JP4056356B2 - 流体複合加工糸及びその製造方法並びに同加工糸を含む織編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、染色意匠効果に富んだ流体複合加工糸及びその製造方法並びに同加工糸を含む織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
織編物に染色意匠効果を付与可能な糸条として、染色特性の異なる糸条を複合した加工糸はよく知られている。その中でも、染色濃淡差をも同時に付与可能なシックアンドシン糸を複合した加工糸は、特異、且つ、ナチュラルな染色意匠効果を織編物に付与可能なことから、例えば特許3155179号公報や特開平2−80631号公報や特開平10−226932号公報等多数提案されている。しかしながら、昨今の消費者ニーズは多様化、高度化が著しく、従来の単純な染色濃淡差では満足せず、新しい染色意匠効果が付与されたものが望まれている。
そこで特開昭61−289630号公報や特開平5−25732号公報には、濃、中、淡色染色効果を付与可能な糸が提案されているが、ややもすると、濃色染色部と中間色染色部と淡色染色部が織編物表面で渾然一体と見え、複雑、且つ、効果的に染色効果を発揮するためには、濃、中、淡色染色部のパターン設計や染色工程管理が煩雑となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記問題点を解消することを目的になされたものであり、濃、中、淡色の染色意匠効果が効果的に発揮され、且つ、ふくらみ感や、ソフト感のある流体複合加工糸及びその製造方法並びに同加工糸を含む織編物を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2本以上のフィラメント糸から構成された流体複合加工糸であって、構成糸条の少なくとも1本のフィラメント糸を、濃、中、淡色染色部を有する熱可塑性樹脂からなるマルチフィラメント糸とし、且つ、各染色部を適正に配置することによって、布帛としたときに効果的な染色意匠効果を付与可能とした流体複合加工糸である。
すなわち、本発明は2本以上のフィラメント糸からなる複合加工糸であって、構成糸条の少なくとも1本のフィラメント糸が糸長手方向に繊度差を設けた熱可塑性樹脂からなるマルチフィラメント糸で構成されており、且つ、該熱可塑性樹脂からなるマルチフィラメント糸の構成フィラメントが太さが一様であり中間染色部より太い濃色染色部、太さが一様であり中間染色部より細い淡色染色部、及びその中間の太さであり、太さが一様な中間色染色部を有し、且つ、上記濃色染色部の前後に隣接して淡色染色部を有していることを特徴とする流体複合加工糸にある。
又、本発明は、熱可塑性樹脂からなる高配向未延伸マルチフィラメント糸を、ピンヒータ温度140〜250℃、且つ、延伸倍率1.05〜1.80倍の条件下で、ピンヒータに間歇接触延伸して糸の長さ方向に繊度差を付与した後、他のフィラメント糸と流体複合処理を施すことを特徴とする流体複合加工糸の製造方法にある。
更に、本発明は、上記の流体複合加工糸を含む織編物にある。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の流体複合加工糸は、2本以上のフィラメント糸からなる流体複合加工糸であって、少なくとも1本のフィラメント糸が糸長手方向に繊度差を設けた熱可塑性樹脂からなるマルチフィラメント糸(以下、単に熱可塑性マルチフィラメント糸と称す。)で構成されており、且つ、該熱可塑性マルチフィラメント糸の構成フィラメントが太さが一様であり中間染色部より太い濃色染色部、太さが一様であり中間染色部より細い淡色染色部及び濃色染色部と淡色染色部の中間の太さであり、太さが一様な中間色染色部を有し、且つ、上記濃色染色部の前後に隣接して淡色染色部を有していることが必要である。
【0006】
本発明の流体複合加工糸に含まれる繊度差を有する熱可塑性マルチフィラメント糸は、図1に模式的糸形態に示すごとく、糸長手方向に中間色染色部2を介して、濃色染色部1の前後に淡色染色部3が存在している。この熱可塑性マルチフィラメント糸は染色したときに視覚的に染色濃度が異なる3種の染色部が存在することによって、従来の濃、淡色染色意匠糸と比較して、複雑な染色意匠効果を得ることが可能となる。更に、濃色染色部1の前後に淡色染色部3を配置することによって、濃色染色部1と淡色染色部3の視覚的な濃度差が強調され、より効果的に染色意匠効果を得ることが可能となる。
【0007】
図2は、本発明の流体複合加工糸に含まれる繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸の糸長手方向の繊度変化を示すグラフの一例であり、計測器工業製のイーブネステスター「KET80−C」で糸長手方向の糸の質量変動を測定し、得られたもののチャートである。
本発明で用いる熱可塑性マルチフィラメント糸は、質量変動の平均値を示す中間色染色部に該当するチャート部分:bを介して、質量変動の平均値よりも大きい濃色染色部に該当するチャート部分:aの前後に質量変動の平均値よりも小さい淡色染色部に該当するチャート部分:cが存在していることを示す特徴のあるチャート形態を示す。
【0008】
本発明の流体複合加工糸を構成する糸の長さ方向に繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸を構成するフィラメントは、各濃、中、淡色の染色部内では実質的に一様な太さ(繊度)であることが必要であり、マルチフィラメント糸を構成する単繊維の太さ(繊度)が一様でない場合には各染色部内で染色斑が生じ、濃色染色部と中間色染色部と淡色染色部が織編物表面で渾然一体に見えてしまい本発明の目的を達成しない。
【0009】
本発明の流体複合加工糸は、流体処理を施されているために、交絡部及び、毛羽及び/又はループを形成しており、ふくらみ感やソフト感を有し、梳毛調の風合を発現させることも可能である。特に糸長手方向に、交絡部が5〜150個/m、及び、毛羽及び/又はループが50〜1000個/m、のうちの少なくとも一方を満たしていると、より好ましいふくらみ感やソフト感を併せ持つ流体複合加工糸を得ることができる。
【0010】
又、本発明の流体複合加工糸において、そのフィラメント糸の一部又は全てに仮撚捲縮が付与されていると、布帛としたときに仮撚捲縮によるふくらみ感、ソフト感といった風合を付与することが可能となり、より好ましいものとなる。
【0011】
本発明の流体複合加工糸を構成する糸長手方向に繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリトリメチレンテレフタレート、アクリロニトリル系重合体等の熱可塑性樹脂からなる合成繊維であれば特に限定されるものではなく、使用用途や必要な糸物性等を考慮して適宜選択する。又、共重合系熱可塑性樹脂からなる合成繊維、或いはサイドバイサイド型や芯鞘型等に複合紡糸された合成繊維であってもよい。
なお、熱可塑性フィラメント糸には、酸化チタン、導電性物質、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤等の他成分が含有されていても特に問題はなく、本発明の目的である染色意匠効果に他の機能効果が付与され、実用的により好ましいものとなる。更に構成フィラメントの断面も特に限定されるものではなく、多角形断面糸、多葉型断面糸、扁平断面糸、凹凸糸や中空糸等を用いることができ、目的とする織編物の風合や光沢、外観等を考慮して適宜決定する。
【0012】
一方、本発明の流体複合加工糸を構成する糸長手方向に繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸に複合する他のフィラメント糸としては、特に限定するものではなく天然繊維、上述の熱可塑性樹脂からなる合成繊維等やアセテート繊維等セルロース系繊維の何れでもよく、又、そのフィラメント糸の断面形態、フィラメント糸の側面形態も限定されず、更に、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸の何れであってもよく、目的とする織編物の風合や光沢、外観等を考慮して決定する。
【0013】
更に、本発明の流体複合加工糸はその形態は特に限定されることはなく、追撚糸であってもよい。
【0014】
本発明の流体複合加工糸を構成する糸長手方向に繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸において、濃色染色部及び淡色染色部の平均長さは特に限定されるものではないが、濃色染色部の平均長さは1〜50cmの範囲が好ましく、3〜30cmに設定すると更に好ましい。又、淡色染色部の平均長さは0.5〜40cmの範囲が好ましく、2〜25cmの範囲に設定すると更に好ましい。又、濃色染色部の平均長さが淡色染色部の平均長さより大であると濃色染色部と淡色染色部の視覚的な濃度差が強調され好ましい。
【0015】
又、その中間色染色部の長さや糸長手方向の占有率は、目的とする染色意匠効果等を考慮して適宜設定すればよいが、中間色染色部の長さは0.05〜10mが好ましく、0.1〜5mに設定すると更に好ましい。糸長手方向における中間色染色部の占有率は50〜99.5%が好ましく、更に好ましくは65.0〜95.0%に設定すると、染色意匠効果に特に効果のある淡色染色部〜濃色染色部〜淡色染色部で構成された染色部群が効果的に配置されて、より好ましい染色意匠効果を得ることができる。
【0016】
次に本発明の流体複合加工糸の製造方法について説明する。図3は本発明に使用する装置の一例を示すものである。
熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸4を、フィードローラー9及びフィードローラー10の間で、間歇的にピンヒータ6に接触させながら延伸して繊度差を形成させ、フィードローラー10と引き取りローラー13の間で、フィードローラー11により供給された他の繊維であるフィラメント糸5と、流体複合加工処理装置12を用いて流体複合処理を施し、ガイド14を介して、巻取装置15にて巻き取る。なお、ピンヒータ6を間歇的に熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸に接触させる方法は特に限定されるものではないが、図3の例では、コンピュータ8等を含む装置で稼動条件を制御されたエアシリンダ7を用いて、ピンヒータに接触あるいは非接触処理を行う。
【0017】
本発明の製造方法で用いられる熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸としては、前述したポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリトリメチレンテレフタレート、アクリロニトリル系重合体等の熱可塑性樹脂からなる高配向未延伸マルチフィラメント糸であれば特に限定されるものではない。例えば、複屈折率が20×10-3〜80×10-3のポリエチレンテレフタレートを主成分とした熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸等を好ましく用いることができる。
【0018】
本発明の製造方法において、フィードローラー9とフィードローラー10で設定された設定延伸倍率及びピンヒータ6の設定温度は、濃色染色部、中間色染色部及び淡色染色部の形成並びに相対的な染色意匠効果の程度に重大な影響を与える条件であり、一定の延伸条件下で適正な温度のピンヒータ6に間歇的に接触処理/非接触処理を施して熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸の可塑化状態を瞬間的に変化させることによって、構成フィラメントが一様に太い濃色染色部、構成フィラメントが一様に細い淡色染色部、及び構成フィラメントが中間の太さを有する中間色染色部を有し、且つ、濃色染色部の前後に淡色染色部が存在した糸長手方向に繊度差を有した熱可塑性マルチフィラメント糸を得ることが可能となる。
【0019】
本発明の製造方法におけるピンヒータ6の接触領域の設定延伸倍率は1.05〜1.80の範囲が好ましく、1.2〜1.65倍の範囲に設定すると更に好ましい。ピンヒータ6の設定温度は、140〜250℃の範囲が好ましく、160〜230℃の範囲に設定すると更に好ましい。延伸倍率が1.05倍未満であると糸を延伸する応力が低いためにピンヒータ6に間歇的に接触したとしても繊度変化、すなわち、染色意匠効果は得られないものとなり、1.80倍を超えると糸全体が一様に延伸されてしまうために繊度変化は得られなくなる。一方、設定温度が140℃未満であると比較的低温であるために熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸の可塑化状態を瞬間的に変化させることが困難となり、従来の濃、中、淡色形成糸の如く濃色染色部と淡色染色部と中間色染色部がランダムに形成されてしまい本発明の目的である染色意匠効果が得られなくなり、250℃を超えると単純なシックアンドシン糸となって濃、中、淡色の3種類の染色部を形成することが困難となる。
【0020】
本発明の流体複合加工糸の流体複合処理に使用される流体複合処理装置としては特に限定するものではなく、流体攪乱ノズル、インターレースノズル等の公知のものでよく、又、流体複合処理時の流体圧力は、交絡状態や糸質維持等を考慮して適宜設定可能であり、目的とする織編物の風合や光沢、外観等を考慮して決定すればよい。
【0021】
又、繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸の染色意匠効果をより効果的に発現させるためには、流体複合処理の前又は後で熱緩和処理を施すことも好ましく、熱緩和処理を実施する場合には緩和率3〜30%の条件下が好ましく、7〜25%に設定すると更に好ましい。緩和率が3%未満の場合には、殆ど熱緩和の効果が得られず、又、30%以上にすると糸たるみが発生して処理工程が不安定になる。なお、熱緩和処理時の温度は特に限定されず、繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメント糸の糸物性により適宜設定する。例えば、ポリエステル高配向未延伸糸を用いた場合には、熱板ヒータ等を用い、150〜220℃の範囲に設定する。又、加熱装置の種類は特に限定されるものではなく、熱板ヒータ等の公知の加熱装置を用いればよい。図4に流体複合加工処理に先立って熱緩和処理を施す場合の工程図を掲げた。
【0022】
更に、本発明の流体複合加工糸の製造方法において、流体複合加工糸にふくらみ感やソフト感などの風合を付与するために、流体複合処理の前又は後に仮撚捲縮加工を施すことも好ましく、仮撚捲縮加工を施す場合の仮撚加撚張力は、繊度当たりの加撚張力0.02〜0.18cNが好ましく、0.04〜0.12cNの範囲に設定すると更に好ましい。加撚張力が0.02cN未満では仮撚張力不足のため、仮撚施撚体上部のバルーニング大きくなり加工性が不安定となる。又、0.18cNを超えると形成された糸全体が一様に延伸されてしまうため、繊度差を有する熱可塑性マルチフィラメント糸も延伸され、染色意匠効果が消失或いは不十分なものとなってしまう。図5に流体複合処理の前に仮撚捲縮加工を施す場合の工程図を例示した。
【0023】
本発明の流体複合加工糸を含む織編物は、その混率並びに織編物組織を、目的の風合や製品外観が得られる範囲で決定すればよい。又、本発明の流体複合加工糸単独からなる織編物、又は該加工糸と他繊維との合撚糸からなる織編物、該加工糸を織編物の一部に用いた織編物でもよく、本発明の流体複合加工糸の効果が得られる範囲内で種々の織編物を得ることが可能である。
【0024】
【実施例】
以下に本発明の実施例をあげて更に具体的に説明する。
実施例で得た流体複合加工糸の評価は次のようにして行った。
得られた流体複合加工糸を、16ゲージの一口通編み機で製編し、この筒編地を常法により精練、分散可染糸を染色する場合には分散染料を、カチオン可染糸を使用する場合にはカチオン染料を使用して染色後、目視にて染色意匠性の評価を行った。
なお、精練は適当な精練剤等を用いて70℃で15分間処理を行った。
次に染色条件を示す。
使用染料
分散染料:Terasil Navy Blue (日本チバガイギー社製)
カチオン染料:Cathilon blue K−GLH (保土ケ谷化学社製)
染料濃度(質量%):1.0%(筒編地質量に対して)
染色助剤:Ultra MT−N2 (大和化学工業社製)0.5g/L(染浴容積に対して)
浴比 1:30
処理(温度、時間) 120℃×30分
流体複合加工糸における濃、中、淡色染色部の染色意匠性を持つ熱可塑性マルチフィラメント糸における各染色部の長さの測定
上記手法にて得られた編地をほどいて、一端を固定し、他端に0.1g/dtexの荷重をかけて、各部分の長さをそれぞれ10箇所測定して平均値を算出した。
糸長手方向の交絡部及び、毛羽及び/又はループの個数の測定
得られた流体複合加工糸の一端を固定し、他端に0.1g/dtexの荷重をかけて、目視にて1m当たりの個数を5回測定した平均値を算出した。
【0025】
(実施例1)
図3に示した工程図の装置を用い、熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸4としてポリエステル高配向未延伸マルチフィラメント糸(複屈折率42×10-3、セミダル135dtex、36フィラメント)を用いて、フィードローラー9、10間のピンヒータ6接触領域の設定延伸倍率1.50倍、ピンヒータ6の温度200℃、コンピュータ8から指示されるエアシリンダ7の上下動(矢印)による(以下、各実施例で同じ。)ピンヒータ6への糸接触/非接触時間のランダム変動値0.53〜0.93秒/0.02〜0.05秒の条件下で繊度差を形成し、他のフィラメント糸5としてジアセテートマルチフィラメント糸(ブライト84dtex、21フィラメント)と共にフィードローラー11で流体複合処理装置12へ供給した。なお、流体複合処理装置12としてはエア交絡ノズルを用い、エア圧力0.3MPa、流体複合処理時のオーバーフィード率を、繊度差を有するポリエステル高配向未延伸マルチフィラメント糸は1.5%、ジアセテートマルチフィラメント糸は0.5%に設定し、加工速度400m/分の条件において、引き取りローラー13よりガイド14を経て巻取装置15にて巻取りを行った。
【0026】
得られた流体複合加工糸は、濃色染色部の前後に淡色染色部が配置された意匠効果の高い濃、中、淡色染色意匠効果が得られ、ふくらみ感やソフト感のあるものであった。
得られた加工糸を構成する繊度差を有する熱可塑性マルチフィラメント糸の各染色部の長さを測定、評価したところ、濃色染色部平均長さは5.7cm、淡色染色部平均長さ4.9cm、中間色染色部の長さが0.9m〜1.6m、糸長手方向の中間色染色部占有率が96.2%であった。又、糸長手方向に交絡部を57個/m、ループ及び/又は毛羽は0個/mであった。
【0027】
(実施例2)
図4の装置を用い、熱可塑性高配向未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸(複屈折率42×10-3、セミダル90dtex、36フィラメント)4を用いて、ピンヒータ6の接触領域の設定延伸倍率1.50倍、ピンヒータ6の温度200℃、ピンヒータ6への糸接触/非接触時間のランダム変動値0.27〜0.48秒/0.04〜0.09秒の条件下で繊度差を形成し、熱板ヒータ18の温度190℃、熱板ヒータでの緩和率10%にて熱緩和処理を行い、流体複合処理装置12に供給した。他のフィラメント糸5として熱収縮性能に差を有するポリマーを張り合わせ紡糸したポリエステルサイドバイサイド型コンジュゲート糸(セミダル56dtex、12フィラメント)をフィードローラー20を経て上記繊度差を設けた熱可塑性フィラメント糸と共に流体複合処理装置12へ供給した。なお、流体複合処理装置12としてエア交絡ノズルを用い、流体圧力0.3MPa、流体複合処理のオーバーフィード率を繊度差を有するポリエステル高配向未延伸マルチフィラメント糸4は1.0%、ポリエステルサイドバイサイド型コンジュゲート糸5は0.5%、加工速度400m/分の条件において流体複合加工して引き取りローラー21よりガイド22を経て巻取装置15にて巻取りを行った。
【0028】
得られた加工糸は構成フィラメントが一様に太い濃色染色部、構成フィラメントが一様に細い淡色染色部、及び、構成フィラメントが中間の太さを有する中間色染色部を有し、且つ、濃色染色部の前後に淡色染色部が存在した染色意匠性を有していた。
この加工糸の各染色部の長さを測定、評価したところ、濃色染色部の平均長さは6.9cm、淡色染色部の平均長さは3.1cm、中間色染色部の長さが0.6m〜1.7m、糸長手方向の中間色染色部占有率が91.2%であった。又、糸長手方向に交絡部を62個/m、ループ及び/又は毛羽は0個/mであった。
【0029】
(実施例3)
図5に示した装置を用い、熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸4としてカチオン可染ポリエステル高配向未延伸マルチフィラメント糸(複屈折率48×10-3、セミダル122dtex、36フィラメント)を用いて、フィードローラー間(23〜24)の延伸倍率1.50倍、ピンヒータ6の温度230℃、ピンヒータ6への糸接触/非接触時間のランダム変動値0.25〜0.50秒/0.06〜0.10秒、続いてこのカチオン可染ポリエステルポリエステル高配向未延伸マルチフィラメント糸4と他のフィラメント糸5としてカチオン可染ポリエステルマルチフィラメント糸(セミダル56dtex、24フィラメント)をフィードローラー24に引揃え導入し、ガイド25を介して、加工速度200m/分(デリベリーローラー換算)、仮撚施撚体27の回転数(仮撚方向:Z)2400T/m、上部熱板ヒータ26の温度160℃、下部熱板ヒータ29の温度180℃、上部ヒータ26と仮撚施撚体27間の仮撚加撚張力0.1cN、仮撚後の熱セット時の緩和率12%で、その後エア交絡ノズル12のエア圧力0.4MPa、流体複合時のオーバーフィード率を5%で流体複合加工し、引き取りローラー31から巻取装置32にて巻取りを行った。
【0030】
得られた加工糸を前記カチオン染料を用い評価を行ったところ、構成フィラメントが一様に太い濃色染色部、構成フィラメントが一様に細い淡色染色部、及び、構成フィラメントが中間の太さを有する中間色染色部を有し、且つ、濃色染色部の前後に淡色染色部が存在した染色意匠性を有していた。
得られた加工糸の各染色部の長さを測定、評価したところ、濃色染色部の平均長さは23.2cm、淡色染色部の平均長さは9.1cm、中間色染色部の長さが0.7m〜1.4m、糸長手方向の中間色染色部の占有率が72.8%であった。又、糸長手方向に交絡部を1個/m、ループ及び/又は毛羽は478個/mであった。
【0031】
(比較例1)
ピンヒータ間歇接触時のピンヒータ6の温度を125℃とする以外は実施例1と同様条件で加工を行い、得られた加工糸の評価を行ったところ、濃色染色部と淡色染色部と中間色染色部がランダムに形成された布帛表面となり、染色濃度差が渾然一体となった染色意匠効果の乏しいものであった。
【0032】
(比較例2)
ピンヒータ間歇接触時のピンヒータ6の温度を260℃とする以外は実施例1と同様条件で加工を行い、得られた加工糸の評価を行ったところ、濃、淡色染色効果を発現する従来のシックアンドシン糸を用いた布帛と同様の染色意匠効果が得られるのみであった。
【0033】
(比較例3)
ピンヒータ6の接触領域の設定延伸倍率を1.00倍とする以外は実施例1と同様条件で加工を行い、得られた加工糸の評価を行ったところ、糸長手方向に染色濃度差が認められず、布帛表面に染色意匠効果の乏しいものとなった。
【0034】
(比較例4)
ピンヒータ6の接触領域の設定延伸倍率を2.00倍とする以外は実施例1と同様条件で加工を行い、得られた加工糸の評価を行ったところ、糸長手方向に染色濃度差が認められず、布帛表面に染色意匠効果の乏しいものであった。
【0035】
(比較例5)
流体複合加工を実施しない以外は実施例1と同様条件で加工を行ったが、後工程通過性が悪く、製編不可能で評価は行えなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の流体複合加工糸は、濃色染色部、中間色染色部、淡色染色部が効果的に発揮されるとともに、ふくらみ感やソフト感といった風合を織編物に付与することが可能な流体複合加工糸及び該流体複合加工糸を含む織編物であって、優れた染色意匠効果に富み、良好な風合を兼備し、衣料用織編物として甚だ好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の流体複合加工糸を構成する繊度差を有する熱可塑性マルチフィラメント糸の糸形態の模式的な一例を示す。
【図2】本発明の流体複合加工糸に含まれる繊度差を有する熱可塑性マルチフィラメント糸の糸長手方向における太さ変化を示すグラフの一例を示すものである。
【図3】本発明の流体複合加工糸の製造方法の一例を示す工程図である。
【図4】 本発明の流体複合加工糸の製造において繊度差を設けた熱可塑性マルチフィラメントを緩和処理する他の製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明の流体複合加工糸として仮撚捲縮加工を施した糸を流体複合加工する製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
1,a 濃色染色部
2,b 中間色染色部
3,c 淡色染色部
4 熱可塑性高配向未延伸マルチフィラメント糸
5 他のフィラメント糸
6 ピンヒータ
7 エアシリンダ
8 コンピュータ
9,10,11,16,17,19,20,23,24,28,30
フィードローラー
12 流体複合処理装置
13,21,31 引き取りローラー
14,22,25 ガイド
15,32 巻取装置
18,26,29 熱板ヒータ
27 仮撚施撚体
Claims (7)
- 2本以上のフィラメント糸からなる複合加工糸であって、少なくとも1本のフィラメント糸が糸長手方向に繊度差を設けた熱可塑性樹脂からなるマルチフィラメント糸で構成されており、且つ、該熱可塑性樹脂からなるマルチフィラメント糸の構成フィラメントが太さが一様であり中間染色部より太い濃色染色部、太さが一様であり中間染色部より細い淡色染色部及びその中間の太さであり、太さが一様な中間色染色部を有し、濃色染色部の前後に隣接して淡色染色部を有していることを特徴とする流体複合加工糸。
- 糸長手方向に、交絡部が5〜150個/m、及び、毛羽及び/又はループが50〜1000個/m、のうちの少なくとも一方を満たしている請求項1に記載の流体複合加工糸。
- フィラメント糸の一部又は全てに仮撚捲縮が付与されている請求項1又は2に記載の流体複合加工糸。
- 熱可塑性樹脂からなる高配向未延伸マルチフィラメント糸を、ピンヒータ温度140〜250℃、且つ、ピンヒータ接触領域の設定延伸倍率1.05〜1.80倍の条件下で、ピンヒータに間歇接触延伸して糸の長さ方向に繊度差を付与した後、他のフィラメント糸と流体複合処理を施すことを特徴とする請求項1〜3に記載の流体複合加工糸の製造方法。
- 流体複合処理の前又は後で、緩和率3〜30%の条件下で熱緩和処理を行う請求項4に記載の流体複合加工糸の製造方法。
- 流体複合処理の前又は後で、加工糸繊度当たりの仮撚加撚張力0.02〜0.18cNの条件下で仮撚捲縮加工を行う請求項4又は5に記載の流体複合加工糸の製造方法。
- 請求項1〜3に記載の流体複合加工糸を含む織編物。
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