JP4012744B2 - 積層シートの製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写紙上の未定着像を加熱、加圧して定着するために用いられる積層シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、従来の電子写真方式の画像形成装置の説明図である。図3に示されているように、従来の電子写真方式の画像形成装置100、例えば、複写機及びレーザプリンタは、静電潜像が形成される感光体ドラム101、感光体ドラム101に接触して帯電処理を行う帯電ロール102、レーザビーム等の露光手段103、感光体ドラム101の静電潜像にトナーを付着させる現像ロール104、帯電ロール102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、感光体ドラム101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ロール106、転写処理後の感光体ドラム101をクリーニングするためのクリーニング装置108、感光体ドラム101の表面電位を測定する表面電位計109、並びに、加熱定着ロール111及び加圧ロール112からなる熱定着装置110によって構成されている。
【0003】
この電子写真方式を用いる画像形成装置100は、回転する感光体ドラム101の感光体層を帯電ロール102を用いて一様に帯電させた後にレーザビーム等の露光手段103で露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーによって現像することによりトナー像とし、このトナー像を記録紙107上に転写し、そして、この記録紙107を加熱定着ロール111及び加圧ロール112からなる熱定着装置110に通過させて記録紙107上に付着しているトナーを加熱定着ロール111の熱により軟化させつつ加圧して記録紙107上にトナー像を熱定着するように構成されている。
【0004】
この加熱定着ロール111は、芯金上にフッ素樹脂層を設けたロールによって構成されている。このような加熱定着ロール111は、離型性には優れているが、柔軟性及び弾力性には劣っているので、光沢を必要とするフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンター等の画像形成装置に対応することができない。従来、光沢画像を必要とするフルカラー複写機、レーザープリンター等の画像形成装置においては、赤(マゼンタ)、青(シアン)、黄(イエロー)、黒(ブラック)の4色のカラートナーが用いられているが、これらのカラートナーで構成されるカラー画像を定着する際には、これらのカラートナーを溶融状態で混合する必要があり、そのために、カラートナーを低融点化して溶融しやすくすると共に、複数種のカラートナーを、加熱定着ロール111の表面で包み込むようにして、溶融状態で均一に混合させることが必要になる。
【0005】
熱ロール定着法は、ヒートロール全体を所定温度に保持することができること、熱容量が大きいこと等の利点があるために、プリント速度の高速化には適している。しかし、熱ロール定着法は、ヒートロールを所定の温度まで加熱するのにかなりの時間が必要であるので、ヒートロール全体を加熱するのに、電力消費も大きくなるという問題がある。近年、画像形成装置の分野においては、省エネルギー化への活動が活発になっており、その立ち上がり時間の短縮が検討されている。画像形成装置の立ち上がり時間の短縮の技術の一つとして、ヒーターにより熱せられたフィルム状のエンドレスベルトを介して、記録紙上のトナーを加熱するベルト定着方法が提案されている。この定着方法では、薄いフィルム状の定着用ベルトを直接加熱することになり、電源投入後、加熱部は短時間で所定の温度に達するので、電源投入後の待ち時間をかなり減らすことができる。また、必要部分のみを加熱するので、電力消費も少ない利点がある。
【0006】
図4は、従来の定着無端ベルトの使用状態を示す説明図である。図4に示されているように、従来の画像形成装置においては、加熱ロール115、これと相対して設けられた一対の平行な加圧ロール116,116、並びに、加熱ロール115に接すると共に一対の平行な加圧ロール116,116により回転可能に設けられた定着無端ベルト114を有するベルト方式定着装置113が用いられている。
【0007】
最近の画像形成装置では、高画質が要求されるために、定着部材における基体、即ち、定着部材がロールである場合には、芯金、或いは、定着部材がシート又はベルトである場合には、金属又は耐熱性樹脂材料で形成されるシート又はベルト、の上に、離型性及び耐久性に優れたシリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴム材料で構成した弾性層を形成して、その弾性層の弾力性でトナーを加圧した際のニップ幅を大きくすることにより、トナーの非転写体(コピー紙)への転写効率を向上させることが行われている。
【0008】
さらに、最近の画像形成装置においては、前記したような定着部材の基体上に設けられた弾性層へのトナーの固着を防止するために、弾性層の表面にフッ素樹脂分散液を塗布して離型層を形成する技術が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような離型層を形成する技術では、フッ素樹脂分散液を弾性層上に塗布してフッ素樹脂塗布層を形成した後、フッ素樹脂塗布層の表面に平滑面を形成するために、フッ素樹脂塗布層を300℃以上の温度に加熱して焼成するが、シリコーンゴム等の耐熱性樹脂で構成される弾性層は、300℃以上の温度で脆くなって、その弾性が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、このような問題を解決するために、シリコーンゴム等の耐熱性樹脂の溶液にカーボンブラック、カーボンウィスカー、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化鉄等の耐熱性向上剤を添加して得た塗布液を基体上に塗布して弾性層を形成する技術が提案されたが、これらの耐熱性向上剤をシリコーンゴム等の耐熱性樹脂の溶液に添加すると、塗布液の粘度が上がるだけでなく、塗布液のチクソ性も大きくなるので、弾性層の表面に平滑均一面を形成しにくくなり、しかも、弾性層が硬くなって弾性が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
即ち、本発明は、耐熱性向上剤を用いなくても、耐熱性、弾性及び対トナー離型性に優れ、しかも、画像の光沢及び画像の均一性を向上させることができる積層シートを効率よく低コストで製造することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム等の耐熱性合成ゴムが空気中の酸素によって酸化されて劣化することに着目して、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム等の耐熱性合成ゴムで構成される弾性層の表面にテトラフルオロエチレン−ポリエチレンフルオロビニルエーレル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂分散液を塗布してフッ素系樹脂塗布層を形成した後、前記フッ素系樹脂塗布層を不活性ガスの雰囲気においてフッ素系樹脂の融点温度以上の温度で焼成して離型層を形成したところ、耐熱性、弾性及び対トナー離型性に優れ、しかも、画像の光沢及び画像の均一性を向上させた積層シートを効率よく低コストで製造することを見いだして本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、回転する円筒塗布成形型の内面にフッ素系樹脂分散液を塗布してフッ素系樹脂塗布層を形成し、前記フッ素系樹脂塗布層に耐熱性合成ゴムの溶液を塗布して弾性層を形成した後、前記フッ素系樹脂塗布層を不活性ガスの雰囲気においてフッ素系樹脂の融点温度以上の温度で焼成して離型層を形成し、次に、このフッ素系樹脂で構成される離型層を介して耐熱性合成ゴムで構成される弾性層が形成された円筒塗布成形型を回転させて、前記弾性層の表面にポリイミド酸溶液を塗布してポリアミド酸円筒膜を形成し、続いて、このポリアミド酸円筒膜を加熱硬化させてポリイミド円筒膜よりなる基体を形成することを特徴とする積層シートの製造方法である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記フッ素系樹脂が、テトラフルオロエチレン−ポリエチレンフルオロビニルエーレル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれるフッ素系樹脂であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記耐熱性合成ゴムが、シリコーンゴム、及び、フロロシリコーンゴムから選ばれる耐熱性合成ゴムであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された発明において、前記積層シートが、無端ベルトであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記積層シートが定着部材であることを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す遠心成形による積層シート(無端ベルト)の製造方法の断面説明図であり、そして、図2は、本発明の一実施の形態を示す遠心成形による積層シート(無端ベルト)の製造方法の部分拡大断面説明図である。
【0019】
本発明によれば、図1に示されているように、回転する円筒塗布成形型25の内面にフッ素系樹脂分散液を塗布してフッ素系樹脂塗布層(24)を形成し、前記フッ素系樹脂塗布層に耐熱性合成ゴムの溶液を塗布して弾性層23を形成した後、前記フッ素系樹脂塗布層(24)を不活性ガスの雰囲気においてフッ素系樹脂の融点温度以上の温度で焼成して離型層24を形成し、次に、このフッ素系樹脂で構成される離型層24を介して耐熱性合成ゴムで構成される弾性層23が形成された円筒塗布成形型25を回転させて、前記弾性層23の表面にポリイミド酸溶液を塗布してポリアミド酸円筒膜を形成し、続いて、このポリアミド酸円筒膜を加熱硬化させてポリイミド円筒膜よりなる基体(図示せず)を形成することにより積層体シートが製造される。前記不活性ガスの雰囲気は、両開口部を密封フランジ26,26で密封した円筒塗布成形型25内の空気を不活性ガスで置換することによりつくり出される。前記不活性ガスの置換は、例えば、不活性ガス導入パイプ27aを通じて不活性ガスを円筒塗布成形型25内に導入すると同時に、空気排出パイプ28aを通じて円筒塗布成形型25内の空気を排出することにより行われる。図1において、27b及び28bは、コックである。
【0020】
本発明の積層シートの製造方法によれば、1)離型層24と弾性層23とを一貫して積層成形することができるので生産効率を向上させることができ、2)酸素を排除した不活性ガスの雰囲気でフッ素系樹脂塗布層を加熱処理して焼結させるので弾性層23の劣化がなく、そのために、弾性を保った積層シートの成型が可能となり、そして、3)円筒塗布成形型の内部を閉空間とすることができるので、不活性ガスの雰囲気を円筒塗布成形型の内部だけにつくることが可能となり、そのために、不活性ガスの消費を少なくすることができる。
【0021】
前記フッ素系樹脂は、テトラフルオロエチレン−ポリエチレンフルオロビニルエーレル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれるフッ素系樹脂であるが、本発明の目的に反しない限り、それら以外のフッ素系樹脂であってもかまわない。
【0022】
前記耐熱性合成ゴムは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、及び、フロロシリコーンゴムから選ばれる耐熱性合成ゴムであるが、本発明の目的に反しない限り、それら以外の耐熱性合成ゴムであってもかまわない。
【0023】
前記不活性ガスは、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウム、ネオン及びアルゴンから選ばれる少なくとも1種の不活性ガスであるが、本発明の目的に反しない限り、それら以外の不活性ガスであってもかまわない。
【0024】
本発明においては、図2に示すように、弾性層33と離型層34との密着性を向上させるために耐熱性合成ゴムの溶液にフッ素系樹脂微粒子Fを分散させることができる。このように、耐熱性合成ゴムの溶液にフッ素系樹脂微粒子Fを分散させると、フッ素系樹脂微粒子Fが円筒塗布成形型の回転によって生じる遠心力で図2に示す矢印方向に移動してフッ素系樹脂塗布層側に集まってくるので、フッ素系樹脂塗布層をフッ素系樹脂の融点温度以上の温度に加熱して焼成すると、フッ素系樹脂塗布層を構成するフッ素系樹脂及び弾性層におけるフッ素系樹脂微粒子Fが溶融して融着するので、離型層34と弾性層33との密着性がいっそう向上する。
【0025】
本発明においては、円筒塗布成形型25が、その内表面に、離型層24を構成するフッ素系樹脂よりも高い融点を有するフッ素系樹脂で構成された薄膜(図示せず)を有する。このように、円筒塗布成形型25がその内表面に離型層24を構成するフッ素系樹脂よりも高い融点を有するフッ素系樹脂で構成された薄膜を有していると、フッ素系樹脂塗布層をフッ素系樹脂の融点温度以上の温度に加熱して焼成しても、円筒塗布成形型25への融着が起こらないので、円筒塗布成形型25にフッ素系樹脂塗布層を塗布したまま焼成することができ、また、円筒塗布成形型25を繰り返し使用することができる。
【0026】
本発明においては、離型層24を介して弾性層23が形成された円筒塗布成形型25を再び回転させて、前記弾性層23の表面にポリアミド酸溶液を塗布してポリアミド酸円筒膜を形成し、続いて、このポリアミド酸円筒膜を加熱硬化させてポリイミド円筒膜よりなる基体(図示せず)を形成するので、離型層24と弾性層23との積層形成に続いてポリイミド円筒膜よりなる基体を積層成形することができ、そのために、生産効率をいっそう向上させることができる。
【0027】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層シートの製造方法によって得られた積層シートは、例えば、図3,4に示されるような画像形成装置において定着部材として設けることができる。請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層シートの製造方法によれば、耐熱性向上剤を用いなくても、耐熱性、弾性及び対トナー離型性に優れ、しかも、画像の光沢及び画像の均一性を向上させた積層シートを効率よく低コストで製造することができる。
【0028】
(実施例1)
金属製の円筒体の内面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄膜を被覆した円筒塗布成形型を遠心装置に取り付けて回転させ、そして、この回転する円筒塗布成形型の内面にPFA分散液を20μm厚に塗布してフッ素系樹脂塗布層を形成した後、このフッ素系樹脂塗布層に2液反応型のシリコーンゴム液(東レ社製 DX35−2120)を塗布してシリコーンゴム塗布層を形成し、続いて、この円筒塗布成形型を加熱炉中にセットしてシリコーンゴム塗布層を150℃の温度に加熱して硬化させることにより200μm厚の弾性層を形成した。この弾性体を形成した円筒塗布成形型の両端の開口部を密封フランジ(図1参照)で密封した後、密封フランジに設けた不活性ガス導入パイプ(図1参照)を通じて窒素ガスを円筒塗布成形型内に導入すると同時に密封フランジに設けた空気排出パイプ(図1参照)を通じて円筒塗布成形型内の空気を排出して、円筒塗布成形型内を窒素ガス雰囲気に保持し、続いて、この円筒塗布成形型を加熱炉中にセットしてフッ素系樹脂塗布層を350℃の温度で焼成することにより離型層を形成した。次に、この円筒塗布成形型を再び遠心装置に取り付けて回転させながら、前記弾性層の表面にポリイミド酸溶液を塗布してポリアミド酸円筒膜を形成し、続いて、この円筒塗布成形型を加熱炉中にセットしてこのポリアミド酸円筒膜を150℃の温度に加熱して硬化させることによりポリイミド円筒膜よりなる基体を形成した。
このように製造された積層シート(無端ベルト)は、その離型層が平滑であり、しかも、その弾性層の弾性が充分に保持されたものであった。そして、前記積層シートの弾性層のJIS A硬度を測定したところ、JIS A硬度は、43であった。また、前記積層体をリコー社製複写機の定着ユニットに取り付けて画像品質及び積層シートの耐久性を評価したところ、次のとおりであった。
画像品質:画像均一性及び光沢性は良好であった。
積層シートの耐久性:3万枚複写しても離型層の剥離は生じなかった。
【0029】
(実施例2)
前記2液反応型のシリコーンゴム液にPFA微粒子を固形分比率10%になるように添加して分散したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層シート(無端ベルト)を製造した。
このように製造された積層シート(無端ベルト)は、その離型層が平滑であり、しかも、その弾性層の弾性が充分に保持されたものであった。そして、前記積層体の弾性層のJIS A硬度を測定したところ、JIS A硬度は、45であった。また、前記積層体をリコー社製複写機の定着ユニットに取り付けて画像品質及び積層シートの耐久性を評価したところ、次のとおりであった。
画像品質:画像均一性及び光沢性は良好であった。
積層シートの耐久性:5万枚複写しても離型層の剥離は生じなかった。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同様にして、予め成形された直径60mm、面長315mm及び厚み90μmのポリイミド円筒体よりなる基体の外表面に弾性層及びフッ素系樹脂塗布層を順次形成した。そして、このフッ素系樹脂塗布層を空気雰囲気に保持した加熱炉において350℃の温度で焼成して離型層を形成した。
このように製造された積層シート(無端ベルト)は、その弾性層が劣化して手で引っ張っても千切れるほどであり、また、その弾性層の弾性が著しく低下していた。そして、前記積層体の弾性層のJIS A硬度は測定できるレベルのものではなかった。また、画像品質及び積層シートの耐久性も評価できるレベルのものではなかった。
【0031】
(比較例2)
予め成形された直径60mm、面長315mm及び厚み90μmのポリイミド円筒体よりなる基体の外表面にプライマーを塗布し、このプライマーを塗布した基体に、酸化第2鉄微粉を固形分比率25%になるように添加して分散した、2液反応型のシリコーンゴム液(東レ社製 DX35−2120)を塗布してシリコーンゴム塗布層を形成した後、このシリコーンゴム塗布層を150℃の温度に加熱して硬化させることにより200μm厚の弾性層を形成した。そして、実施例1と同様にして、この弾性層の表面に離型層を形成した。
このように製造された積層シート(無端ベルト)は、その離型層が平滑であったが、その弾性層の弾性が明らかに低下していた。そして、前記積層体の弾性層のJIS A硬度を測定したところ、その弾性層のJIS A硬度は、65であった。また、前記積層シートをリコー社製複写機の定着ユニットに取り付けて画像品質及び積層シートの耐久性を評価したところ、次のとおりであった。
画像品質:厚紙で梨地ぼそつきが生じた。
積層シートの耐久性:3万枚複写しても離型層の剥離は生じなかった。
【0032】
(比較例3)
予め成形された直径60mm、面長315mm及び厚み90μmのポリイミド円筒体よりなる基体の外表面にプライマーを塗布し、このプライマーを塗布した基体に、カーボンウィスカーを固形分比率15%になるように添加して分散した、2液反応型のシリコーンゴム液(東レ社製 DX35−2120)を塗布してシリコーンゴム塗布層を形成した後、このシリコーンゴム塗布層を150℃の温度に加熱して硬化させることにより200μm厚の弾性層を形成した。そして、実施例1と同様にして、この弾性層の表面に離型層を形成した。
このように製造された積層シート(無端ベルト)は、その離型層が平滑であったが、その弾性層の弾性が明らかに低下していた。そして、前記積層シートの弾性層のJIS A硬度を測定したところ、その弾性層のJIS A硬度は、67であった。また、前記積層シートをリコー社製複写機の定着ユニットに取り付けて画像品質及び積層シートの耐久性を評価したところ、次のとおりであった。
画像品質:厚紙で梨地ぼそつきが生じた。
積層シートの耐久性:3万枚複写しても離型層の剥離は生じなかった。
【0033】
【発明の効果】
請求項1〜4に記載された発明によれば、1)耐熱性向上剤を用いなくても、耐熱性、 弾性及び対トナー離型性に優れ、しかも、画像の光沢及び画像の均一性を向上させることができる積層シート(無端ベルト)を効率よく低コストで製造することができること、2)離型層と弾性層とを一貫して積層成形することができるので生産効率を向上させることができ、しかも、酸素を排除した不活性ガスの雰囲気でフッ素系樹脂塗布層を加熱処理して焼結させるので弾性層の劣化がなく、そのために、弾性を保った積層シート(無端ベルト)の成型が可能となること、及び、3)前記離型層を介して弾性層が形成された円筒塗布成形型を回転させて、前記弾性層の表面にポリイミド酸溶液を塗布してポリアミド酸円筒膜を形成し、続いて、このポリアミド酸円筒膜を加熱硬化させてポリイミド円筒膜よりなる基体を形成するので、離型層と弾性層との積層形成に続いて基体を積層成形することができ、そのために、生産効率をいっそう向上させることができること、といった顕著な効果を奏する。
【0034】
請求項5に記載された発明によれば、前記積層シートが定着部材であるので、耐熱性向上剤を用いなくても、耐熱性、弾性及び対トナー離型性に優れ、しかも、画像の光沢及び画像の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示す遠心成形による積層シート(無端ベルト)の製造方法の断面説明図である。
【図2】 本発明の一実施の形態を示す遠心成形による積層シート(無端ベルト)積層体の製造方法の部分拡大断面説明図である。
【図3】 従来の電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図4】 従来の定着無端ベルトの使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
21 積層シート(無端ベルト)
23 弾性層
24 離型層
25 円筒塗布成形型
26,26 密封フランジ
27a 不活性ガス導入パイプ
28a 空気排出パイプ
27b コック
28b コック
31 積層シート(無端ベルト)
33 弾性層
34 離型層
F フッ素系樹脂微粒子
Claims (5)
- 回転する円筒塗布成形型の内面にフッ素系樹脂分散液を塗布してフッ素系樹脂塗布層を形成し、前記フッ素系樹脂塗布層に耐熱性合成ゴムの溶液を塗布して弾性層を形成した後、前記フッ素系樹脂塗布層を不活性ガスの雰囲気においてフッ素系樹脂の融点温度以上の温度で焼成して離型層を形成し、次に、このフッ素系樹脂で構成される離型層を介して耐熱性合成ゴムで構成される弾性層が形成された円筒塗布成形型を回転させて、前記弾性層の表面にポリイミド酸溶液を塗布してポリアミド酸円筒膜を形成し、続いて、このポリアミド酸円筒膜を加熱硬化させてポリイミド円筒膜よりなる基体を形成することを特徴とする積層シートの製造方法。
- 前記フッ素系樹脂が、テトラフルオロエチレン−ポリエチレンフルオロビニルエーレル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれるフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
- 前記耐熱性合成ゴムが、シリコーンゴム、及び、フロロシリコーンゴムから選ばれる耐熱性合成ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
- 前記積層シートが、無端ベルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層シートの製造方法。
- 前記積層シートが定着部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層シートの製造方法。
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