JP3262903B2 - ポリエステル嵩高加工糸 - Google Patents

ポリエステル嵩高加工糸

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,嵩高でふくらみ感があ
り,ハリ・コシを兼ね備えたポリエステル嵩高加工糸に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】捲縮とループを有する加工糸として,ポ
リエステル糸に仮撚加工を施して捲縮を付与した糸条と
ポリエステル糸条とを空気交絡させ,ループやたるみを
形成させた嵩高加工糸が特開平2-307924号公報等で提案
されている。この加工糸は, 表面に存在するループやた
るみによって嵩高化されているものの,糸条内部,いわ
ゆる芯部を形成している糸条にはふくらみ感がなく,こ
のため加工糸の状態では嵩高性を有するものの,製編織
して得られる布帛にふくらみ感を付与することができな
かった。
【0003】また,仮撚捲縮を有する糸条を2本用い,
供給速度に差をつけて空気交絡させた糸長差を有する加
工糸も提案されている。この糸条から得られる布帛は,
嵩高でふくらみ感のあるものではあるが,仮撚加工によ
って糸条のヤング率が低下しているため,ハリ・コシの
ないものであった。
【0004】さらに,複合する2本の糸条のうち,一方
の糸条に潜在捲縮能のある糸条を用いた加工糸も種々提
案されている。本出願人も,特願平4-40195号におい
て,ポリエステル高配向未延伸糸を低張力下で,かつ低
仮撚数で仮撚加工した捲縮糸と, 沸水処理後の捲縮率が
50%以上となるポリエステル糸とを空気交絡させた複合
嵩高加工糸を提案した。しかしながら,低張力下で,か
つ低仮撚数で捲縮付与された糸条では,捲縮による嵩高
効果は望めないものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記した従
来の問題を解決し,嵩高でふくらみ感があり,ハリ・コ
シを兼ね備えたポリエステル嵩高加工糸を提供すること
を技術的な課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果,ポリエステル高
配向未延伸糸を一旦熱処理した後,延伸同時仮撚加工を
施した糸条と,沸水処理後の捲縮率が高い潜在捲縮性複
合繊維とを合糸して空気交絡することによって,布帛に
ふくらみ感のある嵩高効果とハリ・コシのある風合を同
時に付与し得ることを知見して本発明に到達した。
【0007】すなわち,本発明は,ポリエステル高配向
未延伸糸を熱処理した後,延伸同時仮撚加工して得られ
た捲縮糸と,仮撚捲縮がなく,熱水収縮率が10%以下
で,沸水30分間処理後の捲縮率が30%以上となるサイド
バイサイド型のポリエステル潜在捲縮性複合繊維とが,
同一糸長乃至捲縮糸の方が長い状態で,かつ交絡数50個
/m以上で交絡していることを特徴とするポリエステル
嵩高加工糸を要旨とするものである。
【0008】以下,本発明について詳細に説明する。
【0009】本発明では,ポリエステル嵩高加工糸を構
成する一方の糸条として,熱水収縮率が10%以下で,か
つ沸水30分間処理後の捲縮率が30%以上となるサイドバ
イサイド型のポリエステル潜在捲縮性複合繊維(以下,
複合繊維という。)を用いる必要がある。熱水収縮率が
10%以上になると,複合繊維を構成する一方の成分の熱
水収縮率をかなり大きくしないと捲縮率を大きくするこ
とができない。また,熱水収縮率が大きい糸条は,染色
により濃染されるので,他の糸条との間でイラツキが生
じやすい。
【0010】上記の複合繊維は,仮撚の撚歪みを受ける
ことなく,高ヤング率を保持したまま染色時の熱処理に
より捲縮が発現して収縮するので,布帛にふくらみ感と
ハリ・コシを付与することができる。複合繊維の沸水処
理後の捲縮率が30%未満の場合,布帛にした後に熱処理
を施しても捲縮発現力が乏しく,布帛に十分なふくらみ
と伸縮性を付与することはできない。
【0011】上記のように,沸水処理後の捲縮率が30%
以上となる複合繊維としては,例えば, 一方の成分が95
モル%以上のエチレンテレフタレートを繰り返し単位と
する実質的にポリエチレンテレフタレート単独のポリエ
ステルであり,他方の成分が,80モル%以上, 95モル%
未満のエチレンテレフタレートを繰り返し単位とし,残
りの5モル%以上, 20モル%以下が他のポリエステル単
位である共重合ポリエステルである繊維がある。
【0012】次に,上記の複合繊維とともに, 本発明の
ポリエステル嵩高加工糸を構成する他方の糸条として
は,ポリエステル高配向未延伸糸を熱処理した後,延伸
同時仮撚加工された捲縮糸を用いる必要がある。ポリエ
ステル高配向未延伸糸としては,複屈折Δnが20×10-3
〜80×10-3の範囲のものが好適に用いられるが,この糸
条は熱処理によって濃染性化するので,前記の複合繊維
と染色性がほぼ同じとなり,本発明のポリエステル嵩高
加工糸を製編織して得られる布帛を染色しても,染着差
によるイラツキを生じることがない。
【0013】さらに, 上記の捲縮糸は,熱処理した後,
延伸同時仮撚加工が施されたものであるから,糸条を構
成する各フイラメントは十分な捲縮を持っており,この
ため,布帛に嵩高性を付与することができる。
【0014】本発明のポリエステル嵩高加工糸は,上述
した複合繊維と捲縮糸とが交絡しているものである。こ
の交絡形態は,複合繊維と捲縮糸が同じ糸長か,若しく
は捲縮糸の方が複合繊維より長い状態で交絡している。
捲縮糸の糸長が長くても,捲縮によって捲縮糸の見掛け
上の糸長が収縮するので,捲縮糸が2%以上の糸長差を
有していることが嵩高性を向上させる点から好ましい。
【0015】また,本発明のポリエステル嵩高加工糸を
構成する2本の糸条は,交絡数が50個/m以上で交絡し
ている必要がある。交絡数が50個/m未満であれば,特
に2糸条間に糸長差がある場合, 布帛の表面に2糸条間
のズレが点在し,品位が低下する。この交絡数は,50個
/m以上,好ましくは50〜 150個/mであれば2糸条間
のズレもなく,また2糸条間のわずかな染色性の差が混
合されて色の深味を増す効果が発揮される。
【0016】次に,本発明のポリエステル嵩高加工糸を
図面により説明する。
【0017】図1は,2本の糸条が同一糸長で交絡した
実施態様を示す模式図であり,図2は,図1の糸条を沸
水中で30分間処理した後の状態を示す概略模式図であ
る。図中,イは複合繊維,ロは捲縮糸を示す。
【0018】次に,本発明のポリエステル嵩高加工糸の
製法例について説明する。
【0019】まず,複屈折Δnが20×10-3〜80×10-3
ポリエステル高配向未延伸糸を,ヒータに非接触状態で
かつ糸条に緊張を与えずに熱処理する。この時の温度は
高いほど糸条が濃染性化するので,後で交絡させる複合
繊維との染色性がほぼ同一となるように選定するのが好
ましい。
【0020】次いで,熱処理後の糸条を延伸同時仮撚加
工する。加工条件は,糸条に十分な捲縮を付与できる範
囲であれば特に限定されるものではないが,例えば,マ
サツ式延伸同時仮撚の場合,延伸倍率を1.3倍から1.7倍
とし,加工張力が0.15〜0.25g/dとなるように仮撚す
るとともに,ヒータ温度を 190〜 220℃の間で捲縮形態
を勘案して設定すればよい。
【0021】上記で得られた捲縮糸を複合繊維と引き揃
えるか,あるいは複合繊維より捲縮糸のオーバーフィー
ド率を2%以上大きくして交絡処理域に供給し,空気交
絡装置,例えばインターレースノズルによって50個/m
以上の交絡を付与して本発明のポリエステル嵩高加工糸
を得る。
【0022】図3は,上記した製法例の概略工程図であ
る。図3において,ポリエステル高配向未延伸糸1はガ
イド2を通ってフィードローラ3と第1デリベリローラ
5との間のヒータ4によって熱処理され,第1デリベリ
ローラ5と第2デリベリローラ8の間でヒータ6及び仮
撚施撚体7とで延伸同時仮撚加工が施されて捲縮糸とな
る。
【0023】一方,複合繊維イは,第2フィードローラ
10によって交絡処理域に供給され,捲縮糸と共に空気交
絡装置11によって交絡が付与された後,第3デリベリロ
ーラ12により引き出され,巻取ローラ13によってパッケ
ージ14に巻き取られる。
【0024】なお,本発明における熱水収縮率は,次の
方法で測定されるものである。まず,糸条を0.1g/d
の張力下で10回綛に巻いて輪になった試料を得て,この
試料に1g/dの荷重をつけて輪の長さ(L)を測定し
た後,荷重を外して沸水中で30分間熱処理し,風乾 (24
時間以上) する。次いで, 再度1g/dの荷重下に輪の
長さ(M)を測定し,次式により算出する。 熱水収縮率(%)=(L−M)÷L×100
【0025】また,沸水処理後の捲縮率は,次の方法で
測定されるものである。まず,0.1g/dの張力下で10
回綛に巻いて得た輪になった糸条を1/6000g/dの荷重
下で30分間放置後,この状態を維持したまま沸水中に入
れ,30分間放置する。その後風乾し,1/500 g/dの荷
重をかけて長さ(a)を測定する。次に荷重を外し,1/
20g/dの荷重をかけてその長さ(b)を測定し,次式
により算出する。 捲縮率(%)=(b−a)÷b×100
【0026】次に,交絡数は,1mの糸条を5%伸長さ
せた後10%戻して(105cm→95cm) 捲縮を発現させた状態
で,中央部の20cm間の交絡部を目視で数えて1m当たり
に換算した値である。
【0027】
【実施例】次に,本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお,実施例における極限粘度〔η〕は,フエノー
ルと四塩化エタンとの等重量混合溶媒を用い,20℃で測
定した。
【0028】実施例1,比較例1〜3 イソフタル酸8モル%と,2,2−ビス〔4−(2−ヒ
ドロキシエトキシ)フエニル〕プロパン5モル%とを共
重合した極限粘度〔η〕0.50のポリエチレンテレフタレ
ートを第1成分,極限粘度〔η〕0.68のポリエチレンテ
レフタレートを第2成分として,複合紡糸,延伸して得
たサイドバイサイド型の複合繊維50d/12fと,極限粘
度〔η〕0.63のポリエチレンテレフタレートを紡糸して
得た複屈折Δnが52.9×10-3の高配向未延伸糸 (80d/
48f) とを用いて図3に示す工程に従い,表1に示す条
件で加工してポリエステル嵩高加工糸を得た。なお,上
記の複合繊維50d/12fの熱水収縮率は4.76%,沸水処
理後の捲縮率は69.0%であった。
【0029】また, 比較のため,50d/12fの複合繊維
に代えて,通常のポリエチレンテレフタレート延伸糸50
d/12f(比較例1)と,この糸条に仮撚数3800T/
M,ヒータ温度 220℃で仮撚加工した捲縮糸(比較例
2)を供給した。さらに,実施例1の捲縮糸に代えて80
d/48fのポリエステル高配向未延伸糸を熱処理するこ
となく延伸同時仮撚加工した捲縮糸を供給した(比較例
3)。
【0030】上記で得られたそれぞれの加工糸を経糸及
び緯糸に使用し,普通織機(津田駒製,L型機)を用い
て,経糸密度 125本/2.54cm(比較例3は 115本/2.54
cm),緯糸密度90本/2.54cm(比較例3は82本/2.54c
m)で,2/2ツイル組織に製織した。
【0031】次いで,得られた織物を通常のポリエステ
ル染色処法に従って,スミカロンNavy Blue S−2GL
2%owf で染色し,製品に仕上げた。
【0032】
【表1】
【0033】表1から明らかなように,実施例1で得ら
れた加工糸からの織物は,ふくらみとハリ・コシに優
れ,特に嵩高性のあるものであった。一方,比較例1の
織物はふくらみ感が感じられず,また,比較例2の織物
は,ふくらみ感,ハリ・コシともにないものであった。
比較例3の織物は,特に嵩高性に乏しく,布帛に厚みの
欠けるものであった。
【0034】
【発明の効果】本発明のポリエステル嵩高性加工糸は,
この加工糸を構成する一方の糸条として染色工程等の熱
処理によって捲縮が発現する複合繊維を用いているの
で,布帛にふくらみ感とハリ・コシを付与することがで
きる。また,この加工糸を構成する他方の糸条は,一旦
熱処理した後,延伸同時仮撚加工が施された捲縮糸であ
るから,十分な捲縮を有し, 嵩高性に寄与するばかりで
なく,熱処理により濃染性化しているため,複合繊維と
の染色性の差が小さくなることと相まって, この加工糸
を製編織すれば,ふくらみ感とハリ・コシがあり,かつ
イラツキのない製品を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル嵩高加工糸の一実施態様
を示す概略模式図である。
【図2】図1の糸条を沸水中で30分間処理した後の状態
を示す概略模式図である。
【図3】本発明のポリエステル嵩高加工糸の製法例を示
す概略工程図である。
【符号の説明】
イ 複合繊維 ロ 捲縮糸 1 ポリエステル高配向未延伸糸 4,6 ヒータ 7 仮撚施撚体 11 空気交絡装置 14 パッケージ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D02J 1/22 D02J 1/22 R D03D 15/00 D03D 15/00 A // D01F 6/62 302 D01F 6/62 302Z (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 1/00 - 3/48 D01F 6/62,8/14 D02J 1/00 - 1/22 D03D 15/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステル高配向未延伸糸を熱処理し
    た後,延伸同時仮撚加工して得られた捲縮糸と,仮撚捲
    縮がなく,熱水収縮率が10%以下で,沸水30分間処理後
    の捲縮率が30%以上となるサイドバイサイド型のポリエ
    ステル潜在捲縮性複合繊維とが,同一糸長乃至捲縮糸の
    方が長い状態で,かつ交絡数50個/m以上で交絡してい
    ることを特徴とするポリエステル嵩高加工糸。
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