以下、本発明に係るポリエステル複合仮撚糸について詳細に説明する。
(ポリエステルコンジュゲート糸)
本発明の製造方法において、仮撚加工に供するポリエステルコンジュゲート糸の捲縮率K1が15〜55%であることが必用であり、25〜45%であることが好ましく、30〜45%であることがより好ましい。
ここで、捲縮率とは次のように測定、算出するものである。すなわち、糸を枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回のカセとし、カセをスタンドに吊り下げた状態で一昼夜放置する。次に、カセを0.000147cN/dtexの荷重(荷重1)を掛けた状態で沸水中に入れて30分間の湿熱処理をおこなった後、ろ紙にて水分を軽く取って30分風乾放置する。次いで、荷重1を掛けたまま、さらに0.00177cN/dtexの軽荷重(荷重2)を掛け、カセの長さaを測定する。次に荷重2のみを外して0.044cN/dtexの重荷重(荷重3)を掛け、カセの長さbを測定する。そして、下記式(I)に従い、捲縮率を算出する。
捲縮率K1が15〜55%であるポリエステルコンジュゲート糸を用いることにより、得られる複合仮撚糸は織編物にしたときの膨らみ感、ストレッチ性が優れたものとなる。さらに、該捲縮率であるので、得られる複合仮撚糸からなる織編物を染色等熱処理したときに該コンジュゲート糸の捲縮が発現し該コンジュゲート糸が織編物表面に適度に表出することと、後述する該コンジュゲート糸とポリエステル高配向未延伸糸とに色調の差が生じることとが相俟って、染色すれば織編物に緻密な杢感を与えることができる。捲縮率K1が15%未満の場合、織編物にしたときのストレッチ性及び膨らみ感に劣るものとなり、織編物に杢感を表現することが不十分となる。また、捲縮率K1が55%を超える場合、織編物にしたときのドレープ性に劣るものとなり、また、織編物に表現する杢感が細かくなりすぎる。
上記ポリエステルコンジュゲート糸は、例えば、熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂を、偏心芯鞘型又はサイドバイサイド型とした複合繊維からなるものとすることができる。織編物に膨らみ感、ストレッチ性を与える観点から、サイドバイサイド型であることが好ましい。
図2は、本発明の製造方法におけるポリエステルコンジュゲート糸の複合形状の一実施態様であるサイドバイサイド型を示す横断面模式図である。本発明におけるサイドバイサイド型として、図2(A)に示す2種類のポリエステルの接合面が直線的でほぼ等分に接合されているものや、図2(B)に示す該接合面が湾曲して接合されているものが挙げられる。
熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂の組合せとしては捲縮率K1が前記範囲を満たせば特に限定されるものではなく、極限粘度の異なるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある。)同士の組合せ、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ビスフェノールA又は2,2−ビス{4−(β−ヒドロキシ)フェニル}プロパンを共重合したPETと繰り返し単位が実質的に全てエチレンテレフタレートからなるPET(以下、ホモPETと略することがある。)の組合せ、ホモPETと繰り返し単位が実質的に全てブチレンテレフタレートからなるポリブチレンテレフタレート(以下、ホモPBTと略することがある。)との組合せ等が挙げられる。特に、ホモPETとホモPBTとの組合せとすると、織編物にしたときのドレープ性が特に優れたものとなりやすく、好ましい。ホモPETとホモPBTとの組合せの場合、ホモPETの極限粘度は0.30〜0.60が好ましく、ホモPBTの極限粘度は0.80〜1.30が好ましい。また、ホモPETとホモPBTとの質量比(ホモPET/ホモPBT)は、30/70〜50/50が好ましい。
また、上記熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂は、共重合成分としてスルホン酸金属塩基を有するジカルボン酸を全酸成分に対して0.5〜5.0モル%含むことができる。これにより、ポリエステルコンジュゲート糸はカチオン染料に対して可染性となる。そして、複合仮撚糸を構成するもう一方のポリエステル高配向未延伸糸をカチオン不染性のポリエステル、例えば、ホモPETからなるものとすれば、得られる複合仮撚糸を用いた織編物をカチオン染料と分散染料とを用いて染色した場合、織編物に異色効果のある杢感を表現することができる。
本発明の製造方法において、仮撚加工に供するポリエステルコンジュゲート糸の伸度が20〜50%であることが好ましく、30〜40%であることがより好ましい。該伸度が20〜50%とすることにより、得られる複合仮撚糸は、製織編工程での外的要因によっても物性が不安定とよりなりにくく、品質の安定した織編物をより得やすくなる。伸度は、JIS L 1013:2010 8.5.1伸び率 標準時試験に従って、測定、算出するものとする。
本発明の製造方法において、仮撚加工に供するポリエステルコンジュゲート糸の単糸繊度は、1〜6dtexが好ましく、2〜6dtexがより好ましい。該単糸繊度を1〜6dtexとすることにより、得られる複合仮撚糸は、織編物にしたときのストレッチ性、膨らみ感により優れつつ、ソフト感も一層優れたものとしやすくなる。
図1は、本発明の製造方法の一例を示す工程概略図である。本発明で用いる捲縮率K1が特定の範囲であるポリエステルコンジュゲート糸は、例えば、ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸を予め熱延伸処理することで得られる。中でも、図1に示すように、仮撚加工領域の前に熱延伸処理領域を設け、ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸を該熱延伸処理領域において熱延伸処理し、連続して仮撚加工をおこなうと、クリンプ形状が緻密に発現しやすくなる点で好ましい。
上記ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸を熱延伸処理する場合、該コンジュゲート高配向未延伸糸として伸度100〜150%、単糸繊度2〜8dtexのものを用い、延伸倍率が1.2〜1.6倍、熱処理温度が150〜200℃で熱延伸処理をおこなうと、目的とする捲縮率K1の範囲を満足するポリエステルコンジュゲート糸が得られやすくなるので好ましい。なお、該ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸に上記熱延伸処理をおこなわない場合、捲縮率K1は0%となる。
(ポリエステル高配向未延伸糸)
本発明の製造方法では、仮撚加工に供するもう一方の糸として、ポリエステル高配向未延伸糸を用いる。該高配向未延伸糸を後述する条件で仮撚加工をおこなうことにより、得られる複合仮撚糸は、織編物にしたときのドレープ性に優れ、織編物に緻密な杢感を与えることができる。
具体的に、該高配向未延伸糸をヒーター温度140〜180℃、延伸倍率1.02〜1.3倍で仮撚加工すると、得られる複合仮撚糸中の該高配向未延伸糸は低捲縮率、低配向、高トルクとなる。そして、低捲縮率、高トルクであること起因して、得られる複合仮撚糸を用いた織編物はドレープ性に優れたものとなる。
また、低配向であることに起因して、該高配向未延伸糸は染料の染着性が高いものとなる。そして、高トルクである該高配向未延伸糸には捻れ現象が生じ、入射した光を乱反射させる。従って、この高い染着性と光の乱反射効果により、該高配向未延伸糸は染色した場合に深みのある濃い色彩を具現することができ、もう一方の糸であるポリエステルコンジュゲート糸との間に色調の差が生じ、織編物に緻密な杢感を表現することができる。従って、得られる複合仮撚糸を用いて織編物とし、分散染料を用いて染色すれば、該高配向未延伸糸が該コンジュゲート糸に比して深みのある濃い色彩を具現し、同色における濃淡差によるマイルドで緻密な杢感を表現することができる。また、後述するように、該高配向未延伸糸をカチオン染料に可染性のものとすれば、得られる複合仮撚糸を用いた織編物をカチオン染料によって染色した場合、カチオン染料による発色性がより強調され、明瞭で緻密な杢感を表現することができる。なお、前述のように、特許文献2には織編物に杢感を表現する方法として、鞘糸となるポリエステル高配向未延伸糸としてシックアンドシンヤーンを用いることが開示されているが、本発明によれば、シックアンドシンヤーンを用いずとも杢感を表現できるというだけでなく、得られる杢感が緻密なものとなるという効果を奏することが可能となる。
上記ポリエステル高配向未延伸糸を構成するポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではない。例えば、PET、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略することがある。)、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルが挙げられ、共重合成分を含むものであってもよい。
上記ポリエステル高配向未延伸糸を構成するポリエステル樹脂として、エチレンテレフタレート単位からなり、5−ナトリウムイソフタル酸が全酸成分に対し0.5〜5モル%共重合されたものとすることができる。該高配向未延伸糸は、上記組成とすることによりカチオン染料に可染性となることと、前述のように、該高配向未延伸糸が高い染着性と光の乱反射効果を有することとが相俟って、カチオン染料で染色した場合に深みのある濃い色調を有することができる。従って、該高配向未延伸糸を上記組成とし、もう一方のポリエステルコンジュゲート糸をカチオン不染性のポリエステル、例えば、ホモPETとホモPBTからなる複合繊維とした場合に、カチオン染料のみを用いて染色すれば、高い染着性と光の乱反射効果を発揮する該高配向未延伸糸のみがカチオン染料によって染色され、染色された高配向未延伸糸が鞘糸としてポリエステルコンジュゲート糸を覆う中、捲縮が発現したポリエステルコンジュゲート糸がランダムに表出することにより、明瞭で緻密な杢感を表現することができる。また、カチオン染料と分散染料とを用いて染色すれば、該高配向未延伸糸がカチオン染料によって染色され、ポリエステルコンジュゲート糸が分散染料によって染色されるので、明瞭で異色効果のある緻密な杢感を表現することができる。
本発明の製造方法において、仮撚加工に供するポリエステル高配向未延伸糸の伸度が100〜150%であることが好ましい。該伸度とすることにより、織編物にしたときのドレープ性が特に優れたものとなりやすく、また、織編物に与える緻密な杢感をより強調しやすくなる。また、該ポリエステル高配向未延伸糸の伸度が100〜150%で、かつ、仮撚加工に供するポリエステルコンジュゲート糸の伸度が20〜50%とすると、仮撚加工において該コンジュゲート糸と該高配向未延伸糸との伸長差がより生じやすくなることから、織編物にしたときの膨らみ感、ストレッチ性がより優れたものとなりやすく、織編物により緻密な杢感をより表現しやすくなるので好ましい。同様の理由から、該ポリエステル高配向未延伸糸と該コンジュゲート糸との伸度差(ポリエステル高配向未延伸糸の伸度(%)−コンジュゲート糸の伸度(%))として、30〜100%が好ましく、40〜70%がより好ましい。
本発明の製造方法において、仮撚加工に供するポリエステル高配向未延伸糸の単糸繊度は、2.0〜10.0dtexが好ましく、3.0〜8.0dtexがより好ましい。該単糸繊度を2.0〜10.0dtexとすることにより、得られる複合仮撚糸は織編物にしたときのドレープ性により優れつつ、ソフト性も一層優れたものとなりやすくなる。また、3.0〜8.0dtexとすることにより、得られる複合仮撚糸は織編物にしたときのドレープ性、ソフト性に特に優れつつ、ポリエステル高配向未延伸糸の交絡が適度なものとなり、ストレッチ性に特に優れたものとなりやすくなる。
(仮撚加工)
本発明の製造方法において、ポリエステル高配向未延伸糸と捲縮率K1が15〜55%であるポリエステルコンジュゲート糸とを引きそろえ、仮撚ヒーター温度140〜180℃、延伸倍率を1.02〜1.3倍として仮撚加工をおこなうことが必要である。これにより、得られる複合仮撚糸は、織編物にしたときの膨らみ感、ストレッチ性及びドレープ性に優れ、織編物に緻密な杢感を表現することができる。なお、上記仮撚ヒーター温度とは、仮撚加工装置の直前に配置される仮撚ヒーターの温度である。
すなわち、上記仮撚ヒーター温度及び上記延伸倍率で仮撚加工をおこなうことにより、初めて複合仮撚糸中の該高配向未延伸糸が低配向、低捲縮率、高トルクとなる。そして、高トルク、低捲縮であることにより、織編物にしたときのドレープ性が優れたものとなる。また、低配向、高トルクであることにより、複合仮撚糸中の該高配向未延伸糸が高い染着性と乱反射効果を有することができ、一方の糸であるポリエステルコンジュゲート糸との間に色調の差が生じ、織編物に緻密な杢感を表現することができる。
さらに、ポリエステル高配向未延伸糸と捲縮率K1が特定の範囲であるポリエステルコンジュゲート糸とを引きそろえて仮撚加工するので、染色等熱処理したときにポリエステルコンジュゲート糸の捲縮が発現し、上記高配向未延伸糸が鞘部、上記コンジュゲート糸が芯部となる芯鞘構造となる。特に、仮撚加工における延伸倍率が特定の範囲であるので、ポリエステル高配向未延伸糸によるポリエステルコンジュゲート糸への巻き付きが緩く、芯糸に対する鞘糸の拘束力が低い芯鞘構造となる。加えて、ポリエステルコンジュゲート糸の特定の捲縮率K1である潜在捲縮性能が、上記仮撚ヒーター温度及び上記延伸倍率で仮撚加工をおこなうことで相乗的に高まり、前記芯鞘構造となることも相俟って、例えば、特許文献3に開示されているポリエステルコンジュゲート未延伸糸を用い比較的高い延伸倍率で仮撚加工する方法と比して、織編物にしたときのストレッチ性が格段に優れたものとなると推測される。
本発明の製造方法において、仮撚加工における仮撚ヒーター温度は、140〜180℃とすることが必要であり、140〜160℃とすることが好ましい。140〜180℃とすることにより、得られる複合仮撚糸中は、該複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸が高トルクとなり、織編物としたときのドレープ性に優れ、織編物に緻密な杢感を与えることができる。仮撚ヒーター温度が140℃未満の場合、得られる複合仮撚糸は、該複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸が高トルクとならず、ドレープ性に劣るものとなる。また、仮撚ヒーター温度が140℃未満の場合、ポリエステル高配向未延伸糸の熱収縮率が高いものとなりやすく、染色等熱処理をおこなった場合にポリエステル高配向未延伸糸が鞘糸、ポリエステルコンジュゲート糸が芯糸となる芯鞘構造が発現しにくくなる。その結果、織編物としたときのストレッチ性、膨らみ感、ソフト性に劣り、緻密な杢感が表現できないものとなりやすい。仮撚ヒーター温度が180℃を超えるものである場合、得られる複合仮撚糸は、該複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸が高トルクとならずドレープ性に劣るものとなる。また、該複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸が高捲縮率となりやすくなるので、芯糸であるポリエステルコンジュゲート糸が表出しにくくなり、緻密な杢感が表現しにくくなりやすい。
本発明の製造方法において、仮撚加工における延伸倍率は、1.02〜1.3倍とすることが必要であり、1.02〜1.2倍が好ましく、1.05〜1.15倍がより好ましい。延伸倍率が1.02倍以下の場合、仮撚加工が安定せず、糸切れが多発する。また、延伸倍率が1.3倍を超える場合、複合仮撚糸中の高配向未延伸糸が高配向、高捲縮率、低トルクとなり、得られる織物はドレープ性に劣るものとなり、緻密な杢感が表現しにくくなりやすい。
本発明の製造方法で用いる仮撚ヒーターとしては特に限定されるものではないが、安定して熱処理をおこなう観点から非接触式の仮撚ヒーターを用いることが好ましい。
本発明の製造方法において、仮撚加工は1段ヒーター式、2段ヒーター式のいずれも採用できるが、1段ヒーター式とした方が、複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸が高トルクとなりやすく、織編物としたときのドレープ性がより優れたものとなりやすくなるので好ましい。
本発明の製造方法において、加撚張力T1(cN/dtex)は0.05≦T1≦0.2が好ましい。加撚張力T1を上記範囲とすることにより、仮撚加工において糸切れが発生しにくく、高配向未延伸糸が低配向となりやすくなる。なお、加撚張力T1(cN/dtex)は、図1中の仮撚スピンドル6上部と仮撚ヒーター5下部の間の走行する糸における張力Ts(cN)を、仮撚加工後の複合仮撚糸の繊度(例えば、図1中仮撚スピンドル6上部と仮撚ヒーター5下部の間の走行する糸の繊度(dtex))で徐した値である。
本発明の製造方法において、仮撚係数(TW)は15000≦TW≦35000が好ましく、25000≦TW≦32000がより好ましい。ここで、仮撚係数(TW)とは、下記式(2)により算出されるものである。
上記仮撚係数(TW)が15000≦TW≦35000であると、得られる複合仮撚糸は、織編物にしたときにストレッチ性、ドレープ性がより優れたものとなりやすく、また、緻密な杢感をより表現しやすくなる。
仮撚加工装置としては、ピン、フリクションディスクなど、捲縮が付与できるものであれば特に限定されるものではない。
本発明の製造方法において、仮撚加工して得られた複合仮撚糸に混繊交絡処理を施すことが好ましい。これにより、緻密な杢感がより得られやすくなる。混繊交絡処理としては、流体ノズルを用いて交絡を付与する方法が採用でき、タスランノズル、インターレースノズルなどが好ましく採用できる。
混繊交絡処理において、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2から混繊交絡処理後の複合仮撚糸の捲縮率K3への変化率(捲縮変化率K0(%))が5≦K0≦30となるように、混繊交絡処理を施すことが好ましい。捲縮変化率K0は、下記式(3)により算出されるものである。
捲縮変化率K0を上記範囲とすることにより、織編物としたときに緻密な杢感をより表現しやすくなり、より織編物にしたときの膨らみ感がより優れたものとなりやすくなる。本発明において、捲縮変化率K0を上記範囲内とするには、エアー圧及びオーバーフィード率を適切なものに調整することにより可能である。例えば、エアー圧力を0.1〜0.3MPaに、オーバーフィード率を1〜10%に設定することが挙げられる。
複合仮撚糸としては、混繊交絡処理後の捲縮率K3が20〜80%であることが好ましく、40〜80%であることがより好ましい。これにより、得られる複合仮撚糸は、織編物としたときの膨らみ感及びストレッチ性により優れたものとなりやすくなる。
本発明の製造方法において、織編物にしたときに緻密な杢感をより強調するという観点から、得られる複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸の質量比率を55〜75質量%とすることが好ましい。該質量比率とするには、該高配向未延伸糸及びポリエステルコンジュゲート糸の総繊度、伸度等を適宜調整することにより可能である。該質量比率は、下記式(4)により算出されるものである。
本発明の製造方法において、複合仮撚糸に撚係数(R)が5000〜30000の範囲で追撚を施すことができる。これにより、バラエティーに富む杢感を表現することが可能となる。なお、撚係数(R)とは下記式(5)により算出されるものである。
次に、本発明の製造方法の一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の製造方法の一例を示す工程概略図である。まず、サイドバイサイド型のポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸YA0を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間の熱処理ヒーター2で熱延伸する。次いで、熱延伸したコンジュゲート糸YAとポリエステル高配向未延伸糸YBとを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター温度140〜180℃、延伸倍率1.02〜1.3倍として仮撚加工をおこなう。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、本発明の複合仮撚糸が得られる。
本発明の織編物は、本発明の製造方法で得られる複合仮撚糸を用いる。これにより、得られる織編物は、膨らみ感、ストレッチ性及びドレープ性に優れたものとなり、分散染料及び/又はカチオン染料で染色すれば、緻密な杢感を表現することが可能となる。
本発明の織編物の組織は特に限定されない。織物の場合、例えば、平組織、綾組織、朱子組織、ドビーやジャガードによる変化組織等が挙げられる。また、編物の場合、例えば、よこ編、トリコット編、ラッシェル編等が挙げられる。
織編物には、仕上げ加工において染色はもちろんのことアルカリ減量加工、柔軟加工、制電加工、撥水加工等の各種の加工が施されていてもよい。ポリエステルコンジュゲート糸の捲縮を発現させる熱処理の条件としては、好ましくは100℃以上で数十分間、より好ましくは100〜150℃で数十分間、さらに好ましくは100〜135℃で数十分間が挙げられる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例中の各種の値の測定及び評価は以下のように行った。
1.仮撚係数、捲縮率
前述した方法にて算出した。
2.複合仮撚糸中のポリエステル高配向未延伸糸の質量比率
複合仮撚糸中の高配向未延伸糸の総繊度(A)及びコンジュゲート糸の総繊度(B)から、下記式(4)に従い算出した。
3.織編物評価
得られた複合仮撚糸を用いた織物について、10人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料でドレープ性が良い、緻密な杢感が表現できている、ストレッチ性が高い並びに膨らみ感及びソフト感が優れるものを10点満点として1〜10点の10段階で評価し10人の平均値を算出し、6点以上を合格とした。
(実施例1)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)として、極限粘度〔η〕1.05のホモPBTと極限粘度〔η〕0.47のホモPETとが質量比率(PBT/PET)が60/40となるように図2(A)に示すサイドバイサイド型に複合され、伸度が115%であるコンジュゲート高配向未延伸糸(84dtex24フィラメント)を用意した。ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位として、全酸成分に対し5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.5モル%共重合した、伸度が130%である高配向未延伸糸(140dtex36フィラメント)を用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度175℃で延伸倍率1.52倍として熱延伸し本発明で用いるポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は35%、捲縮率は34.9%、総繊度は55dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW28300(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.10cN/dtex(加撚張力Ts=18cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度101本(/2.54cm)、緯糸密度79本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(実施例2)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)として、実施例1と同じものを用意した。ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として、酸化チタンの含有量が0.2質量%のホモPETのみからなる伸度が125%である高配向未延伸糸(140dtex72フィラメント)を用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(180dtex96フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度175℃で延伸倍率1.52倍として熱延伸し本発明で用いるポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は35%、捲縮率は34.9%、総繊度は55dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW30800(仮撚数T=2300(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.08cN/dtex(加撚張力Ts=14cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度103本(/2.54cm)、緯糸密度80本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、分散染料(ダイスター社製「Dianix Blue UN−SE」)を用いて2.0%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(実施例3)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度175℃で延伸倍率1.52倍として熱延伸し本発明で用いるポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は35%、捲縮率は34.9%、総繊度は55dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW16100(仮撚数T=1200(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.12cN/dtex(加撚張力Ts=22cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度101本(/2.54cm)、緯糸密度79本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(実施例4)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度160℃で延伸倍率1.50倍として熱延伸し本発明で用いるポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は37.8%、捲縮率は26.3%、総繊度は56dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW28300(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.09cN/dtex(加撚張力Ts=17cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度101本(/2.54cm)、緯糸密度79本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(実施例5)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度190℃で延伸倍率1.55倍として熱延伸し本発明で用いるポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は32.6%、捲縮率は43.6%、総繊度は54dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW28300(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.15cN/dtex(加撚張力Ts=28cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度101本(/2.54cm)、緯糸密度79本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(比較例1)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(192dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度175℃で延伸倍率1.15倍として熱延伸しポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は73%、捲縮率は10.5%、総繊度は73dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW29000(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.08cN/dtex(加撚張力Ts=16cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度96本(/2.54cm)、緯糸密度75本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(比較例2)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例2と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(158dtex96フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度175℃で延伸倍率1.15倍として熱延伸しポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は73%、捲縮率は10.5%、総繊度は73dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW26400(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.345倍、加撚張力T10.18cN/dtex(加撚張力Ts=28cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度110本(/2.54cm)、緯糸密度85本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、分散染料(ダイスター社製「Dianix Blue UN−SE」)を用いて2.0%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(比較例3)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を熱延伸することなく、上記高配向未延伸糸(YB)と表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW26100(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.45倍、加撚張力T10.15cN/dtex(加撚張力Ts=27cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸の捲縮率は、0%であった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度96本(/2.54cm)、緯糸密度75本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
(比較例4)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を熱延伸することなく、上記高配向未延伸糸(YB)と表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度150℃、仮撚係数TW29500(仮撚数T=2400(T/M))、延伸倍率1.48倍、加撚張力T10.12cN/dtex(加撚張力Ts=21cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸の捲縮率は、0%であった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度96本(/2.54cm)、緯糸密度75本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
(比較例5)
ポリエステルコンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)、ポリエステル高配向未延伸糸(YB)として実施例1と同じものを用意した。
上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)と上記高配向未延伸糸(YB)とを用い、図1に示す工程に従い、表1の加工条件下で加工し、複合仮撚糸(182dtex60フィラメント)を製造した。具体的に、まず、上記コンジュゲート高配向未延伸糸(YA0)を第1供給ローラー1と第1引取ローラー3との間で、熱処理ヒーター2の温度175℃で延伸倍率1.52倍として熱延伸しポリエステルコンジュゲート糸(YA)とした。このときのポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度は35%、捲縮率は34.9%、総繊度は55dtexであった。次いで、該コンジュゲート糸(YA)とポリエステル高配向未延伸糸(YB)とを引きそろえ、第2供給ローラー4と第2引取ローラー7との間の仮撚加工域に供給し、仮撚ヒーター5と仮撚スピンドル6とによって、仮撚ヒーター5温度110℃、仮撚係数TW28300(仮撚数T=2100(T/M))、延伸倍率1.10倍、加撚張力T10.10cN/dtex(加撚張力Ts=18cN)として仮撚加工をおこなった。そして、第2引取ローラー7により流体処理加工域に導き、第3引取ローラー間9でインターレースノズル8によって流体噴射加工を施し、第3引取ローラー9を経て、巻き取りローラー10によりパッケージ11に捲き取り、複合仮撚糸を得た。なお、複合仮撚糸の捲縮率K3は、該複合仮撚糸を用いて測定した。また、ポリエステルコンジュゲート糸(YA)の伸度及び捲縮率K1は、第1引取ローラー3を通過したポリエステルコンジュゲート糸(YA)を、第2供給ローラー4に供給される前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。また、混繊交絡処理前の複合仮撚糸の捲縮率K2は、第2引取ローラー7を通過した複合仮撚糸を、インターレースノズル8で流体噴射加工する前に引き取ったものを用いて測定をおこなった。
次に、得られた複合仮撚糸に500(回/M)の追撚を施したものを用い、経糸密度101本(/2.54cm)、緯糸密度79本(/2.54cm)の2/2ツイル織物とした。
得られたツイル織物を80℃×20分間の条件で精練した後、カチオン染料(保土谷化学工業製「Aizen Cathilon Blue F2RLH」)を用いて1.5%omf、130℃×30分間の条件で染色し、170℃で20秒間仕上げセットして評価用の織物を得た。ドレープ性、杢感、ストレッチ性、並びに、膨らみ感及びソフト感の評価は、該織物を用いておこなった。
加工条件と複合仮撚糸及び織物の評価結果とを併せて、表1に示す。
表1に示す評価結果から明らかなように、実施例1〜5は、ポリエステル高配向未延伸糸と、捲縮率が15〜55%の範囲内であるポリエステルコンジュゲート糸とを引きそろえて延伸倍率を1.02〜1.3倍の範囲内で仮撚加工したことから、得られた織物は膨らみ感、ストレッチ性及びドレープ性に優れ、緻密な杢感を表現することができた。
特に、杢感に関し、実施例1では、コンジュゲート糸と高配向未延伸糸とでカチオン染料に対する染着性が相違することから、高配向未延伸糸はカチオン染料による発色性がより強調されるものとなり、明瞭で緻密な杢感が表現できた。また、実施例2では、分散染料による染色において高配向未延伸糸がコンジュゲート糸に比して深みのある濃い色彩を具現し、同色における濃淡差によるマイルドで緻密な杢感を表現することができた。
また、実施例1は、高配向未延伸糸の単糸繊度が3.0〜8.0dtexの範囲内であったことから、例えば実施例2と比較して、得られた複合仮撚糸を織編物にしたときのドレープ性、ソフト性に特に優れつつ、ポリエステル高配向未延伸糸の交絡が適度なものとなり、ストレッチ性に特に優れたものとなった。
さらに、実施例1は、仮撚係数TWが25000≦TW≦32000の範囲内であったことから、例えば実施例3と比較して、ポリエステルコンジュゲート糸の特定の捲縮率である潜在捲縮性能がより相乗的に高まったと推測され、結果複合仮撚糸の捲縮率が特に高くなり、得られた織物はストレッチ性が特に優れたものであった。
実施例1は、サイドバイサイド型のポリエステルコンジュゲート糸の捲縮率が30〜45%の範囲内であったことから、例えば実施例4と比較して、得られた織物はストレッチ性が特に優れ、また、コンジュゲート糸が高配向未延伸糸とより細かく交絡し、杢感が特に緻密なものであり特に良好であった。
比較例1は、サイドバイサイド型のポリエステルコンジュゲート糸の捲縮率が15%未満であったことから、得られた織物はストレッチ性及び膨らみ感に劣るものとなり、また、ポリエステルコンジュゲート糸が織物表面に表出する割合が少なくなって、杢感が不十分であった。
比較例2は、比較例1と比較して、サイドバイサイド型のポリエステルコンジュゲート糸の捲縮率が15%未満であったが、仮撚加工の際に比較的高い延伸倍率で熱延伸されたことから、複合仮撚糸の捲縮率が比較的高くなり、得られた織物はストレッチ性に優れたものであった。しかし、延伸倍率が1.3倍を超える条件で仮撚加工したことから、複合仮撚糸中の高配向未延伸糸が高配向、高捲縮率、低トルクとなり、得られた織物はドレープ性に劣るものであった。また、ポリエステルコンジュゲート糸が織物表面に表出する割合が少なくなったことと、高配向未延伸糸への分散染料の染着、及び乱反射効果が不十分となったことから、得られた織物は杢感が不十分であった。
比較例3は、コンジュゲート高配向未延伸糸を熱延伸しなかった(すなわち、サイドバイサイド型のポリエステルコンジュゲート糸の捲縮率が0%であった)ことから、延伸倍率が1.2倍を超える1.45倍、温度150℃で仮撚加工しても、複合仮撚糸の捲縮率が低くなり、得られた織物はストレッチ性に劣るものであった。また、延伸倍率が1.2倍を超える条件で仮撚加工したことから、複合仮撚糸中の高配向未延伸糸が高配向、高捲縮率、低トルクとなり、得られた織物はドレープ性に劣るものであった。また、ポリエステルコンジュゲート糸との交絡が粗くなり、高配向未延伸糸への分散染料の染着、及び乱反射効果が不十分となったことから、得られた織物は杢感が不十分であった。
比較例4は、比較例3よりも高い延伸倍率で仮撚加工をおこなったことから、ストレッチ性は優れたものであった。しかし、比較例3よりもより高い延伸倍率で仮撚加工をおこなったことから、得られた織物は、比較例3と比較してドレープ性にさらに劣るものとなった。
比較例5は、仮撚ヒーター温度が140℃未満であったことから、ポリエステル高配向未延伸糸が高トルクとならず、ドレープ性に劣るものであった。また、ポリエステル高配向未延伸糸の熱収縮率が高いままであったことから、ポリエステル高配向未延伸糸が鞘糸、ポリエステルコンジュゲートが芯糸となる2層構造とならず、緻密な杢感が表現できず、ストレッチ性、膨らみ感、ソフト感に劣るものであった。