JP6384476B2 - リチウムイオン二次電池用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極、リチウムイオン二次電池、並びにリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
したがって、本発明は、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できるリチウムイオン二次電池用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物及びリチウムイオン二次電池用電極;充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れるリチウムイオン二次電池;並びに、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できるリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の通りである。
前記水溶性重合体が、酸基含有単量体単位を20重量%〜70重量%含み、
前記ポリエーテル変性シリコーン化合物の量が、前記水溶性重合体100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部である、リチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔2〕 前記水溶性重合体が、さらにフッ素含有単量体単位を0.1重量%〜30重量%含む、〔1〕記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔3〕 前記水溶性重合体の1%水溶液粘度が、1mPa・s〜1000mPa・sである、〔1〕又は〔2〕記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔4〕 前記水溶性重合体が、さらに架橋性単量体単位0.1重量%〜2重量%を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔5〕 前記ポリエーテル変性シリコーン化合物を濃度10重量%で含む水溶液の表面張力が、20mN/m〜50mN/mである、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔6〕 前記粒子状重合体と水溶性重合体との重量比が、粒子状重合体/水溶性重合体=99/1〜50/50である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のバインダー組成物並びに電極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
〔8〕 さらに、増粘剤を含む、〔7〕記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
〔9〕 集電体と、
前記集電体上に、〔7〕又は〔8〕記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物を塗布し、乾燥して得られる電極活物質層とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。
〔10〕 正極、負極及び電解液を備え、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が〔9〕記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
〔11〕 前記粒子状重合体、前記ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水を混合する工程と、
その後で前記水溶性重合体をさらに混合する工程とを有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の製造方法。
本発明のリチウムイオン二次電池は、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れる。
本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の製造方法によれば、充放電によるリチウム金属の析出を抑制でき、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できるリチウムイオン二次電池用バインダー組成物を製造できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物(以下、適宜「バインダー組成物」ということがある。)は、粒子状重合体、水溶性重合体、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水を含む。
粒子状重合体は、重合体の粒子である。粒子状重合体を含むことにより、電極活物質層の結着性が向上し、撒回時、運搬時等の取扱い時に電極にかかる機械的な力に対する強度を向上させることができる。また、電極活物質が電極活物質層から脱落し難くなることから、異物による短絡等の危険性が小さくなる。さらに電極活物質層において電極活物質を安定して保持できるようになるので、サイクル特性及び高温保存特性等の耐久性を改善することができる。また、粒子状であることで、粒子状重合体は電極活物質に対して面ではなく点で結着しうる。このため、電極活物質の表面の大部分はバインダーで覆われないので、電解液と電極活物質との間でイオンのやり取りをする場の広さを広くできる。したがって、内部抵抗を下げて、リチウムイオン二次電池の出力特性を改善できる。
架橋剤の中でも、熱架橋性の架橋性基を含有する点で、有機過酸化物、および熱により架橋反応を生じうる架橋剤が好ましい。
ここで、粒子状重合体を構成する重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、テトラヒドロフランを展開溶媒としたポリスチレン換算の値として求めうる。
水溶性重合体は、本発明のバインダー組成物を含むリチウムイオン二次電池用スラリー組成物(以下、適宜「スラリー組成物」ということがある。)において、通常、電極活物質を均一に分散させる作用を有する。また、水溶性重合体は、通常、電極活物質層において、電極活物質同士の間並びに電極活物質と集電体との間に介在することにより、電極活物質及び集電体を結着する作用を奏しうる。さらに、水溶性重合体は、通常、電極活物質層において、電極活物質を覆う安定した層を形成し、電解液の分解を抑制する作用を奏しうる。
水溶性重合体は、酸基含有単量体単位を含む。酸基含有単量体単位とは、酸基含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。
酸基含有単量体及び酸基含有単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水溶性重合体は、フッ素含有単量体単位を含むことが好ましい。フッ素含有単量体単位とは、フッ素含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。
フッ素含有単量体としては、例えば、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体が挙げられる。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、下記の式(I)で表される単量体が挙げられる。
前記の式(I)において、R2は、フッ素原子を含有する炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、通常18以下である。また、R2が含有するフッ素原子の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
フッ素含有単量体及びフッ素含有単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水溶性重合体は、架橋性単量体単位を含むことが好ましい。架橋性単量体単位を含むことにより、水溶性重合体を架橋させることができるので、電極活物質層の強度及び安定性を高めることができる。また、電解液に対する電極活物質層の膨潤を抑制して、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。
また、架橋性単量体及び架橋性単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水溶性重合体は、反応性界面活性剤単位を含みうる。反応性界面活性剤単位は、反応性界面活性剤を重合して形成される構造を有する構造単位である。反応性界面活性剤単位は、水溶性重合体の一部を構成し、且つ界面活性剤として機能しうる。
カチオン系の親水基の例としては、−Cl、−Br、−I、及び−SO3ORXなどが挙げられる。ここでRXは、アルキル基を示す。RXの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
ノニオン系の親水基の例としては、−OHが挙げられる。
式(II)において、R3は親水性基を表す。R3の例としては、−SO3NH4が挙げられる。
式(II)において、nは1以上100以下の整数を表す。
反応性界面活性剤及び反応性界面活性剤単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水溶性重合体は、上述した酸基含有単量体単位、フッ素含有単量体単位、架橋性単量体単位及び反応性界面活性剤単位以外に、任意の構造単位を含みうる。
例えば、水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含みうる。
水溶性重合体の1%水溶液粘度は、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは2mPa・s以上、特に好ましくは5mPa・s以上であり、また、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下である。ここで水溶性重合体の1%水溶液粘度とは、濃度1重量%の水溶性重合体の水溶液の粘度のことをいう。水溶性重合体の1%水溶液粘度を前記範囲の下限値以上にすることにより、スラリー組成物の分散性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、電極活物質層と集電体との結着性を高めることができる。前記の粘度は、例えば、水溶性重合体の分子量によって調整できる。ここで、前記の粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
粒子状重合体と水溶性重合体との重量比は、粒子状重合体/水溶性重合体で、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、特に好ましくは70/30以上であり、また、好ましくは99/1以下、より好ましくは98/2以下、特に好ましくは97/3以下である。重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、電極活物質層と集電体との結着性を高めることができる。
水溶性重合体は、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で重合して、製造しうる。この際、単量体組成物中の各単量体の比率は、通常、水溶性重合体における構造単位の比率と同様にする。
水系溶媒の例としては、水(100);ダイアセトンアルコール(169)、γ−ブチロラクトン(204)等のケトン類;エチルアルコール(78)、イソプロピルアルコール(82)、ノルマルプロピルアルコール(97)等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)、メチルセロソルブ(124)、エチルセロソルブ(136)、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル(152)、ブチルセロソルブ(171)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(174)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(150)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188)等のグリコールエーテル類;並びに1,3−ジオキソラン(75)、1,4−ジオキソラン(101)、テトラヒドロフラン(66)等のエーテル類が挙げられる。中でも水は可燃性がなく、重合体の分散体が容易に得られやすいという観点から特に好ましい。また、主溶媒として水を使用して、重合体の分散状態が確保可能な範囲において上記記載の水以外の水系溶媒を混合して用いてもよい。
また、アミン類などの添加剤を重合助剤として用いてもよい。
本発明のバインダー組成物は、ポリエーテル変性シリコーン化合物を含む。ポリエーテル変性シリコーン化合物により、リチウムイオン二次電池において充放電によるリチウム金属の析出を抑制することができるので、高温サイクル特性を向上させることができる。また、ポリエーテル変性シリコーン化合物により、電極活物質層の電解液との濡れ性を高めることができるので、リチウムイオン二次電池においてリチウムイオン伝導度を高めることができる。そのため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低くできるので、低温出力特性を向上させることができる。
本発明のバインダー組成物は、水を含む。水は、通常、溶媒又は分散媒として機能し、粒子状重合体を分散させたり、水溶性重合体及びポリエーテル変性シリコーン化合物を溶解させたりしうる。
本発明のバインダー組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した粒子状重合体、水溶性重合体、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水以外の任意の成分を含みうる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のバインダー組成物の製造方法に制限は無い。例えば、本発明のバインダー組成物は、上述した粒子状重合体、水溶性重合体、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水を任意の順序で混合することにより製造しうる。
工程(1);粒子状重合体、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水を混合して、混合物(1)を得る工程。
工程(2);工程(1)の後で、前記の混合物(1)と水溶性重合体とをさらに混合する工程。
このような順序で混合を行うことにより、均質な混合を容易に達成でき、高い分散性を得ることができる。
本発明のスラリー組成物は、リチウムイオン二次電池電極用のスラリー組成物であって、本発明のバインダー組成物及び電極活物質を含む。
(2.1.1.正極活物質)
電極活物質のうち、正極用の電極活物質(以下、適宜「正極活物質」ということがある。)としては、通常、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質が用いられる。このような正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
また、上記の無機化合物と有機化合物の混合物を正極活物質として用いてもよい。
正極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
電極活物質のうち、負極用の電極活物質(以下、適宜「負極活物質」ということがある。)は、負極において電子の受け渡しをする物質である。負極活物質として、通常は、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる物質を用いる。
好適な負極活物質を挙げると、例えば、炭素が挙げられる。炭素としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック等が挙げられ、中でも天然黒鉛を用いることが好ましい。
複合化の方法としては、例えば、金属ケイ素及びケイ素系活物質の一方又は両方をカーボンによりコーティングすることにより複合化する方法;導電性カーボンと金属ケイ素及びケイ素系活物質の一方又は両方とを含む混合物を造粒することにより複合化する方法;等が挙げられる。
負極活物質の粒子の体積平均粒子径D50は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択され、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
本発明のスラリー組成物が含むバインダー組成物の割合は、得られる電池の性能が良好に発現されるよう適宜調整することが好ましい。例えば、電極活物質100重量部に対するバインダー組成物の固形分の割合を、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、また、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下、特に好ましくは5重量部以下にする。
本発明のスラリー組成物は、上述した電極活物質、及びバインダー組成物以外に任意の成分を含みうる。
例えば、本発明のスラリー組成物は、水溶性重合体以外の増粘剤を含みうる。増粘剤としては、例えば水溶性多糖類、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性重合体が挙げられ、中でも水溶性多糖類が好ましく、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。また、このカルボキシメチルセルロースは、ナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩の状態で用いてもよい。増粘剤を用いることにより、スラリー組成物の粘度を高めて、塗布性を良好にすることができる。また、スラリー組成物における電極活物質等の粒子の分散安定性を高めることができる。さらに、電極活物質層と集電体との結着性を高めることができる。
導電材としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、およびカーボンナノチューブ等の導電性カーボンなどが挙げられる。中でも、リチウムイオン二次電池の低温出力特性と寿命特性とのバランスが良いので、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック及びケッチェンブラックが好ましく、アセチレンブラック及びケッチェンブラックが特に好ましい。また、導電材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のスラリー組成物は、例えば、電極活物質、バインダー組成物、及び必要に応じて任意の成分を混合して製造しうる。この際の具体的な手順は任意である。例えば、電極活物質、バインダー組成物、水、増粘剤及び導電材を含むスラリー組成物を製造する場合には、水に電極活物質、バインダー組成物、増粘剤及び導電材を同時に加えて混合する方法;水に電極活物質、導電材及び増粘剤を加えて混合し、その後にバインダー組成物を加えて混合する方法;などが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)は、集電体と電極活物質層とを備える。
集電体は、電気導電性を有し、且つ、電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。通常、この集電体の材料としては、金属材料を用いる。その例を挙げると、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、正極に用いる集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極に用いる集電体としては銅が好ましい。また、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
電極活物質層は、集電体上に、本発明のスラリー組成物を塗布し、乾燥して得られる層である。したがって、電極活物質層は、本発明のスラリー組成物の固形分によって形成される層であるので、電極活物質、粒子状重合体、水溶性重合体及びポリエーテル変性シリコーン化合物を含む。
塗布方法に制限は無く、例えばドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。
また、スラリー組成物の膜の厚みは、目的とする電極活物質層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
乾燥温度及び乾燥時間は、スラリー組成物の膜から水を除去できる温度と時間が好ましい。具体的な範囲を挙げると、乾燥時間は通常1分〜30分であり、乾燥温度は通常40℃〜180℃である。
例えば、正極活物質層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは通常300μm以下、より好ましくは250μm以下である。正極活物質層の厚みが上記範囲にあることにより、負荷特性及びエネルギー密度の両方で高い特性を実現できる。
また、例えば、負極活物質層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下である。負極活物質層の厚みが上記範囲にあることにより、負荷特性及びサイクル特性を良好にすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を備える。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、セパレーターを備えうる。ただし、前記の負極及び正極の一方又は両方は、本発明の電極である。本発明の電極を備えることにより、本発明のリチウムイオン二次電池は、充放電によるリチウム金属の析出を防止でき、また通常は電極活物質層と電解液との親和性を高くできるので、高温サイクル特性及び低温出力特性に優れた電池としうる。
電解液としては、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものを使用しうる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liは好適に用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
セパレーターとしては、通常、気孔部を有する多孔性基材を用いる。セパレーターの例を挙げると、(a)気孔部を有する多孔性セパレーター、(b)片面または両面に高分子コート層が形成された多孔性セパレーター、(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレーター、などが挙げられる。これらの例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、またはアラミド系多孔性セパレーター、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体などの固体高分子電解質用またはゲル状高分子電解質用の高分子フィルム;ゲル化高分子コート層がコートされたセパレーター;無機フィラーと無機フィラー用分散剤とからなる多孔膜層がコートされたセパレーター;などが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネート型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
(1)リチウム金属の析出量の測定方法
実施例及び比較例において製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、そのリチウムイオン二次電池を、−10℃の環境下で、4.35V、1C、1時間の充電の操作を行った。その後、室温、100%アルゴン環境下のグローブボックス内で、リチウムイオン二次電池から負極を取り出した。取り出した負極を観察して、リチウム金属が析出している面積S(cm2)を測定した。
測定された面積を、下記の評価基準にて示す。リチウム金属が析出している面積が小さいほど、充放電によるリチウム金属の析出が少なく、負極が電解液中のリチウムイオンを円滑に受け入れることが可能であることを示す。
A:0≦S<1(cm2)
B:1≦S<5(cm2)
C:5≦S<10(cm2)
D:10≦S<15(cm2)
E:15≦S<20(cm2)
F:20≦S≦25(cm2)
実施例及び比較例において製造したバインダー組成物を、室温で7日間乾燥させて、バインダー組成物フィルムを作製した。接触角計(協和界面化学社製「DM−701」)を用いて、このバインダー組成物フィルム上に電解液溶媒を3マイクロリットル滴下し、滴下から10秒後の接触角W(°)を測定した。ここで電解液溶媒は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びビニレンカーボネートの混合溶媒(EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;体積比)を用いた。得られた接触角Wの値が小さいほど、バインダー組成物の固形分と電解液との濡れ性が大きいことを示し、ひいては電極活物質層と電解液との濡れ性が大きいことを示す。このように電極活物質層と電解液との濡れ性が大きいと、通常は電池の内部抵抗を小さくできるので、低温出力特性等の電池特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できる。
実施例及び比較例において製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、そのリチウムイオン二次電池に、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電を行い0.1Cで2.75Vまで放電を行う充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、そのリチウムイオン二次電池に、45℃環境下で、同様の条件で充放電を繰り返し、500サイクル後の容量C2を測定した。得られた初期容量C0及び500サイクル後の容量C2から容量維持率ΔC=C2/C0×100(%)を計算し、この容量維持率ΔCによって高温サイクル特性を評価した。この容量維持率ΔCの値が高いほど、リチウムイオン二次電池が高温サイクル特性に優れ、長寿命であることを示す。
実施例及び比較例において製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた。その後、そのリチウムイオン二次電池に、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで5時間かけて充電を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、そのリチウムイオン二次電池に、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。得られた電圧V0及びV1から電圧降下ΔV=V0−V1を計算し、この電圧降下ΔVによって低温出力特性を評価した。この電圧降下ΔVの値が小さいほど、リチウムイオン二次電池が低温出力特性に優れることを示す。
実施例及び比較例において用意したポリエーテル変性シリコーン化合物を水に溶解させて、濃度10重量%のポリエーテル変性シリコーン化合物水溶液を得た。このポリエーテル変性シリコーン化合物水溶液の表面張力を、自動表面張力計(協和界面科学株式会社製「DY−300」)を用い、白金プレート法により測定した。
(1−1.水溶性重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、メタクリル酸(酸基含有単量体)32.5部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)7.5部、エチルアクリレート(任意の単量体)58.2部、エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(反応性界面活性剤)1.0部、t−ドデシルメルカプタン0.6部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、水溶性重合体を含む混合物を得た。この水溶性重合体を含む混合物に10%アンモニア水を添加してpH8に調整し、水溶性重合体を水に溶解させて、所望の水溶性重合体を含む水溶液を得た。
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.0部、イタコン酸3.5部、スチレン62.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状重合体(SBR)を含む混合物を得た。この粒子状重合体を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって、この粒子状重合体を含む混合物の未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状重合体を含む水分散液を得た。
容器中で、上記工程(1−2)で作製した粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で95部、並びに、ポリエーテル変性シリコーン化合物(サンノプコ社製「ノプテックスE−F070」)を固形分相当で0.15部混合した。その後、この容器に上記工程(1−1)で作製した水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で5部入れ、さらに水を混合し固形分濃度を25%に調整して、二次電池用バインダー組成物を得た。
この二次電池用バインダー組成物の一部を用いて、上述した要領でバインダー組成物フィルムを製造し、そのフィルムの電解液溶媒との接触角を測定した。
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積5.5m2/gの天然黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースの塩(日本製紙ケミカル社製「MAC−350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1.0部入れ、更にイオン交換水を加えて固形分濃度を60%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、このプラネタリーミキサーにイオン交換水を加えて固形分濃度52%に調整した後、さらに25℃で15分間混合し、混合液を得た。この混合液に、上記工程(1−3)で製造したバインダー組成物を固形分相当で2.0重量部加え、さらにイオン交換水を加えて最終固形分濃度が48%となるように調整し、10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
上記工程(1−4)で得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoO2を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部混合し、さらにN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度が70%となるように調整した。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
上記工程(1−6)で得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極活物質層の厚みが100μmのプレス後の正極を得た。
単層のポリプロピレン製セパレーター(セルガード2500、セルガード社製)を、5×5cm2の正方形に切り抜いた。
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。上記工程(1−7)で得られた正極を、4.6×4.6cm2の正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。正極の正極活物質層の面上に、上記工程(1−8)で得られた正方形のセパレーターを配置した。さらに、上記工程(1−5)で得られたプレス後の負極を、5×5cm2の正方形に切り出し、これをセパレーター上に、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うよう配置した。電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム包材外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。
このリチウムイオン二次電池を用いて、上述した要領で、リチウム金属の析出量の測定、高温サイクル特性の評価のための容量維持率ΔCの測定、並びに、低温出力特性の評価のための電圧降下ΔVの測定を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で0.0075部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で0.45部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の種類を、サンノプコ社製「SNウェット123」に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の種類を、東レ・ダウコーニング社製「SH3746」に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の種類を、日本ユニカー社製「L−7607N」に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、粒子状重合体を含む水分散液の量を固形分相当で98部に変更し、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で0.06部に変更し、水溶性重合体を含む水溶液の量を固形分相当で2部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、粒子状重合体を含む水分散液の量を固形分相当で85部に変更し、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で0.45部に変更し、水溶性重合体を含む水溶液の量を固形分相当で15部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、粒子状重合体を含む水分散液の量を固形分相当で75部に変更し、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で0.75部に変更し、水溶性重合体を含む水溶液の量を固形分相当で25部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、粒子状重合体を含む水分散液の量を固形分相当で60部に変更し、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で1.2部に変更し、水溶性重合体を含む水溶液の量を固形分相当で40部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、酸基含有単量体としてメタクリル酸32.5部を用いる代わりに、メタクリル酸30.0部及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸2.5部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、酸基含有単量体としてメタクリル酸32.5部を用いる代わりに、アクリル酸30.0部及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸2.5部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、メタクリル酸の量を22部に変更し、エチルアクリレートの量を68.7部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、メタクリル酸の量を68部に変更し、エチルアクリレートの量を22.7部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、フッ素含有単量体として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートの代わりにパーフルオロオクチルアクリレートを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、フッ素含有単量体として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートの代わりにパーフルオロエチルアクリレートを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートの量を0.15部に変更し、エチルアクリレートの量を65.55部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートの量を28部に変更し、エチルアクリレートの量を37.7部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、メタクリル酸の量を40部に変更し、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを使用しなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
(20−1.粒子状重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、ブチルアクリレート96部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状重合体(ACR)を含む混合物を得た。この粒子状重合体を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって、この粒子状重合体を含む混合物の未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状重合体を含む水分散液を得た。
容器中で、上記工程(20−1)で作製した粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で95部、並びに、ポリエーテル変性シリコーン化合物(サンノプコ社製「ノプテックスE−F070」)を固形分相当で0.15部混合した。その後、この容器に、実施例1の工程(1−1)で作製した水溶性重合体を含む水溶液を固形分相当で5部入れ、さらに水を混合し固形分濃度を25%に調整して、二次電池用バインダー組成物を得た。
この二次電池用バインダー組成物の一部を用いて、上述した要領でバインダー組成物フィルムを製造し、そのフィルムの電解液溶媒との接触角を測定した。
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoO2を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースの塩(日本製紙ケミカル社製「MAC−350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1.0部入れ、更にイオン交換水を加えて固形分濃度を60%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、このプラネタリーミキサーにイオン交換水を加えて固形分濃度52%に調整した後、さらに25℃で15分間混合し、混合液を得た。この混合液に、上記工程(20−2)で製造したバインダー組成物を固形分相当で2.0部加え、さらにイオン交換水を加えて最終固形分濃度が48%となるように調整し、10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い正極用スラリー組成物を得た。
正極用スラリー組成物として、上記工程(1−6)で得られた正極用スラリー組成物の代わりに、上記工程(20−3)で得られた正極用スラリー組成物を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−7)と同様にして、正極活物質層の厚みが100μmのプレス後の正極を得た。
負極用バインダー組成物として、上記工程(1−3)で製造したバインダー組成物を固形分相当で2.0重量部用いる代わりに、上記工程(1−2)で製造した粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で1.0部用いたこと以外は、実施例1の工程(1−4)と同様にして、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
負極用スラリー組成物として、上記工程(1−4)で得られた負極用スラリー組成物の代わりに、上記工程(20−5)で得られた負極用スラリー組成物を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、負極活物質層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
正極として上記工程(20−4)で得られたものを用い、更に、負極として上記工程(20−6)で得られたものを用いたこと以外は、実施例1の工程(1−9)と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−4)において、前記工程(1−3)で製造したバインダー組成物の代わりに前記工程(1−2)で製造した粒子状重合体を含む水分散液を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、水溶性重合体を含む水溶液を用いなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)において、エチルアクリレートの量を59部に変更し、エチレンジメタクリレートを用いなかった。
また、前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物を用いなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の代わりにシリコーン化合物(信越シリコーン社製「KS−530」)を0.15部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の代わりにポリエーテル化合物(サンノプコ社製「SNディフォーマー170」)を0.15部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−3)において、ポリエーテル変性シリコーン化合物の量を固形分相当で0.6部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記工程(1−1)においてメタクリル酸の量を75部に変更し、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを用いないで、エチルアクリレートの量を24部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
SBR:スチレンブタジエンゴム
ACR:アクリルゴム
単量体I:酸基含有単量体
MAA:メタクリル酸
AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
AA:アクリル酸
単量体II:フッ素含有単量体
TFEMA:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート
PFOA:パーフルオロオクチルアクリレート
PFEA:パーフルオロエチルアクリレート
単量体III:架橋性単量体
EDMA:エチレンジメタクリレート
単量体IV:反応性界面活性剤
PD−104:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム
EA:エチルアクリレート
水溶液粘度:水溶性重合体の1%水溶液の粘度
重合体の重量比:「粒子状重合体:水溶性重合体」で表される重量比
変性シリコーン化合物:ポリエーテル変性シリコーン化合物
化合物量:水溶性重合体100部に対するポリエーテル変性シリコーン化合物の量
表面張力:ポリエーテル変性シリコーン化合物の10重量%水溶液の表面張力
CMC塩:カルボキシメチルセルロース塩
表1〜表6に示すように、実施例においては、リチウム金属の析出が少ない。このことから、本発明により、充放電によるリチウム金属の析出を抑制できることが確認された。
また、表1〜表6に示すように、実施例においては、バインダー組成物フィルムの電解液との接触角が小さい。このことから、本発明に係る電極は電解液の濡れ性に優れるので、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を小さくできることが確認された。
さらに、表1〜表6に示すように、実施例においては、低温環境における電圧降下が小さい。このことから、本発明により、低温出力特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できることが確認された。
また、表1〜表6に示すように、実施例においては、高温環境において充放電を繰り返したときの容量維持率が高い。このことから、本発明により、高温サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池が実現できることが確認された。
Claims (10)
- 粒子状重合体、水溶性重合体、ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水を含み、
前記水溶性重合体が、酸基含有単量体単位を20重量%〜70重量%、架橋性単量体単位を0.1重量%〜2重量%、及び、反応性界面活性剤単位を0.1重量%〜5重量%含み、
前記ポリエーテル変性シリコーン化合物の量が、前記水溶性重合体100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部である、リチウムイオン二次電池用バインダー組成物。 - 前記水溶性重合体が、さらにフッ素含有単量体単位を0.1重量%〜30重量%含む、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記水溶性重合体の1%水溶液粘度が、1mPa・s〜1000mPa・sである、請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記ポリエーテル変性シリコーン化合物を濃度10重量%で含む水溶液の表面張力が、20mN/m〜50mN/mである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記粒子状重合体と水溶性重合体との重量比が、粒子状重合体/水溶性重合体=99/1〜50/50である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のバインダー組成物並びに電極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
- さらに、増粘剤を含む、請求項6記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
- 集電体と、
前記集電体上に、請求項6又は7記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物を塗布し、乾燥して得られる電極活物質層とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。 - 正極、負極及び電解液を備え、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が請求項8記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。 - 前記粒子状重合体、前記ポリエーテル変性シリコーン化合物及び水を混合する工程と、
その後で前記水溶性重合体をさらに混合する工程とを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の製造方法。
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