以下、本発明の交流回転機の制御装置および電動パワーステアリングの制御装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における交流回転機として用いられる3相交流発電機の構成を説明するための図である。図1に示した交流回転機1aは、図2のように、中性点N1で接続された第1の3相巻線U1、V1、W1、および中性点N2で接続された第2の3相巻線U2、V2、W2が、電気的に接続されることなく回転機の固定子に納められている3相交流回転機である。
なお、U1巻線とU2巻線、V1巻線とV2巻線、W1巻線とW2巻線のそれぞれには、30度の位相差がある。図2では、交流回転機1aとして、第1の3相巻線と第2の3相巻線がともにY結線の場合を例示しているが、本発明は、Δ結線の場合にも適用可能である。
直流電源2aは、第1の電圧印加器3aに直流電圧Vdc1を出力し、直流電源2bは、第2の電圧印加器3bに直流電圧Vdc2を出力する。これらの直流電源2a、2bとしては、バッテリー、DC−DCコンバータ、ダイオード整流器、PWM整流器等、直流電圧を出力する全ての機器が含まれる。また、直流電源2a、2bのいずれか1つを用いて、第1の電圧印加器3aおよび第2の電圧印加器3bに直流電圧を出力する構成も、本発明の範囲に含まれる。
第1の電圧印加器3aは、逆変換回路(インバータ)を用いて、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’をPWM変調し、半導体スイッチSup1、Sun1、Svp1、Svn1、Swp1、Swn1(以下の説明では、これら6つの半導体スイッチを、半導体スイッチSup1〜Swn1と表現する)をオンオフする。これにより、第1の電圧印加器3aは、直流電源2aから入力した直流電圧Vdc1を交流に電力変換して、交流回転機1aの第1の3相巻線U1、V1、W1に、交流電圧を印加する。
ここで、半導体スイッチSup1〜Swn1としては、IGBT、バイポーラトランジスタ、MOSパワートランジスタ等の半導体スイッチと、ダイオードを逆並列に接続したものを用いる。
第2の電圧印加器3bは、逆変換回路(インバータ)を用いて、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’をPWM変調し、半導体スイッチSup2、Sun2、Svp2、Svn2、Swp2、Swn2(以下の説明では、これら6つの半導体スイッチを、半導体スイッチSup2〜Swn2と表現する)をオンオフする。これにより、第2の電圧印加器3bは、直流電源2bから入力した直流電圧Vdc2を交流に電力変換して、交流回転機1aの第2の3相巻線U2、V2、W2に、交流電圧を印加する。
ここで、半導体スイッチSup2〜Swn2としては、IGBT、バイポーラトランジスタ、MOSパワートランジスタ等の半導体スイッチと、ダイオードを逆並列に接続したものを用いる。
第1の電流検出器4aは、シャント抵抗や計器用変流器(CT)等の電流センサを用いて、第1の電力変換器3aの第1の直流母線を流れる電流Idc1を検出する。図3は、本発明の実施の形態1における半導体スイッチSup1〜Swn1のオンオフ状態に応じた第1の電圧ベクトルV0(1)〜V7(1)とIdc1との関係を示した図である。なお、図3に示したSup1〜Swn1は、「1」がスイッチオン、「0」がスイッチオフの状態をそれぞれ示すものとする。
第1の電流検出器4aは、図3に示した関係に基づいて、第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出する。なお、第1の電流検出器4aは、Idc1より、第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1のうち2相分を検出し、残りの1相は、三相電流の和が零になることを利用して、演算によって求めてもよい。
第2の電流検出器4bは、シャント抵抗や計器用変流器(CT)等の電流センサを用いて、第2の電力変換器3bの第2の直流母線を流れる電流Idc2を検出する。図4は、本発明の実施の形態1における半導体スイッチSup2〜Swn2のオンオフ状態に応じた第2の電圧ベクトルV0(2)〜V7(2)とIdc2に等しい電流との関係を示した図である。なお、図4に示したSup2〜Swn2は、「1」がスイッチオン、「0」がスイッチオフの状態をそれぞれ示すものとする。
第2の電流検出器4bは、図4に示した関係に基づいて、第2の3相電流Iu2、Iv2、Iw2を検出する。なお、第2の電流検出器4bは、、Idc2より、第2の3相電流Iu2、Iv2、Iw2のうち2相分を検出し、残りの1相は、三相電流の和が零になることを利用して、演算によって求めてもよい。
また、図3に示した第1の電圧ベクトルにおけるかっこ内の数字(1)、および図4に示した第2の電圧ベクトルにおけるかっこ内の数字(2)は、第1の電圧ベクトルと第2の電圧ベクトルを判別するためのものであり、第1の電圧指令に基づく第1の電圧ベクトルには、(1)が付され、第2の電圧指令に基づく第2の電圧ベクトルには、(2)が付されている。
第1の検出可否判定器12aは、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1の3相電流が検出可能であるか否かを判定し、第1の検出可否判定信号flag_1を出力する。
続いて、制御部5aについて説明する。座標変換器6aは、第1の電流検出器4aより検出された第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1を、交流回転機1aの回転位置θに基づいて回転座標上の電流に変換し、回転二軸上における第1巻線の電流Id1、Iq1を演算する。
座標変換器6bは、第2の電流検出器4bで検出された第2の3相電流Iu2、Iv2、Iw2を、交流回転機1aの回転位置θから30度減算した位置θ−30に基づいて回転座標上の電流に変換し、回転二軸上における第2巻線の電流Id2、Iq2を演算する。
推定和電流演算器14は、第1の検出可否判定信号flag_1と、第1巻線の電流Id1、Iq1、第2巻線の電流Id2、Iq2から、推定和電流Idsum_cal、Iqsum_calを演算する。
切替器7aは、第1の検出可否判定信号flag_1に基づいて、第1の3相電流が検出可能と判定された場合には、第1巻線の電流Id1、Iq1を、それぞれ回転二軸座標上の電流Id1’、Iq1’として出力する。
また、切替器7aは、第1の検出可否判定信号flag_1に基づいて、第1の3相電流が検出不可能と判定された場合には、第2巻線の電流Id2、Iq2と推定和電流Idsum_cal、Iqsum_calから、それぞれ回転二軸座標上の電流Id1’、Iq1’を、下式(1)、(2)で算出して出力する。
Id1’=Idsum_cal−Id2 (1)
Iq1’=Iqsum_cal−Iq2 (2)
また、切替器7aは、第2巻線の電流Id2、Iq2をそれぞれ回転二軸座標上の電流Id2’、Iq2’として出力する。
ここで、回転二軸座標上の電流Id1’、Iq1’、および回転二軸座標上の電流Id2’、Iq2’のそれぞれは、後述する回転二軸座標上の電圧指令Vd1、Vq1、および回転二軸座標上の電圧指令Vd1、Vq1を演算するために用いられる電流検出値に相当する。
減算器8aは、交流回転機1aのd軸電流指令Id*と切替器7aから出力された回転二軸座標上の電流Id1’との偏差dId1を演算する。
減算器8bは、交流回転機1aのq軸電流指令Iq*と切替器7aから出力された回転二軸座標上の電流Iq1’との偏差dIq1を演算する。
減算器8cは、交流回転機1aのd軸電流指令Id*と切替器7aから出力された回転二軸座標上の電流Id2’との偏差dId2を演算する。
減算器8dは、交流回転機1aのq軸電流指令Iq*と切替器7aから出力された回転二軸座標上の電流Iq2’との偏差dIq2を演算する。
制御器9aは、P制御器やPI制御器を用いて、偏差dId1を零に制御するように、回転二軸座標上の電圧指令Vd1を演算する。
制御器9bは、P制御器やPI制御器を用いて、偏差dIq1を零に制御するように、回転二軸座標上の電圧指令Vq1を演算する。
制御器9cは、P制御器やPI制御器を用いて、偏差dId2を零に制御するように、回転二軸座標上の電圧指令Vd2を演算する。
制御器9dは、P制御器やPI制御器を用いて、偏差dIq2を零に制御するように、回転二軸座標上の電圧指令Vq2を演算する。
座標変換器10aは、回転二軸座標上の電圧指令Vd1、Vq1を、交流回転機1aの回転位置θに基づいて、3相交流座標へ座標変換し、第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1を演算する。
座標変換器10bは、回転二軸座標上の電圧指令Vd2、Vq2を、交流回転機1aの回転位置θから30度減算した位置θ−30に基づいて、3相交流座標へ座標変換し、第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2を演算する。
オフセット演算器11aは、第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1に対して、下式(3)〜(5)に示すように、オフセット電圧Voffset1を加算し、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’として出力する。
Vu1’=Vu1+Voffset1 (3)
Vv1’=Vv1+Voffset1 (4)
Vw1’=Vw1+Voffset1 (5)
オフセット演算器11bは、第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2に対して、下式(6)〜(8)に示すように、オフセット電圧Voffset2を加算し、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’として出力する。
Vu2’=Vu2+Voffset2 (6)
Vv2’=Vv2+Voffset2 (7)
Vw2’=Vw2+Voffset2 (8)
第1の検出可否判定器12aは、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1の3相電流が検出可能であるか否かを判定し、第1の検出可否判定信号flag_1を出力する。
続いて、第1の電圧指令、第2の電圧指令と、第1の検出可否判定器12aの動作について、詳細に説明する。図5は、本発明の実施音形態1において、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づく第1の電圧指令ベクトルV1*と、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づく第2の電圧指令ベクトルV2*を示した説明図である。図5に示すように、第1の電圧指令ベクトルV1*および第2の電圧指令ベクトルV2*のそれぞれは、U(1)−V(1)−W(1)軸、U(2)−V(2)−W(2)軸を回転するベクトルとなる。
なお、図5に示したかっこ内の数字は、第1巻線に対応した軸と第2巻線に対応した軸を分けて示すためのものである。具体的には、(1)がついているU(1)、V(1)、W(1)は、それぞれ第1巻線のU相、V相、W相に対応した軸を示しており、(2)がついているU(2)、V(2)、W(2)は、それぞれ第2巻線のU相、V相、W相に対応した軸を示している。ここで、U(1)軸を基準とした場合の第1の電圧指令ベクトルV1*と第2の電圧指令ベクトルV2*との位相角は、ともにθvであり、位相差はない。
図6は、本発明の実施の形態1における第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1、および第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2の波形図である。先の図5に示したU(2)、V(2)、W(2)軸は、それぞれU(1)、V(1)、W(1)軸に対し30度位相が遅れている。従って、図6に示すように、第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2は、第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1に比べて30度位相が遅れる。
図6において、横軸は、U(1)軸を基準とした電圧位相角θvである。よって、第1巻線と第2巻線に30度の位相差を有する交流回転機1aに対して、第1の電圧指令と第2の電圧指令は、30度の位相差を有する。また、第1巻線と第2巻線に30+60×N(N:整数)度の位相差を有する交流回転機に対しても、同様に、第1の電圧指令と第2の電圧指令は、30+60×N度の位相差を有する。
図7は、本発明の実施の形態1における第1の電圧印加器3aに関して、電圧指令と、各相上側アーム素子がオンする割合との関係を説明するための図である。図7(a)は、図6に示した第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1であり、座標変換器10aの出力である。また、図7(b)は、オフセット演算器11aの出力である第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’であり、上式(3)〜(5)によって演算される。
なお、上式(3)〜(5)におけるオフセット電圧Voffset1は、第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1の最大値Vmax1、最小値Vmin1を用いて、下式(9)で与えている。
Voffset1=−0.5(Vmin1+Vmax1) (9)
ただし、第1の電圧印加器3aが出力できる相電圧の電圧出力範囲は、0〜母線電圧Vdc1である。従って、電圧出力範囲の幅を、第1の電圧印加器3aが出力可能なVdc1以内とすべく、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’は、−0.5Vdc1未満、0.5Vdc1超となる場合には、それぞれ−0.5Vdc1、0.5Vdc1で制限されている。
また、Voffset1として、上式(9)以外に、2相変調方式や3次高調波重畳方式として知られるような、他のオフセット電圧演算方法を用いてもよい。
図7(c)は、第1の電圧印加器3aにおける、各相上側アーム素子(Sup1、Svp1、Swp1)がオンする割合を示すオンデューティDsup1、Dsvp1、Dswp1である。これらのオンデューティDsup1、Dsvp1、Dswp1は、それぞれVu1’、Vv1’、Vw1’を用いて
Dsxp1=0.5+Vx1’/Vdc1
より求める。ただし、x=U、V、Wである。例えば、Dsup1が0.6のとき、第1の電圧印加器3aは、スイッチング周期TswにおいてSup1のオン割合0.6とする。
ここで、第1の電圧印加器3aにおいては、各相毎に、常時、上側アーム素子(Sup1、Svp1、Swp1)と下側アーム素子(Sup1、Svp1、Swp1)のいずれか一方がオンする。従って、各相上側アーム素子のオンデューティ(Dsup1、Dsvp1、Dswp1)と、下側アーム素子のオンデューティ(Dsun1、Dsvn1、Dswn1)との間には、下式(10)〜(12)の関係がある。
Dsup1+Dsun1=1 (10)
Dsvp1+Dsvn1=1 (11)
Dswp1+Dswn1=1 (12)
よって、例えば、Dsup1が0.6の場合、上式(10)より、Dsun1は0.4となる。以上より、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいた第1の電圧印加器3aにおける各スイッチング素子のオンデューティが定まる。
図8は、本発明の実施の形態1における第2の電圧印加器3bに関して、電圧指令と、各相上側アーム素子がオンする割合との関係を説明するための図である。図8(a)は、図6に示した第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2であり、座標変換器10bの出力である。また、図8(b)は、オフセット演算器11bの出力である第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’であり、上式(6)〜(8)によって演算される。
なお、上式(4)〜(6)におけるオフセット電圧Voffset2は、第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2の最大値Vmax2、最小値Vmin2を用いて、下式(13)で与えている。
Voffset2=−0.5(Vmin2+Vmax2) (13)
ただし、第2の電圧印加器3bが出力できる相電圧の電圧出力範囲は、0〜母線電圧Vdc2である。従って、電圧出力範囲の幅を、第2の電圧印加器3bが出力可能なVdc2以内とすべく、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’は、−0.5Vdc2未満、0.5Vdc2超となる場合には、それぞれ−0.5Vdc2、0.5Vdc2で制限されている。
また、Voffset2として、上式(13)以外に、2相変調方式や3次高調波重畳方式として知られるような、他のオフセット電圧演算方法を用いてもよい。
図8(c)は、第2の電圧印加器3bにおける、各相上側アーム素子(Sup2、Svp2、Swp2)がオンする割合を示すオンデューティDsup2、Dsvp2、Dswp2である。これらのオンデューティDsup2、Dsvp2、Dswp2は、それぞれVu2’、Vv2’、Vw2’を用いて
Dsxp2=0.5+Vx2’/Vdc2
より求める。
ここで、第2の電圧印加器3bにおいては、各相毎に、常時、上側アーム素子(Sup2、Svp2、Swp2)と下側アーム素子(Sun2、Svn2、Swn2)のいずれか一方がオンする。従って、各相上側アーム素子のオンデューティ(Dsup2、Dsvp2、Dswp2)と、下側アーム素子のオンデューティ(Dsun2、Dsvn2、Dswn2)との間には、下式(14)〜(16)の関係がある。
Dsup2+Dsun2=1 (14)
Dsvp2+Dsvn2=1 (15)
Dswp2+Dswn2=1 (16)
よって、例えば、Dsup2が0.6の場合、上式(14)より、Dsun2は0.4となる。以上より、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づいた第2の電圧印加器3bにおける各スイッチング素子のオンデューティが定まる。
図9は、本発明の実施の形態1における半導体スイッチのオンオフパターン、および電流検出器4a、4bにおける電流検出タイミングに関する動作説明図である。具体的には、第1の電圧印加器3aの半導体スイッチSup1、Svp1、Swp1、および第2の電圧印加器3bの半導体スイッチSup2、Svp2、Swp2のオンオフパターンと、電流検出器4a、4bにおける、スイッチング信号の周期(PWM周期)Tsw内での電流検出タイミングとの関係を示した図である。
なお、Sun1、Svn1、Swn1、およびSun2、Svn2、Swn2は、それぞれSup1、Svp1、Swp1、およびSup2、Svp2、Swp2と反転(1ならば0、0ならば1、ただしデッドタイム期間を除く)の関係にあるため、図示を省略している。
図9においては、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に関して、大きい順に第1最大相電圧Emax1、第1中間相電圧Emid1、第1最小相電圧Emin1としたとき、下式(17)〜(19)の関係があるものとする。
Emax=Vu1’ (17)
Emid=Vv1’ (18)
Emin=Vw1’ (19)
同様に、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に関して、大きい順に第2最大相電圧Emax2、第2中間相電圧Emid2、第2最小相電圧Emin2としたとき、下式(20)〜(22)の関係があるものとする。
Emax=Vu2’ (20)
Emid=Vv2’ (21)
Emin=Vw2’ (22)
時刻t1(n)において、Sup1、Sup2を1、かつSvp1、Swp1、Svp2、Swp2を0とし、時刻t1(n)からΔt1経過後の時刻t2(n)まで継続する。図3、図4より、時刻t1(n)〜t2(n)において、第1の電圧ベクトルは、V1(1)、第2の電圧ベクトルは、V1(2)である。電流検出器4a、4bは、時刻t1(n)〜t2(n)における、時刻ts1−1(n)にて、Idc1、Idc2を検出する。
第1の電圧印加器3aや第2の電圧印加器3bのデッドタイム時間と、第1の電流検出器がIdc1を検出する、あるいは第2の電流検出器がIdc2を検出するのに要する時間(例えば、検出波形に含まれるリンギングが収束するのに要する時間やサンプルホールドに要する時間)の和を「第1の所定値」とした場合、ずらし時間Δt1は、その「第1の所定値」以上に設定される。例えば、Δt1=5μsである。
図3より、時刻t1(n)〜t2(n)においては、第1の電圧ベクトルは、V1(1)であり、時刻ts1−1(n)で検出されたIdc1は、Iu1に等しい。また、図4より、時刻t1(n)〜t2(n)においては、第2の電圧ベクトルは、V1(2)であり、時刻ts1−1(n)で検出されたIdc2は、Iu2に等しい。
次に、時刻t2(n)において、Svp1、Svp2を1とし、そのスイッチングパターンを時刻t3(n)まで継続する。図3、図4より、時刻t2(n)〜t3(n)において、第1の電圧ベクトルは、V2(1)、第2の電圧ベクトルは、V2(2)である。電流検出器4a、4bは、時刻t2(n)〜t3(n)における、時刻ts1−2(n)にて、再度、Idc1、Idc2を検出する。ずらし時間Δt2は、ずらし時間Δt1と同様に「第1の所定値」以上に設定される。一般的には、Δt1=Δt2に設定される。
図3より、時刻t2(n)〜t3(n)においては、第1の電圧ベクトルは、V2(1)であり、時刻ts1−2(n)で検出されたIdc1は、−Iw1に等しい。また、図4より、時刻t2(n)〜t3(n)においては、第2の電圧ベクトルは、V2(2)であり、時刻ts1−2(n)で検出されたIdc2は、−Iw2に等しい。
以上より、第1巻線の電流Iu1、Iw1、第2巻線の電流Iu2、Iw2が検出できたので、三相電流の和が零なることを利用すると、第1の3相電流Iu1、Iv1(=−Iu1−Iw1)、Iw1、第2の3相電流Iu2、Iv2(=−Iu2−Iw2)、Iw2を検出できる。
そして、時刻t3(n)にて、Swp1、Swp2を1とする。Sup1〜Swp2のパルス幅(「1」を継続する時間)は、各スイッチに対応するオンデューティDsup1、Dswp2とスイッチング周期Tswとの乗算値によって定まる。
以上より、本実施の形態1では、第1最大相電圧Emax1に対応する相の上側アーム素子のスイッチ、第1中間相電圧Emid1に対応する相の上側アーム素子のスイッチ、第1最小相電圧Emin1に対応する相の上側アーム素子のスイッチの順に、第1の所定値以上に設定されたΔt1やΔt2だけ時刻をずらしてオンしている。
そして、このようなスイッチングにより、図3に示す、Idc1から、第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1のうち、2相を検出できる2種類の第1の電圧ベクトルを形成し、図4に示す、Idc2から、第2の3相電流Iu2、Iv2、Iw2のうち、2相を検出できる2種類の第2の電圧ベクトルを形成する。
しかしながら、第1中間相電圧Emid1に対応する相の電圧指令値によっては、Idc1から第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1のうち、2相を検出できる2種類の第1の電圧ベクトルを形成することができず、結果として、第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出することができない場合がある。
例えば、図10は、本発明の実施の形態1における半導体スイッチのオンオフパターン、および電流検出器4a、4bにおける電流検出タイミングに関する、図9とは別の動作説明図であり、第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出することができない場合を例示している。
図10では、Vv1’が小さく、Dsvp1・TswがΔt2より小さくなった状態を示している。この状態では、時刻t2(n)でSvp1をオンすると、時刻t3(n)よりも前にオフしてしまい、第1の電圧ベクトルV2(1)がずらし時間Δt2の区間に渡って形成できない。
また、図11は、本発明の実施の形態1における半導体スイッチのオンオフパターン、および電流検出器4a、4bにおける電流検出タイミングに関する、図9、図10とは別の動作説明図であり、図10と同様に、第1の3相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出することができない場合を例示している。
図11では、Vv1’が大きく、Dsvp1・TswがTsw−Δt1より大きくなった状態を示している。この状態では、スイッチング周期Tswが終了する時刻t4(n)でSvp1をオフした場合においても、時刻t2(n)よりも前でSvp1をオンしなければ、Dsvp1・Tswに対応したパルス幅が出せない。この結果として、V1(1)がずらし時間Δt1の区間に渡って形成できない。
第2の電圧印加器3bについても同様であり、先の図9において、Vv2’が小さい場合には、V2(2)がずらし時間Δt2の区間に渡って形成できない。また、Vv2’が大きい場合には、V1(2)がずらし時間Δt1の区間に渡って形成できない。
この課題は、特許文献1に記載されたスイッチング周期(特許文献1における制御周期)Tswを増大させることで解決できる。ずらし時間Δt1やずらし時間Δt2を固定時間とすると、Tswを増大させることで、Tswに占めるずらし時間Δt1やずらし時間Δt2の割合が低下する。このため、先に述べた中間相電圧が小さくDsvp1が小さい場合や、中間相電圧が大きくDsvp1が大きい場合にも、電流検出が可能となる。
しかしながら、Tswを増大させると、Tswの逆数で与えられるスイッチング周波数が低下し、その周波数が可聴域に入ると、スイッチング周波数成分の騒音が増大する課題が生じる。例えば、交流回転機1aが電動パワーステアリング用モータの場合、スイッチング周波数が20kHz以上(可聴域の帯域外)に設定される。
これは、人間の可聴域が20Hz〜20kHzであり、20kHz以上(可聴域の帯域外)に設定することで、スイッチング周波数成分の音が人間の耳には聞えないからである。しかしながら、ずらし時間Δt1やずらし時間Δt2を確保するためにスイッチング周波数を20kHzより低下させると、スイッチング周波数成分の音が人間の耳に聞こえてしまい、結果として騒音となってしまう。
また、このような騒音を避けるために、第1中間相電圧Emid1がずらし時間Δt1やΔt2を確保できる範囲になるように、第1の電圧指令の振幅を制限してしまうと、交流回転機1aに印加される電圧が制限され、交流回転機1aにより、高い出力が発生できないといった別の課題が生じる。
続いて、第1の検出可否判定器12aおよび第2の検出可否判定器12bについて説明する。図12は、本発明の実施の形態1における第1の検出可否判定器12aおよび第2の検出可否判定器12bの機能に関する説明図である。
具体的には、第1の検出可否判定器12aは、第1中間相電圧Emid1に対応する相の電圧指令値が第1の所定値Vs1以下、かつ第2の所定値Vs2以上の範囲か否かを判別し、第1の電流検出器4aが第1の3相電流を検出可能か判別する。同様に、第2の検出可否判定器12bは、第2中間相電圧Emid2に対応する相の電圧指令値が第1の所定値Vs1以下、かつ第2の所定値Vs2以上の範囲か否かを判別し、第2の電流検出器4bが第2の3相電流を検出可能か判別する。
ここで、第1の中間相電圧Emid1や第2の中間相電圧Emid2が第1の所定値Vs1と等しければ、中間相電圧における上側アーム素子のTswにおけるオン時間が、Tsw−Δt1に等しいことを意味している。従って、第1の所定値Vs1は、ずらし時間Δt1を確保できる上限値に相当する。
一方、第1の中間相電圧Emid1や第2の中間相電圧Emid2が第2の所定値Vs2と等しければ、中間相電圧における上側アーム素子のTswにおけるオン時間が、Δt2を確保できることを意味している。従って、第2の所定値Vs2は、ずらし時間Δt2を確保できる下限値である。
図12(a)は、図7(b)に示した第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’を点線、第1中間相電圧Emid1を実線、第1の所定値Vs1および第2の所定値Vs2を一点鎖線で示す。ここでは、
Vs1=0.4Vdc1
Vs2=−0.4Vdc1
に設定する。
図12(b)は、第1の検出可否判定器12aの出力である。第1の検出可否判定器12aは、第1中間相電圧Emid1が第1の所定値Vs1以下、かつ第2の所定値Vs2以上の範囲内か範囲外かを判別することで、第1の3相電流が検出可能か否かを判別する。そして、第1の検出可否判定器12aは、第1中間相電圧Emid1が第1の所定値Vs1以下、かつ第2の所定値Vs2以上の範囲内であれば1、範囲外であれば0となる第1の検出可否判定信号flag_1を出力する。
図12(c)は、図8(b)に示した第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’を点線、第2中間相電圧Emid2を実線、第1の所定値Vs1および第2の所定値Vs2を一点鎖線で示す。
図12(d)は、後の実施の形態で詳述する第2の検出可否判定器12bの出力である。第2の検出可否判定器12bは、第2中間相電圧Emid2が第1の所定値Vs1以下、かつ第2の所定値Vs2以上の範囲内か範囲外かを判別することで、第2の3相電流が検出可能か否かを判別する。そして、第2の検出可否判定器12bは、第2中間相電圧Emid2が第1の所定値Vs1以下、かつ第2の所定値Vs2以上の範囲内であれば1、範囲外であれば0となる第2の検出可否判定信号flag_2を出力する。
第1の検出可否判定信号flag_1に着目すると、電圧位相角θvで60×x(x:0、1、2、3、4、5、6)度近傍で0となる。第2の検出可否判定信号flag_2に着目すると、電圧位相角θvで30+60×x(x:0、1、2、3、4、5)度近傍で0となる。
よって、第1の検出可否判定信号flag_1と第2の検出可否判定信号flag_2とでは、0となる電圧位相角θvが互いに30度ずれており、flag_1が0のとき、flag_2は1であり、逆に、flag_2が0のとき、flag_1は1である。よって、flag_1とflag_2が同時に0になることはなく、少なくとも一方は、1であることがわかる。
図13は、本発明の実施の形態1における第1の検出可否判定器12aの一連動作を示したフローチャートである。ステップS1000aにおいて、第1の検出可否判定器12aは、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1中間相電圧Emid1を演算する。
ステップS1000bにおいて、第1の検出可否判定器12aは、第1中間相電圧Emid1が第1の所定値Vs1以下であるか否かを判定し、第「YES」であれば、ステップS1000cへ進み、「NO」であれば、ステップS1000eへ進む。
ステップS1000cに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12aは、第1中間相電圧Emid1が第2の所定値Vs2以上であるか否かを判定し、「YES」であれば、ステップS1000dへ進み、「NO」であれば、ステップS1000eへ進む。
ステップS1000dに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12aは、第1の検出可否判定信号flag_1に1を代入する。一方、ステップS1000eに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12aは、第1の検出可否判定信号flag_1に0を代入する。
切替器7aは、第1の検出可否判定信号flag_1が1の場合には、第1の3相電流を検出可能であると判定し、第1の3相電流から求めた回転二軸上の電流Id1、Iq1を、それぞれId’、Iq’として出力する。また、切替器7a歯、第1の検出可否判定信号flag_1が0の場合には、第1の3相電流を検出不可能と判定し、第2の3相電流から求めた回転二軸上の電流Id、Iqを、それぞれId’、Iq’として出力する。
本発明では、検出不可となっている巻線の電流を、推定和電流から算出する推定和電流演算器14を備えていることで技術的特徴としている。そこで、以下では、推定和電流演算器14の機能について説明する。
変調率が100%を超える領域での使用時には、第1巻線の電流と第2巻線の電流には電気角周波数の6倍の周波数(以下電気角6次という)の電流リプルが発生する。ただし、両巻線の位相差が30degあるため、位相が180deg異なる信号となっている。図14は、本発明の実施の形態1における第1巻線の電流と第2巻線の電流との関係を示した図である。
図14のような関係を有することで、磁石トルクで発生するトルクリプルは相殺できる。しかしながら、電圧飽和により所望の電圧ベクトルが出力できない電気角領域では、第1巻線の電流と第2巻線の電流は、異なる値となることになる。
第1巻線の電流が検出不可となった場合に第2巻線の電流をそのまま用いると、第1巻線の電圧指令に逆位相の電気角6次の信号が重畳されることになる。したがって、本来持っていた電気角6次の振幅よりも大きな振幅の電気角6次のリプルを生じることになる。
この成分で生じたトルクリプルは、位相差の異なる第2巻線の電流により相殺できないため、出力トルクに電気角6次のトルクリプルとして表れる。そこで、本実施の形態1における推定和電流演算器14では、単に第2巻線の電流を第1巻線の電流として用いた場合に、無駄に大きくなってしまう電流リプルを抑制するために、推定和電流を用いた推定を行っている。
図14を見てわかるように、第1巻線の電流と第2巻線の電流の和は一定となっている。そこで、推定和電流演算器14は、この関係を利用して、推定和電流を算出する。図15は、本発明の実施の形態1における推定和電流演算器14による一連処理を示したフローチャートである。
ステップS1100において、推定和電流演算器14は、第1の検出可否判定信号flag_1が1と等しいか否かを判定する。そして、推定和電流演算器14は、ステップS1100においてflag_1が1に等しく、「YES」である場合には、ステップS1101へ進む。そして、ステップS1101に進んだ場合には、推定和電流演算器14は、第1巻線の電流Id1と第2巻線の電流Id2の和をIdsum_calに、第1巻線の電流Iq1と第2巻線の電流Iq2の和をIqsum_calに代入する。
一方、推定和電流演算器14は、ステップS1100においてflag_1が1に等しくなく、「NO」である場合には、処理の初めに戻り、推定和電流Idsum_calおよびIqsum_calとして、前回値を保持する。
図16は、本発明の実施の形態1における推定和電流演算器14の内部構成を示すブロック図の一例である。推定和電流演算器14は、入力Id1、Id2、Iq1、Iq2、flag_1に対して、Idsum_cal、Iqsum_calを出力する。
加算器1200は、Id1とId2を加算して、Idsum_tmpを出力する。切換器1202は、flag_1に従い、加算器1200により今回算出されたIdsum_tmp、または前回の出力値であるIdsum_calのいずれかを選択切り替えして出力する。
すなわち、切換器1202は、flag_1が0の場合、つまり第1巻線の電流を検出不可能と判定している場合には、Idsum_calの前回値を出力し、flag_1が1の場合、つまり第1巻線の電流を検出可能と判定している場合には、Idsum_tmpを出力する。
一方、加算器1201は、Iq1とIq2をで加算して、Iqsum_tmpを出力する。切換器1203は、flag_1に従い、加算器1201により今回算出されたIqsum_tmp、または前回の出力値であるIqsum_calのいずれかを選択切り替えして出力する。
すなわち、切換器1203は、flag_1が0の場合、つまり第1巻線の電流を検出不可能と判定している場合には、Iqsum_calの前回値を出力し、flag_1が1の場合、つまり第1巻線の電流を検出可能と判定している場合には、Iqsum_tmpを出力する。
なお、本実施の形態1では、推定和電流演算器14と切換器7aを分け、推定和電流を演算した後に、検出可否判定器から出力されたflag_1により切り換える構成となっている。しかしながら、推定和電流を一旦演算するということは必須ではない。すなわち、推定和電流演算器14と切換器7aの処理を一気に行うような、つまり推定和電流演算器14を包含するような切換器7bを用いる構成としてもよいことは、いうまでもない。
また、推定和電流Idsum_calおよびIqsum_calを演算するのに各巻線の電流を用いたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、制御器806によって検出電流は電流指令にほぼ追従するため、下式(23)、(24)のように、電流指令の2倍として推定和電流を算出する推定和電流演算器14aを、推定和電流演算器14の代わりに採用してもよい。なお、電流指令を用いて推定和電流を算出する場合には、今回の電流指令を用いてもよいことはいうまでもない。
Idsum_cal=2×Id* (23)
Iqsum_cal=2×Iq* (24)
以上のように、実施の形態1によれば、第1の電圧指令に基づいて第1の電流検出器4aが第1巻線の電流を検出可能か判定している。そして、検出可能と判定した場合には、第1巻線の電流に基づいて第1の電圧指令を演算し、検出不可能と判定した場合には、第2巻線の電流と推定和電流に基づいて第1の電圧指令を演算している。
このような構成を備えることで、特許文献1のようにスイッチング周期Tswを長くすることなく、また、第1中間相電圧がずらし時間を確保できる範囲になるように第1の電圧指令の振幅を制限する必要もなしに、第1の電圧指令および第2の電圧指令の振幅を大きくすることが可能となる。この結果、交流回転機1aの低騒音を維持した状態で、高出力化が可能となる効果を得ることができる。
実施の形態2.
本実施の形態2における交流回転機の制御装置は、第1の検出可否検出器12bにおける演算処理が、先の実施の形態1における第1の検出可否判定器12aと異なっている。そこで、本実施の形態2における第1の検出可否判定器12bの演算処理を中心に、以下に説明する。
図17は、本発明の実施の形態2における第1の検出可否判定器12bの一連動作を示したフローチャートである。ステップS2000aにおいて、第1の検出可否判定器12bは、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1最大相電圧Emax1、第1中間相電圧Emid1、第1最小相電圧Emin1を演算する。
ステップS2000bにおいて、第1の検出可否判定器12bは、第1最大相電圧と第1中間相電圧との差(Emax1−Emid1)が、第3の所定値Vs3以上であるか否かを判定し、「YES」であれば、ステップS2000cへ進み、「NO」であれば、ステップS2000eへ進む。
ステップS2000cに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12bは、第1中間相電圧と第1最小相電圧との差(Emid1−Emin1)が、第3の所定値Vs3以上であるか否かを判定し、「YES」であれば、ステップS2000dへ進み、「NO」であれば、ステップS2000eへ進む。
ステップS2000dに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12bは、第1の検出可否判定信号flag_1に1を代入する。一方、ステップS2000eに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12bは、第1の検出可否判定信号flag_1に0を代入する。
ここで、第3の所定値Vs3は、ずらし時間Δt1またはずらし時間Δt2と、スイッチング周期Tswとの比に基づいて決めればよい。例えば、ずらし時間Δt1=Δt2=5μs、スイッチング周期Tswとすると、第3の所定値Vs3は、Δt1/Tsw・Vdc=0.1Vdcとなる。
図18は、本発明の実施の形態2における第3の所定値Vs3を0.1Vdcに設定した場合の、先の図17の各ステップに対応する波形を示した図である。図18(a)は、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’の波形である。図18(b)は、ステップS2000aに対応する第1最大相電圧Emax1、第1中間相電圧Emid1、第1最小相電圧Emin1の各波形である。
図18(c)は、ステップS2000bに対応する第1最大相電圧と第1中間相電圧との差Emax1−Emid1、およびステップS2000cに対応する第1中間相電圧と第1最小相電圧との差Emid1−Emin1の各波形である。さらに、図18(d)は、ステップS2000dおよびステップS2000eに対応する第1の検出可否判定信号flag_1の波形である。
本実施の形態2に示すように、第1最大相電圧と第1中間相電圧との差、第1中間相電圧と第1最小相電圧との差、を演算し、それらの値が第3の所定値未満となった場合に、第1巻線の電流を検出不可と判定することによっても、先の実施の形態1と同等の効果を得ることができる。
また、本実施の形態2では、オフセット演算器11aの出力である第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1の検出可否判定器12bが第1巻線の電流の検出可否を判定した。しかしながら、オフセット演算器11aの入力である第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1を、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’の代わりに代入して演算しても、Emax1−Emid1やEmid1−Emin1の演算結果は同じとなる。
従って、第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1を、第1の検出可否判定器12bに入力する構成としても、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて演算する場合と同等の効果が得られる。
また、本実施の形態2においても、推定和電流演算器14の代わりに、推定和電流演算器14aを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態3.
本実施の形態3における交流回転機の制御装置は、第1の検出可否判定器12cにおける演算処理が、先の実施の形態1における第1の検出可否判定器12aと異なっている。そこで、本実施の形態3における第1の検出可否判定器12cの演算処理を中心に、以下に説明する。
本実施の形態3における第1の検出可否検出器12cは、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、下式(25)により、電圧位相角θvを演算し、電圧位相角θvの領域に応じて、第1巻線の電流の検出可否を判定する。
先の実施の形態1においては、電圧位相角θvが60×x(x:0、1、2、3、4、5、6)度近傍で、第1巻線の電流の検出ができないことを示した。そこで、第1の検出可否判定器12cは、第1の電圧指令に基づく演算によって得たθvが、60×x−α以上、60×x+α以下(ただし、α:マージン)の範囲内にある場合には、検出不可と判定し、flag_1として0を出力し、範囲外にある場合には、検出可と判定し、flag_1として1を出力する。
ここで、マージンαは、ずらし時間Δt1、Δt2や第1の電圧指令の最大値等によって決定するが、30度以内の大きさである。
本実施の形態3に示すように、第1の電圧指令の電圧位相角に応じて、第1巻線の電流の検出判定の可否を判定することによっても、先の実施の形態1と同等の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態3では、オフセット演算器11aの出力である第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1の検出可否判定器12cが第1巻線の電流の検出可否を判定した。しかしながら、オフセット演算器11aの入力である第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1を、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’の代わりに代入して演算しても、上式(26)の演算結果は同じとなる。
従って、第1の電圧指令Vu1、Vv1、Vw1を、第1の検出可否判定器12cに入力する構成としても、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて演算する場合と同等の効果が得られる。
その他、回転二軸の電圧指令Vd、Vqに基づいて電圧位相角θvを求める方式など、電圧指令に基づいて電圧位相角θvを求めた上で、電圧位相角θvに基づいて第1巻線の電流の検出可否を判定する方法は、すべて本発明に含まれる。
また、本実施の形態3においても、推定和電流演算器14の代わりに、推定和電流演算器14aを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態4.
本実施の形態4における交流回転機の制御装置は、第1の検出可否判定器12dにおける演算処理が、先の実施の形態1〜3における第1の検出可否判定器12a、12b、12cと異なっている。そこで、本実施の形態4における第1の検出可否判定器12dによる演算処理を中心に、以下に説明する。
図19は、本発明の実施の形態4における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。本実施の形態4では、第1の検出可否検出器12dが、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’の代わりに、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づいて、電圧位相角θvを下式(26)より演算し、電圧位相角θvの領域に応じて、第1巻線の電流の検出可否を判定している。
先の実施の形態1では、電圧位相角θvが、60×x(x:0、1、2、3、4、5、6)度近傍で、第1巻線の電流の検出ができないことを示した。そこで、第1の検出可否判定器12dは、第2の電圧指令に基づく演算によって得たθvが、60×x−α以上、60×x+α以下の範囲内にある場合には、第1巻線の電流を検出不可と判定し、flag_1として0を出力する。一方、第1の検出可否判定器12dは、θvが範囲外にある場合には、第1巻線の電流を検出可能と判定し、flag_1として1を出力する。
なお、マージンαは、ずらし時間Δt1、Δt2や、第1の電圧指令の最大値等によって決定するが、30度以内の大きさである。
以上のように、実施の形態4によれば、第2の電圧指令の電圧位相角を演算し、演算した電圧位相角の領域に応じて、第1巻線の電流の検出判定の可否を判定する構成を備えている。このような構成を用いることによっても、先の実施の形態1〜3と同等の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態4では、オフセット演算器11bの出力である第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づいて、第1の検出可否判定器12dが第1巻線の電流の検出可否を判定した。しかしながら、オフセット演算器11bの出力である第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’の代わりに、オフセット演算器11bの入力である第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2を代入して演算しても、上式(26)の演算結果は同じとなる。
従って、第2の電圧指令Vu2、Vv2、Vw2を第1の検出可否判定器12dに入力する構成とした場合にも、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づいて演算する場合と同等の効果が得られる。
また、先の実施の形態3から得た第1の電圧指令に基づく電圧位相角θvと、実施の形態4から得た第2の電圧指令に基づく電圧位相角θvとの平均を演算し、その平均化された電圧位相角θvに基づいて、第1巻線の電流の検出可否を判定してもよい。この場合には、平均化されることによって、電圧位相角θvに含まれるノイズ成分が抑制される効果を得ることができる。
また、本実施の形態4においても、推定和電流演算器14の代わりに、推定和電流演算器14aを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態5.
図20は、本発明の実施の形態5における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。先の実施の形態1〜4と異なるのは、本実施の形態5では、第1の電流検出器4a、第2の電流検出器4b、第1の検出可否検出器12aの代わりに、第1の電流検出器4c、第2の電流検出器4d、第1の検出可否検出器12eを備えて構成されている点である。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
本実施の形態5における第1の電流検出器4cは、シャント抵抗や計器用変流器(CT)等の電流センサを、第1の電圧印加器3aの各相下側アーム素子(Sun1、Svn1、Swn1)に対して直列に接続するように設けられている。
図21は、本発明の実施の形態5における半導体スイッチSup1〜Swn1のオンオフ状態に応じた第1の電圧ベクトルV0(1)〜V7(1)と、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1との関係を示した図である。第1の電流検出器4cは、図21に示した関係に基づいて、半導体スイッチSup1〜Swn1のオンオフ状態に応じた第1の電圧ベクトルV0(1)〜V7(1)から、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1を個別に検出する。
本実施の形態5では、各相下アーム素子に直列に電流センサを設ける構成としたので、下側アーム素子がオンしている相のみ、電流検出が可能である。例えば、第1の電圧ベクトルV1(1)の場合、オンしているスイッチは、Sup1、Svn1、Swn1である。従って、U1相は、上側アーム素子がオン、V1相およびW1相は、下側アーム素子がオンしているため、V1相を流れる電流Iv1、およびW1相を流れる電流Iw1のみが検出可能であり、U1相を流れる電流Iu1は、検出不可能である。このため、Iu1は、Iv1とIw1を用いて、3相電流の和が零となることを利用して検出される。
よって、第1の電圧ベクトルV1(1)のとき、U1、V1、W1相に設けられた電流センサに流れる電流Iu1_s、Iv1_s、Iw1_sは、それぞれ0、−Iv1、−Iw1となる(図21参照)。同様に、第1の電圧ベクトルがV3(1)、V5(1)における電流センサに流れる電流Iu_s、Iv_s、Iw_sは、図21に示すとおりである。
第1の電圧ベクトルがV2(1)、V4(1)、V6(1)の場合には、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1のうち、1相しか検出できない。このため、3相分の電流を得ることはできない。
第1の電流検出器4cと同様に、本実施の形態5における第2の電流検出器4dは、シャント抵抗や計器用変流器(CT)等の電流センサを、第2の電圧印加器3bの各相下側アーム素子(Sun2、Svn2、Swn2)に対して直列に接続するように設けられている。
図22は、本発明の実施の形態5における半導体スイッチSup2〜Swn2のオンオフ状態に応じた第2の電圧ベクトルV0(2)〜V7(2)と、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2との関係を示した図である。第2の電流検出器4dは、図22にした関係に基づいて、半導体スイッチSup2〜Swn2のオンオフ状態に応じた第2の電圧ベクトルV0(2)〜V7(2)から、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2を個別に検出する。
本実施の形態5では、各相下アーム素子に直列に電流センサを設ける構成としたので、下側アーム素子がオンしている相のみ、電流検出が可能である。例えば、第2の電圧ベクトルV1(2)の場合、オンしているスイッチは、Sup2、Svn2、Swn2である。従って、U2相は、上側アーム素子がオン、V2相およびW2相は、下側アーム素子がオンしているため、V2相を流れる電流Iv2、およびW2相を流れる電流Iw2のみが検出可能であり、U2相を流れる電流Iu2は、検出不可能である。このため、Iu2は、Iv2とIw2を用いて、3相電流の和が零となることを利用して検出される。
よって、第2の電圧ベクトルV1(2)のとき、U2、V2、W2相に設けられた電流センサに流れる電流Iu2_s、Iv2_s、Iw2_sは、それぞれ0、−Iv2、−Iw2となる(図22参照)。同様に、第2の電圧ベクトルがV3(2)、V5(2)における電流センサに流れる電流Iu2_s、Iv2_s、Iw2_sは、図22に示すとおりである。
第2の電圧ベクトルがV2(2)、V4(2)、V6(2)の場合には、第1巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2のうち、1相しか検出できない。このため、3相分の電流を得ることはできない。
図23は、本発明の実施の形態5における半導体スイッチのオンオフパターン、および電流検出器4c、4dにおける電流検出タイミングに関する動作説明図である。具体的には、第1の電圧印加器3aの半導体スイッチSup1、Svp1、Swp1、および第2の電圧印加器3bの半導体スイッチSup2、Svp2、Swp2のオンオフパターンと、第1の電流検出器4cおよび第2の電流検出器4dにおける、スイッチング周期Tsw内での電流検出タイミングとの関係を示した図である。
図23においては、先の図9と同様に、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に関して、大きい順に第1最大相電圧Emax1、第1中間相電圧Emid1、第1最小相電圧Emin1としたとき、上式(17)〜(19)の関係があるものとする。
同様に、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に関して、大きい順に第2最大相電圧Emax2、第2中間相電圧Emid2、第2最小相電圧Emin2としたとき、上式(20)〜(22)の関係があるものとする。
時刻t1(n)において、Sup1、Sup2を1、かつSvp1、Swp1、Svp2、Swp2を0とし、Δt1経過後の時刻t2(n)まで継続する。図21、図22より、時刻t1(n)〜t2(n)において、第1の電圧ベクトルは、V1(1)、第2の電圧ベクトルは、V1(2)である。時刻t1(n)〜t2(n)における、時刻ts1−1(n)にて、第1巻線の電流を検出する。
第1の電圧ベクトルは、V1(1)であるから、図21より、Iv1_s、Iw1_sは、それぞれIv1、Iw1に等しく、Iu1は、Iv1とIw1から、3相電流の和が零となることを利用して求める。
また、時刻ts1−1(n)にて、第2巻線の電流を検出し、第2の電圧ベクトルは、V1(2)であるから、図22より、Iv2_s、Iw2_sは、それぞれIv2、Iw2に等しく、Iu2は、Iv2とIw2から、3相電流の和が零となることを利用して求める。
次に、時刻t2(n)において、Svp1、Svp2、Swp1、Swp2を1とする。Sup1〜Swp2のパルス幅(「1」を継続する時間)は、各スイッチに対応するオンデューティDsup1〜Dswp2とスイッチング周期Tswとの乗算値によって定まる。
以上より、本実施の形態5では、上側アーム素子のスイッチを、第1最大相電圧Emax1に対応する相をまずオンし、それからΔt1だけ時刻をずらして第1中間相電圧Emid1に対応する相および第1最小相電圧Emin1をオンしている。そして、このようなスイッチングにより、図21に示す、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1のうち、2相を検出できる第1の電圧ベクトル(V1(1)またはV3(1)またはV5(1))を形成し、図22に示す、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2のうち、2相を検出できる第2の電圧ベクトル(V1(2)またはV3(2)またはV5(2))を形成する。
しかしながら、第1中間相電圧Emid1に対応する相の電圧指令値によっては、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1のうち、1相しか検出できない場合が生じる。このような場合を、図23の例で説明する。
Vv1が第1の所定値Vs1より大きい場合には、Dsvp1・TswがTsw−Δt1より大きくなると、スイッチング周期Tswが終了する時刻t4(n)でオフした場合においても、時刻t2(n)よりも前でオンしなければ、Dsvp1・Tswに対応したパルス幅が出ない。この結果として、Δt1の区間においてV1(1)を形成できず、第1巻線の電流が検出できない。
さらに、第2の電圧印加器3bについても、同様に、図23において、Vv2’が第1の所定値Vs1より大きい場合には、ずらし時間Δt1の区間でV1(2)を形成できず、第2巻線の電流が検出できない。
図24は、本発明の実施の形態5における第1の検出可否判定器12eの機能に関する説明図である。具体的には、第1の検出可否判定器12eは、第1中間相電圧Emid1に対応する相の電圧指令値および第2中間相電圧Emid2に対応する相の電圧指令値が第1の所定値Vs1以下の範囲か否かを判別している。図24(a)は、図7(b)に示した第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’を点線、第1中間相電圧Emid1を実線、第1の所定値Vs1を一点鎖線で示す。先の実施の形態1の図12と同様に、Vs1=0.4Vdc1に設定する。
図24(b)は、第1の検出可否判定器12eの出力である。第1の検出可否判定器12eは、第1中間相電圧Emid1が第1の所定値Vs1以下の範囲内か範囲外かを判別することで、第1巻線の電流が検出可能か否かを判定し、第1の所定値Vs1以下の範囲内であれば1、範囲外であれば0となる第1の検出可否判定信号flag_1を出力する。
図24(c)は、図8(b)に示した第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’を点線、第2中間相電圧Emid2を実線、Vs1を一点鎖線で示している。図24(d)は、第2中間相電圧Emid2が第1の所定値Vs1以下の範囲内か範囲外かを判別する第2の検出可否判定信号flag_2であり、第1の所定値Vs1以下の範囲内であれば1、範囲外であれば0となる。
なお、この第2の検出可否判定信号flag_2は、後の実施の形態で用い、本実施の形態では用いないが、図24では、説明用として記載している。
第1の検出可否判定信号flag_1に着目すると、電圧位相角θvで60+120×x(x:0、1、2)度近傍で0となる。第2の検出可否判定信号flag_2に着目すると、電圧位相角θvで90+120×x(x:0、1、2)度近傍で0となる。よって、第1の検出可否判定信号flag_1と第2の検出可否判定信号flag_2とでは、0となる電圧位相角θvは互いに30度ずれており、flag_1が0のとき、flag_2は1であり、逆に、flag_1が1のとき、flag_2は0である。
図25は、本発明の実施の形態5における第1の検出可否判定器12eの一連動作を示したフローチャートである。ステップS4000aにおいて、第1の検出可否判定器12eは、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’に基づいて、第1中間相電圧Emid1を演算する。ステップS4000bにおいて、第1の検出可否判定器12eは、第1中間相電圧Emid1が第1の所定値Vs1以下であるか否かを判定し、「YES」であれば、ステップS4000cへ進み、「NO」であれば、ステップS4000dへ進む。
ステップS4000cに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12eは、第1の検出可否判定信号flag_1に1を代入する。一方、ステップS4000eに進んだ場合には、第1の検出可否判定器12eは、第1の検出可否判定信号flag_1に0を代入する。
以上のように、実施の形態5によれば、第1の電圧印加器の各相下側アーム素子を流れる電流に基づいて第1巻線の電流を検出し、第2の電圧印加器の各相下側アーム素子を流れる電流に基づいて第2巻線の電流を検出する構成を備えている。このような構成によっても、先の実施の形態1と同等の効果を得ることができる。
なお、flag_1は、電圧位相角θvで60+120×x(x:0、1、2)度近傍で0となることを示した。そこで、実施の形態1から実施の形態3への変更点を参照することによって、第1の電流検出器が第1の電圧印加器の各相下側アーム素子を流れる電流に基づいて、第1巻線の電流を検出する構成に対しても、第1の電圧指令から演算した電圧位相角θvに基づいて、第1巻線の検出可否を判定することもできる。
また、実施の形態1から実施の形態4への変更点を参照することによって、第1の電流検出器が第1の電圧印加器の各相下側アーム素子を流れる電流に基づいて、第1巻線の電流を検出する構成に対しても、第2の電圧指令から演算した電圧位相角θvに基づいて、第1巻線の検出可否を判定することもできる。
また、実施の形態5では、第1の電流検出器は、第1の電圧印加器の各相下側アーム素子を流れる電流に基づいて第1巻線の電流を検出し、第2の電流検出器は、第2の電圧印加器の各相下側アーム素子を流れる電流に基づいて第2巻線の電流を検出する構成とした。しかしながら、第1の電流検出器は、第1の電圧印加器の3相中何れか2相の下側アーム素子を流れる電流に基づいて第1巻線の電流を検出し、第2の電流検出器は、第2の電圧印加器の3相中何れか2相の下側アーム素子を流れる電流に基づいて第2巻線の電流を検出する構成としても、同様に実施できるのは言うまでもない。
さらに、本実施の形態5においても、推定和電流演算器14の代わりに、推定和電流演算器14aを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態6.
図26は、本発明の実施の形態6における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。先の実施の形態1〜5と異なるのは、本実施の形態6では、第1巻線の電流を検出するのに第1の電流検出器4aを用い、第2巻線の電流を検出するのに第2の電流検出器4dを用いている点である。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
本実施の形態6では、第1の電圧印加器3aは、先の実施の形態1で述べた、図9のSup1、Svp1、Swp1に示すオンオフパターンを発生し、第2の電圧印加器3bは、先の実施の形態5で述べた、図23のSup2、Svp2、Swp2に示すオンオフパターンを発生する。
先の実施の形態1の図12においては、第1の電流検出器4aにより検出された、第1の電圧印加器3aの直流母線を流れる電流に基づいて、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1を検出する場合に、電圧位相角θvで60×x(x:0、1、2、3、4、5、6)度近傍でflag_1が0となり、第1巻線の電流を検出できないことを示した。
また、先の実施の形態5の図24においては、第2の電流検出器4dによって検出された、第2の電圧印加器3bの下アーム素子を流れる電流に基づいて、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2を検出する場合に、電圧位相角θvで90+120×x(x:0、1、2)度近傍でflag_2が0となり、第2巻線の電流を検出できないことを示した。
よって、図26のような構成を採用した場合にも、flag_1とflag_2は、同時に0となることはなく、flag_1とflag_2の少なくとも一方は、1である。このため、本実施の形態6の構成においても、先の実施の形態1〜5と同様に、flag_1が1の場合、すなわち、第1巻線の電流が検出可能な場合には、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iwに基づいて、第1の電圧指令および第2の電圧指令を演算し、flag_1が0の場合、すなわち、第1巻線の電流が検出不可能な場合には、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2に基づいて、第1の電圧指令および第2の電圧指令を演算することが可能である。
以上のように、実施の形態6によれば、第1の電流検出器は、第1の電圧印加器の直流母線を流れる電流に基づいて第1巻線の電流を検出し、第2の電流検出器は、第2の電圧印加器の各相下アーム素子を流れる電流に基づいて第2巻線の電流を検出する構成を備えている。このような構成によっても、先の実施の形態1〜5と同等の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態6においても、推定和電流演算器14の代わりに、推定和電流演算器14aを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態7.
図27は、本発明の実施の形態7における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。先の実施の形態1〜6と異なるのは、本実施の形態7では、第1巻線の電流を検出するのに第1の電流検出器4cを用い、第2巻線の電流を検出するのに第2の電流検出器4bを用いている点である。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
実施の形態7では、第1の電圧印加器3aは、先の実施の形態5で述べた、図23のSup1、Svp1、Swp1に示すオンオフパターンを発生し、第2の電圧印加器3bは、先の実施の形態1で述べた、図9のSup2、Svp2、Swp2に示すオンオフパターンを発生する。
先の実施の形態5の図24においては、第1の電流検出器4cによって検出された、第1の電圧印加器3aの各相下アーム素子を流れる電流に基づいて、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1を検出する場合に、電圧位相角θvで60+120×x(x:0、1、2)度近傍でflag_1が0となり、第1巻線の電流を検出できないことを示した。
また、先の実施の形態1の図12においては、第2の電流検出器4bによって検出された、第2の電圧印加器3bの直流母線を流れる電流に基づいて、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2を検出する場合に、電圧位相角θvで30+60×x(x:0、1、2、3、4、5)度近傍でflag_2が0となり、第2巻線の電流を検出できないことを示した。
よって、図27のような構成を採用した場合にも、flag_1とflag_2は、同時に0となることはなく、flag_1とflag_2の少なくとも一方は、1である。このため、本実施の形態7の構成においても、先の実施の形態1〜5と同様に、flag_1が1の場合、すなわち、第1巻線の電流が検出可能な場合には、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1に基づいて、第1の電圧指令および第2の電圧指令を演算し、flag_1が0の場合、すなわち、第1巻線の電流が検出不可能な場合には、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2に基づいて、第1の電圧指令および第2の電圧指令を演算することが可能である。
以上のように、実施の形態7によれば、第1の電流検出器は、第1の電圧印加器の各相下アーム素子を流れる電流に基づいて第1巻線の電流を検出し、第2の電流検出器は、第2の電圧印加器の直流母線を流れる電流に基づいて第2巻線の電流を検出する構成を備えている。このような構成によっても、先の実施の形態1〜6と同等の効果を得ることができる。
また、本実施の形態7においても、推定和電流演算器14の代わりに、推定和電流演算器14aを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態8.
図28は、本発明の実施の形態8における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。先の実施の形態1の構成と比較すると、本実施の形態8の構成は、第2の検出可否判定器13aをさらに備えるとともに、制御部5bの内部構成が異なっている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
第2の検出可否判定器13aは、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づいて、第2巻線の電流が検出可能であるか否かを判定する第2の検出可否判定信号flag_2を出力する。
先の実施の形態1において、第2の電流検出器4bが第2の電圧印加器3bの直流母線を流れる電流に基づいて第2巻線の電流を検出する場合に、第2の中間相電圧Emid2が第1の閾値Vs1以下、かつ第2の閾値Vs2以上であるとき、第2巻線の電流を検出可能であり、第2の中間相電圧Emid2が第1の閾値Vs1超、または第2の閾値Vs1未満ならば、第2巻線の電流を検出不可能であることを説明した。
以上の説明に基づいて、本実施の形態8において新たに追加された第2の検出可否判定器13aの機能について説明する。図29は、本発明の実施の形態8における第2の検出可否判定器13aの一連動作を示したフローチャートである。ステップS7000aにおいて、第2の検出可否判定器13aは、第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’に基づいて、第2中間相電圧Emid2を演算する。
ステップS7000bにおいて、第2の検出可否判定器13aは、第2中間相電圧Emid2が第1の所定値Vs1以下であるか否かを判定し、「YES」であれば、ステップS7000cへ進み、「NO」であれば、ステップS7000eへ進む。
ステップS7000cに進んだ場合には、第2の検出可否判定器13aは、第2中間相電圧Emid2が第2の所定値Vs2以上であるか否かを判定し、「YES」であればステップS7000dへ進み、「NO」であればステップS7000eへ進む。
ステップS7000dに進んだ場合には、第2の検出可否判定器13aは、第2の検出可否判定信号flag_2に1を代入する。一方、ステップS7000eに進んだ場合には、第2の検出可否判定器13aは、第2の検出可否判定信号flag_2に0を代入する。
続いて、本実施の形態8における制御部5bについて、制御部5aからの変更点を中心に、説明する。制御部5b内の推定和電流演算器14bは、第1巻線の電流Iu1、Iv1、Iw1と、flag_1と、第2巻線の電流Iu2、Iv2、Iw2と、flag_2とに基づいて、推定和電流を算出する。
図30は、本発明の実施の形態8における推定和電流演算器14bによる一連処理を示したフローチャートである。ステップS7100において、推定和電流演算器14bは、第1の検出可否判定信号flag_1が1と等しいか否かを判定する。そして、推定和電流演算器14bは、ステップS7100においてflag_1が1に等しく、「YES」である場合には、ステップS7101へ進む。
そして、ステップS7101に進んだ場合には、推定和電流演算器14bは、第2の検出可否判定信号flag_2が1と等しいか否かを判定する。そして、推定和電流演算器14bは、ステップS7101においてflag_2が1に等しく、「YES」である場合には、ステップS7102へ進む。
そして、ステップS7102に進んだ場合には、推定和電流演算器14bは、第1巻線の電流Id1と第2巻線の電流Id2の和をIdsum_calに、第1巻線の電流Iq1と第2巻線の電流Iq2の和をIqsum_calに代入する。
一方、推定和電流演算器14bは、ステップS7100において、flag_1が1に等しくなく、「NO」である場合、または、ステップS7101において、flag_2が1に等しくなく、「NO」である場合には、処理の初めに戻り、推定和電流Idsum_calおよびIqsum_calとして、前回値を保持する。
図31は、本発明の実施の形態8における推定和電流演算器14bの内部構成を示すブロック図の一例である。論理積演算器7206は、flag_1とflag_2の論理積をとり、flag_allを出力する。推定和電流演算器14bは、入力Id1、Id2、Iq1、Iq2、flag_allに対して、Idsum_cal、Iqsum_calを出力する。
加算器7200は、Id1とId2を加算して、Idsum_tmpを出力する。切換器7202は、flag_allに従い、加算器7200により今回算出されたIdsum_tmp、または前回の出力値であるIdsum_calのいずれかを選択切り替えして出力する。
すなわち、加算器7200は、flag_allが0の場合、つまり第1巻線の電流または第2巻線の電流を検出不可能と判定している場合には、Idsum_calの前回値を出力し、flag_allが1の場合、つまり第1巻線の電流と第2巻線の電流を検出可能と判定している場合には、Idsum_tmpを出力する。
同様に、加算器7201は、Iq1とIq2を加算して、Iqsum_tmpを出力する。切換器7203は、flag_allに従い、加算器7201により今回算出されたIqsum_tmp、または前回の出力値であるIqsum_calのいずれかを選択切り替えして出力する。
すなわち、加算器7201は、flag_allが0の場合、つまり第1巻線の電流または第2巻線の電流を検出不可能と判定している場合には、Iqsum_calの前回値を出力し、flag_allが1の場合、つまり第1巻線の電流と第2巻線の電流を検出可能と判定している場合には、Iqsum_tmpを出力する。
切替器7cは、第1の検出可否判定信号flag_1、第2の検出可否判定信号flag_2、第1巻線の電流Id1、Iq1、第2巻線の電流Id2、Iq2に基づいて、回転二軸上の電流Id1’、Iq1’および回転二軸上の電流Id2’、Iq2’を出力する。
具体的には、切替器7cは、第1の検出可否判定信号flag_1に基づいて、第1巻線の電流が検出可能と判定された場合には、第1巻線の電流Id1、Iq1を、それぞれ回転二軸座標上の電流Id1’、Iq1’として出力する。
また、切替器7cは、第1の検出可否判定信号flag_1に基づいて、第1巻線の電流が検出不可能と判定された場合には、第2巻線の電流Id2、Iq2と推定和電流Idsum_cal、Iqsum_calから、それぞれ回転二軸座標上の電流Id1’、Iq1’を、上式(1)、(2)で算出して出力する。
また、切替器7cは、第2の検出可否判定信号flag_2に基づいて、第2巻線の電流が検出可能と判定された場合には、第2巻線の電流Id2、Iq2を、それぞれ回転二軸座標上の電流Id2’、Iq2’として出力する。
また、切替器7cは、第2の検出可否判定信号flag_2に基づいて、第2巻線の電流が検出不可能と判定された場合には、第1巻線の電流Id1、Iq1と推定和電流Idsum_cal、Iqsum_calから、それぞれ回転二軸座標上の電流Id2’、Iq2’を、下式(27)、(28)で算出して出力する。
Id2’=Idsum_cal−Id1 (27)
Iq2’=Iqsum_cal−Iq1 (28)
以上のように、実施の形態8によれば、第1の検出可否判定信号flag_1および第2の検出可否判定信号flag_2に基づいて、検出不可能な巻線の電流を推定する構成を備えている。このような構成により、反対の巻線の電流に含まれる電気角6次の電流リプル成分を検出電流に重畳することなく、第1の電圧指令および第2の電圧指令を得ることができる。
先の実施の形態1〜7では、第1巻線の電流が検出不可能な場合に、第2巻線の電流および推定和電流を用いて、第1の電圧指令を演算していた。この場合、先の図12(b)に示したように、第1巻線の電流が検出不可能な(flag_1=0)場合に相当する、電圧位相角θvで60×x(x:0、1、2、3、4、5)度近傍では、第2巻線の電流と推定和電流を用いて、回転二軸上の電流を得ていた。
これに対して、本実施の形態8では、第1の検出可否判定器に加えて、第2の検出可否判定器を設けた構成を備えている。このような構成により、先の図12(d)において、第2巻線の電流が検出不可能な場合に、第1巻線の電流および推定和電流を用いて第2の電圧指令を演算できる。
この結果、本実施の形態8によれば、先の実施の形態1〜7の効果に加えて、第2巻線の電流の制御性能を向上させ、交流回転機1aより発生するトルクリップルや振動、騒音を低減できるといったさらなる効果を得ることができる。
また、先の実施の形態2を参照することによって、第2の検出可否判定器における、第2巻線の電流の検出可否判定方法として、第2最大相電圧と第2中間相電圧との差、第2中間相電圧と第2最小相電圧との差を演算し、それらの値が第3の所定値未満となった場合に、第2巻線の電流を検出不可と判定することもできる。
また、先の実施の形態3、4を参照することによって、第1の電圧指令と第2の電圧指令の少なくとも一方から電圧位相角θvを求め、第2巻線の電流の検出判定の可否を判定することによっても、先の実施の形態1と同等の効果を得ることができる。
また、本実施の形態8においても、推定和電流演算器14bの代わりに、推定和電流演算器14aに相当するものを用いても、同様の効果が得られる。
実施の形態9.
図32は、本発明の実施の形態9における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。本実施の形態9の構成は、先の実施の形態8の構成と比較すると、制御部5bの代わりに制御部5cを用いている点が異なっている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
加算器801aは、回転二軸上の電流Id1’と回転二軸上の電流Id2’との加算値(Id1’+Id2’)を出力する。
加算器801bは、回転二軸上の電流Iq1’と回転二軸上の電流Iq2’との加算値(Iq1’+Iq2’)を出力する。
減算器802aは、回転二軸上の電流Id1’を回転二軸上の電流Id2’で減算した値(Id1’−Id2’)を出力する。
減算器802bは、回転二軸上の電流Iq1’を回転二軸上の電流Iq2’で減算した値(Iq1’−Iq2’)を出力する。
乗算器803aは、加算器801aから出力された加算値(Id1’+Id2’)をK1倍し、和電流Id_sumとして出力する。ここで、K1は、0.5である。
乗算器803bは、加算器801bから出力された加算値(Iq1’+Iq2’)をK1倍し、和電流Iq_sumを出力する。ここで、K1は、0.5である。
乗算器804aは、減算器802aから出力された減算値(Id1’−Id2’)をK2倍し、差電流delta_Idを出力する。ここで、K2は、0.5である。
乗算器804bは、減算器802bから出力された減算値(Iq1’−Iq2’)をK2倍し、差電流delta_Iqを出力する。ここで、K2は、0.5である。
減算器805aは、交流回転機1aのd軸電流指令Id*と和電流Id_sumとの偏差dId_sumを演算する。
減算器805bは、交流回転機1aのq軸電流指令Iq*と和電流Iq_sumとの偏差dIq_sumを演算する。
制御器806aは、P制御器やPI制御器などを用いて、それら制御器の比例ゲインKpd_sumと偏差dId_sumの乗算値に基づいて、偏差dId_sumを零に制御するように、和電圧Vd_sumを出力する。
制御器806bは、P制御器やPI制御器などを用いて、それら制御器の比例ゲインKpq_sumと偏差dIq_sumの乗算値に基づいて、偏差dIq_sumを零に制御するように、和電圧Vd_sumを出力する。
制御器806cは、P制御器やPI制御器などを用いて、それら制御器の比例ゲインKpd_deltaと偏差delta_dIdの乗算値に基づいて、差電流delta_Idを零に制御するように、差電圧delta_Vdを出力する。
制御器806dは、P制御器やPI制御器などを用いて、それら制御器の比例ゲインKpq_deltaと偏差delta_dIqの乗算値に基づいて、差電流delta_Iqを零に制御するように、差電圧delta_Vqを出力する。
加算器807aは、和電圧Vd_sumと差電圧delta_Vdとを加算した値を第1の電圧指令Vd1として出力する。
加算器807bは、和電圧Vq_sumと差電圧delta_Vqとを加算した値を第1の電圧指令Vq1として出力する。
減算器808aは、和電圧Vd_sumを差電圧delta_Vdで減算した値を第2の電圧指令Vd2として出力する。
減算器808bは、和電圧Vq_sumを差電圧delta_Vqで減算した値を第2の電圧指令Vq2として出力する。
続いて、本実施の形態9における制御部5cの動作を詳細に説明する。第1の検出可否判定信号flag_1、第1の検出可否判定信号flag_2がともに1である場合、すなわち、第1巻線の電流、第2巻線の電流がともに検出可能と判定された場合には、回転二軸上の電流Id1’、Iq1’は、第1巻線の電流Id1、Iq1に等しく、回転二軸上の電流Id2’、Iq2’は、第2巻線の電流Id2、Iq2に等しい。
よって、和電流Id_sum、Iq_sum、および差電流delta_Id、delta_Iqは、それぞれ下式(29)〜(32)のようになる。
Id_sum=K1×(Id1’+Id2’)
=K1×(Id1+Id2) (29)
Iq_sum=K1×(Iq1’+Iq2’)
=K1×(Iq1+Iq2) (30)
delta_Id=K2×(Id1’−Id2’)
=K2×(Id1−Id2) (31)
delta_Iq=K2×(Iq1’−Iq2’)
=K2×(Iq1−Iq2) (32)
よって、和電流は、第1の電流検出器4aによって検出された第1巻線の電流と、第2の電流検出器4bによって検出された第2巻線の電流との和で表され、差電流は、第1の電流検出器4aによって検出された第1巻線の電流と、第2の電流検出器4bによって検出された第2巻線の電流との差で表される。
和電流Id_sum、Iq_sumと、和電流ゲインに基づいて、和電圧Vd_sum、Vq_sumが演算され、差電流delta_Id、delta_Iqと、差電流ゲインに基づいて、差電圧delta_Vd、delta_Vqが演算される。さらに、加算器807a、807bおよび減算器808a、808bによって、第1の電圧指令Vd1、Vq1、第2の電圧指令Vd2、Vq2が演算される。
ここで、交流回転機1aの第1の3相巻線U1、V1、W1と、第2の3相巻線U2、V2、W2は、電気的に接続されていないが、磁気的に互いに結合されている。従って、第2の3相巻線には、第1巻線の電流の微分値と、第1巻線と第2巻線間の相互インダクタンスとの積に比例する電圧が発生する。一方、第1の3相巻線には、第2巻線の電流の微分値と、第1巻線と第2巻線間の相互インダクタンスとの積に比例する電圧が発生する。すなわち、第1巻線と第2巻線は、磁気的に干渉している。
これに対し、本実施の形態9においては、和電流、差電流に基づいて、第1の電圧指令Vd1、Vq1、および第2の電圧指令Vd2、Vq2が演算されている。この結果、第1巻線の電流と第2巻線の電流がともに検出可能な場合には、第1巻線の電圧指令Vd1、Vq1は、第1の電流検出器4aによって検出された第1巻線の電流に加えて、第2の電流検出器4bによって検出された第2巻線の電流も考慮して演算される。
同様に、第2の電圧指令Vd2、Vq2は、第2の電流検出器4bによって検出された第2巻線の電流に加えて、第1の電流検出器4aによって検出された第1巻線の電流も考慮して演算される。従って、本実施の形態9の構成を備えることで、第1巻線と第2巻線の磁気的な干渉に対して、より安定な制御系を構築できる。
次に、第1の検出可否判定信号flag_1が0、かつ第2の検出可否判定信号flag_2が1である場合、すなわち、第1巻線の電流が検出不可能、かつ第2巻線の電流が検出可能と判定された場合には、回転二軸上の電流Id1’は、推定和電流Idsum_calから第2巻線の電流Id2を減じたもの、Iq1’は、推定和電流Idsum_calから第2巻線の電流Iq2を減じたものに等しく、また、回転二軸上の電流Id2’、Iq2’は、第2巻線の電流Id2、Iq2に等しい。
よって、和電流Id_sum、Iq_sum、および差電流delta_Id、delta_Iqは、それぞれ下式(33)〜(36)のようになる。
Id_sum=K1×(Id1’+Id2’)
=K1×Idsum_cal (33)
Iq_sum=K1×(Iq1’+Iq2’)
=K1×Iqsum_cal (34)
delta_Id=K2×(Id1’−Id2’)
=K2×(Idsum_cal−2×Id2) (35)
delta_Iq=K2×(Iq1’−Iq2’)
=K2×(Iqsum_cal−2×Iq2) (36)
上式(33)〜(36)より、和電流は、推定和電流演算器14bによって得られた推定和電流で表され、差電流は、推定和電流と第2の電流検出器4bによって検出された第2巻線の電流の2倍との差で表される。
よって、推定和電流で表される和電流Id_sum、Iq_sumと和電流ゲインに基づいて和電圧Vd_sum、Vq_sumが演算され、推定和電流と第2巻線の電流の2倍の差で表される差電流delta_Id、delta_Iqと差電流ゲインに基づいて差電圧delta_Vd、delta_Vqが演算される。
次に、第1の検出可否判定信号flag_1が1、かつ第2の検出可否判定信号flag_2が0である場合、すなわち、第1巻線の電流が検出可能、かつ第2巻線の電流が検出不可能と判定された場合には、回転二軸上の電流Id1’、Iq1’は、第1巻線の電流Id1、Iq1に等しく、回転二軸上の電流Id2’は、推定和電流Idsum_calから第1巻線の電流Id1を減じたもの、Iq2’は、推定和電流Iqsum_calから第2巻線の電流Iq1を減じたものに等しい。
よって、和電流Id_sum、Iq_sum、および差電流delta_Id、delta_Iqは、それぞれ下式(37)〜(40)のようになる。
Id_sum=K1×(Id1’+Id2’)
=K1×Idsum_cal (37)
Iq_sum=K1×(Iq1’+Iq2’)
=K1×Iqsum_cal (38)
delta_Id=K2×(Id1’−Id2’)
=K2×(2×Id1−Idsum_cal) (39)
delta_Iq=K2×(Iq1’−Iq2’)
=K2×(2×Iq1−Iqsum_cal) (40)
上式(37)〜(40)より、和電流は、推定和電流演算器14bによって得られた推定和電流で表され、差電流は、第1の電流検出器4aによって検出された第1巻線の電流の2倍と推定和電流の差で表される。
よって、推定和電流で表される和電流Id_sum、Iq_sumと和電流ゲインに基づいて和電圧Vd_sum、Vq_sumが演算され、第1巻線の電流の2倍と推定和電流の差で表される差電流delta_Id、delta_Iqと差電流ゲインに基づいて差電圧delta_Vd、delta_Vqが演算される。
先の実施の形態1で説明したように、高出力を得るために100%より大きい変調率としている場合には、第1巻線の電流と第2巻線の電流には、位相が異なる電気角6次の電流リプルが発生する。
両巻線の位相差が30degの場合には、先の図14に示したように、相殺される関係となり、和電流としては、変動が抑制される方向に寄与する一方、差電流としては、各巻線の電流リプルに対して倍の振幅の電気角6次の電流変動が生じる。つまり、本実施の形態9における方式によって制御することにより、第1巻線の電流リプルと第2巻線の電流リプルの位相差を考慮できる。このため、和電流を安定的に保った上で、差電流を電気角6次で振動させることが可能となる。
差電流を0とした場合には、位相が反転した電流を用いて電圧指令を生成するので、不要な電流リプルが重畳され、両巻線の電流リプルが大きくなる。しかしながら、本方式では、それぞれの巻線の電気角6次の電流リプルにおいて、所望の位相が得られる。このため、位相差巻線によるトルクリプル低減効果を発揮することができる。
なお、本実施の形態9では、位相差30degとしたときの電気角6次の電流リプルを説明したが、他の位相差の場合についても、同様の効果を得られる。
また、高変調率の場合に発生する電気角6次の電流リプルについて説明したが、誘起電圧に高調波成分を含む場合など、各巻線の電流に高調波成分が含まれる場合においても、同様の効果を得られる。
また、差電流ゲインKpd_delta、Kpq_deltaを第1の電圧指令、第2の電圧指令、和電圧、または交流回転機1aの回転速度の少なくとも1つに基づいて変動させることによって、第1の検出可否判定信号flag_1、第2の検出可否判定信号flag_2の0から1、または1から0への切替時における差電流delta_Id、delta_Iqの脈動による差電圧delta_Vd、delta_Vqへの脈動を低減させることができる。
図33は、本発明の実施の形態9において、差電流ゲインを、第1の電圧指令に基づいて変動させる状態を示した図である。図33では、差電流ゲインKpd_delta、Kpq_deltaを、第1の電圧指令の振幅V1に応じて変動させる場合を例示している。
第1の電圧指令の振幅V1が、閾値Vsa1以下の場合には、差電流ゲインKpd_delta、Kpq_deltaを、それぞれKpd_delta1、Kpq_delta1として一定値としている。一方、第1の電圧指令の振幅V1が、Vsa1超の場合には、差電流ゲインKpd_delta、Kpq_deltaを、それぞれ直線上に低減させている。
閾値Vsa1および直線の傾きは、発生する脈動レベルに応じて決定すればよい。ここで、第1の電圧指令の振幅V1は、下式(41)によって求めればよい。
また、上式(41)の平方根の演算によって、制御部5cを演算するCPUの演算負荷が大きくなる場合には、図33の横軸を、振幅の2乗に設定することもできる。また、図33の横軸を、下式(42)で与えられる第2の電圧指令の振幅V2や、下式(43)で与えられる和電圧の振幅V_sumを用いる、あるいはV1、V2、V_sumを組み合わせて用いてもよい。
和電流ゲインKpd_sum、Kpq_sumを第1の電圧指令、第2の電圧指令、和電圧の少なくとも1つに基づいて変動させることによって、第1の検出可否判定信号flag_1、第2の検出可否判定信号flag_2の切替時における和電流Id_sum、delta_sumの脈動による和電圧Vd_sum、Vq_sumへの脈動を低減させることができる。
図34は、本発明の実施の形態9において、和電流ゲインを、第1の電圧指令に基づいて変動させる状態を示した図である。図34では、和電流ゲインKpd_sum、Kpq_sumを、第1の電圧指令の振幅V1に応じて変動させる場合を例示している。第1の電圧指令の振幅V1が、閾値Vsa1以下の場合には、和電流ゲインKpd_sum、Kpq_sumを、それぞれKpd_sum1、Kpq_sum1として一定値としている。一方、第1の電圧指令の振幅V1が、Vsa1超の場合には、和電流ゲインKpd_sum、Kpq_sumを、それぞれ直線上に低減させている。閾値Vsa1および直線の傾きは、発生する脈動レベルに応じて決定すればよい。
また、図34の横軸を、上式(42)で与えられる第2の電圧指令の振幅V2や式(43)で与えられる和電圧の振幅V_sum、またはV1、V2、V_sumを組み合わせたものを用いてもよい。また、第1の電圧指令、第2の電圧指令、和電圧の振幅に限らず、実効値に応じて切り替えてもよい。
また、図33、図34の横軸を、交流回転機1aの回転速度に設定し、速度に関する所定の閾値以下では、和電流ゲインや差電流ゲインを一定とし、所定の閾値超では、和電流ゲインや差電流ゲインを速度に応じて下げるように構成してもよく、同様の効果を得られる。
実施の形態10.
図35は、本発明の実施の形態10における交流回転機の制御装置の全体構成を示す図である。本実施の形態10の構成では、先の実施の形態9に対して、第1の電流検出器4aを第1の電流検出器4cに置き換え、かつ第2の電流検出器4bを第2の電流検出器4dに置き換えている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
先の実施の形態9における図32の構成では、第1の電流検出器4a、第2の電流検出器4bを用いていた。このため、先の図12に示したように、電圧位相角θvが60×x(x:0、1、2、3、4、5)度近傍で、第1の電流検出器4aによる第1巻線の電流の検出が不可能となり、電圧位相角θvが30+60×x(x:0、1、2、3、4、5)度近傍で、第2の電流検出器4bによる第2巻線の電流の検出が不可能となる。
これに対して、本実施の形態10では、第1の電流検出器4c、第1の電流検出器4dを用いている。これにより、図24に示したように、電圧位相角θvが60+120×x(x:0、1、2)度近傍で、第1の電流検出器4cによる第1巻線の電流の検出が不可能となり、電圧位相角θvが90+120×x(x:0、1、2)度近傍で、第2の電流検出器による第2巻線の電流の検出が不可能となる。この結果、本実施の形態10によれば、先の実施の形態9に比べて、第1、第2の電流検出器のうちの一方で電流検出が不可能となる電圧位相区間を少なくすることができる。
よって、第1巻線の電流と第2巻線の電流がともに検出可能な割合が増える。この結果、第1巻線の電圧指令Vd1、Vq1は、第1の電流検出器によって検出された第1巻線の電流に加えて、第2の電流検出器によって検出された第2巻線の電流も考慮して演算される割合が増える。同様に、第2の電圧指令Vd2、Vq2は、第2の電流検出器によって検出された第2巻線の電流に加えて、第1の電流検出器によって検出された第1巻線の電流も考慮して演算される割合が増える。これにより、先の実施の形態9の構成に比べ、第1巻線と第2巻線の磁気的な干渉に対して、より安定な制御系を構築できるとという効果を得ることができる。
なお、上述した実施の形態1〜10では、第1巻線と第2巻線を有する交流回転機を制御対象とする場合ついて説明したが、本発明は、このような交流回転機に限定されるものではない。第1巻線、第2巻線に加えて、さらに第3巻線以上の第N巻線(N:3以上の整数)を有する交流回転機に対しても、実施の形態1〜10で述べた第1巻線、第2巻線を、それぞれ第1巻線、第2〜N巻線と置き換えることで、本発明による制御方法をそのまま適用できる。
また、上述した実施の形態1〜10では、30度の位相差を持つ第1の3相巻線と第2の3相巻線を有する交流回転機1aを制御対象とする場合ついて説明したが、本発明は、このような交流回転機に限定されるものではない。位相差が30+60×N(N:整数)を持つ第1の3相巻線と第2の3相巻線を有する交流回転機、あるいは第1の3相巻線と第2の3相巻線に位相差を有しない交流回転機に対しても、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’と第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’とに位相差を設けることで、本発明による制御方法が適用できる。
例えば、位相差30度のとき、第1の電圧指令Vu1’、Vv1’、Vw1’と第2の電圧指令Vu2’、Vv2’、Vw2’は、先の図12と同様となる。この結果、第1の検出可否判定信号flag_1と第2の検出可否判定信号flag_2が同時に0となることはなく、本発明における制御方法が適用可能である。
また、交流回転機の制御装置を備えたでんでおパワーステアリングの制御に対して、実施の形態1〜10で述べた交流回転機の制御装置を適用することが可能である。電動パワーステアリング装置では、ステアリング系の操舵トルクを補助するトルクを、交流回転機が発生するように、第1の電圧指令および第2の電圧指令を演算する制御部が必要である。
そして、このような電動パワーステアリング装置の制御部として、本発明による交流回転機の制御装置を適用することで、スイッチング周期Tswを維持した状態で、振幅の高い第1の電圧指令および第2の電圧指令を演算することが可能となる。この結果、スイッチング周期の逆数で与えられるスイッチング周波数を可聴域から外し、静音性を維持した状態で、同一体積比で、より高出力なステアリング系を構築することが可能となる。換言すると、同一出力比を得るために、装置をより小型化することが可能となり、搭載性の良いステアリング系が実現できる効果を得ることができる。