JP7476040B2 - 定着装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの、電子写真技術を用いた画像形成装置に好適な定着装置に関する。
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、加熱された定着ベルトを介して、記録材に転写されたトナー像を記録材に定着させるベルト加熱方式の定着装置が提案されている。定着ベルトは、外周面に当接するローラ状の回転体と、内周面に当接する非回転のバックアップ部材とにより挟持され、互いに当接した定着ベルトと回転体との間には記録材を挟持搬送してトナー像を定着するために定着ニップ部が形成されている(特許文献1)。特許文献1に記載の装置では、モータにより回転体が回転されると、定着ニップ部で生じる摩擦力によって回転体の回転力が定着ベルトに伝達されて、定着ベルトが回転する。
上記した定着装置の場合、回転する定着ベルトの内周面と、非回転に設けられたバックアップ部材(例えば、定着ベルトを加熱するヒータを保持するヒータホルダなど)とが摺動することから、摩擦によって定着ベルトやバックアップ部材が磨耗する。そして、使用に伴い定着ベルトやバックアップ部材の磨耗が進むと、ベルト鳴きなどの異音が発生する原因となる自励振動(スティックスリップ)が生じたり、定着ベルトの回転を阻害する原因となる摩擦抵抗力の上昇(トルクアップ)が生じたりし得る。そこで、特許文献1に記載の装置では、これらスティックスリップやトルクアップが生じるのを抑制するために、バックアップ部材と摺動する摺動層にフィラーを配合して内周面を粗くした定着ベルトが用いられている。
特開2014-228729号公報
本発明は、上述の特許文献1に記載の構成を更に改良した構成を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る定着装置は、記録材に形成されたトナー像を記録材に定着させる定着装置であって、回転可能に設けられた無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの内側に非回転に設けられ、前記定着ベルトの内周面と摺動するバックアップ部材と、前記定着ベルトを前記バックアップ部材とにより挟むように前記定着ベルトの外周面に当接し、記録材を挟持搬送して記録材にトナー像を定着する定着ニップ部を形成する回転体と、を備え、前記定着ベルトは、基体と、前記基体の内周に形成され、前記バックアップ部材と接触して摺動される摺動層と、を有し、前記バックアップ部材は、前記摺動層との接触面の表面粗さが十点平均粗さで「0.10μm以上0.15μm未満」であり、前記摺動層は、硬度がマルテンス硬度で「80度以上90度以下」であり、且つ、前記バックアップ部材の表面粗さを十点平均粗さA、前記摺動層の表面粗さを十点平均粗さBとしたときに、前記摺動層の表面粗さが「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たす、ことを特徴とする。
本発明によれば、上述の特許文献1に記載の構成を更に改良した構成を提供することができる。
本実施形態の定着装置を用いて好適な画像形成装置の構成を示す断面図。 本実施形態の定着装置の構成を示す断面図。 本実施形態の定着ベルトを示す断面図。 定着ベルトの摺動層を形成する手順を示すフローチャート。 定着ベルトの摺動層を形成する塗工装置を示す概略図。
本実施形態について、説明する。まず、本実施形態の定着装置を用いて好適な画像形成装置の構成について、図1を用いて説明する。
[画像形成装置]
画像形成装置100は、感光ドラム(感光体)101を有し、感光ドラム101は、矢印の方向(図1では反時計回り)に所定のプロセス速度(周速度)で回転駆動される。感光ドラム101は、その回転過程で帯電装置としての帯電ローラ102により所定極性に表面が帯電処理される。次いで、その帯電処理された表面に、レーザ光学系により構成される露光装置110から出力されるレーザ光103により、入力された画像情報に基づき露光処理される。露光装置110は、不図示の画像読み取り装置やパーソナルコンピュータなどの外部端末からの画像情報の各色に対応した画素信号に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光103を出力する。そして、感光ドラム101の表面を走査露光する。その結果、この走査露光により感光ドラム101面には画像情報に対応した静電潜像が形成される。なお、露光装置110から出力されるレーザ光103は、偏向ミラー109により感光ドラム101の露光位置に偏向される。
そして、感光ドラム101上に形成された静電潜像は、現像装置104Yによりイエローのトナーにて、イエローのトナー像として可視像化される。このイエローのトナー像は、感光ドラム101と中間転写ドラム105との接触部である一次転写部T1において中間転写ドラム105面に転写される。なお、感光ドラム101面上に残留するトナーはクリーナ107によりクリーニングされる。
上記のような帯電・露光・現像・一次転写・清掃のプロセスサイクルが、マゼンタのトナー像、シアンのトナー像、ブラックのトナー像を形成する際にも、同様に繰り返される。即ち、マゼンタのトナー像を形成する場合には、現像装置104Mによりマゼンタのトナーにて、感光ドラム101上にマゼンタに対応して形成された静電潜像をマゼンタのトナー像として可視像化する。同様に、シアンのトナー像は、現像装置104Cにて、ブラックのトナー像は、現像装置104Kにて、それぞれ可視像化される。
このようにして中間転写ドラム105上に順次重ねて形成された各色のトナー像は、転写ローラ106との接触部である二次転写部T2において、記録材(用紙、OHPシートなどのシート材など)S上に一括して二次転写される。中間転写ドラム105上に残留するトナーはトナークリーナ108によりクリーニングされる。なお、このトナークリーナ108は、中間転写ドラム105に対し接離可能とされており、中間転写ドラム105をクリーニングする時に限り中間転写ドラム105に接触した状態となるように構成されている。また、転写ローラ106も、中間転写ドラム105に対し接離可能とされており、二次転写時に限り中間転写ドラム105に接触した状態となるように構成されている。二次転写部T2を通過した記録材Sは定着装置200に案内され、二次転写されたトナー像を記録材Sに定着させる定着処理(画像加熱処理)を受ける。そして、定着処理を受けた記録材Sは機外に排出され、一連の画像形成動作が終了する。
[定着装置]
次に、定着装置200の概略構成について、図2を用いて説明する。定着装置200は、定着ベルト201、回転体としての加圧ローラ206などを有する。定着ベルト201と加圧ローラ206とは圧接して、二次転写部T2を通過しは定着装置200に案内される記録材Sを挟持搬送する定着ニップ部Nを形成する。定着ベルト201は、詳しくは後述するように、シリコーンゴム弾性層などを備えた無端状のベルトであり、表面(外周面)に記録材Sが接触して回転する回転部材である。定着ベルト201は、定着装置200に交換可能に設けられている。なお、本明細書で言う定着ベルト201とは、薄いフィルム状のものを含む。
定着ベルト201の内側には、定着ヒータ202、ヒータホルダ204、定着ベルトステイ205などが配置されている。定着ヒータ202は、定着ベルト201を加圧ローラ206に向けて押圧すると共に定着ベルト201を加熱する。定着ヒータ202は、例えばアルミナの基板と、この上に銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストを均一な「10μm」程度の厚さの膜状に塗布した抵抗発熱体とを有し、更にその上に耐圧ガラスによるガラスコートを施した、セラミックヒータなどである。定着ヒータ202は、抵抗発熱体への通電により発熱自在である。
このような定着ヒータ202は、定着ベルト201の長手方向(後述する加圧ローラ206の回転軸線方向)に沿って配置され、定着ベルト201の内周面とその加熱面が摺動可能な構成とされている。なお、定着ベルト201の内周面には潤滑剤が塗布されており、定着ヒータ202及びヒータホルダ204との摺動性を確保している。
ヒータホルダ204は、耐熱性の高い例えば液晶ポリマ樹脂などで、定着ベルト201の長手方向に延設されるように形成されている。ヒータホルダ204は 定着ヒータ202を保持すると共に、定着ベルト201の形状を定着ベルト201から記録材Sが分離しやすい形状としている。定着ヒータ202は、ヒータホルダ204の加圧ローラ206側の面に固定されている。そして、ヒータホルダ204の長手方向両端部には、それぞれ円筒状の支持部(不図示)が一体に設けられており、定着ベルト201の長手方向両端部がそれぞれ支持部に若干の自由度を持って外嵌されている。これにより、ヒータホルダ204は、定着ベルト201を回転自在に支持すると共に、定着ベルト201を略円筒状として、その曲率により記録材Sを分離し易くしている。ヒータホルダ204の一部は、定着ベルト201の内周面に摺動している。
定着ベルトステイ205は、ヒータホルダ204の定着ヒータ202と反対側に定着ベルト201の長手方向に沿って配置され、その両端部が不図示の加圧機構により加圧ローラ206に向けて付勢されている。例えば、その一端側が「156.8N(16kgf)」、総圧「313.6N(32kgf)」の力で加圧ローラ206に向けて付勢されている。そして、ヒータホルダ204を介して定着ヒータ202の加熱面を、定着ベルト201を介して、加圧ローラ206に所定の押圧力をもって圧接させている。こうすることで、加圧ローラ206が弾性変形して、定着ベルト201と加圧ローラ206との間に、記録材Sにトナー像を定着させるための定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ206は、金属製の芯金上に、例えば厚み「約3mm」のシリコーンゴム弾性層、更に、例えば厚み「約40μm」のPFA樹脂チューブが順に積層された多層構造の弾性ローラである。なお、PFAは、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である。加圧ローラ206は回転軸を有し、その回転軸線方向(長手方向)が、定着ベルト201の長手方向と略平行となるように配置され、芯金の長手方向両端部が定着装置200のフレーム213の不図示の奥側と手前側の側板間に回転可能に軸受保持されている。そして、加圧ローラ206は、回転軸が駆動手段としての駆動モータ220により、矢印の方向(図2では反時計回り)に所定の周速度で回転駆動される。これと圧接された関係にある定着ベルト201は、加圧ローラ206によって従動し所定の速度で回転する。このとき、定着ベルト201は、内周面が定着ヒータ202の加熱面に密着して摺動しながら、ヒータホルダ204に案内されることで、矢印の方向に従動回転する。
また、定着ヒータ202の裏面(加熱面とは反対側の面)には、サーミスタ203が設置され、定着ヒータ202の温度を検知している。サーミスタ203は、定着ヒータ202の裏面に接触するように配置され、A/Dコンバータ209を介して制御手段としての制御回路部(CPU)210に接続されている。
この制御回路部210は、サーミスタ203からの出力を所定の周期でサンプリングしており、このように得られた温度情報を、定着ヒータ202の温度制御に反映させるようにしている。つまり、制御回路部210は、サーミスタ203の出力をもとに、定着ヒータ202の温調制御内容を決定する。そして、ヒータ駆動回路部211によって、定着ヒータ202の温度が目標温度(設定温度)となるように定着ヒータ202への通電を制御している。また、制御回路部210は、加圧ローラ206を駆動するモータとA/Dコンバータ209を介して接続されており、加圧ローラ206の駆動も制御している。
このように構成される定着装置200は、上述のように、定着ベルト201と加圧ローラ206との間で定着ニップ部Nを形成している。図2に示すように、トナー像tが載った記録材Sが矢印方向に搬送されると、搬送ガイド207によって記録材Sが定着ニップ部Nに案内される。そして、記録材Sが定着ニップ部Nで挟持搬送される際に、記録材Sのトナー像tが載った面が定着ベルト201に接触し、加熱・加圧されることで、トナー像tが記録材Sに定着される。その後、記録材Sは、排出ローラ208により定着装置200の外に搬送される。
[定着ベルトの構成]
次に、定着ベルト201の構成について詳しく説明する。定着ベルト201は、定着ベルト201の外側に設けられた加圧ローラ206と、定着ベルト201の内側に設けられたバックアップ部材としての定着ヒータ202及びヒータホルダ204とにより挟持され、定着ニップ部Nを加圧ローラ206との間で形成する。定着ベルト201は、記録材Sに担持された未定着のトナー像を加熱して記録材Sに定着する回転可能な無端状のベルトである。
図3に示すように、定着ベルト201は、無端状に形成された基体1と、摺動層2と、弾性層3と、離型層4とを備えている。摺動層2は、基体1の内周面に形成される。摺動層2は、定着ヒータ202及びヒータホルダ204との摺動性を向上させるために設けられており、定着ヒータ202及びヒータホルダ204に接触して摺動され、形状異方性を有するフィラー2aを含有している。弾性層3は、不図示のプライマ層を介して基体1の外周面を被覆したシリコーンゴム製の弾性層である。離型層4は、樹脂製(フッ素樹脂製)の離型層(フッ素樹脂層)であり、弾性層3の外周面に接着剤により接着されている。
[基体]
基体1は、耐熱性及び耐屈曲性を必要とすることに鑑みて、ステンレス(SUS)、ニッケル、ニッケル合金等の金属が好適に用いられる。基体1は熱容量を小さくする一方で機械的強度を高くする必要があることから、厚みは「20~50μm」好ましくは「25~45μm」とするのが望ましい。本実施形態では基材として、例えば厚みが「30μm」の薄肉のステンレス鋼を、内径が「24mm」の円筒状に形成した金属フィルムを用いている。
[摺動層]
摺動層2は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂のような高耐久性、高耐熱性を持つ樹脂により形成された樹脂膜である。特に、制作の容易さ、耐熱性、弾性率、強度等の面から、ポリイミド樹脂を用いて形成するのが好ましい。詳しくは後述するが(図4参照)、ポリイミド樹脂により摺動層2を形成するには、例えば、次のようにして行う。芳香族テトラカルボン酸二無水物あるいはその誘導体と、芳香族ジアミンとの略等モルを有機極性溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を、上述の基体1の内周面に塗工、乾燥、加熱し、脱水閉環反応させる。これにより、基体1の内周面にポリイミド樹脂製の摺動層2を形成することができる。本実施形態の場合、摺動層2(樹脂膜)の厚みは、定着ニップ部Nでの摩耗性と定着ヒータ202からの熱を基体1に伝える伝熱性を両立しやすい「7μm以上14μm以下」であると好ましい。
[ポリイミド前駆体溶液]
芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては以下のものが挙げられ、これら芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(1)ピロメリット酸二無水物
(2)3,3’,4,4‘-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
(3)3,3’,4,4‘-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
(4)2,3,6,7,-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物
芳香族ジアミンの代表例としては以下のものが挙げられ、これら芳香族ジアミンは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(1)4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)
(2)パラフェニレンジアミン(PPDA)
(3)メタフェニレンジアミン(MPDA)
有機極性溶媒としては、以下のものが挙げられる。
(1)N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)
(2)ジメチルホルムアミド(DMF)
(3)N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
[フィラー]
フィラー2aは、摺動層2への表面粗さ及び耐摩耗強度を付与するために配合される「あらし粒子」(添加剤)であり、このために形状異方性を有することが好ましく、特に鱗片状のフィラーが好ましい。また、フィラー2aは、摺動層2の表面に凹凸を発生させるために、粒子径を選定する必要がある。粒子径は、平均粒径が膜厚の「5%~50%」程度が好ましい。
フィラー2aの材質としては、一例として以下のものが挙げられる。ただし、摺動層2の制作の容易さ、耐熱性、潤滑性などの観点から、特に以下に示すような雲母を用いるのが好ましい。
(1)非膨潤性合成マイカであるフッ素金雲母(KMg(AlSi)O10)やカリウム四ケイ素雲母(KMg2.5Si10
(2)膨潤性合成マイカであるナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5Si10)やナトリウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si10
(3)シリカ(SiO)六方晶窒化ホウ素(BN)
(4)グラファイト
(5)グラフェン
また、フィラー2aのアスペクト比(長辺と短辺の比)としては「5以上200以下」程度が好ましい。特に、本実施形態の場合、「30以上100以下」程度であれば、後述するポリイミド前駆体溶液を塗工・乾燥させる過程で得られる摺動層2中におけるフィラー2aの面方向への配向率が、「内周面側(表面側)<基体側」となりやすい。これにより、摺動層2の内周面側の摺動性及び潤滑剤保持性を高める効果が得られやすい。
さらに、フィラー2aの配合量は、ポリイミド前駆体溶液やフィラー2aの種類によって最適な量は変化する。例えば、摺動層2の表面粗さを適切な範囲に調整でき、かつ、摺動層2の耐摩耗強度を損なわない範囲とするために、フィラー2aの配合量は摺動層2に対し「5重量%以上40重量%以下」である。フィラー2aが「5重量%」より少ない場合には、摺動相手材との真実接触面積を減らし、かつ、介在する潤滑剤の保持性を得るために必要な表面粗さが得られにくい。また、フィラー2aが「40重量%」より多い場合には、フィラー2aによってポリイミドが硬くもろくなってしまうため耐摩耗強度が損なわれ、耐久を通じて適切な表面粗さ、即ち摺動性及び潤滑剤保持性を維持することが困難となってしまう。本実施形態における摺動層2の表面粗さについては、後述する。
なお、フィラー2aをポリイミド前駆体溶液に分散させる方法としては、一例として以下のものが挙げられる。
(1)ポリイミド前駆体溶液にフィラー2aを直接加え、ミキサーなどの混合機にて予備撹拌した後、3本ロールなどで分散させる方法。
(2)予めポリイミド前駆体溶液と同様の極性溶媒(NMPなど)にフィラー2aを加え、サンドミルやビーズミルを用いてフィラー分散溶媒を作製した後、別途得られたポリイミド前駆体溶液とミキサーなどの混合機にて混ぜ合わせる方法。
[摺動層の形成方法]
次に、摺動層2の形成方法の手順について、図4及び図5を用いて説明する。摺動層2は例えばリングコート法等により、フィラー2aを分散したポリイミド前駆体溶液が基体1の内周面に塗工されることによって形成される。
図4に示すように、まず、基体1を塗工装置20に設置し(ステップS1)、基体1の内周面にポリイミド前駆体溶液5を塗布する(ステップS2、塗布工程)。この塗布工程について、図5を用いて具体的に説明する。図5は、リングコート法の塗工装置20の概略図である。なお、図5中、Uは上方向、Lは下方向を示している。
図5に示すように、塗工装置20は基盤21上に支柱22、23が形成されている。塗工ヘッド24は、支柱22上に固定されており、不図示の塗工液供給装置に接続されている。支柱23には、ワーク移動装置25が昇降可能に設けられており、ワーク移動装置25には基体1を保持するワークハンド26が設けられている。ワーク移動装置25は、支柱23上に設けられたモータ27により上下に移動することができ、基体1を保持するワークハンド26もワーク移動装置25の移動により上下に移動することができる。
塗工ヘッド24の外周囲には、円柱の軸と直交する不図示のスリットが形成されている。均一になるようにフィラー2aを配合したポリイミド前駆体溶液5がスリットから外部に供給され、基体1を塗工ヘッド24の外周に沿って上下方向に移動させることで、基体1の内周面への塗布が行われる。この塗工装置20において、摺動層2の厚みは塗布量によって決定し、クリアランス、ポリイミド前駆体溶液5の供給速度、ワーク移動装置25の移動速度を変更することで任意の塗布量を得ることができる。
図4の説明に戻り、ポリイミド前駆体溶液5が塗布された基体1を加熱乾燥炉30に設置し(ステップS3)、ポリイミド前駆体溶液5を乾燥させる(ステップS4、乾燥工程)。このように、基体1の内周面にフィラー2aを配合したポリイミド前駆体溶液5を塗布した後、加熱することで、ポリイミド前駆体溶液5に含まれる有機極性溶媒を蒸発させてポリイミド前駆体溶液5の粘度を上げて形状を保たせる。
そして、ポリイミド前駆体溶液5が乾燥された基体1を熱風循環炉に設置し(ステップS5)、ポリイミド前駆体溶液5を焼成する(ステップS6)。具体的には、有機極性溶媒を「約30容量%」未満に減らした後、基体1を例えば「200℃」の熱風循環炉に30分放置して乾燥後、基体1の疲労強度を下げない温度範囲である「300℃~400℃」の熱風循環炉内に20~120分放置して焼成する。これにより、脱水閉環反応によりフィラー2aが分散したポリイミド樹脂の摺動層2を形成することができる。
[弾性層]
弾性層3は、定着時にトナー画像と記録材Sの凹凸に対して均一な圧力を与えるために定着部材に担持させる弾性層として機能する。即ち、弾性層3は、定着ニップ部Nでトナー像を記録材に定着する時に、トナーを必要以上に押しつぶさず、記録材Sが紙である場合に紙の繊維の凹凸に追従する柔軟性を有する弾性を定着ベルト201に持たせる層として機能する。かかる機能を発現させる上で、弾性層3の材料としては、加工が容易である、高い寸法精度で加工できる、加熱硬化時に反応副生成物が発生しないなどの理由から、付加反応架橋型の液状シリコーンゴムを用いるのが好ましい。また、後述するフィラーの種類や添加量に応じて、その架橋度を調整することで、弾性を調整することができる。
一般に、付加反応架橋型の液状シリコーンゴムは、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン、及び架橋触媒として白金化合物が含まれている。ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは、白金化合物の触媒作用により、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のアルケニル基との反応によって架橋構造を形成させる。
弾性層3は、定着ベルト201の熱伝導性の向上、補強、耐熱性の向上等のためにフィラーを含んでいてもよい。特に、熱伝導性を向上させる目的では、フィラーとしては高熱伝導性であることが好ましい。具体的には、無機物、特に金属、金属化合物等を挙げることができる。高熱伝導性フィラーの具体例としては、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)が挙げられる。また、高熱伝導性フィラーの具体例としては、シリカ(SiO)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。
これらの高熱伝導性フィラーは単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。高熱伝導性フィラーの平均粒径は、取り扱い上、及び分散性の観点から「1μm以上50μm以下」が好ましい。また、高熱伝導性フィラーの形状は球状、粉砕状、板状、ウィスカ状などがあるが、分散性の観点から球状のものを用いるのが好ましい。定着ベルト201の表面硬度への寄与、及び定着時の未定着トナーへの熱伝導の効率から、弾性層3の厚みの好ましい範囲は「100μm以上500μm以下」であり、より好ましくは「200μm以上400μm以下」である。本実施形態においては、高熱伝導性フィラーとしてアルミナを使用し、弾性層3の熱伝導率は「1.0W/mK」、厚みは「300μm」とした。
[離型層]
離型層4としては、例えば、PFA、PTFE、FEPなどの樹脂をチューブ状に成形したものが用いられる。尚、PFAは、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、PTFEは、ポリテトラフルオロエチレン、FEPは、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体である。離型層4としては、上記例示列挙した材料中、成形性やトナー離型性の観点からPFAの適用が好ましい。
離型層4の厚みは、「50μm以下」とするのが好ましい。積層した際に下層の弾性層3の弾性を維持し、定着部材としての表面硬度が高くなりすぎることを抑制できるからである。フッ素樹脂チューブの内周面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザ処理、アンモニア処理等を施すことで、接着性を向上させることができる。本実施形態においては、押し出し成形で得られた厚み「20μm」のPFAチューブを使用した。チューブ内周面は、後述する接着剤との濡れ性を向上させるためアンモニア処理が施されている。
弾性層3に離型層4としてのPFAチューブ1eを接着する接着剤は、弾性層3の表面に塗工した付加硬化型シリコーンゴム接着剤などである。付加硬化型シリコーンゴム接着剤は、アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、エポキシ基、アルコキシシリル基等の官能基を有するシランに代表される自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムを含む。電気炉などの加熱手段にて所定の時間加熱することで、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を硬化・接着させ、両端部を所望の長さに切断することで、本実施形態の定着ベルト201を得ることができる。
[表面粗さについて]
上述のように、定着ベルト201には、定着ベルト201の内側に設けられた定着ヒータ202及びヒータホルダ204との摺動性を向上させるために、摺動層2が形成されている。そして、摺動層2への表面粗さ及び耐摩耗強度を付与するために、摺動層2にはフィラー2aが配合されている。フィラー2aの配合により、摺動層2は表面粗さが十点平均粗さで「0.20μm以上0.50μm以下」であるものとされる。ただし、本実施形態では、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さに応じて、摺動層2の表面粗さが制限されている。
本実施形態の場合、バックアップ部材としての定着ヒータ202及びヒータホルダ204は、摺動層2との接触面の表面粗さが十点平均粗さで「0.10μm以上0.15μm未満」とされている。これは、定着ベルト201の内周面には潤滑剤が塗布されているが、定着ヒータ202及びヒータホルダ204側でも潤滑剤を保持しないと、定着ベルト201と定着ヒータ202及びヒータホルダ204とで摺動性を確保するのが難しくなる。そこで、定着ヒータ202及びヒータホルダ204における潤滑剤の保持性を得るために必要な表面粗さとして、上記した「0.10μm以上」とされている。その一方で、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さが「0.15μm」以上であると、定着ベルト201の回転を阻害する原因となる摩擦抵抗力の上昇(トルクアップ)が生じ得る。このトルクアップを抑制するために必要な表面粗さとして、上記した「0.15μm未満」とされている。
これに対し、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さを十点平均粗さA、摺動層2の表面粗さを十点平均粗さBとしたときに、摺動層2の表面粗さは「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たすようにしている。上述したように、摺動層2の表面粗さは、 フィラー2aのアスペクト比やフィラー2aの配合量によって調整される。また、本実施形態の場合、摺動層2は、硬度がマルテンス硬度で「80度以上90度以下」である。
例えば、ベルト鳴きは使用に応じて摺動層2が削れて平滑化されるのに伴って(耐久)、摺動層2と定着ヒータ202及びヒータホルダ204(バックアップ部材)との実接触面積が変化することによって生じ得る。ただし、上述したようなバックアップ部材や摺動層2の表面粗さにすると、ベルト鳴きの原因となるスティックスリップを抑制でき、またトルクアップも抑制できることが、発明者らが行った実験により確かめられている。詳しくは後述するように、摺動層2における粒子(フィラー)の有無、粒子量、樹脂膜厚、樹脂の種類(樹脂種)によって変わる摺動層2の表面粗さとマルテンス硬度(以下、M硬度と記載)とが、スティックスリップやトルクアップの抑制に関わっている。なお、摺動層2(樹脂膜)の観察から、摺動層2における粒子(フィラー)の分布は、樹脂膜厚と粒子量に関係して変化し、これにより表面粗さやM硬度の大きさが左右される。
[実験結果]
表1に、ベルト鳴きに関する実験結果を示す。実験では、表面粗さ(十点平均粗さA)が「0.10μm」の定着ヒータ202及びヒータホルダ204を用い、各実施例及び各比較例の定着ベルト201を、図2に示すベルト加熱方式の定着装置200に装着して行った。定着装置200には、「複合機IRA‐C3000シリーズ(キヤノン)」を用いた。
Figure 0007476040000001
表1の各項目について説明する。「粗さA」は定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さ(十点平均粗さ)であり、「粗さB」は摺動層2の表面粗さ(十点平均粗さ)である。「粗さA+B」は、「粗さA」と「粗さB」の単純和である。なお、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さ(A)、定着ベルト201の摺動層2の表面粗さ(B)は、「接触式粗さ計SE-3500(小坂研究所)」を使用して測定した。
「粒子有無」は、摺動層2におけるフィラー(粒子)の有無を示す。摺動層2に添加剤としてフィラーを配合した場合を「○雲母」と記し、配合しなかった場合を「×なし」と記した。また、配合しなかった場合で、別途研磨紙による研磨を行ったものを「×研磨」と記した。「粒子%」は、フィラーの配合量である。例えば、ポリイミド樹脂にフィラーを「5重量%」配合した場合を「5%」と記し、「1重量%」配合した場合を「1%」と記した。なお、本実験ではフィラーに、マイカ「PDM-5B(トピー工業)」を用いた。
「樹脂膜厚」は摺動層2の厚さであり、ポリイミド前駆体溶液(ポリイミドワニス)の比重を「1.2」、ワニス固形分を「19%」として、塗布前後の重量差より計測される重量差、塗布長さ、及び基材を含めない内周長から計算した(式1)。
樹脂膜厚=(塗布重量÷比重÷塗布長さ÷内周長)×ワニス固形分 ・・・式1
「樹脂種」はポリイミド前駆体溶液(ポリイミドワニス)の種類であり、本実施形態では「ユピア‐ST1002」と「ユピア‐AT1001」(ともに宇部興産)を使用した。「ユピア‐ST1002」と「ユピア‐AT1001」を「50重量%」ずつ混合したものを「樹脂種D」と記し、「ユピア‐ST1002」のみを混合したものを「樹脂種E」と記した。
M硬度(マルテンス硬度)は、摺動層2の硬さである。測定は「FISCHER PICODENTOR HM500(フィッシャー・インストルメンツ)」により、ここではビッカース圧子を用い、押し込み深さ「2000nm」、押し込み力「25mN」にて測定したときの最大押し込み深さでの値を記載した。
上記した各項目の数値に従って定着ベルト201を製作し、製作した定着ベルト201の評価を行った結果を「評価結果」に記した。なお、定着ベルト201の諸元として、基体1には、ステンレス鋼で厚さ「40マイクロメートル」、外径「24mm」、長さ「400mm」の円筒状材料を使用し、その基体1に摺動層2、弾性層、表面樹脂層を形成した。そして、円筒両端を切断、研磨して、定着ベルト201を完成した。摺動層2は、円筒状の基体1の内面に、上述した形成方法(図4参照)により、塗膜厚さ「60μm」で塗布、循環式電気炉により「160℃」で「30分」乾燥、その後「350℃」で「60分」焼成して、ポリイミド樹脂の摺動層2を形成した。摺動層2の厚さ(樹脂膜厚)は、表1に示すように、上記した「7μm以上14μm以下」としている。
「評価結果」には、画像形成した記録材Sの累計枚数が定着ベルト201の交換タイミング(ベルト寿命)である30万枚(300K)に達しても、ベルト鳴きが生じなかった場合を「○」で示した。一方、記録材Sの累計枚数が30万枚に達していないにも関わらず、ベルト鳴きが生じた場合を「×」で示し、またベルト鳴きが生じた時点の累計枚数を記した。
評価結果について述べる。表1に示すように、本実施形態の一例である「実施例1、2」では、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さ(粗さA)が「0.10μm」であるのに対し、摺動層2の表面粗さ(粗さB)がそれぞれ「0.35μm」、「0.28μm」である。即ち、「粗さB」は、上述した「0.20μm以上0.50μm以下」である。それ故、摺動層2の表面粗さ(粗さB)と、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さとの和(粗さA+B)は、それぞれ「0.45μm」、「0.38μm」であり、上述した「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たす。そして、摺動層2の厚み(樹脂膜厚)はそれぞれ「12μm」、「10μm」であり、上述した「7μm以上14μm以下」である。さらに、摺動層2の「M硬度」はそれぞれ「88.5度」、「87.7度」であり、「80度以上90度以下」である。これら「実施例1、2」では、ベルト寿命である30万枚(300K)の記録材Sに画像形成しても、ベルト鳴きが生じなかった。
これに対し、「比較例1~5」では、ベルト寿命である30万枚に達する前にベルト鳴きが生じた。このうち「比較例1、2」は、摺動層2の表面粗さと、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さとの和(粗さA+B)が「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たしていない。
詳しくは、「比較例1」は摺動層2にフィラーを含まず、「比較例2」は 摺動層2にフィラーを含むが、フィラーの配合量が上記した「5重量%以上40重量%以下」でない。そのため、「比較例1、2」では、摺動層2の表面粗さ(粗さB)がそれぞれ「0.10μm」、「0.18μm」であり、「0.20μm以上0.50μm以下」の範囲外である。この場合、「粗さA+B」は「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たしていない。それ故、記録材Sの累計枚数が30万枚に達していない「5万枚(50K)」、「6万枚(60K)」に達した時点で、ベルト鳴きが生じた。
「比較例3」は、「粗さB」が「0.26μm」であり、「0.20μm以上0.50μm以下」である。この場合、「粗さA+B」は「0.36μm」であり、「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たしている。また、摺動層2の「M硬度」は「87.4度」であり、「80度以上90度以下」である。ただし、摺動層2の厚み(樹脂膜厚)が「6μm」であり、上述した「7μm以上14μm以下」でない。この場合、記録材Sの累計枚数が30万枚に達していない「15万枚(150K)」に達した時点で、ベルト鳴きが生じた。
「比較例4、5」は、「粗さB」が「0.20μm以上0.50μm以下」であり、「粗さA+B」が「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たしている。摺動層2の厚み(樹脂膜厚)は共に「10μm」であり、上述した「7μm以上14μm以下」である。ただし、「比較例4、5」は、摺動層2の「M硬度」がそれぞれ「90.6度」、「74.4度」であり、「80度以上90度以下」でない。この場合、記録材Sの累計枚数が30万枚に達していない「10万枚(100K)」、「9.5万枚(95K)」にそれぞれ達した時点で、ベルト鳴きが生じた。
「粗さA+B」について述べる。摺動層2と定着ヒータ202及びヒータホルダ204との実接触面積は、摺動層2の表面粗さ(粗さA)と、定着ヒータ202及びヒータホルダ204の表面粗さ(粗さB)との和(粗さA+B)に比例する。表面粗さの和(粗さA+B)が大きければ、実接触面積は大きくなる。この表面粗さの和(粗さA+B)が「A+B≦0.35μm」の場合には、耐久に応じた削れによりベルト寿命に達する前に潤滑剤保持性が不足するほどに実接触面積が小さくなり過ぎて、摺動が不安定になり、ベルト鳴きが生じる。
他方、表面粗さの和(粗さA+B)が「0.6μm≦A+B」の場合には、耐久に応じた削れによりベルト寿命に達する前に潤滑剤保持性が不足するほどに実接触面積が小さくなることはない。したがって、ベルト寿命に達する前にベルト鳴きは生じ難い。しかし、実接触面積が大きい場合には小さい場合よりも、摺動層2や定着ヒータ202またヒータホルダ204が互いの摺動により削られて生じる削れ粉の量が多くなり、これが抵抗となって摺動負荷が大きくなる(トルクアップ)を生じさせる虞がある。
上記点に鑑み、本実施形態では、「粗さA+B」が「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たすようにした。表面粗さの和(粗さA+B)が「0.35μm<A+B<0.6μm」の場合、実接触面積が耐久によらず適切に維持され、ベルト寿命に達しても摺動が安定しているので、ベルト鳴きが生じない。また、削れ粉の量はベルト寿命に達する前に、トルクアップを生じさせるほど増えない。
上述したように、本実施形態では、定着ヒータ202及びヒータホルダ204に関し、摺動層2と摺動する接触面の表面粗さ(粗さA)を十点平均粗さで「0.10μm以上0.15μm以下」としている。他方、定着ベルト201は摺動層2に関し、硬度がマルテンス硬度で「80度以上90度以下」とし、また、その表面粗さ(粗さB)を十点平均粗さで「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たすようにした。こうすると、摺動層2や定着ヒータ202またヒータホルダ204が互いの摺動によりあまり削られずに、摺動層2と定着ヒータ202及びヒータホルダ204との実接触面積が適切に維持されるので、ベルト寿命に達しても摺動は安定している。このように、本実施形態によれば、耐久寿命を通じてスティックスリップやトルクアップが生じるのを抑制することができる。
<他の実施形態>
なお、上述の実施形態では、定着ベルト201に当接させた定着ヒータ202により定着ベルト201を加熱させる構成を例に説明したが、これに限らない。図示を省略したが、例えば、発熱自在なハロゲンランプなどを、定着ベルト201の内側に定着ベルト201に当接させずに配置しておき、このハロゲンランプからの輻射熱によって定着ベルト201を加熱させる構成がある。この構成では、ハロゲンランプからの輻射熱を効率良く伝導して定着ベルト201を加熱すべく、定着ベルト201の内側に非回転に設けられ、定着ベルト201を加圧ローラ206に向けて押圧するニップ形成部材が設けられている。即ち、ニップ形成部材は、定着ベルト201の内周面と摺動するバックアップ部材に相当する。このような構成のベルト加熱方式の定着装置であっても、本発明は適用可能である。
1…基体、2…摺動層、2a…フィラー、200…定着装置、201…定着ベルト、202…バックアップ部材(定着ヒータ)、204…バックアップ部材(ヒータホルダ)、206…回転体(加圧ローラ)、220…駆動手段(駆動モータ)、N…定着ニップ部(ニップ部)、S…記録材

Claims (9)

  1. 記録材に形成されたトナー像を記録材に定着させる定着装置であって、
    回転可能に設けられた無端状の定着ベルトと、
    前記定着ベルトの内側に非回転に設けられ、前記定着ベルトの内周面と摺動するバックアップ部材と、
    前記定着ベルトを前記バックアップ部材とにより挟むように前記定着ベルトの外周面に当接し、記録材を挟持搬送して記録材にトナー像を定着する定着ニップ部を形成する回転体と、を備え、
    前記定着ベルトは、基体と、前記基体の内周に形成され、前記バックアップ部材と接触して摺動される摺動層と、を有し、
    前記バックアップ部材は、前記摺動層との接触面の表面粗さが十点平均粗さで「0.10μm以上0.15μm未満」であり、
    前記摺動層は、硬度がマルテンス硬度で「80度以上90度以下」であり、且つ、前記バックアップ部材の表面粗さを十点平均粗さA、前記摺動層の表面粗さを十点平均粗さBとしたときに、前記摺動層の表面粗さが「0.35μm<A+B<0.6μm」を満たす、
    ことを特徴とする定着装置。
  2. 前記バックアップ部材は、前記定着ベルトを加熱するために設けられた発熱自在なヒータである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記摺動層の表面粗さは、十点平均粗さで「0.20μm以上0.50μm以下」である、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
  4. 前記基体は、フィルム状に形成された金属フィルムであり、
    前記摺動層は、形状異方性を有するフィラーを含有した樹脂層である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置。
  5. 前記フィラーは、アスペクト比が「30以上100以下」である、
    ことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
  6. 前記フィラーの配合量は、摺動層の重量に対し「5重量%以上40重量%以下」である、
    ことを特徴とする請求項4又は5に記載の定着装置。
  7. 前記フィラーは、雲母である、
    ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の定着装置。
  8. 前記摺動層は、厚さが「7μm以上14μm以下」である、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着装置。
  9. 前記回転体を駆動する駆動手段を備え、
    前記定着ベルトは、前記駆動手段による前記回転体の回転に従動して回転する、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の定着装置。
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