温に維持して行うことを特徴とする定着部材の製造方法である。
【0027】
また、請求項5の発明は、前記芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスを吹きつけることで前記弾性層の内面を冷却し、該弾性層を前記離型層表面より低温に維持することを特徴とする請求項4に記載の定着部材の製造方法である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係わる一実施例の熱定着ローラの断面図である。
図1に示すように、この熱定着ローラは、弾性ローラの一例であり、芯金11と、芯金11の外周に積層された弾性層12と、弾性層12の外周に積層された離型層13とから構成されている。
【0029】
芯金11はアルミ、鉄、ステンレス等の熱伝導の良好な金属材料からなり、ヒータONから定着温度までの到達時間(立ちあがり時間)の短縮(薄い方が有利)、強度(厚い方が有利)の面から0.3〜10mm程度の範囲で肉厚が選ばれる。
【0030】
弾性層12の必要性については、従来技術の説明でも述べた通り、光沢ムラの無い均一な画像を得るため、また安定した紙搬送性を得るためには、ベルト表面が柔軟であることが要求されることによる。また、定着時の温度(〜200℃)での耐熱性から、弾性層の材質としては、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が用いられる。
【0031】
離型層13は、トナー定着時のオフセット防止、通紙による紙粉の付着防止等の観点から離型性、さらに定着時の温度での耐熱性から、フッ素樹脂、例えば4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)等が用いられる。
【0032】
本発明は、芯金または無端状ベルト基体の周囲にゴムまたはエラストマからなる弾性層を形成し、次いで該弾性層の周囲にフッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料をコーティングした後、該フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層を形成してなる定着部材において、フッ素樹脂焼成は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層を離型層表面より低温に維持してなることを特徴とする定着部材(定着ローラ、定着ベルト)である。
【0033】
不活性ガス雰囲気中でフッ素樹脂を焼成することにより(無酸素、または極低濃度の状態とする)、弾性層の酸化を防止、かつ離型層表面よりも低温に維持することで弾性層の熱劣化を防止し、高耐久な定着部材となる利点を有する。
【0034】
また、前記フッ素樹脂の焼成は、不活性ガス雰囲気中で、芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスを吹きつけることで内面を冷却し、弾性層を離型層表面よりも低温に維持してなることを特徴としている。これにより生産工程や設備を煩雑にすることなく、より安価に高耐久な定着部材となる利点を有する。
【0035】
以下、実施例を説明する。
外径φ40mm、肉厚1mmのアルミからなる芯金の周囲にシリコーンゴム層を200μm厚で形成した。
弾性層としてのシリコーンゴムは2液混合タイプの液状シリコーン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 DY35−2083A/B)を混合後、トルエンにて適量希釈し、スプレーコートで成膜した。電気炉で120℃1hr加熱加硫後、200℃2hr2次加硫をおこなった。
【0036】
その後シリコーンゴム上にプライマーを2μm厚塗布し、乾燥をおこない、次いでPFA(三井デュポンフロロケミカル社製PFA340HP−J)を主成分とする粉体塗料を静電塗装20μm厚でコーティングした。
本実施例ではPFA粉体塗料を用いたが、例えばPTFE、FEPその他のフッ素樹脂またはディスパージョン塗料も可能である。
【0037】
図2に本実施例における焼成装置を示した。
図2に示すように、表面にPFAが紛体塗装されたローラ21はヒータ24を埋設された管状炉22内に両端を支持されて挿入固定される。窒素ガスボンベより窒素ガスをケース20内に供給し、ケース20内の空気を窒素で充分に置換した後、管状炉22のヒータ24によりローラ21の外周面から加熱される。その際ローラ21内には棒状のノズル23が挿入され、ノズル23からローラ21の芯金11の内周面には窒素ガスが吹きつけられる。これによりローラ21の内周面は冷却され、管状炉22で加熱される外周面との間に温度勾配が生じる。これにより、弾性層12は外周面のフッ素樹脂よりも低温に維持することが可能である。
【0038】
ヒータ24はローラ21の外周面の温度が340℃なるよう温調し、340℃に到達後20分間キープした。本実施例におけるフッ素樹脂(PFA)の結晶融点は約306℃であり、表面温度をそれ以上とすることで、粉体塗料またはディスパージョン塗料のフッ素樹脂成分は溶融し、成膜が可能となる。弾性層12の劣化を防止するためには、必要以上にフッ素樹脂表面(離型層13の表面)の温度を高温にしないことが重要であるが、離型層13の表面性を確保するためには、均一な成膜に充分な流動性が得られる温度、望ましくは融点+20℃ほどが望ましい。その後、ローラ21を取りだし、外周面をエアブローすることでフッ素樹脂を急冷したところ、弾性層12の酸化、熱劣化が少ない充分な柔軟性をもった熱定着ローラが得られた。また弾性層12とフッ素樹脂からなる離型層13との密着性も良好であり、実機定着温度での連続使用での耐久性を充分持つものであった。
【0039】
図3は本実施例および比較例1として内面冷却有りの場合の芯金内面と離型層外周面との温度曲線を示す図、図4は比較例2として内面冷却なしの場合の芯金内面と離型層外周面の温度曲線を示す図である。
【0040】
表1に本実施例および比較例1として窒素置換なしで内面を空気を吹きつけて冷却した場合、比較例2として窒素置換なしで内面冷却なしの場合での弾性層シリコーンゴムのクラック、硬度変化を評価した結果を次の表1に示す。なお、比較例1は焼成雰囲気が空気である点および内面冷却を空気で行った点以外は実施例1と同様であり、比較例2は内面冷却をしない点をのぞくと比較例1と同様である。
【0041】
【表1】
【0042】
上記表1において、弾性層硬度変化の評価についてはフィッシャー社製ユニバーサル硬度計による測定に基づいて行い、画像評価(光沢ムラ)については目視により行った。
【0043】
以上の実施例のまとめを述べる。
熱定着ローラに充分な柔軟性を確保するためには、弾性層のフッ素樹脂焼成時に不活性ガス雰囲気とすることで酸化を防止し、かつ弾性層をフッ素樹脂表面よりも低温に維持することが有効である。これにより得られる熱定着ローラは充分な柔軟性を有し、高耐久なものである。
【0044】
本実施例においては、芯金上に弾性層、離型層を積層したローラであるが、無端状ベルト基体上に同様に積層される熱定着ベルトや加圧ベルト、また加圧ローラ等定着部材においても同様な効果が得られる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、不活性ガス雰囲気中でフッ素樹脂を焼成することで弾性層の酸化を防止し、且つ弾性層をフッ素樹脂表面よりも低温に維持することで熱劣化を抑制し、離型性と同時に弾性層の柔軟性を損なうことのない柔軟で高耐久な弾性ローラを提供できる。
【0046】
また、請求項2又は4の発明によれば、不活性ガス雰囲気中でフッ素樹脂を焼成することで弾性層の酸化を防止し、且つ弾性層をフッ素樹脂表面よりも低温に維持することで熱劣化を抑制し、離型性と同時に弾性層の柔軟性を損なうことのない柔軟で高耐久な定着部材を提供できる。また、ベルト表面へのオイル塗布をすることなく、トナーオフセットしない表面の離型性を確保し、且つ弾性層のもつ柔軟性を損なわない構成とし、均一な定着画像を得ることができる。
【0047】
また、請求項3又は5の発明によれば、不活性ガス雰囲気中で芯金内面に不活性ガスを吹きつけることにより冷却し、請求項2又は4の発明を製造工程を煩雑にすることなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる一実施例の熱定着ローラの断面図である。
【図2】本発明に係わる一実施例の熱定着ローラを製造するための焼成装置の模式図である。
【図3】本実施例および比較例1として内面冷却有りの場合の芯金内面と離型層外周面との温度曲線を示す図である。
【図4】比較例2として内面冷却なしの場合の芯金内面と離型層外周面の温度曲線を示す図である。
【図5】図5は電子写真方式の画像形成プロセスの模式図である。
【符号の説明】
11 芯金
12 弾性層
13 離型層
23 冷却ノズル
24 ヒータ
40 加熱定着ローラ
41 加圧ローラ
42 ローラ方式定着器
43 定着ベルト
44 定着ローラ
45 加熱ローラ
46 加圧ローラ
47 ベルト定着器
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真装置の定着ローラ、定着ベルト等の定着部材及びその製造方法に関し、表面にフッ素樹脂層を有する弾性ローラに応用が可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は電子写真方式の画像形成プロセスの模式図である(図5は白黒画像の場合である。フルカラー画像の場合はマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色トナーの重ね合わせであることから、各色についての現像器とそれらを重ね合わせる機構を有する)。電子写真方式を用いる装置、例えば複写機、レーザプリンタは、回転する感光体ドラム31を有し、この感光体ドラム31の感光層を帯電装置32を用いて一様に帯電させた後で、レーザ走査ユニットからのレーザビームによって露光33して静電潜像を現像ローラ34のトナーによって現像してトナー像とし、そのトナー像を記録シート37上に転写ローラ36で転写させ、更にその記録シート37を熱定着装置(ローラ方式定着器42又はベルト定着器47)に通過させてトナー像を熱定着する様に構成されている。なお、図5中、符号35はパワーパック、符号38はクリーニング装置、符号39は表面電位計、符号40は加熱定着ローラ、符号41は加圧ローラ、符号43は定着ベルト、符号44は定着ローラ、符号45は加熱ローラ、符号46は加圧ローラをそれぞれ示す。
【0003】
従来、白黒(ブラックトナーのみ)の熱定着装置においては(図5のローラ方式)、例えば、アルミニウムなどの中空円筒体からなる芯金の外周面にトナーの粘着を防止する為のフッ素樹脂層などからなる離型層を設けた加熱定着ローラ40が使用されているが、この様な加熱定着ローラ40は芯金の中空部に回転中心線に沿ってハロゲンランプなどのヒータを配置し、その輻射熱によって加熱定着ローラ40を内側から加熱する様になっている。
【0004】
更に加熱定着ローラ40と平行にこれに圧接する加圧ローラ41を設けて、加圧ローラ41と加熱定着ローラ40との間に記録紙37を通過される事により記録紙上に付着しているトナーを加熱定着ローラ40の熱により軟化(溶融)させつつ、加圧により記録紙上に定着させている。
【0005】
上述したように、電子写真装置の定着装置においては、例えば、アルミニウムなどの中空円筒体からなる芯金の外周面にトナーの粘着を防止する為のフッ素樹脂層などからなる離型層を設けた加熱定着ローラが一般的である。
【0006】
この芯金上にフッ素樹脂層を設けた加熱定着ローラは、離型性には優れるものの、柔軟性、弾力性に劣るため、光沢を必要とするフルカラー複写機や、フルカラーレーザプリンタへの対応が困難である。これら光沢画像を形成するフルカラー複写機、レーザプリンタでは、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のカラートナーが用いられるが、カラー画像の定着時には、これらのカラートナーを溶融状態で混合する必要がある。そのためには、トナーを低融点化して溶融しやすくすると共に、加熱定着ローラ表面で、複数種のカラートナーを包み込むようにして、溶融状態で、均一に混合させることが必要になる。
また、紙搬送の安定性の面からも定着部材(定着ローラ、定着ベルト)に必要な特性の一つとして弾性が挙げられる。
【0007】
最近ではゴムの弾性と離型性とを兼ね備えたものとして、芯金の周囲に弾性層を、その外周に離型層を形成する構成の熱定着部材が種々実用化されている。これらの定着部材の製造方法としては、芯金の周囲に耐熱性ゴム(特にシリコーンゴム)からなる弾性層を成形し、フッ素樹脂チューブを被覆する方法や、円筒型内面にフッ素樹脂チューブを嵌挿し、円筒型中心に保持した芯金との隙間に液状シリコーンゴムを注型、加熱加硫する方法が公知である。
【0008】
これらの方法ではシリコーンゴムとフッ素樹脂チューブの接着が難しい。シリコーンゴムやフッ素樹脂チューブ内面にプライマーを塗布する構成が提案されているが、接着強度が充分でなく、加熱定着ローラとしての耐久性に問題がある。
【0009】
また、フッ素樹脂チューブの薄肉化に限界があり、フッ素樹脂チューブが厚いと弾性層の柔軟性がローラ表面に伝わらないことで、光沢ムラなど画質面での不具合も大きかった。
【0010】
一方、プライマーを塗布したシリコーンゴムにフッ素樹脂を主成分とする塗料をコーティングし、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成(溶融成膜)する方法もある。この方法では、フッ素樹脂とプライマーの融着により接着強度が確保でき、またフッ素樹脂の薄膜化が容易であるが、フッ素樹脂の融点が4フッ化エチレン樹脂(PTFE)で約327℃、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)で約306℃と非常に高温域であることから、弾性層のシリコーンゴムが熱劣化し、クラックを生じたり、硬化により弾性が低下したり、著しく強度が低下するなどの定着に適した条件を損なう不具合があった。
【0011】
これらの不具合に対し、特開昭62−153978号公報にはフッ素樹脂の誘電正接がシリコーンゴム弾性層よりも大きいことを利用して、表面から誘電加熱により弾性層を低温に維持して焼成する方法が開示されている。ところが、この方法によっても弾性層のフッ素樹脂界面近傍はフッ素樹脂融点近くの高温となり、フッ素樹脂との界面近傍が局所的に劣化してしまい、微小クラックを生ずるなどの不具合がある。
【0012】
また、表面の柔軟性を付与するために、従来の光沢画像のフルカラー定着ローラには、シリコーンゴムローラ上に、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム層(下地のゴムよりも、離型、耐久性を考慮したゴム材料を使用)を設けた構成の加熱定着ローラがある。
【0013】
熱ローラ定着法は、ヒートローラ全体を所定温度に保持すること、熱容量が大きいことなどから、プリント速度の高速化には適しているが、ヒートローラを所定の温度まで加熱するのにかなりの時間が必要である。また、このことから、ヒートローラ全体を加熱するのに、電力消費も大きくなる。
【0014】
近年、省エネルギー化への活動が活発になっており、立ち上がり時間の短縮が検討されている。その一つとして、特開平6−318001号公報に開示されているように、ヒーターにより熱せられたフィルム状のエンドレスベルトを介して、記録紙上のトナーを加熱するベルト定着方法が提案、商品化されている。この定着方法では、図5にベルト方式として示すように、薄いフィルム状の定着用ベルトを直接加熱することになり、電源投入後、加熱部は短時間で所定の温度に達するので、電源投入後の待ち時間を削減することが出来る。また、必要部分のみを加熱するので、電力消費も少ない利点がある。
【0015】
図5の符号47はベルトを使用した定着方式を用いたベルト定着器である。ベルトの表面は弾性を有するシリコーンゴム層が形成されているが、柔軟性にはすぐれるものの、トナー離型性が不足し、トナーのオフセット現象が発生しやすい。また耐摩耗性が低いことから表面の摩耗、劣化が激しいなどの不具合がある。そのため、シリコーンオイルを潤滑剤として定着ベルト表面に塗布する方法が採用されている。
【0016】
しかし、このオイル塗布方式もオイルによるシリコーンゴムの膨潤という問題や、オイル塗布の為の機構(塗布量制御機構も含む)およびオイルの補充などはユーザーメンテナンスの負荷、コスト高の不具合もあり、オイル不使用の定着が必要とされている。
【0017】
最近では、ベルト基体上にゴム弾性層を設け、その周囲に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、および四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)などフッ素系樹脂、もしくはこれらの混合物等の離型材料を被覆させた構成も提案されている。
【0018】
【特許文献1】
特開昭62−153978号公報
【特許文献2】
特開平6−318001号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この離型材料を被覆させた場合、前述した表面の重要特性である柔軟性が低下し、光沢ムラが発生しやすい不具合がある。ベルトの表面は未定着トナー画像と接触し、そのトナーに熱を与え、加圧することで記録紙上へ定着させるが、表面に凹凸がある場合、その山部分と谷部分の接触状態は違うものとなる。この接触状態の違いは、当然、熱の伝達やトナーへの圧力の違いに現れ、結果として、光沢ムラとなって現れる。
【0020】
そこで、本発明は、弾性層の劣化を防止しつつ離型層のフッ素樹脂を焼成することで、柔軟性と離型性を兼ね備えた高耐久な弾性ローラを提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、弾性層の劣化を防止しつつ離型層のフッ素樹脂を焼成することで、柔軟性と離型性を兼ね備えた高耐久な熱定着ローラ、ベルト等の定着部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、ベルト表面へのオイル塗布をすることなく、トナーオフセットしない表面の離型性を確保し、且つ弾性層のもつ柔軟性を損なわない構成とし、均一な定着画像を得ることができる定着部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、芯金または無端状ベルト基体と、芯金または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層と、該弾性層の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層とを有する弾性ローラにおいて、
前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、前記弾性層を前記離型層表面より低温に維持して焼成されていることを特徴とする弾性ローラである。
【0024】
また、請求項2の発明は、芯金または無端状ベルト基体と、芯金または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層と、該弾性層の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層とを有する定着部材において、
前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、前記弾性層を前記離型層表面より低温に維持して焼成されていることを特徴とする定着部材である。
【0025】
また、請求項3の発明は、前記弾性層は、芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスが吹きつけられて、前記離型層表面より低温に維持されることを特徴とする請求項2に記載の定着部材である。
【0026】
また、請求項4の発明は、芯金または無端状ベルト基体の周囲にゴムまたはエラストマからなる弾性層を形成し、次いで該弾性層の周囲にフッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料をコーティングした後、該フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層を形成する定着部材の製造方法において、
前記フッ素樹脂の焼成は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層を離型層表面より低温に維持して行うことを特徴とする定着部材の製造方法である。
【0027】
また、請求項5の発明は、前記芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスを吹きつけることで前記弾性層の内面を冷却し、該弾性層を前記離型層表面より低温に維持することを特徴とする請求項4に記載の定着部材の製造方法である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係わる一実施例の熱定着ローラの断面図である。
図1に示すように、この熱定着ローラは、弾性ローラの一例であり、芯金11と、芯金11の外周に積層された弾性層12と、弾性層12の外周に積層された離型層13とから構成されている。
【0029】
芯金11はアルミ、鉄、ステンレス等の熱伝導の良好な金属材料からなり、ヒータONから定着温度までの到達時間(立ちあがり時間)の短縮(薄い方が有利)、強度(厚い方が有利)の面から0.3〜10mm程度の範囲で肉厚が選ばれる。
【0030】
弾性層12の必要性については、従来技術の説明でも述べた通り、光沢ムラの無い均一な画像を得るため、また安定した紙搬送性を得るためには、ベルト表面が柔軟であることが要求されることによる。また、定着時の温度(〜200℃)での耐熱性から、弾性層の材質としては、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が用いられる。
【0031】
離型層13は、トナー定着時のオフセット防止、通紙による紙粉の付着防止等の観点から離型性、さらに定着時の温度での耐熱性から、フッ素樹脂、例えば4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)等が用いられる。
【0032】
本発明は、芯金または無端状ベルト基体の周囲にゴムまたはエラストマからなる弾性層を形成し、次いで該弾性層の周囲にフッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料をコーティングした後、該フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層を形成してなる定着部材において、フッ素樹脂焼成は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層を離型層表面より低温に維持してなることを特徴とする定着部材(定着ローラ、定着ベルト)である。
【0033】
不活性ガス雰囲気中でフッ素樹脂を焼成することにより(無酸素、または極低濃度の状態とする)、弾性層の酸化を防止、かつ離型層表面よりも低温に維持することで弾性層の熱劣化を防止し、高耐久な定着部材となる利点を有する。
【0034】
また、前記フッ素樹脂の焼成は、不活性ガス雰囲気中で、芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスを吹きつけることで内面を冷却し、弾性層を離型層表面よりも低温に維持してなることを特徴としている。これにより生産工程や設備を煩雑にすることなく、より安価に高耐久な定着部材となる利点を有する。
【0035】
以下、実施例を説明する。
外径φ40mm、肉厚1mmのアルミからなる芯金の周囲にシリコーンゴム層を200μm厚で形成した。
弾性層としてのシリコーンゴムは2液混合タイプの液状シリコーン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 DY35−2083A/B)を混合後、トルエンにて適量希釈し、スプレーコートで成膜した。電気炉で120℃1hr加熱加硫後、200℃2hr2次加硫をおこなった。
【0036】
その後シリコーンゴム上にプライマーを2μm厚塗布し、乾燥をおこない、次いでPFA(三井デュポンフロロケミカル社製PFA340HP−J)を主成分とする粉体塗料を静電塗装20μm厚でコーティングした。
本実施例ではPFA粉体塗料を用いたが、例えばPTFE、FEPその他のフッ素樹脂またはディスパージョン塗料も可能である。
【0037】
図2に本実施例における焼成装置を示した。
図2に示すように、表面にPFAが紛体塗装されたローラ21はヒータ24を埋設された管状炉22内に両端を支持されて挿入固定される。窒素ガスボンベより窒素ガスをケース20内に供給し、ケース20内の空気を窒素で充分に置換した後、管状炉22のヒータ24によりローラ21の外周面から加熱される。その際ローラ21内には棒状のノズル23が挿入され、ノズル23からローラ21の芯金11の内周面には窒素ガスが吹きつけられる。これによりローラ21の内周面は冷却され、管状炉22で加熱される外周面との間に温度勾配が生じる。これにより、弾性層12は外周面のフッ素樹脂よりも低温に維持することが可能である。
【0038】
ヒータ24はローラ21の外周面の温度が340℃なるよう温調し、340℃に到達後20分間キープした。本実施例におけるフッ素樹脂(PFA)の結晶融点は約306℃であり、表面温度をそれ以上とすることで、粉体塗料またはディスパージョン塗料のフッ素樹脂成分は溶融し、成膜が可能となる。弾性層12の劣化を防止するためには、必要以上にフッ素樹脂表面(離型層13の表面)の温度を高温にしないことが重要であるが、離型層13の表面性を確保するためには、均一な成膜に充分な流動性が得られる温度、望ましくは融点+20℃ほどが望ましい。その後、ローラ21を取りだし、外周面をエアブローすることでフッ素樹脂を急冷したところ、弾性層12の酸化、熱劣化が少ない充分な柔軟性をもった熱定着ローラが得られた。また弾性層12とフッ素樹脂からなる離型層13との密着性も良好であり、実機定着温度での連続使用での耐久性を充分持つものであった。
【0039】
図3は本実施例および比較例1として内面冷却有りの場合の芯金内面と離型層外周面との温度曲線を示す図、図4は比較例2として内面冷却なしの場合の芯金内面と離型層外周面の温度曲線を示す図である。
【0040】
表1に本実施例および比較例1として窒素置換なしで内面を空気を吹きつけて冷却した場合、比較例2として窒素置換なしで内面冷却なしの場合での弾性層シリコーンゴムのクラック、硬度変化を評価した結果を次の表1に示す。なお、比較例1は焼成雰囲気が空気である点および内面冷却を空気で行った点以外は実施例1と同様であり、比較例2は内面冷却をしない点をのぞくと比較例1と同様である。
【0041】
【表1】
【0042】
上記表1において、弾性層硬度変化の評価についてはフィッシャー社製ユニバーサル硬度計による測定に基づいて行い、画像評価(光沢ムラ)については目視により行った。
【0043】
以上の実施例のまとめを述べる。
熱定着ローラに充分な柔軟性を確保するためには、弾性層のフッ素樹脂焼成時に不活性ガス雰囲気とすることで酸化を防止し、かつ弾性層をフッ素樹脂表面よりも低温に維持することが有効である。これにより得られる熱定着ローラは充分な柔軟性を有し、高耐久なものである。
【0044】
本実施例においては、芯金上に弾性層、離型層を積層したローラであるが、無端状ベルト基体上に同様に積層される熱定着ベルトや加圧ベルト、また加圧ローラ等定着部材においても同様な効果が得られる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、不活性ガス雰囲気中でフッ素樹脂を焼成することで弾性層の酸化を防止し、且つ弾性層をフッ素樹脂表面よりも低温に維持することで熱劣化を抑制し、離型性と同時に弾性層の柔軟性を損なうことのない柔軟で高耐久な弾性ローラを提供できる。
【0046】
また、請求項2又は4の発明によれば、不活性ガス雰囲気中でフッ素樹脂を焼成することで弾性層の酸化を防止し、且つ弾性層をフッ素樹脂表面よりも低温に維持することで熱劣化を抑制し、離型性と同時に弾性層の柔軟性を損なうことのない柔軟で高耐久な定着部材を提供できる。また、ベルト表面へのオイル塗布をすることなく、トナーオフセットしない表面の離型性を確保し、且つ弾性層のもつ柔軟性を損なわない構成とし、均一な定着画像を得ることができる。
【0047】
また、請求項3又は5の発明によれば、不活性ガス雰囲気中で芯金内面に不活性ガスを吹きつけることにより冷却し、請求項2又は4の発明を製造工程を煩雑にすることなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる一実施例の熱定着ローラの断面図である。
【図2】本発明に係わる一実施例の熱定着ローラを製造するための焼成装置の模式図である。
【図3】本実施例および比較例1として内面冷却有りの場合の芯金内面と離型層外周面との温度曲線を示す図である。
【図4】比較例2として内面冷却なしの場合の芯金内面と離型層外周面の温度曲線を示す図である。
【図5】図5は電子写真方式の画像形成プロセスの模式図である。
【符号の説明】
11 芯金
12 弾性層
13 離型層
23 冷却ノズル
24 ヒータ
40 加熱定着ローラ
41 加圧ローラ
42 ローラ方式定着器
43 定着ベルト
44 定着ローラ
45 加熱ローラ
46 加圧ローラ
47 ベルト定着器
Claims (5)
- 芯金または無端状ベルト基体と、芯金または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層と、該弾性層の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層とを有する弾性ローラにおいて、
前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、前記弾性層を前記離型層表面より低温に維持して焼成されていることを特徴とする弾性ローラ。 - 芯金または無端状ベルト基体と、芯金または無端状ベルト基体の周囲に形成されたゴムまたはエラストマからなる弾性層と、該弾性層の周囲にコーティングされた、フッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料を、フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層とを有する定着部材において、
前記フッ素樹脂は、不活性ガス雰囲気中で、前記弾性層を前記離型層表面より低温に維持して焼成されていることを特徴とする定着部材。 - 前記弾性層は、芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスが吹きつけられて、前記離型層表面より低温に維持されることを特徴とする請求項2に記載の定着部材。
- 芯金または無端状ベルト基体の周囲にゴムまたはエラストマからなる弾性層を形成し、次いで該弾性層の周囲にフッ素樹脂を主成分とする紛体塗料またはディスパージョン塗料をコーティングした後、該フッ素樹脂の融点以上の高温下で焼成してなる離型層を形成する定着部材の製造方法において、
前記フッ素樹脂の焼成は、不活性ガス雰囲気中で、弾性層を離型層表面より低温に維持して行うことを特徴とする定着部材の製造方法。 - 前記芯金または無端状ベルト基体の内周面に不活性ガスを吹きつけることで前記弾性層の内面を冷却し、該弾性層を前記離型層表面より低温に維持することを特徴とする請求項4に記載の定着部材の製造方法。
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-
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