JP5829042B2 - 多層多孔膜用共重合体組成物 - Google Patents
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Description
リチウムイオン二次電池は高い出力密度、容量密度を持つ反面、電解液に有機溶媒を用いているために短絡や過充電等の異常事態に伴う発熱によって電解液が分解し、最悪の場合には発火に至ることがある。このような事態を防ぐため、リチウムイオン二次電池にはいくつかの安全機能が組み込まれており、その中の一つに、セパレータのシャットダウン機能がある。シャットダウン機能とは電池が異常発熱を起こした際、セパレータの微多孔が熱溶融等により閉塞して電解液内のイオン伝導を抑制し、電気化学反応の進行をストップさせる機能のことである。一般にシャットダウン温度が低いほど安全性が高いとされ、ポリエチレンがセパレータの成分として用いられている理由の一つに適度なシャットダウン温度を持つという点が挙げられる。
しかし、高いエネルギーを有する電池においては、シャットダウンにより電気化学反応の進行をストップさせても電池内の温度が上昇し続け、その結果、セパレータが熱収縮して破膜し、両極が短絡(ショート)するという問題が生じる場合がある。
また、リチウムイオン二次電池は、その高い出力密度、容量密度を活かして、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の車載用途での使用が検討されている。車載用途での使用の際には、電池が大型化することが予想されるが、その際セパレータのカールが顕在化しやすくなる傾向がある。セパレータにカールが発生すると、ハンドリングが悪くなるため、捲回不良や組み立て不良等、電池作成に問題が生じる場合がある。
また、車載用リチウムイオン二次電池といった、大型タイプの電池作製においては、セパレータのカール性の面からも更なる改良の余地を有する。
上記事情に鑑み、本発明は、高温環境下においても熱収縮が抑制され、かつ耐カール性を有する多層多孔膜を得ることのできる多層多孔膜用共重合体組成物を提供することを目的とする。
[1]
(メタ)アクリル酸エステル単量体と、架橋性単量体と、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体と、を含む単量体組成物を共重合して得られる共重合体を含む組成物であり、
前記単量体組成物中における不飽和カルボン酸単量体の割合が1.0質量%未満であり、前記架橋性単量体以外の単量体から計算される共重合体のTgが−25℃以下である、多層多孔膜用共重合体組成物と、無機粒子を含む多孔層形成用塗布液。
[2]
前記無機粒子がアルミナである、[1]記載の多孔層形成用塗布液。
[3]
前記共重合体組成物が、2−エチルヘキシルアクリレートを主体とする単量体組成物を共重合して得られる、[1]又は[2]記載の多孔層形成用塗布液。
[4]
前記単量体組成物中における架橋性単量体の割合が0.2〜16質量%である、[1]〜[3]のいずれか1項記載の多孔層形成用塗布液。
[5]
前記単量体組成物が、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体を含む、[1]〜[4]のいずれか1項記載の多孔層形成用塗布液。
[6]
前記共重合体組成物は、乳化重合により得られる水分散体である、[1]〜[5]のいずれか1項記載の多孔層形成用塗布液。
[7]
ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に、[1]〜[6]のいずれか1項記載の多孔層形成用塗布液を塗布・乾燥して得られる多孔層が積層された多層多孔膜。
[8]
[7]記載の多層多孔膜を含む非水電解液電池用セパレータ。
[9]
[8]記載の非水電解液電池用セパレータと、正極と、負極と、電解液とを有する非水電解液電池。
(メタ)アクリル酸エステル単量体と、架橋性単量体と、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体と、を含む単量体組成物を共重合して得られる共重合体を含む組成物であり、
前記単量体組成物中における不飽和カルボン酸単量体の割合が1.0質量%未満であり、前記架橋性単量体以外の単量体から計算される共重合体のTgが−25℃以下である、多層多孔膜用共重合体組成物と、無機粒子を含む。
前記単量体組成物中における不飽和カルボン酸単量体の割合が1.0質量%未満であり、前記架橋性単量体以外の単量体から計算される共重合体のTgが−25℃以下である。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。
重合中又は重合後に架橋構造を与える官能基を有している単量体としては、例えば、エポキシ基含有ビニル単量体、メチロール基含有単量体、アルコキシメチル基含有単量体、加水分解性シリル基を有するビニル単量体等が挙げられる。
メチロール基含有ビニル単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
アルコキシメチル基含有ビニル単量体としては、例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる
加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、例えば、ビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。好ましくはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
アミド基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミドである。
シアノ基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
ここで、本実施形態において「主体とする」とは、組成物中に該当成分が最も多い割合で含まれることを示し、好ましくは33質量%以上、より好ましくは36質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
多層多孔膜の耐熱収縮性能が低下する傾向にある。
ここで、架橋性単量体以外の単量体から計算される共重合体のTgは以下のとおりに計算して算出したものである。
共重合体のTg(℃)は、共重合に使用した単量体のうち架橋性単量体を除く部分に関して、下記に示した各単量体のホモポリマーのTg(K)をもとに、以下のFOXの式を用いて算出して得られたTg(K)をTg(℃)に換算した値をいう。
FOXの式:1/Tgp=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
Tgp:共重合体のTg(K)
Tgn:各単量体のホモポリマーのTg(K)
Wn:各単量体の重量分率
ここで、計算に用いる各単量体のホモポリマーのTg(K)の値は次の通りである。
メチルメタクリレート(MMA=378K)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA=339K)、ノルマルブチルメタクリレート(BMA=293K)、ノルマルブチルアクリレート(BA=219K)、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA=205K)、メタクリル酸(MAA=403K)、アクリル酸(AA=379K)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA=328K)。その他のモノマーを使用する場合には、次に示す値を使用する。ブタジエン(Bd=193K)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA=258K)、エチルアクリレート(EA=251K)、スチレン(St=373K)、アクリロニトリル(AN=373K)、メタクリロニトリル(MAN=393K)、イタコン酸(IA=403K)、フマル酸(FA=403K)、アクリルアミド(AAm=426K)、メタクリルアミド(MAAm=438K)。また、上記に記載のないモノマーについては、WILEY INTERSCIENCE出版のポリマーハンドブックや、各種書籍にて得られる公知の数値を使用して計算するものとする。
これらの他に親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性二重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。
ラジカル重合開始剤の量としては、単量体組成物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤を好ましくは0.05〜2質量部で用いることができる。
また、本実施形態の多層多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に、上記多孔層形成用塗布液からなる多孔層が積層されたものである。
ここで、多層多孔膜は、例えば、以下の(A)〜(B)の各工程、
(A)(メタ)アクリル酸エステル単量体と、架橋性単量体と、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体と、を含む単量体組成物を共重合して得られる共重合体であって、
前記単量体組成物中における不飽和カルボン酸単量体の割合が1.0質量%未満であり、前記架橋性単量体以外の単量体から計算される共重合体のTgが−25℃以下である共重合体を、乳化重合により水分散体として得る工程、
(B)前記水分散体と無機粒子とを含む塗布液を、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に塗布する工程、
を含む製造方法により得ることができる。
前記無機粒子において、0.2μmを超えて1.0μm以下の粒径を有する粒子が無機粒子全体に占める割合としては、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
また、前記無機粒子において、0.5μmを超えて2.0μm以下の粒径を有する粒子が無機粒子全体に占める割合としては、好ましくは8体積%以上、より好ましくは10体積以上であり、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
更に、前記無機粒子において、0.6μmを超えて1.4μm以下の粒径を有する粒子が無機粒子全体に占める割合としては、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上であり、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。
このような粒度分布とすることは、多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温環境下における熱収縮を抑制する観点から好ましい。
なお、上記割合を調整する方法としては、ボールミル・ビーズミル・ジェットミル等を用いて無機粒子を粉砕し、粒径を小さくする方法等を挙げることができる。
塗布液の溶媒としては、前記無機粒子、及び前記共重合体組成物を均一かつ安定に分散又は溶解できるものが好ましく、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜とは、多層多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能等の点から、多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物から形成される多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が占める割合は60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
この場合、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン炭化水素の単独重合体又は共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。
これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
ここで、多孔膜の平均孔径は、孔径が小さい場合(おおよそ0.1μm以下)には、気液法(FLUX)により、孔径が大きい場合(おおよそ0.1μmを以上)には、バブルポイント法により測定した値をいう。
なお、気液法とは気体と液体の透過性から平均孔径を算出する方法であり、バブルポイント法とは、孔内を液体で満たして圧力をかけ、液体を除去するのに必要な圧力から最大孔径を算出する方法である。
まず、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を、押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入して混練する方法が挙げられる。この際、ポリオレフィン樹脂、その他の添加剤及び可塑剤を樹脂混練装置に投入する前に、予めヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練しておくことが好ましい。より好ましくは、事前混練において可塑剤の一部のみを投入し、残りの可塑剤を樹脂混練装置サイドフィードしながら混練する。このような方法により、可塑剤の分散性を高め、後の工程で樹脂組成物と可塑剤の溶融混練合物のシート状成形体を延伸する際に、破膜することなく高倍率で延伸することができる。
本実施形態の多層多孔膜は、耐熱性に優れ、かつシャットダウン機能を有しているので電池の中に含まれる正極と負極を隔離する電池用セパレータとして適している。
特に、本実施形態の多層多孔膜は、高温環境下においても短絡し難く、高起電力電池用のセパレータとしても安全に使用できる。
正極材料としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、スピネル型LiMnO4、オリビン型LiFePO4等のリチウム含有複合酸化物等が、負極材料としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料等が挙げられる。
膜厚が2μm以上であると機械強度が十分となる傾向にあり、200μm以下であるとセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向にある。
なお、上述した各種パラメータについては、特に断りのない限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される。
重合後の共重合体組成物の水分散体に含まれる325メッシュのろ過残渣の乾燥重量(a)の、全重合液(b)に対する割合が、0.01%未満である場合を「○」、0.01%以上0.1%未満である場合を「△」、0.1%以上である場合を「×」とした。
共重合して得られた共重合体組成物の水分散体をアルミ皿上に約1g精秤し、このとき量りとった水分散体の重量を(a)gとした。それを、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、乾燥後の共重合体の乾燥重量を(b)gとした。次式により固形分を算出した。
固形分=(b)/(a)×100 [%]
光散乱法による粒径測定装置(LEED&NORTHRUP社製MICROTRACTMUPA150)を用い、体積平均粒子径(nm)を測定し、平均粒径とした。
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η](dl/g)を求めた。
ポリエチレンについては、次式により算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10−4Mv0.80
多孔膜、多層多孔膜からMD10mm×TD10mmのサンプルを切り出し、格子状に9箇所(3点×3点)を選んで、膜厚をダイヤルゲージ(尾崎製作所製PEACOCK No.25(登録商標))を用いて測定し、9箇所の測定値の平均値を多孔膜、多層多孔膜の膜厚(μm)とした。また、このように測定された多層多孔膜と多孔膜の膜厚の差を多孔層の層厚(μm)とした。
無機粒子を蒸留水に加え、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を少量添加してから超音波ホモジナイザで1分間分散させた後、レーザー式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3300EX)を用いて粒径分布を測定した。累積頻度が50%となる粒径を平均粒径とした。
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製G−B2(商標)、内筒質量:567g)を用い、645mm2の面積(直径28.6mmの円)の測定対象膜に対して、空気100ccが通過する時間(秒)を測定し、透気度とした。
多孔層の形成による透気度増加率は、以下の式にて算出した。
透気度増加率(%)={(多層多孔膜の透気度−多孔膜の透気度)/多孔膜の透気度}×100
セパレータをMD方向に100mm、TD方向に100mmに切り取り、150℃のオーブン中に1時間静置した。このとき、温風が直接サンプルにあたらないよう、サンプルを2枚の紙にはさんだ。サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、長さ(mm)を測定し、以下の式にてMD及びTDの熱収縮率を算出した。
MD熱収縮率(%)=(100―加熱後のMDの長さ)/100×100
TD熱収縮率(%)=(100―加熱後のTDの長さ)/100×100
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を92.2質量部、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量部、樹脂製バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を3.2質量部用意し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて、正極活物質塗布量が250g/m2となるように塗布した。130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機を用いて、正極活物質かさ密度が3.00g/cm3となるように圧縮成形し、正極とした。
b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイトを96.6質量部、樹脂製バインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量部とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量部を用意し、これらを精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターを用いて負極活物質塗布量が106g/m2となるように塗布した。120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機を用いて、負極活物質かさ密度が1.35g/cm3となるように圧縮成形し、負極とした。
c.非水電解液の調製
プロピレンカーボネート:エチレンカーボネート:γ−ブチルラクトン=1:1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiBF4を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させ、非水電解液を調製した。
d.シャットダウン温度、ショート温度の測定
65mm×20mmに切り出して非水電解液に1分以上浸漬した負極、中央部に直径16mmの穴をあけた9μm(厚さ)×50mm×50mmのアラミドフィルム、65mm×20mmに切り出して非水電解液に1時間以上浸漬した多層多孔膜又は多孔膜、65mm×20mmに切り出して非水電解液に1分以上浸漬した正極、カプトンフィルム、厚さ約4mmのシリコンゴムを用意し、熱電対を接続したセラミックプレート上に、この順で積層した。この積層体をホットプレート上にセットし、油圧プレス機にて4.1MPaの圧力をかけた状態で15℃/minの速度で昇温し、正負極間のインピーダンス変化を交流1V、1kHzの条件下で200℃まで測定した。
インピーダンスが1000Ωに達した時点の温度をシャットダウン温度とし、シャットダウン後、再びインピーダンスが1000Ωを下回った時点の温度をショート温度とした。
a.正極の作製
(9)のaと同様にして作製した正極を面積2.00cm2の円形に打ち抜いた。
b.負極の作製
(9)のbと同様にして作製した負極を面積2.05cm2の円形に打ち抜いた。
c.非水電解液
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0ml/Lとなるように溶解させて調製した。
d.電池組立
正極と負極の活物質面が対向するように、下から負極、多層多孔膜、正極の順に重ねた。この積層体を、容器本体と蓋が絶縁されている蓋付きステンレス金属製容器に、負極の銅箔、正極のアルミ箔が、それぞれ、容器本体、蓋と接するように収納した。この容器内に、非水電解液を注入して密閉した。
e.評価
(レート特性)
d.で組み立てた簡易電池を、25℃において、電流値3mA(約0.5C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法で、合計約6時間、電池作成後の最初の充電を行い、その後電流値3mAで電池電圧3.0Vまで放電した。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計約3時間充電を行い、その後電流値6mAで電池電圧3.0Vまで放電して、その時の放電容量を1C放電容量(mAh)とした。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計約3時間充電を行い、その後電流値12mA(約2.0C)で電池電圧3.0Vまで放電して、その時の放電容量を2C放電容量(mAh)とした。
1C放電容量に対する2C放電容量の割合を算出し、この値をレート特性とした。
レート特性(%)=(2C放電容量/1C放電容量)×100
(サイクル特性)
レート特性を評価した簡易電池を、60℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計約3時間充電を行い、そして電流値6mAで電池電圧3.0Vまで放電するというサイクルを100回繰り返し、1サイクル目と100サイクル目の放電容量(mAh)を測定した。
1回目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合を算出し、この値をサイクル特性とした。
サイクル特性(%)=(100回目の放電容量/1回目の放電容量)×100
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、膜密度を0.95(g/cm3)として次式を用いて計算した。
気孔率=(1−質量/体積/0.95)×100
共重合体のTg(℃)は、共重合に使用した単量体のうち架橋性単量体を除く部分に関して、下記に示した各単量体のホモポリマーのTg(K)をもとに、以下のFOXの式を用いて算出して得られたTg(K)をTg(℃)に換算した。
FOXの式:1/Tgp=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
Tgp:共重合体のTg(K)
Tgn:各単量体のホモポリマーのTg(K)
Wn:各単量体の重量分率
ここで、計算に用いた各単量体のホモポリマーのTg(K)の値は次の通りである。
メチルメタクリレート(MMA=378K)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA=339K)、ノルマルブチルメタクリレート(BMA=293K)、ノルマルブチルアクリレート(BA=219K)、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA=205K)、メタクリル酸(MAA=403K)、アクリル酸(AA=379K)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA=328K)。その他のモノマーを使用した場合には、次に示す値を使用する。ブタジエン(Bd=193K)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA=258K)、エチルアクリレート(EA=251K)、スチレン(St=373K)、アクリロニトリル(AN=373K)、メタクリロニトリル(MAN=393K)、イタコン酸(IA=403K)、フマル酸(FA=403K)、アクリルアミド(AAm=426K)、メタクリルアミド(MAAm=438K)。
塗工層を有する多層多孔膜を幅50mm×長さ100mmに切り出し、該サンプルを多孔層の塗工面が下になるように置いた。切り出した膜の上部をテープ等でしっかり固定し、長さ方向に2mm引っ張って伸ばし、全長を102mmとした状態で下部を固定しそのまま1分間静置した。1分後、下から10mmの部分で切断し、膜端部のせり上がり高さをカール高さとして測定した。カール高さの数値で耐カール性を判定した。判定基準は次の通りである。◎(優):0〜5mm、○(良):6〜10mm、△(可):11〜20mm、×(不可):21mm以上又は高さに関係なくロール状に丸まる。
基材となる多孔膜を幅200mm×長さ250mmに切り出した。該多孔膜の上部をテープ等でしっかり固定した後、長さ方向に2mm引っ張って伸ばし、全長を252mmとした状態で下部を固定した。多孔層形成用塗布液を塗布し、60℃の熱風乾燥機で1分間乾燥させた。乾燥後、多層多孔膜を幅50mm×長さ100mmの大きさに切り出した。多孔層形成用塗布液塗工面を下にしておき、膜端部のせり上がり高さをカール高さとして測定した。カール高さの数値で耐カール性を判定した。判定基準は次の通りである。◎(優):0〜5mm、○(良):6〜10mm、△(可):11〜20mm、×(不可):21mm以上又は高さに関係なくロール状に丸まる。
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、初期仕込みとして水74質量部、アクアロンKH10(ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩:100%固形分/第一工業製薬(株)製)0.1質量部を投入し、反応容器中の温度を75℃に保ち、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液1.5質量部を添加した。添加した5分後に、メチルメタクリレート11.8質量部、シクロヘキシルメタクリレート5質量部、ブチルメタクリレート1質量部、ブチルアクリレート33質量部、2−エチルヘキシルアクリレート42質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、グリシジルメタクリレート0.8質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート1質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2質量部と、アクアロンKH10を1.5質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム10%水溶液1.5質量部、水65質量部からなる乳化混合液を150分かけて滴下槽から反応容器に投入した。反応系のpHは4以下に維持した。乳化混合液の投入が終了してからそのまま反応容器の温度は75℃に保ち、60分間攪拌を続けた。その後、反応液を80℃に昇温し、液温が80℃に到達後さらに60分間攪拌を続けた。その後室温まで冷却した。
冷却後、200メッシュの金網でろ過を行い、凝集物等を除去した。ろ過後、25%のアンモニア水でpHを8に調整し、固形分が40%となるよう水を添加した。調整終了後325メッシュの金網でろ過を行った。得られたラテックス1(LTX1)の体積平均粒子径は141nmであった。
単量体組成物の組成比を表1(合成例2〜10)及び表2(合成例11〜23)に示した組成比に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてラテックス2〜23を得た。
Mv70万のホモポリマーのポリエチレン47質量部と、Mv25万のホモポリマーのポリエチレン46質量部と、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン7質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99質量%に、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また、可塑剤として流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が65質量%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数240rpm、吐出量12kg/hで行った。
続いて、溶融混練物を、Tダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚さ2000μmのシート状のポリオレフィン樹脂組成物を得た。
次に、得られたポリオレフィン樹脂組成物を同時二軸テンター延伸機へ導き、MD方向に7倍、TD方向に7倍に同時二軸延伸を行った。この時、同時二軸テンターの設定温度は125℃であった。次にメチルエチルケトン槽に導き、流動パラフィンを抽出除去した後、メチルエチルケトンを乾燥除去した。
さらにTDテンター熱固定機に導き、熱固定を行った。熱固定温度は133℃、TD緩和率0.80とした。その結果、膜厚16μm、気孔率40%、透気度160秒/100ccのポリオレフィン樹脂多孔膜を得た。
次に、α−アルミナ1(平均粒径0.58μm)を92.8質量部と、樹脂製バインダとしてラテックス1を7.2質量部とを150質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、上記ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、ポリオレフィン樹脂多孔膜上に厚さ6μmの多孔層(多孔層中のバインダ比率4.0%)を形成した多層多孔膜を得た。
無機粒子としてα−アルミナ2(平均粒径1.1μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
無機粒子としてγ−アルミナ(平均粒径2.7μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
無機粒子としてθ−アルミナ(平均粒径2.3μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
樹脂製バインダとしてラテックス2〜13、15〜17(全て40%固形分)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれの多層多孔膜(多孔層厚み6μm、多孔層中のバインダ比率4.0%)を得た。
[参考例1]
樹脂製バインダとしてラテックス14(40%固形分)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれの多層多孔膜(多孔層厚み6μm、多孔層中のバインダ比率4.0%)を得た。
樹脂製バインダとしてラテックス18、19、22、23(全て40%固形分)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、それぞれの多層多孔膜(多孔層厚み6μm、多孔層中のバインダ比率4.0%)を得た。
樹脂製バインダとして、ラテックス20(40%固形分)を用いて、多孔層厚み8μmとなるように塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、多層多孔層(多孔層厚み8μm、多孔層中のバインダ比率4.0%)を得た。
樹脂製バインダとして、ラテックス21(40%固形分)を用いて、多孔層厚み10μmとなるように塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、多層多孔層(多孔層厚み10μm、多孔層中のバインダ比率4.0%)を得た。
α−アルミナ1の代わりに焼成カオリン(カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.89μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
α−アルミナ1の代わりに水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
また、架橋性単量体を使用していないラテックス22を樹脂製バインダとして用いた比較例5の多層多孔層は、150℃での熱収縮率が20%以上と、実施例に比して不十分な抑制効果であった。
また、アルミナの代わりに焼成カオリン、水酸化酸化アルミニウムを用いた比較例7と8の多層多孔層は、150℃での熱収縮率が15%以上と、実施例に比して不十分な抑制効果であった。
また、本実施形態の多層多孔膜は、シャットダウン機能、耐熱収縮性、耐カール性を有するので、特に電池用セパレータに好適に用いることができる。とりわけ、リチウムイオン二次電池用の電池用セパレータに適している。
Claims (7)
- (メタ)アクリル酸エステル単量体と、架橋性単量体と、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体と、を含む単量体組成物を共重合して得られる共重合体を含む組成物であり、
前記単量体組成物中における不飽和カルボン酸単量体の割合が1.0質量%未満であり、
前記単量体組成物が、2−エチルヘキシルアクリレートを最も割合の多い成分として含み、その含有量が33質量%以上であり、
前記架橋性単量体以外の単量体から計算される共重合体のTgが−25℃以下である、多層多孔膜用共重合体組成物と、
無機粒子を含み、
前記無機粒子がアルミナである、多孔層形成用塗布液。 - 前記単量体組成物中における架橋性単量体の割合が0.2〜16質量%である、請求項1記載の多孔層形成用塗布液。
- 前記単量体組成物が、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体を含む、請求項1又は2記載の多孔層形成用塗布液。
- 前記共重合体組成物は、乳化重合により得られる水分散体である、請求項1〜3のいずれか1項記載の多孔層形成用塗布液。
- ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれか1項記載の多孔層形成用塗布液を塗布・乾燥して得られる多孔層が積層された多層多孔膜。
- 請求項5記載の多層多孔膜を含む非水電解液電池用セパレータ。
- 請求項6記載の非水電解液電池用セパレータと、正極と、負極と、電解液とを有する非水電解液電池。
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