JP7199803B2 - ポリエステル複合仮撚糸 - Google Patents

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Description

本発明は、織編物にすると、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与できる複合仮撚糸に関する。また、本発明は、当該複合仮撚糸の製造方法に関する。
従来、ストレッチ素材として、潜在捲縮性能を有するポリエステル糸と、他のポリエステル糸とを複合仮撚加工して得られる複合仮撚糸が知られている。
例えば、特許文献1には、布帛に高いストレッチ性と膨らみ感を与えることができる複合仮撚糸の製造方法として、サイドバイサイド型のポリエステルコンジュゲート未延伸糸と、ポリエステル未延伸糸とを引き揃え、両糸とも延伸倍率1.2倍以上の同じ延伸倍率で仮撚加工するポリエステル複合仮撚糸の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、該延伸糸と該コンジュゲート糸との伸度差があることから糸足差(糸長差)が生じ、得られる複合仮撚糸は該コンジュゲート糸が芯糸となる芯鞘構造を有し、布帛に膨らみ感を与える。そして、芯糸が捲縮発現性に優れるサイドバイサイド型のコンジュゲート糸であることから、仮撚加工における延伸熱処理により芯糸と鞘糸との拘束力に打ち勝つ捲縮が発現し、布帛に優れたストレッチ性を与えるとされている。
また、特許文献2には、ハリ、コシ、反発感があり、フラットな外観であり、ソフト且つドライな触感を有するストレッチ布帛が得られる複合仮撚糸の製造方法として、潜在捲縮性能を有するポリエステル糸と、他のポリエステル糸とを引き揃え、交絡せしめた後、複合仮撚加工を施す複合仮撚糸の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、芯糸となる潜在捲縮性能を有するポリエステル糸と鞘糸となる他のポリエステル糸とが分離しにくく、毛羽やタルミが低減され、特に追撚を施す場合、撚糸機のトラベラーにより糸がしごかれ、ネップが発生したり、織編物を形成したとき白スジが発生したりすることが低減されるとされている。
更に、特許文献3には、ストレッチ性と軽量、嵩高感を併せ持つ複合仮撚糸の製造方法として、潜在捲縮性能を有する低伸度であるポリエステル糸と高伸度である他のポリエステル糸とを引き揃え、温度110℃以下かつ延伸倍率1.2倍以下の同じ延伸倍率条件で複合仮撚加工を行った後、更にヒーター温度140℃以上で熱処理を行い、実質的に糸長差のない複合仮撚糸とするポリエステル複合仮撚糸の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、温度110℃以下かつ延伸倍率1.2倍以下の条件で複合仮撚加工を行ったとき、潜在捲縮性能を有するポリエステル糸と他のポリエステル糸との間に糸長差が発生するが、2次ヒーターで熱処理することにより鞘糸である他のポリエステル糸が収縮し実質的に糸長差がなくなる。そして、他のポリエステル糸に自己伸長性が付与され、染色工程における熱処理にて再び糸長差が発現し、伸縮伸長性が高まるとされている。
しかしながら、特許文献1~3が開示する手法で得られる複合仮撚糸は、ストレッチ性の付与の点で欠点がある。そこで、特許文献4では、優れたストレッチ性を付与できる複合仮撚糸として、潜在捲縮性能を有するポリエステル糸及び他のポリエステル糸からなるポリエステル複合仮撚糸であって、前記潜在捲縮性能を有するポリエステル糸に対する前記他のポリエステル糸の糸長差が0~5%であり、前記潜在捲縮性能を有するポリエステル糸の捲縮率が40%以上であり、前記他のポリエステル糸に対する前記潜在捲縮性能を有するポリエステル糸の捲縮率の差が10%以上である複合仮撚糸が提案されている。
特許文献4が開示する複合仮撚糸は、ストレッチ性に優れ、更にソフトな嵩高性も付与できるので、レディース衣料等に特に好適な素材である。但し、特許文献4が開示する複合仮撚糸をオフィスや工場用のユニフォーム衣料に使用すると、ストレッチ性が強く感じられ、更にハリコシ感及びソフト感の点でも十分に満足できるものではない。更に、特許文献4が開示する複合仮撚糸は、染色後にギラツキが生じることがあり、染色性の点で改善の余地がある。
特開平2-175935号公報 特開2003-268639号公報 特開2005-299000号公報 特開2015-117448号公報
本発明の目的は、織編物にすると、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与できる複合仮撚糸を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、単糸繊度1.5~3.5dtex、及び総繊度120~170dtexであり、所定条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる潜在捲縮性能を有するポリエステル糸Aと、単糸繊度1.5~5.0dtex及び総繊度150~240dtexであるポリエステル糸Bとから構成され、当該ポリエステル糸Aと当該ポリエステル糸Bとの、所定条件で測定される沸水処理後の捲縮率の差が30~90%になる複合仮撚糸は、織編物にして当該ポリエステル糸Aを捲縮させると、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与でき、オフィスや工場用のユニフォーム衣料の素材として好適であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ポリエステル糸A及びポリエステル糸Bを含む複合仮撚糸であって、
前記ポリエステル糸Aが、単糸繊度1.5~3.5dtex、及び総繊度120~170dtexであり、下記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる潜在捲縮性を有し、
前記ポリエステル糸Bが、単糸繊度1.5~5.0dtex、且つ総繊度150~240dtexであり、
前記ポリエステル糸Aと前記ポリエステル糸Bとの、下記条件で測定される沸水処理後の捲縮率の差が、30~90%になる、複合仮撚糸。
<沸水処理後の捲縮率>
測定対象となる糸を枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回のカセとし、カセをスタンドに吊り下げた状態で一昼夜放置する。次に、カセを0.000147cN/dtexの荷重(荷重1)を掛けた状態で沸水中に入れて30分間の湿熱処理を行った後、ろ紙にて水分を軽く取って30分風乾放置する。次いで、荷重1を掛けたまま、更に0.00177cN/dtexの軽荷重(荷重2)を掛け、カセの長さa(cm)を測定する。次に荷重2のみを外して0.044cN/dtexの重荷重(荷重3)を掛け、カセの長さb(cm)を測定する。そして、下記式に従い、捲縮率(%)を算出する。
沸水処理後の捲縮率(%)=[(b-a)/b]×100
項2. 前記ポリエステル糸Aを構成する単繊維が、熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂を構成樹脂として含む複合繊維である、項1に記載の複合仮撚糸。
項3. 前記2種のポリエステル樹脂の極限粘度の差が0.3~0.8dL/gである、項2に記載の複合仮撚糸。
項4. 前記2種のポリエステル樹脂が、繰り返し単位が実質的に全てエチレンテレフタレートからなるホモポリエチレンテレフタレートと繰り返し単位が実質的に全てブチレンテレフタレートからなるホモポリエチレンテレフタレートである、項2又は3に記載の複合仮撚糸。
項5. 複合仮撚糸の、前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が、35~50%になる、項1に記載の複合仮撚糸。
項6. 交絡数が90~200個/mである、項1~5のいずれかに記載の複合仮撚糸。
項7. 項1~6のいずれかに記載の複合仮撚糸を製造する方法であって、
総繊度が150~260dtex、及び伸度が130~160%であり、潜在捲縮性能を有するポリエステル高配向糸Aと、総繊度が200~370dtex及び伸度が130~160%のポリエステル高配向糸Bを引き揃えて、下記(i)及び(ii)の条件を満たすように延伸同時仮撚加工を行う第1工程;
(i)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)が、前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる。
(ii)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)とポリエステル高配向糸B(ポリエステル糸B)との前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が30~90%になる。
並びに、前記第1工程で得られた複合仮撚糸を交絡処理する第2工程
を含む、製造方法。
項8. 前記第1工程において、仮撚ヒーター温度180~300℃、延伸倍率1.3~1.6倍、ヒーター数が1の条件で延伸同時仮撚加工が行われる、
項7に記載の製造方法。
項9. 項1~6の何れかに記載の複合仮撚糸が製織編されてなり、且つ当該複合仮撚糸に含まれる前記ポリエステル糸Aが捲縮されている、織編物。
本発明の複合仮撚糸によれば、織編物に製織した後にポリエステル糸Aを捲縮させると、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与でき、オフィスや工場用のユニフォーム衣料の素材として好適である。
本発明の複合仮撚糸の製造方法の概略工程図の一例である。
本発明の複合仮撚糸は、ポリエステル糸A及びポリエステル糸Bを含む複合仮撚糸であって、(i)当該ポリエステル糸Aが、単糸繊度1.5~3.5dtex、及び総繊度120~170dtexであり、所定条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる潜在捲縮性を有し、(ii)当該ポリエステル糸Bが、単糸繊度1.5~5.0dtex、且つ総繊度150~240dtexであり、且つ(iii)当該ポリエステル糸Aと当該ポリエステル糸Bとの、所定条件で測定される沸水処理後の捲縮率の差が、30~90%になる、ことを特徴とする。以下、本発明の複合仮撚糸について詳述する。
[ポリエステル糸A]
ポリエステル糸Aの単糸繊度は、1.5~3.5dtexである。ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより好適に付与するという観点から、ポリエステル糸Aの単糸繊度として、好ましくは1.8~3.2dtexが挙げられる。
また、ポリエステル糸Aの総繊度は、120~170dtexである。ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより好適に付与するという観点から、ポリエステル糸Aの総繊度として、好ましくは130~160dtexが挙げられる。
ポリエステル糸Aを構成する単繊維の単糸本数については、前記単糸繊度と総繊度を充足するように適宜設定すればよいが、例えば、30~80本、好ましくは40~70本が挙げられる。
本発明の複合仮撚糸を構成するポリエステル糸Aは、所定の潜在捲縮性を有する。本発明において、「潜在捲縮性」とは、加熱や膨潤等によって収縮させることによってコイル状の立体捲縮を発現する性能である。
ポリエステル糸Aが有する潜在捲縮性は、具体的には、下記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる特性である。このような潜在捲縮性を有することによって、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与することが可能になる。ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより好適に付与するという観点から、ポリエステル糸Aの下記条件で測定される沸水処理後の捲縮率として、好ましくは55~90%、更に好ましくは60~80%、特に好ましくは60~70%が挙げられる。
<沸水処理後の捲縮率の測定条件>
複合仮撚糸からポリエステル糸Aを抜き取る。抜き取ったポリエステル糸Aを枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回のカセとし、カセをスタンドに吊り下げた状態で一昼夜放置する。次に、カセを0.000147cN/dtexの荷重(荷重1)を掛けた状態で沸水中に入れて30分間の湿熱処理を行った後、ろ紙にて水分を軽く取って30分風乾放置する。次いで、荷重1を掛けたまま、更に0.00177cN/dtexの軽荷重(荷重2)を掛け、カセの長さa(cm)を測定する。次に荷重2のみを外して0.044cN/dtexの重荷重(荷重3)を掛け、カセの長さb(cm)を測定する。そして、下記式に従い、沸水処理後の捲縮率(%)を算出する。なお沸水処理後の、捲縮率の測定は、ポリエステル糸Aの3本について行い、それぞれの平均をポリエステル糸Aの沸水処理後の捲縮率とする。ここで、沸水とは、沸騰している状態であって実質的に98℃程度の水である。
沸水処理後の捲縮率(%)=[(b-a)/b]×100
ポリエステル糸Aにおいて前記潜在捲縮性を具備させるには、ポリエステル糸Aを構成する単繊維を、熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂を構成樹脂とした偏心芯鞘型又はサイドバイサイド型とした複合繊維にすればよい。
熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂の組合せとしては、特に制限されないが、例えば、極限粘度の異なるポリエチレンテレフタレート(繰り返し単位が実質的に全てエチレンテレフタレートからなるホモポリエチレンテレフタレート(以下、ホモPETと称することがある。))同士の組合せ、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ビスフェノールA又は2,2-ビス{4-(β-ヒドロキシ)フェニル}プロパンを共重合したポリエチレンテレフタレートとホモPETの組合せ、ホモPETとポリブチレンテレフタレート(繰り返し単位が実質的に全てブチレンテレフタレートからなるホモポリエチレンテレフタレート(以下、ホモPBTと称することがある。))との組合せ等が挙げられる。中でも、ホモPETとホモPBTとの組合せは、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与する上で、好適である。
ポリエステル糸Aの構成樹脂となる熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂の極限粘度の差としては、前記潜在捲縮性を具備させるという観点から、例えば、0.3~0.8dL/g、好ましくは0.4~0.7dL/gが挙げられる。
また、ポリエステル糸Aの構成樹脂となる熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂として、具体的には、一方のポリエステル樹脂の極限粘度が0.7~1.3dL/g、好ましくは0.8~1.2dL/gであり、且つ他方のポリエステル樹脂の極限粘度が0.2~0.7dL/g、好ましくは0.3~0.6dL/gが挙げられる。
本発明において、極限粘度は、毛細管粘度計を用いて、フェノールと四塩化エタンの等量混合物を溶媒とし、温度20℃で測定することにより求められる値である。
ポリエステル糸Aの構成樹脂となる熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂の比率については、付与すべき潜在捲縮性の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、極限粘度が高いポリエステル樹脂/極限粘度が低いポリエステル樹脂の重量比として、30/70~70/30、好ましくは35/65~65/35が挙げられる。
[ポリエステル糸B]
ポリエステル糸Bとしては、潜在捲縮性を有していない、又は潜在捲縮性がポリエステル糸Aよりも著しく低いポリエステル糸が使用される。
ポリエステル糸Bを構成するポリエステル樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;カチオン染色可染性ポリエステル、ポリ乳酸等が挙げられる。
ポリエステル糸Bの単糸繊度は、1.5~5.0dtexである。ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより好適に付与するという観点から、ポリエステル糸Bの単糸繊度として、好ましくは2.0~3.5dtexが挙げられる。
また、ポリエステル糸Bの総繊度は、150~240dtexである。ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより好適に付与するという観点から、ポリエステル糸Bの総繊度として、好ましくは160~210dtexが挙げられる。
ポリエステル糸Bを構成する単繊維の単糸本数については、前記単糸繊度と総繊度を充足するように適宜設定すればよいが、例えば、30~120本、好ましくは40~100本が挙げられる。
ポリエステル糸Bの沸水処理後の捲縮率については、後述するポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとの沸水処理後の捲縮率の差を充足することを限度として特に制限されないが、例えば0~25%、好ましくは5~20%、更に好ましくは7~18%が挙げられる。ポリエステル糸Bの沸水処理後の捲縮率は、複合仮撚糸からポリエステル糸Bを抜き取って、前記[ポリエステル糸A]欄に記載の方法に準じて測定される。
[ポリエステル糸Aとポリエステル糸Bの捲縮率の差]
ポリエステル糸Aとポリエステル糸Bの沸水処理後の捲縮率の差は、30~90%である。このように、所定の単糸繊度及び総繊度の潜在捲縮性能を有するポリエステル糸Aと、所定の単糸繊度及び総繊度のポリエステル糸Bとを併用し、且つ両者の沸水処理後の捲縮率の差を前記範囲に設定することによって、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を付与することが可能になる。
ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより一層好適に付与するという観点から、ポリエステル糸Aとポリエステル糸Bの沸水処理後の捲縮率の差として、好ましくは40~70%、さらに好ましくは45~60%が挙げられる。
なお、ポリエステル糸Aは、ポリエステル糸Bに比べて沸水処理後の捲縮率が大きいので、本発明において、ポリエステル糸Aとポリエステル糸Bの捲縮率の差は、ポリエステル糸Aの沸水処理後の捲縮率からポリエステル糸Bの沸水処理後の捲縮率を差し引くことによって求められる値である。
[複合仮撚糸]
本発明の複合仮撚糸は、前記ポリエステル糸A及びポリエステル糸Bを構成糸として含む複合仮撚糸である。
本発明において、「複合仮撚」とは複数の糸に仮撚加工を施して1本の仮撚糸とすることである。即ち、本発明の複合仮撚糸は、少なくとも1本のポリエステル糸Aと少なくとも1本のポリエステル糸Bに仮撚加工を施して複合化した捲縮糸である。本発明の複合仮撚糸として、好ましくは1本のポリエステル糸Aと1本のポリエステル糸Bに仮撚加工を施して複合化した捲縮糸が挙げられる。
本発明の複合仮撚糸自体(交絡処理後の複合仮撚糸自体)の沸水処理後の捲縮率については、前述するポリエステル糸Aとポリエステル糸Bの沸水処理後の捲縮率の差を充足することを限度として特に制限されないが、例えば35~50%、更に好ましくは37~47%が挙げられる。このような沸水処理後の捲縮率を充足することにより、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより一層好適に付与することが可能になる。複合仮撚糸の沸水処理後の捲縮率は、複合仮撚糸を測定対象糸として、前記[ポリエステル糸A]欄に記載の方法に準じて測定される。
本発明の複合仮撚糸は、長手方向長手方向において交絡部と非交絡部とを含み、非交絡部においてポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとが芯鞘構造を呈さないことが好ましい。これにより、織編物とした後の熱処理により、潜在捲縮性能を有するポリエステル糸の潜在捲縮が十分に発現しやすくなる。
本発明の複合仮撚糸において、交絡部の数(交絡数)は特に限定されるものではないが、例えば、90~200個/m、好ましくは100~180個/m、更に好ましくは110~160個/mが挙げられる。このような交絡数を具備することによって、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより一層好適に付与することが可能になる。なお、本発明において、複合仮撚糸の交絡数は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定して得られた値である。
[製造方法]
本発明の複合仮撚糸は、以下の第1工程及び第2工程を経て製造することができる。
第1工程:総繊度が150~260dtex、及び伸度が130~160%であり、潜在捲縮性能を有するポリエステル高配向糸Aと、総繊度が200~370dtex及び伸度が130~160%のポリエステル高配向糸Bを引き揃えて、下記(i)及び(ii)の条件を満たすように延伸同時仮撚加工を行う工程。
(i)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)が、前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる。
(ii)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)とポリエステル高配向糸B(ポリエステル糸B)との前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が30~90%になる。
第2工程:前記第1工程で得られた複合仮撚糸を交絡処理する工程。
前記第1工程で使用されるポリエステル高配向糸Aは、延伸同時仮撚加工後に、本発明の複合仮撚糸を構成するポリエステル糸Aになる。また、前記第1工程で使用されるポリエステル高配向糸Bは、延伸同時仮撚加工後に、本発明の複合仮撚糸を構成するポリエステル糸Bになる。
以下、工程毎に、本発明の複合仮撚糸の製造方法について説明する。
(第1工程)
第1工程では、特定のポリエステル高配向糸A及びポリエステル高配向糸Bを使用して延伸同時仮撚加工を行う。
本発明において、「ポリエステル高配向糸」とは、ポリエステルポリマーを2000~4000m/分程度の速度で紡糸して巻き取られた、未延伸のマルチフィラメント糸である。
ポリエステル高配向糸Aは、延伸同時仮撚加工後にポリエステル糸Aになるので、延伸同時仮撚加工後に前述する沸水処理後の捲縮率を充足できるように、潜在捲縮性を有していることが必要になる。ポリエステル高配向糸Aにおいて、このような潜在捲縮性を具備さえるには、ポリエステル高配向糸Aを構成する単繊維を、熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂を構成樹脂とした偏心芯鞘型又はサイドバイサイド型とした複合繊維で構成すればよく、熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂の例及び比率等は、前述する通りである。
ポリエステル高配向糸Aの総繊度は、150~260dtexであればよいが、好ましくは160~240dtexが挙げられる。このような総繊度を満たすことによって、延伸同時化仮撚加工後に、前述するポリエステル糸Aの総繊度を好適に充足させることが可能になる。
ポリエステル高配向糸Aの単糸繊度は、前述する総繊度と単糸本数に応じて定まるが、例えば、1.5~9dtex、好ましくは2.5~6.5dtex、更に好ましくは2.5~5.0dtexが挙げられる。
ポリエステル高配向糸Aを構成する単繊維の単糸本数については、ポリエステル糸Aの場合と同様である。
ポリエステル高配向糸Aの伸度は130~160%であればよいが、好ましくは135~155%が挙げられる。本発明において、ポリエステル高配向糸Aの伸度は、JIS L1013 8.5.1に基づいて、定速伸長型の引張り試験機を用いて、試料長200mm、引張り速度200mm/minの条件で引張試験を行うことによって求められる値である。後述するポリエステル高配向糸Bの伸度の測定方法も同様である。
ポリエステル高配向糸Bは、ポリエステル糸Bの原糸であるため、潜在捲縮性を有していない、又は潜在捲縮性がポリエステル糸Aよりも著しく低い未延伸のマルチフィラメント糸である。従って、ポリエステル高配向糸Bを構成するポリエステル樹脂の種類等は、ポリエステル糸Bの場合と同様になる。
ポリエステル高配向糸Bの総繊度は、200~370dtexであればよいが、好ましくは210~350dtexが挙げられる。このような総繊度を満たすことによって、延伸同時化仮撚加工後に、前述するポリエステル糸Bの総繊度を好適に充足させることが可能になる。
ポリエステル高配向糸Bの単糸繊度は、前述する総繊度と単糸本数に応じて定まるが、例えば、1.0~15dtex、好ましくは2~10dtexが挙げられる。
ポリエステル高配向糸Bを構成する単繊維の単糸本数については、ポリエステル糸Bの場合と同様である。
ポリエステル高配向糸Bの伸度は130~160%であればよいが、好ましくは135~155%が挙げられる。
ポリエステル高配向糸Aとポリエステル高配向糸Bとの伸度の差(絶対値)として、好ましくは50%以下、更に好ましくは0~40%、特に好ましくは0~30%、最も好ましくは0~10%が挙げられる。このように、両者の伸度の差を小さくすることによって、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性をより一層好適に付与できる複合仮撚糸を得ることが可能になる。
延伸同時仮撚加工は、ポリエステル高配向糸Aとポリエステル高配向糸Bを引き揃えて、下記(i)及び(ii)の条件を満たすように行われる。
(i)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)が、前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる。
(ii)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)とポリエステル高配向糸B(ポリエステル糸B)との前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率の差が30~90%になる。
前記(i)及び(ii)の条件を満たすには、仮撚付与装置の種類に応じて、延伸倍率、温度条件、加撚張力、K値(解撚張力/加撚張力)等を適宜調節すればよい。
前記(i)及び(ii)の条件を満たすための延伸同時仮撚加工の条件の好適な例として、延伸倍率が1.3~1.6倍、ヒーター数が1個、且つヒーター温度が180~300℃;好ましくは延伸倍率が1.35~1.55倍、ヒーター数が1個、且つヒーター温度が200~280℃が挙げられる。
延伸同時仮撚加工で使用される仮撚付与装置については、特に制限されず、例えば、ピン、フリクションディスク、ベルト等が挙げられる。
延伸同時仮撚加工における加撚張力としては、使用する仮撚付与装置の種類に応じて、前記(i)及び(ii)の条件を満たすように適宜設定すればよいが、例えばディスク仮撚の場合、通常0.1~0.3cN/dtexが挙げられる。
延伸同時仮撚加工におけるK値(解撚張力/加撚張力)としては、使用する仮撚付与装置の種類に応じて、前記(i)及び(ii)の条件を満たすように適宜設定すればよいが、例えばディスク仮撚の場合、通常0.5~1.0、好ましくは0.6~0.9が挙げられる。
(第2工程)
第2工程では、前記第1工程で得られた複合仮撚糸を交絡処理する。
第2工程において、交絡処理で使用される交絡処理装置(流体ノズル)としては、特に制限されないが、例えば、インターレースノズル、タスランノズル等が挙げられ、好ましくはインターレースノズルである。
交絡処理におけるエアー圧としては、例えば、0.2~0.7MPa、好ましくは0.3~0.5MPaが挙げられる。
また、交絡処理におけるオーバーフィード率としては、例えば、2~6%、好ましくは3~5%が挙げられる。本発明において、「オーバーフィード率」とは、流体ノズルへ導入される直前の糸速をV1、流体ノズルを通過した直後の糸速をV2として、オーバーフィード率(%)={(V1-V2)/V2}×100なる式で算出される値である。
(製造工程の概要)
次に、本発明の複合仮撚糸の製造工程の概要を図1の模式図を参照しながら説明する。ポリエステル高配向糸AのパッケージYA、及びポリエステル高配向糸BのパッケージYBから、ポリエステル高配向糸A及びポリエステル高配向糸Bを供給ローラ1に供給する。そして、供給ローラ1でポリエステル高配向糸A及びポリエステル高配向糸Bが引き揃えられて、ヒーター1を通過させて加熱し、仮撚具3にて仮撚加工される。次いで、第1引取ローラ4から交絡処理装置5に送られて交絡処理が施され、第2引取ローラ6を通過した後、巻取ローラ7によりパッケージ8に捲き取られる。
[織編物]
本発明の織編物は、本発明の複合仮撚糸が製織編し、当該複合仮撚糸に含まれる前記ポリエステル糸Aを捲縮することにより得られる。本発明の複合仮撚糸を製織編した後に、加熱や膨潤等によってポリエステル糸Aを捲縮(潜在捲縮性能を発現)させることにより、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を有する織編物が得られる。
製織編した後にポリエステル糸Aを捲縮させる条件については、特に制限されず、ポリエステル糸Aが有する潜在捲縮性能に応じて適宜設定すればよく、例えば湯浴中で捲縮を顕在化してもよいし、又は織編物に対して行われる一般的な染色処理、精練処理、熱セット等においても、ポリエステル糸Aが捲縮して、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合い、適度なストレッチ性、及び優れた染色性を具備させることができる。
本発明の織編物における本発明の複合仮撚糸の使用量としては、付与すべきハリコシ感及びソフト感、ストレッチ性、及び染色性に応じて適宜設定すればよいが、例えば、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、95質量%以上、又は100質量%が挙げられる。
本発明の織編物の組織としては特に制限されず、用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、織物であれば、平織、綾織、朱子織、必要に応じて多重組織等であればよく、また、編物であれば、丸編の天竺、スムース、経編のトリコット、必要に応じて多重組織等であればよい。
織編物のカバー(CF)については、特に制限されないが、例えば、織物の場合であれば、CFが2000~2900、好ましくは2200~2700が挙げられる。
ここで、CFは、織物の場合は下記式(I)によって算出され、編物の場合は下記式(II)によって算出される。
Figure 0007199803000001
DT:マルチフィラメントの繊度(dtex)
WAD:経糸密度(本/2.54cm)
WED:緯糸密度(本/2.54cm)
なお、マルチフィラメント糸の繊度は、織物の場合はJIS L 1096:2010 8.9.9.1.aのA法に従い、測定される。経糸密度及び緯糸密度は、JIS L 1096:2010 8.6.1A法に従い、測定される。
本発明の織編物の用途については、特に制限されず、例えば、ユニフォーム(オフィス用や工場用等)、スポーツウェア、インナー、紳士服、婦人服等の衣料が挙げられる。これらの中でも、本発明の複合仮撚糸を使用した本発明の織編物は、ハリコシ感及びソフト感がある良好な風合いと優れた染色性を備えつつ、ユニフォームの素材として特に適したストレッチ性を有しており、ユニフォーム用途に特に好適である。
以下、実施例によって本発明を詳しく説明する。但し、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
1.測定方法・評価方法
以下の実施例及び比較例における測定及び評価は下記の方法に従って行った。
(1)繊度
繊度は、JIS L 1013 8.3.1B法に準じて測定した。単繊維繊度は、総繊度をフィラメント数で除した値を単繊維繊度とした。
(2)伸度
伸度は、JIS L1013 8.5.1に基づいて、定速伸長型の引張り試験機を用いて、試料長200mm、引張り速度200mm/minの条件で引張試験を行うことによって測定した。
(3)沸水処理後の捲縮率
測定対象となる糸を枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回のカセとし、カセをスタンドに吊り下げた状態で一昼夜放置した。次に、カセを0.000147cN/dtexの荷重(荷重1)を掛けた状態で沸水中に入れて30分間の湿熱処理を行った後、ろ紙にて水分を軽く取って30分風乾放置した。次いで、荷重1を掛けたまま、更に0.00177cN/dtexの軽荷重(荷重2)を掛け、カセの長さa(cm)を測定した。次に荷重2のみを外して0.044cN/dtexの重荷重(荷重3)を掛け、カセの長さb(cm)を測定した。そして、下記式に従い、沸水処理後の捲縮率(%)を算出した。なお沸水処理後の捲縮率の測定は、測定対象となる糸の3本について行い、それぞれの平均を沸水処理後の捲縮率とした。
沸水処理後の捲縮率(%)=[(b-a)/b]×100
(4)複合仮撚糸における、ポリエステル糸Aに対するポリエステル糸Bの糸長差
交絡処理前の複合仮撚糸から試料100cmを取り、ポリエステル糸Aとポリエステル糸Bを分離し、それぞれの糸に0.1cN/dtexの荷重を掛けた状態での糸長を測定し、下記式に従って、糸長差(%)算出した。
糸長差(%)={(LB-LA)/LB}×100
A:ポリエステル糸Aの糸長
B:ポリエステル糸Bの糸長
(5)交絡数
複合仮撚糸の交絡数(個/m)は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定した。
(6)L*値
英光産業社製の筒編機(釜径:3.5インチ、針本数:260N)を用い、複合仮撚糸から30cm程度の筒編地を作成した。次いで、以下の条件で精練、染色を行った。その後、精練染色を施した筒編地を用いて、色彩色差計(マクベス社製分光光度計 CE-3100)を用いてL*値を測定した。なお、L値はその値が低い程濃色であることを示す。
(精練条件)
・精練剤:サンモールFL(日華化学製)1g/l
・温度×時間:80℃×20分
(分散染色条件)
・染料:ダイアニックスブルーUN-SE(ダイアニックス社製) 1%o.m.f
・助剤:ニッカサンソルトSN-130(日華化学社製) 0.5g/l
:酢酸 0.2cc/l
・温度×時間:130℃×30分
・浴比:1:30
(7)ストレッチ性
得られた織物に対し、触感により下記の基準でストレッチ性を評価した。
◎:強すぎず弱すぎない適度なストレッチ性に優れる。
○:ストレッチ性がやや強いか、又はやや弱いが、適度なストレッチ性は良好である。
△:ストレッチ性が強いか、又は弱いが、適度なストレッチ性は普通である。
×:ストレッチ性が強すぎるか、又は弱すぎる。
(8)風合い
得られた織物に対し、触感により下記の基準で風合いを評価した。
◎:ハリコシ及びソフト感の何れにも顕著に優れる。
○:ハリコシ及びソフト感の何れも良好である。
△:ハリコシ及びソフト感の何れも普通である。
×:ハリコシ及びソフト感の少なくとも一方が、劣る。
得られた織物に対し、目視にて下記の基準で染色時の品位を評価した。
◎:顕著に優れる。
○:良好である。
△:普通である。
×:シボ感、ネップ、イラツキ、又は筋っぽさが出て、劣る
2.複合仮撚糸及び織物の製造
(実施例1)
潜在捲縮性能を有するポリエステル高配向糸Aとして、極限粘度1.05のホモPBTと極限粘度0.47のホモPBTを複合比率(重量比:ホモPBT/ホモPBT)50/50としてサイドバイサイド型に複合した複合糸条(200dtex48フィラメント、伸度148%)を使用した。また、ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(240dtex72フィラメント、伸度142%)を使用した。
図1に示す製造工程に従い、ポリエステル高配向糸Aとポリエステル高配向糸Bを供給ローラ1に供給し、ヒーター2として全面接触型ヒーター、仮撚具3として9mm厚のウレタン製ディスク(ディスク構成Z1-6-Kとしたフリクションディスク)、交絡処理装置5としてインターレースノズルを使用して、表1に示す条件で延伸複合仮撚加工及び交絡処理を施し(インターレース時のエアー圧は0.37MPa)、複合仮撚糸を得た。得られた複合仮撚糸は、ポリエステルの長手方向において交絡部と非交絡部とを含み、非交絡部においてポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとが芯鞘構造を呈さないものであった。
得られた複合仮撚糸を経糸、緯糸に用いて経糸密度82本/inch、緯糸密度60本/inchで2/2ツイル織物を製織した。
得られた織物を非イオン系界面活性剤(日華化学製サンモールFL)2g/lで80℃×20分で精練し、100℃×20分でリラックス処理をした。次いて、下記染色条件で、染色処理し、170℃で仕上げセットし、織物を得た。
(染色条件)
・染料:ダイアニックスブルーUN-SE(ダイアニックス社製) 1%o.m.f
・助剤:ニッカサンソルトSN-130(日華化学社製) 0.5g/l
:酢酸 0.2cc/l
・温度×時間:130℃×30分
・浴比:1:30
(実施例2)
ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(216dtex96フィラメント、伸度142%)を使用したこと以外は、実施例1と同条件で複合仮撚糸を製造し、織物を得た。得られた複合仮撚糸は、ポリエステルの長手方向において交絡部と非交絡部とを含み、非交絡部においてポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとが芯鞘構造を呈さないものであった。
(実施例3)
ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(329dtex48フィラメント、伸度142%)を使用したこと以外は、実施例1と同条件で複合仮撚糸を製造し、織物を得た。得られた複合仮撚糸は、ポリエステルの長手方向において交絡部と非交絡部とを含み、非交絡部においてポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとが芯鞘構造を呈さないものであった。
(実施例4)
ポリエステル高配向糸Aとして、極限粘度1.05のホモPBTと極限粘度0.47のホモPBTを複合比率(重量比:ホモPBT/ホモPBT)50/50としてサイドバイサイド型に複合した複合糸条(172dtex62フィラメント、伸度108%)を使用し、且つポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(240dtex72フィラメント、伸度142%)を使用したこと以外は、実施例1と同条件で複合仮撚糸を製造し、織物を得た。得られた複合仮撚糸は、ポリエステルの長手方向において交絡部と非交絡部とを含み、非交絡部においてポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとが芯鞘構造を呈さないものであった。
(比較例1)
潜在捲縮性能を有するポリエステル高配向糸Aとして、極限粘度1.05のホモPBTと極限粘度0.47のホモPBTを複合比率(重量比:ホモPBT/ホモPBT)50/50としてサイドバイサイド型に複合した複合糸条(84dtex24フィラメント、伸度108%)を使用した。また、ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(90dtex156フィラメント、伸度96%)を使用した。
次いで、表1に示す条件で、ピン仮撚を施して、複合仮撚糸を得た。
得られた複合仮撚糸を前記実施例1と同条件で製織し、織物を得た。
(比較例2)
潜在捲縮性能を有するポリエステル高配向糸Aとして、極限粘度1.05のホモPBTと極限粘度0.47のホモPBTを複合比率(重量比:ホモPBT/ホモPBT)50/50としてサイドバイサイド型に複合した複合糸条(84dtex24フィラメント、伸度108%)を使用した。また、ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(90dtex48フィラメント、伸度117%)を使用した。
次いで、表1に示す条件でディスク仮撚を施して、複合仮撚糸を得た。
得られた複合仮撚糸を前記実施例1と同条件で製織し、織物を得た。
(比較例3)
ポリエステル高配向糸Aとして、極限粘度1.05のホモPBTと極限粘度0.47のホモPBTを複合比率(重量比:ホモPBT/ホモPBT)50/50としてサイドバイサイド型に複合した複合糸条(287dtex48フィラメント、伸度148%)を使用した。また、ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(329dtex48フィラメント、伸度142%)を使用したこと以外は、前記実施例1と同条件で複合仮撚糸を製造した。
得られた複合仮撚糸を前記実施例1と同条件で製織し、織物を得た。
(比較例4)
ポリエステル高配向糸Aに代えて、ホモPET糸条(200dtex48フィラメント、伸度148%)を使用した。また、ポリエステル高配向糸Bとして、ホモPET糸条(240dtex72フィラメント、伸度142%)を使用したこと以外は、前記実施例1と同条件で複合仮撚糸を製造した。
得られた複合仮撚糸を前記実施例1と同条件で製織し、織物を得た。
Figure 0007199803000002
3.評価結果複合仮撚糸及び織物の製造
各複合仮撚糸及び織物の評価結果を表2に示す。実施例1~4で得られた編物は、適度なストレッチ性があり、風合いもハリコシ・ソフト感があり、染色時の品位も実用に耐えうるものであった。特に、実施例1で得られた編物では、適度なストレッチ性、ハリコシ・ソフト感、及び染色時の品位の点で格段に優れていた。これに対して、比較例1~4で得られた編物は、適度なストレッチ性、ハリコシ・ソフト感、及び染色時の品位を全て満足させることはできなかった。
以上の結果から、単糸繊度1.5~3.5dtex、総繊度120~170dtex、及び沸水処理後の捲縮率55%以上の潜在捲縮性能を有するポリエステル糸と、単糸繊度1.5~5.0dtex、及び総繊度150~240dtexである前記ポリエステル糸Bとを使用し、当該ポリエステル糸Aとポリエステル糸Bとの沸水処理後の捲縮率の差が30~90%を満たす複合仮撚糸は、適度なストレッチ性、ハリコシ・ソフト感、及び染色時の品位を付与できることが明らかとなった。
Figure 0007199803000003
1 供給ローラ
2 ヒーター
3 仮撚具
4 第1引取ローラ
5 交絡処理装置
6 第2引取ローラ
7 巻取ローラ
8 複合仮撚糸のパッケージ
YA 潜在捲縮性能を有するポリエステル糸Aのパッケージ
YB 他のポリエステル糸Bのパッケージ

Claims (9)

  1. ポリエステル糸A及びポリエステル糸Bを含む複合仮撚糸であって、
    前記ポリエステル糸Aが、単糸繊度1.5~3.5dtex、及び総繊度120~170dtexであり、下記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる潜在捲縮性を有し、
    前記ポリエステル糸Bが、単糸繊度1.5~5.0dtex、且つ総繊度150~240dtexであり、
    前記ポリエステル糸Aと前記ポリエステル糸Bとの、下記条件で測定される沸水処理後の捲縮率の差が、45~60%になる、複合仮撚糸。
    <沸水処理後の捲縮率>
    測定対象となる糸を枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回のカセとし、カセをスタンドに吊り下げた状態で一昼夜放置する。次に、カセを0.000147cN/dtexの荷重(荷重1)を掛けた状態で沸水中に入れて30分間の湿熱処理を行った後、ろ紙にて水分を軽く取って30分風乾放置する。次いで、荷重1を掛けたまま、更に0.00177cN/dtexの軽荷重(荷重2)を掛け、カセの長さa(cm)を測定する。次に荷重2のみを外して0.044cN/dtexの重荷重(荷重3)を掛け、カセの長さb(cm)を測定する。そして、下記式に従い、捲縮率(%)を算出する。
    沸水処理後の捲縮率(%)=[(b-a)/b]×100
  2. 前記ポリエステル糸Aを構成する単繊維が、熱収縮性の異なる2種のポリエステル樹脂を構成樹脂として含む複合繊維である、請求項1に記載の複合仮撚糸。
  3. 前記2種のポリエステル樹脂の極限粘度の差が0.3~0.8dL/gである、請求項2に記載の複合仮撚糸。
  4. 前記2種のポリエステル樹脂が、繰り返し単位が実質的に全てエチレンテレフタレートからなるホモポリエチレンテレフタレートと繰り返し単位が実質的に全てブチレンテレフタレートからなるホモポリエチレンテレフタレートである、請求項2又は3に記載の複合仮撚糸。
  5. 複合仮撚糸の、前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が、35~50%になる、請求項1に記載の複合仮撚糸。
  6. 交絡数が90~200個/mである、請求項1~5のいずれかに記載の複合仮撚糸。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の複合仮撚糸を製造する方法であって、
    総繊度が150~260dtex、及び伸度が130~160%であり、潜在捲縮性能を有するポリエステル高配向糸Aと、総繊度が200~370dtex及び伸度が130~160%のポリエステル高配向糸Bを引き揃えて、下記(i)及び(ii)の条件を満たすように延伸同時仮撚加工を行う第1工程;
    (i)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)が、前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率が55%以上になる。
    (ii)延伸同時仮撚加工後のポリエステル高配向糸A(ポリエステル糸A)とポリエステル高配向糸B(ポリエステル糸B)との前記条件で測定される沸水処理後の捲縮率の差45~60%になる。
    並びに、前記第1工程で得られた複合仮撚糸を交絡処理する第2工程
    を含む、製造方法。
  8. 前記第1工程において、仮撚ヒーター温度180~300℃、延伸倍率1.3~1.6倍、ヒーター数が1の条件で延伸同時仮撚加工が行われる、
    請求項7に記載の製造方法。
  9. 請求項1~6の何れかに記載の複合仮撚糸が製織編されてなり、且つ当該複合仮撚糸に含まれる前記ポリエステル糸Aが捲縮されている、織編物。

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