JP2004138957A - トナー定着部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性効果を目的としたシリコーンゴム層とフッ素樹脂の最外層が形成されたトナー定着部材において、フッ素樹脂の最外層が比較的に薄い場合においても、弾性効果をムラ無く発揮させ、定着後のトナー画像において、極めて高画質なトナー画像を得ることが可能なトナー定着部材を提供する。
【解決手段】厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されてなり、かつ、該シリコーンゴムからなる層の表面粗さRzを1μm以下とすることで上記課題は達成される。
【選択図】 図1
【解決手段】厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されてなり、かつ、該シリコーンゴムからなる層の表面粗さRzを1μm以下とすることで上記課題は達成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコーンゴム層上にフッ素樹脂の薄い層を形成した部材に関する。特に、電子写真方式のコピー機やプリンターのトナー定着に用いられるローラやベルト部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスのトナー定着において、最外層としてトナー離型の良好なフッ素樹脂を形成した定着部材が広く利用されている。中でも、高画質化や高機能化の要求から、シリコーンゴムといった柔軟な弾性材料からなる弾性層上に、直接または間接的にフッ素樹脂の最外層を形成した定着部材が様々なバリエーションで用いられている。
【0003】
弾性層のシリコーンゴムは、弾性効果が発揮される程度の厚みが少なくともあればよく、50μm以上形成されてなる構成がよく知られている。
【0004】
フッ素樹脂の最外層は、弾性層の機能を効果的に発揮させるために50μm以下の厚みで用いられることが多い。この厚みは、弾性効果のためには薄ければ薄いほどよく、特に、30μm以下の厚みのものが実用的に知られている。しかしながら、最外層の厚みが薄ければ薄いほど、弾性層の表面の粗さから受ける影響を受けやすくなる。すなわち、弾性層の表面が粗い場合には、弾性効果の発揮にムラが生じやすく、定着後のトナー画像にも影響を及ぼしやすい。
【0005】
したがって、弾性ゴムの表面を研磨し、表面粗さを小さくし、その上にフッ素樹脂ディスパージョンを塗布焼成せしめるという製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、研磨という方法を用いていることからも、現在求められている表面の平滑性までは考慮していないと考えられ、本件とは目的とする解決課題と手段が異なる。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−38334号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主たる課題は、弾性効果を目的としたシリコーンゴム層とフッ素樹脂の最外層が形成されたトナー定着部材において、フッ素樹脂の最外層が比較的に薄い場合においても、弾性効果をムラ無く発揮させ、定着後のトナー画像において、極めて高画質なトナー画像を得ることが可能なトナー定着部材を提供することである。
【0008】
更に、本発明の課題は、上記トナー定着部材を効率的に製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子写真のトナー定着部材において、少なくとも厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されてなり、かつ、該シリコーンゴムからなる層の表面粗さRzを1μm以下とすることを特徴とする。
【0010】
本出願に係る第2の発明は、第1の発明のトナー定着部材において、定着部材表面の所定のマイクロ硬度が、最外層が形成された状態でのマイクロ硬度をMH1、最外層のみ未形成の状態でのマイクロ硬度をMH2としたとき、MH1>MH2であることにより、本発明の主たる課題がより効果的に解決される。
【0011】
本出願に係る第3の発明は、第2の発明のシリコーンゴムにおいて、25℃での熱伝導率が0.4〜1.2W/m・Kであり、かつその層厚みが、1mm以下であることにより、本発明の主たる課題がより効果的に解決される。
【0012】
本出願に係る第4の発明は、第3の発明のフッ素樹脂において、フッ素樹脂粉末のディスパージョン溶液をコート後乾燥し焼結せしめ得られた焼結体とすることにより、比較的薄い最外層を形成しかつ本発明の主たる目的を達成する。
【0013】
本出願に係る第5の発明は、第1から第4の発明のトナー定着部材において、部材がベルト形状であることにより、それぞれの発明における目的がより効果的に達成される。
【0014】
本出願に係る第6の発明は、第1から第5の発明のトナー定着部材の製造方法において、25℃の粘度が10Pa・sであるシリコーンゴム原料をノズルと基体間のギャップに供給し、ノズルまたは/及び基体を移動させて所定の層厚みに形成し、熱硬化工程を経てシリコーンゴム層を形成せしめた後、所定の外層を形成することにより、それぞれの発明を具体的に実施するのに好適な手段を提供するという目的を達成する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を実施した形態の部材の1例の概略断面図を図1に示した。
【0016】
図において、11は最外層のフッ素樹脂であり、12は弾性層としてのシリコーンゴム、13は基材である。1aは本発明でその表面粗さに着目したシリコーンゴム表面位置を示している。
【0017】
本発明のトナー定着部材は、ローラやベルト等、公知の形態の部材において実施可能であり、加熱加圧用の部材としても適用可能である。少なくとも最外層はフッ素樹脂であり、弾性層はシリコーンゴムから成るトナー定着部材であり、層構成は公知の形態をとることができる。
【0018】
例えば、最外層と弾性層の間には、接着を目的としたプライマー層や、フッ素ゴム及び/またはフッ素樹脂の混合/単一層を中間層として設けても良い。また、弾性層は、金属又は耐熱性樹脂の基材上に形成して用いることができる。
【0019】
フッ素樹脂の種類は、公知である種類の材料を用いることができ、特に限定されない。一般によく知られる、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等の単独、または複合して用いることが好ましい。
【0020】
最外層であるフッ素樹脂の厚みは、30μm以下とすることが望ましい。これはトナー定着後の画質を考慮して、期待する画質を得るため、目的とする柔軟性を損なわない程度の薄さを求めるものである。厚みの下限は特に限定しないが、機械的強度を考えると、1μm以上、特に10μm以上が好適である。
【0021】
弾性層であるシリコーンゴムの種類は、架橋反応の形態として特に限定されないが、トナー定着部材に用いることを鑑みると、付加反応型やパーオキサイド反応型が好適に用いられる。
【0022】
また、シリコーンゴムは官能基の種類が様々に知られているが、それら公知の種類の官能基を有したシリコーンゴムを用いても構わない。特に、メチル基のみを有したジメチルシリコーンゴムや、フェニル基を有したメチルフェニルシリコーンゴム/フェニルシリコーンゴムがトナー定着部材用に良く知られ、好んで用いられる。
【0023】
シリコーンゴムには、耐熱や伝熱や補強や増量等を目的として、無機系の粉末状の充填剤を配合しても良い。無機系充填剤は公知のものを用いることができる。例えば、結晶性シリカ、煙霧状シリカ、酸化鉄、アルミナなどを例示できる。これらの無機充填剤は、好ましくは、シリコーンゴム100重量部に対して、0.1〜100重量部配合して用いる。
【0024】
この他、シリコーンゴムには各種特性の調整のために配合剤を加えても良い。
【0025】
弾性層であるシリコーンゴムの厚みは、50μm以上とする。これは、弾性層として弾性効果を期待しうる厚みを求めるものである。特に十分な弾性効果を期待する場合には100μm以上、更には200μm以上の厚みが好ましい。また、層厚みの上限として3mmを超えない範囲とすることが望ましい。好ましくは1mmを超えない範囲とする。
【0026】
最外層であるフッ素樹脂層を形成するためのシリコーンゴム層の表面粗さは、JIS−B0601に準じて測定される十点平均粗さ(Rz)で、1μm以下とする。ゴム表面を研磨して得られるような、Rzが1μmよりも大きい表面粗さの場合には、本発明で想定している構成では、目的とする極めて高画質なトナー画像を得ることは困難である。また、Rzの下限は特に限定しないが、0.1μm程度までが、発揮性能と製造プロセスを鑑みて、現実的に用いられる範囲である。
【0027】
なお、本発明において、最外層が形成された状態でのマイクロ硬度をMH1、最外層のみ未形成の状態でのマイクロ硬度をMH2としたとき、MH1>MH2となるようにすることが好ましい。
【0028】
なお、本発明でマイクロ硬度とは、高分子計器社製のゴム硬度計(商品名,マイクロ硬度計MD−1(Asker−Cタイプ))を用いて測定した値である。このマイクロ硬度測定の概念図を図2に示した。
【0029】
図において、図2(a)が最外層が形成された状態での測定の概念図であり、図2(b)が最外層のみを未形成の状態での測定の概念図である。21は最外層であり、22が弾性層、23が基材である。これらの表面にマイクロ硬度計測定子24が測定子押し付け方向2aで押し当てられてマイクロ硬度が測定される。
【0030】
加えてシリコーンゴムとして、25℃での熱伝導率が0.4〜1.2W/m・Kであるシリコーンゴムを用いることが望ましい。このようなシリコーンゴムは、高熱伝導グレードのシリコーンゴムとして市販または特注品として手に入れることができる。このとき、ゴム硬度もある程度所望の範囲のものが入手可能である。
【0031】
最外層のフッ素樹脂層は、フッ素樹脂粉末のディスパージョン溶液をコート後乾燥し焼結せしめることによって形成されたものが好ましい。フッ素樹脂粉末のディスパージョン溶液は水溶媒系や有機溶媒系などの公知の溶液として入手可能である。乾燥は溶媒が残らないように風乾などの手段で行うことができ、また、焼結もフッ素樹脂の溶融温度付近で熱風加熱などの手段を用いて行うことができる。また、フッ素樹脂の表面は、更なる熱溶融などの手段を加えて更なる平滑化をしても良い。
【0032】
トナー定着部材は、ロール状、ベルト形状いずれでもよい。
【0033】
本発明のトナー定着部材がベルト形状であるときに、ベルト基材は特に限定はなく、ポリイミドなどの耐熱性樹脂やアルミやニッケルなどの金属といった汎用の耐熱材料を用いることができる。
【0034】
ベルト形状のトナー定着部材の定着装置への装着の形態としては、特に限定しないが、例えば、図3に例示したようなハロゲンヒータ33により温調された上ローラ31と下ローラ32のロールニップ間にベルト34を回転搬送する形態の定着装置や、図4に例示したような、ベルト41内側に固定支持されたヒータ42を温調し、このヒータ42とニップNを形成する加圧ローラ43とを配し、ステイ44に沿ってベルト41を摺擦回転させる形態の定着装置において利用可能である。
【0035】
本発明のトナー定着部材の製造において、シリコーンゴム層の形成に、例えば、図5に示したような装置を利用することによりシリコーンゴム層を容易に形成することができる。
【0036】
まず、基板上に円筒体のワーク51を水平にかつ軸を基準に回転させ、軸方向に水平移動させる事ができる塗工台52がある。さらに基板上には水平方向に動かずワーク51との間隔をワーク軸と平行に、かつワーク軸方向から見た時、ワーク円周の接線と平行状態を保ちながら微調整できる液押付板保持部5bとその中に塗布液の吐出口が設けられた液押付板51aが取付けられている。液押付板51aは、ワーク51の上方に位置し、例えば、ポリオキシメチレン樹脂(例えば、デュポン社製、商品名 デルリン)のものを使用できる。
【0037】
上記液押付板51aは平板の液接面側に(図5(a))のワーク・液押付板断面図に示すようにワーク軸を通る液押付板移動軸のローラの回転のカウンター側にワーク軸と平行な緩やかな傾斜カットがなされた接液面側の形状(図5(b)、カウンター側は矢印で示した)となっている。
【0038】
また、塗布液56吐出口は上記移動軸のカウンター側の傾斜カットの部分で巾方向の中央部より塗工台移動反対方向に設けられている。このような形状により吐出された塗布液56は傾斜カットの部分に保持されながらワークと液押付板との間でせん断がかけられたワーク表面に塗布される。また吐出口は塗液搬送用のチューブ54で定量(時間当たり)吐出可能な電動式のシリンダー状のポンプ55に接続しており、そこから塗布液56が供給される。シリンダー上のポンプは液の脈動が起きないため安定した吐出が可能である。
【0039】
ワーク51としてローラ芯金を用いた場合、ローラ上にシリコーンゴム層を形成でき、ワーク51にベルト基材を挿入狭持することで、ベルト基材上にシリコーンゴムを形成することも可能である。ローラ芯金やベルト基材は、その表面をシリコーン用接着プライマーなどの公知の方法により処理し、シリコーンゴム層が剥がれないよう接着することが望ましい。
【0040】
このシリコーンゴム層の形成においては、25℃の液粘度が10Pa・s以上の液を用いることができる。ここで、液粘度は、B型粘度計で測定した値である。無機充填剤を配合した場合や、シリコーン原料のポリマー分子量が大きい場合などは、液粘度が10Pa・sを超える場合がある。このような比較的粘度の高いシリコーン原料を、表面粗さを小さく、更には1mmよりも薄く形成しようとすると、本発明のようなコート方法は効果的に有効である。
【0041】
【実施例】
本発明を実施し効果を確認するため、種々定着部材を製作し、定着装置に組み込んで、未定着のトナー画像を通紙して、トナー定着画像の画質を評価した。
【0042】
トナー画像は、クリエイティブプロセッサー680(商品名:CP680、キヤノン株式会社製)を用い、定着装置の手前で用紙を取り出せるようにしておき、未定着のトナー画像を得た。
【0043】
用紙には、カラーレーザーコピア用紙(商品名:TKCL−A4、キヤノン販売株式会社販売)を用いた。
【0044】
画像は、シアン濃度100%のべた画像とした。
【0045】
画像の評価は、本発明の目的である極めて高画質なトナー画像を感度良く判定するため、官能的評価にて行った。
【0046】
評価するトナー定着画像を複数枚用意し、ランダムに各々10回繰り返し、画像のムラについて、「○=ムラを感じない」、「△=ややムラを感じる」、「×=ムラが目立つ」の3水準で評価し、○=3点、△=2点、×=1点、として、その平均点数を画像評価の指標とした。
【0047】
なお、評価に普遍性を与えるため、実施例1にて得られた画像を標準の見本画像とし、評価するときには必ず見本画像を入れて、その見本画像の点数が2.8±0.2点になるよう、評価の基準を合わせた。
【0048】
実施例1
弾性層のシリコーンゴム原料として、付加反応型の2液混合タイプの液状シリコーンゴム原料を用意した。2液の平均粘度は、290Pa・sであった。また、熱硬化後のゴム物性は、熱伝導率が0.85W/m・Kであった。このシリコーンゴム原料から作成した6mmシートの25℃におけるゴム硬さ(JIS−A硬度)は30°であった。
【0049】
次に基材として、外径がφ60mmのアルミ製ローラ芯金を用意し、表面にシリコーン用プライマー(商品名:DY39−051、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)をエアースプレーで薄塗りして、200℃の温風オーブンにて1時間の加熱処理を行った。冷却後に、図5に示した装置を用い、ローラ芯金上に、シリコーン原液を500μmの厚みで塗工し、150℃の温風オーブンにて30分の加熱処理をし、次いで200℃にて4時間加熱処理してシリコーンゴムを熱硬化させた。このとき、シリコーンゴムの表面を接触式表面粗さ計(サーフコム480A、東京精密株式会社製)にて測定したところ、Rz=0.4μmであった。
【0050】
次いでプライマー(商品名:GLP−104、ダイキン工業株式会社製)と中間層(商品名:GLS−213、ダイキン工業株式会社)をエアースプレーにて薄塗りして、150℃の温風オーブンにて1時間加熱処理した。その後、表面のマイクロ硬度(MH2)を測定すると、68であった。
【0051】
この後、PFAディスパージョン液(商品名:AD−2CR、ダイキン工業株式会社製)をフッ素樹脂層として厚みが20μm程度になるように、エアースプレーにて塗布し、風乾した後、320℃のハイパワー温風オーブンにて30分加熱処理し、冷却した。次いで、フッ素樹脂表面付近のみを近赤外線加熱ランプにて加熱し、PFAの溶融温度付近で平滑な耐熱樹脂シートに押し付け、その表面を平滑にする処理を行った。その後、表面のマイクロ硬度(MH1)を測定すると、79であった。
【0052】
以上のようにして得られた定着部材を、図6に示した定着装置に組み込み、表面温度が190℃、ニップ幅が5mmになるようにし、ローラを50mm/secのスピードで回転させ、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、2.8点であった。
【0053】
比較例1
実施例1の定着部材の製作において、シリコーンゴムを熱硬化させた後に、#1000のサンドペーパーにてシリコーンゴムの表面を擦り、表面粗さRzを2μmとする以外は実施例1と同じ方法により定着部材を製作した。
【0054】
以上のようにして得られた定着部材を実施例1と同じように定着装置に組み込み、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、1.6点であった。
【0055】
比較例2
実施例1の定着部材の製作において、シリコーンゴムを熱硬化させた後に、#600のサンドペーパーにてシリコーンゴムの表面を擦り、表面粗さRzを6μmとする以外は実施例1と同じ方法により定着部材を製作した。
【0056】
以上のようにして得られた定着部材を実施例1と同じように定着装置に組み込み、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、1点であった。
【0057】
実施例2
基材として、外径がφ24mmのポリイミドベルトを用意し、表面にシリコーン用プライマー(商品名:DY39−051、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)をエアースプレーで薄塗りして、200℃の温風オーブンにて1時間の加熱処理を行った。冷却後に、図5に示した装置を用い、φ24mm用のワークにベルトを装着し、実施例1で用いたと同じシリコーン原液を200μmの厚みで塗工し、150℃の温風オーブンにて30分の加熱処理をし、次いで200℃にて4時間加熱処理してシリコーンゴムを熱硬化させた。このとき、シリコーンゴムの表面粗さRzは、0.3μmであった。
【0058】
次いでプライマー(商品名:GLP−104、ダイキン工業株式会社製)と中間層(商品名:GLS−213、ダイキン工業株式会社製)をエアースプレーにて薄塗りして、150℃の温風オーブンにて1時間加熱処理した。この後、PFAディスパージョン液(商品名:AD−2CR、ダイキン工業株式会社製)をフッ素樹脂層として厚みが20μm程度になるように、エアースプレーにて塗布し、風乾した後、320℃のハイパワー温風オーブンにて30分加熱処理し、冷却した。次いで、フッ素樹脂表面付近のみを近赤外線加熱ランプにて加熱し、PFAの溶融温度付近で平滑な耐熱樹脂シートに押し付け、その表面を平滑にする処理を行った。
【0059】
以上のようにして得られた定着部材を、図4に示した定着装置に組み込み、表面温度が190℃、ニップ幅が10mmになるようにし、ベルトを50mm/secのスピードで回転させ、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、2.6点であった。
【0060】
以上のように、本発明を実施した定着部材によって、画像評価の点数において目的とする高画質を達成できることが明らかとなり、本発明の有効性が確認できた。また、ベルト形状にも効果的に適用できることが本実施例で明らかとなった。
【0061】
また更に本実施例によって、本発明を実施するにあたり、具体的に実施するのに好適な手段を提供できることが明らかとなった。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように、電子写真のトナー定着部材であり、少なくとも厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されて成る定着部材において、シリコーンゴム層の表面粗さRzを1μm以下にすることにより、弾性効果を目的としたシリコーンゴム層と、フッ素樹脂の最外層が形成されたトナー定着部材において、フッ素樹脂の最外層が比較的に薄い場合において、弾性効果をムラ無く発揮させ、定着後のトナー画像において、極めて高画質なトナー画像を得ることができた。
【0063】
また、本発明の主たる目的に付随した関連の発明に関しても、各々の目的を効果的に達成する手段が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した形態の1例の概念断面図である。
【図2】マイクロ硬度を測定する概念図である。
【図3】ベルト定着装置の一例を示す概念図である。
【図4】ベルト定着装置の他の一例を示す概念図である。
【図5】シリコーンゴム層を形成する装置の説明図である。
【図6】ローラ定着装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
11 最外層
12 弾性層
13 基材
1a 弾性層表面位置
21 最外層
22 弾性層
23 基材
24 マイクロ硬度計測定子
2a 測定子押し付け方向
31 上ローラ
32 下ローラ
33 ハロゲンヒータ
34 ベルト
35 ローラ
3a 上ローラ回転方向
3b 下ローラ回転方向
3c ベルト移動方向
41 ベルト
42 ヒータ
43 加圧ローラ
44 ステイ
4a ベルト移動方向
4b 加圧ローラ回転方向
N ニップ
51 ワーク
52 塗工台
51a 液押付板
5b 液押付板保持部
54 チューブ
55 シリンダポンプ
56 塗布液
61 上ローラ
62 下ローラ
63 ハロゲンヒータ
6a 上ローラ回転方向
6b 下ローラ回転方向
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコーンゴム層上にフッ素樹脂の薄い層を形成した部材に関する。特に、電子写真方式のコピー機やプリンターのトナー定着に用いられるローラやベルト部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスのトナー定着において、最外層としてトナー離型の良好なフッ素樹脂を形成した定着部材が広く利用されている。中でも、高画質化や高機能化の要求から、シリコーンゴムといった柔軟な弾性材料からなる弾性層上に、直接または間接的にフッ素樹脂の最外層を形成した定着部材が様々なバリエーションで用いられている。
【0003】
弾性層のシリコーンゴムは、弾性効果が発揮される程度の厚みが少なくともあればよく、50μm以上形成されてなる構成がよく知られている。
【0004】
フッ素樹脂の最外層は、弾性層の機能を効果的に発揮させるために50μm以下の厚みで用いられることが多い。この厚みは、弾性効果のためには薄ければ薄いほどよく、特に、30μm以下の厚みのものが実用的に知られている。しかしながら、最外層の厚みが薄ければ薄いほど、弾性層の表面の粗さから受ける影響を受けやすくなる。すなわち、弾性層の表面が粗い場合には、弾性効果の発揮にムラが生じやすく、定着後のトナー画像にも影響を及ぼしやすい。
【0005】
したがって、弾性ゴムの表面を研磨し、表面粗さを小さくし、その上にフッ素樹脂ディスパージョンを塗布焼成せしめるという製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、研磨という方法を用いていることからも、現在求められている表面の平滑性までは考慮していないと考えられ、本件とは目的とする解決課題と手段が異なる。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−38334号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主たる課題は、弾性効果を目的としたシリコーンゴム層とフッ素樹脂の最外層が形成されたトナー定着部材において、フッ素樹脂の最外層が比較的に薄い場合においても、弾性効果をムラ無く発揮させ、定着後のトナー画像において、極めて高画質なトナー画像を得ることが可能なトナー定着部材を提供することである。
【0008】
更に、本発明の課題は、上記トナー定着部材を効率的に製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子写真のトナー定着部材において、少なくとも厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されてなり、かつ、該シリコーンゴムからなる層の表面粗さRzを1μm以下とすることを特徴とする。
【0010】
本出願に係る第2の発明は、第1の発明のトナー定着部材において、定着部材表面の所定のマイクロ硬度が、最外層が形成された状態でのマイクロ硬度をMH1、最外層のみ未形成の状態でのマイクロ硬度をMH2としたとき、MH1>MH2であることにより、本発明の主たる課題がより効果的に解決される。
【0011】
本出願に係る第3の発明は、第2の発明のシリコーンゴムにおいて、25℃での熱伝導率が0.4〜1.2W/m・Kであり、かつその層厚みが、1mm以下であることにより、本発明の主たる課題がより効果的に解決される。
【0012】
本出願に係る第4の発明は、第3の発明のフッ素樹脂において、フッ素樹脂粉末のディスパージョン溶液をコート後乾燥し焼結せしめ得られた焼結体とすることにより、比較的薄い最外層を形成しかつ本発明の主たる目的を達成する。
【0013】
本出願に係る第5の発明は、第1から第4の発明のトナー定着部材において、部材がベルト形状であることにより、それぞれの発明における目的がより効果的に達成される。
【0014】
本出願に係る第6の発明は、第1から第5の発明のトナー定着部材の製造方法において、25℃の粘度が10Pa・sであるシリコーンゴム原料をノズルと基体間のギャップに供給し、ノズルまたは/及び基体を移動させて所定の層厚みに形成し、熱硬化工程を経てシリコーンゴム層を形成せしめた後、所定の外層を形成することにより、それぞれの発明を具体的に実施するのに好適な手段を提供するという目的を達成する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を実施した形態の部材の1例の概略断面図を図1に示した。
【0016】
図において、11は最外層のフッ素樹脂であり、12は弾性層としてのシリコーンゴム、13は基材である。1aは本発明でその表面粗さに着目したシリコーンゴム表面位置を示している。
【0017】
本発明のトナー定着部材は、ローラやベルト等、公知の形態の部材において実施可能であり、加熱加圧用の部材としても適用可能である。少なくとも最外層はフッ素樹脂であり、弾性層はシリコーンゴムから成るトナー定着部材であり、層構成は公知の形態をとることができる。
【0018】
例えば、最外層と弾性層の間には、接着を目的としたプライマー層や、フッ素ゴム及び/またはフッ素樹脂の混合/単一層を中間層として設けても良い。また、弾性層は、金属又は耐熱性樹脂の基材上に形成して用いることができる。
【0019】
フッ素樹脂の種類は、公知である種類の材料を用いることができ、特に限定されない。一般によく知られる、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等の単独、または複合して用いることが好ましい。
【0020】
最外層であるフッ素樹脂の厚みは、30μm以下とすることが望ましい。これはトナー定着後の画質を考慮して、期待する画質を得るため、目的とする柔軟性を損なわない程度の薄さを求めるものである。厚みの下限は特に限定しないが、機械的強度を考えると、1μm以上、特に10μm以上が好適である。
【0021】
弾性層であるシリコーンゴムの種類は、架橋反応の形態として特に限定されないが、トナー定着部材に用いることを鑑みると、付加反応型やパーオキサイド反応型が好適に用いられる。
【0022】
また、シリコーンゴムは官能基の種類が様々に知られているが、それら公知の種類の官能基を有したシリコーンゴムを用いても構わない。特に、メチル基のみを有したジメチルシリコーンゴムや、フェニル基を有したメチルフェニルシリコーンゴム/フェニルシリコーンゴムがトナー定着部材用に良く知られ、好んで用いられる。
【0023】
シリコーンゴムには、耐熱や伝熱や補強や増量等を目的として、無機系の粉末状の充填剤を配合しても良い。無機系充填剤は公知のものを用いることができる。例えば、結晶性シリカ、煙霧状シリカ、酸化鉄、アルミナなどを例示できる。これらの無機充填剤は、好ましくは、シリコーンゴム100重量部に対して、0.1〜100重量部配合して用いる。
【0024】
この他、シリコーンゴムには各種特性の調整のために配合剤を加えても良い。
【0025】
弾性層であるシリコーンゴムの厚みは、50μm以上とする。これは、弾性層として弾性効果を期待しうる厚みを求めるものである。特に十分な弾性効果を期待する場合には100μm以上、更には200μm以上の厚みが好ましい。また、層厚みの上限として3mmを超えない範囲とすることが望ましい。好ましくは1mmを超えない範囲とする。
【0026】
最外層であるフッ素樹脂層を形成するためのシリコーンゴム層の表面粗さは、JIS−B0601に準じて測定される十点平均粗さ(Rz)で、1μm以下とする。ゴム表面を研磨して得られるような、Rzが1μmよりも大きい表面粗さの場合には、本発明で想定している構成では、目的とする極めて高画質なトナー画像を得ることは困難である。また、Rzの下限は特に限定しないが、0.1μm程度までが、発揮性能と製造プロセスを鑑みて、現実的に用いられる範囲である。
【0027】
なお、本発明において、最外層が形成された状態でのマイクロ硬度をMH1、最外層のみ未形成の状態でのマイクロ硬度をMH2としたとき、MH1>MH2となるようにすることが好ましい。
【0028】
なお、本発明でマイクロ硬度とは、高分子計器社製のゴム硬度計(商品名,マイクロ硬度計MD−1(Asker−Cタイプ))を用いて測定した値である。このマイクロ硬度測定の概念図を図2に示した。
【0029】
図において、図2(a)が最外層が形成された状態での測定の概念図であり、図2(b)が最外層のみを未形成の状態での測定の概念図である。21は最外層であり、22が弾性層、23が基材である。これらの表面にマイクロ硬度計測定子24が測定子押し付け方向2aで押し当てられてマイクロ硬度が測定される。
【0030】
加えてシリコーンゴムとして、25℃での熱伝導率が0.4〜1.2W/m・Kであるシリコーンゴムを用いることが望ましい。このようなシリコーンゴムは、高熱伝導グレードのシリコーンゴムとして市販または特注品として手に入れることができる。このとき、ゴム硬度もある程度所望の範囲のものが入手可能である。
【0031】
最外層のフッ素樹脂層は、フッ素樹脂粉末のディスパージョン溶液をコート後乾燥し焼結せしめることによって形成されたものが好ましい。フッ素樹脂粉末のディスパージョン溶液は水溶媒系や有機溶媒系などの公知の溶液として入手可能である。乾燥は溶媒が残らないように風乾などの手段で行うことができ、また、焼結もフッ素樹脂の溶融温度付近で熱風加熱などの手段を用いて行うことができる。また、フッ素樹脂の表面は、更なる熱溶融などの手段を加えて更なる平滑化をしても良い。
【0032】
トナー定着部材は、ロール状、ベルト形状いずれでもよい。
【0033】
本発明のトナー定着部材がベルト形状であるときに、ベルト基材は特に限定はなく、ポリイミドなどの耐熱性樹脂やアルミやニッケルなどの金属といった汎用の耐熱材料を用いることができる。
【0034】
ベルト形状のトナー定着部材の定着装置への装着の形態としては、特に限定しないが、例えば、図3に例示したようなハロゲンヒータ33により温調された上ローラ31と下ローラ32のロールニップ間にベルト34を回転搬送する形態の定着装置や、図4に例示したような、ベルト41内側に固定支持されたヒータ42を温調し、このヒータ42とニップNを形成する加圧ローラ43とを配し、ステイ44に沿ってベルト41を摺擦回転させる形態の定着装置において利用可能である。
【0035】
本発明のトナー定着部材の製造において、シリコーンゴム層の形成に、例えば、図5に示したような装置を利用することによりシリコーンゴム層を容易に形成することができる。
【0036】
まず、基板上に円筒体のワーク51を水平にかつ軸を基準に回転させ、軸方向に水平移動させる事ができる塗工台52がある。さらに基板上には水平方向に動かずワーク51との間隔をワーク軸と平行に、かつワーク軸方向から見た時、ワーク円周の接線と平行状態を保ちながら微調整できる液押付板保持部5bとその中に塗布液の吐出口が設けられた液押付板51aが取付けられている。液押付板51aは、ワーク51の上方に位置し、例えば、ポリオキシメチレン樹脂(例えば、デュポン社製、商品名 デルリン)のものを使用できる。
【0037】
上記液押付板51aは平板の液接面側に(図5(a))のワーク・液押付板断面図に示すようにワーク軸を通る液押付板移動軸のローラの回転のカウンター側にワーク軸と平行な緩やかな傾斜カットがなされた接液面側の形状(図5(b)、カウンター側は矢印で示した)となっている。
【0038】
また、塗布液56吐出口は上記移動軸のカウンター側の傾斜カットの部分で巾方向の中央部より塗工台移動反対方向に設けられている。このような形状により吐出された塗布液56は傾斜カットの部分に保持されながらワークと液押付板との間でせん断がかけられたワーク表面に塗布される。また吐出口は塗液搬送用のチューブ54で定量(時間当たり)吐出可能な電動式のシリンダー状のポンプ55に接続しており、そこから塗布液56が供給される。シリンダー上のポンプは液の脈動が起きないため安定した吐出が可能である。
【0039】
ワーク51としてローラ芯金を用いた場合、ローラ上にシリコーンゴム層を形成でき、ワーク51にベルト基材を挿入狭持することで、ベルト基材上にシリコーンゴムを形成することも可能である。ローラ芯金やベルト基材は、その表面をシリコーン用接着プライマーなどの公知の方法により処理し、シリコーンゴム層が剥がれないよう接着することが望ましい。
【0040】
このシリコーンゴム層の形成においては、25℃の液粘度が10Pa・s以上の液を用いることができる。ここで、液粘度は、B型粘度計で測定した値である。無機充填剤を配合した場合や、シリコーン原料のポリマー分子量が大きい場合などは、液粘度が10Pa・sを超える場合がある。このような比較的粘度の高いシリコーン原料を、表面粗さを小さく、更には1mmよりも薄く形成しようとすると、本発明のようなコート方法は効果的に有効である。
【0041】
【実施例】
本発明を実施し効果を確認するため、種々定着部材を製作し、定着装置に組み込んで、未定着のトナー画像を通紙して、トナー定着画像の画質を評価した。
【0042】
トナー画像は、クリエイティブプロセッサー680(商品名:CP680、キヤノン株式会社製)を用い、定着装置の手前で用紙を取り出せるようにしておき、未定着のトナー画像を得た。
【0043】
用紙には、カラーレーザーコピア用紙(商品名:TKCL−A4、キヤノン販売株式会社販売)を用いた。
【0044】
画像は、シアン濃度100%のべた画像とした。
【0045】
画像の評価は、本発明の目的である極めて高画質なトナー画像を感度良く判定するため、官能的評価にて行った。
【0046】
評価するトナー定着画像を複数枚用意し、ランダムに各々10回繰り返し、画像のムラについて、「○=ムラを感じない」、「△=ややムラを感じる」、「×=ムラが目立つ」の3水準で評価し、○=3点、△=2点、×=1点、として、その平均点数を画像評価の指標とした。
【0047】
なお、評価に普遍性を与えるため、実施例1にて得られた画像を標準の見本画像とし、評価するときには必ず見本画像を入れて、その見本画像の点数が2.8±0.2点になるよう、評価の基準を合わせた。
【0048】
実施例1
弾性層のシリコーンゴム原料として、付加反応型の2液混合タイプの液状シリコーンゴム原料を用意した。2液の平均粘度は、290Pa・sであった。また、熱硬化後のゴム物性は、熱伝導率が0.85W/m・Kであった。このシリコーンゴム原料から作成した6mmシートの25℃におけるゴム硬さ(JIS−A硬度)は30°であった。
【0049】
次に基材として、外径がφ60mmのアルミ製ローラ芯金を用意し、表面にシリコーン用プライマー(商品名:DY39−051、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)をエアースプレーで薄塗りして、200℃の温風オーブンにて1時間の加熱処理を行った。冷却後に、図5に示した装置を用い、ローラ芯金上に、シリコーン原液を500μmの厚みで塗工し、150℃の温風オーブンにて30分の加熱処理をし、次いで200℃にて4時間加熱処理してシリコーンゴムを熱硬化させた。このとき、シリコーンゴムの表面を接触式表面粗さ計(サーフコム480A、東京精密株式会社製)にて測定したところ、Rz=0.4μmであった。
【0050】
次いでプライマー(商品名:GLP−104、ダイキン工業株式会社製)と中間層(商品名:GLS−213、ダイキン工業株式会社)をエアースプレーにて薄塗りして、150℃の温風オーブンにて1時間加熱処理した。その後、表面のマイクロ硬度(MH2)を測定すると、68であった。
【0051】
この後、PFAディスパージョン液(商品名:AD−2CR、ダイキン工業株式会社製)をフッ素樹脂層として厚みが20μm程度になるように、エアースプレーにて塗布し、風乾した後、320℃のハイパワー温風オーブンにて30分加熱処理し、冷却した。次いで、フッ素樹脂表面付近のみを近赤外線加熱ランプにて加熱し、PFAの溶融温度付近で平滑な耐熱樹脂シートに押し付け、その表面を平滑にする処理を行った。その後、表面のマイクロ硬度(MH1)を測定すると、79であった。
【0052】
以上のようにして得られた定着部材を、図6に示した定着装置に組み込み、表面温度が190℃、ニップ幅が5mmになるようにし、ローラを50mm/secのスピードで回転させ、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、2.8点であった。
【0053】
比較例1
実施例1の定着部材の製作において、シリコーンゴムを熱硬化させた後に、#1000のサンドペーパーにてシリコーンゴムの表面を擦り、表面粗さRzを2μmとする以外は実施例1と同じ方法により定着部材を製作した。
【0054】
以上のようにして得られた定着部材を実施例1と同じように定着装置に組み込み、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、1.6点であった。
【0055】
比較例2
実施例1の定着部材の製作において、シリコーンゴムを熱硬化させた後に、#600のサンドペーパーにてシリコーンゴムの表面を擦り、表面粗さRzを6μmとする以外は実施例1と同じ方法により定着部材を製作した。
【0056】
以上のようにして得られた定着部材を実施例1と同じように定着装置に組み込み、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、1点であった。
【0057】
実施例2
基材として、外径がφ24mmのポリイミドベルトを用意し、表面にシリコーン用プライマー(商品名:DY39−051、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)をエアースプレーで薄塗りして、200℃の温風オーブンにて1時間の加熱処理を行った。冷却後に、図5に示した装置を用い、φ24mm用のワークにベルトを装着し、実施例1で用いたと同じシリコーン原液を200μmの厚みで塗工し、150℃の温風オーブンにて30分の加熱処理をし、次いで200℃にて4時間加熱処理してシリコーンゴムを熱硬化させた。このとき、シリコーンゴムの表面粗さRzは、0.3μmであった。
【0058】
次いでプライマー(商品名:GLP−104、ダイキン工業株式会社製)と中間層(商品名:GLS−213、ダイキン工業株式会社製)をエアースプレーにて薄塗りして、150℃の温風オーブンにて1時間加熱処理した。この後、PFAディスパージョン液(商品名:AD−2CR、ダイキン工業株式会社製)をフッ素樹脂層として厚みが20μm程度になるように、エアースプレーにて塗布し、風乾した後、320℃のハイパワー温風オーブンにて30分加熱処理し、冷却した。次いで、フッ素樹脂表面付近のみを近赤外線加熱ランプにて加熱し、PFAの溶融温度付近で平滑な耐熱樹脂シートに押し付け、その表面を平滑にする処理を行った。
【0059】
以上のようにして得られた定着部材を、図4に示した定着装置に組み込み、表面温度が190℃、ニップ幅が10mmになるようにし、ベルトを50mm/secのスピードで回転させ、未定着画像を通紙した。このときの画像評価の点数は、2.6点であった。
【0060】
以上のように、本発明を実施した定着部材によって、画像評価の点数において目的とする高画質を達成できることが明らかとなり、本発明の有効性が確認できた。また、ベルト形状にも効果的に適用できることが本実施例で明らかとなった。
【0061】
また更に本実施例によって、本発明を実施するにあたり、具体的に実施するのに好適な手段を提供できることが明らかとなった。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように、電子写真のトナー定着部材であり、少なくとも厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されて成る定着部材において、シリコーンゴム層の表面粗さRzを1μm以下にすることにより、弾性効果を目的としたシリコーンゴム層と、フッ素樹脂の最外層が形成されたトナー定着部材において、フッ素樹脂の最外層が比較的に薄い場合において、弾性効果をムラ無く発揮させ、定着後のトナー画像において、極めて高画質なトナー画像を得ることができた。
【0063】
また、本発明の主たる目的に付随した関連の発明に関しても、各々の目的を効果的に達成する手段が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した形態の1例の概念断面図である。
【図2】マイクロ硬度を測定する概念図である。
【図3】ベルト定着装置の一例を示す概念図である。
【図4】ベルト定着装置の他の一例を示す概念図である。
【図5】シリコーンゴム層を形成する装置の説明図である。
【図6】ローラ定着装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
11 最外層
12 弾性層
13 基材
1a 弾性層表面位置
21 最外層
22 弾性層
23 基材
24 マイクロ硬度計測定子
2a 測定子押し付け方向
31 上ローラ
32 下ローラ
33 ハロゲンヒータ
34 ベルト
35 ローラ
3a 上ローラ回転方向
3b 下ローラ回転方向
3c ベルト移動方向
41 ベルト
42 ヒータ
43 加圧ローラ
44 ステイ
4a ベルト移動方向
4b 加圧ローラ回転方向
N ニップ
51 ワーク
52 塗工台
51a 液押付板
5b 液押付板保持部
54 チューブ
55 シリンダポンプ
56 塗布液
61 上ローラ
62 下ローラ
63 ハロゲンヒータ
6a 上ローラ回転方向
6b 下ローラ回転方向
Claims (1)
- 電子写真のトナー定着部材において、
少なくとも厚さ50μm以上のシリコーンゴムからなる層と、厚さ30μm以下のフッ素樹脂からなる最外層が形成されてなり、
かつ、該シリコーンゴムからなる層の表面粗さRzが1μm以下である
ことを特徴とするトナー定着部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002305671A JP2004138957A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | トナー定着部材 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002305671A JP2004138957A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | トナー定着部材 |
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JP2004138957A true JP2004138957A (ja) | 2004-05-13 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
JP2006163315A (ja) * | 2004-12-10 | 2006-06-22 | Ist:Kk | 複合管状物およびその製造方法 |
JP2006205151A (ja) * | 2004-12-28 | 2006-08-10 | Ist:Kk | 複合管状物およびその製造方法 |
JP2019028184A (ja) * | 2017-07-28 | 2019-02-21 | キヤノン株式会社 | 定着部材、定着部材の製造方法、 |
-
2002
- 2002-10-21 JP JP2002305671A patent/JP2004138957A/ja not_active Withdrawn
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