JP6217129B2 - 二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池 - Google Patents

二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池 Download PDF

Info

Publication number
JP6217129B2
JP6217129B2 JP2013102495A JP2013102495A JP6217129B2 JP 6217129 B2 JP6217129 B2 JP 6217129B2 JP 2013102495 A JP2013102495 A JP 2013102495A JP 2013102495 A JP2013102495 A JP 2013102495A JP 6217129 B2 JP6217129 B2 JP 6217129B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
secondary battery
polymer
porous film
weight
composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013102495A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014222649A (ja
Inventor
智一 佐々木
智一 佐々木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Zeon Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Zeon Corp filed Critical Zeon Corp
Priority to JP2013102495A priority Critical patent/JP6217129B2/ja
Publication of JP2014222649A publication Critical patent/JP2014222649A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6217129B2 publication Critical patent/JP6217129B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Cell Separators (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池に関する。
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源として用いられている二次電池には、リチウムイオン二次電池が多用されている。リチウムイオン二次電池は、例えば電解質の種類によって分類できる。具体例としては、電解質としてポリマー電解質を用いた二次電池、電解質としてポリマー電解質と無機材料とを組み合わせた複合電解質を用いた二次電池(特許文献1参照)、電解質として電解液を用いた二次電池などが挙げられる(特許文献2参照)。
このうち、電解液を用いた二次電池では、一般に、正極と負極との間の短絡を防ぐために、セパレータが設けられる。また、このセパレータには、必要に応じて、多孔膜が設けられることがある。セパレータに多孔膜を設けることにより、異物によるセパレータの破損を防止できるの、二次電池の安全性を高めることができる。
また、前記の多孔膜を、電極の極板上に設けることも提案されている(特許文献2参照)。電極が多孔膜を備える場合、電極から脱落した電極活物質が異物となってセパレータを破損させることを防止できる。
特許第3643289号公報 国際公開第2009/096528号
リチウムイオン二次電池では、充放電に伴って、電極の表面にリチウム金属が析出することがある。このリチウム金属は二次電池の内部抵抗を高める原因となりうる。そのため、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性及び低温出力特性等の性能の向上のためには、このリチウム金属の析出を抑制することが望ましい。
また、前記の多孔膜は、例えば、多孔膜の材料及び溶媒を含む多孔膜組成物を用いて製造される。この多孔膜組成物は、一般に、長期間保存しておくと粘度が変化し、多孔膜組成物に含まれる各成分の分散性が低下する傾向がある。分散性に劣る多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜は、電池性能の低下の原因となりうるので、多孔膜組成物としては経時的に粘度変化を生じ難いものが望まれる。
本発明は上述した課題に鑑みて創案されたもので、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現でき、且つ、経時的に粘度変化を生じ難い二次電池用多孔膜組成物;充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現できる二次電池用電極及び二次電池用セパレータ;並びに、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、非導電性粒子、重合体及び溶媒を含む二次電池用多孔膜組成物であって、(i)非導電性粒子が所定の体積平均粒子径を有し、(ii)非導電性粒子が所定の組成を有し、(iii)重合体が所定の重量平均分子量を有し、且つ(iv)重合体が所定のガラス転移温度を有するものが、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現でき、且つ、経時的に粘度変化を生じ難いことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 非導電性粒子、重合体及び溶媒を含み、
前記非導電性粒子の体積平均粒子径が、1μm〜50μmであり、
前記非導電性粒子の組成が、Li(1+m+n)AlTi(2−n)Si(3−n)12(0≦m≦1、0≦n≦1)であり、
前記重合体の重量平均分子量が、5000〜1000000であり、
前記重合体のガラス転移温度が、−50℃〜100℃である、二次電池用多孔膜組成物。
〔2〕 前記重合体が、架橋性単量体単位を含み、
前記重合体における架橋性単量体単位の割合が、0.1重量%〜2重量%である、〔1〕記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔3〕 前記重合体が、反応性界面活性剤単位を含み、
前記重合体における反応性界面活性剤単位の割合が、0.1重量%〜15重量%である、〔1〕又は〔2〕記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔4〕 前記二次電池用多孔膜組成物の表面張力が、20mN/m〜60mN/mである、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔5〕 前記溶媒が、水である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔6〕 粒子状バインダーを含む、〔5〕記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔7〕 前記粒子状バインダーが、ジエン系重合体またはアクリレート系重合体である、〔6〕記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔8〕 さらに、カルボキシメチルセルロース塩を含む、〔5〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物。
〔9〕 集電体及び前記集電体上に設けられた電極合剤層を備える極板と、
前記極板上に〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物を塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用電極。
〔10〕 セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物を塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用セパレータ。
〔11〕 正極、負極及び電解液を備え、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、〔9〕記載の二次電池用電極である、二次電池。
〔12〕 正極、負極、セパレータ及び電解液を備え、
前記セパレータが、〔10〕記載の二次電池用セパレータである、二次電池。
本発明の二次電池用多孔膜組成物によれば、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現できる。また、本発明の二次電池用多孔膜組成物は、経時的に粘度変化を生じ難い。
本発明の二次電池用電極及び二次電池用セパレータによれば、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現できる。
本発明の二次電池は、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
また、以下の説明において、(メタ)アクリル酸には、アクリル酸及びメタクリル酸の両者が含まれる。また、(メタ)アクリレートには、アクリレート及びメタクリレートの両者が含まれる。さらに、(メタ)アクリロニトリルには、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの両者が含まれる。
さらに、以下の説明において、ある物質が水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.5重量%未満であることをいう。また、ある物質が非水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上であることをいう。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
さらに、「極板」とは、剛性のある板状部材だけでなく、可とう性のあるシート及びフィルムも含む。
[1.二次電池用多孔膜組成物]
本発明の二次電池用多孔膜組成物(以下、適宜「多孔膜組成物」ということがある。)は、非導電性粒子、重合体(以下、適宜「特定重合体」ということがある。)及び溶媒を含む。
〔1.1.非導電性粒子〕
非導電性粒子は、多孔膜に充填される成分であり、この非導電性粒子同士の隙間が多孔膜の孔を形成しうる。非導電性粒子が非導電性を有するので、多孔膜を絶縁性にでき、そのため、二次電池における短絡を防止することができる。また、通常、非導電性粒子は高い剛性を有し、これにより、多孔膜の機械的強度を高めることができる。そのため、熱によってセパレータ基材に収縮しようとする応力が生じた場合でも、多孔膜がその応力に抗することができるので、セパレータの収縮による短絡の発生を防止することが可能である。
本発明に係る非導電性粒子は、下記の式(I)で表される組成を有する。
Li(1+m+n)AlTi(2−n)Si(3−n)12 (I)
式(I)において、「m」は、0≦m≦1の数を表す。より詳しくは、mは、通常0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、また、通常1以下、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下の数を表す。
また、式(I)において、「n」は、0≦n≦1の数を表す。より詳しくは、nは、通常0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、また、通常1以下、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下の数を表す。
式(I)で表される組成を有することにより、非導電性粒子は、リチウムイオン伝導度に優れる。そのため、多孔膜をリチウムイオンが透過しやすくできるので、リチウム金属の析出を抑制することができる。また、通常は、二次電池の内部抵抗を小さくすることができる。さらに、前記式(I)で表される組成を有することから分かるように、本発明に係る非導電性粒子は金属含有量が従来の一般的な非導電性粒子(例えばアルミナ等)に比べて少ない。そのため、通常は多孔膜の絶縁性を高めることができるので、短絡を更に確実に防止して、不良率を低減することができる。
本発明に係る非導電性粒子としては、結晶質のものを用いてもよいが、通常は非晶質のものを用いる。例えば、非導電性粒子としてガラス質のものを用いてもよい。また、結晶質の非導電性粒子と非晶質の非導電性粒子を組み合わせて用いてもよい。さらに、一粒の非導電性粒子が結晶質の部分及び非晶質の部分の両方を含んでいてもよい。
非導電性粒子として結晶質のものを用いる場合、非導電性粒子の組成は、粉末X線回折法により測定しうる。他方、非導電性粒子としてガラス等の非晶質のものを用いる場合、粉末X線回折法により当該非導電性粒子全体の組成を測定することは難しい。しかし、その場合でも、通常は、その非導電性粒子の主結晶相の組成は、非導電性粒子の全体の組成と同様になる。また、非導電性粒子として非晶質のものを用いる場合、粉末X線回折法によって測定されうる主結晶相の組成が、前記式(I)を満たすことが好ましい。
非導電性粒子の体積平均粒子径は、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。非導電性粒子の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、均一性に優れた多孔膜を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、分散性に優れた多孔膜を得ることができる。ここで、体積平均粒子径とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
また、非導電性粒子のイオン伝導度は、高いことが好ましい。すなわち、本発明に係る非導電性粒子はリチウム金属の析出を抑制する観点から、リチウムイオン等のイオンの伝導性に優れることが望ましい。非導電性粒子の具体的なイオン伝導度は、好ましくは1×10−5S/cm以上、より好ましくは1×10−4S/cm以上、特に好ましくは1×10−3S/cm以上である。
ここで、非導電性粒子のイオン伝導度は、次の方法により測定しうる。
非導電性粒子の粉体を、直径12mm、圧力20kNで圧粉成形し、厚みd(mm)の粉体ペレットを得る。このペレットを銅箔で形成された集電体で挟み、25℃の電解液に浸漬する。この際、電解液としては、濃度1.0mol/LのLiPF溶液を用いる。また、このLiPF溶液の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC/DEC=1/2;体積比)を用いる。浸漬したペレットについて、0.001Hz〜1000000Hzにおける交流インピーダンスを測定し、その測定値から抵抗Rを計算する。さらに、この抵抗Rとペレットの厚みdとから、イオン伝導度=R×1/dを求める。
非導電性粒子の製造方法に制限は無い。例えば、式(I)に示される元素を含む原料を融解させて溶融ガラスを得る工程と、溶融ガラスを固化して母ガラスを得る工程と、母ガラスを熱処理して式(I)で表される組成を有するガラスセラミックスを得る工程と、得られたガラスセラミックスを粉砕する工程とを有する製造方法により製造しうる。
前記の製造方法において、母ガラスは、通常、LiO−Al−TiO−SiO−P系の組成を有する。この際、母ガラスの酸化物換算の組成比としては、mol%表示で、LiOは12%〜18%、Alは5%〜10%、TiOは35%〜45%、SiOは1%〜10%、Pは30%〜40%であることが好ましい。したがって、原料は、このような組成の母ガラスが得られるように、各原料の量を調整することが好ましい。これにより、溶融ガラスをキャストして容易に母ガラスを得ることができ、さらに、この母ガラスを熱処理して得られる前記式(I)で表される組成を有するガラスセラミックスにおいて高いリチウムイオン伝導度を発現させることができる。
多孔膜における非導電性粒子の量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上であり、好ましくは95重量%以下である。多孔膜における非導電性粒子の量をこの範囲内とすることにより、非導電性粒子同士が接触部を有しつつ、イオンの移動が阻害されない程度に、非導電性粒子同士の隙間を形成できる。したがって、非導電性粒子の量を前記範囲に納めることで、多孔膜の強度を向上させ、二次電池の短絡を安定して防止することができる。
〔1.2.特定重合体〕
特定重合体は、通常、多孔膜において非導電性粒子同士、非導電性粒子とセパレータ基材、並びに、非導電性粒子と極板を結着させるバインダーとして機能しうる。また、特定重合体が溶媒に溶解できる場合、多孔膜組成物において特定重合体は非導電性粒子の表面を覆う被膜を形成して、非導電性粒子の分散性を高める作用も奏しうる。
本発明に係る多孔膜組成物において、特定重合体としては、重量平均分子量が5000〜1000000であり、且つ、ガラス転移温度が−50℃〜100℃のものを用いる。このような範囲の重量平均分子量及びガラス転移温度を有する特定重合体を前述のような大きさの非導電性粒子と組み合わせて用いることにより、多孔膜組成物の分散安定性を高めることができる。ここで分散安定性とは、組成物の分散性が経時的に変化し難いことを表し、具体的には時間が経過しても組成物の粘度が変化し難いことを表す。また、通常は、多孔膜における各成分の分散性を高めることができるので、一部の成分が偏在することによりリチウムイオンの移動が妨げられることを防止できるため、移動が妨げられたリチウムイオンの析出を抑制することが可能である。
特定重合体の重量平均分子量は、より詳しくは、通常5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上であり、また、通常1000000以下、好ましくは500000以下、より好ましくは250000以下である。特定重合体の分子量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物の分散安定性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、優れた流動性を得ることができる。ここで、特定重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)によって測定しうる。例えば、特定重合体が水溶性の重合体である場合は、GPCによって、アセトニトリルの10体積%水溶液に0.85g/mlの硝酸ナトリウムを溶解させた溶液を展開溶媒としたポリエチレンオキサイド換算の値として求めうる。
また、特定重合体のガラス転移温度は、より詳しくは、通常−50℃以上、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−10℃以上であり、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。特定重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、優れた密着性を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、優れた柔軟性を得ることができる。特定重合体のガラス転移温度は、例えば、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
特定重合体としては、水溶性の重合体を用いることが好ましい。多孔膜用組成物の溶媒として水を用いた場合に、その水に特定重合体を溶解させることにより、非導電性粒子の分散性を顕著に高めることができる。
特定重合体は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含むことが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を意味する。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位は、特定重合体の非導電性粒子、極板及びセパレータ基材への密着強度を高めうるカルボキシ基(−COOH基)を含み、強度が高い構造単位であるので、極板及びセパレータ基材に対する多孔膜の密着強度を高めたり、多孔膜の強度を向上させたりできる。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、エチレン性不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。エチレン性不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸等のマレイン酸メチルアリル;マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキル等のマレイン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましい。これらを用いることにより、特定重合体の水に対する分散性をより高めることができる。また、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、特定重合体の水への溶解性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との密着強度を高めることができる。
また、特定重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を意味する。ただし、(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でもフッ素を含有するものは、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体として、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは区別する。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は強度が高いので、特定重合体の分子を安定化させることができる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく、エチルアクリレート及びブチルアクリレートがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との密着強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の電解液への膨潤性を抑制して、多孔膜のイオン伝導性を高くできる。
また、特定重合体は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことが好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とは、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことにより、特定重合体は弾性変形が可能となるので、多孔膜の強度を高めることができる。また、特定重合体がフッ素を含むようにすることで、多孔膜の水に対する親和性を低減させることができるので、通常は、多孔膜の水分量を減らす効果も得られる。
フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、下記の式(II)で表される単量体が挙げられる。
Figure 0006217129
前記の式(II)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
前記の式(II)において、Rは、フッ素原子を含有する炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、通常18以下である。また、Rが含有するフッ素原子の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
式(II)で表されるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体の例を挙げると、(メタ)アクリル酸フッ化アルキル、(メタ)アクリル酸フッ化アリール、及び(メタ)アクリル酸フッ化アラルキルが挙げられる。なかでも(メタ)アクリル酸フッ化アルキルが好ましい。このような単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸β−(パーフルオロオクチル)エチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、(メタ)アクリル酸1H,1H,9H−パーフルオロ−1−ノニル、(メタ)アクリル酸1H,1H,11H−パーフルオロウンデシル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸3[4〔1−トリフルオロメチル−2、2−ビス〔ビス(トリフルオロメチル)フルオロメチル〕エチニルオキシ〕ベンゾオキシ]2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルが挙げられる。また、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体及びフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体におけるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜のイオン伝導性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜のセパレータ基材又は極板への密着強度を高くできる。
また、特定重合体は、架橋性単量体単位を含むことが好ましい。架橋性単量体単位とは、架橋性単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、特定重合体の分子量を高め、電解液に対する特定重合体の膨潤度が過度に高くならないようにできる。これにより、二次電池の低温出力特性を良好にできる。
架橋性単量体としては、重合した際に架橋構造を形成しうる単量体を用いうる。架橋性単量体の例としては、1分子あたり2以上の反応性基を有する単量体を挙げることができる。より具体的には、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体、及び1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が挙げられる。
単官能性単量体に含まれる熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が、架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
熱架橋性の架橋性基としてエポキシ基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン等のジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン等のアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてN−メチロールアミド基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてオキセタニル基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、及び2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどが挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてオキサゾリン基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。
2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、メチレンビスアクリルアミド、及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。
中でも特に、架橋性単量体としては、エチレンジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びグリシジルメタクリレートが好ましく、エチレンジメタクリレートがより好ましい。
また、架橋性単量体及び架橋性単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、特定重合体の分子量を高め、特定重合体の電解液による膨潤を抑制し、多孔膜の膨らみを抑制できる。一方、上限値以下にすることにより、特定重合体の水に対する可溶性を高め、分散性を良好にすることができる。
また、特定重合体は、反応性界面活性剤単位を含むことが好ましい。反応性界面活性剤単位とは、反応性界面活性剤を重合して形成される構造を有する構造単位である。反応性界面活性剤単位は、特定重合体の一部を構成し、且つ界面活性剤として機能しうる。したがって、反応性界面活性剤単位を含むことにより、特定重合体の溶媒に対する溶解性及び多孔膜組成物の分散性を高めることができる。
反応性界面活性剤は、他の単量体と共重合できる重合性の基を有し、且つ、界面活性基(親水性基及び疎水性基)を有する単量体である。通常、反応性界面活性剤は重合性不飽和基を有し、この基が重合後に疎水性基としても作用する。反応性界面活性剤が有する重合性不飽和基の例としては、ビニル基、アリル基、ビニリデン基、プロペニル基、イソプロペニル基、及びイソブチリデン基が挙げられる。かかる重合性不飽和基の種類は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
反応性界面活性剤は、親水性を発現する部分として、通常は親水性基を有する。反応性界面活性剤は、親水性基の種類により、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に分類される。
アニオン系の親水性基の例としては、−SOM、−COOM、及び−PO(OH)が挙げられる。ここでMは、水素原子又はカチオンを示す。カチオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミンのアンモニウムイオン;並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアンモニウムイオン;などが挙げられる。
カチオン系の親水基の例としては、−Cl、−Br、−I、及び−SOORなどが挙げられる。ここでRは、アルキル基を示す。Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
ノニオン系の親水基の例としては、−OHが挙げられる。
好適な反応性界面活性剤の例としては、下記の式(III)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006217129
式(III)において、Rは2価の結合基を表す。Rの例としては、−Si−O−基、メチレン基及びフェニレン基が挙げられる。
式(III)において、Rは親水性基を表す。Rの例としては、−SONHが挙げられる。
式(III)において、nは1以上100以下の整数を表す。
好適な反応性界面活性剤の別の例としては、エチレンオキシドを重合して形成される構造を有する構造単位及びブチレンオキシドを重合して形成される構造を有する構造単位を有し、さらに末端に、末端二重結合を有するアルケニル基及び−SONHを有する化合物(例えば、商品名「ラテムルPD−104」及び「ラテムルPD−105」、花王株式会社製)を挙げることができる。
反応性界面活性剤及び反応性界面活性剤単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体における反応性界面活性剤単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。反応性界面活性剤単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物の分散性を向上させることができ、均一な多孔膜を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜中の水分量を低く抑えられるので、多孔膜の耐久性を向上させることができる。
特定重合体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、架橋性単量体単位及び反応性界面活性剤単位以外に任意の構造単位を含んでいてもよい。このような任意の構造単位は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、架橋性単量体又は反応性界面活性剤と共重合可能な任意の単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体において、任意の構造単位の割合は、好ましくは0重量%〜10重量%、より好ましくは0重量%〜5重量%である。
特定重合体は、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で重合して、製造しうる。この際、単量体組成物中の各単量体の比率は、通常、特定重合体における構造単位の割合と同様にする。
水系溶媒としては、特定重合体の分散が可能なものを用いうる。通常、常圧における沸点が好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、また、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下の水系溶媒から選ばれる。以下、その水系溶媒の例を挙げる。以下の例示において、溶媒名の後のカッコ内の数字は常圧での沸点(単位℃)であり、小数点以下は四捨五入または切り捨てられた値である。
水系溶媒の例としては、水(100);ダイアセトンアルコール(169)、γ−ブチロラクトン(204)等のケトン類;エチルアルコール(78)、イソプロピルアルコール(82)、ノルマルプロピルアルコール(97)等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)、メチルセロソルブ(124)、エチルセロソルブ(136)、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル(152)、ブチルセロソルブ(171)、3−メトキシー3メチル−1−ブタノール(174)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(150)、ジエチレングリコールモノブチルピルエーテル(230)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188)等のグリコールエーテル類;並びに1,3−ジオキソラン(75)、1,4−ジオキソラン(101)、テトラヒドロフラン(66)等のエーテル類が挙げられる。中でも水は可燃性がなく、重合体の分散体が容易に得られやすいという観点から特に好ましい。また、主溶媒として水を使用して、特定重合体の分散状態が確保可能な範囲において上記記載の水以外の水系溶媒を混合して用いてもよい。
重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いうる。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いうる。中でも、高分子量体が得やすいこと、並びに、特定重合物がそのまま水に分散した状態で得られるので再分散化の処理が不要であり、そのまま多孔膜組成物の製造に供することができることなど、製造効率の観点から、中でも乳化重合法が特に好ましい。
乳化重合法は、通常は常法により行う。例えば、「実験化学講座」第28巻、(発行元:丸善(株)、日本化学会編)に記載された方法で行う。すなわち、攪拌機および加熱装置付きの密閉容器に水と、分散剤、乳化剤、架橋剤などの添加剤と、重合開始剤と、単量体とを所定の組成になるように加え、容器中の組成物を攪拌して単量体等を水に乳化させ、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始する方法である。あるいは、上記組成物を乳化させた後に密閉容器に入れ、同様に反応を開始させる方法である。
重合開始剤の例としては、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;α,α’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過硫酸アンモニウム;並びに過硫酸カリウムが挙げられる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
乳化剤、分散剤、重合開始剤などは、これらの重合法において一般的に用いられるものであり、通常はその使用量も一般に使用される量とする。
重合温度および重合時間は、重合方法及び重合開始剤の種類などにより任意に選択しうる。通常、重合温度は約30℃以上、重合時間は0.5時間〜30時間程度である。
また、アミン類などの添加剤を重合助剤として用いてもよい。
重合により、通常は特定重合体を含む反応液が得られる。得られた反応液は通常は酸性であり、特定重合体は水系溶媒に分散していることが多い。このように水系溶媒に分散した特定重合体は、その反応液のpHを、例えば7〜13に調整にすることにより、水系溶媒に可溶にできることがある。また、こうして得られた反応液から特定重合体を取り出してもよい。しかし、通常は、水系媒体として水を用い、この水に溶解又は分散した状態の特定重合体を用いて多孔膜組成物を製造する。
反応液をpH7〜pH13にアルカリ化する方法としては、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水溶液;水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液等のアルカリ土類金属水溶液;アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液を混合する方法が挙げられる。前記のアルカリ水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
特定重合体の量は、非導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。特定重合体の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜のセパレータ基材及び極板への密着強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜のイオン伝導性を高くできる。
〔1.3.溶媒〕
溶媒としては、多孔膜組成物において非導電性粒子を分散させ、且つ、特定重合体を溶解又は分散させうるものを用いうる。このような溶媒としては、水を用いてもよく、有機溶媒を用いてもよい。中でも、特定重合体を溶解させうる溶媒を用いると、特定重合体の一部が非導電性粒子の表面に吸着することによって非導電性粒子が特定重合体の層で覆われるので、非導電性粒子の分散性を向上させることができ、好ましい。
溶媒としては、例えば、水;シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;などが挙げられる。中でも、水及びN−メチルピロリドンが好ましい。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多孔膜組成物における溶媒の量は、多孔膜組成物の固形分濃度が所望の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的な多孔膜組成物の固形分濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。ここで、固形分とは、多孔膜組成物の乾燥を経て残留する物質のことをいう。
〔1.4.粒子状バインダー〕
多孔膜組成物が溶媒として水を含む場合、その多孔膜組成物は粒子状バインダーを含むことが好ましい。粒子状バインダーは多孔膜において非導電性粒子同士、非導電性粒子とセパレータ基材、並びに、非導電性粒子と極板を結着させるバインダーとして機能しうるので、多孔膜の機械的強度を高めることができる。また、粒子状バインダーは、その形状が粒子状であるので、非導電性粒子に対して面ではなく点で結着できる。そのため、非導電性粒子の表面が粒子状バインダーにより覆われる面積を小さくできるので、非導電性粒子が有する高いイオン伝導度を有効に活用できる。
粒子状バインダーとしては、通常、重合体の粒子を用いる。また、この重合体としては、通常、非水溶性の重合体を用いる。粒子状バインダーを形成する非水溶性の重合体としては、ジエン系重合体又はアクリレート系重合体を用いることが好ましい。
ジエン系重合体は、脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体である。また、脂肪族共役ジエン単量体単位は、脂肪族共役ジエン単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。脂肪族共役ジエン単量体単位は剛性が低く柔軟な構造単位であるので、脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体を粒子状バインダーとして用いることにより、多孔膜とセパレータ基材及び極板との密着性を高めることができる。
脂肪族共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン;直鎖において共役二重結合を有するペンタジエン並びにその置換体;並びに、側鎖において共役二重結合を有するヘキサジエン並びにその置換体;などが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。また、脂肪族共役ジエン単量体及び脂肪族共役ジエン単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ジエン系重合体において、脂肪族共役ジエン単量体単位の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、特に好ましくは55重量%以下である。脂肪族共役ジエン単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材及び極板との十分な密着強度を得たり、多孔膜の耐電解液性を高めたりすることができる。
また、ジエン系重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。芳香族ビニル単量体単位は、芳香族ビニル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。芳香族ビニル単量体単位は安定であるので、芳香族ビニル単量体単位を含むジエン系重合体の電解液への溶解性を低下させて、多孔膜を安定化させることができる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。ジエン系重合体は、脂肪族共役ジエン単量体単位及び芳香族ビニル単量体単位の両方を含む重合体であることが好ましく、例えばスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。また、芳香族ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ジエン系重合体の製造に脂肪族共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を組み合わせて用いる場合、得られるジエン系重合体には、残留単量体として未反応の脂肪族共役ジエン単量体及び未反応の芳香族ビニル単量体が含まれることがある。その場合、ジエン系重合体が含む未反応の脂肪族共役ジエン単量体の量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。また、ジエン系重合体が含む未反応の芳香族ビニル単量体の量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは200ppm以下である。ジエン系重合体が含む脂肪族共役ジエン単量体の量が前記範囲内であると、多孔膜組成物を基材に塗布及び乾燥させて多孔膜を製造する際に、多孔膜の表面に発泡による荒れが生じたり、臭気による環境負荷を引き起こしたりすることを防止できる。また、ジエン系重合体が含む芳香族ビニル単量体の量が前記範囲内であると、乾燥条件に応じて生じる環境負荷及び多孔膜表面の荒れを抑制でき、更には多孔膜の耐電解液性を高めることができる。
ジエン系重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上であり、好ましくは79.5重量%以下、より好ましくは69重量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の耐電解液性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との十分な密着強度を得ることができる。
また、ジエン系重合体は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含むことが好ましい。ジエン系重合体がエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含むことにより、多孔膜の剥離を安定して防止でき、また、多孔膜の強度を向上させることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の例としては、特定重合体の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。また、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ジエン系重合体におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、特に好ましくは2重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物の安定性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜組成物の粘度が過度に高くなることを防止して、取り扱い性を高めることができる。
ジエン系重合体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した以外にも任意の構造単位を含んでいてもよい。前記の任意の構造単位に対応する単量体の例としては、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、及び不飽和カルボン酸アミド単量体が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、及びα−エチルアクリロニトリルが挙げられる。中でも、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルが好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。中でも、メチルメタクリレートが好ましい。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、及び2−ヒドロキシエチルメチルフマレートが挙げられる。中でも、β−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、及びN,N−ジメチルアクリルアミドが挙げられる。中でも、アクリルアミド、及びメタクリルアミドが好ましい。
さらに、ジエン系重合体は、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を含んでもよい。
アクリレート系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体である。(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、特定重合体の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アクリレート系重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、特に好ましくは97重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めて、多孔膜とセパレータ基材又は極板との密着強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の剛性を高めて、これによっても多孔膜とセパレータ基材又は極板との密着強度を高めることができる。
また、アクリレート系重合体としては、(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を組み合わせて含む共重合体が好ましい。(メタ)アクリロニトリル単量体単位とは、(メタ)アクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位のことを意味する。(メタ)アクリロニトリル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを組み合わせて含むアクリレート系重合体は、酸化還元に安定であるので、高寿命の電池を得やすい。また、アクリレート系重合体を粒子状バインダーとして用いることで、多孔膜の柔軟性が向上し、それによりスリット時及び捲回時に多孔膜から非導電性粒子が脱落することを抑制できる。
アクリレート系重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位として、アクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位だけを含んでいてもよく、メタクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位だけを含んでいてもよく、アクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位とメタクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位の両方を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
アクリレート系重合体が(メタ)アクリロニトリル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを組み合わせて含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に対する(メタ)アクリロニトリル単量体単位の重量比(「(メタ)アクリロニトリル単量体単位/(メタ)アクリル酸エステル単量体単位」で表される重量比)は、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、前記の重量比は、1/99以上が好ましく、2/98以上がより好ましく、また、30/70以下が好ましく、25/75以下がより好ましい。前記重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、粒子状バインダーが電解液に膨潤することにより多孔膜のイオン伝導性が低下することを防止し、二次電池のレート特性の低下を抑制できる。また、上限値以下にすることにより、粒子状バインダーの強度低下による多孔膜の強度低下を防止できる。
また、アクリレート系重合体は、架橋性単量体単位を含んでいてもよい。これにより、粒子状バインダー同士を架橋させたり、特定重合体と粒子状バインダーとを架橋させたりできるので、多孔膜の膨潤を抑制でき、強靱で柔軟な多孔膜が実現できる。
架橋性単量体の例としては、特定重合体の項で挙げた例と同様のものが挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
さらに、架橋性単量体単位は、架橋性単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と共重合することにより、アクリレート系重合体に導入してもよい。また、架橋性単量体単位は、架橋性基を有する化合物(架橋剤)を用いた慣用の変性手段によりアクリレート系重合体に架橋性基を導入することにより、アクリレート系重合体に導入してもよい。
架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、熱又は光により効果を発揮する架橋剤、などが用いられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の中でも、熱架橋性の架橋性基を含有する点で、有機過酸化物、および熱により架橋反応を生じうる架橋剤が好ましい。
アクリレート系重合体における架橋性単量体単位の割合は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位との合計量100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の強度を高くしたり、電解液による多孔膜の膨潤を抑制したりできる。また、上限値以下にすることにより、架橋反応が過度に進行することによる多孔膜の柔軟性の低下を防止できる。
また、アクリレート系重合体は、上述した(メタ)アクリロニトリル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および架橋性基単量体単位以外にも、任意の構造単位を含みうる。これらの任意の構造単位に対応する単量体の例を挙げると、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;アクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアミド系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、上述したような(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を組み合わせて含むことによる利点を顕著に発揮する観点からは、任意の構造単位の量は少ないことが好ましく、任意の構造単位を含まないことが特に好ましい。
粒子状バインダーの体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、また、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。粒子状バインダーの体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の多孔性を高く維持して多孔膜の抵抗を抑制し、電池物性を良好に保つことができる。また、上限値以下にすることにより、非導電性粒子と粒子状バインダーとの結着点を多くして結着性を高くできる。
粒子状バインダーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−40℃以上、特に好ましくは−30℃以上であり、また、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、特に好ましくは20℃以下である。粒子状バインダーのガラス転移温度(Tg)を前記範囲に収めることにより、多孔膜の柔軟性が上がり、電極及びセパレータの耐屈曲性が向上し、多孔膜が割れることによる不良率を下げることができる。また、多孔膜、セパレータ及び電極をロールに巻き取る時及び捲回時にヒビ、欠け等を抑制することもできる。粒子状バインダーのガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
粒子状バインダーの量は、非導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。粒子状バインダーの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の強度を高くすることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の透気度を抑制して二次電池のレート特性を良好にすることができる。また、粒子状バインダーの量を前記の範囲とすることは、非導電性粒子同士の結着性、並びに、多孔膜とセパレータ基材及び極板との密着強度を高くできる点、多孔膜の柔軟性を高くできる点、並びに、多孔膜のイオン伝導性を高くできる点でも意義がある。
特定重合体と粒子状バインダーとの重量比(特定重合体/粒子状バインダー)は、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、前記の重量比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。前記重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、非導電性粒子の分散性と多孔膜の強度を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜組成物の安定を向上させることができる。
粒子状バインダーの製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの、いずれの方法を用いてもよい。中でも、水中で重合をすることができ、そのまま多孔膜組成物の材料として使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、粒子状バインダーを製造する際、その反応系には分散剤を含ませることが好ましい。粒子状バインダーは、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合の際に反応系に含まれていた添加剤等の任意の成分が含まれていてもよい。
〔1.5.任意の成分〕
多孔膜組成物は、上述した非導電性粒子、特定重合体、溶媒及び粒子状バインダー以外に、任意の成分を含みうる。このような任意の成分としては、電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものを用いうる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
例えば、多孔膜組成物が水を含む場合、多孔膜組成物は更にカルボキシメチルセルロース塩を含むことが好ましい。カルボキシメチルセルロース塩を含むことにより、多孔膜組成物の粘度を高めて、塗布性を良好にすることができる。また、多孔膜組成物における非導電性粒子等の粒子の分散安定性を高めることができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、カルボシキメチルセルロース塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多孔膜組成物におけるカルボキシメチルセルロース塩の量は、非導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。カルボキシメチルセルロース塩の量を前記の範囲にすることにより、多孔膜組成物の粘度を取り扱い易い好適な範囲にすることができる。また、通常、カルボキシメチルセルロース塩は多孔膜にも含まれることになる。ここで、カルボキシメチルセルロース塩の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の強度を高くすることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の柔軟性を良好にすることができる。
また、例えば、多孔膜組成物は、イソチアゾリン系化合物、キレート化合物、ピリチオン化合物、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、及び、電解液分解抑制の機能を有する電解液添加剤などを含んでいてもよい。
〔1.6.多孔膜組成物の物性〕
多孔膜組成物の表面張力は、好ましくは20mN/m以上、より好ましくは25mN/m以上、特に好ましくは30mN/m以上であり、また、好ましくは60mN/m以下、より好ましくは55mN/m以下、特に好ましくは50mN/m以下である。多孔膜組成物の表面張力を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物をセパレータ基材に塗布したときに得られる多孔膜組成物の膜のレベリング性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜組成物の極板及びセパレータ基材等の基材に対する濡れ性を良好にできる。
多孔膜組成物の表面張力は、例えば、分散剤、湿潤剤、レベリング剤などにより調整できる。
多孔膜組成物では非導電性粒子の分散性が高いので、その多孔膜組成物の粘度を容易に低くできる。多孔膜組成物の具体的な粘度は、多孔膜を製造する際の塗布性を良好にする観点から、10mPa・s〜2000mPa・sが好ましい。ここで、前記の粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
〔1.7.多孔膜組成物の製造方法〕
多孔膜組成物の製造方法は、特に限定はされないが、通常は、上述した各成分を混合して得られる。混合順序には特に制限は無い。また、混合方法にも特に制限は無い。通常は、非導電性粒子を速やかに分散させるため、混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散及び混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。中でも、高い分散シェアを加えることができることから、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置が特に好ましい。
[2.二次電池用多孔膜]
本発明の多孔膜組成物を適切な基材上に塗布及び乾燥することにより、多孔膜を製造することができる。すなわち、多孔膜組成物を基材上に塗布して当該多孔膜組成物の膜を得る工程と、その膜から乾燥によって溶媒を除去する工程とを含む製造方法により、多孔膜を製造できる。これにより、多孔膜組成物の固形分により形成された膜として、多孔膜が得られる。
基材は、多孔膜組成物の膜を形成する対象となる部材である。基材に制限は無く、例えば剥離フィルムの表面に多孔膜組成物の膜を形成し、その膜から溶媒を除去して多孔膜を形成し、剥離フィルムから多孔膜を剥がしてもよい。しかし、通常は、多孔膜を剥がす工程を省略して製造効率を高める観点から、基材として電池の構成要素を用いる。このような電池の構成要素の例としては、極板及びセパレータ基材などが挙げられる。
塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔膜が得られる点で、ディップ法及びグラビア法が好ましい。
また、乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風等の風による乾燥;真空乾燥;赤外線、遠赤外線、及び電子線などの照射による乾燥法;などが挙げられる。
乾燥の際の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。乾燥温度を前記範囲の下限以上にすることにより多孔膜組成物からの溶媒及び低分子化合物を効率よく除去できる。また、上限以下とすることにより基材の熱による収縮を抑えることができる。
乾燥時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上、特に好ましくは10秒以上であり、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下、特に好ましくは3分以下である。乾燥時間を前記範囲の下限以上にすることにより、多孔膜組成物から溶媒を十分に除去できるので、電池の出力特性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、製造効率を高めることができる。
多孔膜の製造方法においては、上述した以外の任意の操作を行ってもよい。
例えば、金型プレス及びロールプレス等のプレス方法によって、多孔膜に加圧処理を施してもよい。加圧処理を施すことにより、基材と多孔膜との結着性を向上させることができる。ただし、多孔膜の空隙率を好ましい範囲に保つ観点では、圧力および加圧時間が過度に大きくならないように適切に制御することが好ましい。
また、残留水分除去のため、例えば真空乾燥やドライルーム内で乾燥することが好ましい。
さらに、例えば加熱処理することも好ましく、これにより重合体成分に含まれる熱架橋基を架橋させて、結着力を高めることができる。
多孔膜は、非導電性粒子の間に空隙を有することにより、適度な多孔性を有する。このため、多孔膜は電解液を吸液できる。多孔膜では特定重合体が非導電性粒子の表面を覆うようにして存在すると考えられるが、その特定重合体が前記の空隙を全て埋めることは無いので、特定重合体によっても多孔膜の多孔性が損なわれることは無い。このため、多孔膜中には電解液が浸透できる。ここで、本発明に係る多孔膜においては非導電性粒子が高いイオン伝導度を有し、且つ、多孔膜に含まれる各成分は分散性に優れる。このため、多孔膜を透過するリチウムイオン等の金属イオンは多孔膜を円滑に透過できるので、その金属イオンの析出を抑制することが可能である。
多孔膜の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。多孔膜の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより、多孔膜の耐熱性を高くすることができる。また上限値以下とすることにより、多孔膜によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。
[3.二次電池用電極]
本発明の二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)は、集電体及び電極合剤層を備える極板と、多孔膜とを備える。
〔3.1.集電体〕
集電体は、電気導電性を有し且つ電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。中でも、耐熱性に優れるとの観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。その中でも、正極用集電体としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用集電体としては銅が特に好ましい。
集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001mm以上0.5mm以下のシート状のものが好ましい。
集電体は、電極合剤層との密着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、例えば、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用されうる。
また、電極合剤層との密着強度及び導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
〔3.2.電極合剤層〕
電極合剤層は、集電体上に設けられた層であり、電極活物質を含む。電極活物質の種類は二次電池の種類に応じて様々であり、ここでは、特にリチウムイオン二次電池用の電極活物質について説明する。ただし、電極活物質は以下で挙げるものに限定されない。
リチウムイオン二次電池の電極活物質は、電解液中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入又は放出できるものを用いうる。電極活物質は、無機化合物を用いてもよく、有機化合物を用いてもよい。
正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、例えば、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、例えば、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVO等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13等の遷移金属酸化物などが挙げられる。一方、有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性重合体が挙げられる。
さらに、無機化合物及び有機化合物を組み合わせた複合材料からなる正極活物質を用いてもよい。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
さらに、前記の化合物を部分的に元素置換したものを正極活物質として用いてもよい。
これらの正極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、前述の無機化合物と有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
正極活物質の粒子径は、二次電池の他の構成要件との兼ね合いで選択されうる。負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、正極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。正極活物質の体積平均粒子径がこの範囲であると、充放電容量が大きい電池を得ることができ、かつ電極用スラリー組成物および電極を製造する際の取扱いが容易である。
負極活物質は、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性重合体;などが挙げられる。また、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄およびニッケル等の金属並びにこれらの合金;前記金属又は合金の酸化物;前記金属又は合金の硫酸塩;なども挙げられる。また、金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等を使用してもよい。さらに、電極活物質は、機械的改質法により表面に導電材を付着させたものを使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
負極活物質の粒子径は、二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、負極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
電極合剤層は、電極活物質の他に、電極用バインダーを含むことが好ましい。電極用バインダーを含むことにより、電極中の電極合剤層の結着性が向上し、電極の撒回時等の工程においてかかる機械的な力に対する強度が上がる。また、電極中の電極合剤層が集電体及び多孔膜から剥がれにくくなることから、剥れた脱離物による短絡の危険性が小さくなる。
電極用バインダーとしては、例えば重合体を用いうる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などを用いてもよい。さらに、例えば多孔膜用の特定重合体及び粒子状バインダーと同様の重合体を用いてもよい。
さらに、以下に例示する軟質重合体も電極用バインダーとして使用してもよい。すなわち、軟質重合体としては、例えば、
(i)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
(ii)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
(iii)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
(iv)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
(v)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
(vi)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
(vii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
(viii)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
(ix)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体;などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性により官能基を導入したものであってもよい。
また、電極用バインダーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
電極合剤層における電極用バインダーの量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。電極用バインダーの量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から電極活物質が脱落するのを防ぐことができる。
電極合剤層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、電極活物質及び電極用バインダー以外にも、任意の成分が含まれていてもよい。その例を挙げると、導電材、補強材などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン;黒鉛等の炭素粉末;各種金属のファイバー及び箔;などが挙げられる。導電材を用いることにより、電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、サイクル特性等の電池特性を改善できる。
補強材としては、例えば、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
導電材及び補強剤の使用量は、電極活物質100重量部に対して、それぞれ、通常0重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
電極合剤層の厚みは、正極及び負極のいずれも、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
電極合剤層の製造方法は特に制限されない。電極合剤層は、例えば、電極活物質及び溶媒、並びに、必要に応じて電極用バインダー及び任意の成分を含む電極用スラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させて製造しうる。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用しうる。
〔3.3.二次電池用電極が備える多孔膜〕
本発明の電極は、前記の集電体及び電極合剤層を備える極板上に、上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明の電極は、極板と、極板上に多孔膜組成物を塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える。このような電極は、例えば、基材として極板を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、極板の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。ただし、通常は、多孔膜が電極合剤層上に設けられるので、本発明の電極は、集電体、電極合剤層及び多孔膜をこの順に備える。
本発明の電極においては、多孔膜が設けられていることにより、電極合剤層からの電極活物質等の粒子の脱離、電極合剤層の集電体からの剥離、並びに電池の内部短絡を防止することができる。また、本発明の多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜はイオン伝導性に優れるので、本発明の電極を用いることにより、充放電による金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現できる。
[4.二次電池用セパレータ]
本発明の二次電池用セパレータ(以下、適宜「セパレータ」ということがある。)は、セパレータ基材と多孔膜とを備える。
〔4.1.セパレータ基材〕
セパレータ基材としては、例えば、微細な孔を有する多孔性基材を用いうる。このようなセパレータ基材を用いることにより、二次電池において電池の充放電を妨げることなく短絡を防止することができる。セパレータ基材の具体例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微孔膜または不織布などが挙げられる。
セパレータ基材の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。この範囲であると二次電池内でのセパレータ基材による抵抗が小さくなり、また、電池製造時の作業性に優れる。
〔4.2.二次電池用セパレータが備える多孔膜〕
本発明のセパレータは、セパレータ基材上に上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明のセパレータは、セパレータ基材と、前記セパレータ基材上に多孔膜組成物を塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える。このようなセパレータは、例えば、基材としてセパレータ基材を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、セパレータ基材の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。
本発明のセパレータにおいては、多孔膜が設けられていることにより、異物によるセパレータ基材の破損、並びに、熱によるセパレータ基材の収縮を防止できるので、内部短絡を防止して電池の安全性を高めることができる。また、本発明の多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜は、イオン伝導性に優れるので、本発明のセパレータを用いることにより、充放電による金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる二次電池を実現できる。
[5.二次電池]
本発明の二次電池は、正極、負極及び電解液を備える。また、本発明の二次電池は、下記の要件(A)を満たすか、要件(B)を満たすか、要件(A)及び(B)の両方を満たす。
(A)正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電極である。
(B)セパレータを備え、且つ、そのセパレータが本発明のセパレータである。
〔5.1.電極〕
本発明の二次電池は、原則として、正極及び負極の一方又は両方として、本発明の電極を備える。ただし、本発明の二次電池がセパレータとして本発明のセパレータを備える場合には、正極及び負極の両方として本発明の電極以外の電極を備えていてもよい。
〔5.2.セパレータ〕
本発明の二次電池は、原則として、セパレータとして本発明のセパレータを備える。ただし、本発明の二次電池が正極及び負極の少なくとも一方として本発明の電極を備える場合には、セパレータとして本発明のセパレータ以外のセパレータを備えていてもよい。また、本発明の電極が備える多孔膜はセパレータとしての機能を有するので、本発明の電極を備える二次電池においてはセパレータを省略してもよい。
〔5.3.電解液〕
電解液としては、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものを使用しうる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
支持電解質の量は、電解液に対して、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。支持電解質の量をこの範囲に収めることにより、イオン導電度を高くして、二次電池の充電特性及び放電特性を良好にできる。
電解液の溶媒としては、支持電解質を溶解させられるものを用いうる。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、電解液は必要に応じて添加剤を含有しうる。添加剤としては、例えばビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔5.4.二次電池の製造方法〕
本発明の二次電池の製造方法としては、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。また、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、リード板、エキスパンドメタルなどを入れ、過充放電の防止、電池内部の圧力上昇の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネート型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
〔1.リチウム金属の析出量の測定方法〕
実施例及び比較例において製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、そのリチウムイオン二次電池を、−10℃の環境下で、4.2V、1C、1時間の充電の操作を行った。その後、室温、アルゴン100%環境下のグローブボックス内で、リチウムイオン二次電池から負極を取り出した。取り出した負極を観察して、リチウム金属が析出している面積S(cm)を測定した。
測定された面積を、下記の評価基準にて評価した。リチウム金属が析出している面積が小さいほど、充放電によるリチウム金属の析出が少なく、負極が電解液中のリチウムイオンを円滑に受け入れることが可能であることを示す。
(リチウム金属の析出量の評価基準)
A:0≦S<1(cm
B:1≦S<5(cm
C:5≦S<10(cm
D:10≦S<15(cm
E:15≦S<20(cm
F:20≦S≦25(cm
〔2.多孔膜と電極合剤層とのピール強度〕
実施例において製造した多孔膜を備える電極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。
測定されたピール強度を、下記の評価基準にて評価した。測定されたピール強度が大きいほど、多孔膜と電極合剤層との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度が大きいほど、密着強度が大きいことを示す。
(ピール強度の評価基準)
A:10N/m以上
B:8N/m以上10N/m未満
C:6N/m以上8N/m未満
D:4N/m以上6N/m未満
E:4N/m未満
〔3.多孔膜とセパレータ基材とのピール強度〕
実施例において製造した多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池用セパレータを、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。
測定されたピール強度を、下記の評価基準にて評価した。測定されたピール強度が大きいほど、多孔膜とセパレータ基材との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度が大きいほど、密着強度が大きいことを示す。
(ピール強度の評価基準)
A:100N/m以上
B:80N/m以上100N/m未満
C:60N/m以上80N/m未満
D:40N/m以上60N/m未満
E:40N/m未満
〔4.高温サイクル特性の評価方法〕
実施例及び比較例において製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、そのリチウムイオン二次電池に、25℃の環境下で、1Cで4.2Vまで充電を行い、1Cで3.0Vまで放電を行う充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、そのリチウムイオン二次電池に、60℃環境下で、同様の条件で充放電を繰り返し、1000サイクル後の容量C2を測定した。得られた初期容量C0及び1000サイクル後の容量C2から容量維持率ΔC=C2/C0×100(%)を計算した。
計算された容量維持率ΔCを用いて、下記の評価基準によって高温サイクル特性を評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほど、リチウムイオン二次電池が高温サイクル特性に優れ、長寿命であることを示す。
(容量維持率ΔCの評価基準)
A:95%以上
B:90%以上95%未満
C:85%以上90%未満
D:80%以上85%未満
E:80%未満
〔5.低温出力特性の評価方法〕
実施例及び比較例において製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、そのリチウムイオン二次電池に、25℃の環境下で、0.1Cで4.2Vまで5時間の充電を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、そのリチウムイオン二次電池に、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。得られた電圧V0及びV1から電圧降下ΔV=V0−V1を計算した。
計算された電圧降下ΔVを用いて、下記の評価基準によって低温出力特性を評価した。電圧降下ΔVの値が小さいほど、低温出力特性に優れることを示す。
(電圧降下ΔVの評価基準)
A: 200mV未満
B: 200mV以上400mV未満
C: 400mV以上600mV未満
D: 600mV以上800mV未満
E: 800mV以上1000mV未満
F: 1000mV以上
〔6.イオン伝導度の測定方法〕
実施例及び比較例において用いた非導電性粒子の粉体を、直径12mm、圧力20kNで圧粉成形し、厚みd(mm)の粉体ペレットを得た。このペレットを銅箔で形成された集電体で挟み、25℃の電解液に浸漬した。この電解液は、濃度1.0mol/LのLiPF溶液であり、その溶媒はエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(EC/DEC=1/2;体積比)である。浸漬したペレットについて、0.001Hz〜1000000Hzにおける交流インピーダンスを測定し、その測定値から抵抗Rを計算した。さらに、ペレットの厚みdと抵抗Rから、イオン伝導度=R×1/dを求めた。
〔7.多孔膜組成物の表面張力の測定方法〕
実施例及び比較例において製造した多孔膜組成物の表面張力は、自動表面張力計(協和界面科学株式会社製「DY−300」)を用い、白金プレート法により測定した。
〔8.多孔膜組成物の分散安定性の評価方法〕
実施例及び比較例で製造した多孔膜組成物について、B型粘度計により、25℃、回転数60rpmにおける粘度η0を測定した。
その後、多孔膜組成物を25℃で3日間静置した後、再び前記と同様にして粘度η1を測定した。
測定された粘度η0及び粘度η1から、粘度変化率={(η1−η0)/η0}×100(%)を計算した。計算された粘度変化率を用いて、下記の評価基準によって多孔膜組成物の分散安定性を評価した。粘度変化率が小さいほど、その多孔膜組成物は経時的に粘度変化を生じ難く、分散安定性に優れることを示す。
(粘度変化率の評価基準)
A: 20%未満
B: 20%以上50%未満
C: 50%以上100%未満
D: 100%以上
[実施例1]
〔1−1.水溶性重合体の製造〕
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、メタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)30部、エチルアクリレート((メタ)アクリル酸エステル単量体)61.7部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)7.5部、エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(反応性界面活性剤)1部、t−ドデシルメルカプタン0.6部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、水溶性重合体を含む混合物を得た。上記水溶性重合体を含む混合物に、10%アンモニア水を添加してpH8に調整し、水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液を得た。
〔1−2.粒子状バインダーの製造〕
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.0部、スチレン62.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状バインダー(SBR)を含む混合物を得た。この粒子状バインダーを含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって、この粒子状バインダーを含む混合物の未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
〔1−3.負極用スラリー組成物の製造〕
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、シリコン含有活物質としてSiO(平均粒子径:5μm)100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を1.0部、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で2.0部入れ、更にイオン交換水を加えて固形分濃度を75%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、イオン交換水を更に加えて固形分濃度を65%に調整した後、さらに25℃で15分間混合して、混合液を得た。この混合液に、前記工程〔1−2〕の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当で2.0部加え、更にイオン交換水を加えて最終固形分濃度が56%となるように調整し、10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
このスラリー組成物の、JIS K5400 粒ゲージ法による分散度に準拠して測定される、粒が現れ始めるシリコン含有活物質の粒子径は、10μm以下であった。この粒子径が前記のように小さいことから、スラリー組成物を基材に塗布してスラリー組成物の膜を形成する際に、その膜の表面を均一にできることが確認された。
〔1−4.負極の製造〕
前記工程〔1−3〕で得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合剤層の厚みが80μmの、プレス後の負極を得た。
〔1−5.正極用スラリー組成物の製造〕
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、及びバインダーとしてPVDF(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部を混合し、さらにN−メチルピロリドン(NMP)を加えて全固形分濃度を70%に調整した。これをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を得た。
〔1−6.正極の製造〕
前記工程〔1−5〕の正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極を得た。
〔1−7.非導電性粒子の製造〕
原料として(NH)HPO、Al(PO、LiCO、SiO及びTiOを用意した。これらを、酸化物換算のmol%で、Pが35.0%、Alが7.5%、LiOが15.0%、TiOが38.0%、及びSiOが4.5%との組成になるように秤量した。秤量した原料を均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃で撹拌しながら2時間加熱し、熔解させて、ガラス融液を得た。その後、ガラス融液を水中に直接キャストし、母ガラスを得た。この母ガラスに950℃で12時間の熱処理を行うことにより、ガラスセラミックスを得た。
得られたガラスセラミックスの結晶相を粉末X線回折法により測定したところ、Li(1+x+y)AlTi(2−x)Si(3−y)12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。また、得られたガラスセラミックスのイオン伝導度を25℃の室温において測定したところ、1.6×10−3S・cm−1であった。
このガラスセラミックスを、遊星ボールミルを用いて粉砕した後に分級を行ない、体積平均粒子径7μmの非導電性粒子として、高いリチウムイオン伝導度を有するガラスセラミックス粉体Aを得た。
〔1−8.多孔膜組成物の製造〕
前記工程〔1−7〕のガラスセラミックス粉体Aを100部、重合体として前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で2.5部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル社製「1220」)2部、及び、前記工程〔1−2〕の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当で2部となるように採って混合し、更に水を加えて固形分濃度が40質量%になるように混合して、スラリー状の多孔膜組成物を製造した。この多孔膜組成物の表面張力を測定したところ、42.5mN/mであった。また、この多孔膜組成物について、上述した要領で粘度変化率を測定した。
〔1−9.多孔膜の製造〕
セパレータ基材として、単層のポリプロピレン製セパレータ(セルガード社製「セルガード2500」)を用意した。このセパレータ基材上に、前記工程〔1−8〕の多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、セパレータ基材を20m/分の速度で60℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、セパレータ基材上に多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。
得られたリチウムイオン二次電池用セパレータについて、上述した要領で、セパレータ基材と多孔膜とのピール強度を測定した。
〔1−10.リチウムイオン二次電池の製造〕
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。前記工程〔1−6〕で得た正極を、4×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。前記工程〔1−9〕で得たセパレータを、5×5cm正方形に切り出し、前記正極の正極合剤層の面上に、配置した。さらに、前記工程〔1−4〕で得たプレス後の負極を、4.2×4.2cmの正方形に切り出し、これをセパレータ上に、負極の負極合剤層側の面がセパレータに向かい合うように配置した。このアルミニウム包材外装に、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池について、上述した要領でリチウム金属の析出量、容量維持率ΔC及び電圧降下ΔVを測定した。
[実施例2]
メタクリル酸の量を22部に変更し、エチルアクリレートの量を53.7部に変更したこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例2で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例3]
メタクリル酸の量を48部に変更し、エチルアクリレートの量を49.7部に変更したこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例3で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例4]
エチルアクリレートの量を62.3部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.2部に変更したこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例4で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例5]
エチルアクリレートの量を60.7部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を1.8部に変更したこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例5で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例6]
反応性界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムの代わりにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルを用いたこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例6で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例7]
原料として(NH)HPO、Al(PO、LiCO、SiO及びTiOを用意した。これらを、酸化物換算のmol%で、Pが27.0%、Alが5.5%、LiOが18.0%、TiOが43.0%、及びSiOが6.5%となるように秤量した。秤量した原料を均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃で撹拌しながら2時間加熱し、熔解させて、ガラス融液を得た。その後、ガラス融液を水中に直接キャストし、母ガラスを得た。この母ガラスを950℃で12時間の熱処理を行うことにより、ガラスセラミックスを得た。
得られたガラスセラミックスの結晶相を粉末X線回折法により測定したところ、Li(1+x+y)AlTi(2−x)Si(3−y)12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。また、得られたガラスセラミックスのイオン伝導度を25℃の室温において測定したところ、2.5×10−3S・cm−1であった。
このガラスセラミックスを、遊星ボールミルを用いて粉砕した後に分級を行ない、体積平均粒子径10μmの非導電性粒子として、高いリチウムイオン伝導度を有するガラスセラミックス粉体Bを得た。
前記工程〔1−8〕において、ガラスセラミックス粉体Aの代わりに前記のガラスセラミックス粉体Bを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例8]
原料として(NH)HPO、Al(PO、LiCO、SiO及びTiOを用意した。これらを、酸化物換算のmol%で、Pが24.0%、Alが7.5%、LiOが20.0%、TiOが39.0%、及びSiOが9.5%となるように秤量した。秤量した原料を均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃で撹拌しながら2時間加熱し、熔解させて、ガラス融液を得た。その後、ガラス融液を水中に直接キャストし、母ガラスを得た。この母ガラスを950℃で12時間の熱処理を行うことにより、目的のガラスセラミックスを得た。
得られたガラスセラミックスの結晶相を粉末X線回折法により測定したところ、Li(1+x+y)AlTi(2−x)Si(3−y)12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。また、得られたガラスセラミックスのイオン伝導度を25℃の室温において測定したところ、3.1×10−3S・cm−1であった。
このガラスセラミックスを、遊星ボールミルを用いて粉砕した後に分級を行ない、体積平均粒子径4μmの非導電性粒子として、高いリチウムイオン伝導度を有するガラスセラミックス粉体Cを得た。
前記工程〔1−8〕において、ガラスセラミックス粉体Aの代わりに前記のガラスセラミックス粉体Cを用いた
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例9]
前記工程〔1−4〕で製造したプレス後の負極の負極合剤層上に、前記工程〔1−8〕で製造した多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を20m/分の速度で100℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、集電体及び負極合剤層を備えた極板上に多孔膜を備える負極を得た。
得られた負極について、上述した要領で、多孔膜と負極合剤層とのピール強度を測定した。
前記工程〔1−10〕において、セパレータとして単層のポリプロピレン製セパレータ(セルガード社製「セルガード2500」)を用い、さらに、負極として実施例9で製造した前記多孔膜を備える負極を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例10]
前記工程〔1−8〕において、水溶性重合体を含む水溶液の量を固形分相当で0.3部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例11]
前記工程〔1−8〕において、水溶性重合体を含む水溶液の量を固形分相当で4.7部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例12]
1,3−ブタジエン、イタコン酸、スチレン及び2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート95部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部及びN−メチロールアクリルアミド1部を単量体として用いたこと以外は前記工程〔1−2〕と同様にして、粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例12で製造したこの粒子状バインダーを含む水分散液を、前記工程〔1−2〕の粒子状バインダーを含む水分散液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例13]
1,3−ブタジエンの量を29部に変更し、スチレンの量を67部に変更したこと以外は前記工程〔1−2〕と同様にして、粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
前記工程〔1−8〕において、実施例13で製造したこの粒子状バインダーを含む水分散液を、前記工程〔1−2〕の粒子状バインダーを含む水分散液の代わりに用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例14]
前記工程〔1−7〕のガラスセラミックス粉体Aを100部、及び、重合体として前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で2.5部となるように採って混合し、溶媒置換により水をN−メチルピロリドンに置換して、固形分濃度が40質量%のスラリー状の多孔膜組成物を製造した。この多孔膜組成物の表面張力を測定したところ、32.5mN/mであった。また、この多孔膜組成物について、上述した要領で粘度変化率を測定した。
前記工程〔1−9〕において、前記工程〔1−8〕の多孔膜組成物の代わりに実施例14で製造した前記多孔膜組成物を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[実施例15]
前記工程〔1−7〕のガラスセラミックス粉体Aを100部、重合体として前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で2.5部、及び、ポリフッ化ビニリデンを2部となるように採って混合し、溶媒置換により水をN−メチルピロリドンに置換して、固形分濃度が40質量%のスラリー状の多孔膜組成物を製造した。この多孔膜組成物の表面張力を測定したところ、25.8mN/mであった。また、この多孔膜組成物について、上述した要領で粘度変化率を測定した。
前記工程〔1−9〕において、前記工程〔1−8〕の多孔膜組成物の代わりに実施例15で製造した前記多孔膜組成物を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[比較例1]
メタクリル酸の量を18部に変更し、エチルアクリレートの代わりにブチルアクリレート82部を用い、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート及びエチレンジメタクリレートを使用しないで、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を用いたこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、比較例1で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。また、前記工程〔1−8〕において、ガラスセラミックス粉体Aの代わりにAl粒子(体積平均粒子径5μm、イオン伝導度5.5×10−6S/cm)を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[比較例2]
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート及びエチレンジメタクリレートを使用しなかったこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、比較例2で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。また、前記工程〔1−8〕において、ガラスセラミックス粉体Aの代わりにポリスチレン粒子(体積平均粒子径6.5μm、イオン伝導度9.8×10−7S/cm)を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[比較例3]
原料として(NH)HPO、Al(PO、LiCO、SiO及びTiOを用意した。これらを、酸化物換算のmol%で、Pが35.0%、Alが7.5%、LiOが15.0%、TiOが38.0%、及びSiOが4.5%となるように秤量した。秤量した原料を均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃で撹拌しながら2時間加熱し、熔解させて、ガラス融液を得た。その後、ガラス融液を水中に直接キャストし、母ガラスを得た。この母ガラスを1450℃で12時間の熱処理を行うことにより、ガラスセラミックスを得た。
析出したガラスセラミックスの結晶相を粉末X線回折法により測定したところ、Li(1+x+y)AlTi(2−x)Si(3−y)12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。また、得られたガラスセラミックスのイオン伝導度を25℃の室温において測定したところ、5.5×10−4S・cm−1であった。
このガラスセラミックスを、遊星ボールミルを用いて粉砕した後に分級を行ない、体積平均粒子径0.5μmの非導電性粒子として、リチウムイオン伝導性を有するガラスセラミックス粉体Dを得た。
メタクリル酸の量を18部に変更し、エチルアクリレートの代わりにブチルアクリレート82部を用い、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート及びエチレンジメタクリレートを使用しないで、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を用いたこと以外は前記工程〔1−1〕と同様にして、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
前記工程〔1−8〕において、比較例3で製造したこの水溶性重合体を含む水溶液を、前記工程〔1−1〕の水溶性重合体を含む水溶液の代わりに用いた。また、前記工程〔1−8〕において、ガラスセラミックス粉体Aの代わりに前記のガラスセラミックス粉体Dを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1〜表4に示す。
下記の表1〜表4において、略称の意味は以下の通りである。
単量体I:エチレン性不飽和カルボン酸単量体
MAA:メタクリル酸
単量体II:(メタ)アクリル酸エステル単量体
EA:エチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
単量体III:フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体
TFEMA:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート
単量体IV:架橋性単量体
EDMA:エチレンジメタクリレート
単量体V:反応性界面活性剤
POAAESA:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム
POAAE:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル
SDBS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
Mw:重量平均粒子径
Tg:ガラス転移温度
NMP:N−メチルピロリドン
SBR:スチレンブタジエンゴム
ACL:アクリルゴム
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
Figure 0006217129
Figure 0006217129
Figure 0006217129
Figure 0006217129
[検討]
前記の実施例及び比較例から分かるように、本発明の多孔膜組成物は、経時的に粘度変化を生じ難い。また、本発明の多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜を備える二次電池は、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる。

Claims (11)

  1. 非導電性粒子、重合体及び溶媒を含み、
    前記非導電性粒子の体積平均粒子径が、1μm〜50μmであり、
    前記非導電性粒子の組成が、Li(1+m+n)AlTi(2−n)Si(3−n)12(0≦m≦1、0≦n≦1)であり、
    前記重合体の重量平均分子量が、5000〜1000000であり、
    前記重合体のガラス転移温度が、−50℃〜100℃であり、
    前記重合体が、反応性界面活性剤単位を含み、
    前記重合体における前記反応性界面活性剤単位の割合が、0.2重量%以上であり、
    前記重合体101重量部に対する前記反応性界面活性剤単位の割合が、1重量部以下である、二次電池用多孔膜組成物。
  2. 前記重合体が、架橋性単量体単位を含み、
    前記重合体における架橋性単量体単位の割合が、0.1重量%〜2重量%である、請求項1記載の二次電池用多孔膜組成物。
  3. 前記二次電池用多孔膜組成物の表面張力が、20mN/m〜60mN/mである、請求項1又は2記載の二次電池用多孔膜組成物。
  4. 前記溶媒が、水である、請求項1〜のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物。
  5. 粒子状バインダーを含む、請求項記載の二次電池用多孔膜組成物。
  6. 前記粒子状バインダーが、ジエン系重合体またはアクリレート系重合体である、請求項記載の二次電池用多孔膜組成物。
  7. さらに、カルボキシメチルセルロース塩を含む、請求項のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物。
  8. 集電体及び前記集電体上に設けられた電極合剤層を備える極板と、
    前記極板上に請求項1〜のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物を塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用電極。
  9. セパレータ基材と、
    前記セパレータ基材上に請求項1〜のいずれか一項に記載の二次電池用多孔膜組成物を塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用セパレータ。
  10. 正極、負極及び電解液を備え、
    前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項記載の二次電池用電極である、二次電池。
  11. 正極、負極、セパレータ及び電解液を備え、
    前記セパレータが、請求項記載の二次電池用セパレータである、二次電池。
JP2013102495A 2013-05-14 2013-05-14 二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池 Expired - Fee Related JP6217129B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013102495A JP6217129B2 (ja) 2013-05-14 2013-05-14 二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013102495A JP6217129B2 (ja) 2013-05-14 2013-05-14 二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014222649A JP2014222649A (ja) 2014-11-27
JP6217129B2 true JP6217129B2 (ja) 2017-10-25

Family

ID=52122068

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013102495A Expired - Fee Related JP6217129B2 (ja) 2013-05-14 2013-05-14 二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6217129B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3885127A4 (en) * 2018-11-22 2022-08-17 Toray Industries, Inc. POROUS FILM, SECONDARY BATTERY SEPARATOR AND SECONDARY BATTERY

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170095904A (ko) * 2014-12-15 2017-08-23 데이진 가부시키가이샤 비수 전해질 전지용 세퍼레이터, 비수 전해질 전지, 및, 비수 전해질 전지의 제조 방법
KR102324057B1 (ko) * 2015-04-23 2021-11-09 에스케이이노베이션 주식회사 복합분리막 및 그의 제조방법
JP6605996B2 (ja) 2016-03-17 2019-11-13 株式会社東芝 電池、電池パック、および車両
CN109314209B (zh) * 2016-06-21 2021-05-11 日本瑞翁株式会社 非水系二次电池功能层用组合物、非水系二次电池用功能层以及非水系二次电池
KR102526758B1 (ko) * 2018-01-09 2023-04-27 삼성전자주식회사 복합막, 이를 포함한 음극 구조체 및 리튬전지, 및 복합막 제조방법
JP2020119888A (ja) * 2019-01-28 2020-08-06 株式会社リコー 液体組成物
JP2020161279A (ja) * 2019-03-26 2020-10-01 三菱製紙株式会社 リチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法
JP7052924B1 (ja) * 2020-05-22 2022-04-12 東レ株式会社 多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池
WO2022091912A1 (ja) * 2020-10-30 2022-05-05 東邦化学工業株式会社 ビニル系樹脂粒子

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3643289B2 (ja) * 1999-04-30 2005-04-27 株式会社オハラ ガラスセラミックス複合電解質、及びリチウム二次電池
KR100775310B1 (ko) * 2004-12-22 2007-11-08 주식회사 엘지화학 유/무기 복합 다공성 분리막 및 이를 이용한 전기 화학소자
WO2012029805A1 (ja) * 2010-08-31 2012-03-08 日本ゼオン株式会社 電池多孔膜用スラリー組成物、二次電池用多孔膜の製造方法、二次電池用多孔膜、二次電池用電極、二次電池用セパレーター及び二次電池
JP5829042B2 (ja) * 2011-04-13 2015-12-09 旭化成ケミカルズ株式会社 多層多孔膜用共重合体組成物
KR101777625B1 (ko) * 2011-07-06 2017-09-13 제온 코포레이션 2 차 전지용 다공막, 2 차 전지용 세퍼레이터 및 2 차 전지
KR20130048843A (ko) * 2011-11-03 2013-05-13 에스케이이노베이션 주식회사 내열성 및 안정성이 우수한 폴리올레핀계 복합 미세다공막 및 이를 제조하는 방법

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3885127A4 (en) * 2018-11-22 2022-08-17 Toray Industries, Inc. POROUS FILM, SECONDARY BATTERY SEPARATOR AND SECONDARY BATTERY
US12002988B2 (en) 2018-11-22 2024-06-04 Toray Industries, Inc. Porous film including porous base and porous layer having inorganic particles and resin particles containing fluoro (meth)acrylate-containing or silicon-containing polymer, separator for secondary batteries, and secondary battery

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014222649A (ja) 2014-11-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6217129B2 (ja) 二次電池用多孔膜組成物、二次電池用電極、二次電池用セパレータ及び二次電池
JP6451732B2 (ja) 二次電池多孔膜用バインダー組成物、二次電池多孔膜用スラリー、二次電池用多孔膜及び二次電池
JP6361655B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池
US11532817B2 (en) Binder composition for nonaqueous secondary batteries and slurry composition for nonaqueous secondary batteries
JP6222102B2 (ja) リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極及びその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池
JP6384476B2 (ja) リチウムイオン二次電池用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極、リチウムイオン二次電池、並びにリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の製造方法
JP6481623B2 (ja) 二次電池多孔膜用組成物、二次電池用多孔膜、及び二次電池
JP6149730B2 (ja) 二次電池用正極及びその製造方法、スラリー組成物、並びに二次電池
JP6052290B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用のスラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池
JP6048070B2 (ja) リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用負極、並びにリチウムイオン二次電池
JP6327251B2 (ja) リチウムイオン二次電池用多孔膜スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用セパレーター、リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池
JP6191471B2 (ja) リチウムイオン二次電池用バインダー組成物、その製造方法、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
JP6020209B2 (ja) 二次電池負極用スラリー組成物の製造方法
JP6337512B2 (ja) 非水系二次電池多孔膜用組成物、非水系二次電池用多孔膜、及び二次電池
JP5978837B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用のスラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池
JP6111895B2 (ja) リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池
JPWO2016051713A1 (ja) リチウムイオン二次電池多孔膜用組成物、リチウムイオン二次電池用多孔膜およびリチウムイオン二次電池
JP6236964B2 (ja) リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレーター、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
JP6233131B2 (ja) 二次電池多孔膜用組成物、二次電池用多孔膜及び二次電池
JPWO2015174036A1 (ja) 二次電池電極用バインダー組成物、二次電池電極用スラリー組成物、二次電池用電極およびその製造方法、並びに、二次電池
KR102369487B1 (ko) 비수계 이차 전지 전극용 바인더 조성물, 비수계 이차 전지 전극용 슬러리 조성물, 비수계 이차 전지용 전극 및 비수계 이차 전지
WO2014132935A1 (ja) リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用正極の製造方法
JP6337900B2 (ja) 二次電池用多孔膜スラリー組成物、二次電池用セパレータ、二次電池用電極及び二次電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160318

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170829

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170911

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6217129

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees