JP5097937B2 - 複合管状物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は電子写真方式の複写機・レーザービームプリンタ等の画像形成装置に定着ベルトとして使用される複合管状物およびその製造方法に関するものであり、特に、転写紙など転写材上に転写されたトナー像を加熱により定着するベルト定着方式に用いられる複合管状物およびその製造方法に関するものである。
電子写真技術を利用した複写機・レーザービームプリンタ・ファクシミリーなどの画像形成装置では、印刷や複写の最終段階において紙をはじめとするシート状転写材上のトナー像を加熱溶融して転写紙上に定着させている。画像を定着させる手段としては熱ロール定着方式が広く用いられている。ちなみに、熱ロール定着方式とは、加熱ヒーターを有する定着ロールと、これに圧接した加圧ロールとの間に、トナー像が形成されている複写紙を順次送り込みながらトナーを加熱溶融させ複写紙上に定着させる方式である。
しかし、熱ロール定着方式には、電源を投入してから定着ロールが所定の温度に達するまでの待機時間が長く、その予熱に消費される電力量も少なくないという問題がある。
このような問題を解決するために、近年、ベルト定着方式の開発が活発に行われ、成功を収めている。ベルト定着方式では、例えば、図1に示すように、ポリイミド樹脂あるいはステンレス等の管状耐熱性基材の外面にフッ素樹脂などの離型層が形成された2層構造の定着ベルトの内側にベルトガイドおよびセラミックヒーターを配置し、セラミックヒーターに定着ベルトを介して加圧ロールを圧接させて、定着ベルトと加圧ロールとの間に、トナー像が形成されている複写紙7を順次送り込みながらトナーを加熱溶融させて複写紙上に熱定着させている。
このようなベルト定着方式に使用される定着ベルトには、トナーの溶融温度に耐える耐熱性と、回転、圧着、耐摩耗性、引張り強度など、繰返し使用に耐えうる機械的特性とが要求される。例えば、特許3054010号公報には、このような定着ベルトの代表例として、ポリイミド樹脂製管状物の外面にフッ素樹脂層を形成した定着ベルトが開示されている。また、特開平6−222695号公報には、金属製エンドレスベルトの内面に熱伝導性フィラーを含有するポリイミド組成物をコーティングし、外面にはフッ素樹脂層をコーティングした定着ベルトが開示されている。これらの特許文献に開示されている定着ベルトは、モノクロ画像のプリンターや複写機に最も適した構成である。
また、例えば、特開2002−268423号公報には、フルカラーの複写機やレーザープリンターの定着機に適した定着ベルトとして、耐熱性基材層の外面に弾性層および離型層が順次形成された3層構造の定着ベルトが開示されている。このような定着ベルトは、柔軟性と離型性を兼ね備えており、フルカラー定着ベルトとして理想的な構造を有していると言える。
しかし、これらの定着ベルトには、製造時に離型層(フッ素樹脂層)にマッドクラックが入りやすいという問題がある。離型層にマッドクラックが入ると、フッ素樹脂層の表面粗度が粗くなり、定着画像の画質を低下させることになる。特に、カラートナー定着用の3層構造定着ベルトでは、製造時に、未焼成のフッ素樹脂層をその融点以上の温度で焼成する際に、その下層のシリコーンゴムなどの弾性層が焼成温度の影響を受け熱的なダメージを受けやすい。したがって、弾性層の熱劣化を防止するために、少しでも焼成温度(融点)の低いフッ素樹脂を選択することになり、近年ではPTFE樹脂(融点327℃)に代わってPFA樹脂(融点315℃以下)の使用が検討されている。しかし、PFA樹脂単体の分散液(ディスパージョン)においては、厚くコーティングするとマッドクラックが入りやすく、所定の厚みを確保できない問題がある。また、弾性層の熱的ダメージを防止するために、フッ素樹脂の焼成温度を低く抑えようとすると、フッ素樹脂が完全に溶融しきれなく、被膜表面にクラックが生じたり、平滑な表面性が得られないという問題点もあった。
そして、このような問題を解決する方法として、フッ素樹脂表面に平滑な表面体を接触させながらフッ素樹脂を焼成した後にその表面体を除去して急冷する方法(例えば、特許文献1参照)や、円筒(基層管状物)または円柱基材上(定着ロール)にフッ素樹脂粉体をコーティングした後にその円筒基材や円柱基材をその基材の外径より僅かに大きい内径をもつ円筒状の面転写部材に挿入し、フッ素樹脂を加圧した状態になるように(円筒基材や円柱基材と面転写部材との熱膨張率の差を利用する)面転写部材の外側から赤外線ヒーターで加熱する方法(例えば、特許文献2参照)、フッ素樹脂と造膜助剤を混合した樹脂水性分散組成物をフッ素樹脂液(フッ素樹脂ディスパージョン)として採用する方法(例えば、特許文献3参照)などがが提案されている。
特開2003−098881号公報 特開平11−005059号公報 特開2003−041126号公報
しかし、前者2つの方法では加工が煩雑であり、3つ目の方法のみでは十分な効果を得ることが難しい場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、離型層にマッドクラックがなく平滑であり、高い画質の画像が得られ、耐久性の優れた複合管状物とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、未焼成フッ素樹脂をコーティングした管状物の焼成工程において、フッ素樹脂を焼成するための昇温速度とマッドクラックの発生状態、および弾性層への熱的ダメージの影響について鋭意研究した結果、フッ素樹脂の焼成時に管状物のみを中空状態で直接的に加熱することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
第1発明に係る複合管状物の製造方法は、コーティング工程および焼成工程を備える。コーティング工程では、管状物の外面に未焼成フッ素樹脂液がコーティングされて未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が作製される。なお、ここで、管状物は基層管状物のみであっても基層管状物の上に弾性層が形成されたものであってもかまわない。焼成工程では、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が中空の状態でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成される。なお、焼成工程では未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が10℃/秒以上50℃/秒以下の昇温速度でフッ素樹脂の融点まで昇温させられるのが好ましい。なお、ここにいう「中空の状態」とは、管状物の内部に金型や支持体などが存在しない状態を意味する。
第2発明に係る複合管状物の製造方法は、第1発明に係る複合管状物の製造方法であって、管状物は、基層管状物と、基層管状物の外面に設けられる弾性層とから成る。なお、弾性層は、基層管状物の外面に弾性層前駆体を塗布する塗布工程と、弾性層前駆体を加硫して弾性層を形成する加硫工程とを経て形成される。
第3発明に係る複合管状物の製造方法は、第1発明または第2発明に係る複合管状物の製造方法であって、未焼成フッ素樹脂液には、成膜剤が含まれる。
第4発明に係る複合管状物の製造方法は、第3発明に係る複合管状物の製造方法であって、未焼成フッ素樹脂液は、フッ素樹脂の固形分濃度が30重量%〜60重量%であって、粘度が200±100センチポイズである。
第5発明に係る複合管状物の製造方法は、第3発明または第4発明に係る複合管状物の製造方法であって、未焼成フッ素樹脂液中の成膜剤の混合量は、2重量%〜20重量%の範囲である。
第6発明に係る複合管状物の製造方法は、第3発明から第5発明のいずれかに係る複合管状物の製造方法であって、成膜剤は、水溶性アクリル系樹脂である。
第7発明に係る複合管状物の製造方法は、第1発明から第6発明のいずれかに係る複合管状物の製造方法であって、焼成工程では、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が、フッ素樹脂の融点よりも少なくとも30℃〜150℃高い温度で焼成される。
第8発明に係る複合管状物は、管状物の外面に未焼成フッ素樹脂液をコーティングして未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を作製するコーティング工程と、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を中空の状態でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成する焼成工程とを備える複合管状物の製造方法によって得られる。
本発明によれば、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が中空の状態でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成されることにより、フッ素樹脂表面にマッドクラックの発生がなく、平滑で離型性の優れた複合管状物を提供することができる。また、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を中空状態(例えば、管状物の非製品部分を保持し完成品になる部分は管状物の昇温を妨げない中空の状態)で焼成することにより、フッ素樹脂は短時間で焼成温度まで到達し、極めて短時間で焼成できる。このため、管状物に弾性層が形成されている場合は、弾性層への熱的ダメージを低減することができる。また、焼成が完了した複合管状を焼成炉から取り出したときも、中空状態であるため冷却される速度も早く特別に冷却工程を付加させなくても瞬間的に冷却され、フッ素樹脂特有の結晶化が進む前に急冷されるため極めて平滑で透明な被膜を得ることができる。このため、残留トナーによる画像の汚れがなく、耐久性に優れ高寿命の複合管状物を提供できる。
本発明の実施の形態を詳細に説明する。図2は本発明の一実施形態における複合管状物の断面図であり、基層管状物11の外面に弾性層12と離型層13がこの順番で構成されている。なお、本発明においては、複合管状物は、基層管状物と離型層13とから構成されていてもかまわない。本発明において離型層の表面粗度(中心線平均粗さ:Ra)は1.0μm以下であることが好ましい。離型層の表面粗度は定着画像に大きな影響を及ぼす特性であるが、表面粗度Raが1.0μm以下であれば、紙粉やトナーの付着がなく鮮明な画像を得ることができる。本説明書で規定する物性の測定方法は、実施例に記載するとおりである。本発明において基層管状物がポリイミド樹脂、またはステンレス、ニッケル等の金属材料のいずれか1つ、またはこれらの積層体で構成される管状物であることが好ましい。いずれの基材も薄膜化、およびシームレス化が可能であり、定着ベルトとして必要な耐熱性、および機械的特性に優れているからである。ポリイミド樹脂管状物は一例として特許3054010号公報に記載の方法で製造することができ、ポリイミド樹脂管状物の作製から、最終のフッ素樹脂焼成工程まで一貫して製作することができるため好ましい基層材料である。ポリイミド樹脂基層の厚みは30〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜70μmである。ポリイミド樹脂基層の厚みが30μm以下の場合は、管状物が座屈するなど十分な強度が得られなく、また、100μmを超えると熱伝導性が低下し、高速定着に対応できなくなる。
本発明の複合管状物の基層となるポリイミド樹脂管状物の作製には、一例としてポリイミド前駆体溶液が用いられる。ポリイミド前駆体溶液は例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン成分を有機極性溶媒中で、反応させることによって得ることができる。このような芳香族テトラカルボン酸の代表例としては次のようなものが上げられる。例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、あるいはこれらのテトラカルボン酸エステル、又は上記各テトラカルボン酸類の混合物等を例示することができる。
一方、芳香族ジアミン成分としては特に制限はなく、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメトキシベンチジン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどが挙げられる。
これら芳香族テトラカルボン酸二無水物、および芳香族ジアミンは単独で、あるいは混合して使用することもできる。また、ポリイミド前駆体溶液まで完成させてそれらの前駆体を混合して使用することもできる。
本発明では、ポリイミド前駆体が有機極性溶媒に溶解している組成物(原料)を用い管状物を作製する。有機極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、フェノール、o−,m−,p−クレゾール、などが挙げられる。これらの有機極性溶媒にはキシレン、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類(ハイドロカーボン)などを混合することもできる。また、ポリイミド前駆体溶液の中には窒化ホウ素、金属粉末、カーボンファイバーなどの熱伝導性を改良するための材料、あるいは帯電を防止するためのカーボンブラックなどを混合しても良い。
また、金属材料からなる管状物は、ステンレスやニッケル、各種の合金などから成っているのが好ましく、一例として特許3406293号広報などに開示されている方法で製造したものを使用することができる。また電鋳方式で作製した金属製シームレス管状物なども使用することができる。金属製管状物の厚みも30μm〜50μmのもが好ましく耐久性や管状物としての加工性の面からステンレス製管状物がより好ましい。
またポリイミド樹脂からなる基層管状物では、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを有機極性溶媒中で反応して得られるポリイミド前駆体組成物を、イミド転化した管状物であって、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)成分を少なくとも80モル%以上含む管状物であることが好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)を反応して得られるポリイミド前駆体はイミド転化によって剛直な特性を持ち、耐熱性が高く好ましい材料である。また、BPDA/PPD成分のみからなる基層管状物は、上述したように非常に剛直な材料であるため、基層管状物に伸びなどの特性を付与する場合には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)などの比較的柔軟な特性を持つ成分を混合することができる。本発明の製造方法においては、未焼成フッ素樹脂をコーティングした後、管状物を中空の状態(例えば、管状物の非製品部分を保持し完成品になる部分は管状物の昇温を妨げない中空の状態)でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成するため、耐熱性の低いポリイミド樹脂では収縮あるいは膨張などの熱変形が発生することになるが、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)成分を少なくとも80モル%以上含有することにより、熱変形がなく、柔軟性も持ち合わせた基層管状物を製造できる。
本発明において弾性層はシリコーンゴム、フッ素ゴムのいずれか一つ、またはこれらの混合物であることが耐熱性、耐久性あるいはゴム硬度の調整などの面から好ましい。シリコーンゴムは耐熱性、耐久性あるいは加工性の面からもより好ましい弾性体材料であって、シリコーンゴムとしては例えば市販されている室温硬化性の液状シリコーンゴム(シリコーンRTV)などが利用可能である。また、この弾性層の中には熱伝導性を改良するために酸化鉄や、酸化亜鉛、カーボンファイバー等の充填剤を混合することが好ましい。弾性層のゴム硬度はJIS A硬度で3度〜50度の範囲が好ましく、5度〜40度の範囲がカラートナーを包み込む効果から最も好ましい。弾性層は熱定着時に溶融したカラートナー像を包み込み、混色させるための柔らかさが必要であり、硬度の低い方が柔らかさの面では好ましいが、3度以下になるとシリコーンゴム中の低分子成分が、離型層や基層管状物との間の接着性を阻害することになり好ましくない。また、弾性層の硬度が50度を超えると、柔軟性が低下し良質な画像を得ることができなく好ましくない。シリコーンゴム層の厚みは30μm以上1000μm以下であることが好ましい。より好ましくはゴム硬度の特性と相乗してトナー像を包み込み、混色する効果、および熱伝導性の面から100〜300μmの範囲が最も好ましい。
基層管状物の外面に液状シリコーンゴムを塗布し加硫する方法としては、特許3256530号公報や、特許3051085号公報、特開2004−255828号公報などで開示されている方法を採用することができる。
本発明においては離型層がフッ素樹脂であってポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)から選ばれる少なくとも一つ、又はこれらの混合物であることが離型性、耐熱性に優れ好ましい。より好ましい離型性材料はPFA樹脂である。PFA樹脂は熱可塑性フッ素樹脂であり、またフッ素樹脂の中では比較的硬い樹脂であるため、紙詰まりなどのトラブルに対しても、傷の発生が少なく好ましい材料である。フッ素樹脂層にはオフセット防止のためにカーボン粉末や帯電防止剤あるいは耐摩耗性の向上ために酸化チタン粉末など、さらに熱伝導性を改善するためにカーボンファイバー、窒化ホウ素粉末などを離型性に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
また、PFA樹脂の融点は250℃〜315℃の範囲であることが好ましい。プリンターや複写機など画像形成装置の定着温度は200℃から220℃の範囲のものが多く、PFAの融点が範囲であれば熱劣化もなく使用できる。また、この範囲であればシリコーンゴム弾性層の外面に未焼成のPFA樹脂をコーティングし、融点以上の温度で焼成する工程において弾性層を熱劣化させることがなく好ましい。PFA樹脂は、250℃〜315℃に融点を持ち、融解時の流動性が高く、固化後の表面が平滑性であり、かつシリコーンゴム層の弾力性や屈曲性などにも追従できて好ましい。このようなPFA樹脂としては三井・デュポンフロロケミカル(株)の(テフロン(登録商標)PFAHP Plus#920〜#950)などを挙げることができる。また、離型層の厚みは10〜50μmの範囲が好ましい。10μm以下の場合は十分な耐久性が得られなく、50μmを超えると熱伝導性が低下することや、被膜が硬くなり弾性層の柔らかさを生かすことができにくく、画質の低下を招く。あるいはマッドクラックが入りやすくなる。より好ましくは15μm〜30μmの範囲である。弾性層の外面に未焼成フッ素樹脂をコーティングする方法は、スプレー法、フローコート法、ロールコート法などにより実施できるが、浸漬法(ディッピング法)であるとコーティング厚みの均一化、および材料を効率よく使用できる、および連続ライン化が簡単であるなどの点から本発明に適したより好ましいコーティング方法である。
本発明の複合管状物は、管状物の外面に未焼成フッ素樹脂液をコーティングして未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を作製するコーティング工程と、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を中空の状態でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成する焼成工程とを経て製造される。ベルト定着方式に使用される定着ベルトは内径が15mm〜100mmの範囲のベルトが一般的であり、特に薄膜であるため、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を焼成する場合には、特開平10−111613号公報の実施例に記載されるように、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物の内面に金型あるいは支持体などを挿入した状態で焼成する方法が用いられている。しかし、芯体を挿入した状態で未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を焼成する場合、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物内面が芯体に密着しているため、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が焼成炉に入れられてからの昇温状態が芯体の昇温速度に依存し、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が緩やかに加熱されることになる。このように緩やかな昇温条件は後述するようにフッ素樹脂が融解し融着する前に成膜剤が分解していくことになりクラックが入りやすくなる。
また、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物に金型を挿入した状態でフッ素樹脂の焼成を行う場合、金型の温度上昇とともに未焼成フッ素樹脂コーティング管状物表面のフッ素樹脂層も加熱され焼成されていくが、この過程で金型は温度の上昇とともに熱膨張し、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を押し広げる作用が伴うため、フッ素樹脂層はクラックが入りやすい状態で焼成されることになり、結果として細かなクラックがフッ素樹脂層内部に発生しやすくなる。したがって、フッ素樹脂層の焼成中は、金型や支持体などの熱膨張の影響を受けない(管状物の内径を拡大させない)中空状態で焼成することが最良である。
また、金型などを挿入した状態で焼成した未焼成フッ素樹脂コーティング管状物は焼成炉から取り出したときに金型が持っている熱量によりフッ素樹脂コーティング管状物が徐々に冷却されることになるために、フッ素樹脂の結晶化が進み、フッ素樹脂層表面は光沢および透明性が失われて曇ったような状態になり、表面粗度も粗くなり紙汚れやオフセットなどが発生しやすい状態になり、結果として画質の低下を招くおそれが生じる。焼成後にフッ素樹脂コーティング管状物を急冷するのはこのような問題を解決するためである(例えば、特許文献1参照)。しかし、本発明のように未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を中空の状態で実質的に直接加熱し焼成することにより、成膜剤が加熱分解する前にフッ素樹脂層が融解し融着するためマッドクラックの発生を防止できる。さらに、焼成後炉内から取出した場合、内部には金型や支持体がなく管状物のみであるため、特別な冷却工程を必要とせず瞬間的に全面が均一に冷却され、透明性の高い平滑な被膜を得ることができる。中空の状態で焼成する具体的な方法としては、例えば、管状物の非製品部分を保持し完成品になる部分は管状物の昇温を妨げない中空の状態で加熱する方法などが挙げられ、管状物を直接的に昇温させていくときに昇温の妨げにならなければ上記方法に限定されない。
また、本発明の製造方法において、焼成工程では、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物がフッ素樹脂の融点よりも少なくとも30℃〜150℃高い温度で焼成されるのが好ましい。また、このとき、未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が10℃/秒以上50℃/秒以下の昇温速度でフッ素樹脂の融点まで昇温させられるのが好ましい。ここで、フッ素樹脂のコーティングと焼成方法について詳細に説明する。未焼成フッ素樹脂のコーティングは、基層管状物の外面に液状ゴムなどの弾性層を形成した2層構造の中間製品管状物を、所定の粘度に調整したフッ素樹脂液中に浸漬(ディッピングコート)し、所定速度で引き上げることによって生成される。この処理により、2層構造の中間製品管状物には、一定の厚みの未焼成フッ素樹脂層が形成される。フッ素樹脂被膜の厚みは前述したように15〜30μmの範囲がこの好ましい。このような厚みのフッ素樹脂被膜を形成するためには、水溶性アクリル樹脂や水溶性ウレタン系樹脂などの成膜剤を混合したフッ素樹脂液を使用するのが好ましい。本発明ではマッドクラックを防止するためにフッ素樹脂ディスパージョン中に成膜剤を、2重量%から20重量%の範囲で混合することが好ましい。より好ましい混合量は、3重量%から15重量%の範囲である。成膜剤としては、水溶性アクリル系樹脂、シリコーン水分散液、エチレングリコールなどが採用可能であるが、特に、水溶性アクリル系樹脂がマッドクラックの防止に対して好ましい。アクリル樹脂としては特に限定がなく、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリオキシエチレンアクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ポリオキシエチレンメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどを重合して得られる樹脂が挙げられる。また、成膜剤は、熱分解温度が150℃〜280℃であるものが好ましい。また、フッ素樹脂ディスパージョンには、その焼成温度で成膜剤を分解除去するための、セリウム有機酸やオレイン酸などの触媒を混合することもできる。
本発明の製造方法の焼成工程では、フッ素樹脂の融点に達してから1〜10分間加熱することが好ましい。このようにすることで、フッ素樹脂が融点を超え十分に溶融し、平滑な表面を得ることができるからである。また、焼成温度はフッ素樹脂の融点より30℃〜150℃高い温度に設定することが好ましい。焼成温度を高く設定すると昇温速度はおのずから速くなるが、中空で焼成するためポリイミド基層管状物の熱変形や、シリコーンゴムの熱劣化などが発生するおそれがあるからである。より好ましくはフッ素樹脂の融点を越えて40℃以上120℃以下の温度範囲である。
(実施例)
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
本発明の複合管状物の表面粗度(Ra)(JIS−B0601)は、全長233mmの管状物を長さ方向に3等分し、各ゾーンの周方向で任意の3点を測定し、合計9点の測定値を平均することにより求めた。なお、測定器としては小阪研究所製 Sorfcorder ES−3Hを用いた。また、融点等の熱分析には、TG−DTAやDSCを用いた。TG−DTAとしてはDTG−60(島津製作所製)を、DSCとしてはDSC−60(島津製作所製)を使用した。
(1)ポリイミド管状物の製作
外径18mm、長さ500mmの金型を用意し、金型の外面を研磨加工した後にその金型に酸化珪素コーティング剤をディッピング法によりコーティングし、加熱して焼き付け、その金型を酸化珪素膜で被覆した。JIS−B0601に基づいて表面粗度測定を行った結果、この金型の表面粗度(Rz)は0.5μmであった。次いで、1200ポイズのポリイミド前駆体溶液((株)IST社製商品名“RC5063PyreMLワニス”)を選択し、その溶液中に窒化ホウ素(BN)(三井化学社製)をポリイミド前駆体溶液の固形分に対して30重量%となるように均一に混合した。次いで、そのポリイミド前駆体溶液の中に金型を400mm部分まで浸漬してポリイミド前駆体溶液を塗布した後、内径19mmのリング状外金型(ダイス)を金型の上部から挿入し、自重で走行させて金型の表面に500μmの厚みのポリイミド前駆体溶液を塗布した。そして、その金型を温度120℃のオーブンに入れ、60分間乾燥後、200℃の温度まで40分間で昇温させ、同温度で20分間保持した。そして、200℃から400℃まで30分間で昇温し、400℃で20分間保持した。その後、オーブンから取出し、常温まで冷却した。ポリイミド管状物は、厚みが50μm、内径が18mmであった。
(2)ゴム弾性体の成形および加硫
ポリイミド管状物の外面にプライマー(GE東芝シリコーン社製商品名“XP81−405”)を均一に刷毛塗りし、常温で30分乾燥した後に150℃の温度で15分乾燥させた。その後、液状シリコーンゴム“XE15-B9055”(GE東芝シリコーン社製商品名)を塗布した後、内径18.5mmのリング状外金型(ダイス)をポリイミド管状物の上部から挿入し、自重で走行させてポリイミド管状物の表面に所定厚みの液状シリコーンゴムを塗布した。そして、これを150℃の温度で15分間一次加硫した後に200℃の温度で4時間二次加硫を行い、ポリイミド管状物の外面に200μm厚みのシリコーンゴム層が形成された2層構造の管状物を得た。また、同一条件で作製した厚み6mmのテストピースのゴム硬度は32度であった。
(3)ゴム弾性体の表面処理
次いで、コロナ放電表面改質装置(信光電気計装社製)を用いて、2層構造の管状物のシリコーンゴム表面の改質処理を行った後、シリコーンゴム表面に液状プライマー(三井デュポンフロロケミカル社製PR−990CL)を2〜3μmの厚みになるように塗布し、室温で15分乾燥した。
(4)フッ素樹脂コーティング
フッ素樹脂として、固形分濃度43%、粘度200センチポイズに調整したPFA樹脂ディスパーション(デュポン社製商品名PFA920HP Plus:EN−560CL)を選択し、その液中に2層構造管状物を浸漬し、最終の厚さが20μmになるようにその2層構造管状物を所定の速度で引き上げてフッ素樹脂をコーティングし、室温で20分乾燥した。その後、金型から管状物を取り外し、その管状物のポリイミド基層部分(図3のポリイミド層11の部分)を保持しながら320℃の温度に設定したオーブンに挿入し、中空状態で管状物を実質的に直接加熱した。そして、挿入から10分後にオーブンから取り出し、目的とする複合管状物を得た。なお、EN−560CLディスパージョンには、成膜剤としてDSC分析による分解開始温度が242℃の水溶性アクリル樹脂を全量に対して10重量%となるように添加した。
この複合管状物は、内径が18mm、長さが310mm、ポリイミド樹脂層が50μm、シリコーンゴム層が200μm、PFA樹脂層が20μmであり、総厚みが270μmであった。また、この複合管状物の中心線平均表面粗さ(Ra)は0.2μmであった。また、表面のPFA樹脂層は、透明性が高く、平滑性、離型性に優れていた。また、DSC熱分析によるPFA樹脂の融解吸熱ピークは268.7℃であった。また、フッ素樹脂がコーティングされた2層構造管状物を320℃のオーブンに挿入した時点からフッ素樹脂の融点268℃に達するまでの時間は15秒であり、昇温速度は17.8℃/秒であった。この複合管状物を、図1に示す定着機構をもつタンデム型カラープリンタに装着し、4枚/分の速度で定着を行った結果、紙汚れやオフセットのない良質な画像が得られた。
厚み40μm、内径30mm、長さ350mmのステンレス製管状物((株)遠藤製作所社製)を用意した。ステンレス製管状物の内面に空隙ができないようにステンレス中空芯体をステンレス製管状物に挿入した。その後、ステンレス製管状物の表面をメッシュナンバー#230の酸化アルミナ砥粒を用いて圧力4kg/cm2で3分間ブラスト処理した。そして、ステンレス製管状物を洗浄した後、ステンレス製管状物の外面にプライマー(GE東芝シリコーン社製商品名:XP−81−405)をはけ塗りし、常温で30分間、続いて150℃の温度で15分間乾燥した。液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製商品名:XE15−B7354)A、B液をそれぞれ等重量部混合した後に、その液状シリコーンゴムをステンレス製管状物の表面に塗布した。そして、内径が30.5mmの金属ダイスをステンレス中空芯体の上部より走行させ、ステンレス製管状物の外面に250μm厚みの液状シリコーンゴム層を形成した。その後、120℃の温度で20分間一次加硫し、さらに200℃の温度で4時間二次加硫を行った結果、250μm厚みのシリコーンゴム層が形成された2層構造のステンレス製管状物を得た。また、同条件で作製した厚み6mmのテストピースのゴム硬度は31度であった。
次いで、実施例1と同じ条件でシリコーンゴム表面をコロナ放電処理した後に2層構造のステンレス製管状物にプライマー(三井デュポンフロロケミカル社製:PR−990CL)を塗布し、室温で15分間乾燥した。続いて、粘度200センチポイズに調整したPFAディスパーション(デュポン社製商品名PFA920HP Plus:EN−560CL)の中に2層構造のステンレス製管状物を浸漬した後に、最終の厚さが20μmになるように所定の速度で引き上げた。その後、常温で30分乾燥し、ステンレス中空芯体から管状物を取り外し、中空の状態で350℃のオーブンに入れ、10分間焼成して目的とする複合管状物を得た。この複合管状物は、内径が30mm、長さが350mmであり、総厚みが310μmであった。また、この複合管状物の表面粗度(Ra)は0.15μmであり平滑性に優れていた。また、フッ素樹脂層は、透明であった。また、未焼成管状物を350℃のオーブンに挿入した後、フッ素樹脂の融点268℃に達するまでの時間は12秒であり、昇温速度は22.3℃/秒であった。また、この複合管状物を、図1に示す定着機構をもつタンデム型カラープリンタに装着し、8枚/分の速度で通紙定着を行った結果、良好な画像が得られた。
実施例1と同様の条件でポリイミド管状物とシリコーンゴムからなる2層構造の管状物を作製した。離型層のフッ素樹脂として、固形分濃度45%、粘度220センチポイズに調整したPFA樹脂ディスパーション(デュポン社製商品名“PFA945HP Plus”)を選択し、その液中に2層構造管状物を浸漬した後に最終の厚さが22μmとなるように所定の速度で引き上げて、室温で20分乾燥した。なお、フッ素樹脂ディスパージョンのDSC熱分析による融解吸熱ピークは298℃であった。また、PFAディスパージョンには、分解開始温度が242℃の水溶性アクリル樹脂を全量に対して8重量%混合した。
その後、金型から管状物を取り外し、その管状物のポリイミド基層部分(図3のポリイミド層11の部分)を保持しながら340℃の温度に設定したオーブンに挿入し、中空状態で管状物を実質的に直接加熱した。そして、挿入から12分後にオーブンから取り出し、目的とする複合管状物を得た。なお、未焼成管状物を340℃のオーブンに挿入した後、フッ素樹脂の融点298℃に達するまでの時間は20秒であり、昇温速度は14.9℃/秒であった。また、この複合管状物は、内径が18mm、ポリイミド樹脂層が52μm、シリコーンゴム層が198μm、フッ素樹脂層が20μmであり、総厚みが270μmであった。また、中心線平均粗さ(Ra)は0.32μmであった。また、フッ素樹脂層は、透明性が高く、平滑性、離型性に優れていた。そして、この複合管状物を、タンデム型カラープリンタの定着機に装着し4枚/分の速度で定着を行った結果、紙汚れやオフセットのない良質な画像が得られた。
実施例1の(1)ポリイミド樹脂管状物の作製においてBPDAとPPDからなるポリイミド前駆体溶液((株)IST社製商品名“RC5063PyreMLワニス”)とPMDAとODAからなるポリイミド前駆体溶液((株)IST社製商品名“RC5019PyreMLワニス”)を9:1の重量比率で混合し、さらに窒化ホウ素(BN)(三井化学社製)を混合ポリイミド前駆体の固形分濃度に対して28%添加したポリイミド前駆体溶液を用いた以外は、実施例1と同様の条件で複合管状物を作製した。この2種類のポリイミド前駆体溶液を混合した管状物においても、実施例1と同様に中空状態でフッ素樹脂の焼成を行ったが、ポリイミド樹脂基層管状物の熱収縮や寸法変化のない複合管状物を得た。そして、この複合管状物を、タンデム型カラープリンタの定着機に装着し4枚/分の速度で定着を行った結果、紙汚れやオフセットのない良質な画像が得られた。
(1)ポリイミド管状物の製作
外径24mm、長さ500mmの金型を用意し、金型の外面を研磨加工した後にその金型に酸化珪素コーティング剤をディッピング法によりコーティングし、加熱して焼き付け、その金型を酸化珪素膜で被覆した。JIS−B0601に基づいて表面粗度測定を行った結果、この金型の表面粗度は(Rz)は0.5μmであった。次いで、1100ポイズのポリイミド前駆体溶液((株)IST社製商品名“RC5063PyreMLワニス”)を選択し、その溶液中に窒化ホウ素(BN)(三井化学社製)をポリイミド前駆体溶液の固形分に対して25重量%となるように均一に混合した。次いで、そのポリイミド前駆体溶液の中に金型を400mm部分まで浸漬してポリイミド前駆体溶液を塗布した後、内径25.5mmのリング状外金型(ダイス)を金型の上部から挿入し、自重で走行させて金型の表面に750μmの厚みのポリイミド前駆体溶液を塗布した。そして、その金型を温度120℃のオーブンに入れ、60分間乾燥後、200℃の温度まで40分間で昇温させ、同温度で20分間保持した。そして、200℃から400℃まで30分間で昇温し、400℃で20分間保持した。その後、オーブンから取出し、常温まで冷却した。ポリイミド管状物は、厚みが65μm、内径が24mmであった。
(2)フッ素樹脂コーティング
ポリイミド管状物を金型に保持した状態で、フッ素樹脂プライマー液(固形分濃度:35重量%)(855−003:デュポン社製)を、最終の厚みが4〜5μmとなるようにポリイミド管状物にスプレー塗装した後、150〜170℃のドライヤーで熱風乾燥した。その後、さらに、フッ素樹脂ディスパージョン液(855−510デュポン社製 固形分濃度:50重量%)にケッチンブラック(W−310Aライオン社製)を、全量に対して0.6wt%となるように混合したものを、焼成後の厚みが20μmになるようにプライマー塗装表面にスプレー塗装した後に150℃の温度で乾燥した。
(3)フッ素樹脂コーティング層の焼成
その後、金型からフッ素樹脂塗装ポリイミド管状物を取り外し、そのフッ素樹脂塗装ポリイミド管状物のみを350℃のオーブンに入れて中空状態で実質的に直接加熱した。そして、オーブンに入れてから10分後にフッ素樹脂塗装ポリイミド管状物を取り出し、ポリイミド管状物にフッ素樹脂が被覆された2層構造ポリイミド管状物を得た。この2層構造ポリイミド管状物は、内径が24mm、長さが310mm、ポリイミド樹脂層が65μm、フッ素樹脂層が20μmであった。なお、フッ素樹脂塗装ポリイミド管状物を350℃のオーブンに挿入した時点からフッ素樹脂の融点327℃に達するまでの時間は18秒であり、昇温速度は18.2℃/秒であった。この複合管状物を、モノクロプリンタの定着機に装着し、24枚/分の速度で定着を行った結果、紙汚れやオフセットのない良質な画像が得られた。
(比較例)
実施例1と同一条件で未焼成フッ素樹脂をコーティングした管状物を得た。その後、その管状物を、外径18mm長さ350mmのアルミニウム金型が挿入された状態で350℃のオーブンに入れて20分間焼成した。フッ素樹脂層が融点に達する間での時間は6分間であり、昇温速度は0.9℃/秒であった。管状物をオーブンに挿入してから20分後に管状物を取り出し、室温まで自然冷却させた後に、その管状物を金型から取り外した。なお、この複合管状物の十点平均表面粗さ及び中心線平均粗さ(Ra)は1.1μmであった。また、この複合管状物のフッ素樹脂層は、曇ったような濁りがあり、被膜中には微細なクラックが発生し、定着ベルトとして使用することはできなかった。
本発明に係る複合管状物の製造方法は、離型層(フッ素樹脂層)にマッドクラックの発生がなく、平滑で離型性の優れた複合管状物を提供することができるという特徴を有し、複写機やプリンターなどの定着ベルト、加圧ベルト、搬送ベルト、転写ベルト等を製造する方法として有用である。
定着ベルト方式の定着機構を示す断面図である。 本発明の実施例1における複合管状物を示す断面図である。 本発明の複合管状物で所定の寸法に切断する前の中間製品の断面図である。
符号の説明
1 ポリイミド定着ベルト
2 ベルトガイド
3 セラミックヒーター
4 加圧ローラ
5 サーミスタ
6 加圧ロール芯金
N ニップ部分
7 複写紙
8 未定着トナー像
9 定着トナー像
11 基層管状物
12 弾性層
13 離型層

Claims (8)

  1. 管状物の外面に未焼成フッ素樹脂液をコーティングして未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を作製するコーティング工程と、
    前記未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を中空の状態でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成する焼成工程と、
    を備える、複合管状物の製造方法。
  2. 前記管状物は、基層管状物と、前記基層管状物の外面に設けられる弾性層とから成る、
    請求項1に記載の複合管状物の製造方法。
  3. 前記未焼成フッ素樹脂液には、成膜剤が含まれる、
    請求項1または2に記載の複合管状物の製造方法。
  4. 前記未焼成フッ素樹脂液は、フッ素樹脂の固形分濃度が30重量%〜60重量%であって、粘度が200±100センチポイズである、
    請求項3に記載の複合管状物の製造方法。
  5. 前記未焼成フッ素樹脂液中の前記成膜剤の混合量は、2重量%〜20重量%の範囲である、
    請求項3または4に記載の複合管状物の製造方法。
  6. 前記成膜剤は、水溶性アクリル系樹脂である、
    請求項3から5のいずれかに記載の複合管状物の製造方法。
  7. 前記焼成工程では、前記未焼成フッ素樹脂コーティング管状物が、フッ素樹脂の融点よりも少なくとも30℃〜150℃高い温度で焼成される、
    請求項1から6のいずれかに記載の複合管状物の製造方法。
  8. 管状物の外面に未焼成フッ素樹脂液をコーティングして未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を作製するコーティング工程と、前記未焼成フッ素樹脂コーティング管状物を中空の状態でフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成する焼成工程とを備える複合管状物の製造方法によって得られる、
    複合管状物。
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