JP2004163578A - 定着部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】カラー画像等の高画質定着に適した、分離性能にすぐれた耐磨耗性表層を有するトナー定着部材を提供する。
【解決手段】少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の平均粒径は該表層の厚みの1/5〜1/2の範囲とする。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の平均粒径は該表層の厚みの1/5〜1/2の範囲とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複写機、プリンター、ファクシミリ等のトナー画像形成装置の加熱加圧定着装置に用いられる、特に高画質が要求される装置に適している定着用ローラ、ベルト及びフィルム等の定着部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、加熱加圧定着装置は、加熱されたローラとローラ、フィルムとローラ、ベルトとローラ、といった回転体を含む一対の部材が圧接されて機能する構成を有しており、未定着のトナー画像を有した記録紙がこの一対の部材間(ニップ部)に挟持、搬送される。この過程で未定着トナー画像は、このニップ内において、加熱・軟化し、加圧力により記録紙へ押し付けられ、その後、冷却・固化を経て、記録紙上にトナーの定着画像が形成される。
【0003】
一般に、未定着トナーと接する側の部材は、その形態に応じて定着ローラ、定着ベルト、定着フィルム等と呼ばれる。
【0004】
これら定着部材は、金属や耐熱樹脂などからなるローラ基材、ベルト基材またはフィルム基材に、耐熱性の弾性体を、単層または多層に積層して構成される場合が多い。特に、この弾性体層としての最外層は、表層と呼ばれ、これを構成する弾性体材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、及びこれらの混合物が例示される。表層にフッ素樹脂が用いられることもあるがフッ素樹脂は、柔軟性に乏しい。表層の柔軟性は、定着後の画質に影響を与える。表層が柔軟である場合、トナーの形状に追従して変形しやすく、ニップ内でトナーを加圧した際に、未定着のトナーを周囲に飛び散らせることなく、高精度に目的の場所に定着させることができるため、高度に精細な定着画像が期待できる。すなわち、高画質にトナーを定着させるには、弾性体からなる表層が適しており、前述したシリコーンゴム、及びフッ素ゴムといった弾性体が適していることが知られている。
【0005】
しかしながらこれらのゴム材料は基本的に表面粘着性を有する場合が多く、また、摩擦力も大きいため、ニップ内での摩擦帯電により記録紙はニップ通過後ゴム表面に吸着しやすく、記録紙の巻き付き等の分離性に問題を生じる場合がある。分離性が悪化すると、排紙された定着画像を有する記録紙がカールしたり、最悪の場合定着装置内での紙詰まりを引き起こしてしまう。
【0006】
巻き付き等の分離性を改善する方法として、定着部材表層の表面粗さを調整する手法が知られている。例えば、定着ローラと加圧ローラの表面粗さを調整することによる定着ローラからの分離特性の向上が試みられている(例えば、特許文献1参照。)。また、定着ローラの表面粗さを0.1〜3μmに調整することによる定着時の熱ローラへの巻き付き現象の防止法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
定着部材表層の表面粗さを調整する手法としては、表層材料中に球状粒子を分散させその表層に球状の凹凸を形成する方法が知られている。例えば、付加反応型のシリコーンゴム中に、球状溶融シリカを含有させ、その表面に適度で曲面的な凹凸を形成する事により、トナー離型性を損なわずに機械的強度を向上させ、かつ耐摩耗性も向上させている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、耐摩耗性を向上させるには、表面の凹凸は必要不可欠な存在であり、凹凸の程度が大きい、または、凹凸が多いほど、耐摩耗性が向上する事になる。
【0008】
同様に、付加型シリコーンゴムに、アルミナと、球状四フッ化エチレン樹脂とを含有させる事により、熱伝導性に優れ、耐摩耗性及びトナーに対する離型耐久性の優れた組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この特許文献4には、耐摩耗性の向上に、球状の四フッ化エチレン樹脂の材料そのものとしての高い滑り性と、表面の適度な半球状の凹凸の形成が作用していることが述べられている。すなわち、前記理由と同じ理由から、凹凸が多いほど、耐摩耗性が向上する事になる。
【0009】
また、本発明者等は、硬度40°以下のシリコーンゴムあるいはフッソゴムに0.5〜20μmの高硬度球状体を分散させ、Rz1.0μm以下なる表層を形成し、これを局所的曲面状応力分布により定着画像の光沢性確保と低摩擦を兼ね備えた表層として提案している(特許文献5参照。)。
【0010】
さらに、上記弾性体表層に求められる特性のひとつにトナー離型性が挙げられる。トナー離型性とは、表層へのトナーの付着のし難さであり、トナーが付着しやすい場合、つまりトナー離型性が悪い場合には、定着画像にトナーの抜けが生じたり、表層に付着したトナーが再び記録紙へ定着し、トナー汚れを引き起こしたりする。これらは、トナーオフセットと呼ばれる。
【0011】
さらに、トナー離型性が悪い場合には、未定着画像を有する記録紙の紙巻付きの要因となり、分離性に問題を生じる場合がある。
【0012】
このため、表層の弾性体には、トナー離型性を低下させる補強性のフィラーは、できる限り少なくするか、ノンフィラーが望まれる。補強性のフィラーは、一般にその表面活性が高く、そのため、補強性は有するものの、トナー離型性には悪影響を与える事が知られている。
【0013】
しかしながら、このような補強性フィラーを含まない場合には、表層には、表面の摩擦性の改善が求められる。これらの表層は、実使用に供されると記録紙表面の凹凸により磨耗したり、あるいは、定着部材には、ブレードやクリーニングウェブなどの当接部品が接する場合が多く、これら当接部品との摩擦により、表層が摩耗したり、または、当接部品が摩耗したりする懸念があるためである。また、記録紙をニップにより挟持し、搬送する際にも、記録紙と表層表面の間には摩擦が生じ、同様の問題が引き起こされる可能性が考えられる。すなわち、高摩擦性の場合には、摩擦力が大きくなり、したがって摩耗が生じ易くなり、反対に、低摩擦性の場合には、摩擦力が小さくなり、したがって摩耗が生じにくくなる。
【0014】
表層の摩耗は、表層表面にキズや、凹凸を生じ、それがトナー画像へ転写する事により、光沢ムラなどの画像不良を引き起こし、問題となる。また、表層に離型補助オイルが塗布されている場合には、摩耗により生じたキズや凹凸により、オイルムラが生じ、同様に光沢ムラなどの画像不良を引き起こす。特に、補強性のフィラーが少ない場合、または、ノンフィラーである場合には、弾性体の強度を比較的大きくできないため、摩擦性の改善が望まれる。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−43774号公報
【特許文献2】
特開平10−319764号公報
【特許文献3】
特開平8−193166号公報
【特許文献4】
特開平9−12893号公報
【特許文献5】
特開2000−284626号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
これまで述べてきたように、加熱加圧定着装置に用いられるトナー定着用ローラのごとく定着部材のゴム材料表層には、記録紙の分離性能とともに耐磨耗性が要求される。しかし、既存の発明のごとく表面に曲面の凹凸を形成する事により分離性を確保することは可能であるが、これは同時に、表面の平滑性を損なう事になり、特に光沢性を要求されるカラー画像の定着には適さない場合がある。
【0017】
表面の平滑性を維持しつつ局所的曲面状応力分布を付与させる手段においては、ゴム材料硬度の低いものほどゴムと粒子の硬度差が顕著になり、応力分布における最大最小の差が大きくなり分離特性の改善も期待できる。しかしながら、この傾向はゴム層厚みが薄くなればそれだけ顕著になり、特に100μmを切る厚みになると、この応力分布が画質に影響し、定着画像の光沢ムラを生じる場合がある。
【0018】
したがって、本発明の目的は、特にカラー画像等の高画質定着に適した、分離性能にすぐれた耐磨耗性表層を有するトナー定着部材を提供する事にある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に、本願に係る発明は、
少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、
前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の粒径は該表層厚みの1/5〜1/2の範囲であることを特徴とする。
【0020】
本発明において、表層のJIS−A硬度(JIS K 6301のA型硬さ試験による)は50°以上であり、好ましくは55°〜70°の範囲である。この範囲であれば十分な分離性能を弾性体に付与することができる。
【0021】
本発明においては、表層の表面の、JIS B 0601による10点平均粗さ(Rz)は1.0μm以下とされる。このRz値により、目視上十分な光沢性を有した高画質トナー画像が得られる。
【0022】
弾性体よりも高い硬度の球状体を分散させる事により、弾性体が圧縮された際に、弾性体中に何も含まない場合や、球状体以外を含む場合に比べて、弾性体が良好な分離性能を有することが可能となる。これは、弾性体中に硬度の高い球状体が分散している事により、圧接界面において、局所的な曲面状の応力分布が生じ、これにより圧接面に対する分離性が向上するものと考えられる。
【0023】
すなわち、これらの効果は、既存の発明の様な、球状体を分散させて形成される表面の凹凸により得られるものではなく、圧接界面での局所的な曲面状の応力分布を利用して得られるものである。
【0024】
本発明者等が提案した従来技術では、表面の平滑性を維持しつつ局所的曲面状応力分布を付与させる手段は、比較的低硬度の表層において特に有効である。ゴム材料硬度の低いものほどゴムと粒子の硬度差が顕著になり、応力分布における最大最小の差が大きくなり分離特性の改善も期待できる。しかしながら、硬度が高くても、少なくとも表層の厚みが100μm以下であれば分離性能に充分寄与する局所的曲面状応力分布が期待できることが分かった。
【0025】
すなわち本発明は、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を、厚みが10〜100μmである表層に有する定着部材において有効である。弾性体を含む表層の厚みと、それに含まれる球状粉体粒径の関係、および球状粉体の形状とは分離性能に寄与する局所的曲面状応力分布に大いに関与している。球状粉体は、その平均粒径が層厚みの1/5〜1/2の範囲であれば、適切な局所的曲面状応力分布が実現でき、良好な分離性能を有する。球状粉体の粒径が小さすぎると硬度が均一化され、応力分布の効果がなく、大きすぎると表面性が損なわれる懸念がある。
【0026】
球状とは粉体の形状因子(短軸径/長軸径)が0.9以上なるものをいう。具体的には走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内の任意の10個の観察される粒子の長軸径および短軸径を測定、全て粉体で形状因子が0.9以上になるものをいう。
【0027】
また、上記長軸径、短軸径の平均をその粉体の粒径とし、上記10個の平均を平均粒径とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の定着部材の表層は、シリコーンゴム、フッソゴムまたはこれらの複合体から選ばれた、硬度が50°(JIS−A)以上の弾性体と、球状粉体とを含み、厚みは10〜100μmに形成される。
【0029】
シリコーンゴムとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフルオロアルキルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンが用いられる。これらのシリコーンゴムはミラブル型のものでも液状のものでもよい。これらは単独であるいは2種類以上併せて用いることができる。
【0030】
フッソゴムとしては、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン三元共重合体、四フッ化エチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体等が挙げられ、単独であるいは2種類以上併せて用いることができる。
【0031】
また、シリコーンゴムとフッソゴムの複合体としては、複合体中にシリコーンゴムが20〜80質量%含有されるものが好ましく用いられ、特にシリコーンゴムを海相とし、フッ素ゴムを島相とする海島構造を有する分散物が好ましく用いられる。このような複合体は、シリコーンゴムとフッ素ゴムとを、好ましくは100〜250℃の加熱条件下において混練することにより得られる。
【0032】
耐磨耗性をより重視するという観点からは、フッソゴムを用いるのが好ましい。フッソゴムの中でもフッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体であるフルオロポリマーを過酸化物加硫したものはトナー離型性に優れ、より良好な分離性能を示すため、好ましい。
【0033】
上記フルオロポリマーとしては、ダイキン工業(株)製(商品名:LTシリーズ)、デュポン(株)製(商品名:GLTシリーズ、GFLTシリーズ)が挙げられる。該フッソ系ゴムの加硫の際に用いられる加硫剤は、パーオキサイド加硫剤が用いられる。上記パーオキサイド加硫剤は特に制限されるものではなく、従来公知のものが使用される。例えば、ベンゾイルペルオキサイド、t−ブチルクミルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等があげられる。上記パーオキサイド加硫剤の配合割合は、フッ素系ゴム100質量部(以下「部」と略す)に対して0.5〜5部の範囲に設定することが好ましい。
【0034】
上記表層の形成材料として、上記フッソ系ゴムおよびパーオキサイド加硫剤の他に、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の多官能加硫助剤が適宜使用される。
【0035】
また、従来からフッソ系ゴム組成物に使用される充填剤も、表層の形成材料として適宜使用することが可能である。この充填剤としては、例えば、カ−ボンブラックがあげられる。その配合割合は、フッ素系ゴム100部に対して0〜30部の範囲に設定することが好ましい。しかしながら、より良好なトナー離型性を得るという観点からは、前述したように、球状粉体以外の材料を実質に含まないもの、すなわち弾性体と球状粉体とからなるか、あるいはその他の材料が含まれていても、表層に要求される所望とする物性や変化しないものが最も適している。
【0036】
好ましい球状粉体としては、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ボロン及び酸化ベリリウム等の無機粒子、ガラス製粒子並びにシリコーン樹脂製粒子があげられる。特に、球状ガラス粒子、球状シリコーン樹脂粒子及びこれらの混合物は、シリコーンゴム、フッソゴムへの分散が良好であり、より好ましい。球状体の平均粒径は表層厚みの1/5〜1/2の範囲であり、平均粒径が2〜50μmの範囲のものが用いられることで表層に良好な分離性能を有することが出来る。さらに、より良好な分離性能を有することから、球状体の平均粒径は10〜40μmの範囲のものを用いることがより好ましい。
【0037】
アルミナの例としては、昭和電工(株)製アルミナ(商品名:アルミナビーズA)、住友化学工業(株)製アルミナ(商品名:AKP・シリーズ)、住友化学工業(株)製アルミナ(商品名:スミコランダム・シリーズ)、レイノズル(株)製アルミナ(商品名:ERC−DB)、ノートン(株)製アルミナ(商品名:Norton−E600)、非晶質シリカとして日本触媒(株)製非晶質シリカ(商品名:シ−ホスタ・シリーズ)、その他、セラミック製として小野田セメント(株)製(マイクロセルズSL・シリーズ)、日本シリカ工業(株)製(商品名:グラス マイクロバルーンFAA 、平均粒子径80μm)等が挙げられる。更に、日本シリカ工業(株)製のシリカ製のグラス(商品名:マイクロバルーンSI)や、日本フィライト(株)製のアルミノシリケート(商品名:フィライト・シリーズ)といったものが挙げられる。日本フェライト社製中空状無機充填剤(商品名:エクスパンセル及びフィライト)、3M社製中空状無機充填剤(商品名:ガラスバルブ)等;大阪ガス社製球状無機充填剤(商品名:メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。
【0038】
ガラス製のものとして球状粒子は内部が詰まった状態のビーズと、中空状のバルーンとがある。以下、市販品の一例を挙げる。ビーズとしては、東海工業(株)製ビーズ(商品名:EL−STAR・シリーズ)、(株)ユニオン製ビーズ(商品名:UB・シリーズ)、東芝バロティーニ(株)製ビーズ(商品名:東芝ガラスビーズGB・シリーズ)や、ガラスビーズを再加熱することによって再結晶化させる結晶化ガラスが挙げられる。バルーンとしては、住友スリーエム(株)製バルーン(商品名:スコッチライト グラスバブルズ・シリーズ)、日本シリカ工業(株)製バルーン(商品名:グラス マイクロバルーン IG・シリーズ)等が挙げられる。
【0039】
シリコーン樹脂粒子としては東芝シリコーン(株)製シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール・シリーズ)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製シリコーン樹脂粒子(商品名:トレフィルR・シリーズ)等が挙げられる。
【0040】
弾性体中の球状体の含有量は、弾性体100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは3〜30質量部の範囲である。
【0041】
さらに、本発明における定着部材において、上記弾性体がフッソゴムの場合、弾性体中の球状体表面は、アミノシラン処理されたものが、フッソゴムとの相溶性が向上し、耐磨耗性が向上するため、好ましい。
【0042】
球状粉体表面は従来公知の方法でアミノシランを付着させてアミノシラン処理されればよい。例えば、球状粉体をスーパーミキサー中で高速攪拌しながらアミノシランを滴下する方法、あるいは数質量%のアミノシラン水溶液中に球状粉体を投入、攪拌し、その後水分を乾燥除去する方法、により可能である。用いるアミノシランはカップリング剤として使用されており、下記構造式で表される化合物が挙げられる。N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC3H6NH−C2H4NH2]、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン[(C2H5O)3SiC3H6NH−C2H4NH2]、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC3H6NH]、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン[(C2H5O)3SiC3H6NH]、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC3H6NHC6H5]。
【0043】
アミノシラン処理された上記球状粉体を用いる場合、表層のフッソゴムは、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体であるフルオロポリマーを過酸化物加硫したものを用いることが好ましい。フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体であるフルオロポリマーは良好なトナー離型性を有し、過酸化物加硫されたフッソゴムは特に良好なトナー離型性を示すため、フッソゴム表層材としては最も適している。
【0044】
本発明の定着ローラ、定着ベルト等の定着部材は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、所定量の球状体を分散させたシリコーンゴム、フッ素ゴムまたはこれらの複合体などの弾性体材料に加硫温度以下の温度において加硫剤、加硫助剤等を添加、混合し、得られた混合物を、予めプライマーを均一に塗布、乾燥させたローラ基材、ベルト基材(下層としてシリコーンゴム層、フッ素ゴム層を設けてもよい)の外周に、表層となるように形成し、加熱硬化、二次加硫工程を経ることにより製造される。
【0045】
表層の形成は、パイプ金型を用いたトランスファー成形、コーティングによる成形、ディップによる成形、スプレーによる塗布成形方法を用いても、表面平滑性が可能であれば特に限定するものではない。
【0046】
本発明の定着部材の表層をコーティング、ディップ、スプレー等による塗布成形方法を用いて形成する場合、必要に応じて上記材料を適当な溶剤を用いて液状化して用いる。例えばフッソゴム表層を有する定着部材の場合には、つぎのようにしてこれを作製することができる。
【0047】
すなわち、フッソ系ゴムに規定の平均粒径の球状粉体、充填剤、共加硫剤、加硫剤等を所定量加えて、ロール、ニーダー等で混練し、この混合物に溶剤を加えて混合,攪拌しフッ素系ゴム組成物コーティング液を調製する。この場合、フッ素系ゴム組成物コーティング液を調製する際に用いる溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソアミル等があげられ、これらは単独であるいは2種類以上混合して使用される。上記コーティング液は、フッ素系ゴム組成物の濃度が5〜70質量%(以下「%」と略す)の範囲で、表層形成手法に応じた粘度に設定することが好ましい。
【0048】
ついで、上記フッソ系ゴム組成物コーティング液を金属、耐熱樹脂のローラ基材、ベルト基材、あるいはフィルム基材上に下層として形成された弾性体層の各外周面に、あるいは金属、耐熱樹脂のローラ基材、ベルト基材、フィルム基材に直接均一に塗工して乾燥させ、その後加熱硬化させる。上記フッ素系ゴム組成物コーティング液を塗工する方法は、リングコート法、ディップ法、スプレーコーティング法、ロールコート法等があげられる。
【0049】
これらのコーティング法のいずれかを用いて、表層にフッ素系ゴム組成物弾性体層が形成され、このフッソ系ゴム組成物弾性体層をパーオキサイド加硫する場合には、この加硫処理は、例えば、下記の操作により行うことができる。まず、上記フッ素系ゴム組成物が塗工されたローラ、ベルト、フィルムを、オーブン等に入れ、上記フッ素系ゴム組成物の薄膜が雰囲気中の酸素と接触しないように窒素ガス等の不活性ガスでオーブン内を置換し、オーブン内を無酸素雰囲気にして加熱硬化し、一体化する。
【0050】
上記パーオキサイド加硫は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下の無酸素状態下で行う必要がある。すなわち、パーオキサイド加硫剤は酸素存在下で加熱されると反応に関与するラジカル発生が阻害され、その結果、フッ素系ゴム組成物の加硫が充分になされないからである。上記不活性ガスとしては、窒素ガスの他に、アルゴンガス、ヘリウムガス等があげられる
ここで本発明の定着部材を製造の際、表層を形成するのに用いたリングコート法について、ベルト基材への塗工を例に説明する。図4にリングコート法用の装置の概略図を示す。この装置は、基板上に、外周にベルト基材41を装着したアルミ製の円筒体保持冶具411を水平にかつ軸中心に回転させ、軸方向に水平移動させる事ができる塗工台42を有する。さらに基板上には水平方向には動かずリング形状の塗工ヘッド431を円筒体保持冶具中心軸垂直平面上で移動自在に保持している塗工ヘッド保持部44が取付けられている。該塗工ヘッド431は移動方向終端部には塗工後のベルト外径とほぼ等しい内径を持ちその前方にはベルト基材外周と接触し円筒体保持冶具軸方向に円筒体保持冶具軸と同軸に相対移動させる為のガイド部分を持っている。このガイド部分の塗布液通過部分の断面積は塗工膜断面積より大きく作られており塗工後のベルト外径とほぼ等しい内径である該塗工ヘッド移動方向終端部に塗布液が充分に供給できるようになっている。
【0051】
該塗工ヘッド431と円筒体保持冶具上ベルト基材41とのギャップ部分に塗布液を供給する供給口は、該塗工ヘッドと一体でも良いし別部材でも良いが本例では別部材の塗布液供給ノズル45として塗工ヘッド進行方向前方に設けてある。また塗布液供給位置は塗布液粘度および塗工厚みの関係で液落ちしない状態であれば円筒体の上方に限らずどの位置でも良いが、本実施例では円筒体保持冶具411の上方から行った。塗布液の供給方法は単位時間当り一定量の供給を行った。
【0052】
また塗布液供給ノズル45は塗液搬送用のチューブ46で定量(時間当たり)吐出可能な電動式のシリンダーポンプ47に接続しておりそこから塗布液48が供給される。シリンダーポンプは液の脈動が起こらない為、安定した吐出が可能である。
【0053】
上記の装置によるローラ基材への塗工の場合は、円筒体保持冶具の替わりにローラ基材を直接装置に装着すれば良い。これにより、目的とする定着ローラ、定着ベルト等の定着部材を得ることができる。
【0054】
なお、上記定着ローラ、定着ベルトは、ローラ基材、ベルト基材の外周面に上記弾性層が形成された単層構造のものや、例えば、ローラ基材、ベルト基材の外周面にシリコーンゴム、フロロシリコーンゴムが形成されたものの最外層に上記弾性層が被覆された、2層構造のものや3層構造のもの等も挙げることができる。
【0055】
次に、本発明における定着ベルトについて説明する。
【0056】
図1は本例における定着ベルト10の層構成の一例を示す模式図である。本例の定着ベルト10は、基層となるニッケル電鋳無端ベルトからなる金属層(ニッケル電鋳層)1と、その外面に積層した弾性体下層2と、さらにその外面に積層した弾性体表層3と、金属層1の内面に積層した摺動層4との複合構造を有する。定着ベルト10において、摺動層4が内面側(ベルトガイド面側)であり、弾性体表層3が外面側(加圧ローラ面側)である。金属層1と弾性体下層2との間、弾性体下層2と弾性体表層3との間、あるいは金属層1と摺動層4との間には、接着のためにプライマー層(不図示)を設けてもよい。プライマー層はシリコーン系、エポキシ系、ポリアミドイミド系等の公知のものを使用すればよく、その厚さは、通常、1〜10μm程度である。
【0057】
図2は本例における定着ベルト10’の層構成の一例を示す模式図である。図2は、弾性体下層を設けない例である。本例の定着ベルト10’は、基層となるニッケル電鋳無端ベルトからなる金属層1’と、その外面に積層した弾性体表層3’と、金属層1’の内面に積層した摺動層4’との複合構造を有する。定着ベルト10’において、摺動層4’が内面側(ベルトガイド面側)であり、弾性体表層3’が外面側(加圧ローラ面側)である。金属層1’と弾性体表層3’との間、あるいは金属層1と摺動層4との間には、接着のためにプライマー層(不図示)を設けてもよい。プライマー層は図1の定着ベルト10と同様のものを設ければよい。
【0058】
a.金属層1
金属層1はSUS等の円柱状母型を電鋳浴に浸漬させ、母型表面に電鋳プロセスにより成長させたニッケル(合金)からなる。
【0059】
熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、膜厚は100μm以下、特に50μm以下であることが好ましく、さらに20μm以上であることが好ましい。
【0060】
b.弾性体下層2
弾性体下層2は設けても設けなくてもよいが、弾性体下層を設けることにより、ニップ部において被加熱像を覆って熱の伝達を確実にするとともに、ニッケル電鋳ベルトの復元力を補って回転・屈曲による疲労を緩和することができる。また、弾性体下層を付与することにより、弾性体表層の表面の未定着トナー像表面への追従性を増し、熱を効率よく伝達させることが可能になる。弾性体下層2を設けた定着ベルトは、特に、未定着トナーののり量が多いカラー画像の加熱定着に特に適している。
【0061】
弾性体下層2の材質としては、特に限定されず、耐熱性がよく、熱伝導率がよいものを選べばよい。弾性体下層2としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が好ましく、特にシリコーンゴムが好ましく、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等を例示することができる。
【0062】
なお、必要に応じて、弾性体下層には、乾式シリカ、湿式シリカ等補強性充填材、炭酸カルシウム、石英粉、珪酸ジルコニウム、クレー(珪酸アルミニウム)、タルク(含水珪酸マグネシウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ベンガラ(酸化鉄)等を含有させてもよい。
【0063】
弾性体下層2の厚さは、良好な定着画像品質を得るために適度な柔軟性があればよく、10μm以上、特に50μm以上が好ましく、また1000μm以下、特に500μm以下が好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では被記録材上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、被記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面(弾性体表層3の表面)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分とで画像に光沢ムラが発生する。つまり、伝熱量が多い部分は光沢度が高くなり、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。弾性体表層3が固い場合に、弾性体下層2があまりに薄いと、被記録材あるいはトナー層の凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが発生してしまうことがある。また、弾性体下層2があまりに厚いと、弾性層の熱抵抗が大きくなりクイックスタートを実現するのが難しくなることがある。
【0064】
弾性体下層2の硬度(JIS−A)は、画像光沢ムラの発生が十分抑制され、良好な定着画像品質が得られるので、70゜以下が好ましい。
【0065】
弾性体下層2の熱伝導率λは、2.5×10−3[W/cm・℃]以上、特に3.3×10−3[W/cm・℃]以上が好ましく、8.4×10−3[W/cm・℃]以下、特に6.3×10−3[W/cm・℃]以下が好ましい。熱伝導率λがあまりに小さい場合には、熱抵抗が大きくなってきて定着ベルトの表層における温度上昇が遅くなることがある。熱伝導率λがあまりに大きい場合には、硬度が高くなったり、圧縮永久歪みが悪化したりすることがある。
【0066】
このような弾性体下層は公知の方法、例えば、液状のシリコーンゴム等の材料をブレードコート法等の手段によって金属層上に均一な厚みでコート、加熱硬化する方法、液状のシリコーンゴム等の材料を成形型に注入し加硫硬化する方法;押出成形後に加硫硬化する方法;射出成形後に加硫硬化する方法等で形成すればよい。
【0067】
c.弾性体表層3
弾性体表層3には本発明に関わる弾性体表層を用いる。
【0068】
d.摺動層4
摺動層4は必須ではないが、像加熱定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減を図るうえでこれを設けることが好ましい。
【0069】
その材質は、特に限定されず、高耐熱性で強度が高く、表面が滑らかにできるものを選べばよい。摺動層4としては、ポリイミド樹脂等が好ましい。
【0070】
なお、必要に応じて、摺動層には摺動剤としてフッソ樹脂粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等を摺動層に含有させてもよい。
【0071】
摺動層4の厚さとしては5μm以上、特に10μm以上が好ましく、100μm以下、特に60μm以下が好ましい。摺動層4があまりに薄いと耐久性が不足することがある。摺動層4があまりに厚いと定着ベルトの熱容量が大きくなり、立ち上がり時間が長くなることがある。
【0072】
このような摺動層は公知の方法、例えば、液状の材料をコート・乾燥・硬化等の方法、あるいは予めチューブ化したものを貼りつける方法等で形成すればよい。
【0073】
【実施例】
本発明の具体的実施例について説明する。下記に示すフッソゴムポリマー配合物に表1に示す球状粉体をオープンロールを用いて混練した。
【0074】
フルオロポリマー:ダイキン工業(株)(商品名:LT302)・・・100質量部
架橋助剤:日本化成(株)製トリアリルイソシアヌレート“TAIC(登録商標)”・・・4質量部
架橋剤:キシダ化学(株)製ベンゾイルパーオキサイド・・・・2質量部
(上記混合物の加熱硬化物の硬度は60°(JIS−A)である)。
【0075】
その後メチルイソブチルケトンにポリマー成分が50質量%になるよう溶解、塗布液を調整した。該塗布液を前述したリング塗工装置を用い各基材ベルト上に塗工、乾燥工程を経て加熱硬化、表1に示す厚みの表層を形成し、定着ベルトとした。
【0076】
乾燥工程、加熱工程において、ベルト基材は塗布液中の球状粉体が局所化するのを防止する為10RPMの回転速度で回転させた。乾燥工程は風乾で1時間行い、ついで、加熱硬化工程は、窒素ガスで置換された無酸素雰囲気下で、同様に回転させながらベルト基材に略平行に近赤外線ランプを配置し、塗工表面がおよそ200℃となるように調整し、20分間行った。
【0077】
基層は厚み50μmのニッケル電鋳ベルトであり、実施例1−1〜1−3、比較例1−1は、弾性体下層として厚み200μmでJIS−A硬度30°のシリコーンゴムが設けてあり、その上に表1に示すような弾性体表層が被覆されている。実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3は、ニッケル電鋳ベルトに直接表1に示す弾性体表層が被覆されている。本実施例及び比較例において、摺動層は厚み15μmのポリイミド樹脂である。
【0078】
【表1】
【0079】
表1中のアミノシラン処理品は、次の要領で表面処理を施した。アミノシラン(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)1質量%水溶液にトスパール3120(東芝シリコーン(株)製)を投入して攪拌し、その後水分を乾燥除去することにより実施した。エアロジル200(日本エアロジル(株))についても同様の処理を行った。
【0080】
本実施例の定着ベルトの性能テストについて説明する。
【0081】
<像加熱定着装置>
本実施例の定着ベルトは像加熱定着装置に搭載することができる。
【0082】
図3は本例における像加熱定着装置の一例の横断面模式図を示す図である。本例において像加熱定着装置は、加熱体としてセラミックヒータを用いたベルト加熱方式の装置であり、定着ベルト310は前述の本発明のものである。
【0083】
ベルトガイド316は耐熱性・断熱性を有する。加熱体としてのセラミックヒータ312は、ベルトガイド316の下面のほぼ中央部にガイド長手に沿って形成具備させた溝部に嵌入して固定支持させてある。そして、円筒状もしくはエンドレス状の本発明の定着ベルト310はベルトガイド316にルーズに外嵌させてある。
【0084】
加圧用剛性ステイ322はベルトガイド316の内側に挿通してある。
【0085】
加圧部材330は、本例では弾性加圧ローラである。この加圧部材330は、芯金330aにシリコーンゴム等の弾性層330bを設けて硬度を下げたもので、芯金330aの両端部を装置の不図示の手前側と奥側のシャーシー側板との間に回転自由に軸受け保持させて配設してある。弾性加圧ローラは、表面性を向上させるために、さらに外周にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂層を設けてもよい。
【0086】
加圧用剛性ステイ322の両端部と装置シャーシー側のバネ受け部材(不図示)との間にそれぞれ加圧バネ(不図示)を縮設することで、加圧用構成ステイに押し下げ力を作用させている。これにより、ベルトガイド316の下面に配設した摺動板340の下面と加圧ローラ330の上面とが定着ベルト310を挟んで圧接して所定幅の定着ニップ部Nが形成される。なお、ベルトガイド316の部材としては、耐熱フェノール樹脂、LCP(液晶ポリエステル)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等、耐熱性に優れた樹脂を用いる。
【0087】
加圧ローラ330は、駆動手段により矢示のように反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ330の回転駆動による加圧ローラ330と定着ベルト310との外面との摩擦力で定着ベルト310に回転力が作用して、定着ベルト310はその内面が定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ312の下面に密着して摺動しながら、矢示のように時計方向に加圧ローラ330の回転周速度にほぼ対応した周速度でベルトガイド316の外回りに回転する(加圧ローラ駆動方式)。
【0088】
プリントスタート信号に基づいて加圧ローラ330の回転が開始され、またセラミックヒータ312のヒートアップが開始される。加圧ローラ330の回転による定着ベルト310の回転周速度が定常化し、セラミックヒータ312の温度が所定温度に立ち上がった状態において、定着ニップ部Nの定着ベルト310と加圧ローラ330との間に被加熱材としてのトナー画像tを担持させた被記録材Pがトナー画像担持面側を定着ベルト310側にして導入される。そして、被記録材Pは定着ニップ部Nにおいて定着ベルト310を介してセラミックヒータ312の下面に密着し、定着ベルト310と一緒に定着ニップ部Nを移動通過していく。その移動通過過程において、セラミックヒータ312の熱が定着ベルト310を介して被記録材Pに付与され、トナー画像tが被記録材P面に加熱定着される。定着ニップ部Nを通過した被記録材Pは定着ベルト310の外面から分離して搬送される。
【0089】
加熱体としてのセラミックヒータ312は、定着ベルト310・被記録材Pの移動方向に直交する方向を長手とする低熱容量の横長の線状加熱体である。チッ化アルミニウム等でできたヒータ基板312aと、このヒータ基板312aの表面にその長手に沿って設けた発熱層312b、例えばAg/Pd(銀/パラジウム)等の電気抵抗材料を約10μm、幅1〜5mmにスクリーン印刷等により塗工して設けた発熱層312bと、さらにその上に設けたガラスやフッ素樹脂等の保護層312cを基本構成とするものである。なお、用いるセラミックヒータはこのようなものに限定されるわけではない。
【0090】
そして、セラミックヒータ312の発熱層312bの両端間に通電されることで発熱層312bは発熱し、ヒータ312が急速に昇温する。そのヒータ温度が温度センサ(不図示)に検知され、ヒータ温度が所定の温度に維持されるように制御回路(不図示)で発熱層312bに対する通電が制御されてヒータ312は温調管理される。
【0091】
セラミックヒータ312は、ベルトガイド316の下面のほぼ中央部にガイド長手に沿って形成具備させた溝部に、保護層312c側を上向きに嵌入して固定支持させてある。定着ベルト310と接触する定着ニップ部Nには、このセラミックヒータ312の摺動部材340の面と定着ベルト310の内面が相互接触摺動する。
【0092】
<ベルト性能の評価>
定着ベルト性能(画質)の評価は、黒べた未定着トナー画像を上記実施例、比較例の定着ベルトを搭載した前記加熱加圧定着装置に通紙し、排紙状態からベルトの分離性能、定着画像のトナー光沢との光沢ムラを、目視によりを確認し画質性能を評価した。黒べた未定着トナー画像は、キヤノン(株)製のカラーLBP(商品名:カラーレーザーショットLBP−2040)を用い、未定着トナーが転写された記録紙を定着前に取り出すことで得た。黒べたトナー画像通紙の際には、ヒータ温度を220℃に設定し、定着ベルト回転スピードを60rpmに設定した。
【0093】
このベルト性能の評価は、未使用のベルトと、白紙5000枚通紙による摩耗耐久テスト後のベルトにて行った。摩耗耐久テストは、未使用のベルトの評価後に、白紙(A4サイズ)5000枚を上記温度条件で連続通紙することにより行った。未使用のベルトと、摩耗耐久テスト後のベルトの、ローラ性能(画質)を比較し、同一条件で各種ベルトを評価する事により、摩耗耐久性、すなわち言い換えると、摩擦性の優位性を比較する事ができる。
【0094】
結果は表2に示すとおりである。
【0095】
【表2】
【0096】
弾性体表層に球状粉体を含まない比較例2−1は、表層厚みが100μm以下のときには紙の巻きつきが発生してしまった。また、球状粉体の平均粒径が52μmであり、表層厚みに対して、1/2より大きい比較例1−1は、分離性能においては問題が無かったが、画像において光沢ムラが発生してしまった。これは、平均粒径が弾性体表層に対して大きかったため、表面に凹凸が生じ、さらに表層が52μmと薄かったことによると思われる。さらに、弾性体表層の厚みに対して、球状粉体の平均粒径が1/5よりも小さい比較例2−2は、分離性能を満たすのに十分な粒径では無く、したがって、排紙カールが発生してしまった。添加粉体に不定形シリカを用いた比較例2−3は、添加粉体の形状が球状でないために、良好な分離性能を示すことができなかった。これは局所的な曲面状応力分布が不十分であったと考えられる。
【0097】
一方、表層の厚みが10〜100μmであり、球状粉体の粒径が該弾性体表層厚みの1/5〜1/2の範囲である、実施例1−1〜1−3及び実施例2−1は初期評価における分離性能及び画質性能ならびに耐久後評価における分離性能及び画質性能の両方において良好な効果が得られた。さらに、球状粉体をアミノシラン処理した実施例1−3では、アミノシラン処理をしていない実施例1−2と比較して、耐久後においても画質性能が良好なものが得られた。また、弾性体下層としてシリコーンゴムを設けた実施例1と、設けなかった実施例2を比較したが、どちらも良好な結果が得られた。
【0098】
【発明の効果】
少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、本発明の定着部材は前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の粒径は層厚みの1/5〜1/2の範囲であるため、良好な分離性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着ベルトの層構成の一例の模式図である。
【図2】本発明の定着ベルトの層構成の一例の模式図である。
【図3】実施形態例の検証に用いた像加熱装置の概略構成図である。
【図4】実施形態例の定着ベルト製造に用いたリングコート装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1,1’ ニッケル電鋳層
2 弾性体下層
3,3’ 弾性体表層
4,4’ 摺動層
10,10’,310 定着ベルト
312 セラミックヒータ
316 ベルトガイド
322 加圧用剛性ステイ
330 加圧部材(加圧ローラ)
340 摺動板
N 定着ニップ部
t トナー画像
P 被記録材
【発明の属する技術分野】
本発明は複写機、プリンター、ファクシミリ等のトナー画像形成装置の加熱加圧定着装置に用いられる、特に高画質が要求される装置に適している定着用ローラ、ベルト及びフィルム等の定着部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、加熱加圧定着装置は、加熱されたローラとローラ、フィルムとローラ、ベルトとローラ、といった回転体を含む一対の部材が圧接されて機能する構成を有しており、未定着のトナー画像を有した記録紙がこの一対の部材間(ニップ部)に挟持、搬送される。この過程で未定着トナー画像は、このニップ内において、加熱・軟化し、加圧力により記録紙へ押し付けられ、その後、冷却・固化を経て、記録紙上にトナーの定着画像が形成される。
【0003】
一般に、未定着トナーと接する側の部材は、その形態に応じて定着ローラ、定着ベルト、定着フィルム等と呼ばれる。
【0004】
これら定着部材は、金属や耐熱樹脂などからなるローラ基材、ベルト基材またはフィルム基材に、耐熱性の弾性体を、単層または多層に積層して構成される場合が多い。特に、この弾性体層としての最外層は、表層と呼ばれ、これを構成する弾性体材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、及びこれらの混合物が例示される。表層にフッ素樹脂が用いられることもあるがフッ素樹脂は、柔軟性に乏しい。表層の柔軟性は、定着後の画質に影響を与える。表層が柔軟である場合、トナーの形状に追従して変形しやすく、ニップ内でトナーを加圧した際に、未定着のトナーを周囲に飛び散らせることなく、高精度に目的の場所に定着させることができるため、高度に精細な定着画像が期待できる。すなわち、高画質にトナーを定着させるには、弾性体からなる表層が適しており、前述したシリコーンゴム、及びフッ素ゴムといった弾性体が適していることが知られている。
【0005】
しかしながらこれらのゴム材料は基本的に表面粘着性を有する場合が多く、また、摩擦力も大きいため、ニップ内での摩擦帯電により記録紙はニップ通過後ゴム表面に吸着しやすく、記録紙の巻き付き等の分離性に問題を生じる場合がある。分離性が悪化すると、排紙された定着画像を有する記録紙がカールしたり、最悪の場合定着装置内での紙詰まりを引き起こしてしまう。
【0006】
巻き付き等の分離性を改善する方法として、定着部材表層の表面粗さを調整する手法が知られている。例えば、定着ローラと加圧ローラの表面粗さを調整することによる定着ローラからの分離特性の向上が試みられている(例えば、特許文献1参照。)。また、定着ローラの表面粗さを0.1〜3μmに調整することによる定着時の熱ローラへの巻き付き現象の防止法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
定着部材表層の表面粗さを調整する手法としては、表層材料中に球状粒子を分散させその表層に球状の凹凸を形成する方法が知られている。例えば、付加反応型のシリコーンゴム中に、球状溶融シリカを含有させ、その表面に適度で曲面的な凹凸を形成する事により、トナー離型性を損なわずに機械的強度を向上させ、かつ耐摩耗性も向上させている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、耐摩耗性を向上させるには、表面の凹凸は必要不可欠な存在であり、凹凸の程度が大きい、または、凹凸が多いほど、耐摩耗性が向上する事になる。
【0008】
同様に、付加型シリコーンゴムに、アルミナと、球状四フッ化エチレン樹脂とを含有させる事により、熱伝導性に優れ、耐摩耗性及びトナーに対する離型耐久性の優れた組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この特許文献4には、耐摩耗性の向上に、球状の四フッ化エチレン樹脂の材料そのものとしての高い滑り性と、表面の適度な半球状の凹凸の形成が作用していることが述べられている。すなわち、前記理由と同じ理由から、凹凸が多いほど、耐摩耗性が向上する事になる。
【0009】
また、本発明者等は、硬度40°以下のシリコーンゴムあるいはフッソゴムに0.5〜20μmの高硬度球状体を分散させ、Rz1.0μm以下なる表層を形成し、これを局所的曲面状応力分布により定着画像の光沢性確保と低摩擦を兼ね備えた表層として提案している(特許文献5参照。)。
【0010】
さらに、上記弾性体表層に求められる特性のひとつにトナー離型性が挙げられる。トナー離型性とは、表層へのトナーの付着のし難さであり、トナーが付着しやすい場合、つまりトナー離型性が悪い場合には、定着画像にトナーの抜けが生じたり、表層に付着したトナーが再び記録紙へ定着し、トナー汚れを引き起こしたりする。これらは、トナーオフセットと呼ばれる。
【0011】
さらに、トナー離型性が悪い場合には、未定着画像を有する記録紙の紙巻付きの要因となり、分離性に問題を生じる場合がある。
【0012】
このため、表層の弾性体には、トナー離型性を低下させる補強性のフィラーは、できる限り少なくするか、ノンフィラーが望まれる。補強性のフィラーは、一般にその表面活性が高く、そのため、補強性は有するものの、トナー離型性には悪影響を与える事が知られている。
【0013】
しかしながら、このような補強性フィラーを含まない場合には、表層には、表面の摩擦性の改善が求められる。これらの表層は、実使用に供されると記録紙表面の凹凸により磨耗したり、あるいは、定着部材には、ブレードやクリーニングウェブなどの当接部品が接する場合が多く、これら当接部品との摩擦により、表層が摩耗したり、または、当接部品が摩耗したりする懸念があるためである。また、記録紙をニップにより挟持し、搬送する際にも、記録紙と表層表面の間には摩擦が生じ、同様の問題が引き起こされる可能性が考えられる。すなわち、高摩擦性の場合には、摩擦力が大きくなり、したがって摩耗が生じ易くなり、反対に、低摩擦性の場合には、摩擦力が小さくなり、したがって摩耗が生じにくくなる。
【0014】
表層の摩耗は、表層表面にキズや、凹凸を生じ、それがトナー画像へ転写する事により、光沢ムラなどの画像不良を引き起こし、問題となる。また、表層に離型補助オイルが塗布されている場合には、摩耗により生じたキズや凹凸により、オイルムラが生じ、同様に光沢ムラなどの画像不良を引き起こす。特に、補強性のフィラーが少ない場合、または、ノンフィラーである場合には、弾性体の強度を比較的大きくできないため、摩擦性の改善が望まれる。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−43774号公報
【特許文献2】
特開平10−319764号公報
【特許文献3】
特開平8−193166号公報
【特許文献4】
特開平9−12893号公報
【特許文献5】
特開2000−284626号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
これまで述べてきたように、加熱加圧定着装置に用いられるトナー定着用ローラのごとく定着部材のゴム材料表層には、記録紙の分離性能とともに耐磨耗性が要求される。しかし、既存の発明のごとく表面に曲面の凹凸を形成する事により分離性を確保することは可能であるが、これは同時に、表面の平滑性を損なう事になり、特に光沢性を要求されるカラー画像の定着には適さない場合がある。
【0017】
表面の平滑性を維持しつつ局所的曲面状応力分布を付与させる手段においては、ゴム材料硬度の低いものほどゴムと粒子の硬度差が顕著になり、応力分布における最大最小の差が大きくなり分離特性の改善も期待できる。しかしながら、この傾向はゴム層厚みが薄くなればそれだけ顕著になり、特に100μmを切る厚みになると、この応力分布が画質に影響し、定着画像の光沢ムラを生じる場合がある。
【0018】
したがって、本発明の目的は、特にカラー画像等の高画質定着に適した、分離性能にすぐれた耐磨耗性表層を有するトナー定着部材を提供する事にある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に、本願に係る発明は、
少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、
前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の粒径は該表層厚みの1/5〜1/2の範囲であることを特徴とする。
【0020】
本発明において、表層のJIS−A硬度(JIS K 6301のA型硬さ試験による)は50°以上であり、好ましくは55°〜70°の範囲である。この範囲であれば十分な分離性能を弾性体に付与することができる。
【0021】
本発明においては、表層の表面の、JIS B 0601による10点平均粗さ(Rz)は1.0μm以下とされる。このRz値により、目視上十分な光沢性を有した高画質トナー画像が得られる。
【0022】
弾性体よりも高い硬度の球状体を分散させる事により、弾性体が圧縮された際に、弾性体中に何も含まない場合や、球状体以外を含む場合に比べて、弾性体が良好な分離性能を有することが可能となる。これは、弾性体中に硬度の高い球状体が分散している事により、圧接界面において、局所的な曲面状の応力分布が生じ、これにより圧接面に対する分離性が向上するものと考えられる。
【0023】
すなわち、これらの効果は、既存の発明の様な、球状体を分散させて形成される表面の凹凸により得られるものではなく、圧接界面での局所的な曲面状の応力分布を利用して得られるものである。
【0024】
本発明者等が提案した従来技術では、表面の平滑性を維持しつつ局所的曲面状応力分布を付与させる手段は、比較的低硬度の表層において特に有効である。ゴム材料硬度の低いものほどゴムと粒子の硬度差が顕著になり、応力分布における最大最小の差が大きくなり分離特性の改善も期待できる。しかしながら、硬度が高くても、少なくとも表層の厚みが100μm以下であれば分離性能に充分寄与する局所的曲面状応力分布が期待できることが分かった。
【0025】
すなわち本発明は、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を、厚みが10〜100μmである表層に有する定着部材において有効である。弾性体を含む表層の厚みと、それに含まれる球状粉体粒径の関係、および球状粉体の形状とは分離性能に寄与する局所的曲面状応力分布に大いに関与している。球状粉体は、その平均粒径が層厚みの1/5〜1/2の範囲であれば、適切な局所的曲面状応力分布が実現でき、良好な分離性能を有する。球状粉体の粒径が小さすぎると硬度が均一化され、応力分布の効果がなく、大きすぎると表面性が損なわれる懸念がある。
【0026】
球状とは粉体の形状因子(短軸径/長軸径)が0.9以上なるものをいう。具体的には走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内の任意の10個の観察される粒子の長軸径および短軸径を測定、全て粉体で形状因子が0.9以上になるものをいう。
【0027】
また、上記長軸径、短軸径の平均をその粉体の粒径とし、上記10個の平均を平均粒径とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の定着部材の表層は、シリコーンゴム、フッソゴムまたはこれらの複合体から選ばれた、硬度が50°(JIS−A)以上の弾性体と、球状粉体とを含み、厚みは10〜100μmに形成される。
【0029】
シリコーンゴムとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフルオロアルキルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンが用いられる。これらのシリコーンゴムはミラブル型のものでも液状のものでもよい。これらは単独であるいは2種類以上併せて用いることができる。
【0030】
フッソゴムとしては、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン三元共重合体、四フッ化エチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体等が挙げられ、単独であるいは2種類以上併せて用いることができる。
【0031】
また、シリコーンゴムとフッソゴムの複合体としては、複合体中にシリコーンゴムが20〜80質量%含有されるものが好ましく用いられ、特にシリコーンゴムを海相とし、フッ素ゴムを島相とする海島構造を有する分散物が好ましく用いられる。このような複合体は、シリコーンゴムとフッ素ゴムとを、好ましくは100〜250℃の加熱条件下において混練することにより得られる。
【0032】
耐磨耗性をより重視するという観点からは、フッソゴムを用いるのが好ましい。フッソゴムの中でもフッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体であるフルオロポリマーを過酸化物加硫したものはトナー離型性に優れ、より良好な分離性能を示すため、好ましい。
【0033】
上記フルオロポリマーとしては、ダイキン工業(株)製(商品名:LTシリーズ)、デュポン(株)製(商品名:GLTシリーズ、GFLTシリーズ)が挙げられる。該フッソ系ゴムの加硫の際に用いられる加硫剤は、パーオキサイド加硫剤が用いられる。上記パーオキサイド加硫剤は特に制限されるものではなく、従来公知のものが使用される。例えば、ベンゾイルペルオキサイド、t−ブチルクミルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等があげられる。上記パーオキサイド加硫剤の配合割合は、フッ素系ゴム100質量部(以下「部」と略す)に対して0.5〜5部の範囲に設定することが好ましい。
【0034】
上記表層の形成材料として、上記フッソ系ゴムおよびパーオキサイド加硫剤の他に、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の多官能加硫助剤が適宜使用される。
【0035】
また、従来からフッソ系ゴム組成物に使用される充填剤も、表層の形成材料として適宜使用することが可能である。この充填剤としては、例えば、カ−ボンブラックがあげられる。その配合割合は、フッ素系ゴム100部に対して0〜30部の範囲に設定することが好ましい。しかしながら、より良好なトナー離型性を得るという観点からは、前述したように、球状粉体以外の材料を実質に含まないもの、すなわち弾性体と球状粉体とからなるか、あるいはその他の材料が含まれていても、表層に要求される所望とする物性や変化しないものが最も適している。
【0036】
好ましい球状粉体としては、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ボロン及び酸化ベリリウム等の無機粒子、ガラス製粒子並びにシリコーン樹脂製粒子があげられる。特に、球状ガラス粒子、球状シリコーン樹脂粒子及びこれらの混合物は、シリコーンゴム、フッソゴムへの分散が良好であり、より好ましい。球状体の平均粒径は表層厚みの1/5〜1/2の範囲であり、平均粒径が2〜50μmの範囲のものが用いられることで表層に良好な分離性能を有することが出来る。さらに、より良好な分離性能を有することから、球状体の平均粒径は10〜40μmの範囲のものを用いることがより好ましい。
【0037】
アルミナの例としては、昭和電工(株)製アルミナ(商品名:アルミナビーズA)、住友化学工業(株)製アルミナ(商品名:AKP・シリーズ)、住友化学工業(株)製アルミナ(商品名:スミコランダム・シリーズ)、レイノズル(株)製アルミナ(商品名:ERC−DB)、ノートン(株)製アルミナ(商品名:Norton−E600)、非晶質シリカとして日本触媒(株)製非晶質シリカ(商品名:シ−ホスタ・シリーズ)、その他、セラミック製として小野田セメント(株)製(マイクロセルズSL・シリーズ)、日本シリカ工業(株)製(商品名:グラス マイクロバルーンFAA 、平均粒子径80μm)等が挙げられる。更に、日本シリカ工業(株)製のシリカ製のグラス(商品名:マイクロバルーンSI)や、日本フィライト(株)製のアルミノシリケート(商品名:フィライト・シリーズ)といったものが挙げられる。日本フェライト社製中空状無機充填剤(商品名:エクスパンセル及びフィライト)、3M社製中空状無機充填剤(商品名:ガラスバルブ)等;大阪ガス社製球状無機充填剤(商品名:メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。
【0038】
ガラス製のものとして球状粒子は内部が詰まった状態のビーズと、中空状のバルーンとがある。以下、市販品の一例を挙げる。ビーズとしては、東海工業(株)製ビーズ(商品名:EL−STAR・シリーズ)、(株)ユニオン製ビーズ(商品名:UB・シリーズ)、東芝バロティーニ(株)製ビーズ(商品名:東芝ガラスビーズGB・シリーズ)や、ガラスビーズを再加熱することによって再結晶化させる結晶化ガラスが挙げられる。バルーンとしては、住友スリーエム(株)製バルーン(商品名:スコッチライト グラスバブルズ・シリーズ)、日本シリカ工業(株)製バルーン(商品名:グラス マイクロバルーン IG・シリーズ)等が挙げられる。
【0039】
シリコーン樹脂粒子としては東芝シリコーン(株)製シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール・シリーズ)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製シリコーン樹脂粒子(商品名:トレフィルR・シリーズ)等が挙げられる。
【0040】
弾性体中の球状体の含有量は、弾性体100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは3〜30質量部の範囲である。
【0041】
さらに、本発明における定着部材において、上記弾性体がフッソゴムの場合、弾性体中の球状体表面は、アミノシラン処理されたものが、フッソゴムとの相溶性が向上し、耐磨耗性が向上するため、好ましい。
【0042】
球状粉体表面は従来公知の方法でアミノシランを付着させてアミノシラン処理されればよい。例えば、球状粉体をスーパーミキサー中で高速攪拌しながらアミノシランを滴下する方法、あるいは数質量%のアミノシラン水溶液中に球状粉体を投入、攪拌し、その後水分を乾燥除去する方法、により可能である。用いるアミノシランはカップリング剤として使用されており、下記構造式で表される化合物が挙げられる。N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC3H6NH−C2H4NH2]、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン[(C2H5O)3SiC3H6NH−C2H4NH2]、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC3H6NH]、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン[(C2H5O)3SiC3H6NH]、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC3H6NHC6H5]。
【0043】
アミノシラン処理された上記球状粉体を用いる場合、表層のフッソゴムは、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体であるフルオロポリマーを過酸化物加硫したものを用いることが好ましい。フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル三元共重合体であるフルオロポリマーは良好なトナー離型性を有し、過酸化物加硫されたフッソゴムは特に良好なトナー離型性を示すため、フッソゴム表層材としては最も適している。
【0044】
本発明の定着ローラ、定着ベルト等の定着部材は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、所定量の球状体を分散させたシリコーンゴム、フッ素ゴムまたはこれらの複合体などの弾性体材料に加硫温度以下の温度において加硫剤、加硫助剤等を添加、混合し、得られた混合物を、予めプライマーを均一に塗布、乾燥させたローラ基材、ベルト基材(下層としてシリコーンゴム層、フッ素ゴム層を設けてもよい)の外周に、表層となるように形成し、加熱硬化、二次加硫工程を経ることにより製造される。
【0045】
表層の形成は、パイプ金型を用いたトランスファー成形、コーティングによる成形、ディップによる成形、スプレーによる塗布成形方法を用いても、表面平滑性が可能であれば特に限定するものではない。
【0046】
本発明の定着部材の表層をコーティング、ディップ、スプレー等による塗布成形方法を用いて形成する場合、必要に応じて上記材料を適当な溶剤を用いて液状化して用いる。例えばフッソゴム表層を有する定着部材の場合には、つぎのようにしてこれを作製することができる。
【0047】
すなわち、フッソ系ゴムに規定の平均粒径の球状粉体、充填剤、共加硫剤、加硫剤等を所定量加えて、ロール、ニーダー等で混練し、この混合物に溶剤を加えて混合,攪拌しフッ素系ゴム組成物コーティング液を調製する。この場合、フッ素系ゴム組成物コーティング液を調製する際に用いる溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソアミル等があげられ、これらは単独であるいは2種類以上混合して使用される。上記コーティング液は、フッ素系ゴム組成物の濃度が5〜70質量%(以下「%」と略す)の範囲で、表層形成手法に応じた粘度に設定することが好ましい。
【0048】
ついで、上記フッソ系ゴム組成物コーティング液を金属、耐熱樹脂のローラ基材、ベルト基材、あるいはフィルム基材上に下層として形成された弾性体層の各外周面に、あるいは金属、耐熱樹脂のローラ基材、ベルト基材、フィルム基材に直接均一に塗工して乾燥させ、その後加熱硬化させる。上記フッ素系ゴム組成物コーティング液を塗工する方法は、リングコート法、ディップ法、スプレーコーティング法、ロールコート法等があげられる。
【0049】
これらのコーティング法のいずれかを用いて、表層にフッ素系ゴム組成物弾性体層が形成され、このフッソ系ゴム組成物弾性体層をパーオキサイド加硫する場合には、この加硫処理は、例えば、下記の操作により行うことができる。まず、上記フッ素系ゴム組成物が塗工されたローラ、ベルト、フィルムを、オーブン等に入れ、上記フッ素系ゴム組成物の薄膜が雰囲気中の酸素と接触しないように窒素ガス等の不活性ガスでオーブン内を置換し、オーブン内を無酸素雰囲気にして加熱硬化し、一体化する。
【0050】
上記パーオキサイド加硫は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下の無酸素状態下で行う必要がある。すなわち、パーオキサイド加硫剤は酸素存在下で加熱されると反応に関与するラジカル発生が阻害され、その結果、フッ素系ゴム組成物の加硫が充分になされないからである。上記不活性ガスとしては、窒素ガスの他に、アルゴンガス、ヘリウムガス等があげられる
ここで本発明の定着部材を製造の際、表層を形成するのに用いたリングコート法について、ベルト基材への塗工を例に説明する。図4にリングコート法用の装置の概略図を示す。この装置は、基板上に、外周にベルト基材41を装着したアルミ製の円筒体保持冶具411を水平にかつ軸中心に回転させ、軸方向に水平移動させる事ができる塗工台42を有する。さらに基板上には水平方向には動かずリング形状の塗工ヘッド431を円筒体保持冶具中心軸垂直平面上で移動自在に保持している塗工ヘッド保持部44が取付けられている。該塗工ヘッド431は移動方向終端部には塗工後のベルト外径とほぼ等しい内径を持ちその前方にはベルト基材外周と接触し円筒体保持冶具軸方向に円筒体保持冶具軸と同軸に相対移動させる為のガイド部分を持っている。このガイド部分の塗布液通過部分の断面積は塗工膜断面積より大きく作られており塗工後のベルト外径とほぼ等しい内径である該塗工ヘッド移動方向終端部に塗布液が充分に供給できるようになっている。
【0051】
該塗工ヘッド431と円筒体保持冶具上ベルト基材41とのギャップ部分に塗布液を供給する供給口は、該塗工ヘッドと一体でも良いし別部材でも良いが本例では別部材の塗布液供給ノズル45として塗工ヘッド進行方向前方に設けてある。また塗布液供給位置は塗布液粘度および塗工厚みの関係で液落ちしない状態であれば円筒体の上方に限らずどの位置でも良いが、本実施例では円筒体保持冶具411の上方から行った。塗布液の供給方法は単位時間当り一定量の供給を行った。
【0052】
また塗布液供給ノズル45は塗液搬送用のチューブ46で定量(時間当たり)吐出可能な電動式のシリンダーポンプ47に接続しておりそこから塗布液48が供給される。シリンダーポンプは液の脈動が起こらない為、安定した吐出が可能である。
【0053】
上記の装置によるローラ基材への塗工の場合は、円筒体保持冶具の替わりにローラ基材を直接装置に装着すれば良い。これにより、目的とする定着ローラ、定着ベルト等の定着部材を得ることができる。
【0054】
なお、上記定着ローラ、定着ベルトは、ローラ基材、ベルト基材の外周面に上記弾性層が形成された単層構造のものや、例えば、ローラ基材、ベルト基材の外周面にシリコーンゴム、フロロシリコーンゴムが形成されたものの最外層に上記弾性層が被覆された、2層構造のものや3層構造のもの等も挙げることができる。
【0055】
次に、本発明における定着ベルトについて説明する。
【0056】
図1は本例における定着ベルト10の層構成の一例を示す模式図である。本例の定着ベルト10は、基層となるニッケル電鋳無端ベルトからなる金属層(ニッケル電鋳層)1と、その外面に積層した弾性体下層2と、さらにその外面に積層した弾性体表層3と、金属層1の内面に積層した摺動層4との複合構造を有する。定着ベルト10において、摺動層4が内面側(ベルトガイド面側)であり、弾性体表層3が外面側(加圧ローラ面側)である。金属層1と弾性体下層2との間、弾性体下層2と弾性体表層3との間、あるいは金属層1と摺動層4との間には、接着のためにプライマー層(不図示)を設けてもよい。プライマー層はシリコーン系、エポキシ系、ポリアミドイミド系等の公知のものを使用すればよく、その厚さは、通常、1〜10μm程度である。
【0057】
図2は本例における定着ベルト10’の層構成の一例を示す模式図である。図2は、弾性体下層を設けない例である。本例の定着ベルト10’は、基層となるニッケル電鋳無端ベルトからなる金属層1’と、その外面に積層した弾性体表層3’と、金属層1’の内面に積層した摺動層4’との複合構造を有する。定着ベルト10’において、摺動層4’が内面側(ベルトガイド面側)であり、弾性体表層3’が外面側(加圧ローラ面側)である。金属層1’と弾性体表層3’との間、あるいは金属層1と摺動層4との間には、接着のためにプライマー層(不図示)を設けてもよい。プライマー層は図1の定着ベルト10と同様のものを設ければよい。
【0058】
a.金属層1
金属層1はSUS等の円柱状母型を電鋳浴に浸漬させ、母型表面に電鋳プロセスにより成長させたニッケル(合金)からなる。
【0059】
熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、膜厚は100μm以下、特に50μm以下であることが好ましく、さらに20μm以上であることが好ましい。
【0060】
b.弾性体下層2
弾性体下層2は設けても設けなくてもよいが、弾性体下層を設けることにより、ニップ部において被加熱像を覆って熱の伝達を確実にするとともに、ニッケル電鋳ベルトの復元力を補って回転・屈曲による疲労を緩和することができる。また、弾性体下層を付与することにより、弾性体表層の表面の未定着トナー像表面への追従性を増し、熱を効率よく伝達させることが可能になる。弾性体下層2を設けた定着ベルトは、特に、未定着トナーののり量が多いカラー画像の加熱定着に特に適している。
【0061】
弾性体下層2の材質としては、特に限定されず、耐熱性がよく、熱伝導率がよいものを選べばよい。弾性体下層2としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が好ましく、特にシリコーンゴムが好ましく、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等を例示することができる。
【0062】
なお、必要に応じて、弾性体下層には、乾式シリカ、湿式シリカ等補強性充填材、炭酸カルシウム、石英粉、珪酸ジルコニウム、クレー(珪酸アルミニウム)、タルク(含水珪酸マグネシウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ベンガラ(酸化鉄)等を含有させてもよい。
【0063】
弾性体下層2の厚さは、良好な定着画像品質を得るために適度な柔軟性があればよく、10μm以上、特に50μm以上が好ましく、また1000μm以下、特に500μm以下が好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では被記録材上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、被記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面(弾性体表層3の表面)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分とで画像に光沢ムラが発生する。つまり、伝熱量が多い部分は光沢度が高くなり、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。弾性体表層3が固い場合に、弾性体下層2があまりに薄いと、被記録材あるいはトナー層の凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが発生してしまうことがある。また、弾性体下層2があまりに厚いと、弾性層の熱抵抗が大きくなりクイックスタートを実現するのが難しくなることがある。
【0064】
弾性体下層2の硬度(JIS−A)は、画像光沢ムラの発生が十分抑制され、良好な定着画像品質が得られるので、70゜以下が好ましい。
【0065】
弾性体下層2の熱伝導率λは、2.5×10−3[W/cm・℃]以上、特に3.3×10−3[W/cm・℃]以上が好ましく、8.4×10−3[W/cm・℃]以下、特に6.3×10−3[W/cm・℃]以下が好ましい。熱伝導率λがあまりに小さい場合には、熱抵抗が大きくなってきて定着ベルトの表層における温度上昇が遅くなることがある。熱伝導率λがあまりに大きい場合には、硬度が高くなったり、圧縮永久歪みが悪化したりすることがある。
【0066】
このような弾性体下層は公知の方法、例えば、液状のシリコーンゴム等の材料をブレードコート法等の手段によって金属層上に均一な厚みでコート、加熱硬化する方法、液状のシリコーンゴム等の材料を成形型に注入し加硫硬化する方法;押出成形後に加硫硬化する方法;射出成形後に加硫硬化する方法等で形成すればよい。
【0067】
c.弾性体表層3
弾性体表層3には本発明に関わる弾性体表層を用いる。
【0068】
d.摺動層4
摺動層4は必須ではないが、像加熱定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減を図るうえでこれを設けることが好ましい。
【0069】
その材質は、特に限定されず、高耐熱性で強度が高く、表面が滑らかにできるものを選べばよい。摺動層4としては、ポリイミド樹脂等が好ましい。
【0070】
なお、必要に応じて、摺動層には摺動剤としてフッソ樹脂粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等を摺動層に含有させてもよい。
【0071】
摺動層4の厚さとしては5μm以上、特に10μm以上が好ましく、100μm以下、特に60μm以下が好ましい。摺動層4があまりに薄いと耐久性が不足することがある。摺動層4があまりに厚いと定着ベルトの熱容量が大きくなり、立ち上がり時間が長くなることがある。
【0072】
このような摺動層は公知の方法、例えば、液状の材料をコート・乾燥・硬化等の方法、あるいは予めチューブ化したものを貼りつける方法等で形成すればよい。
【0073】
【実施例】
本発明の具体的実施例について説明する。下記に示すフッソゴムポリマー配合物に表1に示す球状粉体をオープンロールを用いて混練した。
【0074】
フルオロポリマー:ダイキン工業(株)(商品名:LT302)・・・100質量部
架橋助剤:日本化成(株)製トリアリルイソシアヌレート“TAIC(登録商標)”・・・4質量部
架橋剤:キシダ化学(株)製ベンゾイルパーオキサイド・・・・2質量部
(上記混合物の加熱硬化物の硬度は60°(JIS−A)である)。
【0075】
その後メチルイソブチルケトンにポリマー成分が50質量%になるよう溶解、塗布液を調整した。該塗布液を前述したリング塗工装置を用い各基材ベルト上に塗工、乾燥工程を経て加熱硬化、表1に示す厚みの表層を形成し、定着ベルトとした。
【0076】
乾燥工程、加熱工程において、ベルト基材は塗布液中の球状粉体が局所化するのを防止する為10RPMの回転速度で回転させた。乾燥工程は風乾で1時間行い、ついで、加熱硬化工程は、窒素ガスで置換された無酸素雰囲気下で、同様に回転させながらベルト基材に略平行に近赤外線ランプを配置し、塗工表面がおよそ200℃となるように調整し、20分間行った。
【0077】
基層は厚み50μmのニッケル電鋳ベルトであり、実施例1−1〜1−3、比較例1−1は、弾性体下層として厚み200μmでJIS−A硬度30°のシリコーンゴムが設けてあり、その上に表1に示すような弾性体表層が被覆されている。実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3は、ニッケル電鋳ベルトに直接表1に示す弾性体表層が被覆されている。本実施例及び比較例において、摺動層は厚み15μmのポリイミド樹脂である。
【0078】
【表1】
【0079】
表1中のアミノシラン処理品は、次の要領で表面処理を施した。アミノシラン(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)1質量%水溶液にトスパール3120(東芝シリコーン(株)製)を投入して攪拌し、その後水分を乾燥除去することにより実施した。エアロジル200(日本エアロジル(株))についても同様の処理を行った。
【0080】
本実施例の定着ベルトの性能テストについて説明する。
【0081】
<像加熱定着装置>
本実施例の定着ベルトは像加熱定着装置に搭載することができる。
【0082】
図3は本例における像加熱定着装置の一例の横断面模式図を示す図である。本例において像加熱定着装置は、加熱体としてセラミックヒータを用いたベルト加熱方式の装置であり、定着ベルト310は前述の本発明のものである。
【0083】
ベルトガイド316は耐熱性・断熱性を有する。加熱体としてのセラミックヒータ312は、ベルトガイド316の下面のほぼ中央部にガイド長手に沿って形成具備させた溝部に嵌入して固定支持させてある。そして、円筒状もしくはエンドレス状の本発明の定着ベルト310はベルトガイド316にルーズに外嵌させてある。
【0084】
加圧用剛性ステイ322はベルトガイド316の内側に挿通してある。
【0085】
加圧部材330は、本例では弾性加圧ローラである。この加圧部材330は、芯金330aにシリコーンゴム等の弾性層330bを設けて硬度を下げたもので、芯金330aの両端部を装置の不図示の手前側と奥側のシャーシー側板との間に回転自由に軸受け保持させて配設してある。弾性加圧ローラは、表面性を向上させるために、さらに外周にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂層を設けてもよい。
【0086】
加圧用剛性ステイ322の両端部と装置シャーシー側のバネ受け部材(不図示)との間にそれぞれ加圧バネ(不図示)を縮設することで、加圧用構成ステイに押し下げ力を作用させている。これにより、ベルトガイド316の下面に配設した摺動板340の下面と加圧ローラ330の上面とが定着ベルト310を挟んで圧接して所定幅の定着ニップ部Nが形成される。なお、ベルトガイド316の部材としては、耐熱フェノール樹脂、LCP(液晶ポリエステル)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等、耐熱性に優れた樹脂を用いる。
【0087】
加圧ローラ330は、駆動手段により矢示のように反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ330の回転駆動による加圧ローラ330と定着ベルト310との外面との摩擦力で定着ベルト310に回転力が作用して、定着ベルト310はその内面が定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ312の下面に密着して摺動しながら、矢示のように時計方向に加圧ローラ330の回転周速度にほぼ対応した周速度でベルトガイド316の外回りに回転する(加圧ローラ駆動方式)。
【0088】
プリントスタート信号に基づいて加圧ローラ330の回転が開始され、またセラミックヒータ312のヒートアップが開始される。加圧ローラ330の回転による定着ベルト310の回転周速度が定常化し、セラミックヒータ312の温度が所定温度に立ち上がった状態において、定着ニップ部Nの定着ベルト310と加圧ローラ330との間に被加熱材としてのトナー画像tを担持させた被記録材Pがトナー画像担持面側を定着ベルト310側にして導入される。そして、被記録材Pは定着ニップ部Nにおいて定着ベルト310を介してセラミックヒータ312の下面に密着し、定着ベルト310と一緒に定着ニップ部Nを移動通過していく。その移動通過過程において、セラミックヒータ312の熱が定着ベルト310を介して被記録材Pに付与され、トナー画像tが被記録材P面に加熱定着される。定着ニップ部Nを通過した被記録材Pは定着ベルト310の外面から分離して搬送される。
【0089】
加熱体としてのセラミックヒータ312は、定着ベルト310・被記録材Pの移動方向に直交する方向を長手とする低熱容量の横長の線状加熱体である。チッ化アルミニウム等でできたヒータ基板312aと、このヒータ基板312aの表面にその長手に沿って設けた発熱層312b、例えばAg/Pd(銀/パラジウム)等の電気抵抗材料を約10μm、幅1〜5mmにスクリーン印刷等により塗工して設けた発熱層312bと、さらにその上に設けたガラスやフッ素樹脂等の保護層312cを基本構成とするものである。なお、用いるセラミックヒータはこのようなものに限定されるわけではない。
【0090】
そして、セラミックヒータ312の発熱層312bの両端間に通電されることで発熱層312bは発熱し、ヒータ312が急速に昇温する。そのヒータ温度が温度センサ(不図示)に検知され、ヒータ温度が所定の温度に維持されるように制御回路(不図示)で発熱層312bに対する通電が制御されてヒータ312は温調管理される。
【0091】
セラミックヒータ312は、ベルトガイド316の下面のほぼ中央部にガイド長手に沿って形成具備させた溝部に、保護層312c側を上向きに嵌入して固定支持させてある。定着ベルト310と接触する定着ニップ部Nには、このセラミックヒータ312の摺動部材340の面と定着ベルト310の内面が相互接触摺動する。
【0092】
<ベルト性能の評価>
定着ベルト性能(画質)の評価は、黒べた未定着トナー画像を上記実施例、比較例の定着ベルトを搭載した前記加熱加圧定着装置に通紙し、排紙状態からベルトの分離性能、定着画像のトナー光沢との光沢ムラを、目視によりを確認し画質性能を評価した。黒べた未定着トナー画像は、キヤノン(株)製のカラーLBP(商品名:カラーレーザーショットLBP−2040)を用い、未定着トナーが転写された記録紙を定着前に取り出すことで得た。黒べたトナー画像通紙の際には、ヒータ温度を220℃に設定し、定着ベルト回転スピードを60rpmに設定した。
【0093】
このベルト性能の評価は、未使用のベルトと、白紙5000枚通紙による摩耗耐久テスト後のベルトにて行った。摩耗耐久テストは、未使用のベルトの評価後に、白紙(A4サイズ)5000枚を上記温度条件で連続通紙することにより行った。未使用のベルトと、摩耗耐久テスト後のベルトの、ローラ性能(画質)を比較し、同一条件で各種ベルトを評価する事により、摩耗耐久性、すなわち言い換えると、摩擦性の優位性を比較する事ができる。
【0094】
結果は表2に示すとおりである。
【0095】
【表2】
【0096】
弾性体表層に球状粉体を含まない比較例2−1は、表層厚みが100μm以下のときには紙の巻きつきが発生してしまった。また、球状粉体の平均粒径が52μmであり、表層厚みに対して、1/2より大きい比較例1−1は、分離性能においては問題が無かったが、画像において光沢ムラが発生してしまった。これは、平均粒径が弾性体表層に対して大きかったため、表面に凹凸が生じ、さらに表層が52μmと薄かったことによると思われる。さらに、弾性体表層の厚みに対して、球状粉体の平均粒径が1/5よりも小さい比較例2−2は、分離性能を満たすのに十分な粒径では無く、したがって、排紙カールが発生してしまった。添加粉体に不定形シリカを用いた比較例2−3は、添加粉体の形状が球状でないために、良好な分離性能を示すことができなかった。これは局所的な曲面状応力分布が不十分であったと考えられる。
【0097】
一方、表層の厚みが10〜100μmであり、球状粉体の粒径が該弾性体表層厚みの1/5〜1/2の範囲である、実施例1−1〜1−3及び実施例2−1は初期評価における分離性能及び画質性能ならびに耐久後評価における分離性能及び画質性能の両方において良好な効果が得られた。さらに、球状粉体をアミノシラン処理した実施例1−3では、アミノシラン処理をしていない実施例1−2と比較して、耐久後においても画質性能が良好なものが得られた。また、弾性体下層としてシリコーンゴムを設けた実施例1と、設けなかった実施例2を比較したが、どちらも良好な結果が得られた。
【0098】
【発明の効果】
少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、本発明の定着部材は前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の粒径は層厚みの1/5〜1/2の範囲であるため、良好な分離性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着ベルトの層構成の一例の模式図である。
【図2】本発明の定着ベルトの層構成の一例の模式図である。
【図3】実施形態例の検証に用いた像加熱装置の概略構成図である。
【図4】実施形態例の定着ベルト製造に用いたリングコート装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1,1’ ニッケル電鋳層
2 弾性体下層
3,3’ 弾性体表層
4,4’ 摺動層
10,10’,310 定着ベルト
312 セラミックヒータ
316 ベルトガイド
322 加圧用剛性ステイ
330 加圧部材(加圧ローラ)
340 摺動板
N 定着ニップ部
t トナー画像
P 被記録材
Claims (1)
- 少なくとも厚みが10〜100μm、硬度が50°(JIS−A)以上なる弾性体を表層に有する定着部材において、
前記表層の表面の10点平均粗さ(Rz)が1.0μm以下であり、該表層には球状粉体を含み、該球状粉体の平均粒径は該表層の厚みの1/5〜1/2の範囲であることを特徴とする定着部材。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100913444B1 (ko) | 2006-08-09 | 2009-08-25 | 캐논 가부시끼가이샤 | 화상 가열 장치 |
US8175496B2 (en) | 2007-08-28 | 2012-05-08 | Fuji Xerox Co., Ltd. | Endless belt, production method thereof and image forming apparatus |
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-
2002
- 2002-11-12 JP JP2002328020A patent/JP2004163578A/ja not_active Withdrawn
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